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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067368
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】タンクローリ
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/22 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
B60P3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178530
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000155573
【氏名又は名称】株式会社矢野特殊自動車
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】樋口 正祥
(72)【発明者】
【氏名】力丸 清美
(57)【要約】

【課題】 タンクローリの荷卸し機構のメンテナンス性を向上させるとともに、タンクローリで運搬した液体を配送先の貯蔵タンクに充填する際にタンクローリで運搬した液体を配送先の貯蔵タンクに充填する作業を行う作業者の作業効率を向上させる。
【解決手段】 タンク3の底部に設けられた底弁を開放することにより、底弁と連通連結してタンク下部に配設された荷卸し用配管7を介して、タンク3内の液体を荷卸し可能とした食用油ローリ1において、タンク3から液体を荷卸しする荷卸し機構100を収容する機械室4を備え、機械室4は、車台5の後端から延設された支持フレーム10上に取り外し可能に設けられ、機械室4の後方面および左右両側面には扉が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの底部に設けられた底弁を開放することにより、前記底弁と連通連結してタンク下部に配設された荷卸し用配管を介して、タンク内の液体を荷卸し可能としたタンクローリにおいて、
前記タンクから液体を荷卸しする荷卸し機構を収容する機械室を備え、
前記機械室は、車台の後端から延設された支持フレーム上に取り外し可能に設けられ、前記機械室の後方面および左右両側面には扉が設けられていることを特徴とするタンクローリ。
【請求項2】
前記荷卸し機構は、
一端が前記荷卸し配管に接続され他端が荷卸し用ホースに接続される配管と、前記配管に介装された前記荷卸し配管から移送された液体の流量を計測する流量計と、を有する配管部と、
前記流量計に接続され、前記流量計により計測された流量に関する情報を取得し、該情報を携帯端末に無線出力する制御基板を有する荷卸し制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のタンクローリ。
【請求項3】
前記荷卸し機構は、
前記荷卸し用ホースを巻き取るホースリールと、
前記ホースリールを駆動するモータと、
を備え、
前記荷卸し制御部には、前記モータを動作させる操作スイッチが設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載のタンクローリ。
【請求項4】
前記荷卸し制御部には、前記流量計が計測した積算流量をリセットする流量計リセットスイッチが設けられている、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のタンクローリ。
【請求項5】
前記底弁は空圧により開閉するエア式底弁であり、
前記荷卸し制御部には、空圧により前記底弁を開閉する底弁操作スイッチが設けられている、ことを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載のタンクローリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリに関し、特に食用油等を配送するタンクローリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食用油や液状食品原料等の液体を食品製造工場や飲食店舗等に配送する車両として、タンクローリが知られている。この種のタンクローリは、液体を貯留するタンクと、タンクから液体を荷卸しする荷卸し機構と、で構成されている。
【0003】
特許文献1には、荷台の上部に載置したタンクの底から延設された荷卸し用配管に流量計、ストレーナあるいは切換弁を介装し、荷卸し用配管に連通する液体取出用ホースを巻き取るホースリールをカバーで密封したタンクローリが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-30100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタンクローリでは、液体取出用ホースを巻回するホースリールを含む荷卸し機構が、運転席とタンクの間のスペースに設置されていることから、荷卸し機構をメンテナンスする際に、これらの構成の取り外し作業が煩雑となり、メンテナンス作業に時間がかかっていた。
【0006】
また、配送先に設けられた貯蔵タンクに、タンクローリから液体を充填する際には、ホースリールに巻回された液体取出用ホースを引き出し、貯蔵タンクの供給口に接続する必要があるが、ホースリールを運転席とタンクの間のスペースに設置していると、液体取出用ホースの引き出し方向が車体の左右方向に限定される。このため、左右の作業スペースを確保しにくい場所にタンクローリを駐車せざるを得ない場合には、貯蔵タンクへの供給作業の作業効率が低下していた。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、タンクローリの荷卸し機構のメンテナンス性を向上させるとともに、タンクローリで運搬した液体を配送先の貯蔵タンクに充填する際にタンクローリで運搬した液体を配送先の貯蔵タンクに充填する作業を行う作業者の作業効率を向上させたタンクローリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係るタンクローリは、タンクの底部に設けられた底弁を開放することにより、前記底弁と連通連結してタンク下部に配設された荷卸し用配管を介して、タンク内の液体を荷卸し可能としたタンクローリにおいて、前記タンクから液体を荷卸しする荷卸し機構を収容する機械室を備え、前記機械室は、車台の後端から延設された支持フレーム上に取り外し可能に設けられ、前記機械室の後方面および左右両側面には扉が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の他の態様に係るタンクローリは、前記荷卸し機構は、一端が前記荷卸し配管に接続され他端が荷卸し用ホースに接続される配管と、前記配管に介装された前記荷卸し配管から移送された液体の流量を計測する流量計と、を有する配管部と、前記流量計に接続され、前記流量計により計測された流量に関する情報を取得し、該情報を携帯端末に無線出力する制御基板を有する荷卸し制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の他の態様に係るタンクローリは、前記荷卸し機構は、前記荷卸し用ホースを巻き取るホースリールと、前記ホースリールを駆動するモータと、を備え、前記荷卸し制御部には、前記モータを動作させる操作スイッチが設けられている、ことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の他の態様に係るタンクローリは、前記荷卸し制御部には、前記流量計が計測した積算流量をリセットする流量計リセットスイッチが設けられている、ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の他の態様に係るタンクローリは、前記底弁は空圧により開閉するエア式底弁であり、前記荷卸し制御部には、空圧により前記底弁を開閉する底弁操作スイッチが設けられている、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタンクローリによれば、車両の後部に機械室を設け、荷卸し用ホースを含む荷卸し機構を機械室に収容したことで、荷卸し機構をホコリ等から保護することができる。機械室は車両に対して取り外し可能としたことで、荷卸し機構を一括して車両から取り外すことができ、荷卸し機構の分解清掃の作業性が向上する。機械室は後壁部と両側壁部に扉を設けたことで、機械室の3面を開放することができ、荷卸し機構の部品交換などのメンテナンスの作業性が向上する。さらに、機械室の3方向を開放可能としたことで、荷卸し機構における各種スイッチ類の操作や荷卸し用ホースの出し入れがスムーズに行え、液体を配送先で荷卸しする際の作業性が向上する。
【0014】
また、本発明に係るタンクローリによれば、携帯端末に流量計の測定データを送信し、給油量等を確認可能としたことにより、作業者が機械室から離れた場所にいる場合でも容易に給油量を知ることができる。これにより、配送先での予定量以上に給油してしまうなどの人為的ミスを低減することができる。
【0015】
また、本発明に係るタンクローリによれば、荷卸し用ホースの巻き取りをモータの駆動により機械的に行えるようにしたことで、作業者の作業負担が低減され、荷卸し作業の作業効率が向上する。
【0016】
また、本発明に係るタンクローリによれば、流量計リセットスイッチを設けたことで、作業者は、荷卸し作業の開始時に流量計の積算量をリセットし、1回の荷卸し作業ごとの給油量を容易に確認することができる。このため、前回の荷卸し作業までの積算量をメモしておき、それを荷卸し後の流量計の積算量から差し引いて、荷卸しした量を確認する作業が不要となる。したがって、複数の配送先を巡回する小口配送を行うタンクローリでの作業性が向上する。
【0017】
また、本発明に係るタンクローリによれば、底弁を空圧式としたことにより、底弁の開閉操作の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る食用油ローリの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る食用油ローリの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る食用油ローリにおける機械室の分解斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る食用油ローリにおける荷卸し機構の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る食用油ローリにおける荷卸し機構の説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る食用油ローリにおける荷卸し機構の説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る食用油ローリにおける荷卸し機構の説明図ある。
図8】荷卸し制御の一態様を示すブロック図である。
図9】携帯端末の表示例を示す説明図である。
図10】携帯端末の表示例を示す説明図である。
図11】荷卸し制御の一態様を示すブロック図である。
図12】携帯端末の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
[食用油ローリの全体構成]
実施形態に係るタンクローリについて、図1から図8を参照しながら説明する。本実施形態では、主として食用油をタンクに貯留して運搬する車両である食用油ローリ1の構成を説明する。図1および図2は、本食用油ローリ1の斜視図であり、図2においては、機械室4の扉を開け放った状態を示している。図3は機械室4部分の分解斜視図であり、図4から図7は荷卸し機構の説明図であり、図4は荷卸し機構100の斜視図、図5はタンクからの荷卸し用配管7と荷卸し機構100との関係を説明する平面図である。なお図5においては、運転室2、タンク3及び車体部分は仮想線で示し、機械室4の天井部分を取り払っている。図6図5の機械室4部分を拡大した平面図であり、図7は、荷卸し機構100を機械室4から取り出した状態の斜視図である。
【0021】
食用油ローリ1は、車両の前部に設けられた運転室2と、運転室2の後方に設けられたタンク3と、さらにタンク3の後方に設けられた機械室4とを備える。
【0022】
運転室2は、作業者が食用油ローリ1を移動する際に乗り込む、所謂トラックキャビンである。
【0023】
タンク3は、食用油を貯蔵するためのものであり、断面が略円形状もしくは略楕円形状を有する。タンク3は、運転室2の後方に水平に配置された車台5上に搭載されている。タンク3の底部には、底弁6が設けられている。底弁6は、空気圧により開閉するエア式底弁である。底弁6には荷卸し用配管7が接続され、該荷卸し用配管7はタンク3の下部をタンク3の後方に向けて延設され、タンク3の後方に設けられた機械室4の配管21に接続される。荷卸し用配管7は、油圧ポンプ等を介して油圧ユニット8に接続され、食用油は、油圧ユニット8の動作により機械室4に移送される(図5参照)。
【0024】
機械室4は、食用油をタンク3から排出する際に動作させる荷卸し機構等の各種機械が設置される部分である。外観箱状の機械室4の左右側面は片開き扉11a、11bとなっており、後面部は上下方向に開閉可能なシャッター12となっている。機械室4は、機械室4の底板部13を車台5から後方に延設された支持フレーム10上にネジ締結等により連結することにより、該支持フレーム10上に搭載される。
【0025】
[荷卸し機構]
機械室4内には、配管部20と、ホースリール31に巻回された荷卸し用ホース32と、荷卸し制御部40とが設けられている。これらの構成は、本実施形態において、荷卸し機構100を構成する。
【0026】
配管部20は、タンク3から延設された荷卸し用配管7に連通する配管21に、給油ポンプ22、ストレーナ23、流量計24を順次配設した構成を有する。配管部20を構成する配管21の一端は、機械室4の前方壁から突出し、荷卸し用配管7と接続される。荷卸し用配管7との接続にはフランジ式を採用し、ボルト及びナットによる締結を解除することにより、配管同士の切り離しを容易に行えるようにしている。また、配管部20には配管内の圧力を測定する圧力計や手動で管路を開閉する開閉弁等を適宜設けている。
【0027】
給油ポンプ22は、食用油を移送する送液ポンプである。給油ポンプ22は、PTO(Power Take-Off)の起動によりエンジンの回転から変換された油圧により駆動する油圧モータにより動作するよう構成されている。なお、PTOは、運転室2に設けられた起動スイッチを作業者が操作することにより起動する。また、油圧モータの動作は、油圧モータと油圧源との間に介装されたコントロールバルブにより制御される。荷卸し用配管7から配管部20に供給された食用油は、給油ポンプ22の動作により荷卸し用ホース32へ移送される。食用油内に混入するゴミ等の固形物は、配管部20に設けたストレーナ23を通過することにより除去される。
【0028】
流量計24は、食用油の流量を計測するものであり、配管部20の配管21においてストレーナ23より下流側に介装されている。本実施形態に係る流量計24は、容積流量計であり、マイクロコンピュータによる係数部と表示部とを搭載することにより、積算流量(L:リットル)を直接測定できるとともに、積算流量と瞬時流量(L/min:1分あたりの流量)を表示部に切換表示可能に構成されている。
【0029】
荷卸し用ホース32は、基端が配管部20の配管21に連通され、先端に給油用ノズル33を有する。荷卸し用ホース32は、機械室4の底板部13及びフレーム14に固定されたホースリール31に巻回されることにより、機械室4内に収容される。ホースリール31のリールの回転軸には、プーリとベルト(図示せず)を介してホースリールモータ36(図8参照)が接続されている。また、給油用ノズル33は開閉弁を有するノズルである。給油用ノズル33は、不使用時にはノズル口が着脱自在のキャップ体34(図3及び図4参照)により被覆され、ホースリール31に隣接して設けられたホルダ35に給油用ノズル33のノズル口を上に向けた状態で保持される。なお、給油用ノズル33には給油時に必要に応じて、異物除去用のフィルタを取り付けてもよい。
【0030】
荷卸し制御部40は、車両バッテリから電力の供給を受け、機械室4に設けられた流量計24やホースリール31の動作を制御する。荷卸し制御部40は、複数の操作スイッチを備える。
【0031】
操作スイッチとしては、底弁操作スイッチ41、流量計スイッチ42、流量計リセットスイッチ43、及び、ホースリール巻取スイッチ44が設けられている。
【0032】
底弁操作スイッチ41は、エア式の底弁6の開閉状態を調節するコントロールバルブ48(図8参照)に接続されている。底弁操作スイッチ41は、コントロールバルブ48を介して、空圧ユニット9から供給されたエアにより底弁6のエアシリンダ49(図8参照)を動作させることにより底弁6を開閉するスイッチである。底弁6とコントロールバルブ48とを接続するエア配管を分岐させ、タンク3の上部に設けたベント弁(図示せず)に接続することにより、底弁操作スイッチ41を操作したときに底弁6の開閉とベント弁の開閉とが連動するようになっている。
【0033】
また、底弁操作スイッチ41の近傍には、底弁6に空気圧が供給されたときに点灯する表示灯45を設け、作業者に対して底弁6が開いていることを示すようにしている。なお、機械室4には、緊急レバー46が設けられており、緊急時には作業者は緊急レバー46を操作して、底弁6を閉じることが可能となっている。
【0034】
[荷卸し制御の態様1]
荷卸し制御部40の主要な電気的構成および荷卸し制御の態様について、図8を参照してさらに説明する。
【0035】
荷卸し制御部40は、制御基板50を備え、制御基板50には、流量計スイッチ42、流量計リセットスイッチ43、及び、ホースリール巻取スイッチ44と、が電気的に接続されている。
【0036】
流量計スイッチ42は、流量計24への通電・非通電を選択するセレクタスイッチであり、流量計スイッチ42がON状態のときに、流量計24の出力信号が制御基板50に入力される。
【0037】
流量計リセットスイッチ43は、流量計24の積算流量をリセットする押しボタン式スイッチである。作業者が流量計リセットスイッチ43を操作することにより、積算流量がゼロにリセットされる。これにより、作業者は所望のタイミングで流量の測定を開始することができる。
【0038】
ホースリール巻取スイッチ44は、ホースリール31に荷卸し用ホース32を巻き取るときに操作される押しボタン式のスイッチである。ホースリール巻取スイッチ44は、作業者がスイッチを押している間、ホースリールモータ36(図8参照)を動作させることによりホースリール31を回転させ、ホースリール31に荷卸し用ホースを巻き取らせる。なお、ホースリールモータ36は、油圧式、電動式のいずれのモータであってもよい。
【0039】
制御基板50は、例えば、演算を行うCPU、処理プログラムが格納されたメモリ等を含んで構成されたマイクロコンピュータに相当する。また、制御基板50には、無線通信ユニットが設けられており、携帯端末60との間で無線通信が可能となっている。無線通信としては、食用油ローリ1から荷卸し用ホース32を最大長までひきだした距離(例えば30m)まで通信可能なものが採用でき、例えば、近距離無線通信の規格であるBluetooth(登録商標)が採用できる。
【0040】
携帯端末60は、演算を行うCPU、処理プログラムが格納されたメモリ、及び、表示部を含んで構成されている。このような携帯端末60としては、例えば、荷卸し作業を行う作業者が携帯可能なタブレット端末、スマートフォン等の携帯情報通信端末から選択される。携帯端末のメモリには、例えば、荷卸し状態を監視するプログラム(荷卸しアプリケーションソフト)等が記憶されている。
【0041】
以上の構成を備える食用油ローリによる食用油の荷卸し作業について説明する。
【0042】
食用油ローリ1のタンク3内には、食用油製造工場もしくは工場から離れた配送拠点で供給を受けた所定量の食用油が充填されている。所定量とは、例えば、食品工場、飲食店、スーパーマーケット等の配送先から、予め注文のあった量であり、2件以上の配送先に配送する場合は、各配送先の注文の合計量である。
【0043】
配送先では、食用油ローリ1を駐車スペースに駐車し、作業者は機械室4の後端部のシャッター12を開放する。このときPTOを起動しておき、作業者は機械室4に設けられた各機械構成と動力(車載バッテリや油圧ユニット)との接続状態および稼働状態を確認する。そして、荷卸し制御部40に設けられた流量計スイッチ42を操作して、流量計24が計測したデータを制御基板50に入力可能な状態にする。しかる後、作業者は荷卸し用ホース32をホースリール31から引き出して配送先の貯蔵タンクにホース先端の給油用ノズル33を接続する。荷卸し制御部40の底弁操作スイッチ41が底弁6を開く位置にあり、底弁6が開状態であることを示す表示灯45が点灯している状態では、給油ポンプ22の動作により、食用油がタンク3から機械室4の配管部20、荷卸し用ホース32へと移送される。給油用ノズル33のレバーを操作して給油用ノズル33の開閉弁を開状態とすることにより、食用油が配送先の貯蔵タンクに排出される。
【0044】
作業者は、給油を開始する前に携帯端末60の荷卸しアプリケーションを起動し、携帯端末60により流量計24の出力データを受信可能な状態にしておく。図9では、携帯端末としてスマートフォンを使用した例を図示している。携帯端末60の表示部61には、荷卸しアプリケーションソフトによって、積算流量もしくは瞬時流量が表示される数値表示エリア62が設けられた画面が表示される。この数値表示エリア62では、食用油の表示単位がkg(キログラム)であるため、流量計から入力された積算流量を食用油の密度を利用した計算式で重量換算した積算重量を表示している。なお、重量換算する際に、食用油の密度とともに気温を考慮した計算式を用いてもよい。また、数値表示エリア62の表示内容は、作業者が表示切替ボタン63を操作することにより、瞬時流量(L/min)、積算流量(L)、積算重量(kg)と変更することが可能である。
【0045】
作業者が荷卸し制御部40に設けられた流量計リセットスイッチ43を操作すると、流量計24の積算流量がリセットされる。同時に、携帯端末60の表示画面に示された積算流量もしくは積算重量もゼロとなる。このときの食用油の流量は流量計24により計測され、積算流量もしくは瞬時流量が流量計24の表示部に表示されるとともに、流量計24の計測データが制御基板50に入力される。
【0046】
流量計24から制御基板50に入力されたデータは、無線通信ユニット51を介して作業者が保持する携帯端末60に送信される。携帯端末60に表示される給油量は、流量計24の積算流量に連動して逐次更新される。作業者は、給油作業中に食用油の漏れが生じてる箇所がないかを監視する必要があり、食用油ローリ1と貯蔵タンクとの間を行き来する。この間、作業者は携帯端末60を携行し、荷卸しアプリケーションソフトによって携帯端末60に表示される給油量を確認する。
【0047】
作業者は、携帯端末60に表示された積算重量が予定していた給油量に近づいたら、給油停止の準備を始め、食用油ローリ1側で、携帯端末60の表示が給油量に到達したら機械室4の給油ポンプ22を停止させ、底弁操作スイッチ41を操作して底弁6を閉じる作業を行うとともに、配送先の貯留タンク側で、貯留タンクに接続した給油用ノズル33の開閉弁を閉じ、給油用ノズルと貯留タンクとの接続を解除する作業を行う。荷卸し用ホース32の給油用ノズル33を持って機械室4の後部まで戻った作業者は、荷卸し制御部40のホースリール巻取スイッチ44を操作して、ホースリール31を回転させ、荷卸し用ホース32をホースリール31に巻回させる。しかる後、給油用ノズル33をホルダ35に戻す。
【0048】
本実施形態に係る食用油ローリ1によれば、携帯端末60に流量計24の計測データを無線通信により送信可能としたことにより、作業者が食用油ローリ1から離れた場所にいる場合でも、流量計24の表示部の表示を確認するために食用油ローリ1に戻る必要がない。例えば、給油用ノズル33がピストル型のノズルの場合、作業者は荷卸し用ホース32を引き出した配送先の貯蔵タンク側でノズルの持ち手と吐出操作レバーを握っておく必要があるが、このような場合でも、携帯端末60により給油量が容易に確認できる。
【0049】
[荷卸しの制御の態様2]
荷卸し制御の他の態様について、図10を参照して説明する。なお、先に説明した荷卸し制御の態様と同様の構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、荷卸し制御部40の主要な電気的構成は、上記荷卸し制御の態様1の構成と同一である。
【0050】
この荷卸し制御においては、底弁6を開閉するコントロールバルブ48の切り替えを、携帯端末60から制御基板50を介して行えるように構成している。
【0051】
図10に示すように、荷卸しアプリケーションソフトウェアを起動した携帯端末60の表示部61には、積算流量もしくは瞬時流量が表示される数値表示エリア62の他に、給油の開始を指示するSTARTボタン65と給油の停止を指示するSTOPボタン66とが設けられた画面が表示される。さらに、画面には流量計24のリセットボタン64が設けられている。
【0052】
作業者は、荷卸し用ホース32をホースリール31から引き出して配送先の貯蔵タンクに給油用ノズル33を接続し、荷卸しアプリケーションソフトを起動した携帯端末60の数値表示エリア62の数値を確認する。数値表示エリア62の値がゼロになっていなければ、作業者はリセットボタン64を選択する。選択信号は制御基板50に送信され、流量計24の表示部に表示された積算流量の値がゼロになり、数値表示エリア62の値もゼロとなる。次に作業者が、STARTボタン65を選択すると、選択信号が制御基板50に送信される。信号を受信した制御基板50は、コントロールバルブ48を切り換える処理を実行し、底弁6を開く。これにより給油用ノズル33から食用油の吐出が開始される。
【0053】
作業者は、携帯端末60を携行し逐次給油状況を確認する。予定の重量になったら、作業者はSTOPボタン66を選択する。選択信号が制御基板50に送信され、コントロールバルブを介して底弁6が閉じ給油用ノズル33からの食用油の吐出が停止される。
【0054】
なお、この例では、作業者が給油の開始を指示するSTARTボタン65または給油の停止を指示するSTOPボタン66を操作したときに制御基板50に入力される信号が、底弁6の開閉に対応するものであったが、これに限定されない。例えば、制御基板50を介して給油ポンプ22の駆動制御を行うように構成し、作業者が給油の開始を指示するSTARTボタン65または給油の停止を指示するSTOPボタン66を操作したときに制御基板50に入力される信号を、給油ポンプ22の動作の開始と停止とに対応させるようにしてもよい。
【0055】
[荷卸し制御の態様3]
この荷卸し制御の態様では、図12に示すように携帯端末60と無線通信可能な管理装置70をさらに備える。
【0056】
管理装置70は、食用油の配送管理を行う事務所に設置されたパーソナルコンピュータであり、無線LAN(Local Area Network)や携帯電話通信網等の無線通信ネットワークを介して携帯端末60と通信可能に構成されている。管理装置70は、携帯端末60に食用油の配送に必要な情報を送信するとともに、携帯端末60から、流量計24の計測データや各配送先での荷卸し量等のデータを受信する。
【0057】
図12に示すように、荷卸しアプリケーションソフトウェアを起動した携帯端末60の表示部61には、管理装置70から受信した、その日の配送先と、各配送先での荷卸し量を示すリストが表示される。
【0058】
作業者がリストに示された配送先を選択すると、画面が積算流量もしくは瞬時流量が表示される数値表示エリア62が設けられた画面に遷移する。この数値表示エリア62が設けられた画面において、積算流量がゼロでない場合には、作業者は荷卸し制御部40の流量計リセットスイッチ43を操作して流量計24の表示部に表示される積算流量をゼロにするとともに、画面の数値もゼロにする。また、この例では、画面の表示切替ボタン63によって、瞬時流量(L/min)、積算流量(L)、積算重量(kg)に加え、残り重量(kg)に表示を変更することが可能である。つまり、携帯端末60は管理装置70から配送先と荷卸し量が紐づいたデータを取得していることから、作業者がリストから配送先を選択した時点で、残り重量にその配送先の荷卸し量を反映するようにしている。
【0059】
作業者が携帯端末60の表示に残り重量を選択している場合には、配送先の貯留タンクへの食用油の充填を開始すると、携帯端末60側では、流量計24の計測データに基づいて、残り重量を演算するプログラムをCPUにより実行し、数値表示エリア62に表示する数値を逐次更新する。つまり、給油中は、予定の荷卸し量から時間の経過に伴って減算された数値が数値表示エリア62に表示される。
【0060】
また、荷卸しアプリケーションソフトウェアの機能として、アラーム機能を設けてもよい。アラーム機能は、残り重量が所定の重量(例えば、所定の重量を荷卸しするまでに残り1分に相当する量)を下回った場合に、作業者に配送先の貯蔵タンクまたは食用油ローリ1に戻って給油停止の準備をすることを促すものである。具体的には、携帯端末60の表示部61への警告メッセージ68(図13参照)の表示や、警告音の発生により実現される。なお、アラーム設定の変更のためのアラーム設定ボタン67を設けてもよい。
【0061】
荷卸し制御の態様は、上述した態様に限定されるものではなく、設計等に応じて種々の変更が可能である。例えば、運転室2に携帯端末60と無線通信可能な印刷装置を設け、配送先の貯蔵タンクへの荷卸し作業が終了した後に、納品書などの書類を印刷するように変更してもよい。
【0062】
[メンテナンス作業]
食品原料となる食用油を配送する食用油ローリ1では、タンク3および荷卸し機構100を衛生的な状態に保つ必要がある。このため、食用油ローリ1においては、タンク3および荷卸し機構100の清掃やパーツ交換が行われる。
【0063】
本実施形態に係る食用油ローリ1では、図1から図7に示したように、荷卸し用ホース32を含む荷卸し機構100を機械室4に収容し、機械室4を車台5から後方に延設した支持フレーム10対して、一括して着脱可能としている。機械室4の取り外しは、具体的には、次のような手順で行われる。
【0064】
まず、作業者は、タンク3の底弁6から延びる荷卸し用配管7と機械室4の前方壁から突出した配管との接続を解除し、さらに機械室4の底板部13と支持フレーム10とを連結するボルト及びナットを取り外して機械室4と支持フレーム10との接続を解除する。しかる後、クレーン装置やフォークリフト等を用いて、機械室4を一括してメンテナンスエリアに移動させる。
【0065】
このように機械室4を一括して車両から取り外すことができることから、機械室4に収容した機械構成の分解清掃や取り換えの作業性が向上する。また、メンテナンス作業に時間を要する場合には、全てのメンテナンス作業が終了するまで稼働に問題がない荷卸し機構100を収容した別の機械室4を支持フレーム10に取り付け、食用油ローリ1を配送車として運用することができる。
【0066】
また、機械室4に収容した機械構成の中には、定期的な交換が必要な部品(例えば、ストレーナ23)があり、それぞれの耐用期間や不具合の状況に応じて、必要な時期に適切なメンテナンスを行う必要がある。本実施形態に係る食用油ローリ1の機械室4は、後部壁の大凡全面が上下に開閉するシャッター12となっており、左右の側壁は前側にヒンジ部分が設けられた片開の扉11となっている。メンテナンス時には箱状の機械室4の後部及び左右の3面を開放することができることから、不具合が生じている機械構成が、配管部20、荷卸し制御部40、荷卸し用ホース32及びホースリール31のいずれであっても、作業者が容易にアクセスすることができ、メンテナンス作業の効率が向上する。
【0067】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係るタンクローリは上述の実施形態に限定されることはない。食用油ローリの他、食用油以外の液体を小口配送するタンクローリにも本発明を適用できることは勿論である。上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 食用油ローリ
2 運転室
3 タンク
4 機械室
5 車台
6 底弁
7 荷卸し配管
8 油圧ユニット
9 空圧ユニット
10 支持フレーム
11 片開き扉
12 シャッター
13 底板
14 フレーム
20 配管部
21 配管
22 給油ポンプ
23 ストレーナ
24 流量計
31 ホースリール
32 荷卸し用ホース
33 給油ノズル
35 ホルダ
40 荷卸し制御部
41 底弁操作スイッチ
42 流量計スイッチ
43 流量計リセットスイッチ
44 ホースリール巻取スイッチ
50 制御基板
51 無線通信ユニット
60 携帯端末
70 管理装置
100 荷卸し機構
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
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