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特開2023-67304水中航走体の監視方法、監視プログラム、及び監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067304
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】水中航走体の監視方法、監視プログラム、及び監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/66 20060101AFI20230509BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20230509BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20230509BHJP
   G01S 5/30 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G01S15/66
B63C11/00 B
B63C11/48 D
G01S5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178402
(22)【出願日】2021-10-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人海洋研究開発機構 戦略的イノベーション創造プログラム 革新的深海資源調査技術「深海AUV複数運用技術に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 祥梧
(72)【発明者】
【氏名】篠野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 章裕
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB09
5J083AC28
5J083AD01
5J083AD06
5J083AE03
5J083AF16
5J083AG20
5J083BA01
5J083CA13
(57)【要約】
【課題】潜航中の水中航走体を通信と音響測位により管制する場面において、より高度な水中航走体の管制を可能とする水中航走体の監視方法、監視プログラム、及び監視システムを提供すること。
【解決手段】水中航走体20を行動履歴に基づいて監視する監視方法であって、水中航走体20で得た航走経路を含む行動履歴を所定の周期又は指示信号に基づいて通信手段11、21を介して取得する行動履歴取得ステップS1と、水中航走体20の3次元位置を音響測位装置12で計測し測位情報を取得する測位情報取得ステップS2と、同時刻における行動履歴と測位情報とを比較し、測位情報に基づき行動履歴を補正して正しい行動履歴を再現する行動履歴再現ステップS3と、水中航走体20を監視するための再現した正しい行動履歴を提供する監視情報提供ステップS4とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中航走体を行動履歴に基づいて監視する監視方法であって、前記水中航走体で得た航走経路を含む行動履歴を所定の周期又は指示信号に基づいて通信手段を介して取得する行動履歴取得ステップと、前記水中航走体の3次元位置を音響測位装置で計測し測位情報を取得する測位情報取得ステップと、同時刻における前記行動履歴と前記測位情報とを比較し、前記測位情報に基づき前記行動履歴を補正して正しい行動履歴を再現する行動履歴再現ステップと、前記水中航走体を監視するための再現した前記正しい行動履歴を提供する監視情報提供ステップとを備えたことを特徴とする水中航走体の監視方法。
【請求項2】
前記行動履歴再現ステップにおいて、前記通信手段による通信時の前記3次元位置と、取得した前記行動履歴のうちの前記通信時と同時刻における自己位置推定結果とを比較し、前記3次元位置と前記自己位置推定結果との誤差の時間変化を推定することにより、前記行動履歴を補正して前記正しい行動履歴としての航跡を再現することを特徴とする請求項1に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項3】
前記行動履歴再現ステップにおいて、前記行動履歴を補正するに当たり、前記水中航走体で得た水深データと既知の水底地形図との照合により得られた位置推定結果を利用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項4】
前記行動履歴再現ステップで推定した前記誤差の時間変化を蓄積し、前記水中航走体における誤差蓄積の予測を行い、前記測位情報取得ステップで取得した前記測位情報の欠落や誤検出があった場合に、前記誤差蓄積の予測結果を前記測位情報の代用とすることを特徴とする請求項2、又は請求項2を引用する請求項3に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項5】
前記通信手段を音響通信方式とするとともに、前記通信手段で前記音響測位装置を兼ねて前記水中航走体の前記3次元位置を測位することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項6】
前記水中航走体が複数の場合に、前記行動履歴取得ステップにおいて、任意の前記水中航走体に集約した複数の前記水中航走体の前記行動履歴をまとめて取得することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項7】
任意の前記水中航走体に前記行動履歴を集約するときに、任意の前記水中航走体と他の前記水中航走体との相対距離を併せて集約することを特徴とする請求項6に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項8】
前記水中航走体が複数の場合に、前記行動履歴及び前記測位情報を取得する前記水中航走体を、監視する側から設定する水中航走体設定ステップをさらに有したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項9】
前記行動履歴取得ステップで取得される前記航走経路を含む前記行動履歴の内容を、前記水中航走体を監視する側から指示する、又は前記水中航走体に予め設定する行動履歴内容決定ステップをさらに有したことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の水中航走体の監視方法。
【請求項10】
水中航走体を行動履歴に基づいて監視する監視プログラムであって、
コンピュータに、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水中航走体の監視方法における前記測位情報取得ステップ、前記行動履歴取得ステップ、前記行動履歴再現ステップ、及び前記監視情報提供ステップを実行させることを特徴とする水中航走体の監視プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータに、
請求項8に記載の前記水中航走体設定ステップにおける前記水中航走体の設定を、前記コンピュータへの入力情報として受け付けさせることを特徴とする請求項10に記載の水中航走体の監視プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータに、
請求項9に記載の前記行動履歴内容決定ステップにおける前記行動履歴の内容に関する監視する側からの指示、又は前記水中航走体への予めの設定を、前記コンピュータへの入力情報として受け付けさせることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の水中航走体の監視プログラム。
【請求項13】
水中航走体を行動履歴に基づいて監視する監視システムであって、前記水中航走体で得た航走経路を含む行動履歴を所定の周期又は指示信号に基づいて通信手段を介して取得する行動履歴取得手段と、前記水中航走体の3次元位置を音響測位装置で測位した測位情報を取得する測位情報取得手段と、同時刻における前記行動履歴と前記測位情報とを比較し、前記測位情報に基づき前記行動履歴を補正して正しい行動履歴を再現する行動履歴再現手段と、前記水中航走体を監視するための再現した前記正しい行動履歴を提供する監視情報提供手段とを備えたことを特徴とする水中航走体の監視システム。
【請求項14】
前記行動履歴再現手段は、前記通信手段による通信時の前記3次元位置と、取得した前記行動履歴のうちの前記通信時と同時刻における自己位置推定結果とを比較し、前記3次元位置と前記自己位置推定結果との誤差の時間変化を推定することにより、前記行動履歴を補正して前記正しい行動履歴としての航跡を再現することを特徴とする請求項13に記載の水中航走体の監視システム。
【請求項15】
前記行動履歴再現手段において、前記行動履歴を補正するに当たり、前記水中航走体に設けた水深計で得た水深データと地形照合手段による既知の水底地形図との照合により得られる位置推定結果を利用することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の水中航走体の監視システム。
【請求項16】
前記行動履歴再現手段において、推定した前記誤差の時間変化を蓄積し、前記水中航走体における誤差蓄積の予測を行い、前記行動履歴取得手段で取得した前記測位情報の欠落や誤検出があった場合に、前記誤差蓄積の予測結果を前記測位情報の代用とすることを特徴とする請求項14、又は請求項14を引用する請求項15に記載の水中航走体の監視システム。
【請求項17】
前記通信手段を音響通信方式とするとともに、前記通信手段が前記音響測位装置を兼ねて前記水中航走体の前記3次元位置を測位することを特徴とする請求項13から請求項16のいずれか1項に記載の水中航走体の監視システム。
【請求項18】
前記水中航走体を複数有し、複数の前記水中航走体のそれぞれに設けた相互通信手段を介して任意の前記水中航走体に集約した複数の前記水中航走体の前記行動履歴を前記行動履歴取得手段がまとめて取得することを特徴とする請求項13から請求項17のいずれか1項に記載の水中航走体の監視システム。
【請求項19】
任意の前記水中航走体に他の前記水中航走体の前記行動履歴を集約するときに、前記相互通信手段を介し任意の前記水中航走体と他の前記水中航走体との相対距離を併せて集約することを特徴とする請求項18に記載の水中航走体の監視システム。
【請求項20】
前記水中航走体を複数有し、前記行動履歴及び前記測位情報を取得する前記水中航走体を、監視する側から設定する水中航走体設定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項13から請求項17のいずれか1項に記載の水中航走体の監視システム。
【請求項21】
前記行動履歴取得手段で取得される前記航走経路を含む前記行動履歴の内容を前記水中航走体を監視する側から指示する指示手段、又は前記水中航走体に予め設定する設定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項13から請求項20のいずれか1項に記載の水中航走体の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中航走体を行動履歴に基づいて監視する、水中航走体の監視方法、監視プログラム、及び監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋や湖沼等において調査水域に水中航走体を投入して水底探査を行う場合は、管制機器を搭載した水上の船舶等が水中航走体を管制している。
例えば特許文献1には、水上航走体に設けられ、水中航走体との間で音響通信により情報の送受信を行う音響通信機と、音響測位により水中航走体の位置を計測する音響測位機と、音響測位機による水中航走体の音響測位結果から算出される水中航走体の位置情報を保持する位置情報保持部としての記憶部と、位置情報保持部に保持されている水中航走体の位置情報から、水中航走体の移動経路を予測し、当該移動経路を移動する水中航走体との音響通信が可能となるように水上航走体の進路を決定する進路決定部及び進路決定部によって決定された進路に沿って水上航走体を航走させる航走制御部として機能する処理部と、を備える航走管理装置が開示されている。
また、特許文献2には、水中航走体に予め与える航走経路中に、相互に交差する緯度検出経路と経度検出経路とからなる位置修正用経路を設定し、水中航走体は、慣性航法により検出した位置に基づいて、緯度検出経路と経度検出経路とを連続して航走し、位置修正用経路を航走中の水中航走体と支援船との相対位置を音響測位し、支援船について求めた位置と音響測位した相対位置とに基づいて、水中航走体が実際に航走した緯度、経度を求め、水中航走体が実際に航走した緯度、経度と位置修正用航路との偏差を求め、この偏差を水中航走体に与えて検出位置を修正する水中航走体の検出位置修正方法が開示されている。
また、特許文献3には、水中航走体を、慣性航法位置に累積誤差がなくて精度が高い状態のときに、緯度方向と経度方向の各アップデート用経路に沿って航走させながら、支援船側より音響測位を行い、得られた音響測位位置の緯度成分の代表値を緯度方向基準値、音響測位位置の経度成分の代表値を経度方向基準値とし、その後、慣性航法位置に誤差が累積した水中航走体を、緯度方向と経度方向の各位置アップデート用経路に沿って再び航走させ、この際、支援船側からの音響測位で得られる音響測位位置の緯度方向の代表値、及び、音響測位位置の経度方向の代表値を、緯度方向と経度方向の各基準値と比較して緯度方向と経度方向の偏差を求め、この偏差により水中航走体の慣性航法位置を較正させる水中航走体の位置較正方法が開示されている。
また、特許文献4には、水中航走体を、定点保持又は着底により海底に対する相対位置変化を停止させ、この状態で、支援船側からの音響測位を複数回行い、各計測結果における緯度方向の平均と経度方向の平均を求めて、水中航走体の統計的に正しい緯度と経度を備えた音響測位位置を求め、又、水中航走体自身による慣性航法に基づく測位を行い、その緯度及び経度について、音響測位位置の緯度及び経度と比較して、緯度方向と経度方向の偏差をそれぞれ求め、求められた緯度方向及び経度方向の偏差により、水中航走体自身による慣性航法に基づく緯度と経度のデータを較正させ、更に、音響測位時に支援船を水底付近に停止させた水中航走体の鉛直線上付近に保持することで音響測位精度を向上させる水中航走体の位置較正方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-165332号公報
【特許文献2】特開2006-313087号公報
【特許文献3】特開2011-163929号公報
【特許文献4】特開2011-163930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は従来の水中航走体に対する管制の模式図である。水中航走体200がAUV(Autonomous Underwater Vehicle、無人かつ無索で自律航走するロボット)である場合、母船100による管制には音響通信による状態確認と音響測位による位置確認が用いられるが、音波を用いるという物理的な制約から、数秒~数十秒という間隔で実行せざるを得ず、図8に示すように、通信及び測位を実施した瞬間の点的な情報を疎らにしか得る事ができない。このため、従来、水中航走体200の詳細な航走経路(航跡)は、運用中には得られず、揚収した水中航走体200からログを回収し、詳細に解析することで初めて得られる情報であった。このように従来の管制は、通信及び測位のタイミングで水中航走体200の位置座標の点情報を取得するに留まっているが、これではAUVの異常行動の察知や、ピンポイントの観測地点を観測できたかの判断ができず、AUVの管制が十全とは言えない。
また、特許文献1には、水上航走体が水中航走体との相対位置と自らの絶対位置とに基づいて水中航走体の位置情報を取得して水中航走体に提供し、水中航走体が提供された位置情報を用いて自位置を較正することが記載されているが、水中航走体から取得した行動履歴を補正して正しい行動履歴を運用中に再現するものではない。
また、特許文献2は、水中航走体が位置修正用経路から外れている場合は支援船から修正値を水中航走体に送信し水中航走体が修正値に基づいて自位置を修正するものであるが、水中航走体から取得した行動履歴を補正して正しい行動履歴を運用中に再現するものではない。
また、特許文献3は、予め設定したアップデート用経路を利用して水中航走体の慣性航法位置を較正するものであるが、水中航走体から取得した行動履歴を補正して正しい行動履歴を運用中に再現するものではない。
また、特許文献4は、停止させた水中航走体の位置を支援船から計測して求めた音響計測位置を基に水中航走体の慣性航法位置を較正するものであるが、水中航走体から取得した行動履歴を補正して正しい行動履歴を運用中に再現するものではない。
そこで本発明は、潜航中の水中航走体を通信と音響測位により管制する場面において、より高度な水中航走体の管制を可能とする水中航走体の監視方法、監視プログラム、及び監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載に対応した水中航走体の監視方法においては、水中航走体を行動履歴に基づいて監視する監視方法であって、水中航走体で得た航走経路を含む行動履歴を所定の周期又は指示信号に基づいて通信手段を介して取得する行動履歴取得ステップと、水中航走体の3次元位置を音響測位装置で計測し測位情報を取得する測位情報取得ステップと、同時刻における行動履歴と測位情報とを比較し、測位情報に基づき行動履歴を補正して正しい行動履歴を再現する行動履歴再現ステップと、水中航走体を監視するための再現した正しい行動履歴を提供する監視情報提供ステップとを備えたことを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、通信により取得した行動履歴と音響測位で得た測位情報から、所定の周期又は指示信号に基づいた測位点間における水中航走体の位置を含む正しい行動履歴を運用中にその場で再現し、正しい行動履歴を準リアルタイムに運用者に提供できるため、運用者は提供された正しい行動履歴に基づいて水中航走体の監視を行い、異常行動の察知による故障等の予見や、設定された航走ルートからの逸脱判断など、より高度な水中航走体の管制を行うことができる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、行動履歴再現ステップにおいて、通信手段による通信時の3次元位置と、取得した行動履歴のうちの通信時と同時刻における自己位置推定結果とを比較し、3次元位置と自己位置推定結果との誤差の時間変化を推定することにより、行動履歴を補正して正しい行動履歴としての航跡を再現することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、測位点間の水中航走体の行動履歴を誤差の時間変化を推定することにより航跡として精度よく再現することができる。
【0007】
請求項3記載の本発明は、行動履歴再現ステップにおいて、行動履歴を補正するに当たり、水中航走体で得た水深データと既知の水底地形図との照合により得られた位置推定結果を利用することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、水深データと水底地形図との照合により得られる位置推定結果を加味して測位点間の水中航走体の行動履歴を精度よく再現することができる。
【0008】
請求項4記載の本発明は、行動履歴再現ステップで推定した誤差の時間変化を蓄積し、水中航走体における誤差蓄積の予測を行い、測位情報取得ステップで取得した測位情報の欠落や誤検出があった場合に、誤差蓄積の予測結果を測位情報の代用とすることを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、測位情報が欠落又は誤検出となった場合でも、通信により行動履歴が取得できていれば、それまでに蓄積されている誤差の時間変化から現在の誤差蓄積を予測し、その予測結果を測位情報の代わりに用いて、測位点間の水中航走体の行動履歴を運用中にその場で再現することができる。
【0009】
請求項5記載の本発明は、通信手段を音響通信方式とするとともに、通信手段で音響測位装置を兼ねて水中航走体の3次元位置を測位することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、通信手段で音響測位も行うことができるため、設置スペース及びコスト等を抑制することができる。
【0010】
請求項6記載の本発明は、水中航走体が複数の場合に、行動履歴取得ステップにおいて、任意の水中航走体に集約した複数の水中航走体の行動履歴をまとめて取得することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、監視する水中航走体が複数の場合に任意の水中航走体に集約した行動履歴をまとめて効率的に取得することができる。
【0011】
請求項7記載の本発明は、任意の水中航走体に行動履歴を集約するときに、任意の水中航走体と他の水中航走体との相対距離を併せて集約することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、水中航走体の位置座標を求める際に相対距離を利用して計算を簡略化できるため、複数の水中航走体の測位点間の行動履歴をより迅速に再現することができる。また、複数の水中航走体を扱う際に絶対座標ではなく相対距離を利用することにより、数字の桁数を減らして通信量を軽減できる。
【0012】
請求項8記載の本発明は、水中航走体が複数の場合に、行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を、監視する側から設定する水中航走体設定ステップをさらに有したことを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、複数の水中航走体の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を監視する側から設定することで、処理量を減らして、より手厚い監視が必要な水中航走体、又は監視が困難な水中航走体についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
【0013】
請求項9記載の本発明は、行動履歴取得ステップで取得される航走経路を含む行動履歴の内容を、水中航走体を監視する側から指示する、又は水中航走体に予め設定する行動履歴内容決定ステップをさらに有したことを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、取得する行動履歴の内容を監視する側から状況に応じて適切に指示又は設定することで、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体に設定することができる。
【0014】
請求項10記載に対応した水中航走体の監視プログラムにおいては、水中航走体を行動履歴に基づいて監視する監視プログラムであって、コンピュータに、水中航走体の監視方法における測位情報取得ステップ、行動履歴取得ステップ、行動履歴再現ステップ、及び監視情報提供ステップを実行させることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、水中航走体の監視方法を正確かつ迅速に実行し、再現した正しい行動履歴を準リアルタイムに水中航走体の監視を行う運用者に提供することができる。
【0015】
請求項11記載の本発明は、コンピュータに、水中航走体設定ステップにおける水中航走体の設定を、コンピュータへの入力情報として受け付けさせることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、複数の水中航走体の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を監視する側から設定することで、処理量を減らして、より手厚い監視が必要な水中航走体、又は監視が困難な水中航走体についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
【0016】
請求項12記載の本発明は、コンピュータに、行動履歴内容決定ステップにおける行動履歴の内容に関する監視する側からの指示、又は水中航走体への予めの設定を、コンピュータへの入力情報として受け付けさせることを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、取得する行動履歴の内容を監視する側から状況に応じて適切に指示又は設定することで、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体に設定することができる。
【0017】
請求項13記載に対応した水中航走体の監視システムにおいては、水中航走体を行動履歴に基づいて監視する監視システムであって、水中航走体で得た航走経路を含む行動履歴を所定の周期又は指示信号に基づいて通信手段を介して取得する行動履歴取得手段と、水中航走体の3次元位置を音響測位装置で測位した測位情報を取得する測位情報取得手段と、同時刻における行動履歴と測位情報とを比較し、測位情報に基づき行動履歴を補正して正しい行動履歴を再現する行動履歴再現手段と、水中航走体を監視するための再現した正しい行動履歴を提供する監視情報提供手段とを備えたことを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、通信により取得した行動履歴と音響測位で得た測位情報から、所定の周期又は指示信号に基づいた測位点間における水中航走体の位置を含む正しい行動履歴を運用中にその場で再現し、正しい行動履歴を準リアルタイムに運用者に提供できるため、運用者は提供された正しい行動履歴に基づいて水中航走体の監視を行い、異常行動の察知による故障等の予見や、設定された航走ルートからの逸脱判断など、より高度な水中航走体の管制を行うことができる。
【0018】
請求項14記載の本発明は、行動履歴再現手段は、通信手段による通信時の3次元位置と、取得した行動履歴のうちの通信時と同時刻における自己位置推定結果とを比較し、3次元位置と自己位置推定結果との誤差の時間変化を推定することにより、行動履歴を補正して正しい行動履歴としての航跡を再現することを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、測位点間の水中航走体の行動履歴を誤差の時間変化を推定することにより航跡として精度よく再現することができる。
【0019】
請求項15記載の本発明は、行動履歴再現手段において、行動履歴を補正するに当たり、水中航走体に設けた水深計で得た水深データと地形照合手段による既知の水底地形図との照合により得られる位置推定結果を利用することを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、水深データと水底地形図との照合により得られる位置推定結果を加味して測位点間の水中航走体の行動履歴を精度よく再現することができる。
【0020】
請求項16記載の本発明は、行動履歴再現手段において、推定した誤差の時間変化を蓄積し、水中航走体における誤差蓄積の予測を行い、行動履歴取得手段で取得した測位情報の欠落や誤検出があった場合に、誤差蓄積の予測結果を測位情報の代用とすることを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、測位情報が欠落又は誤検出となった場合でも、通信により行動履歴が取得できていれば、それまでに蓄積されている誤差の時間変化から現在の誤差蓄積を予測し、その予測結果を測位情報の代わりに用いて、測位点間の水中航走体の行動履歴を運用中にその場で再現することができる。
【0021】
請求項17記載の本発明は、通信手段を音響通信方式とするとともに、通信手段が音響測位装置を兼ねて水中航走体の3次元位置を測位することを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、通信手段で音響測位も行うことができるため、設置スペース及びコスト等を抑制することができる。
【0022】
請求項18記載の本発明は、水中航走体を複数有し、複数の水中航走体のそれぞれに設けた相互通信手段を介して任意の水中航走体に集約した複数の水中航走体の行動履歴を行動履歴取得手段がまとめて取得することを特徴とする。
請求項18に記載の本発明によれば、監視する水中航走体が複数の場合に任意の水中航走体に集約した行動履歴をまとめて効率的に取得することができる。
【0023】
請求項19記載の本発明は、任意の水中航走体に他の水中航走体の行動履歴を集約するときに、相互通信手段を介し任意の水中航走体と他の水中航走体との相対距離を併せて集約することを特徴とする。
請求項19に記載の本発明によれば、水中航走体の位置座標を求める際に相対距離を利用して計算を簡略化できるため、複数の水中航走体の測位点間の行動履歴をより迅速に再現することができる。また、複数の水中航走体を扱う際に絶対座標ではなく相対距離を利用することにより、数字の桁数を減らして通信量を軽減できる。
【0024】
請求項20記載の本発明は、水中航走体を複数有し、行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を、監視する側から設定する水中航走体設定手段をさらに備えたことを特徴とする。
請求項20に記載の本発明によれば、複数の水中航走体の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を監視する側から設定することで、処理量を減らして、より手厚い監視が必要な水中航走体、又は監視が困難な水中航走体についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
【0025】
請求項21記載の本発明は、行動履歴取得手段で取得される航走経路を含む行動履歴の内容を水中航走体を監視する側から指示する指示手段、又は水中航走体に予め設定する設定手段をさらに備えたことを特徴とする。
請求項21に記載の本発明によれば、取得する行動履歴の内容を監視する側から状況に応じて適切に指示又は設定することで、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体に設定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の水中航走体の監視方法によれば、通信により取得した行動履歴と音響測位で得た測位情報から、所定の周期又は指示信号に基づいた測位点間における水中航走体の位置を含む正しい行動履歴を運用中にその場で再現し、正しい行動履歴を準リアルタイムに運用者に提供できるため、運用者は提供された正しい行動履歴に基づいて水中航走体の監視を行い、異常行動の察知による故障等の予見や、設定された航走ルートからの逸脱判断など、より高度な水中航走体の管制を行うことができる。
【0027】
また、行動履歴再現ステップにおいて、通信手段による通信時の3次元位置と、取得した行動履歴のうちの通信時と同時刻における自己位置推定結果とを比較し、3次元位置と自己位置推定結果との誤差の時間変化を推定することにより、行動履歴を補正して正しい行動履歴としての航跡を再現する場合には、測位点間の水中航走体の行動履歴を誤差の時間変化を推定することにより航跡として精度よく再現することができる。
【0028】
また、行動履歴再現ステップにおいて、行動履歴を補正するに当たり、水中航走体で得た水深データと既知の水底地形図との照合により得られた位置推定結果を利用する場合には、水深データと水底地形図との照合により得られる位置推定結果を加味して測位点間の水中航走体の行動履歴を精度よく再現することができる。
【0029】
また、行動履歴再現ステップで推定した誤差の時間変化を蓄積し、水中航走体における誤差蓄積の予測を行い、測位情報取得ステップで取得した測位情報の欠落や誤検出があった場合に、誤差蓄積の予測結果を測位情報の代用とする場合には、測位情報が欠落又は誤検出となった場合でも、通信により行動履歴が取得できていれば、それまでに蓄積されている誤差の時間変化から現在の誤差蓄積を予測し、その予測結果を測位情報の代わりに用いて、測位点間の水中航走体の行動履歴を運用中にその場で再現することができる。
【0030】
また、通信手段を音響通信方式とするとともに、通信手段で音響測位装置を兼ねて水中航走体の3次元位置を測位する場合には、通信手段で音響測位も行うことができるため、設置スペース及びコスト等を抑制することができる。
【0031】
また、水中航走体が複数の場合に、行動履歴取得ステップにおいて、任意の水中航走体に集約した複数の水中航走体の行動履歴をまとめて取得する場合には、監視する水中航走体が複数の場合に任意の水中航走体に集約した行動履歴をまとめて効率的に取得することができる。
【0032】
また、任意の水中航走体に行動履歴を集約するときに、任意の水中航走体と他の水中航走体との相対距離を併せて集約する場合には、水中航走体の位置座標を求める際に相対距離を利用して計算を簡略化できるため、複数の水中航走体の測位点間の行動履歴をより迅速に再現することができる。また、複数の水中航走体を扱う際に絶対座標ではなく相対距離を利用することにより、数字の桁数を減らして通信量を軽減できる。
【0033】
また、水中航走体が複数の場合に、行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を、監視する側から設定する水中航走体設定ステップをさらに有した場合には、複数の水中航走体の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を監視する側から設定することで、処理量を減らして、より手厚い監視が必要な水中航走体、又は監視が困難な水中航走体についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
【0034】
また、行動履歴取得ステップで取得される航走経路を含む行動履歴の内容を、水中航走体を監視する側から指示する、又は水中航走体に予め設定する行動履歴内容決定ステップをさらに有した場合には、取得する行動履歴の内容を監視する側から状況に応じて適切に指示又は設定することで、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体に設定することができる。
【0035】
また、本発明の水中航走体の監視プログラムによれば、水中航走体の監視方法を正確かつ迅速に実行し、再現した正しい行動履歴を準リアルタイムに水中航走体の監視を行う運用者に提供することができる。
【0036】
また、コンピュータに、水中航走体設定ステップにおける水中航走体の設定を、コンピュータへの入力情報として受け付けさせる場合には、複数の水中航走体の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を監視する側から設定することで、処理量を減らして、より手厚い監視が必要な水中航走体、又は監視が困難な水中航走体についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
【0037】
また、コンピュータに、行動履歴内容決定ステップにおける行動履歴の内容に関する監視する側からの指示、又は水中航走体への予めの設定を、コンピュータへの入力情報として受け付けさせる場合には、取得する行動履歴の内容を監視する側から状況に応じて適切に指示又は設定することで、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体に設定することができる。
【0038】
また、本発明の水中航走体の監視システムによれば、通信により取得した行動履歴と音響測位で得た測位情報から、所定の周期又は指示信号に基づいた測位点間における水中航走体の位置を含む正しい行動履歴を運用中にその場で再現し、正しい行動履歴を準リアルタイムに運用者に提供できるため、運用者は提供された正しい行動履歴に基づいて水中航走体の監視を行い、異常行動の察知による故障等の予見や、設定された航走ルートからの逸脱判断など、より高度な水中航走体の管制を行うことができる。
【0039】
また、行動履歴再現手段は、通信手段による通信時の3次元位置と、取得した行動履歴のうちの通信時と同時刻における自己位置推定結果とを比較し、3次元位置と自己位置推定結果との誤差の時間変化を推定することにより、行動履歴を補正して正しい行動履歴としての航跡を再現する場合には、測位点間の水中航走体の行動履歴を誤差の時間変化を推定することにより航跡として精度よく再現することができる。
【0040】
また、行動履歴再現手段において、行動履歴を補正するに当たり、水中航走体に設けた水深計で得た水深データと地形照合手段による既知の水底地形図との照合により得られる位置推定結果を利用する場合には、水深データと水底地形図との照合により得られる位置推定結果を加味して測位点間の水中航走体の行動履歴を精度よく再現することができる。
【0041】
また、行動履歴再現手段において、推定した誤差の時間変化を蓄積し、水中航走体における誤差蓄積の予測を行い、行動履歴取得手段で取得した測位情報の欠落や誤検出があった場合に、誤差蓄積の予測結果を測位情報の代用とする場合には、測位情報が欠落又は誤検出となった場合でも、通信により行動履歴が取得できていれば、それまでに蓄積されている誤差の時間変化から現在の誤差蓄積を予測し、その予測結果を測位情報の代わりに用いて、測位点間の水中航走体の行動履歴を運用中にその場で再現することができる。
【0042】
また、通信手段を音響通信方式とするとともに、通信手段が音響測位装置を兼ねて水中航走体の3次元位置を測位する場合には、通信手段で音響測位も行うことができるため、設置スペース及びコスト等を抑制することができる。
【0043】
また、水中航走体を複数有し、複数の水中航走体のそれぞれに設けた相互通信手段を介して、任意の水中航走体に集約した複数の水中航走体の行動履歴を行動履歴取得手段がまとめて取得する場合には、監視する水中航走体が複数の場合に任意の水中航走体に集約した行動履歴をまとめて効率的に取得することができる。
【0044】
また、任意の水中航走体に他の水中航走体の行動履歴を集約するときに、相互通信手段を介し任意の水中航走体と他の水中航走体との相対距離を併せて集約する場合には、水中航走体の位置座標を求める際に相対距離を利用して計算を簡略化できるため、複数の水中航走体の測位点間の行動履歴をより迅速に再現することができる。また、複数の水中航走体を扱う際に絶対座標ではなく相対距離を利用することにより、数字の桁数を減らして通信量を軽減できる。
【0045】
また、水中航走体を複数有し、行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を、監視する側から設定する水中航走体設定手段をさらに備えた場合には、複数の水中航走体の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体を監視する側から設定することで、処理量を減らして、より手厚い監視が必要な水中航走体、又は監視が困難な水中航走体についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
【0046】
また、行動履歴取得手段で取得される航走経路を含む行動履歴の内容を水中航走体を監視する側から指示する指示手段、又は水中航走体に予め設定する設定手段をさらに備えた場合には、取得する行動履歴の内容を監視する側から状況に応じて適切に指示又は設定することで、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態による水中航走体の監視方法のフロー図
図2】同水中航走体の監視システムを機能実現手段で表した機能ブロック図
図3】同補正による行動履歴の再現を示す模式図
図4】同誤差の時間的変化の推定を用いた補正による行動履歴の再現を示す模式図
図5】本発明の他の実施形態による水中航走体の監視方法のフロー図
図6】同水中航走体の監視システムを機能実現手段で表した機能ブロック図
図7】同複数の水中航走体の行動履歴をまとめて取得し補正により行動履歴を再現する様子を示す模式図
図8】従来の水中航走体に対する管制の模式図
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実施形態による水中航走体の監視方法、監視プログラム、及び監視システムについて説明する。
図1は水中航走体の監視方法のフロー図、図2は水中航走体の監視システムを機能実現手段で表した機能ブロック図である。
図2では、海洋や湖沼等において、母船10に積載して運搬してきた複数の水中航走体20を調査水域に投入し、水底を探査することにより鉱物資源やエネルギー資源等の探査を行う状態を示している。
母船10は、電波の届かない水中で水底の探査を行う水中航走体20に対して音響信号を利用した管制を行う。母船10には、母船10側の通信手段11、音響測位装置12、及び水中航走体の監視システムが搭載されている。監視システムは、行動履歴取得手段31、測位情報取得手段32、行動履歴再現手段33、及び監視情報提供手段34の機能を有するコンピュータ30を備える。
水中航走体20は、AUVなどであり、水中航走体20側の通信手段21、水中航走体20の行動履歴を記録する行動履歴記録装置22、及び水深計23を備える。
行動履歴記録装置22に記録される行動履歴は、慣性航法装置(INS:Inertial Navigation System)による自己位置推定に基づく航走経路(方位及び姿勢を含む)、航走の際の制御信号(例えば推進速度)、及びセンサ等で収集した水中や水底等の環境情報(例えば地形情報)、及び水深計23で取得した水深データ等、水中航走体20の航走に伴い得られた情報である。
【0049】
図1に示す行動履歴取得ステップS1において、行動履歴取得手段31は、所定の周期で水中航走体20から母船10へ送信される行動履歴を取得する。また、運用者により行動履歴取得操作がなされた場合は、水中航走体20に対して行動履歴の送信を指示する指示信号を通信手段11から送信する。
水中航走体20は、所定の周期、又は通信手段11から送信された指示信号に基づいて、行動履歴記録装置22に記録されている航走経路を含む行動履歴を通信手段21から母船10へ送信する。
このように、行動履歴取得ステップS1においては、行動履歴取得手段31が、水中航走体20で得た航走経路を含む行動履歴を、所定の周期又は指示信号に基づいて通信手段11、21を介して取得する。行動履歴取得手段31は、取得した行動履歴を行動履歴再現手段33に伝送する。
【0050】
測位情報取得ステップS2においては、測位情報取得手段32が、水中航走体20の3次元位置を音響測位装置12で測位した測位情報を取得する。測位情報には測位座標が含まれる。音響測位装置12による水中航走体20の測位は、数秒~数十秒の間隔で実行され、本実施形態においては行動履歴の通信時に水中航走体20の測位を行う。測位情報取得手段32は、取得した測位情報を行動履歴再現手段33に伝送する。
音響測位装置12の測位方式は、例えば、SBL(Short Base Line)方式、又はSSBL(Super Short Base Line)方式である。SBL方式もSSBL方式も、母船10と水中航走体20の間で音を往復させ、母船10からの相対位置を求めること、及び音波の到来方位の検出と距離の検出により水中航走体20の3次元位置を求めることは同じである。SBL方式とSSBL方式の違いは装置の規模の大小で判断されるが、測位の原理は同じなので、SSBL方式のことをSBL方式と呼ぶ場合もある。
【0051】
行動履歴再現ステップS3においては、行動履歴再現手段33が、同時刻における行動履歴と測位情報とを比較し、測位情報に基づき行動履歴を補正して正しい行動履歴を再現する。
ここで、図3は補正による行動履歴の再現を示す模式図である。図3中の点線は自己位置推定結果に基づく航走経路を示し、実線は補正により再現した正しい航跡を示す。行動履歴通信時の測位座標と、取得した行動履歴内の同時刻の自己位置推定とを比較した差分から、行動履歴を補正して測位点間の正しい行動履歴を再現している。行動履歴再現手段33は、再現した正しい行動履歴を監視情報提供手段34に伝送する。
【0052】
行動履歴再現ステップS3において、行動履歴再現手段33は、通信手段11、21による通信時に測位した水中航走体20の3次元位置と、取得した行動履歴のうちの通信時と同時刻における自己位置推定結果とを比較し、3次元位置と自己位置推定結果との誤差の時間変化を推定することにより、行動履歴を補正して正しい行動履歴としての航跡を再現することが好ましい。これにより、測位点間の水中航走体20の行動履歴を誤差の時間変化を推定することにより航跡として精度よく再現することができる。
ここで、図4は誤差の時間的変化の推定を用いた補正による行動履歴の再現を示す模式図である。図4中の点線は自己位置推定に基づく航走経路を示し、実線は補正により再現した正しい航跡を示す。行動履歴通信時の測位座標と、取得した行動履歴内の同時刻の自己位置推定との比較から、自己位置推定と測位座標との誤差の時間変化を推定することで、行動履歴を補正して測位座標間の正しい航跡(測位間航跡)を再現している。
正しい行動履歴の再現は、行動履歴取得手段31が取得した行動履歴に含まれる位置、方位、及び姿勢等を、測位情報取得手段32が取得した測位情報に照らし合わせて補正し、正しい位置、方位、及び姿勢等を得ることで行われ、この正しい位置、方位、及び姿勢等に基づいて、音響測位を行った時刻ごとの点を繋ぎ合わせ正しい行動履歴としての航跡を再現する。また、正しい位置、方位、及び姿勢等に基づいて、その正しい条件下における制御信号や環境情報も再現できる。
【0053】
行動履歴再現手段33は、行動履歴再現ステップS3で推定した誤差の時間変化を記憶手段(図示略)に蓄積し、誤差の時間変化の蓄積した結果を統計処理して水中航走体20における自己位置推定結果の誤差蓄積を予測する機能を持つ。そして行動履歴再現手段33は、測位情報取得ステップS2において測位情報の欠落や誤検出があった場合は、誤差蓄積の予測結果を測位情報の代用とする。
これにより、測位情報が欠落又は誤検出となった場合でも、通信により行動履歴が取得できていれば、それまでに蓄積されている誤差の時間変化から現在の誤差蓄積を予測し、その予測結果を測位情報の代わりに用いて、測位点間の水中航走体20の行動履歴を運用中にその場で再現することができる。なお、測位情報の欠落には、測位情報の欠測も含まれる。
【0054】
監視情報提供ステップS4においては、監視情報提供手段34が、水中航走体20を監視するための再現した正しい行動履歴を、水中航走体20の運用者に提供する。監視情報提供手段34による正しい行動履歴の提供は、モニタへの表示や所定用紙への印刷、又は保存可能な電子ファイル形式での出力等により行われる。
【0055】
このように、通信により取得した行動履歴と音響測位で得た測位情報から、所定の周期又は指示信号に基づいた測位点間における水中航走体20の位置を含む正しい行動履歴を運用中にその場で再現し、正しい行動履歴を準リアルタイムに運用者に提供できるため、運用者は提供された正しい行動履歴に基づいて水中航走体20の監視を行い、異常行動の察知による故障等の予見や、設定された航走ルートからの逸脱判断など、より高度な水中航走体20の管制を行うことができる。設定された航走ルートからの逸脱判断については、例えば、従来はピンポイントの観測点に対し、念のため水中航走体20を数回通過させるコースを設定するなどして計測漏れ対策をしているが、本発明では目標を外れて航走したと判断される場合に再観測の指示を出すことで対応が可能になるなど、水中航走体20の運用効率の向上に役立てることができる。
また、水中航走体20から取得した行動履歴に含まれる航走経路の全体を一意に与えた値でスライドさせて補正するのではなく、通信及び測位を行ったスパンに合わせた細かな補正を行って正しい行動履歴を再現するため、より正確に航跡を再現することができる。
【0056】
次に、本発明の他の実施形態による水中航走体の監視方法、監視プログラム、及び監視システムについて説明する。なお、上記した実施形態と同一手段等については同一符号を付して説明を省略する。
図5は水中航走体の監視方法のフロー図、図6は水中航走体の監視システムを機能実現手段で表した機能ブロック図、図7は複数の水中航走体の行動履歴をまとめて取得し補正により行動履歴を再現する様子を示す模式図である。
本実施形態の監視システムは、母船10に水中航走体設定手段13、指示手段14、及び設定手段15をさらに備えると共に、水中航走体20に相互通信手段24及び地形照合手段25をさらに備える。なお、地形照合手段25は、複数の水中航走体20のうちの1機のみに搭載されているが、他の水中航走体20に搭載することもできる。
水中航走体設定手段13は、母船10に乗船している運用者など、監視する側の者によって操作される。運用者等は、監視対象の水中航走体20が複数存在する場合、行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体20を、水中航走体設定手段13を用いて予め設定する(S01:水中航走体設定ステップ)。複数の水中航走体20の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体20を監視する側から設定することで、処理量を減らして、より手厚い監視が必要な水中航走体20、又は監視が困難な水中航走体20についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
なお、複数の水中航走体20すべてを行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体20として設定することもできる。
【0057】
指示手段14及び設定手段15も、監視する側の者によって操作される。運用者等は、行動履歴取得ステップS1において行動履歴手段で取得される航走経路を含む行動履歴の内容を、指示手段14を用いて水中航走体20に指示するか、又は設定手段15を用いて水中航走体20に予め設定することが可能である(S02:行動履歴内容決定ステップ)。
行動履歴記録装置22には、行動履歴として、自己位置推定結果に基づく航走経路の他、航走の際の制御信号、及び各種センサ等で収集した水中や水底等の環境情報等が記録されているため、取得する行動履歴の内容として状況に応じて航走経路の他に取得する情報を選択することで、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体20に設定することができる。
指示手段14を用いて水中航走体20に指示する場合は、その指示に基づく内容の行動履歴が水中航走体20の行動履歴記録装置22から母船10に送信され、設定手段15を用いて予め設定されている場合は、その設定に基づく内容の行動履歴が水中航走体20の行動履歴記録装置22から母船10に送信される。
【0058】
相互通信手段24は、複数の水中航走体20のそれぞれに設けられ、水中航走体20同士の通信に用いられる。
運用者等は、監視対象の水中航走体20が複数存在する場合、水中航走体設定ステップS01の代わりに、複数の水中航走体20のうちの1機又は複数機を情報の集約先として任意に選定することもできる。
集約先として設定された水中航走体20には、それ以外の水中航走体20から相互通信手段24を介して行動履歴が送信される。集約先の水中航走体20は、受信した他の水中航走体20の行動履歴を行動履歴記録装置22に記憶し、所定の周期、又は行動履歴取得手段31からの指示信号に基づいて、行動履歴記録装置22に記憶している自己及び他の水中航走体20の行動履歴を、通信手段21を利用して母船10へ送信する。なお、通信手段21で相互通信手段24を兼ねることもできる。
これにより、行動履歴取得ステップS1において行動履歴取得手段31は、任意の水中航走体20に集約された複数の水中航走体20の行動履歴をまとめて取得することができるため、監視する水中航走体20が複数の場合に任意の水中航走体20に集約した行動履歴をまとめて効率的に取得することができる。
また、任意に選定された集約先の水中航走体20に行動履歴を集約するときは、相互通信手段24を介して、任意の水中航走体20と他の水中航走体20との相対距離を併せて集約することが好ましい。行動履歴と相対距離を併せて取得する場合、行動履歴再現手段33において、取得した相対距離を座標表現に利用し、数字の桁数を軽減することで、計算を簡略化して複数の水中航走体20の測位点間の行動履歴をより迅速に再現できる。また、複数の水中航走体20を扱う際に絶対座標ではなく相対距離を利用することにより、数字の桁数を減らして通信量を軽減できる。
【0059】
地形照合手段25は、水中航走体20が測定した水底地形を既知の水底地形図と照合することにより水中航走体20の位置を推定し、位置推定結果を行動履歴記録装置22に記録する。
そして、行動履歴取得手段31(行動履歴取得ステップS1)では、航走経路、水深計23で得られた水深データ、及び地形照合手段25で得られた位置推定結果を含む行動履歴を取得し、行動履歴再現手段33(行動履歴再現ステップS3)では、水中航走体20の行動履歴を補正するに当たり、水深データと位置推定結果を利用する。これにより、水深データと水底地形図との照合により得られる位置推定結果を加味して測位点間の水中航走体20の行動履歴を精度よく再現することができる。
【0060】
なお、上記した二つの実施形態においては、通信手段11と音響測位装置12を別々に設けているが、通信手段11を音響通信方式とするとともに、通信手段11で音響測位装置12を兼ねて水中航走体20の3次元位置を測位することもできる。この場合、通信手段11で音響測位も行うことができるため、設置スペース及びコスト等を抑制することができる。
また、母船10と水中航走体20が有線で接続されている場合や、可視光通信等の無線通信で接続されている場合は、通信手段11、21をケーブル通信方式や可視光通信方式等とすることもできる。
また、母船10の代わりに無人で自律航走する水上航走体を用い、運用者は海上又は陸上から水上航走体及び水中航走体20をすることもできる。
【0061】
以上説明したように、本発明の水中航走体の監視方法、及び監視システムによれば、 水中航走体20からの通信による行動履歴の取得を利用し、母船10からの音響測位の疎らな測位点の間に水中航走体20が辿った経路等の正しい航走履歴を準リアルタイムに再現し、より高度な水中航走体20の管制を実現することができる。
また、音響測位処理プログラムを用い、コンピュータ30に、水中航走体の監視方法における測位情報取得ステップS2、行動履歴取得ステップS1、行動履歴再現ステップS3、及び監視情報提供ステップS4を実行させることで、水中航走体の監視方法を正確かつ迅速に実行し、再現した正しい行動履歴を準リアルタイムに水中航走体20の監視を行う運用者に提供することができる。
また、コンピュータ30に、水中航走体設定ステップS01における水中航走体20の設定を、コンピュータ30への入力情報として受け付けさせることで、複数の水中航走体20の中から行動履歴及び測位情報を取得する水中航走体20を監視する側から設定して処理量を減らし、より手厚い監視が必要な水中航走体20、又は監視が困難な水中航走体20についての測位点間の行動履歴を迅速に再現することができる。
また、コンピュータ30に、行動履歴内容決定ステップS02における行動履歴の内容に関する監視する側からの指示、又は水中航走体20への予めの設定を、コンピュータ30への入力情報として受け付けさせることで、取得する行動履歴の内容を監視する側から状況に応じて適切に指示又は設定して、行動履歴として取得する内容を的確に水中航走体20に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、慣性航法装置等の自己位置情報の履歴を有する水中航走体等を通信及び測位により管制する場合に適用することができ、これにより、音響測位点間に水中航走体が辿った航跡を高精度に再現し、準リアルタイムに運用者に提供することができるため、より手厚い水中航走体等の管制が可能となる。
【符号の説明】
【0063】
10 母船
11、21 通信手段
12 音響測位装置
13 水中航走体設定手段
14 指示手段
15 設定手段
20 水中航走体
21 水中航走体側の通信手段
23 水深計
24 相互通信手段
25 地形照合手段
30 コンピュータ
31 行動履歴取得手段
32 測位情報取得手段
33 行動履歴再現手段
34 監視情報提供手段
S01 水中航走体設定ステップ
S02 行動履歴内容決定ステップ
S1 行動履歴取得ステップ
S2 測位情報取得ステップ
S3 行動履歴再現ステップ
S4 監視情報提供ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8