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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067191
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20230101AFI20230509BHJP
【FI】
C02F3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178217
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】390021348
【氏名又は名称】フジクリーン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 真一
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏幸
【テーマコード(参考)】
4D027
【Fターム(参考)】
4D027AB03
4D027AB11
(57)【要約】
【課題】 被処理水を消毒処理した上で放流する構成を有する水処理装置において、消毒槽への被処理水の積極供給を行うための具体化技術を提供する。
【解決手段】
水処理装置の処理槽本体には、バッフル部171aと、薬筒180とを有する消毒槽170が設けられる。消毒槽170において、被処理水移送ポンプ192が、被処理水を所定の第1方向へと吐出し、バッフル部171aは、消毒槽170内において、被処理水の流動方向を第1方向と異なる第2方向へと変換した状態で薬筒180に供給する。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を含む被処理水に対して処理を行う水処理装置であって、
被処理水が流入する流入槽と、
前記流入槽の下流側に設けられ、被処理水を嫌気処理する嫌気処理槽と、
前記嫌気処理槽の下流側に設けられ、被処理水を好気処理する好気処理槽と、
前記好気処理槽の下流側に設けられ、被処理水を消毒処理する消毒槽と、
前記消毒槽に設けられたバッフル部と、
前記消毒槽内の所定位置に配置されて、被処理水を消毒する消毒薬が収納され、被処理水に接触することで前記消毒薬が被処理水に溶解するように構成された薬筒と、
被処理水を前記消毒槽に移送するための被処理水移送ポンプと、を有し、
前記被処理水移送ポンプは、前記消毒槽において、被処理水を所定の第1方向へと吐出し、前記バッフル部は、前記消毒槽内において、被処理水の流動方向を前記第1方向と異なる第2方向へと変換した状態で前記薬筒に供給することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記バッフル部は、前記消毒槽の槽壁によって構成されることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置であって、前記バッフル部による被処理水の流動方向の変換角度は、90度以上に設定されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記好気処理槽の下流側であって、前記消毒槽の上流側には処理水槽が設けられ、
前記被処理水移送ポンプは、前記処理水槽における被処理水を前記消毒槽へと移送するよう構成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記薬筒は、被処理水を消毒処理するための消毒薬が収容された複数の筒体によって構成されるとともに、前記バッフル部によって流動方向を変換された被処理水は、前記複数の筒体に順次に送られることを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活排水等の汚水を処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化槽においては、所定の処理が行われた後の被処理水を消毒槽に移送して、消毒処理を行ってから放流する構成が知られている。
例えば実開平01―139894号公報では、浄化槽における消毒槽の具体的構成が開示されている。
この消毒槽では浄化槽内の所定の水位に応じて、上流側から被処理水が消毒槽に自然移送され、消毒槽に配置された消毒薬入りの薬筒に当該被処理水が接触することで消毒薬が溶解し、被処理水の消毒処理が遂行されるように構成されている。
【0003】
一方、近年における浄化槽の高度処理化の見地に立脚し、エアリフトポンプ等の移送装置を介して、浄化槽内の水位に依らず被処理水を消毒槽に供給し、被処理水の積極的な消毒処理および放流を促進する技術が要請されている。
【0004】
この点、上記した公知の浄化槽においては、消毒槽への被処理水の積極供給に関する問題点が検討されておらず、浄化槽の高度処理化の観点で、より一層の踏み込んだ検討が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平01―139894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この点に鑑みてなされたものであり、被処理水を消毒処理した上で放流する構成を有する水処理装置において、消毒槽への被処理水の積極供給を行うための具体化技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明によって解決される。
本発明に係る水処理装置の好ましい形態によれば、汚泥を含む被処理水に対して処理を行う水処理装置が構成される。
この水処理装置は、汚泥を含む被処理水に対して処理を行うべく、被処理水が流入する流入槽と、前記流入槽の下流側に設けられ、被処理水を嫌気処理する嫌気処理槽と、前記嫌気処理槽の下流側に設けられ、被処理水を好気処理する好気処理槽と、前記好気処理槽の下流側に設けられ、被処理水を消毒処理する消毒槽と、前記消毒槽に設けられたバッフル部と、前記消毒槽内の所定位置に配置されて、被処理水を消毒する消毒薬が収納され、被処理水に接触することで前記消毒薬が被処理水に溶解するように構成された薬筒と、被処理水を前記消毒槽に移送するための被処理水移送ポンプと、を有する。
【0008】
前記被処理水移送ポンプは、前記消毒槽において、被処理水を所定の第1方向へと吐出し、前記バッフル部は、前記消毒槽内において、被処理水の流動方向を前記第1方向と異なる第2方向へと変換した状態で前記薬筒に供給する。
被処理水移送ポンプを用いて、被処理水を消毒槽へ積極的に供給する構成を採用する場合、当該積極的供給に起因して、供給された被処理水の水流が強くなり、かかる強い水流が消毒薬に及ぶことで、消毒槽内の消毒薬の消費速度が不必要に速まり、消毒薬不足を惹起する懸念が想定される。かかる問題について、本件発明では、バッフル部を採用することによって未然かつ確実に防止する。
具体的には、バッフル部は、消毒槽内において、被処理水の流動方向を前記第1方向と異なる第2方向へと変換した状態で前記薬筒に供給する。
【0009】
このように構成することで、被処理水移送ポンプによって相対的に高速の被処理水が消毒槽内に吐出された場合であっても、バッフル部によって、その流動方向を第1方向から第2方向へと変換し、被処理水を減速した上で、消毒薬に接触させることができ、消毒薬の消費速度が不必要に速まってしまう事象、意図しない消毒薬不足といった事象を未然防止することができる。
【0010】
なおバッフル部は、被処理水の流動方向を変換することができる部材構成であれば足り、典型的には平板状のバッフルプレートが好適に採用可能である。あるいは、湾曲板状のバッフルプレートを用い、その曲率を調整して方向変換の精度を向上させる態様、管状のバッフル部を用いる態様、あるいはこれらを適宜に組合わせる等、各種の構成が採用可能である。
また、被処理水移送ポンプについては、典型的にはエアリフトポンプが用いられるが、他の手段、例えば水中ポンプを用いる態様も好適に採用可能である。
なお本発明は、排水をその取扱い対象とするものであり、例えば、消毒槽内の被処理水の一部に淀みが生じ、部分的に流動が停滞するような場合であっても、全体的に視て被処理水の流動方向が第1方向から第2方向に変換されれば本発明に包含される。
【0011】
さらに本発明の好ましい形態として、前記バッフル部は、前記消毒槽の槽壁によって構成されることができる。
消毒槽の槽壁にバッフル部の機能を併有させることで、消毒槽の構成要素部材と、被処理水の流動方向転換部材とを兼務させることができ、部材構成の合理化が一層図られることとなる。
【0012】
さらに本発明の好ましい形態として、前記バッフル部による被処理水の流動方向の変換角度は、90度以上に設定することができる。変換角度を90度以上と大きく設定することにより、被処理水移送ポンプによって消毒槽に積極供給された被処理水をしっかりと減速することができ、消毒薬の消費コントロールが一層円滑化される。
なお本発明は、排水をその取扱い対象とするものであり、上記と同様に、流動方向の変換角度については、被処理水の巨視的な流動方向が90度以上であれば足りる。例えば、消毒槽内の被処理水の一部に淀みが生じ、部分的に流動が停滞するような場合であっても、全体的に視て、被処理水の流動方向が90度以上に変換できれば本発明に包含される。同様に「90度以上」についても、部分的に90度以上ではない場合であっても、全体的に視て、被処理水の流動方向が90度以上であれば本発明に包含される。
【0013】
さらに本発明の好ましい形態として、前記好気処理槽の下流側であって、前記消毒槽の上流側には処理水槽が設けられるとともに、前記被処理水移送ポンプは、前記処理水槽における被処理水を前記消毒槽へと移送するよう構成することができる。
消毒槽の上流側に処理水槽を設定することにより、当該処理水槽において、被処理水の汚泥沈降・BOD(生物化学的酸素要求量)の更なる低減、SS(懸濁物質)の更なる除去が促進されることになり、その後の消毒槽での消毒効率が高まることとなる。特に本発明のように、被処理水移送ポンプを用いて消毒槽への積極的な被処理水供給を行う構成においては、嫌気処理および好気処理を経た被処理水を一度沈静化させるための処理水槽の設定が好ましい。
【0014】
さらに本発明の好ましい形態として、前記薬筒は、被処理水を消毒処理するための薬剤が収容された筒体を複数設けることで構成するとともに、前記バッフル部によって流動方向を変換された被処理水は、前記複数の筒体に順次に送られる構成とすることができる。
薬筒を複数本設定とすることで、各薬筒の被処理水に対する消毒薬の溶解量を適宜にコントロールすることが可能となり、消毒処理のきめ細かなコントロールが可能となる。
なお複数の筒体は、典型的には同形のものを複数用いる態様が該当するが、収容される消毒薬の収容量が筒体毎に異なるような態様も採用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理水を消毒処理した上で放流する構成を有する水処理装置において、消毒槽への被処理水の積極供給を行うための具体化技術が提供されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の概要を示す模式的平面図である。
図2図1のA-A線断面であって、水処理装置の概要を示す模式的正面図である。
図3】水処理装置における被処理水の処理フローを示す図である。
図4】本実施形態に係る水処理装置の消毒槽の構成を示す模式的正面図である。
図5】本実施形態に係る消毒槽の構成を示す模式的斜視図である。
図6】消毒槽に用いられる薬筒の構成を示す正面図である。
図7】第2エアリフトポンプによる被処理水移送の詳細を示す模式図である。
図8】消毒槽における被処理水の流動状態を示す模式的平面図である。
図9】消毒槽における被処理水の流動状態を示す模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る水処理装置の構成を図1図9を参照して説明する。
なお本発明の実施形態は、一般家庭、集合住宅等から排出される原水(「排水」ないし「被処理水」ともいう)を水処理領域に受け入れて処理する水処理装置について説明するものである。
【0018】
(水処理装置100の全体構成)
図1は水処理装置100の平面視、図2は水処理装置100の正面視である(図1のA―A線断面)。
水処埋装置100は、当該水処埋装置100の躯体(外郭)を構成する槽状の処理槽本体101を有する。
図1および図2に示すように、処理槽本体101は、平面視で略矩形状に形成され、互いに平行な側壁101a,101bと、互いに平行な側壁101c,101dと、底壁101eおよび上壁101fによって構成される。
本実施形態に係る水処埋装置100は、屎尿と併せて生活雑排水(生活系の汚水)を処理する構成の水処理装置が採用されている
【0019】
処理槽本体101には、流入管102および流出管103が接続される。
流入管102は、被処理水(原水)を処理槽本体101の内部空間に導入するための開口部分として構成される。
流出管103は、処理後の水を処理槽本体101の内部空間から導出するための開口部分として構成される。
また処理槽本体101はマンホール部104を有する。マンホール部104は、入槽用、内部点検用、清掃用のマンホールが形成された部位として構成される。
【0020】
(水処理装置100における各部材・方向に関する定義)
処理槽本体101のうちのマンホール部104側(上壁101f側)が槽上方または槽上部と定義され、その反対側(底壁101e側)が槽下方、槽下部または槽底部と定義される。
また、処理槽本体101のうちの流入管102側(側壁101c側)が上流側と規定され、また流出管103側(側壁101d側)が下流側と規定される。
また、図2において、マンホール部104の延在面に沿った方向が、水平方向(槽前後方向とも称呼する)と規定され、水平方向と交差する方向が、鉛直方向(槽上下方向とも称す)と規定される。
また、図2の紙面に垂直な方向(槽前後方向と槽上下方向にそれぞれ直交する方向、図1における上下方向)が、槽左右方向と規定される。なお、図面中における矢印は、被処理水の流れを示している。
【0021】
(各処理槽について)
図1図2に示すように、処理槽本体101の内部空間には、流入管102を通じて受け入れた原水を貯留しつつ所定の水処理がなされる水処理領域が形成されている。
この水処理領域には、沈殿分離槽120、嫌気処理槽140、好気処理槽150、処理水槽160および消毒槽170がそれぞれ形成されている。
【0022】
図1図2に示すように、流入管102を通じて処理槽本体101(流入バッフル110)に流入した排水は、沈殿分離槽120、嫌気処理槽140、好気処理槽150、処理水槽160および消毒槽170において順次処埋され、処理後の水は流出管103を通じて処理槽本体101の外部へと流出される。
また被処理水は、処理水槽160から(後述する第1エアリフトポンプ191を介して)流入バッフル110へと一部が返送されて、水処理装置100内を被処理水が循環するように構成されている。
水処理装置100は、処理槽本体101外へと流出した水をそのまま放流する浄化槽として構成されてもよいし、或いは処理槽本体101外へと流出した水をトイレや散水用の水として再利用する水再利用装置として構成されてもよい。
【0023】
流入バッフル110は、水処理領域のうちの最上流領域を構成している。流入管102から流入バッフル110に流入した排水は、沈殿分離槽120に移流される。沈殿分離槽120に流入した被処理水は固液分離処理され、被処理水から分離された固形成分は沈殿汚泥として沈殿分離槽120の底部に堆積される。流入バッフル110に排水が流入することで、排水が間接的に沈殿分離槽120に流入され、沈殿分離槽120おける沈殿した汚泥等の撹拌が抑制される。
本実施形態における流入バッフル110を有する沈殿分離槽120は、本発明における「流入槽」に対応する実施構成例に対応する。
【0024】
図1図2に示すように、沈殿分離槽120とその下流側の嫌気処理槽140の間には槽上下方向に延在する隔壁105が設けられている。この隔壁105は、側壁101a,101bおよび底壁101eに取り付けられる。隔壁105における上方領域には、沈殿分離槽120と嫌気処理槽140を連通する開口部105aおよび移流バッフル107が設けられている。この移流バッフル107はアウトフローバッフルとも称呼される。
沈殿分離槽120内の被処理水は、開口部105aおよび移流バッフル107を通じて、下流側の嫌気処理槽140に移送される。
本実施形態における嫌気処理槽140は、本発明における「嫌気処理槽」に対応する実施構成例に対応する。
【0025】
嫌気処理槽140における、上下方向の中間領域には、有機汚濁物質を嫌気処理する嫌気性微生物が付着する所定量の嫌気濾材が充填された嫌気濾床141が処理槽本体101に支持されるように設けられている。嫌気濾材としては、平板状の濾材や骨格様球状の濾材を好適に用いることができる。この嫌気濾床141では、被処理水が嫌気処理および濾過処理され、これによりBOD(生物化学的酸素要求量)の低減とSS(懸濁物質)の除去が行なわれる。
【0026】
図1図2に示すように、嫌気処理槽140とその下流側の好気処理槽150の間には槽上下方向に延在する隔壁106が設けられている。この隔壁106には、移流バッフル108、および嫌気処理槽140と好気処理槽150を連通する開口部106aが設けられている。
嫌気処理槽140内の被処理水は、移流バッフル108および開口部106aを通じて、下流側の好気処理槽150に移送される。
移流バッフル108および開口部106aは、処理槽本体101の上方側に設けられており、嫌気処理槽140の被処理水は、好気処理槽150へと上方側から移流されることとなる。
なお、図2においては、処理槽本体101内の被処理水の水位WLが、ちょうど移流バッフル108と等位となっており、嫌気処理を受けた被処理水が、嫌気処理槽140から好気処理槽150へ移流可能とされた状態が示されている。
【0027】
図1に示すように、隔壁106の下流側には、槽左右方向に関する左右領域に好気処理槽150が配置され、中央領域に処理水槽160が配置されている。なお図示を省略するものの、好気処理槽150は、処理槽本体101内において、処理水槽160を挟んで左側領域と右側領域が下部領域で連通するように形成される。そして、当該好気処理槽150の下部領域は、処理水槽160に連通している。
【0028】
好気処理槽150内には、被処理水中の有機汚濁物質を好気分解(好気処理)する好気性微生物が付着する好気濾床部151が設けられている。好気濾床部151は、網状ブロック体濾床151aおよび網状粒体濾床151bを有する。網状ブロック体濾床151aは、網状粒体濾床151bの上方の領域に配置される。
【0029】
網状ブロック体濾床151aは、網状かつブロック状の(単一の)濾材によって構成されている。具体的には、ブロック状の濾材は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなる線材が立体的に絡まる網状体であり、ブロック状に一体成形されている。なお網状ブロック体濾床151aは、下方側の網状粒体濾床151bにおける複数の濾材が流出を防止する蓋の機能を有する。網状ブロック体濾床151aは、処理槽本体101に支持されたネットや板状部材等の保持部材によって保持されている。なお、網状ブロック体濾床151aの好気濾材は、一体に成形された濾材であれば、板状等の他の形状に成形されていてもよい。
【0030】
網状粒体濾床151bは、複数の網様ロール状の濾材が所定の領域に充填されることで構成されている。具体的には、網様ロール状の濾材は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなる線材が立体的に絡まる網状体であり、直径約100mm、長さ約100mmの円筒形に成形されている。なお、網状粒体濾床151bの濾材は、網状体、球状体、板状体の濾材や、多孔質材料で成形された濾材を用いてもよい
【0031】
好気処理槽150の下方領域、すなわち網状粒体濾床151bの下部領域には、散気装置152が設けられている。散気装置152から供給される空気(酸素)は、網状粒体濾床151b、網状ブロック体濾床151aへと順次に供給される。これにより、好気処理槽150内の被処理水は、散気装置152から供給される空気を介して好気処理される。好気処理された被処理水は、好気処理槽150の下部領域から処理水槽160へと移動する。
なお散気装置152と同高さ位置には、好気処理槽150の下端領域を保持する保持フレーム153が設けられている。
【0032】
図1図2に示すように、処理水槽160には、第1エアリフトポンプ191が設けられている。第1エアリフトポンプ191の吸入部は、処理水槽160の下部領域に設けられる。第1エアリフトポンプ191を介して、好気処理槽150から処理水槽160に移送される被処理水の一部は、処理水槽160内へと移流する領域において吸入部から取り込まれ、返送路191aを経由して、流入バッフル110に返送される。これにより、水処理装置100内の被処理水は、流入バッフル110、沈殿分離槽120、嫌気処理槽140および好気処理槽150を循環する構成とされる。この点に鑑みて、第1エアリフトポンプ191は「循環用ポンプ」と称呼することができる。
【0033】
図1および図2に示すように、処理水槽160内の上方領域には、区画壁171によって区画された消毒槽170が設けられている。当該区画壁171は、消毒槽構成壁として定義される。
また処理水槽160には、処理水槽160内の被処理水を消毒槽170に移送し、消毒処理を経て外部に放流するための第2エアリフトポンプ192が設けられている。この点に鑑み、第2エアリフトポンプ192は「放流用ポンプ」と称呼することができる。
第2エアリフトポンプ192は、図5に示すように、U字に曲折された管状のポンプ本体193と、処理水槽160内の被処理水を吸入する吸入部194,被処理水を消毒槽170に吐出する吐出部195を主体として構成される。
【0034】
散気装置152、第1エアリフトポンプ191、第2エアリフトポンプ192、返送路191aは、いずれも樹脂パイプ材を主体として連接一体状に処理槽本体101内に配置される。
なお第1エアリフトポンプ191,第2エアリフトポンプ192、散気装置152は、便宜上図示は省略するものの、所定の空気供給装置に接続されており、エアバルブの開閉操作を介して、空気の供給および遮断が切り替えられる。なお当該エアバルブは、コントローラ(図示省略)あるいは手動によって制御される。
【0035】
図3に、本実施形態に係る各処理槽の処理ルーチンがブロック図として示される。具体的には、水処理装置100において、被処理水は、流入管102より処理槽本体101内に流入し、流入バッフル110、沈殿分離槽120、嫌気処理槽140、好気処理槽150,処理水槽160、消毒槽170において、それぞれ所定の処理を受け、流出管103より外部に放流される。また好気処理槽150において好気処理された被処理水の一部は、第1エアリフトポンプ191によって処理水槽160から流入バッフル110に返送されて、再度の処理を受ける。これにより、BOD(生物化学的酸素要求量)の更なる低減、SS(懸濁物質)の更なる除去が遂行される。
【0036】
また処理水槽160に貯留された被処理水は、第2エアリフトポンプ192によって、消毒槽170へと積極的に移流され、消毒処理を受けた後、流出管103より外部に放流される。
第2エアリフトポンプ192による「積極的移送」とは、水位に応じて被処理水が消毒槽170へ自然移流される状態に対し、水位の高低に依存することなく、流体機械を用いて被処理水に運動エネルギーを付与して移流させる態様をいう。
【0037】
(消毒槽170について)
次に、本実施形態における特徴点の一つである消毒槽170の構造について、図4図9を参照しつつ詳しく説明する。
消毒槽170は、上記の通り、処理水槽160の上方領域に配置され、第2エアリフトポンプ192を介し移送された被処理水に対し消毒処理を施して水処理装置100の外部に放流するための処理槽である。
消毒槽170の詳細な構成が図4図5に示される。なお各図においては、処理水槽160の上方領域に消毒槽170が配置される関係で、消毒槽のみの構成を図示する場合、処理水槽160については、便宜上、紙面上の空間領域に符号を付して示すこととする。
消毒槽170は区画壁(消毒槽構成壁)171によって区画形成されており、概括的にみて、薬筒配置部172および被処理水滞留部174が連接一体状に構成される。
【0038】
薬筒配置部172は、上部が開口した凹状部172aを有し、当該凹状部172aに薬筒180が載置される。薬筒180は、同種の筒体が3本隣接状に配置されている(第1の薬筒180a、第2の薬筒180b、第3の薬筒180c)。換言すれば、本実施形態では、3本の同種の薬筒180が用いられていることになる。薬筒配置部172には、第2エアリフトポンプ192が隣接配置されるように構成されている。凹状部172aには、当該第2エアリフトポンプ192を介して、被処理水が流入可能とされるとともに、凹状部172aに流入した被処理水が薬筒180の下端部に接触可能とされる。
【0039】
被処理水滞留部174は、凹状部172aよりも上下方向に深い凹状空間として形成されるとともに、当該凹状空間には消毒処理が行われた後の被処理水が滞留可能にされる。また被処理水滞留部174の上部領域には放流開口部175が形成されており、被処理水滞留部174における被処理水の水位が当該放流開口部175に達した場合に、当該被処理水滞留部174内の被処理水が、放流開口部175を通じて消毒槽170外に流出可能とされる。
放流開口部175は、図1図2に示す流出管103に連通されており、被処理水が水処理装置100外部へと放流される。
なお、消毒槽170の下流には、更に別の槽、例えば放流用のポンプが設置された放流ポンプ槽などを設けることも可能である。
【0040】
薬筒配置部172と被処理水滞留部174の間には、曲折板状のバッフル部173が設けられている。このバッフル部173により、薬筒配置部172の凹状部172aに流入した被処理水は、直ちに被処理水滞留部174に移動することが規制され、凹状部172aに暫時滞留して薬筒180への接触時間が確保されるように構成されている。
なおバッフル部173には、消毒槽170を平面視で図示した図8に示すように、連通開口部173aが形成されており、この連通開口部173aを介して、十分に消毒処理された被処理水が、被処理水滞留部174へと移動する構成とされている。
【0041】
図6に、薬筒180の詳細構成が、正面図として示される。
薬筒180は長尺円筒状の中空体として形成され、薬筒本体部181、溶解量調整部182,消毒薬露出部184を有する。
薬筒本体部181は、中空状の内部空間に消毒薬183を収容可能に構成されている。消毒薬183は、本実施形態では複数個の次亜塩素酸ソーダのタブレット(薬剤)が順次積層されて構成されており(本実施形態では直径80ミリメートル、高さ30ミリメートルの円筒状タブレット薬剤が最大12個充填可能とされる)、消毒薬183のうち、最下部のタブレットが、消毒薬露出部184から外部に臨む状態に置かれ、被処理水との接触が許容される。
消毒薬露出部184の外部への露出面積は、溶解量調整部182を操作することで任意に調整可能である。具体的には、溶解量調整部182を薬筒180の長軸方向周りに回転操作することにより、消毒薬露出部184の開口面積が変更される。消毒薬露出部184の開口面積が増大すれば、被処理水への露出面積が増大することで、消毒薬の溶解が促進される。一方、消毒薬露出部184の開口面積が減少すれば、被処理水への露出面積が減少することで、消毒薬の溶解が規制される。
【0042】
図7に、第2エアリフトポンプ192によって被処理水が処理水槽160から消毒槽170へと移送される状態が、正面図として模式的に示される。
なお上述の通り、被処理水の流れにつき、図面では矢印で示している。
第2エアリフトポンプ192の吸入部194は、処理水槽160内において、消毒槽170の底部と略等位に位置する。一方、吐出部195は、吸入部194よりも所定量だけ上方に位置し、その高低差が揚程とされる。
【0043】
また図8に、被処理水が、第2エアリフトポンプ192によって処理水槽160から消毒槽170へと移送され、そして消毒槽170内を流動する状態が、平面図として模式的に示される。図7と同様に、被処理水の流れにつき、図面では矢印で示している。
第2エアリフトポンプ192の吐出部195から消毒槽170へ送られた被処理水は、凹状部172aにおいて、区画壁171の内壁面に当接し、当該内壁面によって流動方向が変換された上で、当該凹状部172a内の薬筒180へと向かう。
換言すれば、消毒槽170における被処理水は、第2エアリフトポンプ192の吐出部195から区画壁171へと向かう第1方向から、区画壁171で反射し、区画壁171から薬筒180へと向かう(第1方向とは異なる)第2方向へと変換される構成が採用されている。
【0044】
本実施形態では、区画壁171における、被処理水の流動方向を変換する領域は、消毒槽170を形成するとともに、被処理水流動方向変換機構としてのバッフル部171a(バッフルプレートないしバッフル壁)の機能を兼務することになる。
すなわち、当該区画壁171によるバッフル部171aは、消毒槽170の構成要素部材であるとともに、本発明における「バッフル部」に対応する要素部材である。
なお本実施形態では、消毒槽170の区画壁171、すなわち槽壁を、被処理水の方向変換に利用しているが、区画壁171とは別にバッフル部材を設定することもできる。
その場合、平面状のバッフルプレート、湾曲状のバッフルプレート等、あるいはそれらの組合わせが適宜に採用可能である。
【0045】
被処理水の流動方向が第1方向から第2方向へと変換されることで、被処理水は、流動速度が減少した状態(水勢が減じられた状態)で薬筒180に至ることになる。従って、図6に示す薬筒180の消毒薬露出部184に接触する際の被処理水の流動速度は、第2エアリフトポンプ192の吐出部195から(方向変換せずに)直接的に薬筒180に流動するような場合に比べて、相対的に著しく減速された状態とされる。
【0046】
この結果、被処理水は、消毒薬183に対し相対的に「緩やかに」接触することとなり、結果として、消毒薬183の溶解速度が不必要に速まることが抑制され、消毒薬183の消費コントロールが最適化されることとなる。
なお、上記消費コントロールの見地より、被処理水を十分に減速するために、第1方向から第2方向への方向変換については、90度以上であることが好ましい。例えば本実施形態では、図8に示すように、図中左方向へ吐出された被処理水が、バッフル部171a(すなわち区画壁171)に当接し、90度以上の角度で方向変換されて大きく減速され、図中右上方向へと緩やかに流動して薬筒180に至る状態とされている。
換言すれば、本実施形態では、図中左方向を第1方向として設定し、図中右上方向を第2方向として設定されている。
【0047】
また図8に示されるように、消毒槽170内において第1方向から第2方向へと流動方向が変換された被処理水は、方向変換位置の関係で、複数の薬筒180のうち、第1の薬筒180a(図中左側)、第2の薬筒180b(図中の中央)、第3の薬筒180c(図中右側)と、(時間的ないし流量的に)順次に接触していくことになる。このため、薬筒180のそれぞれにおける消毒薬183の溶解速度を適宜に調整し、複数の薬筒180全体における消毒薬183の消費コントロールをきめ細かく調整することが可能とされる。
例えば、方向転換位置に最も近接する第1の薬筒180aにおいては、溶解速度を相対的に低くし(消毒薬露出部184の開口面積を相対的に小さく設定)、方向転換位置から最も離間する第3の薬筒180cにおいては、被処理水の流動距離が長くなる分、水流がさらに遅くなると想定されるので、第1の薬筒180aよりも溶解速度を相対的に高く設定し(消毒薬露出部184の開口面積を相対的に大きく設定)し、第2の薬筒180bは、両者の中間レベルに設定する等の調整が可能である。
【0048】
図9に示すように、薬筒180を介して消毒処理が施された被処理水は、消毒槽170内において、バッフル部173を経由して、被処理水滞留部174に移動する。そして被処理水滞留部174において放流開口部175の水位に達することで、当該放流開口部175から消毒槽170外部に流出し、図1図2に示す流出管103を経て水処理装置100外部に放流される。
【0049】
本実施形態では、第2エアリフトポンプ192を用いて、上流側の処理槽である処理水槽160から消毒槽170へと積極的に被処理水を移送する構成が採用された水処理装置100において、当該積極移送に起因して想定される問題点、すなわち、消毒槽170への被処理水の移流速度が速すぎてしまい、消毒薬の溶解速度が不必要に速まる懸念に対し、被処理水の流動方向を変換して減速した上で、薬筒180に接触させる構成を採用し、かかる懸念を払拭することが可能とされる。
とりわけ水処理装置100は、定期的な維持管理点検を受けるものの、次の点検時期に至るまでは、そのまま放置されるのが常態であり、消毒薬の消費が想定以上に早くなってしまうことは極力回避されるべきである。本実施形態では、このような不具合を未然に防止することができ、環境負荷低減の観点において有益である。
しかも本実施形態に係る水処理装置100では、被処理水の流動方向変換機構として、消毒槽170を構成する区画壁171自体を利用するため、方向転換用の専用部材を準備する必要がなく、部材構成の合理化の観点でも優れた構成が得られる。
【0050】
さらに、単に被処理水の流速を減少させるだけならば、例えば、被処理水の流路上に越流壁を設ける等の手段もあり得るが、この場合、被処理水の流動方向において、越流前および越流後と、それぞれ所定長さの独立した流路を確保する必要があり、空間効率の観点で無駄が多い。本実施形態では、被処理水の流動方向の変換(特に90度以上の方向変換)を介して被処理水の流速を減少させる構成を採用することにより、消毒槽170における省スペース性も確保している。
【0051】
なお本実施形態に係る水処理装置100は、排水をその取扱い対象とするものであり、例えば、消毒槽170内の被処理水の一部に淀みが生じ、部分的に流動が停滞するような場合であっても、全体的に視て、被処理水の流動方向が、巨視的にバッフル部171aによって第1方向から第2方向に変換されれば、その効果を十分に奏することができる。
【0052】
本実施形態に係る水処理装置100により、消毒槽170への被処理水の積極供給を行う場合に、トレードオフとして発生する弊害を未然に防止することができ、当該積極供給のための具体化技術が提供されることとなった。
【0053】
なお、上記実施形態においては、水処理装置100にエアリフトポンプを設けていたが、エアリフトポンプ以外の流体機械として、例えば水中ポンプを設置してもよい。この場合、例えば、コントローラが、水位の変動に応じて、水中ポンプによる被処理水の移送量を制御するよう構成してもよい。
【0054】
また上記実施形態に係る水処理装置100は、流入バッフル110、沈殿分離槽120、清掃孔130、嫌気処理槽140、好気処理槽150、処理水槽160および消毒槽170の各処理要素を有したが、処理要素の数や種類に関しては必要に応じて種々選択が可能である。
【0055】
また上記実施形態では、一般家庭、集合住宅等から排出される原水を処理する水処理装置100を一例として説明したが、本発明は、一般家庭、集合住宅以外に、商業施設、公共施設、工場等の設備から排出される原水を処理する水処理装置に対しても適用することが可能である。
【0056】
(実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
以上の実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、実施形態の構成に限定されるものではない。なお、実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。
水処理装置100は、本発明の「水処理装置」に対応する構成の一例である。
流入バッフル110は、本発明の「流入槽」に対応する構成の一例である。
沈殿分離槽120は、本発明の「流入槽」に対応する構成の一例である。
嫌気処理槽140は、本発明の「嫌気処理槽」に対応する構成の一例である。
好気処理槽150は、本発明の「好気処理槽」に対応する構成の一例である。
処理水槽160は、本発明の「処理水槽」に対応する構成の一例である。
消毒槽170は、本発明の「消毒槽」に対応する構成の一例である。
バッフル部171aは、本発明の「バッフル部」に対応する構成の一例である。
薬筒180(180a、180b、180c)は、本発明の「薬筒」に対応する構成の一例である。
第2エアリフトポンプ192は、本発明の「被処理水移送ポンプ」に対応する構成の一例である。
【符号の説明】
【0057】
100 水処理装置
101 処理槽本体
101a 側壁
101b 側壁
101c 側壁
101d 側壁
101e 底壁
101f 上壁
102 流入管
103 流出管
104 マンホール部
105 隔壁
105a 開口部
106 隔壁
106a 開口部
107 移流バッフル
108 移流バッフル
110 流入バッフル
120 沈殿分離槽
140 嫌気処理槽
141 嫌気濾床
150 好気処理槽
151 好気濾床部
151a 網状ブロック体濾床
151b 網状粒体濾床
152 散気装置
153 保持フレーム
160 処理水槽
170 消毒槽
171 区画壁(消毒槽構成壁)
171a バッフル部(バッフルプレート、バッフル壁)
172 薬筒配置部
172a 凹状部
173 バッフル部
174 被処理水滞留部
175 放流開口部
180(180a、180b、180c) 薬筒
181 薬筒本体部(消毒薬収容部)
182 溶解量調整部
183 消毒薬(薬剤、タブレット)
184 消毒薬露出部
191 第1エアリフトポンプ(循環用ポンプ)
191a 返送路
192 第2エアリフトポンプ(放流用ポンプ)
193 ポンプ本体
194 吸入部
195 吐出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9