IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中央海産株式会社の特許一覧

特開2023-67290タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置
<>
  • 特開-タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置 図1
  • 特開-タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置 図2
  • 特開-タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置 図3
  • 特開-タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置 図4
  • 特開-タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置 図5
  • 特開-タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置 図6
  • 特開-タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067290
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】タイヤの回転方向主溝深さの測定方法、及びその方法を利用した回転方向主溝深さの測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/22 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G01B11/22 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178378
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】510098630
【氏名又は名称】中央海産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中文敏
(72)【発明者】
【氏名】勝村和重
(72)【発明者】
【氏名】風間正利
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA25
2F065AA58
2F065CC13
2F065FF04
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH05
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ29
2F065QQ31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両から取り外されたタイヤのトレッド面に形成されたタイヤの回転方向の主溝(周回主溝)の深さを測定する装置を提供する。
【解決手段】タイヤのトレッド面の異なる少なくとも2か所にラインレーザ光を照射し、ラインレーザ光の撮像画像をそれぞれ取得し、撮像画像のそれぞれについて、ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出し、それぞれの光切断線座標から三角測量法に基づいてトレッド面に形成された溝深さを算出し、算出された溝の深さの回転方向の座標が略一致する溝をそれぞれ回転方向主溝とし、その溝深さをそれぞれ回転方向主溝の深さと判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインレーザ光をタイヤのトレッド面に、タイヤの回転方向に対して横断する方向で照射し、前記トレッド面のラインレーザ光の像をカメラで撮像し、撮像した撮像画像に基づいて光切断法により前記トレッド面に複数形成されている回転方向の主溝の深さを検出する回転方向主溝深さの測定方法であって、
前記トレッド面の異なる少なくとも2か所にラインレーザ光を照射し、前記ラインレーザ光の像をそれぞれ撮像し、
前記撮像したそれぞれの撮像画像について、前記ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出し、
前記光切断線座標から三角測量法に基づいて、前記トレッド面に形成された溝深さをそれぞれ算出し、
算出された前記溝の深さの回転方向の座標が略一致する溝の深さをそれぞれ回転方向主溝の深さと判定することを特徴とするタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定方法。
【請求項2】
ラインレーザ光をタイヤのトレッド面に、タイヤの回転方向に対して横断する方向で照射し、前記トレッド面のラインレーザ光の像をカメラで撮像し、撮像した撮像画像に基づいて光切断法により前記トレッド面に複数形成されている回転方向の主溝の深さを検出する回転方向主溝深さの測定方法であって、
前記トレッド面の異なる少なくとも2か所にラインレーザ光を照射し、前記ラインレーザ光の像をそれぞれ取得し、
前記撮像したそれぞれの撮像画像について、前記ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出し、
前記光切断線座標の一座標であるA点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向にw離れた前記光切断線座標の一座標であるB点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向に2w離れた前記光切断線座標の一座標であるC点とを選定し、前記A点と前記B点と前記C点とで形成される三角形の面積を、前記A、前記B点、前記C点のいずれかが前記光切断線座標の全ての座標となるまで繰り返して求積し、
前記求積された前記三角形の面積から溝深さを算出し、
前記溝深さが所定値以上のものを、それぞれ主溝候補とし、
前記主溝候補の回転方向の座標が略一致する溝の深さをそれぞれ回転方向主溝の深さと判定することを特徴とするタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定方法。
【請求項3】
前記wは前記回転方向主溝の幅以上であり、前記所定値は前記回転方向主溝に設けられているスリップサインの値以上であることを特徴とする請求項2に記載のタイヤのトレッド面に形成された主溝の深さの測定方法。
【請求項4】
タイヤのトレッド面に、タイヤの回転方向に対して横断する方向でタイヤのトレッド面の少なくとも異なる2か所にラインレーザ光を照射するラインレーザ光照射装置と、
前記トレッド面のラインレーザ光の像を撮像するカメラと、
前記カメラで撮像された撮像画像からラインレーザ光の像を検出処理するラインレーザ画像検出処理部と、
前記ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出する光切断線座標検出部と、
前記光切断線座標から光切断法に基づいて、前記トレッド面に形成された溝の深さを算出する溝深さ算出部と、
算出された前記溝の深さの回転方向の座標が略一致する複数の溝をそれぞれ回転方向主溝と判定する主溝判定部
とを備えたことを特徴とするタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定装置。
【請求項5】
前記主溝判定部は、前記光切断線座標の一座標であるA点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向にw離れた前記光切断線座標であるB点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向に2w離れた前記光切断線座標であるC点とを選定し、前記A点と前記B点と前記C点とで形成される三角形の面積を、前記A点、前記B点、前記C点のいずれかが前記光切断線座標の全ての座標となるまで繰り返して求積し、求積された前記三角形の面積から溝深さを算出する手段を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の回転方向主溝深さの測定装置。
【請求項6】
前記wは前記回転方向主溝の幅以上であり、前記所定の深さは、前記回転方向主溝に設けられているスリップサインの値以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の回転方向主溝深さの測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、バイク等のタイヤのトレッド面に形成された回転方向の主溝深さの測定に関し、タイヤの表面に照射したラインレーザ光の像(光切断線の像)を撮像し、その撮像画像に基づいてタイヤの回転方向主溝深さを測定する方法、及びその方法を利用した測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のタイヤは、その損耗がある程度以上になると、車両の走行中に破損して、重大な事故の原因となるおそれがあるため、適切な時期に新品のタイヤと交換することが必要となっている。
【0003】
タイヤの寿命は、車両の走行距離のみならず、その車種、常時走行する路面の状態や運転者のくせ等の個別要因によっても大幅に変動するので、新品タイヤへの交換時期を、走行距離のみによって判断するのは適切ではなく、個々のタイヤの損耗状態を調査して判断することが重要である。
【0004】
タイヤの寿命を支配する主な要因として、トレッド面の摩耗と、ヒビ割れや切りキズ等のキズの発生があげられる。トレッド面の摩耗の進行状態は、タイヤの溝の深さから判断されることが多い。すなわち、路面とタイヤの間に挟まれた水をタイヤの後方又は側方に逃がすために、トレッド面にはタイヤの回転方向となる縦溝(周回溝)と横溝が形成されている。
【0005】
摩耗によりゴムの肉厚が減少すると、これらの溝が浅くなるため、残溝深さを測定することにより、摩耗の程度を推認することができる。そのため、如何にして残溝深さの数値を測定するか、特に縦溝(周回溝、以下本明細書では回転方向主溝、又は単に主溝という。)の測定が、タイヤ損耗状態の調査の一つの課題となっている。
【0006】
一般に、物体表面の形状を三次元的に測定する手段として、レーザ変位計が用いられることが多い。タイヤの残溝深さの測定にレーザ変位計を用いた事例も報告されている。例えば特許文献1は、タイヤをその回転軸の回りで回転させながら、タイヤのトレッド面に対して所定の方向から入射光を照射し、この入射光に対する所定の角度の反射光を受光部で受光して、タイヤ溝の深さのデータを取得する技術を開示している。しかし、レーザ変位計による残溝深さの測定には、以下のような問題があると考えられる。
【0007】
すなわち、黒色のゴム表面で計測を行なうため、強いレーザパワーを必要とし、タイヤにダメージを与える危険性がある。また、拡散的な反射を起こす表面で局所的な干渉が発生するので、十分な測定精度を確保するためには、かなり複雑な操作手順が必要になるという問題がある。さらに、何よりも装置が高価になり、メンテナンスに多大の労力を要するという欠点がある。
【0008】
一方、タイヤの残溝深さの測定をラインレーザ光の像(光切断線の像)を撮像し、その撮像画像に基づいて光切断法によりタイヤの溝深さを測定する方法が、下記特許文献2に開示されている。
【0009】
下記特許文献2は、タイヤの移動方向を横切るように照射する光源として、レーザ或いはシャドーされた発光ダイオードにより扇状光線が作られる。測定はタイヤの表面に対して非直交的に行われるので、光源もセンサのいずれも直接反射の角度方向に位置しない。センサはこの場合2次元画像解析カメラである。評価は、測定したタイヤトレッドの包絡面(envelope)を生成することにより、そしてトレッド溝のもっとも深い箇所を探すことにより行われる。
【0010】
下記特許文献2に記載の技術によれば、光切断法によりトレッド溝の最も深い箇所がタイヤの残溝深さと判定される。しかし、タイヤのトレッド面にはタイヤの回転方向となる縦溝(周回溝)と横溝が形成されているので、判定した溝が縦溝(周回溝)であるか、それとも横溝であるか判別することができない。また、使用中のタイヤには様々な凹凸ができている場合もある。このため周回溝と判定した溝が、実は周回溝ではない、という場合もある、という問題がある。
【0011】
下記特許文献3は、相対的に移動する被測定物の表面(回転するタイヤの表面等)に照射したライン光の像( 光切断線の像)を撮像し、その撮像画像に基づいて光切断法による形状検出を行うことによって被測定物の表面形状を検出する形状測定装置及びその方法を開示している。
【0012】
下記特許文献3の技術は、被測定物の表面の検出高さ方向とは異なる方向から複数のライン光を照射することにより、被測定物の表面に被測定物の表面の移動方向である第1方向に直交する第2方向に伸びるとともに該第2方向において占める範囲が相互にずれている複数の分離した光切断線を形成させるライン光照射手段と、被測定物の表面に形成された複数の分離した光切断線の像を、複数のライン光それぞれの主光線が被測定物の表面に対して正反射する方向において撮像する撮像手段と、一定単位の前記移動に応じて前記撮像手段により得られる複数の撮像画像それぞれについて、撮像手段の撮像画像の座標系における前記複数の分離した光切断線それぞれに対応して予め設定された複数の独立した画像処理対象領域の画像それぞれから、光切断線の像の座標である光切断線座標を個別に検出する光切断線座標検出手段と、光切断線座標検出手段により検出された複数の光切断線座標に基づいて被測定物の第1方向における表面高さ分布を算出する表面形状算出手段とを具備してなることを特徴とする形状測定装置、である。
【0013】
下記特許文献3が開示する形状測定装置は、例えばタイヤの形状を測定するにあたっては、タイヤを回転させながらタイヤの側面の形状、タイヤのトレッド面の形状を測定することで、タイヤ全体の形状を測定するものである。このため、この技術ではタイヤのトレッド面には分離した複数のライン光を照射し、かかるライン光の画像をそれぞれに対応した光切断線座標検出手段により座標検出することで、タイヤが回転していてもその処理に遅れが生じないようにしている。
【0014】
このため、特許文献3に記載の技術でタイヤのトレッド面に形成されている主溝を測定するには、タイヤを回転させなければならず、また、タイヤの回転方向に対して横断する方向で分離したライン光を複数照射しなければならない。このため、測定装置が複雑でコスト高の測定装置になる、という問題がある。使用中のタイヤの摩耗状況を判別するには、タイヤの全体形状を測定する必要はなく、周回溝の深さを正確に測定することが必要である。
【0015】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平2016-161360号公報
【特許文献2】特許第5640073号公報
【特許文献3】特許第5089286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
冬季に路面に積雪や凍結をみる寒冷地の居住者や、積雪の無い地域の居住者であっても、業務やレジャーのため自家用車で積雪地に出掛ける場合は、夏用タイヤと冬用タイヤの使い分けを必要としている。そのため、冬季の始まりと終わりにタイヤ交換の作業を行う必要があり、また、使用しない方のタイヤをその期間保管しておくことが必要となる。
【0018】
このタイヤの交換作業は、一般の自家用車ユーザーが自力で行なうことも可能であるが、かなりの腕力を要する荒仕事であるため、女性や高齢者の場合、これを専門に又は副業として行う事業者、例えばタイヤの量販店等に依存せざるを得ない。また、交換は自力で可能であっても、自宅に保管場所を確保できない場合も同様と考えられる。
【0019】
かかるタイヤの交換・保管の事業者は、顧客(ユーザー)の安全走行に資するため、或いは顧客に適切な新品タイヤへの交換時期をアドバイスするため、タイヤの損耗状態、特にタイヤの回転方向の主溝の深さ(残溝)の情報を取得する、操作が簡単で低廉な価格の測定装置を求めている。
【0020】
そこで本発明は、自動車・バイク等の車両から取り外されたタイヤのトレッド面に形成されたタイヤの回転方向の主溝(周回主溝)の深さを測定する装置であって、装置の製作費やメンテナンスコストが安価であり、かつその測定操作も簡易に行なえるようなタイヤのトレッド面の回転方向主溝の深さを測定する装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための本発明の第一は、ラインレーザ光をタイヤのトレッド面に、タイヤの回転方向に対して横断する方向で照射し、前記トレッド面のラインレーザ光の像をカメラで撮像し、撮像した撮像画像に基づいて光切断法により前記トレッド面に複数形成されている回転方向の主溝の深さを検出する回転方向主溝深さの測定方法であって、
前記トレッド面の異なる少なくとも2か所にラインレーザ光を照射し、前記ラインレーザ光の像をそれぞれ撮像し、
前記撮像したそれぞれの撮像画像について、前記ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出し、
前記光切断線座標から三角測量法に基づいて、前記トレッド面に形成された溝深さをそれぞれ算出し、
算出された前記溝の深さの回転方向の座標が略一致する溝の深さをそれぞれ回転方向主溝の深さと判定することを特徴とするタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定方法、である。
【0022】
本発明の第二は、ラインレーザ光をタイヤのトレッド面に、タイヤの回転方向に対して横断する方向で照射し、前記トレッド面のラインレーザ光の像をカメラで撮像し、撮像した撮像画像に基づいて光切断法により前記トレッド面に複数形成されている回転方向の主溝の深さを検出する回転方向主溝深さの測定方法であって、
前記トレッド面の異なる少なくとも2か所にラインレーザ光を照射し、前記ラインレーザ光の像をそれぞれ取得し、
前記撮像したそれぞれの撮像画像について、前記ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出し、
前記光切断線座標の一座標であるA点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向にw離れた前記光切断線座標の一座標であるB点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向に2w離れた前記光切断線座標の一座標であるC点とを選定し、前記A点と前記B点と前記C点とで形成される三角形の面積を、前記A点、前記B点、前記C点のいずれかが前記光切断線座標の全ての座標となるまで繰り返して求積し、
前記求積された前記三角形の面積から溝深さを算出し、
前記溝深さが所定値以上のものを、それぞれ主溝候補とし、
前記主溝候補の回転方向の座標が略一致する溝の深さをそれぞれ回転方向主溝の深さと判定することを特徴とするタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定方法、である。
【0023】
また、本発明の第三は、タイヤのトレッド面に、タイヤの回転方向に対して横断する方向でタイヤのトレッド面の少なくとも異なる2か所にラインレーザ光を照射するラインレーザ光照射装置と、
前記トレッド面のラインレーザ光の像を撮像するカメラと、
前記カメラで撮像された撮像画像からラインレーザ光の像を検出処理するラインレーザ画像検出処理部と、
前記ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出する光切断線座標検出部と、
前記光切断線座標から光切断法に基づいて、前記トレッド面に形成された溝の深さを算出する溝深さ算出部と、
算出された前記溝の深さの回転方向の座標が略一致する複数の溝をそれぞれ回転方向主溝と判定する主溝判定部
とを備えたことを特徴とするタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定装置、である。
【0024】
本発明においては、タイヤのトレッド面の少なくとも異なる2か所にラインレーザ光を照射し、タイヤのトレッド面のラインレーザ光の像をカメラで撮像する。撮像したそれぞれの撮像画像からラインレーザ光の像を検出し、ラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出する。
【0025】
ラインレーザ光照射装置とカメラの配置と、光切断線座標とから、光切断法の原理を用いた三角測量法に基づいて、溝の深さを算出することができる。ラインレーザ光の像は少なくとも2つあり、光切断法により検出された溝の回転方向の座標が略一致する溝は縦溝となることから、その溝の深さを主溝の深さと判定する。これにより、例えば横溝やトレッド面にできた凹凸を回転方向の主溝と誤判定することを防止することができる。
【0026】
上記による回転方向主溝の判定に加え、光切断線座標のそれぞれについて、前記光切断線座標の一座標であるA点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向にw離れた前記光切断線座標の一座標であるB点と、前記A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向に2w離れた前記光切断線座標の一座標であるC点とを選定し、前記A点と前記B点と前記C点とで形成される三角形の面積を、記A点、前記B点、前記C点のいずれかが前記光切断線座標の全ての座標となるまで繰り返して求積し、前記求積された前記三角形の面積から溝深さを算出し、前記溝深さが所定値以上であって、回転方向の座標が略一致する溝の深さをそれぞれ回転方向主溝の深さと判定する。
【0027】
ここで、タイヤのトレッド面は緩やかな曲面であり、カメラで撮像されたラインレーザ光の像も緩やかな曲線となる。このため、溝深さの算出にあたっては溝部分で分断されている(離隔している)光切断線の法線と直交する方向で溝深さを算出する必要がある。そのためには、光切断線座標から3点を選定し、3点で構成される三角形の面積を、全ての光切断線座標について求積し、そこから得られた溝深さの最大値を溝深さと判定することが好適である。
【0028】
上記の3点は、光切断線座標の一座標であるA点を選定し、A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向にw離れた光切断線座標の一座標であるB点と、A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向に2w離れた光切断線座標の一座標であるC点とする。そして、A点とB点とC点とで形成される三角形の面積を、A点、B点、C点のいずれかが光切断線座標の全ての座標となるまで繰り返して求積し、最大面積から溝深さを算出する。上記w(三角形の底辺)は、少なくとも測定するタイヤの主溝の幅とし、その幅以上であって2倍以下の幅とすることが好適である。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、自動車・バイク等の車両から取り外されたタイヤのトレッド面に形成されたタイヤの回転方向の主溝(周回主溝)の深さを測定する装置であって、装置の製作費やメンテナンスコストが安価であり、かつその測定操作も簡易に行なえるようなタイヤのトレッド面の回転方向主溝の深さを測定する装置を提供することが可能になった。本発明のタイヤのトレッド面に形成されている回転方向主溝の深さの測定装置は、設備コストが安価で、メンテナンスが容易であり、かつ測定の手間も簡易であるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の第一の実施例であるタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定装置1の構成を示す斜視図である。この装置は、タイヤ40を載置するテーブル50、ラインレーザ光照射装置10、ラインレーザ光の像を撮像するカメラ20、及びカメラの撮像画像を分析処理するデータ処理装置30を備えている。なお、図1には図示していないが、環境条件に応じてタイヤ40のトレッド面を明瞭にする光源を備えるこることは好適である。
【0031】
タイヤ40は、テーブル50上にタイヤ側面が水平になるように載置される。ラインレーザ照射装置10は、カメラ20を中心に対称に配置され、タイヤ40のトレッド面にラインレーザ光をタイヤの回転方向に対して横断する方向に照射し、トレッド面の異なる2か所にラインレーザ光の像を形成する。カメラ20は、トレッド面の異なる2か所に現れるラインレーザ光の像を撮像し、撮像した画像はデータ処理装置30に送られる。ラインレーザ光の画像は、タイヤ40の残溝深さの情報を得ることを目的にするものである。なお、図1に示す一実施例においては、カメラ20を2つのラインレーザ照射装置20の中間に配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、光切断法の原理に用いられている三角測量法で必要となるカメラ20とラインレーザ光照射装置10と、タイヤのトレッド面との配置(高さ、離隔、角度等)関係が特定できれば良い。
【0032】
本発明は、タイヤの回転方向に対して横断する方向で、トレッド面のラインレーザ光の像を取得するに際して、トレッド面の異なる2か所にラインレーザ光を照射し、その画像カメラ20で取像するところに特徴がある。これはトレッド面には回転方向の主溝の他、横溝や斜溝が形成されており、また使用によりトレッド面に凹凸が生じている場合がある。トレッド面の異なる2か所にラインレーザ光を照射するのは、回転方向主溝とその他の溝とを判別するためである。ここで、ラインレーザ光の照射はトレッド面の異なる2か所に同時に照射することが好適であるが、時間をずらせてトレッド面の異なる2か所にラインレーザ光を照射した画像を合成処理することで行っても良い。
【0033】
本発明では、こられの様々な溝と回転方向主溝との判別をするにあたって、回転方向主溝は必ず回転方向に溝が連続しているという特徴を利用した。即ち、ラインレーザ光の像である光切断線11(図3参照)の座標から、回転方向の座標がほぼ一致する溝を回転方向主溝として判別しており、この点が本発明の一つのポイントとなっている。ただし、タイヤ回転方向に主溝が蛇行した形状で形成される場合もあり、また、横溝との関係で必ずしも回転方向に連続していない主溝が形成されている場合もある。かかる主溝であっても、光切断線11の座標から、回転方向の座標がほぼ一致する溝を回転方向主溝として判別する。
【0034】
図2は、図1に示す本発明の一実施例である測定装置1のカメラ20と、ラインレーザ光照射装置10と、タイヤ40のトレッド面と、回転方向主溝41との高さ方向の位置関係を示した図である。レーザ照射装置10はカメラ20は挟んでタイヤ40の回転方向に対称に配置されている。
【0035】
図2においては、ラインレーザ照射装置10の照射角度は、測定対象であるタイヤ40の中心を照射する角度としている。測定するタイヤの径は様々であるが、例えば、最小径のタイヤの中心を照射する角度として設定する。カメラ20のトレッド面からの高さは、2つのラインレーザ光の像が取得できる(視野角が確保できる)高さとし、その高さと同じ高さでカメラ20を設置する。タイヤ40の回転方向主溝41の深さをDとし、タイヤ40のトレッド面へのラインレーザ光100の入射角をθ、主溝41の幅をwとすると、D=tanθ×wとなる。ここでwは主溝41の幅よりも広く、例えば主溝41の幅の1倍から2倍程度とすることが好適である。これはタイヤの消耗により主溝の幅が変化する場合があること、またタイヤ回転方向に主溝が蛇行した形状で形成される場合があるからである。
【0036】
図3は、タイヤをその側面が水平になるように載置し、ラインレーザ照射装置10によりタイヤ40のトレッド面にラインレーザ光を照射している図である。2台のラインレーザ照射装置10からラインレーザ光100がトレッド面の異なる2カ所に照射され、トレッド面にラインレーザ光の像である光切断線11が2つ現れている。光切断線11の像は、タイヤの回転方向主溝41が形成されている箇所では、トレッド面からの反射による像ではなく、主溝41の底面からの反射による像として現れる。即ち、図2(b)に示すように光切断線11の主溝41の光切断線11の像は、トレッド面に現れる像よりも、主溝41の深さに応じてラインレーザ光100の照射方向側に現れる。
【0037】
上述したが、本発明ではトレッド面に形成されている回転方向主溝を、横溝や凹凸と区別するため、回転方向主溝は回転方向に溝が連続しているという特徴を判別手段として用いている。即ち、トレッド面にラインレーザ光の像を2つ生じさせ、それらのラインレーザ光の像である光切断線11(光切断線11-1、光切断線11-2)の座標(光切断線座標)から、回転方向の座標が一致する溝を回転方向主溝として判別している。
【0038】
図4はラインレーザ光の像である切断線11から回転方向主溝の深さを算出する本発明の一実施例を示した図である。実物のタイヤにゲージをあてて溝深さを測定する場合には、タイヤ溝ゲージ(タイヤ溝デプスゲージ)をトレッド面の法線方向に設置し、トレッド面の法線と直角に測定針が溝底に当たるようにして溝深さを測定している。これはトレッド面が緩やかな曲面となっているためである。本発明の一実施例である回転方向主溝の測定装置1によるトレッド面に形成されるラインレーザ光の像も緩やかな曲線として現れる。
【0039】
上述したように主溝の深さはトレッド面のラインレーザ光の像と、主溝のラインレーザ光の像のとの離隔hにより三角測量法で算出することができる。しかし、トレッド面の光切断線座標と、主溝の光切断線座標との離隔は、座標の取り方によって相違する。なお、図4に示す座標軸は、トレッド面を撮像した画像の解像度を1000×1000ドット、即ち、X軸の座標は0~1000とし、Y軸の座標も0~1000とした。
【0040】
図4に示す光切断線11から主溝の深さを算出する一手法として、光切断線11の一座標であるA点と、A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向にw離れた光切断線11の一座標であるB点と、A点からタイヤの回転方向に対して横断する方向に2w離れた光切断線11の一座標であるC点とを選定する。
【0041】
そして、A点とB点とC点とで形成される三角形の面積を求める。これをA点、又はB点、あるいはC点のいずれかが光切断線11の全ての座標となるまで繰り返して求積し、これにより求積された三角形の面積を光切断線11のY座標値をX軸、三角形の面積をY軸としてグラフ化すると、図4(b)のような図を得る。こうして得られた三角形の面積の最大値から、それぞれの溝深さを算出し、それぞれ算出した溝深さのうち、所定の深さ以上、例えば、スリップサインが示す溝深さ(四輪の場合は1.6mm、二輪の場合は0.8mm)以上である箇所の溝を主溝の深さと判定する。
【0042】
図5は、本発明の一実施例であるタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定装置1の構成を示すブロック図である。2台のラインレーザ10は、タイヤのトレッド面の異なる箇所にラインレーザ光を照射する。カメラ20はトレッド面に現れるラインレーザ光の像を撮像する。ラインレーザ10の制御は、制御部31のラインレーザ制御部310が行い、カメラ20の制御は制御部31の撮像制御部311が行う。
【0043】
カメラ20により撮像された画像は、データ処理部32に送られる。データ処理部32は、ラインレーザ光の像を検出するラインレーザ画像検出部320、ラインレーザ画像検出部320で検出されたラインレーザ光の像の座標である光切断線座標を検出する光切断線座標検出部321、光切断線座標検出部321による座標から溝深さを算出する溝深さ算出部322、そして溝深さ算出部322により算出された溝深と、光切断線11の座標とから、回転方向主溝を判定する主溝判定部323とを備える。
【0044】
図6はタイヤ(サイズ:215/55R17)を本発明の一実施例であるタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定装置1により得られた回転方向主溝の深さの図である。ラインレーザは波長が600nm、消費電力が40mW、電源電圧:5VDを用い、カメラ20の解像度は2048x1536である。かかる仕様で取得した画像を処理し、光切断線11の座標を求め、回転方向主溝深さを算出した結果、トレッド面に3本形成されている主溝42の深さとして、5.4mmから5.9mmの深さが検出された。
【0045】
図7は本発明の一実施例である回転方向主溝深さの測定方法の一例を示すフローチャートである。タイヤのトレッド面に2本のラインレーザ光を照射することによりトレッド面に現れるラインレーザ光の像の部分を強調し、フィルター処理を行う(S1,S2)。次に、ラインレーザ光の像を2色、例えば、赤と白、あるいは黒と白に二値化した後、ノイズを除去する処理を行う(S3,S4)。
【0046】
次に、2つのラインレーザ光の像の線幅を、各座標の平均から、例えば1ドットに調整(1画素=1ドット)する。また、本来は存在するラインレーザ光の像であるが消えている画素(欠損点)を線形補完し(S5,S6)、ラインレーザ光の像である光切断線11の座標を抽出する(S7)。
【0047】
次に、各光切断線11の座標から、A点、B点、C点を選定し、A点、B点、C点で形成される三角形の面積を求積する(S8,S9)。A点が全ての光切断線11の座標となるまでこれを繰り返して、A点、B点、C点で形成される三角形の面積を求積し(S10)、三角形の面積をY軸とし、光切断線11のY軸座標をX軸とするグラフの最大値を主溝の候補とする(S11)。
【0048】
各光切断線座標から求めた主溝の候補のなかから、光切断線11のY座標がほぼ一致する、例えば、主溝の候補のなかで、回転方向主溝の幅以上にY座標が外れていないものを回転方向主溝と判定する。そして主溝と判定されたものの面積から主溝の深さを算出する(S12,S13)。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の一実施例であるタイヤのトレッド面に形成されたタイヤの回転方向主溝深さの測定装置の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施例であるタイヤの回転方向主溝の測定装置のカメラとラインレーザ光照射装置と、タイヤのトレッド面との位置関係を高さ方向で示した図である。
図3】本発明の一実施例であるラインレーザ照射装置によりタイヤのトレッド面にラインレーザ光を照射しているラインレーザ光の照射図である。
図4】ラインレーザ光の像である切断線座標11から回転方向主溝の深さを算出する本発明の一実施例を示した図である。
図5】本発明の一実施例であるタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定装置1の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施例であるラインレーザ照射装置により得られた回転方向主溝の深さの図である。
図7】本発明の一実施例であるタイヤのトレッド面に形成された回転方向主溝深さの測定方法の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1:タイヤの回転方向主溝の測定装置
10:ラインレーザ光照射装置
20:カメラ
30:データ処理装置
31:制御部
32:データ処理部
40:タイヤ
41:タイヤの回転方向主溝
50:テーブル
310:ラインレーザ制御部
311:撮像制御部
320:ラインレーザ画像検出部
321:光切断線座標検出部
322:溝深さ算出部
323:主溝判定部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7