(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067400
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】カバー部材の破れ防止構造
(51)【国際特許分類】
E06B 9/42 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
E06B9/42 Z
E06B9/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178594
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】592058533
【氏名又は名称】株式会社シンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】細江 正幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接合強度、引張強度を向上させ、製造コストに影響を与えないカバー部材の破れ防止構造を提供する。
【解決手段】筒状の巻取シャフトと、巻取シャフトに巻かれる合成樹脂製のトリコット生地からなるカーテン70と、カーテン70を巻き取り方向に付勢する付勢部材としてのコイルばねと、を備える車両用日除け装置に用いられる。カーテン70の自由端側には、ポリ塩化ビニル(PVC)製シートを帯状にしたカバー部材としてのアッパーワイヤカバー71が配され、アッパーワイヤカバー71は、折り重ねられるとともに、カーテン70の自由端側の端部を挟んで接合面が溶着され、溶着されなかった部分が袋状とされ、内部に線状のアッパーワイヤ73が配設される。アッパーワイヤカバー71がカーテン70に溶着された部分と、溶着されず袋状になった部分と、の境界形状Aが、直線部分と、U字状の部分と、が交互に繰り返される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の巻取シャフトと、前記巻取シャフトに巻かれる合成樹脂製のトリコット生地からなるカーテンと、前記カーテンを巻き取り方向に付勢する付勢部材と、を備える車両用日除け装置に用いられ、
前記カーテンの自由端側には、熱可塑性樹脂製シートを帯状にしたカバー部材が配され、
前記カバー部材は、折り重ねられるとともに、前記カーテンの自由端側の端部を挟んで接合面が溶着され、溶着されなかった部分が袋状とされ、内部に線状のアッパーワイヤが配設され、
前記カバー部材が前記カーテンに溶着された部分と、溶着されず袋状になった部分と、の境界形状が、直線部分と、U字状又はV字状の部分と、が交互に繰り返されることを特徴とするカバー部材の破れ防止構造。
【請求項2】
前記カーテンにおける前記カバー部材の溶着面の一方においてのみ、前記境界形状が、直線部分と、U字状又はV字状の部分と、が交互に繰り返されることを特徴とする請求項1記載のカバー部材の破れ防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の巻取シャフトと、巻取シャフトに巻かれるカーテンと、カーテンを巻き取り方向に付勢する付勢部材と、を備える車両用日除け装置において、カーテンの自由端側に溶着される熱可塑性樹脂製シートを帯状にしたカバー部材の破れ防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用日除け装置として、本出願人が先にした特許文献1に記載されるものがあった。車両用日除け装置は、カーテンユニットと、カーテンユニットが取り付けられるケースと、で構成されていた。
【0003】
カーテンユニットは、筒状の巻取シャフトと、巻取シャフトに巻かれるカーテンと、カーテンを巻き取り方向に付勢する付勢部材と、ケースに取り付け可能とされるとともに、巻取シャフトの軸線方向における一端側の方向に配設されて軸部を有するフロントホルダと、巻取シャフトの軸線方向における一端側において、巻取シャフトに取り付けられるとともに、軸部の外側に回動可能に嵌められ軸受となるブッシュと、ケースに取り付け可能とされるとともに、巻取シャフトの軸線方向における他端側に取り付けられるリアホルダと、巻取シャフト内で、巻取シャフトの軸線方向に沿って摺動可能、かつ、巻取シャフトの回転に追従可能なスライダと、を備え、付勢部材としてのコイルばねは、軸部とスライダとを架け渡すように配設されていた。
【0004】
上記車両用日除け装置において、カーテンの自由端側(上部)には、アッパー部が形成されている。これは、熱可塑性樹脂のポリ塩化ビニル(PVC)製のシートを帯状にして、カーテン端部と、ノブを通した硬鋼線製のアッパーワイヤを包み込み、高周波溶着で接合した構造とされている。車両窓枠上部のフックに、アッパー部のワイヤを引っ掛けてカーテンが固定される。
【0005】
高周波溶着でPVCシートを接合する手順は次の通りである。カーテン生地をPVCシートどうしで挟み、PVCシートの溶着したい部分を、銅などの金属製の金型で両側から挟む。そして、一定の圧力をかけながら、両側の金型の間に高周波電流を流し、金型間に強い高周波電界を作る。
【0006】
高周波電界によってPVCシート内の分子が共振し、PVCシートが発熱し、PVCシートが溶け始め、溶けたPVCが加圧によってカーテン生地に浸透する。このとき、PVCシートの金型に接触している面は、金型によって冷却されるため、シート表面はほとんど溶けない。
【0007】
金型の通電を止めるとPVCは冷えて固まり、金型から外すと、カーテン生地を挟んだ状態で接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の高周波溶着では、以下に述べる問題が発生するおそれがあった。
【0010】
金型によって溶けた部分と、金型に触れず溶けなかった部分と、の境界形状には、
図8(a)に示すように、金型痕として直線状の段差が生じる。
【0011】
そして、溶けた部分は冷えて再結晶化するため、溶けていない部分と硬度の差も生じる。
【0012】
接合強度を上げるには、強い加圧力を与えながら、通電量を増やしてPVCを充分溶かすことになるが、その分段差が大きくなり、溶着境界での引張強度が弱くなる。また、引張強度を強くするには、段差を小さくする必要があるが、その分加圧力を低くし、通電量を少なくすることになるが、接合強度が低下する。そのため、段差を抑えるには限界がある。
【0013】
カーテンシェードの耐久試験には、アッパー部を窓枠上部まで引き上げ、手放ししてドアトリム内に収納するというものがある。この試験を数多く繰り返すと、
図9(a)に示すような、ドアシェードケース側にアッパー部を受ける受け部を設けている構造では、 カーテンの手放し急閉を行うと、アッパー部の室外側のPVCシートが受け部の一部に強く当り、上下方向に強い張力がかかる。これにより、
図8(b)に示すように、比較的強度が低い溶着境界で亀裂や破れが発生することがある。
【0014】
特に段差が大きくなっている場合には、自己基準の2000回を満たさないことも出てくる。
【0015】
また、
図9(b)に示すような、ドアトリム(内側カバー)側にアッパー部を受ける受け部を設けている構造では、手放し急閉を行うと、室内側のPVCシートが受け部の一部に強く当り、同様に溶着境界に亀裂や破れが発生することがある。
【0016】
対策として、より強度に優れたPVC系材料に切り替えるなどの方法を選択することが多いが、当然、部品原価は上昇する。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑み、接合強度、引張強度を向上させ、製造コストに影響を与えないカバー部材の破れ防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載の発明では、筒状の巻取シャフトと、前記巻取シャフトに巻かれる合成樹脂製のトリコット生地からなるカーテンと、前記カーテンを巻き取り方向に付勢する付勢部材と、を備える車両用日除け装置に用いられ、
前記カーテンの自由端側には、熱可塑性樹脂製シートを帯状にしたカバー部材が配され、
前記カバー部材は、折り重ねられるとともに、前記カーテンの自由端側の端部を挟んで接合面が溶着され、溶着されなかった部分が袋状とされ、内部に線状のアッパーワイヤが配設され、
前記カバー部材が前記カーテンに溶着された部分と、溶着されず袋状になった部分と、の境界形状が、直線部分と、U字状又はV字状の部分と、が交互に繰り返される。
【0019】
これによれば、前記境界形状の、直線部分を繋ぐ仮想線において、金型による溶着痕の段差は、直線部分では存在するものの、U字状部分又はV字状部分ではほとんど存在しなくなり、直線部分を繋ぐ仮想線全体で平均化すると段差は小さくなる。また、前記仮想線におけるカバー部材の硬度差も平均化すると小さくなる。これらにより、仮想線における折れ曲げ強度が強くなり、破れにくくなる。また、引っ張り力に対しても、前記境界の全長が長くなることで、引っ張り力を分散し、破れにくくなる。
【0020】
よって、接合強度、引張強度を向上させ、製造コストに影響を与えないカバー部材の破れ防止構造とすることができる。
【0021】
また、前記カーテンにおける前記カバー部材の溶着面の一方においてのみ、前記境界形状が、直線部分と、U字状又はV字状の部分と、が交互に繰り返される。
【0022】
これによれば、例えば、カバー部材の前記境界形状における破れ防止構造が施された対策面を、窓側面に来るようにすれば、乗員は見た目では気づきにくく、違和感を感じにくくすることが出来るとともに、ドアシェードケース側にアッパー部を受ける受け部を設けている構造としても、接合強度、引張強度を向上させることができる。また、前記対策面を、室内側に来るようにすれば、意匠性の高い工夫を施すことで、違和感を抑えることができるとともに、ドアトリム側にアッパー部を受ける受け部を設けている構造としても、接合強度、引張強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態のカバー部材の破れ防止構造を備える車両用日除け装置の左前側からみた斜視図である。
【
図2】車両用日除け装置の左後側からみた部分分解斜視図である。
【
図3】同実施形態のカバー部材の破れ防止構造を備える車両用日除け装置の右後側からみた斜視図である。
【
図4】
図3のIV矢印が示す部分の部分拡大図である。
【
図8】(a)は従来のPVCシートとアッパーワイヤカバーとの接合状態の説明図であり、(b)は(a)が破れた状態を示す説明図である。
【
図9】(a)は従来のドアシェードケース側にアッパー部を受ける受け部を設けている場合の説明図であり、(b)はドアトリム側にアッパー部を受ける受け部を設けている場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の車両用日除け装置に用いられるカバー部材の破れ防止構造の一実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、各図面の矢印は、Fを前、Bを後ろ、Rを右、Lを左、Uを上、Dを下、とする。
【0025】
なお、説明を容易にするため、
図1においては、ドアトリム25を省略している。また、
図3においては、カーテン70が、引き出された状態と、引き込まれた状態と、を両方現わしている。
【0026】
車両用日除け装置10は、
図1~3に示すように、ケース20と、ドアトリム25と、ケース20に対して回動可能に軸支される巻取シャフト60と、巻取シャフト60に巻き付けられるカーテン70と、巻取シャフト60内で、巻取シャフト60の軸線方向に沿って摺動可能、かつ、巻取シャフト60の回転に追従可能なスライダ80と、カーテン70を巻き取り方向に付勢する付勢部材としてのコイルばね90と、コイルばね90の振動を抑制するサイレンサーチューブ100と、を備えている。
【0027】
ケース20は、
図1~3、5、6に示すように、合成樹脂で形成され、本体部21と、前支持部22と、後支持部23と、を有している。本体部21は、上外装部21aと内筒壁部21bとを有している。
【0028】
上外装部21aには、後述するアッパーワイヤカバー71とアッパーワイヤ73とからなる、アッパー部を受け止め可能に屈曲して形成された、受け部21a1が設けられている。
【0029】
内筒壁部21bは、断面略J字状に形成され、巻取シャフト60の回動、及びカーテン70の巻取り、繰出しを許容可能とされている。
【0030】
ドアトリム25は、車両ドアの室内側に取り付く合成樹脂製の内装部品の一部を表し、ケース20はドアトリム25の内側に内包されて固定され、ドアトリム25によって車両ドアに固定される。
【0031】
前支持部22には、
図1、2に示すように、合成樹脂製のフロントホルダ30が取り付けられている。フロントホルダ30は、
図1、2に示すように、取付部31と軸部32とを有している。
【0032】
取付部31は、ケース20の前支持部22に、ねじ35によりねじ止めされて取り付けられている。ケース20に取り付けられた状態において、軸部32は前方から後方に沿って伸びている。軸部32の先端部には、後述するコイルばね90の前端部が連結される(
図2参照)。
【0033】
フロントホルダ30の軸部32には、フェルト45を介して、合成樹脂製の概ね円筒形状のブッシュ40が差し込まれ、回動可能とされている。ブッシュ40の外周面の後方側には、ブッシュ40の中心軸を基準とする、複数の等間隔で回転対称な波型突起のリブ41が配設され、嵌合部42を形成している(
図2参照)。
【0034】
後支持部23には、合成樹脂製のリアホルダ50が取り付けられている。リアホルダ50は、概ね太さの異なる2段の円柱形状で、本体部51と軸支部52で構成されている。軸支部52は、ケース20の後支持部23に前後方向に沿って設けられた軸支孔24に、ワッシャ55を介して挿通され、回動可能にされている。本体部51の外周面の前方側には、リアホルダ50の中心軸を基準とする、複数の等間隔で回転対称な波型突起のリブ53が配設され、嵌合部54を形成している(
図2参照)。
【0035】
巻取シャフト60は、アルミニウム製で、
図2に示すように、概ね円筒形状で、内周面には、
図5、6に示すように、巻取シャフト60の中心軸を基準とする、複数の等間隔で回転対称な波形溝61が配設されている。ブッシュ40の嵌合部42とリアホルダ50の嵌合部54は、巻取シャフト60の波形溝61に、嵌合可能な形状に形成されており、圧入されて固定される。また、後述するサイレンサーチューブ100が巻取シャフト60内に挿通されると、フィン103が後述する波形溝61に収まり固定される(
図2、
図5、
図6参照)。
【0036】
巻取シャフト60の、前端部がブッシュ40の嵌合部42と嵌合され、後端部が、リアホルダ50の嵌合部54と嵌合されることで、巻取シャフト60がケース20に対して回動可能に軸支されている。
【0037】
カーテン70は、
図1~7に示すように、ポリエステル繊維製の糸でニット編みによりトリコット布に形成され、図示しない両面接着テープを介して巻取シャフト60に巻き付けられている。
【0038】
カーテン70の上端部には、カバー部材としてのアッパーワイヤカバー71が配設され溶着されている。上端部は袋状に形成され、硬鋼線製のアッパーワイヤ73が内包されている。アッパーワイヤカバー71には、上端部に切り欠き部74が三か所設けられ、アッパーワイヤ73が露出可能となっている。中央の切り欠き部74には、ノブ72がアッパーワイヤ73によって貫通する形で固定されている。
【0039】
本発明の要部について説明する。カーテン70とアッパーワイヤカバー71との接合は、本実施形態では、カーテン70を、PVCシート製のアッパーワイヤカバー71を折り重ねて挟み、アッパーワイヤカバー71の溶着したい部分を、銅などの金属製の金型で両側から挟み加圧する。そして、両側の金型の間に高周波電流を流すことにより、アッパーワイヤカバー71が溶けてカーテン70を通り抜け、対向するアッパーワイヤカバー71どうしが溶融することができる。このとき、アッパーワイヤカバー71の金型に接触していない面は金型によって冷却されほとんど溶けない。
【0040】
本実施形態では、カーテン70の窓側(一方の面側)においてのみ、溶着された境界形状Aが、直線とU字状が交互に繰り返される形状になるように配慮されている。
【0041】
アッパーワイヤカバー71をカーテン70に溶着するときに使用する金型において、金型の上部側となる端末部に、U字状の溝を一定の間隔で櫛状に刻むことで、溶着後に、アッパーワイヤカバー71がカーテン70に溶着された部分と、溶着されず袋状になった部分と、の境界形状Aが、直線部分とU字状の部分が交互に繰り返す、略方形波形状となる。
【0042】
以上のことより、アッパーワイヤカバー71は、折り重ねられるとともに、カーテン70の自由端側の端部を挟んで接合面が溶着され、溶着されなかった部分が袋状とされ、内部に線状のアッパーワイヤ73が配設されることになる。また、アッパーワイヤカバー71とノブ72とアッパーワイヤ73とで、アッパー部が構成される。
【0043】
カーテン70は、後述する付勢部材としてのコイルばね90により、カーテン70を巻き取り方向に付勢される。
【0044】
巻取シャフト60の内部には、スライダ80と、コイルばね90と、サイレンサーチューブ100が配設されている。
【0045】
スライダ80は、
図2に示すように、合成樹脂で略円筒状に形成され、外周面には、スライダ80の軸線方向(組み付けられた状態における前後方向)に沿うとともに、スライダ80の軸線方向からみて径方向外側に突出する、回転対称な複数の波形突起を有した嵌合部81が配設されている。嵌合部81は、巻取シャフト60の内筒部の波形溝61と噛み合い可能に形成され、巻取シャフト60の回転移動が、スライダ80に伝達可能とされている。
【0046】
コイルばね90は、金属製で、
図2に示すように、前端部がフロントホルダ30の軸部32と連結され、後端部が、スライダ80の前端部と連結されている。
【0047】
サイレンサーチューブ100については、本出願人が先にした特願2017-238437号(特開2019-105089号公報)におけるものと、機能、作用は本願発明においても同様であるので詳細な説明を省略して簡単に説明する。
【0048】
サイレンサーチューブ100は、内管部と、外管部と、を備えた二重管構造とされ、
図2に示すように、複数のフィン103が外管部の外側に配設されている。
【0049】
サイレンサーチューブ100は、押し出し成形後に、コイルばね90と同じくらいの長さに切断されて取り付けられる。
【0050】
図2に示すように、巻取シャフト60と、コイルばね90の間に、サイレンサーチューブ100が、配設されている。サイレンサーチューブ100は、コイルばね90に対して回動可能とされ、複数のフィン103が、巻取シャフト60の内筒部の波形溝61に嵌り、巻取シャフト60と一緒に回転する。
【0051】
本出願人が行った、カーテン70を窓枠上部まで引き上げ、手放ししてドアトリム25内に収納するという、実験では、
図8(a)に示す従来の接合方法においては、500回で一部に
図8(b)に繋がる亀裂が見つかったが、本発明のカバー部材の破れ防止構造においては、3000回でも亀裂や破れが生じなかった。つまり、強度が6倍以上となり、自己基準の2000回を満たすことができた。
【0052】
上記構成のカバー部材の破れ防止構造では、筒状の巻取シャフト60と、巻取シャフト60に巻かれる合成樹脂製のトリコット生地からなるカーテン70と、カーテン70を巻き取り方向に付勢する付勢部材としてのコイルばね90と、を備える車両用日除け装置10に用いられ、
カーテン70の自由端側には、ポリ塩化ビニル(PVC)製シートを帯状にしたカバー部材としてのアッパーワイヤカバー71が配され、
アッパーワイヤカバー71は、折り重ねられるとともに、カーテン70の自由端側の端部を挟んで接合面が溶着され、溶着されなかった部分が袋状とされ、内部に線状のアッパーワイヤ73が配設され、
アッパーワイヤカバー71がカーテン70に溶着された部分と、溶着されず袋状になった部分と、の境界形状Aが、直線部分と、U字状の部分と、が交互に繰り返される。
【0053】
これによれば、前記境界形状Aの、直線部分を繋ぐ仮想線において、金型による溶着痕の段差は、直線部分では存在するものの、U字状部分ではほとんど存在しなくなり、直線部分を繋ぐ仮想線全体で平均化すると段差は小さくなる。また、前記仮想線におけるアッパーワイヤカバー71の硬度差も平均化すると小さくなる。これらにより、仮想線における折れ曲げ強度が強くなり、破れにくくなる。また、引っ張り力に対しても、前記境界の全長が長くなることで、引っ張り力を分散し、破れにくくなる。
【0054】
よって、接合強度、引張強度を向上させ、製造コストに影響を与えないカバー部材の破れ防止構造とすることができる。
【0055】
また、カーテン70におけるアッパーワイヤカバー71の溶着面の一方においてのみ、境界形状Aが、直線部分と、U字状の部分と、が交互に繰り返される。
【0056】
これによれば、アッパーワイヤカバー71の境界形状Aにおける破れ防止構造が施された対策面を、窓側面に来るようにしているので、乗員は見た目では気づきにくく、違和感を感じにくくすることが出来るとともに、ケース20側にアッパー部を受ける受け部21a1を設ける構造とする本実施形態であっても、接合強度、引張強度を向上させることができる。
【0057】
本発明のカバー部材の破れ防止構造は上記構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0058】
例えば、カーテン70とアッパーワイヤカバー71とが、溶着された部分と、されなかった部分と、の境界形状Aは、直線部分と、V字状の部分と、が交互に繰り返される形状とすることができる。
【0059】
また、境界形状Aの波形形状を、室内側に来るようにして、前記対策面に意匠性の高い工夫を施すことで、違和感を抑えることができる。この場合、ドアトリム25側にアッパー部を受ける受け部を設けている構造としても、接合強度、引張強度を向上させることができる。
【0060】
さらに、境界形状Aの波形形状を、窓側、室内側の両方に設けることも可能である。
【0061】
また、アッパーワイヤカバー71は、ポリ塩化ビニル(PCV)以外の、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂製を用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用日除け装置
60 巻取シャフト
70 カーテン
71 アッパーワイヤカバー
73 アッパーワイヤ
90 コイルばね
A 境界形状