(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067203
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】プラント性能管理方法、プラント性能管理装置、及びプラント性能管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G05B23/02 301Y
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178235
(22)【出願日】2021-10-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】594162308
【氏名又は名称】西日本技術開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】川副 聖規
(72)【発明者】
【氏名】安村 浩平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲平
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA04
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB03
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF24
3C223FF42
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
(57)【要約】
【課題】プラント性能を効率的に管理できるプラント性能管理方法、プラント性能管理装置、及びプラント性能管理プログラムを提供する。
【解決手段】プラント性能管理方法は、運転データのうち少なくとも2項目のデータの関係に基づいてプラント10の性能を評価するステップと、プラント10の性能が異常であると評価した場合に、運転データに基づいて、プラント10の性能を異常にしている要因を解析するステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転データのうち少なくとも2項目のデータの関係に基づいてプラントの性能を評価するステップと、
前記プラントの性能が異常であると評価した場合に、前記運転データに基づいて、前記プラントの性能を異常にしている要因を解析するステップと
を含む、プラント性能管理方法。
【請求項2】
前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータの経時変化に基づいて前記プラントの性能を評価する、請求項1に記載のプラント性能管理方法。
【請求項3】
前記プラントの性能が正常であると評価した場合に、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータが異常であるか評価するステップを更に含む、請求項1又は2に記載のプラント性能管理方法。
【請求項4】
前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち3項目のデータの関係に基づいて前記プラントの性能を評価する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項5】
前記プラントの性能を異常にしている要因を解析するステップにおいて、前記運転データのうち2項目のデータを含む複数のデータセットそれぞれについて、前記運転データが正常であるか上に外れているか下に外れているかを分類し、各データセットの分類結果の組み合わせに基づいて前記プラントの性能を異常にしている要因を解析する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項6】
前記運転データのうち少なくとも一部の項目のデータの組み合わせの関係を表すグラフを表示するステップを更に含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項7】
前記プラントの性能を異常にしている要因の解析結果に基づいて前記プラントで生じる損失を推定するステップを更に含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項8】
前記損失の推定結果に基づいて前記プラントのメンテナンス計画を生成するステップを更に含む、請求項7に記載のプラント性能管理方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法を実行するプラント性能管理装置。
【請求項10】
コンピュータに、請求項1から8までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法を実行させるプラント性能管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラント性能管理方法、プラント性能管理装置、及びプラント性能管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地熱プラントにおいて運転データの相互妥当性を監視することによって性能を管理する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本地熱学会 地熱エネルギーハンドブック刊行委員会編、「地熱エネルギーハンドブック」オーム社、平成26年2月20日、「第5章地熱発電所の運用」(569頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラント性能を効率的に管理することが求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、プラント性能を効率的に管理できるプラント性能管理方法、プラント性能管理装置、及びプラント性能管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係るプラント性能管理方法は、運転データのうち少なくとも2項目のデータの関係に基づいてプラントの性能を評価するステップと、前記プラントの性能が異常であると評価した場合に、前記運転データに基づいて、前記プラントの性能を異常にしている要因を解析するステップとを含む。このようにすることで、プラントの性能が異常であると評価した場合に限って異常要因が解析される。その結果、プラント性能が効率的に管理される。
【0007】
一実施形態に係るプラント性能管理方法の前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータの経時変化に基づいて前記プラントの性能が評価されてよい。このようにすることで、プラントの性能が異常になる予兆が検出され得る。その結果、プラント性能が効率的に管理される。
【0008】
一実施形態に係るプラント性能管理方法は、前記プラントの性能が正常であると評価した場合に、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータが異常であるか評価するステップを更に含んでよい。このようにすることで、運転データの異常が検出された場合に早期にプラントに対する処置が実行される。その結果、プラント性能が効率的に管理される。
【0009】
一実施形態に係るプラント性能管理方法の前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち3項目のデータの関係に基づいて前記プラントの性能が評価されてよい。このようにすることで、評価対象とする項目の組み合わせとプラント性能との相関が高まり得る。その結果、プラント性能の評価精度が高くなる。
【0010】
一実施形態に係るプラント性能管理方法の前記プラントの性能を異常にしている要因を解析するステップにおいて、前記運転データのうち2項目のデータを含む複数のデータセットそれぞれについて、前記運転データが正常であるか上に外れているか下に外れているかが分類されてよい。また、各データセットの分類結果の組み合わせに基づいて前記プラントの性能を異常にしている要因が解析されてよい。このようにすることで、プラントの異常要因が簡易に解析され得る。その結果、異常要因の解析処理の負荷が低減され得る。また、プラントの性能が効率的に管理される。
【0011】
一実施形態に係るプラント性能管理方法は、前記運転データのうち少なくとも一部の項目のデータの組み合わせの関係を表すグラフを表示するステップを更に含んでよい。このようにすることで、プラント性能の評価及び異常要因の解析の処理内容がユーザに対して可視化され得る。その結果、ユーザが安心して評価結果及び解析結果を受け入れられる。
【0012】
一実施形態に係るプラント性能管理方法は、前記プラントの性能を異常にしている要因の解析結果に基づいて前記プラントで生じる損失を推定するステップを更に含んでよい。このようにすることで、プラントのメンテナンスを実施するかが簡便に判断され得る。その結果、プラントの性能が効率的に管理される。
【0013】
一実施形態に係るプラント性能管理方法は、前記損失の推定結果に基づいて前記プラントのメンテナンス計画を生成するステップを更に含んでよい。このようにすることで、発生電力量の最大化が図られる。その結果、プラントの性能が効率的に管理される。
【0014】
幾つかの実施形態に係るプラント性能管理装置は、前記プラント性能管理方法を実行する。このようにすることで、プラントの性能が異常であると評価した場合に限って異常要因が解析される。その結果、プラント性能が効率的に管理される。
【0015】
幾つかの実施形態に係るプラント性能管理プログラムは、コンピュータに前記プラント性能管理方法を実行させる。このようにすることで、プラントの性能が異常であると評価した場合に限って異常要因が解析される。その結果、プラント性能が効率的に管理される。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、プラント性能を効率的に管理できるプラント性能管理方法、プラント性能管理装置、及びプラント性能管理プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】比較例に係るプラント性能管理方法を示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態に係るプラント管理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係るプラント性能管理方法を示すフローチャートである。
【
図4】プラント性能を評価するために用いられる2項目のデータの関係の一例を表すグラフである。
【
図5】プラント性能を評価するために用いられる3項目のデータの関係の一例を表すグラフである。
【
図6】復水器性能の低下に起因してプラント性能が低下していると解析される場合に用いられる2項目のデータの複数の関係の一例を表すグラフである。
【
図7】復水器圧力を測定する圧力計が異常であると解析される場合に用いられる2項目のデータの複数の関係の一例を表すグラフである。
【
図8】復水器性能及び冷却塔性能の低下に起因してプラント性能が低下していると解析される場合に用いられる2項目のデータの複数の関係の一例を表すグラフである。
【
図9】復水器と冷却塔との間の循環水量の低下に起因してプラント性能が低下していると解析される場合に用いられる2項目のデータの複数の関係の一例を表すグラフである。
【
図10】運転データの経時変化に基づいて将来の期間の運転データが正常範囲外にプロットされると推定される場合を例示するグラフである。
【
図11】運転データの複数の項目のうち2項目のデータを含む4つのデータセットの例を示すグラフである。
【
図12】各データセットの分類結果の組み合わせにプラントの状態を対応づけた表の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の一実施形態に係るプラント性能管理システム100(
図2参照)は、地熱発電所等のプラント10(
図2参照)の性能を管理する。以下、プラント10の性能を管理するプラント性能管理システム100の実施形態が、比較例に係るシステムと対比しながら説明される。
【0019】
(比較例)
比較例に係るシステムは、
図1に示される手順例を含むプラント性能管理方法を実行することによってプラント10の性能を管理する。比較例に係るシステムは、プラント10から運転データを取得する(ステップS91)。運転データは、大気湿球温度と、復水器50の冷却水温度と、復水器50の真空度と、発電機40による発電出力とを含む。比較例に係るシステムは、大気湿球温度と復水器50の冷却水温度との関係に基づいて冷却塔60の性能を評価する(ステップS92)。比較例に係るシステムは、復水器50の冷却水温度と復水器50の真空度との関係に基づいて復水器50の性能を評価する(ステップS93)。比較例に係るシステムは、復水器50の真空度と発電出力の変化との関係に基づいてタービン30と発電機40の性能を評価する(ステップS94)。比較例に係るシステムは、ステップS92からS94までの手順で取得したプラント10の性能の評価結果に基づいてプラント10の性能を異常にしている要因を解析する(ステップS95)。
【0020】
以上述べたように、比較例に係るシステムは、運転データの各項目の複数の組み合わせに基づいてプラント10の性能を評価し、その評価結果に基づいてプラント10の性能を異常にしている要因を解析する。ここで、複数の組み合わせに基づいてプラント10の性能を評価する場合、必要な手順が多い。その結果、評価のための負荷が多くなり得る。つまり、プラント10の性能を管理する作業の効率性が低下し得る。
【0021】
そこで、本開示において、プラント10の性能を効率的に管理できるプラント性能管理システム100が説明される。
【0022】
(本開示の一実施形態)
図2に示されるように、本開示の一実施形態に係るプラント性能管理システム100は、プラント10と、管理装置110とを備える。管理装置110は、プラント性能管理装置とも称される。
【0023】
本実施形態において、プラント10は、地熱貯留層200から気水分離器20を経由して供給される蒸気を用いて発電する地熱発電所として構成されるとする。プラント10は、気水分離器20と、タービン30と、発電機40と、復水器50と、冷却塔60と、湿球温度計70とを備える。プラント10は、地熱発電所に限られず、地熱バイナリ発電又は火力プラント等の他の施設として構成されてもよい。
【0024】
管理装置110は、検出部112と、出力部114とを備える。検出部112は、プラント10の運転データを取得する。プラント10の運転データは、例えば発電機40の出力、復水器50の入口における冷却水の温度、復水器50の真空度、又は、湿球温度計70で測定した大気湿球温度等を含む。プラント10の運転データは、これらに限られず、冷却塔60の出口における冷却水の温度、又は、復水器50と冷却塔60との間の冷却水の循環水量等の種々のデータを含んでもよい。管理装置110は、プラント10と通信可能に構成される通信モジュールを更に備えてよい。通信モジュールは、プラント10と有線又は無線で通信可能に接続されてよい。
【0025】
検出部112は、プラント10の運転データに基づいてプラント10の性能を評価し、プラント10の性能を異常にしている要因を解析する。検出部112は、性能の評価結果又は異常要因の解析結果を出力部114で出力してよい。
【0026】
検出部112は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成されてよい。検出部112は、プロセッサに所定のプログラムを実行させることによって所定の機能を実現してもよい。検出部112は、記憶部を備えてもよい。記憶部は、検出部112の動作に用いられる各種情報、又は、検出部112の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部は、検出部112のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部は、検出部112に含まれてもよいし、検出部112と別体として構成されてもよい。
【0027】
出力部114は、検出部112から取得した情報を出力する。出力部114は、直接又は外部装置等を介して、文字、図形、又は画像等の視覚情報を出力することによってユーザに情報を通知してよい。出力部114は、表示デバイスを備えてもよいし、表示デバイスと有線又は無線で接続されてもよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。出力部114は、直接又は外部装置等を介して、音声等の聴覚情報を出力することによってユーザに情報を通知してもよい。出力部114は、スピーカ等の音声出力デバイスを備えてもよいし、音声出力デバイスと有線又は無線で接続されてもよい。出力部114は、視覚情報又は聴覚情報だけでなく、直接又は外部装置等を介して、ユーザが他の感覚で知覚できる情報を出力することによってユーザに情報を通知してもよい。
【0028】
(プラント性能管理方法のフローチャートの一例)
管理装置110の検出部112は、
図3に例示されるフローチャートの手順を含むプラント性能管理方法を実行してもよい。プラント性能管理方法は、検出部112等のプロセッサに実行させるプラント性能管理プログラムとして実現されてもよい。プラント性能管理プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。プラント性能管理プログラムは、プラント性能管理プログラムを実行するコンピュータを管理装置110として機能させることができる。
【0029】
検出部112は、運転データを取得する(ステップS1)。
【0030】
検出部112は、運転データの項目のうち少なくとも2項目の関係に基づいてプラント10の性能を評価する(ステップS2)。
【0031】
検出部112は、例えば
図4に2次元のグラフとして示されるように、大気湿球温度(WBT:Wet Bulb Temperature)とSSC(Specific Steam Consumption)との関係に基づいてプラント10の性能が正常であるか異常であるかを評価してよい。
図4のグラフにおいて、縦軸は、SSCに対応する。横軸は、WBTに対応する。
【0032】
図4のグラフに、ある時点においてプラント10で得られるWBT及びSSCのデータがプロットされている。プラント10の性能が正常である場合にデータがプロットされる2次元の領域の境界A_2Dが一点鎖線で示されている。プラント10の性能が正常である場合にデータがプロットされる領域は、正常領域とも称される。データをプロットした点が白抜き円で示されるように正常領域内に位置する場合、プラント10の性能が正常であると評価される。データをプロットした点が白抜き三角形で示されるように正常領域外に位置する場合、プラント10の性能が異常であると評価される。
【0033】
検出部112は、例えば
図5に3次元のグラフとして示されるように、蒸気流量とWBTと発電出力との関係に基づいてプラント10の性能が正常であるか異常であるかを評価してよい。言い換えれば、検出部112は、運転データのうち3項目のデータの関係に基づいてプラント10の性能を評価してよい。
図5のグラフにおいて、3次元のグラフの高さ方向の軸は、発電出力に対応する。3次元のグラフの平面に対応する2本の軸は、それぞれ蒸気流量と大気湿球温度とに対応する。
【0034】
図5のグラフに、ある時点においてプラント10で得られる蒸気流量と大気湿球温度と発電出力とのデータがプロットされている。プラント10の性能が正常である場合にデータがプロットされる3次元の領域の境界A_3Dが一点鎖線で示されている。データをプロットした点が白抜き円で示されるように正常領域内に位置する場合、プラント10の性能が正常であると評価される。データをプロットした点が白抜き三角形で示されるように正常領域外に位置する場合、プラント10の性能が異常であると評価される。
【0035】
検出部112は、復水器真空度と蒸気流量と発電出力との関係に基づいてプラント10の性能が正常であるか異常であるかを評価してもよい。
【0036】
プラント10の性能を評価するために用いられる運転データの項目数が増えることによって、評価対象とする項目の組み合わせとプラント10の性能との相関が高まり得る。その結果、プラント10の性能の評価精度が高まり得る。
【0037】
図3のフローチャートに戻って、検出部112は、プラント10の性能が異常であるか判定する(ステップS3)。検出部112は、プラント10の性能が異常である場合(ステップS3:YES)、2項目の関係を表す複数のグラフに基づいて異常の要因を解析する(ステップS4)。例えば、検出部112は、WBTとSSCとの関係と、WBTと復水器50に入る冷却水温度との関係と、復水器圧力と復水器50に入る冷却水温度との関係と、復水器圧力と発電出力との関係とに基づいて異常の要因を解析してよい。
【0038】
検出部112は、
図6に例示されるように、それぞれの関係を表すグラフを用いて異常の要因を解析してよい。
図6の左上のグラフは、WBT(横軸)とSSC(縦軸)との関係を表す。
図6の左下のグラフは、WBT(横軸)と冷却水温度(縦軸)との関係を表す。
図6の右下のグラフは、復水器圧力(横軸)と冷却水温度(縦軸)との関係を表す。
図6の右上のグラフは、復水器圧力(横軸)と発電出力(縦軸)との関係を表す。
【0039】
図6の各グラフに描かれている実線は、プラント10の性能が正常である場合のデータがプロットされる領域を近似した曲線を表している。つまり、
図6において、正常領域は、曲線で近似して表されているが、実際には線状に限られない。以下、性能が正常であるプラント10から取得される運転データのうち2項目のデータをグラフ上にプロットした場合、プロットした点は正常領域の近似曲線の上に位置するとして異常要因の解析手法が説明される。
【0040】
図6の左上のWBTとSSCとの関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。具体的に、白抜き円でプロットされた点におけるSSCの値は、プラント10の性能が正常である場合において同じWBTの値に対応するSSCの値(実線と破線とが交差する点の値)よりも大きい。検出部112は、左上のグラフに基づいて、プラント10の性能が低下していると評価する。
【0041】
左上のグラフにおいて、近似曲線と垂直の破線とが交差する点から縦軸に対して一点鎖線の垂線が下ろされている。一点鎖線と縦軸との交点で表されるSSCの値は、正常状態のSSCの値に対応する。白抜き円がプロットされた点から縦軸に対して下された垂線(水平方向の破線)で表される実際のSSCの値は、正常状態のSSCの値より大きい。
【0042】
検出部112は、左上のグラフに基づくプラント10の性能の評価を、
図3のステップS3の手順として実行する。検出部112は、以下、
図3のステップS4の異常の要因の解析に対応する手順を実行する。
【0043】
図6の左下のWBTと冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線上にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。検出部112は、WBTと冷却水温度との関係に基づいて、冷却水温度が正常であると評価する。
【0044】
図6の右下の復水器圧力と冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。具体的に、白抜き円でプロットされた点における復水器圧力の値は、プラント10の性能が正常である場合において同じ冷却水温度の値に対応する復水器圧力の値(近似曲線と水平の破線とが交差する点の値)よりも大きい。検出部112は、右下のグラフに基づいて復水器圧力が異常であると評価する。
【0045】
図6の右上の復水器圧力と発電出力との関係を表すグラフにおいて、近似曲線上にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。検出部112は、復水器圧力と発電出力との関係に基づいて、タービン性能が正常であると評価する。
【0046】
図6の右下のグラフと右上のグラフとは、復水器圧力を表す共通の横軸を有する。右下のグラフにおいて、近似曲線と水平の破線とが交差する点における復水器圧力の値は正常状態の復水器圧力の値に対応する。右下のグラフと右上のグラフとで共通する、正常状態の復水器圧力の値は、垂直の一点鎖線と復水器圧力を表す横軸との交点として表される。右上のグラフにおいて、近似曲線と垂直の一点鎖線とが交差する点における発電出力の値は、正常状態の発電出力の値に対応する。
図6の右上のグラフにおいて、実際の発電出力の値は、正常状態の発電出力の値よりも小さい。
【0047】
以上述べてきたように、検出部112は、ステップS4の手順において、2項目のデータの関係に基づいてプラント10の性能が異常になる要因を解析できる。検出部112は、ステップS4の手順の実行後、
図3のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0048】
図3のフローチャートに戻って、検出部112は、プラント10の性能が異常でない場合(ステップS3:NO)、つまりプラント10の性能が正常である場合、運転データの各項目を評価する(ステップS5)。言い換えれば、検出部112は、運転データのうち少なくとも1項目のデータが異常であるか評価する。例えば、検出部112は、運転データの各項目を測定する測定装置又はセンサにおいて測定値が正常であるか評価してよい。このようにすることで、運転データの異常が早期に検出された場合にプラント10の性能が異常になる前にプラント10に対する処置が実行され得る。その結果、プラント性能が効率的に管理される。検出部112は、ステップS5の手順の実行後、
図3のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0049】
以上述べてきたように、本実施形態に係るプラント性能管理システム100において、管理装置110の検出部112は、プラント10の性能が正常であるか異常であるかを運転データのうち少なくとも2項目のデータの1つの組み合わせの関係に基づいて評価する。検出部112は、評価結果に基づいて異常要因を解析する。データの1つの組み合わせの関係に基づく評価によって、プラント10の性能が簡便に評価され得る。また、プラント10の性能が異常であると評価された場合に異常要因を解析することによって、運転データを評価する毎に異常要因を解析する場合よりも、異常要因の解析処理の負荷が低減され得る。その結果、プラント10の性能が効率的に管理され得る。
【0050】
(他の実施形態)
<異常要因の解析例>
図3のステップS4の手順における異常要因の解析の他の例が
図7、
図8及び
図9を参照して説明される。
【0051】
<<プラント10の性能が正常、かつ、1つの項目が異常である場合>>
図7の左上のWBTとSSCとの関係を表すグラフにおいて、近似曲線上にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。この場合、検出部112は、左上のグラフに基づいて、プラント10の性能が正常であると評価する。検出部112は、左上のグラフに基づくプラント10の性能の評価を、
図3のステップS3の手順として実行する。検出部112は、プラント10の性能が正常であると評価した場合、以下、
図3のステップS5の運転データの各項目の評価に対応する手順を実行する。
【0052】
図7の左下のWBTと冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線上にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。この場合、検出部112は、WBTと冷却水温度との関係に基づいて、冷却水温度が正常であると評価する。
【0053】
図7の右下の復水器圧力と冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。具体的に、白抜き円でプロットされた点における復水器圧力の値は、プラント10の性能が正常である場合において同じ冷却水温度の値に対応する復水器圧力の値(近似曲線と水平の破線とが交差する点の値)よりも大きい。この場合、復水器圧力が異常である可能性がある。
【0054】
図7の右上の復水器圧力と発電出力との関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。この場合、タービン性能が異常である可能性がある。
【0055】
ここで、
図7の右下のグラフと右上のグラフとは、復水器圧力を表す共通の横軸を有する。右下のグラフにおいて、近似曲線と水平の破線とが交差する点における復水器圧力の値は、正常状態の復水器圧力の値に対応する。右下のグラフと右上のグラフとで共通する、正常状態の復水器圧力の値は、垂直の一点鎖線と復水器圧力を表す横軸との交点として表される。右上のグラフにおいて、近似曲線と垂直の一点鎖線とが交差する点における発電出力の値は、正常状態の発電出力の値に対応する。
図7の右上のグラフにおいて、実際の発電出力の値は、正常状態の発電出力の値と一致している。この場合、復水器圧力の値だけが正常な値よりも大きい値で測定されている可能性が高い。したがって、検出部112は、復水器50の圧力の測定値が異常であると評価する。
【0056】
<<複数の項目が異常である場合>>
図8の左上のWBTとSSCとの関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。この場合、検出部112は、左上のグラフに基づいて、プラント10の性能が異常であると評価する。検出部112は、左上のグラフに基づくプラント10の性能の評価を、
図3のステップS3の手順として実行する。検出部112は、プラント10の性能が異常であると評価した場合、以下、
図3のステップS4の異常の要因の解析に対応する手順を実行する。
【0057】
左上のグラフにおいて、近似曲線と垂直の破線とが交差する点から縦軸に対して一点鎖線の垂線が下ろされている。一点鎖線と縦軸との交点で表されるSSCの値は、正常状態のSSCの値に対応する。白抜き円がプロットされた点から縦軸に対して下された垂線(水平方向の破線)で表される実際のSSCの値は、正常状態のSSCの値より大きい。
【0058】
図8の左下のWBTと冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。具体的に、白抜き円でプロットされた点における冷却水温度の値は、プラント10の性能が正常である場合において同じWBTの値に対応する冷却水温度の値(近似曲線と垂直の破線とが交差する点の値)よりも大きい。この場合、冷却水温度が異常である可能性がある。つまり、冷却塔性能が異常である可能性がある。
【0059】
図8の右下の復水器圧力と冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。具体的に、白抜き円でプロットされた点における復水器圧力の値は、プラント10の性能が正常である場合において同じ冷却水温度の値に対応する復水器圧力の値(近似曲線と水平の破線とが交差する点の値)よりも大きい。この場合、復水器圧力が異常である可能性がある。
【0060】
図8の右上の復水器圧力と発電出力との関係を表すグラフにおいて、近似曲線上にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。この場合、検出部112は、復水器圧力と発電出力との関係に基づいて、タービン性能が正常であると評価する。
【0061】
ここで、
図8の左下のグラフと右下のグラフとは、冷却水温度を表す共通の縦軸を有する。左下のグラフにおいて、近似曲線と垂直の破線とが交差する点における冷却水温度の値は、正常状態の冷却水温度の値に対応する。左下のグラフと右下のグラフとで共通する、正常状態の冷却水温度の値は、水平の一点鎖線と冷却水温度を表す横軸との交点として表される。右下のグラフにおいて、近似曲線と水平の一点鎖線とが交差する点における復水器圧力の値は、正常状態の復水器圧力の値に対応する。
図8の右下のグラフにおいて、実際の復水器圧力の値は、正常状態の復水器圧力の値よりも大きい。
【0062】
また、
図8の右下のグラフと右上のグラフとは、復水器圧力を表す共通の横軸を有する。右下のグラフと右上のグラフとで共通する、正常状態の復水器圧力の値は、垂直の一点鎖線と復水器圧力を表す横軸との交点として表される。右上のグラフにおいて、近似曲線と垂直の一点鎖線とが交差する点における発電出力の値は、正常状態の発電出力の値に対応する。
図8の右上のグラフにおいて、実際の発電出力の値は、正常状態の発電出力の値よりも小さい。
【0063】
図8に例示される場合において発電出力が実際に低下していることからすると、冷却水温度と復水器圧力とが両方とも異常である可能性が高い。つまり、冷却塔60の性能と復水器50の性能とが両方とも低下している可能性が高い。したがって、検出部112は、冷却塔60及び復水器50が異常であると評価する。
【0064】
複数の項目に異常が認められる場合における異常要因の他の例が
図9を参照して説明される。
【0065】
図9の左上のWBTとSSCとの関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。この場合、検出部112は、左上のグラフに基づいて、プラント10の性能が異常であると評価する。検出部112は、左上のグラフに基づくプラント10の性能の評価を、
図3のステップS3の手順として実行する。検出部112は、プラント10の性能が異常であると評価した場合、以下、
図3のステップS4の異常の要因の解析に対応する手順を実行する。
【0066】
左上のグラフにおいて、近似曲線と垂直の破線とが交差する点から縦軸に対して一点鎖線の垂線が下ろされている。一点鎖線と縦軸との交点で表されるSSCの値は、正常状態のSSCの値に対応する。白抜き円がプロットされた点から縦軸に対して下された垂線(水平方向の破線)で表される実際のSSCの値は、正常状態のSSCの値より大きい。
【0067】
図9の左下のWBTと冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。具体的に、白抜き円でプロットされた点における冷却水温度の値は、プラント10の性能が正常である場合において同じWBTの値に対応する冷却水温度の値(近似曲線と垂直の破線とが交差する点の値)よりも小さい。この場合、むしろ冷却水温度が正常状態の温度よりも低い。したがって、冷却塔60の性能が向上している可能性がある。
【0068】
図9の右下の復水器圧力と冷却水温度との関係を表すグラフにおいて、近似曲線から外れた位置にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。具体的に、白抜き円でプロットされた点における復水器圧力の値は、プラント10の性能が正常である場合において同じ冷却水温度の値に対応する復水器圧力の値(近似曲線と水平の破線とが交差する点の値)よりも大きい。この場合、復水器圧力が異常である可能性がある。つまり、復水器50の性能が低下している可能性がある。
【0069】
図9の右上の復水器圧力と発電出力との関係を表すグラフにおいて、近似曲線上にデータが白抜き円でプロットされている。また、白抜き円から各軸に破線で垂線が下ろされている。この場合、検出部112は、復水器圧力と発電出力との関係に基づいて、タービン性能が正常であると評価する。
【0070】
ここで、
図9の左下のグラフと右下のグラフとは、冷却水温度を表す共通の縦軸を有する。左下のグラフにおいて、近似曲線と垂直の破線とが交差する点における冷却水温度の値は、正常状態の冷却水温度の値に対応する。左下のグラフと右下のグラフとで共通する、正常状態の冷却水温度の値は、水平の一点鎖線と冷却水温度を表す横軸との交点として表される。右下のグラフにおいて、近似曲線と水平の一点鎖線とが交差する点における復水器圧力の値は、正常状態の復水器圧力の値に対応する。
図9の右下のグラフにおいて、実際の復水器圧力の値は、正常状態の復水器圧力の値よりも大きい。
【0071】
また、
図9の右下のグラフと右上のグラフとは、復水器圧力を表す共通の横軸を有する。右下のグラフと右上のグラフとで共通する、正常状態の復水器圧力の値は、垂直の一点鎖線と復水器圧力を表す横軸との交点として表される。右上のグラフにおいて、近似曲線と垂直の一点鎖線とが交差する点における発電出力の値は、正常状態の発電出力の値に対応する。
図9の右上のグラフにおいて、実際の発電出力の値は、正常状態の発電出力の値よりも小さい。
【0072】
図9に例示される場合において発電出力が実際に低下していることからすると、プラント10に何らかの異常が生じている可能性がある。ここで、検出部112は、冷却塔60の性能が向上していると推定できる。一方で、検出部112は、復水器50の性能が低下していると推定できる。検出部112は、これら2つの事象に基づいて、復水器50と冷却塔60との間の循環水量が低下している可能性が高いと評価する。
【0073】
<<小括>>
以上述べてきたように、本実施形態に係る管理装置110は、運転データの少なくとも2つの項目の組み合わせを生成し、複数の組み合わせに基づいて種々の異常要因を解析できる。
【0074】
<運転データの経時変化に基づく性能評価>
検出部112は、運転データのうち少なくとも1項目のデータの経時変化に更に基づいてプラント10の性能を評価してもよい。例えば
図10に示されるように、WBTとSSCとの関係を表すグラフにおいて、第1期間に得られるプラント10の複数の運転データが白抜き円の第1データP_T1としてプロットされている。第1データP_T1のプロットは、T1として表される実線の楕円で囲まれたグループに分類されている。また、第1期間より後の第2期間に得られるプラント10の複数の運転データが白抜き矩形の第2データP_T2としてプロットされている。第2データP_T2のプロットは、T2として表される実線の楕円で囲まれたグループに分類されている。
【0075】
図10のグラフにおいて、縦軸及び横軸は、それぞれSSC及びWBTを表す。
図10のグラフは、時刻が第1期間から第2期間に進んだときの運転データのSSC及びWBTの経時変化を表す。第1期間及び第2期間に得られるプラント10の運転データは、境界A_2Dで囲まれる正常領域の中に位置する。したがって、検出部112は、プラント10の性能が正常であると評価する。
【0076】
検出部112は、第1期間から第2期間に進んだときに運転データがプロットされている位置の変化に基づいて、第2期間よりさらに後の第3期間に得られるプラント10の運転データがプロットされる位置を推定する。
図10のグラフにおいて、第3期間に得られるプラント10の運転データとして推定されたデータが第3データP_T3としてプロットされている。第3データP_T3のプロットは、T3として表される破線の楕円で囲まれたグループに分類されている。
【0077】
第3期間に得られると推定されるプラント10の運転データが境界A_2Dで囲まれる正常領域の外に位置する場合、検出部112は、時刻が将来の第3期間に進んだときにプラント10の性能が異常になることを予測できる。検出部112は、時刻が将来の第3期間に進む前にプラント10の性能が異常になることの予測結果を出力してよい。
【0078】
検出部112は、運転データの経時変化を確認する期間を、例えば1日、1週間、1か月、又は1年を単位として設定してよいし、1秒、1分、又は1時間を単位として設定してもよい。
【0079】
以上述べてきたように、管理装置110は、現在又は過去の期間にプラント10から得られる運転データのプロットが正常の範囲内に位置している場合であっても、運転データの経時変化の傾向に基づいて将来の時刻又は期間における運転データのプロットが正常の範囲外に出ることを推定できる。つまり、管理装置110は、プラント10の性能が異常になる予兆を検出できる。プラント10の性能が異常になる予兆を検出することによって、プラント10に対する処置が早期に実施され得る。その結果、プラント性能が効率的に管理される。
【0080】
<プロット位置の分類に基づく性能評価>
検出部112は、運転データの複数の項目のうち2項目のデータを含むデータセットを生成してよい。検出部112は、複数のデータセットを生成してよい。検出部112は、
図11に示されるように、複数のデータセットそれぞれについてグラフを生成し、グラフの中において、運転データがプロットされたときにプラント10の性能が正常であると評価可能な位置を含む範囲を設定してよい。
図11の左上のグラフは、WBT(横軸)とSSC(縦軸)との関係を表す。
図11の左下のグラフは、WBT(横軸)と冷却水温度(縦軸)との関係を表す。
図11の右下のグラフは、復水器圧力(横軸)と冷却水温度(縦軸)との関係を表す。
図11の右上のグラフは、復水器圧力(横軸)と発電出力(縦軸)との関係を表す。
【0081】
図11の各グラフに描かれている近似曲線は、運転データがプロットされたときにプラント10の性能が正常であると評価可能な位置を含む範囲を表す。つまり、プラント10から取得される運転データのうち2項目のデータを
図11の各グラフ上にプロットした点が近似曲線上に位置する場合、プラント10の性能が正常であると評価可能である。また、
図11の各グラフに描かれている実線より上の領域はAで表される。近似曲線より下の領域はBで表される。Aで表される領域は、運転データが正常から上に外れる領域に対応する。Bで表される領域は、運転データが正常から下に外れる領域に対応する。
【0082】
検出部112は、各グラフにおいて運転データをプロットしたときに、正常、又は、A若しくはBのいずれに分類されるか評価する。つまり、検出部112は、各データセットについて運転データが正常であるか上に外れているか下に外れているかを分類する。検出部112は、各データセットの分類結果の組み合わせに基づいてプラント10の性能を異常にしている要因を解析する。具体的に、検出部112は、
図12に示されるように、4つのデータセット(4枚のグラフ)それぞれについて正常、又は、A若しくはBのいずれに分類されるかの組み合わせを設定する。4つのデータセットそれぞれが3種類に分類されることにより、分類結果について81通り(=3×3×3×3通り)の組み合わせが設定される。検出部112は、分類結果の組み合わせそれぞれにプラント10の性能を対応づけてよい。
【0083】
例えば、左端のセルで「解析-1」と表示されている行は、
図6に例示した運転データの分類結果に対応する。上述したように、
図6に例示した運転データがプラント10から得られた場合、プラント10の異常の要因は、復水器50の圧力の低下であると推定される。したがって、検出部112は、「解析-1」と表示されている行にプラント10の性能として復水器圧力低下を対応づける。
【0084】
また、左端のセルで「解析-2」と表示されている行は、
図7に例示した運転データの分類結果に対応する。上述したように、
図7に例示した運転データがプラント10から得られた場合、プラント10の異常の要因は、復水器50の圧力の測定値の異常であると推定される。したがって、検出部112は、「解析-2」と表示されている行にプラント10の性能として復水器圧力計異常を対応づける。
【0085】
また、左端のセルで「解析-3」と表示されている行は、
図8に例示した運転データの分類結果に対応する。上述したように、
図8に例示した運転データがプラント10から得られた場合、プラント10の異常の要因は、冷却塔60及び復水器50の性能の低下であると推定される。したがって、検出部112は、「解析-3」と表示されている行にプラント10の性能として冷却塔60の性能低下及び復水器50の性能低下を対応づける。
【0086】
また、左端のセルで「解析-4」と表示されている行は、
図9に例示した運転データの分類結果に対応する。上述したように、
図9に例示した運転データがプラント10から得られた場合、プラント10の異常の要因は、復水器50と冷却塔60との間の循環水量の異常であると推定される。したがって、検出部112は、「解析-4」と表示されている行にプラント10の性能として復水器50と冷却塔60との間の循環水量低下を対応づける。
【0087】
以上述べてきたように、検出部112は、各データセットについて運転データを分類し、各データセットの分類結果の組み合わせに基づいてプラント10の性能を異常にしている要因を解析できる。あらかじめ分類結果の組み合わせにプラント10の異常要因が対応づけられたテーブルが準備されることによって、プラント10の異常要因が簡易に解析され得る。その結果、異常要因の解析処理の負荷が低減され得る。また、プラント10の性能が効率的に管理され得る。
【0088】
<運転データのグラフ表示>
管理装置110の検出部112は、上述してきたように運転データの各項目に基づいてプラント10の性能を評価し、異常の要因を解析する。検出部112は、プラント10の性能を評価するために用いる運転データの少なくとも一部の項目のデータの組み合わせの関係を表すグラフを出力部114に表示させてよい。このようにすることで、検出部112が実行している評価及び解析の処理内容がユーザに対して可視化され得る。その結果、ユーザが安心して評価結果及び解析結果を受け入れられる。
【0089】
<プラント10のメンテナンス計画>
管理装置110の検出部112は、プラント10の性能の評価結果に基づいて、プラント10のメンテナンス計画を生成してよい。プラント10のメンテナンスは、例えば1年に1回等のあらかじめ定められた時期に実施される。検出部112は、プラント10の性能の評価結果に基づいて、あらかじめ定められた時期が到来するまでに臨時でプラント10のメンテナンスを実行する必要があるか判定してよい。検出部112は、臨時でプラント10のメンテナンスを実行する必要があると判定した場合、プラント10のメンテナンス計画を生成してよい。
【0090】
検出部112は、プラント10の性能の評価結果に基づいて、プラント10で生じる損失を推定してよい。プラント10における損失は、例えばプラント10の出力の低下等のプラント10の性能の低下に起因して生じる。プラント10が地熱発電所である場合、プラント10における損失は、発電量の減少(発電出力の低下)に起因して生じる。検出部112は、次のメンテナンスまでの期間におけるプラント10の出力の低下に起因する損失が所定の損失より大きい場合に、プラント10を臨時でメンテナンスする必要があると判定してよい。
【0091】
プラント10における損失は、臨時でメンテナンスを実行した場合にプラント10を停止させることによって生じる機会損失を含む。また、プラント10における損失は、プラント10のメンテナンスを実行するために費やされる作業工数又は部品等に起因する費用を含む。つまり、プラント10における損失は、プラント10を臨時でメンテナンスすることに起因する損失を含む。検出部112は、次の定期メンテナンスまでプラント10をメンテナンスしない場合に生じる損失がプラント10を臨時でメンテナンスすることに起因する損失よりも大きい場合に、プラント10を臨時でメンテナンスする必要があると判定してよい。つまり、検出部112は、損失の推定結果に基づいてプラント10のメンテナンス計画を生成してよい。
【0092】
プラント10における損失が推定されることによって、プラント10のメンテナンスを実施するかが簡便に判断され得る。また、プラント10における損失の推定結果に基づいてプラント10のメンテナンス計画が生成されることによって、プラント10のメンテナンスのための過剰な費用又は作業負荷が削減され得る。その結果、プラント10の性能が効率的に管理される。
【0093】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 プラント(20:気水分離器、30:タービン、40:発電機、50:復水器、60:冷却塔、70:湿球温度計)
80 電力網
100 プラント管理システム
110 管理装置(112:検出部、114:出力部)
200 地熱貯留層
【手続補正書】
【提出日】2022-04-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転データのうち少なくとも2項目のデータの関係に基づいてプラントの性能を評価するステップと、
前記プラントの性能が異常であると評価した場合に、前記運転データのうち2項目のデータを含む少なくとも2組のデータセットそれぞれについて、前記運転データが正常であるか上に外れているか下に外れているかを分類し、各データセットの分類結果の組み合わせに対応づけられている少なくとも1つの要因を、前記プラントの性能を異常にしている要因として特定するステップと
を含む、プラント性能管理方法。
【請求項2】
前記プラントの性能を異常にしている少なくとも1つの要因を特定するステップにおいて、前記プラントに設置されている少なくとも1つの計器の異常が生じていることを特定する、請求項1に記載のプラント性能管理方法。
【請求項3】
前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータの経時変化に基づいて前記プラントの性能を評価する、請求項1又は2に記載のプラント性能管理方法。
【請求項4】
前記プラントの性能が正常であると評価した場合に、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータが異常であるか評価するステップを更に含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項5】
前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち3項目のデータの関係に基づいて前記プラントの性能を評価する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項6】
前記運転データのうち少なくとも一部の項目のデータの組み合わせの関係を表すグラフを表示するステップを更に含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項7】
前記プラントの性能を異常にしている要因の解析結果に基づいて前記プラントで生じる損失を推定するステップを更に含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項8】
前記損失の推定結果に基づいて前記プラントのメンテナンス計画を生成するステップを更に含む、請求項7に記載のプラント性能管理方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法を実行するプラント性能管理装置。
【請求項10】
コンピュータに、請求項1から8までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法を実行させるプラント性能管理プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
幾つかの実施形態に係るプラント性能管理方法は、運転データのうち少なくとも2項目のデータの関係に基づいてプラントの性能を評価するステップと、前記プラントの性能が異常であると評価した場合に、前記運転データのうち2項目のデータを含む少なくとも2組のデータセットそれぞれについて、前記運転データが正常であるか上に外れているか下に外れているかを分類し、各データセットの分類結果の組み合わせに対応づけられている少なくとも1つの要因を、前記プラントの性能を異常にしている要因として特定するステップとを含む。このようにすることで、プラントの性能が異常であると評価した場合に限って異常要因が解析される。その結果、プラント性能が効率的に管理される。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転データのうち少なくとも2項目のデータの関係に基づいてプラントの性能を評価するステップと、
前記プラントの性能が異常であると評価した場合に、前記運転データのうち2項目のデータを含む少なくとも2組のデータセットそれぞれについて、前記運転データが正常であるか上に外れているか下に外れているかを分類し、各データセットにおける前記運転データの3通りの分類結果の組み合わせであって前記データセットの数だけ3を累乗した数の組み合わせのそれぞれに対応づけられている少なくとも1つの要因を、前記プラントの性能を異常にしている要因として特定するステップと
を含む、プラント性能管理方法。
【請求項2】
前記プラントの性能を異常にしている少なくとも1つの要因を特定するステップにおいて、前記プラントに設置されている少なくとも1つの計器の異常が生じていることを特定する、請求項1に記載のプラント性能管理方法。
【請求項3】
前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータの経時変化に基づいて前記プラントの性能を評価する、請求項1又は2に記載のプラント性能管理方法。
【請求項4】
前記プラントの性能が正常であると評価した場合に、前記運転データのうち少なくとも1項目のデータが異常であるか評価するステップを更に含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項5】
前記プラントの性能を評価するステップにおいて、前記運転データのうち3項目のデータの関係に基づいて前記プラントの性能を評価する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項6】
前記運転データのうち少なくとも一部の項目のデータの組み合わせの関係を表すグラフを表示するステップを更に含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項7】
前記プラントの性能を異常にしている要因の解析結果に基づいて前記プラントで生じる損失を推定するステップを更に含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法。
【請求項8】
前記損失の推定結果に基づいて前記プラントのメンテナンス計画を生成するステップを更に含む、請求項7に記載のプラント性能管理方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法を実行するプラント性能管理装置。
【請求項10】
コンピュータに、請求項1から8までのいずれか一項に記載のプラント性能管理方法を実行させるプラント性能管理プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
幾つかの実施形態に係るプラント性能管理方法は、運転データのうち少なくとも2項目のデータの関係に基づいてプラントの性能を評価するステップと、前記プラントの性能が異常であると評価した場合に、前記運転データのうち2項目のデータを含む少なくとも2組のデータセットそれぞれについて、前記運転データが正常であるか上に外れているか下に外れているかを分類し、各データセットにおける前記運転データの3通りの分類結果の組み合わせであって前記データセットの数だけ3を累乗した数の組み合わせのそれぞれに対応づけられている少なくとも1つの要因を、前記プラントの性能を異常にしている要因として特定するステップとを含む。このようにすることで、プラントの性能が異常であると評価した場合に限って異常要因が解析される。その結果、プラント性能が効率的に管理される。