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  • 特開-肝機能改善用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067331
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】肝機能改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/03 20060101AFI20230509BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20230509BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230509BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K36/03
A61P1/16
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/09
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/52 101
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178456
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】595167339
【氏名又は名称】有限会社▲高▼木商店
(71)【出願人】
【識別番号】512053897
【氏名又は名称】西ノ島町
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】吉積 一真
(72)【発明者】
【氏名】泉田 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 良樹
(72)【発明者】
【氏名】三角 彰太
(72)【発明者】
【氏名】升谷 健
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD67
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG02
4B117LG05
4B117LG22
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK16
4B117LL01
4B117LL03
4B117LP01
4C076AA30
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA54
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD67
4C076DD67A
4C076EE30
4C076EE38
4C076EE38A
4C076FF01
4C088AA13
4C088AC15
4C088BA04
4C088BA11
4C088MA16
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA34
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA75
(57)【要約】
【課題】肝機能改善作用を有する新たな天然物を見出すことを目的とする。
【解決手段】コンブ目レッソニア科の海藻粉末を肝機能改善の有効成分として含有する肝機能改善用組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンブ目レッソニア科の海藻粉末を肝機能改善の有効成分として含有することを特徴とする肝機能改善用組成物。
【請求項2】
フロロタンニンを高含有するコンブ目レッソニア科の海藻粉末であることを特徴とする、請求項1記載の肝機能改善用組成物。
【請求項3】
フロロタンニンを高含有する時期に採取したコンブ目レッソニア科の海藻粉末を使用することを特徴とする請求項1又は2記載の肝機能改善用組成物。
【請求項4】
コンブ目レッソニア科の海藻がツルアラメである請求項1~3のいずれかに記載の肝機能改善用組成物。
【請求項5】
海藻の粉末が乾燥粉末又は抽出物粉末である請求項1~4のいずれかに記載の肝機能改善用組成物。
【請求項6】
AST、ALPおよびγ-GTPから選択される少なくとも1つの血中肝機能パラメータを低下させる請求項1~5のいずれかに記載の肝機能改善用組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の肝機能改善用組成物を含有するカプセル剤又は錠剤又は散剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の肝機能改善用組成物を含有する肝機能改善用の食品。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の肝機能改善用組成物を含有する医薬用組成物。
【請求項10】
機能改善用のツルアラメ粉末食品又はツルアラメ液状食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻を利用した肝機能改善に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、メタボリックシンドロームやインスリン抵抗性を惹起し、高血圧や糖尿病、心臓血管疾患、および癌の罹患率や腎機能障害あるいは死亡率を高める危険因子である(非特許文献1)。肥満減量のための介入手法には、食事介入および運動介入、およびこれらの組み合わせがあり、このような減量介入が体重や体脂肪率の減少をもたらし、血圧、血清脂質、血糖および肝機能などを改善することが報告されている(非特許文献2~4)。
肝臓は消化管から吸収された栄養素を受け取り、様々な栄養物の代謝と貯蔵を行う臓器として知られている。また、肝臓は、胆汁を消化管内に分泌したり、アルコール、薬物、毒物などを分解又は無毒化する機能も有している。しかしながら、肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれるように、神経が通っていないため、知らず知らずのうちに肝臓を酷使し、機能を低下させる恐れがある。肝臓の病気は俗に肝臓病と呼ばれ、ウイルス、アルコール、薬剤、自己免疫疾患などの原因により、急性的又は慢性的な肝炎が発症する。
【0003】
従来より、肝臓病の治療には、その症状により、抗ウイルス薬、肝庇護薬などの薬剤の投与の他、食生活の改善などが主な治療方法として適用されている。薬剤を投与する場合、肝臓に対し副作用が生じる恐れがあるため、厳格な使用が求められたり、重度の肝障害を発症している場合には、使用することができないという問題があった。
そこで、副作用の無い安全な肝機能改善剤の探索がなされており、ハッカ属植物、レモンバーム及びローズマリー等のシソ科の植物の植物体地上部、植物体地上部の抽出物又は当該抽出物の分画物(特許文献1)、新規のキノコであるバシディオマイセテスX FERM BP-10011の抽出組成物(特許文献2)、アヤメ科やマメ科植物に含まれるテクトリゲニン類(特許文献3)、アルギニン、アラニンおよびフェニルアラニンのアミノ酸(特許文献4)、発酵ショウガ(特許文献5)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-199447号公報
【特許文献2】特開2021-35396号公報
【特許文献3】特開2020-125362号公報
【特許文献4】特開2019-99497号公報
【特許文献5】特開2021-107445号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hu FB. Obesity Epidemiology. Oxford University Press, New York, 2008.
【非特許文献2】Miller WC, Koceja DM, Hamilton EJ. A meta-analysis of the past 25 years of weight loss research using diet, exercise or diet plus exercise intervention. Int J Obes Relat Metab Disord. 21: 941-7, 1997.
【非特許文献3】Nakata Y, Okura T, Matsuo T, Tanaka K. Factors alleviating metabolic syndrome via diet-induced weight loss with or without exercise in overweight Japanese women. Prev Med. 48: 351-6, 2009.
【非特許文献4】Norris SL, Zhang X, Avenell A, et al. Long-term effectiveness of lifestyle and behavioral weight loss interventions in adults with type 2 diabetes: a meta-analysis. Am J Med. 117: 762-74, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、肝機能改善作用を有する新たな天然物を見出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、コンブ目レッソニア科の海藻に肝機能改善作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、次の構成を主構成とする。
1.コンブ目レッソニア科の海藻粉末を肝機能改善の有効成分として含有することを特徴とする肝機能改善用組成物。
2.フロロタンニンを高含有するコンブ目レッソニア科の海藻粉末であることを特徴とする、1.記載の肝機能改善用組成物。
3.フロロタンニンを高含有する時期に採取したコンブ目レッソニア科の海藻粉末を使用することを特徴とする1.又は2.記載の肝機能改善用組成物。
4.コンブ目レッソニア科の海藻がツルアラメである1.~3.のいずれかに記載の肝機能改善用組成物。
5.海藻の粉末が乾燥粉末又は抽出物粉末である1.~4.のいずれかに記載の肝機能改善用組成物。
6.AST、ALPおよびγ-GTPから選択される少なくとも1つの血中肝機能パラメータを低下させる1.~5.のいずれかに記載の肝機能改善用組成物。
7.1.~6.のいずれか1に記載の肝機能改善用組成物を含有するカプセル剤又は錠剤又は散剤。
8.1.~6.のいずれか1に記載の肝機能改善用組成物を含有する肝機能改善用の食品。
9.1.~6.のいずれか1に記載の肝機能改善用組成物を含有する医薬用組成物。
10.肝機能改善用のツルアラメ粉末食品又はツルアラメ液状食品。
【発明の効果】
【0008】
1.コンブ目レッソニア科の海藻粉末を肝機能改善の有効成分として開発できた。
コンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメの乾燥粉末が肝機能改善作用を示すことは、本発明が新規に提起する作用機序である。
2.コンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメ由来の肝機能改善用組成物を含むカプセル剤又は錠剤又は散剤あるいは食品、新規な機能性食品である。また、コンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメを含む医薬用組成物は新規な医薬品である。
3.天然由来であるコンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメは、食経験もあることから、安全性の高い肝機能改善作用を有するカプセル剤又は錠剤又は散剤あるいは食品、医薬用組成物を提供することができる。
4.本発明のコンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメの乾燥粉末を有効成分とする肝機能改善用組成物は、肝機能改善作用を有することから、肝炎や脂肪肝、肝硬変などの肝臓病の予防又は改善に、大きく寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1におけるASTの変化を示すグラフ
図2】実施例1におけるALTの変化を示すグラフ
図3】実施例1におけるγ‐GTPの変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のコンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメの乾燥粉末の肝機能改善作用は、20歳以上65歳以下の男女60名を対象としたヒト介入試験(プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間試験)において、肝機能の指標であるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びγ‐GTP(ガンマ‐グルタミルトランスペプチダーゼ)の値を低下させることが確認されたことから、本発明は新規な海藻由来の肝機能改善用組成物である。
【0011】
ツルアラメをはじめとするコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末を有効成分とする肝機能改善用組成物は、肝機能改善作用を有することから、肝炎や脂肪肝、肝硬変などの肝臓病の予防又は改善に、大きく寄与し得る。
このような作用機序が期待できるツルアラメをはじめとするコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末を有効成分とする肝機能改善用組成物を含むカプセル剤又は錠剤又は散剤あるいは食品、医薬用組成物は、新たな機能性食品又は医薬品を提供するものである。
本実施形態の肝機能改善用組成物は、ツルアラメをはじめとするコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末を有効成分として含有する。
【0012】
ここで、本実施形態において「フロロタンニンを高含有する海藻粉末」とは、Folin -Denis法またはFolin- Ciocalteu法などのポリフェノールの一般的な方法で定量し、7.0%以上、好ましくは8.0%以上15.0%以下のフロロタンニンを含むコンブ目レッソニア科の海藻粉末である。
本実施形態において「フロロタンニンを高含有する時期に採取した海藻粉末」とは、表1に示す通り、フロロタンニンを高含有する時期である6月~11月、好ましくは、8月~10月に採取したコンブ目レッソニア科の海藻原料で製造した海藻粉末である。
【0013】
【表1】
【0014】
本実施形態において「乾燥物」とは、上記海藻を天日で、あるいは熱風を利用して人工乾燥したもののことで、それらを粉砕機などで粉砕した粉末も含む。
本実施形態において「抽出物」とは、上記海藻を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物の何れもが含まれる。
【0015】
[コンブ目レッソニア科の海藻粉末の製造]
本実施形態において、コンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末又は抽出物粉末を製造するために使用する海藻原料は、ツルアラメ(学名:Ecklonia stolonifera)が好適であるが、カジメ(学名:Ecklonia cava)、アラメ(学名:Eisenia bicyclis)、サガラメ(学名:Eisenia arborea)、アントクメ(学名:Eckloniopsis radicosa)、クロメ(学名:Ecklonia kurome)も使用可能である。
【0016】
ツルアラメ(Ecklonia stolonifera;蔓荒布)は、コンブ目レッソニア科の褐藻である。北海道南部、本州日本海岸から九州北岸に分布しており、低潮線付近から潮下帯のやや深場に生息している。大きさは、高さ25~150cm。
体は茎と膜質の葉部からなり、葉部は笹の葉形や長楕円形で、短めの側葉を出す。また、葉部は全体にしわがある。基部から匍匐枝を伸ばし、その先から新たに葉部が出てくることが特徴で、名前の「蔓」は匍匐枝に由来する。
【0017】
カジメ(Ecklonia cava;搗布)は、コンブ目レッソニア科の褐藻である。本州太平洋岸中部、瀬戸内海、本州日本海岸南部、九州に分布しており、低潮線から潮下帯の水深20mに生息している。大きさは、高さ1~3mである。
胞子体は、幼体は短い茎と楕円形の葉部からなり、生長すると茎が伸び、葉部の中央は厚くなって両側から十数本もの側葉が伸びる。側葉は、さらに枝分かれすることもある。葉部はしわがなく滑らかで、手触りは硬い。色は褐色から濃褐色。海中林と呼ばれる群生を作り生息している。
【0018】
アラメ(Eisenia bicyclis;荒布、滑海藻)は、コンブ目レッソニア科の褐藻である。本州太平洋岸北から中部、四国東部から瀬戸内海、九州、本州日本海岸南部に分布しており、低潮線付近から潮下帯に生息している。大きさは、高さ1~3mである。
体は茎と葉部からなる。幼体は短い茎に笹の葉形の葉部をつけ、2年目からは茎の上部が2叉に枝分かれして、それぞれの枝に多数の側葉をつける。側葉はさらに枝分かれすることが多い。群生して海中林を形成し、カジメより浅い場所に生え、また分布はより北に偏る。色は褐色や暗褐色。葉部にはしわがあり手触りは硬い。
【0019】
サガラメ(Eisenia arborea;相良布)は、コンブ目レッソニア科の褐藻である。アラメによく似た海藻で、静岡県の御前崎から紀伊半島、徳島県などに分布する。アラメは側葉が枝分かれすることが多いのに対し、サガラメは側葉がほとんど枝分かれしない。
【0020】
アントクメ(Eckloniopsis radicosa;安徳布)は、コンブ目レッソニア科の褐藻である。本州太平洋岸中部から南部、四国、九州、本州日本海岸南部に分布し、潮下帯に生息している。大きさは、長さ0.3~2m、幅20~35cm。
体は膜質で、短い茎に笹の葉形や長卵形などの葉部がつく。中肋はなく、表面に凹凸のしわや白色斑がある。色は褐色や緑褐色。日本産コンブ目海藻で最も南まで分布している。
【0021】
クロメ(Ecklonia kurome;黒布)は、コンブ目レッソニア科の褐藻である。本州太平洋岸中~南部、四国、九州、瀬戸内海、本州日本海岸に分布し、潮下帯で生息している。大きさは、高さ1~2m。
体は茎と膜質の葉部からなり、葉部から数本の側葉が伸びる。カジメによく似ているが少し小さく、葉部全体に凹凸のしわがあること、葉部の中央は厚くならないことなどで見分けられる。ただし、形態には異変が多い。
【0022】
本明細書中で「ツルアラメ」や「カジメ」、「アラメ」、「サガラメ」、「アントクメ」、「クロメ」とは、ツルアラメ又はカジメ、アラメ、サガラメ、アントクメ、クロメの藻体全体をいい、葉片、葉状部、中肋、茎状部、仮根を含む。これらの海藻は一般的ではないが、地域によっては食経験がある。
ツルアラメをはじめとするコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末あるいは抽出物粉末のそれぞれに含有される肝機能改善作用を有する物質はeckolや6,6’-bieckol、8,8’-bieckolなどのフロロタンニン類であるが、海藻の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、上記海藻からこの作用を有する抽出物を得ることができる。
【0023】
例えば、コンブ目レッソニア科の海藻を乾燥した後、そのまま又は粉砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行っても良いし、通常使用される乾燥機を用いて行っても良い。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用しても良い。脱脂等の前処理を行うことにより、上記海藻の極性溶媒による抽出処理を効率良く行うことができる。
このような処理を経て得られたフロロタンニン類を含む抽出物の粉末のメジアン径は、レーザー回折・散乱法を利用した粒度分布測定装置を用いて測定することができる。例えば、マスターサイザー3000(Malvern Panalytical社製)を用いて粒度分布を測定する場合、測定条件は、分散媒:イソプロパノール、試料屈折率:1.70、分散媒屈折率:1.390、として、測定する際にはレーザー散乱強度が10%~15%になるように試料濃度を調整することが好ましい。
【0024】
本発明のコンブ目レッソニア科の海藻より得られたフロロタンニンを含有する抽出物粉末のメジアン径は、上記に例示される粒度分布測定装置を用いて測定した累積体積分布曲線における50%粒子径(d50)とすることができる。
上述の方法で測定されるフロロタンニンを含有する抽出物粉末のメジアン径は、100μm以下となるように処理することが好ましく、95μm以下となるように処理することがより好ましく、90μm以下となるように処理することがさらに好ましい。また、メジアン径と同様の方法で測定されるフロロタンニンを含有する抽出物粉末の90%粒子径(d90)は、200μm以下となるように処理することが好ましく、150μm以下となるように処理することがより好ましく、100μm以下となるように処理することがさらに好ましい。すなわち、メジアン径を小さくすることでフロロタンニンの腸管からの吸収率を高めることができ、肝機能の改善に、より効果を発揮できる。
本発明のフロロタンニンを含有する抽出物粉末は、その粉末のメジアン径及び90%粒子径が上記の上限値以下である小さい粒子であっても、優れた肝機能改善作用を発揮する。
【0025】
「肝機能改善用組成物」
以上のようにして得られる各海藻由来の乾燥粉末、抽出物粉末又は成分は、優れた肝機能改善作用を有している。図1図3に示すように、本発明のコンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメの乾燥粉末に肝機能の改善効果が認められたことから、コンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末の肝機能改善作用を利用して、肝機能改善用組成物の有効成分として用いることができる。
このような肝機能改善用組成物は、カプセル剤又は錠剤又は散剤あるいは食品、医薬用組成物等に配合され得る。
【0026】
ツルアラメをはじめとするコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末を含む肝機能改善用組成物は、カプセル剤又は錠剤又は散剤あるいは食品、医薬用組成物等の素材として用いられ得る。ツルアラメをはじめとするコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末を含む肝機能改善用組成物は、カプセル剤又は錠剤又は散剤(例えば、経口用サプリメントのような健康食品)あるいは食品(例えば、ソーセージや蒲鉾のような魚肉練り製品)及び医薬用組成物(例えば、経口用の錠剤、カプセル剤)に含有することができる。これらのカプセル剤又は錠剤又は散剤及び食品、医薬用組成物は、特に、例えば、肝炎や脂肪肝、肝硬変などの種々の肝臓病の予防又は改善のために用いられ得る。
【0027】
カプセル剤又は錠剤又は散剤は、ツルアラメをはじめとするコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末を含む肝機能改善用組成物の他、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、マルチトール、ソルビトール、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、アミノ酸類、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料、保存料などをさらに適宜含有し得る。カプセル剤又は錠剤又は散剤(例えば、経口用サプリメント)の製造は、当業者が通常用いる方法によって行われ得る。カプセル剤又は錠剤又は散剤への肝機能改善用組成物の配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。カプセル剤又は錠剤又は散剤は、組成物全量に対して肝機能改善用組成物を、0.1~100質量%、より好ましくは10~80質量%(乾燥粉末基準)で含有し得る。
【0028】
肝機能改善用組成物は、そのまま摂取することができ、水などの溶媒に溶かす又は懸濁させるなどしても摂取することができる。肝機能改善用組成物は、食事の前後、又は食間に経口摂取することができる。
肝機能改善用組成物を飲食品に添加して、飲食することもできる。肝機能改善用組成物が添加された食品としては、例えば、在宅用抗アレルギー食、流動食、病者用食品(肝機能改善食調製用組み合わせ食品など)、特定保健用食品、肝臓病症状軽減用食品、又は炭水化物を主成分とする飲食品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
具体的な食品形態としては、例えば、米飯製品、麦製品、野菜製品、乳製品、清涼飲料、飴などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
肝機能改善用組成物の飲食品への添加又は加工は、当業者が通常用いる方法によって行われ得、配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。人間以外の動物、例えば、家畜又はペット用(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サル等)の飼料への添加も可能である。
本実施形態の肝機能改善用組成物は、優れた肝機能改善作用を有するとともに安全性にも優れているため、例えば、医薬用組成物として配合するのに好適である。本発明の肝機能改善用組成物は錠剤などの形態にして、これを医薬用組成物として利用することができる。
【0030】
また、本発明の医薬用組成物は、本発明の肝機能改善用組成物以外の添加物又は薬学的に許容可能な担体を含んでも良い。このような添加物又は薬学的に許容可能な担体としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝材、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、溶剤、増粘剤、粘液溶解剤、湿潤剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の医薬用組成物の形態は特に制限されるものではないが、経口剤又は非経口剤の何れであってもよい。経口剤としては顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、チンキ剤、ゼリー剤などが挙げられる。非経口剤としては注射剤、点滴剤、軟膏剤、点鼻剤、坐剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の医薬用組成物の投与量は、特に限定されるものではないが、例えば、本発明の医薬用組成物を経口投与する場合、成人1日当たりのツルアラメの抽出物の摂取量が0.5~100mg/kg体重、好ましくは1~50mg/kg体重の範囲となるような投与量とすることができる。また、本発明の医薬用組成物を非経口的に投与する場合は0.05mg/kg体重~50mg/kg体重、好ましくは0.5mg/kg体重~50mg/kg体重となるような含有量とすることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0032】
<ヒト介入試験>
(試験体制)
本試験は、「ヘルシンキ宣言(2013年10月最終改正)」の精神に則り、実施にあたっては「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(文部科学省、厚生労働省告示、平成26年12月22日(平成29年2月28日最終改正))」を遵守した。
なお、被験者には試験内容を文書にて十分に説明したうえで、インフォームドコンセントを書面にて取得した。
【0033】
(試験食品)
本試験では、島根県隠岐郡西ノ島町沿岸で8月に採集した本発明のコンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメを乾燥し粉末にしたものを使用した。また、本試験では、試験食品を、被験食品と対照食品の2種類とした。すなわち、被験食品は、1錠あたり340mgのツルアラメ乾燥粉末(37.4mgのフロロタンニンを含む)から成る、ハードカプセル形状の食品である。一方、対照食品は、1錠あたりマルトデキストリン(製品名:TK-16、松谷化学工業株式会社)250mgから成る、同じくハードカプセル形状の食品である。どちらの試験食品も、カプセルの中身が外観からはわからないようにした。
各試験食品の、1日摂取量あたりの熱量および栄養成分値を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
(被験者)
本試験では、下記の選択基準をすべて満たし、かつ除外基準に抵触しない健常成人60名を被験者として選択した。
1)選択基準
(a)本試験の目的、内容について十分な説明を受け、同意能力があり、十分に理解した上で自由意思により志願し、文書で参加に同意した者
(b)同意取得時の年齢が20歳以上65歳未満の日本人健常者
(c)花粉などによる鼻や目の不快感を有するものの、耳鼻咽喉科の受診や薬物治療を行っていない者
2)除外基準
(a)慢性疾患を有し、薬物治療を受けている者。重篤な疾患既往歴(糖尿病、肝臓病、腎臓病、心臓病、呼吸器疾患、内分泌疾患など)がある者
(b)試験食品(ツルアラメ)およびえび・かにに、アレルギーを有する者
(c)試験食品(ツルアラメ)を、普段から摂取している者
(d)海藻や海藻を含む食品・サプリメントなどを、日常的に摂取している者
(e)耳鼻咽喉科を受診している、または受診を予定している者
(f)急性鼻炎、副鼻腔炎、肥大性鼻炎の診断をされている者
(g)気管支喘息の診断をされている者
(h)高度の貧血がある者。アルコール依存症、またはその他の精神障害を有する者
(i)喫煙習慣のある者
(j)鼻や目の不快感に影響する可能性のある医薬品、特定保健用食品・機能性表示食品、健康食品などを常用している者
(k)試験期間中、生活習慣を変更する可能性のある者(夜間勤務、長期間の旅行など)
(l)試験期間中、保健機能食品やサプリメントなどの食品類を、新たに摂取する予定のある者
(m)試験開始前1ヶ月間に、他の試験に参加した者。あるいは、本試験同意後に他の試験に参加する予定のある者
(n)試験統括医師および研究責任者の判断により、不適格と判断した者
(o)授乳中および妊娠している者。試験期間中に妊娠の予定または希望がある者
さらに、試験中止基準を設け、試験期間中に該当する試験参加者が発生した場合は、当該試験参加者に対する試験を中止した。
【0036】
(試験デザイン)
本試験は、二重盲検法を採用した。割付責任者は、同意取得時の年齢、性別、QOL調査票の鼻・目症状総合スコアをもとに、I群またはII群にそれぞれ30名ずつを割り付けた。割り付けによって試験群間に医学的背景の差が生じぬように、本試験はランダム化比較試験にて実施した。
試験スケジュールは、試験食品摂取前期間、試験食品摂取期間(4週間)、試験食品摂取後期間とした。本試験では、被験食品摂取群および対照食品摂取群の2群に分け、被験食品摂取群では本発明のコンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメ乾燥粉末を含む被験食品を1錠、対照食品摂取群ではマルトデキストリンを含む対照食品1錠を、4週間毎日、時間を指定せず自由に摂取させたが、以下については遵守するよう被験者に指導した。
【0037】
(a)検査日3日前より、暴飲・暴食を禁止とする
(b)検査前日は過度な運動を禁止とし、21時までに食事を済ませ十分な睡眠をとることとする。また、刺激性の強い香辛料等を含む食品(カレー、唐辛子、タバスコなど)やアルコール摂取は、検査前日から検査当日の検査終了まで禁止とする
(c)検査当日は、試験統括医師が指定する食事(朝食または昼食)を抜くこととする。ただし、水・カロリーのないお茶飲料のみ摂取可とする
(d)検査当日は試験終了まで、運動および発汗の可能性がある身体活動を禁止とする
(e)検査当日、急性疾患で熱・下痢・嘔吐などが生じた場合は、試験を中止する
(f)試験期間中は、睡眠不足や暴飲・暴食など、不規則な生活を避ける
(g)試験期間中は、食事、運動、睡眠に関して、本試験対象品以外のものについて本試験開始前と同様な量・質を維持するようにする
(h)医薬品(外用剤を含む)、医薬部外品および漢方薬の使用は、原則として禁止とする。ただし、頭痛薬など頓用は除く。また、使用する場合や使用した場合は、相談窓口に連絡を入れ、使用した商品名およびメーカー名・使用理由を日誌に記録する
(i)新たに、保健機能食品を含む健康食品を摂取または使用することを禁止とする。試験参加前より健康維持を目的とした健康食品などを常用している場合は、用法・用量を変更せず継続して使用することとする。使用する場合や使用した場合は、相談窓口に連絡を入れ、使用した商品名およびメーカー名・使用理由を日誌に記録する
(j)試験期間中は、他のヒト臨床試験への参加を禁止とする
(k)その他、試験統括医師の指示に従う
(l)その他、試験結果に影響を及ぼすと考えられる事項を禁止とする
(評価項目)
被験者には、試験食品摂取開始前と試験食品摂取終了後の2回、肝機能の指標である肝機能酵素(AST、ALTおよびγ‐GTP)の値を測定した。
【0038】
(試験結果)
以下に、試験結果を図1~3に示す。図1は、ASTの変化を示すグラフである。図2は、ALTの変化を示すグラフである。図3は、γ‐GTPの変化を示すグラフである。
図1図3に示すように、対照食品摂取群では、AST、ALT及びγ‐GTPの何れも、摂取前(0週)と摂取後(4週)で有意な改善は認められなかった。一方、本発明のコンブ目レッソニア科の海藻であるツルアラメの乾燥粉末を摂取した試験食品摂取群では、AST、ALT及びγ‐GTPの何れの値も、摂取後(4週)で有意に減少しており(何れもp<0.05)、肝機能が改善していることが確認された。
【実施例0039】
(コンブ目レッソニア科海藻乾燥粉末の調製)
コンブ目レッソニア科の海藻であるクロメ、カジメ、ツルアラメ、アラメ、サガラメ、アントクメを、それぞれ3gずつミルで粉砕し、各種海藻の乾燥粉末を調製した。
【実施例0040】
(コンブ目レッソニア科海藻抽出物の調製)
コンブ目レッソニア科の海藻であるクロメ、カジメ、ツルアラメ、アラメ、サガラメ、アントクメの乾燥物それぞれ3gをミルで粉砕し、50mLプラスチックチューブに採集した。次いで、プラスチックチューブに30mLのメタノールを加え、15分、3回、超音波抽出を行った。プラスチックチューブを15,000r.p.mで5分間遠心分離を行った後、上清を減圧下濃縮することにより、コンブ目レッソニア科の海藻のメタノール抽出物を得、得られたメタノール抽出物をミルで粉砕することで、各種海藻の抽出物粉末を調製した。
【実施例0041】
(錠剤の製造)
実施例2で得たツルアラメの乾燥粉末を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
ツルアラメ乾燥粉末配合錠剤
(組成) (配合:重量%)
ツルアラメ乾燥粉末 24
乳糖 63
コーンスターチ 12
グアーガム 1
【実施例0042】
(ジュースの製造)
実施例3で得たクロメの抽出物粉末を用いて、常法に従って、下記の組成のジュースを製造した。
クロメ抽出物粉末含有ジュース
(組成) (配合:重量%)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L-アスコルビン酸 0.02
香料 0.2
色素 0.1
クロメ抽出物粉末 0.2
水 83.288
【0043】
本発明のコンブ目レッソニア科の海藻の乾燥粉末又は抽出物粉末を有効成分とする肝機能改善用組成物は、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びγ‐GTP(ガンマ‐グルタミルトランスペプチダーゼ)の値を低下させて肝機能を改善する作用を有することから、肝炎や脂肪肝、肝硬変などの種々の肝臓病の予防又は改善に、大きく寄与し得る。


図1
図2
図3