IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サトーホールディングス株式会社の特許一覧

特開2023-67358情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法
<>
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図1
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図2
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図3
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図4
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図5
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図6
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図7
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図8
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図9
  • 特開-情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067358
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/35 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
B41J2/35 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178507
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩一
(57)【要約】
【課題】プリンタの使用方法に応じて適切なタイミングでサーマルヘッドの断線に関する通知を行う。
【解決手段】本発明のある態様は、サーマルヘッドを有するプリンタと通信可能な情報処理装置であって、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を取得する第1取得部と、抵抗値の変化度合いに応じて、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を複数の発熱抵抗体の各々に設定する閾値設定部と、第1取得部によって取得された抵抗値が閾値設定部によって設定された閾値を超えた場合に警告出力を行う出力制御部と、を備えた情報処理装置である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドを有するプリンタと通信可能な情報処理装置であって、
前記サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を取得する第1取得部と、
前記抵抗値の変化度合いに応じて、前記サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を前記複数の発熱抵抗体の各々に設定する閾値設定部と、
前記第1取得部によって取得された抵抗値が前記閾値設定部によって設定された閾値を超えた場合に警告出力を行う出力制御部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
サーマルヘッドを有するプリンタと通信可能な情報処理装置であって、
利用者を特定する利用者情報と、前記利用者が利用する複数のプリンタの情報とが関連付けられた前記複数のプリンタの各々のサーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を取得する第1取得部と、
前記複数のプリンタの前記抵抗値の変化度合いに応じて、各プリンタのサーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を前記複数の発熱抵抗体の各々に設定する閾値設定部と、
前記第1取得部によって取得された前記複数のプリンタのうちいずれかのプリンタの前記抵抗値が前記閾値設定部によって設定された閾値を超えた場合に前記複数のプリンタに警告出力を行う出力制御部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項3】
前記閾値設定部は、前記複数の発熱抵抗体のうち互いに隣接して配置されている2以上の発熱抵抗体に対する閾値を、他の発熱抵抗体に対する閾値と異なる閾値に設定する、
請求項1又は2に記載された情報処理装置。
【請求項4】
前記プリンタの動作の関する動作情報、及び、前記プリンタの印字媒体に関する印字媒体情報の少なくともいずれかの情報を取得する第2取得部を備え、
前記閾値設定部は、前記第2取得部によって取得された情報に基づいて前記閾値を補正する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された情報処理装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記警告出力として、前記閾値を超えたプリンタが有する表示部に警告情報を表示させる表示用データを当該プリンタに送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載された情報処理装置。
【請求項6】
サーマルヘッドを有するプリンタを対象として、前記サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を取得する手順と、
前記抵抗値の変化度合いに応じて、前記サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を発熱抵抗体ごとに設定する手順と、
前記取得する手順によって取得された抵抗値が前記閾値を超えた場合に警告出力を行う手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項7】
サーマルヘッドを有するプリンタと、前記プリンタと通信可能な情報処理装置と、を含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
前記サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を前記プリンタから取得する第1取得部と、
前記抵抗値の変化度合いに応じて、前記サーマルヘッドの断線が断線する前に警告出力を行うための閾値を前記複数の発熱抵抗体の各々に設定する閾値設定部と、
前記第1取得部によって取得された抵抗値が前記閾値設定部によって設定された閾値を超えた場合に前記プリンタに対して警告出力を行う出力制御部と、を備え、
前記プリンタは、前記警告出力を表示する表示部を備えた、
情報処理システム。
【請求項8】
サーマルヘッドを有するプリンタを監視する方法であって、
前記サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を取得し、
前記抵抗値の変化度合いに応じて、前記サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を前記複数の発熱抵抗体の各々に設定し、
前記取得した抵抗値が前記閾値を超えた場合に警告出力を行う、
を備えたプリンタ監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印字ヘッド(サーマルヘッド)の発熱抵抗体の抵抗値を測定するプリンタが知られている。特許文献1には、抵抗値測定部が発熱体の抵抗値を測定し、比較部がサーマルヘッドのヘッド切れの判定基準となる閾値と発熱体の抵抗値とを比較し、通知部が比較の結果をユーザに通知するラベル印字装置が記載されている。このラベル印字装置は、閾値の変更をユーザから受け付ける閾値変更部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-061622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリンタの利用者によってプリンタの使用方法は異なるため、印字ヘッドの発熱抵抗体の断線を判定するための閾値を利用者に対して一律に設定するのは適切でない。例えば、利用者がプリンタによって発行するラベル等の印字レイアウト等は利用者ごとに異なり、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の消耗度合いは利用者によって異なる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、プリンタの使用方法に応じて適切なタイミングでサーマルヘッドの断線に関する通知を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、サーマルヘッドを有するプリンタと通信可能な情報処理装置であって、前記サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を取得する第1取得部と、前記抵抗値の変化度合いに応じて、前記サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を前記複数の発熱抵抗体の各々に設定する閾値設定部と、前記第1取得部によって取得された抵抗値が前記閾値設定部によって設定された閾値を超えた場合に警告出力を行う出力制御部と、を備えた情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、プリンタの使用方法に応じて適切なタイミングでサーマルヘッドの断線に関する通知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るプリンタ保守システムのシステム構成を示す図である。
図2】ヘッド抵抗値データベースのデータ構成例を示す図である。
図3】サーマルヘッドの各発熱抵抗体の閾値の従来の設定例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係るプリンタ保守システムにおいて、サーマルヘッドの各発熱抵抗体の閾値の設定例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係るプリンタ保守システムにおいて、サーマルヘッドの各発熱抵抗体の閾値の設定例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係るプリンタ保守システムにおいて利用者管理データベースのデータ構成例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係るプリンタ保守システムを構成する各装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態に係るプリンタ保守システムの動作を示すシーケンスチャートである。
図9】第2の実施形態に係るプリンタ保守システムのシステム構成を示す図である。
図10】第2の実施形態に係るプリンタ保守システムにおいて利用者管理データベースのデータ構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る管理サーバ(情報処理装置の一例)は、利用者によるプリンタの使用方法に応じて、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を発熱抵抗体ごとに設定する。ここで、プリンタの使用方法とは、利用者ごとに異なるプリンタの使用方法であれば如何なるものでもよい。例えば、プリンタの使用方法には、プリンタが発行するラベル等の印字レイアウトにより異なるサーマルヘッドの使用方法の他、印字速度、印字濃度などの動作モード等が含まれる。例えば、印字速度が高いほどサーマルヘッドが摩耗し易く、印字濃度が高いほどサーマルヘッドは摩耗し易い。
動作モードには、印字方式が熱転写印字であるかダイレクトサーマルであるかの違いも含まれ得る。熱転写印字であるかダイレクトサーマルであるかによって、サーマルヘッドと接触するインクリボンとラベルの摩擦係数の差に起因して、サーマルヘッドの摩耗の程度が影響を受ける。動作モードには、バックフィード回数が含まれ得る。順方向フィードとバックフィードの頻度によってもサーマルヘッドの摩耗の程度が影響を受ける。動作モードには、連続発行動作(指定された枚数のラベルを連続して印字する発行方法)とティアオフ動作(指定されたラベルを連続して印字した後に連続紙を手動で剥離させる位置まで搬送させる動作)の回数が含まれ得る。ティアオフ動作では、停止時間が長いためサーマルヘッドが摩耗し難い傾向にある。
【0010】
このようなプリンタの使用方法によるサーマルヘッドに対する影響は、サーマルヘッドの発熱抵抗体ごとの抵抗値の変化に現れるため、発熱抵抗体ごとの抵抗値の変化度合いを監視することで把握することができる。そこで、一実施形態のプリンタ保守システムでは、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の変化度合いに応じて、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を発熱抵抗体ごとに設定する。それによって、プリンタの使用方法に応じて適切なタイミングでサーマルヘッドの断線に関する通知を行うことができる。
【0011】
(1)第1の実施形態
以下、図1及び図2を参照して、第1の実施形態のプリンタ保守システム(情報処理システムの一例)のシステム構成について説明する。図1に示すプリンタ保守システム1は、利用者のプリンタ3と、利用者端末2と、プリンタ3の状態を管理する管理サーバ5と、を備える。
利用者端末2は、例えば、デスクトップ型、ラップトップ型、あるいは、タブレット型のコンピュータ装置、あるいは、スマートフォンなどの情報処理端末であり、ネットワークNWを介して管理サーバ5と通信可能である。管理サーバ5は、プリンタ3の部品について予防交換を行う必要があると判断した場合、例えば利用者端末2等に通知する。
【0012】
プリンタ3は、ネットワークNWを介して管理サーバ5と通信可能である。ネットワークNWは、例えばLAN(Local Area Network)やインターネット等である。なお、図1に示すプリンタ保守システム1は、単一のプリンタ3のみが記載されているが、その限りではなく、2以上のプリンタ3が管理サーバ5と通信可能であってもよい。
【0013】
プリンタ3は、定期的あるいは不定期のタイミングで、ヘッド抵抗値データを管理サーバ5に送信する。ヘッド抵抗値データは、サーマルヘッドが備える複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値を示すデータである。プリンタ3は、ヘッド抵抗値データを管理サーバ5に定期的に送信する場合、例えば30分~2時間の間隔で行われる。それによって、管理サーバ5は、サーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値の変化を適切に認識することができる。
【0014】
管理サーバ5では、逐次プリンタ3から受信するヘッド抵抗値データをヘッド抵抗値データベースにより管理している。図2に、ヘッド抵抗値データベースのデータ構成例を示す。図2に示すように、ヘッド抵抗値データベースは、管理対象の複数のプリンタの各々を識別するプリンタIDごとに、サーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値の情報を含む。図2に示す例では、例えばサーマルヘッドが5000個の発熱抵抗体(抵抗値位置:1~5000)を有する例を示している。
具体的には、ヘッド抵抗値データベースには、例えば、各発熱抵抗体について抵抗値の初期値[Ω]と1時間ごとの抵抗値[Ω]、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うためのヘッド消耗率[%](後述する)の閾値等を含む。管理サーバ5は、サーマルヘッドの個々の発熱抵抗体にそれぞれ閾値を設定することができる。
【0015】
次に、サーマルヘッドの各発熱抵抗体の閾値の設定例について、図3図5を参照して説明する。
図3は、閾値の従来の設定例を示している。図4及び図5はそれぞれ、本実施形態の閾値の設定例を示している。各図は、例えば横軸に5000個の発熱抵抗体の抵抗値位置を示し、左側の縦軸に抵抗値[Ω]、右側の縦軸にヘッド消耗率[%]を示している。
【0016】
ヘッド消耗率とは、プリンタ3のサーマルヘッドの消耗度合いを示す値である。ヘッド消耗率は、サーマルヘッドの発熱抵抗体の使用開始時の抵抗値を0%とし、発熱抵抗体がエラー(断線)と判断されるときの抵抗値を100%したときの、発熱抵抗体の抵抗値の百分率(%)の値である。つまり、発熱抵抗体の抵抗値とヘッド消耗率は対応する。
発熱抵抗体がエラーと判断されるときの抵抗値は、例えば、発熱抵抗体が本来のドット印字機能を果たさないほど高い値である。ヘッド消耗率が100%になった場合にはプリンタ3が正常に印字することができない。そこで、ヘッド消耗率が100%に達する前にサーマルヘッドを交換できるようにするため、ヘッド消耗率に対して100%未満の閾値が設定される。管理サーバ5は、ヘッド消耗率が閾値に達したか否かを監視し、ヘッド消耗率が閾値に達した場合には利用者端末2等に通知する。なお、閾値は、所定の範囲を含んでもよい。
【0017】
サーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値は、管理サーバ5によってヘッド消耗率に換算される。プリンタ3がサーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値をヘッド消耗率に換算した後に、ヘッド消耗率のデータを管理サーバ5に送信してもよい。
なお、以下の説明では、ヘッド消耗率が閾値を超えたか否か判断する場合について説明するが、その限りではない。サーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値をヘッド消耗率に変換せず、抵抗値自体が閾値を超えたか否か判断してもよい。
【0018】
図3に示すように、従来のプリンタでは、発熱抵抗体のヘッド消耗率に対する閾値がすべての発熱抵抗体に対して一定である。図3の例では、発熱抵抗体の抵抗値の初期値が90Ω前後であり、例えば発熱抵抗体がエラーと判断されるときの抵抗値を165Ωとした場合、発熱抵抗体のヘッド消耗率の閾値を一律に50%(抵抗値は約135Ω)とした例を示している。
【0019】
本実施形態では、発熱抵抗体のヘッド消耗率に対する閾値は、利用者によるプリンタの使用方法に応じてサーマルヘッドの発熱抵抗体ごとに個別に設定することができる。
例えば、図4の例では、「最新のデータ」に示すサーマルヘッドの発熱抵抗体の各抵抗値は、中央部分にある発熱抵抗体群の抵抗値が他の部分にある発熱抵抗体の抵抗値よりも高くなっている。これは、例えばプリンタ3により発行するラベル(印字媒体の一例)の印字レイアウトとして、印字ライン方向(つまりラベルの幅方向)の中央部分が頻繁にドット印字される印字状況を示している。このように、プリンタ3のサーマルヘッドにおいて、例えば中央部分の発熱抵抗体が頻繁に使用される場合には、複数の発熱抵抗体のうち中央部分の発熱抵抗体の消耗(摩耗)が他の部分よりも早く進行する。
【0020】
したがって、例えば中央部分(領域)にある発熱抵抗体群に対するヘッド消耗率の閾値を、例えば他の部分(領域)にある発熱抵抗体に対する閾値よりも低い閾値に設定する。通常、発熱抵抗体の抵抗値が高くなるほど抵抗値の増加率は、大きくなる傾向にあり、発熱抵抗体の抵抗値が高くなると断線(例えばヘッド消耗率100%)まで短時間で達することがある。そこで、例えば抵抗値が高くなってきた中央領域にある発熱抵抗体群に対する閾値を相対的に低い閾値等に設定し、サーマルヘッドが断線する前に利用者に早めに警告できるようにする。
【0021】
図5の例は、「最新のデータ」に示すサーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各抵抗値は、左側部分にある発熱抵抗体群の抵抗値が右側部分にある発熱抵抗体群の抵抗値よりも高くなっている。これは、例えばプリンタ3により発行するラベルの印字レイアウトとして、印字ライン方向(ラベルの幅方向)の左側部分が頻繁にドット印字される印字状況を示している。これは、プリンタ3のサーマルヘッドにおいて、例えば左側部分の発熱抵抗体が頻繁に使用され、他の部分よりも消耗が早いことを示している。
そこで、例えば左側部分(領域)にある発熱抵抗体群に対するヘッド消耗率を、例えば他の部分(領域)にある発熱抵抗体に対する閾値よりも低い閾値等に設定し、サーマルヘッド断線する前に利用者に早めに警告できるようにする。
【0022】
このように、利用者のプリンタの使用方法により変化するサーマルヘッドの発熱抵抗体ごとの抵抗値等の変化度合いに応じてサーマルヘッドの断線を予測し、警告出力を行うための閾値を発熱抵抗体ごとに設定することで、プリンタの利用者ごとに適切なタイミングでサーマルヘッドの断線を予防するための通知をすることが可能となる。
【0023】
図4及び図5は、複数の発熱抵抗体のうち互いに隣接して配置されている2以上の発熱抵抗体群に対する閾値を、他の発熱抵抗体に対する閾値とは異なる閾値に設定する例である。この例では、互いに隣接して配置されている2以上の発熱抵抗体群に対する閾値を、他の発熱抵抗体に対する閾値よりも低い閾値に設定されている。
管理サーバ5は、利用者のプリンタの使用方法として、例えばプリンタが発行するラベルの印字レイアウト等の印字状況等を認識していないが、各発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いをモニタすることで、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体のうちどの発熱抵抗体の劣化が進んでいるか等のヘッドの断線を予測が可能となる。そこで、発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いに応じて発熱抵抗体ごとや、複数の発熱抵抗体(発熱抵抗体群)を含む領域ごとに閾値を設定することで結果的に、利用者が発行する印字レイアウト等に応じた閾値設定を行うことができる。
【0024】
一実施形態では、管理サーバ5は、プリンタ3から適時に取得するプリンタ情報に基づいて、設定した発熱抵抗体に対する閾値を補正してもよい。プリンタ情報は、プリンタの動作に関する動作情報や、プリンタのラベルやインクリボン等の印字媒体情報を含む。管理サーバ5においてプリンタ情報を管理するための利用者管理データベースの例を図6に示す。
【0025】
図6に例示する利用者管理データベースの各レコードは、利用者IDとプリンタIDに対応付けて、「平均印字速度」、「平均印字濃度」、「連続モード発行枚数」、「バックフィード回数」、「印字方式」の各フィールドの値を含む。「印字方式」フィールドの値は、印字方式が熱転写、又はダイレクトサーマルのいずれであるかを示す値である。平均印字速度、平均印字濃度、連続モード発行枚数、バックフィード回数、及び、印字方式の各値は、プリンタの動作情報の一例である。
図6には図示していないが、各レコードは、プリンタIDに対応付けて、印字媒体情報として、例えば、ラベルやインクリボン(熱転写プリンタの場合)を識別する識別情報を含んでもよい。前述したように、プリンタの動作情報及び/又は印字媒体情報はサーマルヘッドの摩耗に影響を与え得ることから、プリンタ情報としてのプリンタの動作情報及び/又は印字媒体情報に基づいて、サーマルヘッドの各発熱抵抗体に対する閾値を補正することができる。
【0026】
管理サーバ5は、例えば定期的にプリンタ3からプリンタの動作情報を取得し、利用者管理データベースを更新する。例えば、プリンタ3は、サーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値と同様に、定期的に、印字速度、印字濃度、及び、連続モード発行枚数のカウント値、及び、バックフィード回数のカウント値の情報を管理サーバ5に送信する。管理サーバ5は、プリンタ3から取得した印字速度、印字濃度を統計処理して、プリンタ3の平均印字速度、平均印字濃度を算出して、平均印字速度、平均印字濃度、連続モード発行枚数、バックフィード回数の値を記録することで利用者管理データベースを更新する。
なお、印字方式を示す値は、プリンタごとに既知であり、プリンタIDを利用者管理データベースに登録する際に併せて登録される。また、ラベルやインクリボン等の印字媒体情報は、ラベルやインクリボンが交換されたタイミングで利用者や管理者により利用者管理データベースに登録されてもよい。
【0027】
プリンタ情報(プリンタの動作情報や印字媒体情報等)によるサーマルヘッドの劣化は、抵抗体位置に関わらず発熱抵抗体全体に及ぶことが多い。そのため、プリンタ情報に基づいて発熱抵抗体に対する閾値を補正する場合、発熱抵抗体全体の閾値を変化させるとよい。補正方法を例示すると以下のとおりである。
(a)平均印字濃度が高いほどサーマルヘッドが摩耗し易いため、閾値を低下させるように補正する。
(b)平均印字速度が高いほどサーマルヘッドが摩耗し易いため、閾値を低下させるように補正する。
(c)連続モード発行枚数が多いほどサーマルヘッドが摩耗し易いため、閾値を低下させるように補正する。
【0028】
例えば、図4に示す閾値の設定例において、各発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いに基づき、中央領域にある発熱抵抗体群に対する閾値が55%であり、他の領域にある発熱抵抗体に対する閾値が75%であるとする。また、利用者管理データベースに含まれる対応するプリンタの動作情報により、例えば平均印字濃度が所定値より高い場合には、中央領域にある発熱抵抗体群に対する閾値を50%等に補正し、他の領域にある発熱抵抗体に対する閾値を70%等に補正する。このように、印字レイアウト等の印字状況による抵抗値の変化度合いに加えて、プリンタの動作情報によるサーマルヘッドの劣化を加味して閾値を補正することで、プリンタの使用方法に応じてより適切なタイミングで利用者に警告をすることができる。
【0029】
次に、図7を参照して、プリンタ保守システム1の構成について説明する。図7は、本実施形態に係るプリンタ保守システム1を構成する各装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図7に示すように、利用者端末2は、制御部21、操作入力部22、表示部23、及び、通信部24を有する。制御部21は、マイクロプロセッサ、メモリ、画像バッファメモリ等を含み、プリンタ管理アプリケーションを実行し、実行結果を表示部23に表示させる。
プリンタ管理アプリケーションは、管理サーバ5と通信を行うことで、プリンタ3の利用者又は管理者が、プリンタ3のプリンタ情報としてプリンタの動作情報や印字媒体情報を閲覧したり、プリンタ3に関する警告を受けたりするように構成されたソフトウェアである。
操作入力部22は、例えば、マウスやキーボード等の入力装置を含み、利用者によるプリンタ管理アプリケーションに対する入力を受け付ける。表示部23は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネル及び表示駆動回路を含み、制御部21から送信されるプリンタ管理アプリケーションの実行結果を表示する。通信部24は、管理サーバ5と通信を行うための通信インタフェース回路を含む。プリンタ管理アプリケーションは、通信部24を介して管理サーバ5との間で、例えばHTTPSによる通信を行う。
【0030】
図7に示すように、プリンタ3は、制御部31、操作入力部32、表示部33、搬送部34、印字部35、通信部36、及び、ストレージ37を備える。制御部31は、マイクロプロセッサを主体として構成され、ファームウェアを実行してプリンタ3の全体を制御する。例えば、制御部31は、ストレージ37に記憶されている印字データを描画データに変換し、描画データのライン毎のデータであるラインデータを順次、印字部35へ送出する。
搬送部34および印字部35は、制御部31から順次送出されるラインデータに基づいて印字を行う。搬送部34は、プラテンローラ(図示せず)、および、図示しないモータ駆動回路およびモータを含み、プリンタ3内の連続紙の搬送を行う。連続紙は、例えば帯状の台紙に複数枚のラベルが仮着された状態の用紙である。ファームウェアによる搬送要求に基づき、モータ駆動回路が、プラテンローラの回転を制御するモータを駆動することによって、連続紙を搬送させる。
印字部35は、サーマルヘッドおよびヘッド駆動回路(共に図示せず)を含む。ヘッド駆動回路は、ラインデータに基づきサーマルヘッドの各発熱抵抗体に選択的に電流を流すことで、連続紙のラベル上に印字を行う。なお、制御部31は、サーマルヘッドから各発熱抵抗体の電圧又は電流の値を取得することで、各発熱抵抗体の抵抗値を算出する。
【0031】
通信部36は、管理サーバ5との間で通信を行う通信インタフェースである。通信部36と管理サーバ5との通信プロトコルは限定しないが、例えばMQTT(Message Queueing Telemetry Transport)を適用することができる。MQTTは、Pub/Sub型の軽量なデータ通信プロトコルである。例えば、通信部36を介してヘッド抵抗値データや、プリンタ情報としてのプリンタ動作情報や印字媒体情報等が管理サーバ5に定期的あるいは所定のタイミングで送信される。
【0032】
ストレージ37は、不揮発性のメモリであり、例えばフラッシュメモリ等のSSD(Solid State Drive)である。ストレージ37には、印字データや印字動作等を制御するためのファームウェアのほか、制御部31によって算出されるサーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値、各種設定値(例えば、印字速度の設定値、印字濃度の設定値)、各種演算結果を示す値(例えば、連続モード発行枚数のカウント値、バックフィード回数のカウント値等)が格納される。
【0033】
本実施形態の管理サーバ5は、制御部51、ストレージ52、および、通信部53を備える。
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、所定のサーバプログラムを実行して管理サーバ5の全体を制御する。ストレージ52(記憶部の一例)は、不揮発性のメモリであり、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の大容量記憶装置である。ストレージ52には、ヘッド抵抗値データベース(ヘッド抵抗値DB;図2参照)及び利用者管理データベース(利用者管理DB;図6参照)が格納される。
通信部53は、利用者端末2及びプリンタ3との間で通信を行う通信インタフェースである。通信部53は、管理サーバ5とプリンタ3の間で、例えばMQTTに従って通信を行う。通信部53はまた、利用者端末2の間で例えばHTTPSによる通信を行う。
【0034】
制御部51は、上記サーバプログラムを実行することで、以下の取得部(第1取得部、第2取得部の一例)、閾値設定部、及び、出力制御部として機能する。
【0035】
(I)取得部
取得部は、プリンタ3から、プリンタ3のサーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を含むヘッド抵抗値データを取得し、各抵抗値をヘッド抵抗値データベースに逐次格納する。また取得部は、プリンタ3からプリンタ動作情報や印字媒体情報等を所定のタイミングで取得し、利用者管理データベースに記憶してもよい。
(II)閾値設定部
閾値設定部は、抵抗値の変化度合いに応じて、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を発熱抵抗体ごとに設定する。すなわち、ヘッド抵抗値データベースに逐次格納されるプリンタ3の各発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いに応じて、閾値が発熱抵抗体ごとに設定される。前述したように、閾値設定部は、プリンタ3から適時に取得するプリンタ情報(プリンタの動作情報や印字媒体情報等)に基づいて、設定した発熱抵抗体に対する閾値を補正してもよい。
(III)出力制御部
出力制御部は、取得部によって取得された抵抗値が閾値設定部によって設定された閾値を超えた場合に警告出力を行う。なお、出力制御部は、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体のうちいずれかの発熱抵抗体の抵抗値が閾値を超えた場合であっても警告出力を行う。
一実施形態では、出力制御部は、上記警告出力として、閾値を超えたプリンタが有する表示部に警告情報を表示させる表示用データを当該プリンタに送信する。
【0036】
次に、図8のシーケンスチャートを参照して、プリンタ保守システム1の動作例について説明する。図8のシーケンスチャートは、プリンタ監視方法の一例を示している。利用者が新たにプリンタ3の使用を開始した時点では、例えば図3の閾値の設定例で示したように、閾値が初期値としてサーマルヘッドの各発熱抵抗体に対して一律に設定されている。また、利用者が新たにプリンタ3の使用を開始すると、ヘッド抵抗値データベースにプリンタ3のプリンタIDが登録される。
【0037】
管理サーバ5は、例えば定期的に(例えば1時間ごとに)プリンタ3のサーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値の情報を取得する処理を行う(ステップST1)。利用者がプリンタ3の使用を開始してから管理サーバ5がヘッド抵抗値要求をプリンタ3に送信し、プリンタ3が各発熱抵抗体の抵抗値の最新値を含むヘッド抵抗値データを管理サーバ5に返す。管理サーバ5は、ヘッド抵抗値データを受信する度に、ヘッド抵抗値データに含まれる各発熱抵抗体の抵抗値の最新値をヘッド抵抗値データベースに格納することで、ヘッド抵抗値データベースを更新する。
【0038】
管理サーバ5は、逐次、あるいは定期的に、ヘッド抵抗値データベースを参照して、抵抗値の変化度合いが大きい発熱抵抗体があるか否か判定する(ステップS2)。つまり、最初に各発熱抵抗体に対して一律の閾値が設定されるが、プリンタ3の使用によって発熱抵抗体ごとに抵抗値の変化度合いが大きく異なってくることがある。そこで、抵抗値の変化度合いが大きい発熱抵抗体があるか否か逐次、あるいは定期的に監視する。
抵抗値の変化度合いは、例えば抵抗値の変化率である。抵抗値の変化度合いを逐次監視する場合には、発熱抵抗体の抵抗値の前回値と最新値との差である。そこで、抵抗値の変化度合いが大きいか否かは、発熱抵抗体の抵抗値の前回値と最新値との差を所定値と比較することで判断することができる。抵抗体の変化度合いを定期的に監視する場合には、前回の確認時刻と今回の確認時刻での抵抗値の差を確認時刻の間の時間で除算することで抵抗値の変化率を算出し、その変化率を所定値と比較することで判断できる。
【0039】
管理サーバ5は、抵抗値の変化度合いが大きい発熱抵抗体がないと判定した場合には、各発熱抵抗体の劣化度合いが通常の速度であると考えられるため、管理サーバ5は、閾値の初期値を変更せず(ステップS2:NO)、ステップST1を繰り返し、引き続き抵抗値の変化度合いが大きい発熱抵抗体があるか否かの監視を続ける。
管理サーバ5は、抵抗値の変化度合いが大きい発熱抵抗体があると判定した場合には(ステップS2:YES)、閾値を新たに設定する(つまり、初期値から更新する)(ステップS4)。閾値の設定例は、図4図5に例示したとおり、例えば発熱抵抗体群(領域)ごとに設定してもよく、個々の発熱抵抗体ごとに設定してもよい。その際、管理サーバ5は、利用者管理データベースを参照し、プリンタ情報や印字媒体情報に応じて閾値を補正してもよい。
【0040】
管理サーバ5は、複数の発熱抵抗体のうちいずれかの発熱抵抗体の抵抗値が、当該発熱抵抗体に対してステップS4で設定された閾値(あるいは、閾値の初期値)を超えたと判定した場合には(ステップS6:YES)、利用者端末2に対して警告メッセージを送信する(ステップS8)。警告メッセージは、例えばプリンタ3のサーマルヘッドの交換が必要であることを示すメッセージ等である。利用者端末2は、警告メッセージを受信すると警告表示を行う(ステップS10)。なお、警告メッセージがプリンタ3に送信され、プリンタ3において表示するようにしてもよい。
なお、ステップS8で送信される警告メッセージは、警告情報をプリンタ3に表示させる表示用データの一例である。
【0041】
以上説明したように、一実施形態のプリンタ保守システムは、プリンタのサーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を取得し、各抵抗値の変化度合いに応じて、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための閾値を発熱抵抗体ごとに設定する。プリンタから取得した抵抗値が、設定された閾値を超えた場合には、利用者に対して警告出力を行う。これにより、利用者のプリンタの使用方法に応じて適切なタイミングでサーマルヘッドの断線に関する通知を行うことができる。
【0042】
抵抗値の変化度合いが大きい発熱抵抗体がある場合に当該発熱抵抗体に対する閾値を低下させる場合について説明したが、閾値の低下量は、適宜決定することができる。一実施形態では、抵抗値の変化度合いが大きいほど閾値の低下量が大きくなるようにする。それによって、断線が近く抵抗値の変化度合いが相対的に大きい発熱抵抗体の異常をより早く検出することができる。
また、同一の発熱抵抗体に対し、抵抗値の変化度合いが大きいと判断された回数が多いほど、当該発熱抵抗体に対する閾値の低下量を大きくしてもよい。抵抗値の変化度合いが大きいと判断された回数が多い場合には、断線の状況に近付いていると考えられるため、閾値をより低下させて発熱抵抗体の異常をより早く検出する。
また、抵抗値の変化度合いが大きい発熱抵抗体がない場合であっても閾値を新たに設定してもよい。例えば、管理サーバ5が利用者管理データベースのプリンタ情報を参照して、例えば印字速度や印字濃度等がそれぞれ所定値以上である場合や、印字速度、や印字濃度、連続モード発行枚数、及び、バックフィード回数等の一部又はすべての組み合わせの値の合計が所定値以上の場合には、サーマルヘッドが劣化し易い(摩耗し易い)と判断して、全体の発熱抵抗体の閾値を変更することもできる。
【0043】
(2)第2の実施形態
次に、図9及び図10を参照して、第2の実施形態のプリンタ保守システム1Aのシステム構成について説明する。プリンタ保守システム1Aがプリンタ保守システム1(図1)と比較して異なる点は、管理サーバ5からサービスの提供を受ける利用者U01,U02が例えば会社等の法人であり、2以上の従業員(実際の利用者)が2以上のプリンタを利用する点にある。
なお、図10において「利用者ID」は利用者情報の一例である。
【0044】
図9に示す例では、利用者U01は、プリンタ3-1a,3-1b,3-1c,3-1d,…と、利用者端末2-1とを所持している。管理サーバ5は、プリンタ3-1a,3-1b,3-1c,3-1d,…のいずれかの部品について予防交換を行う必要があると判断した場合、利用者端末2-1等に通知をする。利用者U01が所持するプリンタ及び利用者端末2-1は、アクセスポイントAP1及びネットワークNWを介して管理サーバ5と通信可能である。
【0045】
利用者U02は、プリンタ3-2a,3-2b,3-2c,3-2d,…と、利用者端末2-2とを所持している。管理サーバ5は、プリンタ3-2a,3-2b,3-2c,3-2d,…のいずれかの部品について予防交換を行う必要があると判断した場合、利用者端末2-2等に通知をする。利用者U02が所持するプリンタ及び利用者端末2-2は、アクセスポイントAP2及びネットワークNWを介して管理サーバ5と通信可能である。
【0046】
管理サーバ5は、利用者ごとに管理する2以上のプリンタのうちいずれかのプリンタのサーマルヘッドが予防交換を行う必要と判断した場合、その他のプリンタのサーマルヘッドの発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いが、設定した閾値に対する所定の範囲に含まれるか判断し、サーマルヘッドの交換が必要かどうか判断する。同一の利用者が所持する2以上のプリンタについては、プリンタの使用態様や使用用途(例えば、印字レイアウトや動作方法等)が類似している場合があり、いずれかのプリンタのサーマルヘッドを交換する場合、他のプリンタも同程度に劣化している場合があると判断して同様にサーマルヘッドの交換が必要か判断する。
【0047】
管理サーバ5は、利用者U01が所持する2以上のプリンタと、利用者U02が所持する2以上のプリンタとを、利用者管理データベースにより一元的に管理している。図示しないが、第1の実施形態と同様に、管理サーバ5は、各プリンタからサーマルヘッドの各発熱抵抗体の抵抗値の情報を含むヘッド抵抗値データを、例えば定期的に受信し、図2に例示したヘッド抵抗値データベースを逐次更新している。また、図6に示したのと同様にして、管理サーバ5は、利用者管理データベースを有してもよい。プリンタ保守システム1Aにおける利用者管理データベースのデータ構成例を図10に示す。プリンタ保守システム1Aは、管理サーバ5の制御部51は、サーバプログラムを実行することで、以下の取得部、閾値設定部、及び、出力制御部として機能する。
【0048】
(I)取得部(第1取得部の一例)
取得部は、管理対象の2以上複数のプリンタから、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々の抵抗値の情報を含むヘッド抵抗値データを取得し、各抵抗値を利用者ごとにヘッド抵抗値データベースに逐次格納する。また取得部は、プリンタ3からプリンタ動作情報や印字媒体情報等を所定のタイミングで取得し、利用者ごとに利用者管理データベースに格納する。
なお、管理サーバ5が利用者管理データベースを有していなくてもよい。管理サーバ5からアクセス可能な利用者管理データベースを別の装置(データベースサーバ等)が保持してもよい。
【0049】
(II)閾値設定部
閾値設定部は、利用者U01のプリンタ3-1a,3-1b,3-1c,3-1d,…の各発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いに応じて、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための利用者U01の複数のプリンタに例えば共通の閾値パターンをサーマルヘッドに設定することができる。
ここで、「閾値パターン」とは、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体の各々に設定される閾値の類型(パターン)を意味し、例えば図3図5にそれぞれ例示したものは異なる閾値パターンである。
「共通の閾値パターン」とは、複数のプリンタに対してサーマルヘッドの対応する位置の発熱抵抗体の閾値が同一である場合に限られず、警告出力を行う上で実質的に影響を与えない程度の差を含む場合も含まれ得る。
【0050】
共通の閾値パターンを設定する対象となる複数のプリンタは、利用者U01が所持するすべてのプリンタ(つまり、プリンタ3-1a,3-1b,3-1c,3-1d,…)に限られず、利用者U01が所持するプリンタの中でも、サーマルヘッドの抵抗値の変化度合いが同程度のプリンタ群である。サーマルヘッドの抵抗値の変化度合いが同程度のプリンタ群は、印字レイアウトが同じラベルを発行している等、利用者U01のプリンタの使用態様や使用用途が類似していると考えられる。そこで、サーマルヘッドの抵抗値の変化度合いが同程度の複数のプリンタをグループ化するとともに、グループ化した複数のプリンタ(プリンタ群)の各プリンタの複数の発熱抵抗体の各位置に対して、パターン化した閾値を対応付けておくとよい。例えば、グループ化した複数のプリンタに対して、図4又は図5に例示した閾値のパターン(中央部分又は左側部分の発熱抵抗体群の閾値が他より相対的に低い閾値である閾値パターン)を、複数のプリンタに対応付ける。
【0051】
例えば利用者U01が所持する2以上のプリンタのうち第1のプリンタ群を第1の閾値パターンに対応付け、第2のプリンタ群を別の第2の閾値パターンに対応付けることもあり得る。
その場合、利用者U01が所持する個々のプリンタが属するプリンタ群を、個々のプリンタの使用状況に応じて変更してもよい。例えば第1の閾値パターンでは、サーマルヘッドの複数の発熱抵抗体に対して同一の閾値が設定され、第2の閾値パターンでは、中央部分の発熱抵抗体群の閾値が他より相対的に低い閾値である閾値パターンである場合を想定する。その場合、新規に購入したプリンタの使用開始時には、そのプリンタのサーマルヘッドのすべての発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いが同程度であるため、当該プリンタの所属先を第1のプリンタ群にする。その後、その後の印字レイアウトの使用状況等から所属先を第2のプリンタ群に変更してもよい。
あるプリンタ群に属するプリンタのうち1つのプリンタが、設定された閾値を超えて警告出力の対象となった場合には、当該プリンタ群の他のプリンタについても、設定された閾値パターンに基づいて各発熱抵抗体が閾値を超えているか判断してもよいし、各発熱抵抗体に対する閾値に余裕分を考慮した閾値(例えば、変更前の閾値に90%を乗じた閾値)を超えているか判断してもよい。
【0052】
同様に、閾値設定部は、利用者U02のプリンタ3-2a,3-2b,3-2c,3-2d,…の各発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いに応じて、サーマルヘッドが断線する前に警告出力を行うための利用者U02の複数のプリンタに例えば共通の閾値パターンに設定する。
つまり、同一の利用者が所持するプリンタのうち、プリンタの使用態様や用途(例えば、印字レイアウトや動作方法等)が類似している複数のプリンタ(プリンタ群)に対して、個々のプリンタごとに閾値を設定するのではなく、各発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いに応じて、当該プリンタ群に対して共通の閾値パターンを設定する。
【0053】
第1の実施形態で述べたのと同様の方法で、発熱抵抗体の抵抗値の変化度合いに応じて、複数のプリンタに対して設定される閾値パターンを、利用者管理データベースのプリンタ情報に応じて補正してもよい。
【0054】
(III)出力制御部
出力制御部は、利用者が所持するすべてのプリンタの中の複数のプリンタ(プリンタ群)のうちいずれかのプリンタの抵抗値が閾値設定部によって設定された閾値を超えた場合に警告出力を行う。例えば、利用者U01の複数のプリンタのうちプリンタ3-1aのサーマルヘッドの特定の抵抗体位置の発熱抵抗体のヘッド消耗率が、グループ化したプリンタ群に対して設定された閾値パターンに基づく閾値を超えた場合、管理サーバ5は利用者端末2-1に対して警告メッセージを送信する。また、プリンタ3-1aのサーマルヘッドのみならず他のプリンタ3-1b,3-1c,3-1d,…のサーマルヘッドについても、設定した閾値に対して発熱抵抗体の抵抗値が所定の範囲に含まれるか判断する。したがって、利用者のプリンタの使用方法に応じて適切なタイミングでサーマルヘッドの断線に関する通知を行うことが可能となる。
【0055】
本実施形態のプリンタ保守システムでは、同一の利用者が2以上のプリンタを所持する場合、サーマルヘッドの抵抗値の変化度合いに基づいて複数のプリンタに対して共通の閾値パターンをサーマルヘッドに対して設定する。複数のプリンタのいずれかのプリンタの複数の発熱抵抗体が、複数のプリンタに対して共通に設定された閾値パターンに基づく閾値を超えた場合に警告出力が行われる。
同一の利用者の複数のプリンタの使用態様が類似している場合、当該複数のプリンタについてサーマルヘッドの劣化は同程度に進むと考えられる。しかし、同一の利用者といえどもプリンタの使用態様にはばらつきがある。そこで、複数のプリンタの抵抗値の変化度合いを考慮して複数のプリンタに対して共通の閾値パターンを設定することで、使用態様のばらつきを吸収した精度の高い閾値とすることができる。
【0056】
以上、本発明の情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、プリンタ監視方法の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
例えば、プリンタ3の制御部31は、管理サーバ5の一部又は全部として機能してもよい。ヘッド抵抗値データベースや利用者管理データベースを管理サーバ5が一元的に管理する場合について説明したが、その限りではない。これらのデータベースは、管理サーバ5、プリンタ3、あるいは図示しないデータベースサーバ等に分散して格納してもよい。
上述したプリンタ3の制御部31の複数の機能、及び、管理サーバ5の制御部51の複数の機能は一例に過ぎず、これらの機能はプリンタ3と管理サーバ5の間で適宜分散し、あるいは連携させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,1A…プリンタ保守システム
2…利用者端末
21…制御部
22…操作入力部
23…表示部
24…通信部
3…プリンタ
31…制御部
32…操作入力部
33…表示部
34…搬送部
35…印字部
36…通信部
37…ストレージ
5…管理サーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
NW…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10