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特開2023-67425導電パターン積層体及び静電容量センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067425
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】導電パターン積層体及び静電容量センサ
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/025 20190101AFI20230509BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20230509BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20230509BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230509BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20230509BHJP
   H05K 3/46 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
B32B7/025
H05K1/09 C
G06F3/041 495
G06F3/044 129
C09D11/52
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178651
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】縣 和哉
(72)【発明者】
【氏名】浅川 勝弘
【テーマコード(参考)】
4E351
4F100
4J039
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA04
4E351BB01
4E351BB50
4E351CC11
4E351DD05
4E351GG20
4F100AB24B
4F100AB24D
4F100AH03B
4F100AH03D
4F100AK01C
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA32B
4F100BA32D
4F100CC00B
4F100CC00D
4F100DE01B
4F100DE01D
4F100EJ08B
4F100EJ08D
4F100EJ42B
4F100GB41
4F100HB31B
4F100JG01B
4F100JG01D
4F100JG04C
4F100JG05C
4F100JG05E
4F100YY00B
4F100YY00D
4J039BA06
4J039BA39
4J039BC33
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA07
4J039EA24
5E316AA04
5E316AA13
5E316AA15
5E316AA41
5E316CC02
5E316CC10
5E316CC39
5E316DD13
5E316DD50
5E316EE08
5E316FF18
5E316FF22
5E316GG06
5E316HH11
5E316JJ14
(57)【要約】
【課題】厚さが比較的均一で薄い導電層を有する導電パターン積層体と、これを備えた静電容量センサを提供する。
【解決手段】基材(1)と、前記基材の第一面に任意のパターンで形成された第一導電層(2)と、前記第一面に積層された、前記第一導電層を被覆する第一誘電体層(3)と、前記第一誘電体層の前記基材と反対側の第二面に任意のパターンで形成された第二導電層(4)と、前記第二面に積層された、前記第二導電層を被覆する第二誘電体層(5)と、を備えた導電パターン積層体(10)であり、積層方向に透視したときに、前記第一導電層と前記第二導電層の少なくとも一部が重なる位置に配置されており、前記第一導電層及び前記第二導電層は、銀化合物インク組成物又は銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている、導電パターン積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の第一面に任意のパターンで形成された第一導電層と、
前記第一面に積層された、前記第一導電層を被覆する第一誘電体層と、
前記第一誘電体層の前記基材と反対側の第二面に任意のパターンで形成された第二導電層と、
前記第二面に積層された、前記第二導電層を被覆する第二誘電体層と、
を備えた導電パターン積層体であり、
積層方向に透視したときに、前記第一導電層と前記第二導電層の少なくとも一部が重なる位置に配置されており、
前記第一導電層及び前記第二導電層は、下記銀化合物インク組成物又は下記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている、導電パターン積層体。
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
【請求項2】
前記重なる位置において、前記第一導電層及び前記第二導電層は、それぞれ直径1μm以上の導電性粒子を含まない、請求項1に記載の導電パターン積層体。
【請求項3】
前記重なる位置において、前記第一導電層及び前記第二導電層の厚さはそれぞれ独立に1μm~7μmである、請求項1又は2に記載の導電パターン積層体。
【請求項4】
前記第二誘電体層の前記第一誘電体層と反対側の第三面に積層された第三誘電体層を備えた、請求項1~3の何れか一項に記載の導電パターン積層体。
【請求項5】
前記第一導電層、前記第一誘電体層、前記第二導電層、及び前記第二誘電体層の合計の厚さが30μm~50μmである、請求項4に記載の導電パターン積層体。
【請求項6】
基材と、前記基材の第一面に任意のパターンで形成された第一導電層と、
前記第一面に積層された、前記第一導電層を被覆する第一誘電体層と、
前記第一誘電体層の前記基材と反対側の第二面に積層された第二誘電体層と、
前記第二誘電体層の前記第一誘電体層と反対側の第三面に任意のパターンで形成された第三導電層と、
を備えた導電パターン積層体であり、
前記第三導電層は、前記第二誘電体層及び前記第一誘電体層を貫通し、前記第一導電層に接続する貫通接続部を有し、
前記貫通接続部は、前記第一誘電体層に設けられた第一貫通孔部と、前記第二誘電体層に設けられた第二貫通孔部とを貫通しており、
第一貫通孔部の開口径が前記第二貫通孔部の開口径よりも小さくされていることにより、前記第一貫通孔部と前記第二貫通孔部は段差を形成しており、
前記貫通接続部は前記段差を介して前記第一導電層に接続しており、
前記第一導電層及び前記第三導電層は、下記銀化合物インク組成物又は下記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている、導電パターン積層体。
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
【請求項7】
前記貫通接続部の前記第一導電層と反対側の表面には、前記段差の形状を反映した段状部が形成されており、
前記段状部の少なくとも一部を被覆する導電被覆層がさらに備えられており、
前記導電被覆層は、導電性粒子を含む導電粒子組成物の硬化物によって形成されている、請求項6に記載の導電パターン積層体。
【請求項8】
前記導電性粒子の平均粒子径が1μm以上である、請求項7に記載の導電パターン積層体。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の導電パターン積層体を備えた静電容量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電パターン積層体及び静電容量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘電体層に複数の電極が設けられた静電容量方式のタッチセンサ(静電容量センサ)が開発されている。
特許文献1には、誘電体層のXY方向に複数の電極を形成し、これらの電極に接近する指などの導電体との間にコンデンサを形成し、複数の電極のどの電極に導電体が接近したかを静電容量の変化として検出する静電容量センサが開示されている。複数の電極とこれらに接続する導電配線は、誘電体層の表面に所望のパターンで形成された導電層によって形成されており、X方向を検知する電極とY方向を検知する電極とが区分けされている。導電パターンが複雑である場合には、導電配線を立体的に交差させるジャンパ構造やスルーホール構造が設けられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-49618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量センサを製造する根幹技術の一つとして、第一誘電体層/第一導電パターン層(第一導電層)/第二誘電体層/第二導電パターン層(第二導電層)の順に積層した導電パターン積層体の形成がある。静電容量センサを薄型化するために、各層の厚さを薄くすることが求められている。また、第一導電層と第二導電層の間でコンデンサを形成する場合、静電容量を増大させるためには、第二誘電体層の厚さを薄くすることが有効である。
【0005】
しかしながら、第二誘電体層の厚さを薄くすると、第一導電層と第二導電層とが短絡する問題が生じ易い。本発明者らがこの原因を検討したところ、第一導電層の厚さが不均一であり、厚い箇所が第二誘電体層を突き抜けて第二導電層に接触することが分かった。さらに各導電層の厚さが不均一になる原因を追究したところ、各導電層に含まれるカーボン粒子等の導電性粒子の粒子径にバラツキがあることが原因であることをつきとめた。
【0006】
本発明は、厚さが比較的均一で薄い導電層を有する導電パターン積層体と、これを備えた静電容量センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 基材と、前記基材の第一面に任意のパターンで形成された第一導電層と、前記第一面に積層された、前記第一導電層を被覆する第一誘電体層と、前記第一誘電体層の前記基材と反対側の第二面に任意のパターンで形成された第二導電層と、前記第二面に積層された、前記第二導電層を被覆する第二誘電体層と、を備えた導電パターン積層体であり、積層方向に透視したときに、前記第一導電層と前記第二導電層の少なくとも一部が重なる位置に配置されており、前記第一導電層及び前記第二導電層は、下記銀化合物インク組成物又は下記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている、導電パターン積層体。
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
[2] 前記重なる位置において、前記第一導電層及び前記第二導電層は、それぞれ直径1μm以上の導電性粒子を含まない、[1]に記載の導電パターン積層体。
[3] 前記重なる位置において、前記第一導電層及び前記第二導電層の厚さはそれぞれ独立に1μm~7μmである、[1]又は[2]に記載の導電パターン積層体。
[4] 前記第二誘電体層の前記第一誘電体層と反対側の第三面に積層された第三誘電体層を備えた、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電パターン積層体。
[5] 前記第一導電層、前記第一誘電体層、前記第二導電層、及び前記第二誘電体層の合計の厚さが30μm~50μmである、[4]に記載の導電パターン積層体。
[6] 基材と、前記基材の第一面に任意のパターンで形成された第一導電層と、前記第一面に積層された、前記第一導電層を被覆する第一誘電体層と、前記第一誘電体層の前記基材と反対側の第二面に積層された第二誘電体層と、前記第二誘電体層の前記第一誘電体層と反対側の第三面に任意のパターンで形成された第三導電層と、を備えた導電パターン積層体であり、前記第三導電層は、前記第二誘電体層及び前記第一誘電体層を貫通し、前記第一導電層に接続する貫通接続部を有し、前記貫通接続部は、前記第一誘電体層に設けられた第一貫通孔部と、前記第二誘電体層に設けられた第二貫通孔部とを貫通しており、第一貫通孔部の開口径が前記第二貫通孔部の開口径よりも小さくされていることにより、前記第一貫通孔部と前記第二貫通孔部は段差を形成しており、前記貫通接続部は前記段差を介して前記第一導電層に接続しており、前記第一導電層及び前記第三導電層は、下記銀化合物インク組成物又は下記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている、導電パターン積層体。
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
[7] 前記貫通接続部の前記第一導電層と反対側の表面には、前記段差の形状を反映した段状部が形成されており、前記段状部の少なくとも一部を被覆する導電被覆層がさらに備えられており、前記導電被覆層は、導電性粒子を含む導電粒子組成物の硬化物によって形成されている、[6]に記載の導電パターン積層体。
[8] 前記導電性粒子の平均粒子径が1μm以上である、[7]に記載の導電パターン積層体。
[9] [1]~[8]の何れか一項に記載の導電パターン積層体を備えた静電容量センサ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電パターン積層体にあっては、積層した導電層同士の短絡を防止しながら、薄型化することができる。また、導電パターン積層体に積層された導電層同士の絶縁性を保ちながら距離を近づけることができるので、キャパシタを形成した場合の静電容量を増大させることができる。このように優れた導電パターン積層体を備えた静電容量センサにあっては、信頼性やセンサ感度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一例である導電パターン積層体10の断面図である。
図2】本発明の一例である導電パターン積層体20の断面図である。
図3図2のA-A線で切断した断面図である。
図4】比較例の導電パターン積層体100の断面図である。
図5】比較例の導電パターン積層体100の断面の電子顕微鏡像である。
図6】比較例の導電パターン積層体100の第二導電層104を平面視した電子顕微鏡像である。
図7】本発明に係る導電パターン積層体30の一例の断面の電子顕微鏡像である。
図8】本発明に係る導電パターン積層体30の一例の第二導電層34を平面視した電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪導電パターン積層体≫
<第一態様>
本発明の第一態様の導電パターン積層体は、基材と、前記基材の第一面に任意のパターンで形成された第一導電層と、前記第一面に積層された、前記第一導電層を被覆する第一誘電体層と、前記第一誘電体層の前記基材と反対側の第二面に任意のパターンで形成された第二導電層と、前記第二面に積層された、前記第二導電層を被覆する第二誘電体層と、を備える。また、積層方向に透視したときに、前記第一導電層と前記第二導電層の少なくとも一部が重なる位置に配置されている。
【0011】
本態様の一例として、図1に導電パターン積層体10の積層方向(Z方向)の断面図を示す。導電パターン積層体10は、基材1と、基材1の第一面1aに任意のパターンで形成された第一導電層2と、第一導電層2を被覆する第一誘電体層3と、第一誘電体層3の基材1と反対側の第二面3aに任意のパターンで形成された第二導電層4と、第二面3aに積層された、第二導電層4を被覆する第二誘電体層5と、第二誘電体層5の基材1と反対側の第三面5aを被覆する第三誘電体層6と、を備えている。
【0012】
図1は、導電パターン積層体10において、第一導電層2が並行する4本の導電配線を形成し、第二導電層4も並行する4本の導電配線を形成している箇所を、導電配線の長さ方向を横切る向き(幅方向の向き)で各層を積層方向(厚さ方向)に切断した断面図である。この積層方向に見て、第一導電層2と第二導電層4の各配線は重なっている。
なお、図示例のように第一導電層2と第二導電層4の各導電配線が平行であり、その長さ方向に沿ってずっと重なり続ける場合だけでなく、図示しないが、第一導電層2の導電配線と第二導電層4の導電配線とが積層方向に見て互いに1点で交差する場合も、第一導電層2と第二導電層4とは重なる位置に配置されていることになる。
【0013】
基材1はその表面に導電層が形成可能な材料からなるものであれば特に制限されず、例えば、樹脂、ガラス、半導体等の材料からなるフィルムや基板等が挙げられる。
【0014】
第一誘電体層3、第二誘電体層5、第三誘電体層6はそれぞれ独立に絶縁性樹脂によって形成されている。絶縁性樹脂の種類は特に制限されず、公知の電子回路に使用されるものが適用できる。例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0015】
第一誘電体層3、第二誘電体層5、第三誘電体層6の厚さはそれぞれ独立に設定され、例えば、10μm~30μmとすることができ、15μm~20μmが好ましい。
各誘電体層の厚さは、導電パターン積層体の各導電層が重なる位置において積層方向の断面を切り出し、各導電層の間にある誘電体層の断面を電子顕微鏡で観察し、任意の5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
【0016】
第一導電層2及び第二導電層4は、後述のインク組成物の硬化物によって形成されているので、比較的均一な厚さで薄くすることができる。このインク組成物によって形成されている場合、各導電層に直径1μm以上の導電性粒子は通常含まれない。
導電パターン積層体の各導電層が重なる位置において積層方向の断面を切り出し、各導電層の断面を電子顕微鏡で観察することにより、直径1μm以上の導電性粒子が含まれるか否かを判別することができる。ここで、導電性粒子の直径は、観察された導電性粒子の最も長い差し渡しの径をいう。例えば大径のカーボン粒子が含まれる場合にはこの方法で一目瞭然に確かめられる。
【0017】
第一導電層2及び第二導電層4の厚さは、前記重なる位置も含めて、それぞれ独立に例えば1μm~7μmとすることができる。
各導電層の厚さは、導電パターン積層体の各導電層が重なる位置において積層方向の断面を切り出し、各導電層の断面を電子顕微鏡で観察し、任意の5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
【0018】
第一導電層2及び第二導電層4の幅は、前記重なる位置も含めて、それぞれ独立に例えば30μm~200μmとすることができる。
各導電層の幅は、導電パターン積層体の各導電層が重なる位置において平面視し、各導電層の幅を電子顕微鏡で観察し、任意の5箇所の幅を測定し、平均した値である。
【0019】
第一導電層2及び第二導電層4は、後述のインク組成物の硬化物によって形成されているので、均一な厚さで薄くすることができる。このため、導電パターン積層体10の全体を薄くすることができる。例えば、基材1と第三誘電体層6を除いて、第一導電層2、第一誘電体層3、第二導電層4、及び第二誘電体層5の合計の厚さを30μm~50μmとすることができる。
【0020】
後述のインク組成物ではなく、カーボン粒子等の導電性粒子とバインダ樹脂とを含む導電性樹脂組成物によって形成された導電層の例として、図4の導電パターン積層体100が挙げられる。
導電パターン積層体100は、基材101と、その第一面101aに形成された第一導電層102と、第一誘電体層103と、その第二面103aに形成された第二導電層104と、第二導電層104を被覆する第二誘電体層105と、その第三面105aを被覆する第三誘電体層106と、を備えており、積層構造の基本は導電パターン積層体10と同様である。しかし、各導電層は直径1μm以上の導電性粒子を含むため、厚くなり、その断面形状は、導電パターン積層体10と同じ拡大倍率で見ると図示の通り蒲鉾型(上方に扁平なU字型)となる。このため、第一導電層102が第一誘電体層103を突き破って第二導電層104に接触して短絡することがある。この短絡を防ぐために、第一誘電体層3の厚さを薄くすることが難しい。結果として、導電パターン積層体100の各層の厚さ及び合計の厚さを薄くすることが困難である。また、後述の図6で示すように各導電層は面方向(横方向)に滲んだように端部が拡がる傾向がある。このため、狭いピッチで導電配線を並べることも難しい。
【0021】
≪インク組成物≫
本発明の導電パターン積層体の第一導電層、第二導電層、及び第三導電層は、下記の銀化合物インク組成物又は下記の銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている。
【0022】
<銀化合物インク組成物>
銀化合物インク組成物は、銀化合物と、アミンと、溶剤とを含む塗料である。
前記銀化合物はカルボン酸銀であることが好ましい。前記銀化合物がカルボン酸銀ではない場合、さらにカルボン酸若しくはカルボン酸塩を含むことが好ましい。塗料は希釈用の溶剤を含むことが好ましい。
銀化合物インク組成物を基材の表面に所望のパターンで印刷し、これを例えば200℃未満、0.5~3時間で加熱すると、アミンの少なくとも一部が揮発し、パターン中に銀が生成し、所望のパターンの銀を含む導電層が形成される。
このような銀化合物インク組成物としては、例えば、特許第6557317号、特許第6599891号、WO2013/096664等に記載された公知の銀化合物インク組成物が挙げられる。
【0023】
銀化合物インク組成物としては、例えば、カルボン酸銀と、前記カルボン酸銀を溶解する少なくとも1つの溶解剤と、触媒とを混合することによって形成される銀錯体を含み、前記溶解剤が芳香族炭化水素を含み、前記触媒がカルボン酸銀を脱炭酸するアミンを含む銀化合物インク組成物が挙げられる。また、銀化合物インク組成物としては、例えば、カルボン酸銀と、前記カルボン酸銀を溶解する少なくとも1つの溶解剤と、前記カルボン酸銀の銀を還元する触媒とを混合することによって形成される銀錯体を含み、前記溶解剤は芳香族炭化水素を含み、前記触媒がアミンを含むものが挙げられる。
【0024】
前記カルボン酸銀は、プロピオン酸銀、酪酸銀、ペンタン酸銀、ヘキサン酸銀、ヘプタ
ン酸銀、エチルヘキサン酸銀、ベヘン酸銀、オレイン酸銀、オクタン酸銀、ノナン酸銀、
デカン酸銀、ネオデカン酸銀、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀からなる群から選択
される1種以上であることが好ましい。
【0025】
前記触媒は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、ポリアミンおよびそれらの
組合せからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0026】
前記触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチル
アミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミ
ン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペン
タデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、アリ
ルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、イソペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-ヘキシルアミン、フェニルアミン、シクロペンチルアミン、tert-オクチルアミン、tert-デシルアミン、tert-ドデシルアミン、tert-オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、ジシクロペンチルアミン、メチルブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、およびヘキサメチレンジアミンからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0027】
また、銀化合物インク組成物としては、例えば、銀塩と、(a)錯化剤とギ酸との錯体、または(b)錯化剤とギ酸の塩との錯体と、エチレンジアミンとを含有し、前記錯化剤がアルキルアミンであるものが挙げられる。
前記アルキルアミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンおよびアミルアミンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
前記銀塩は、酢酸銀、ギ酸銀、炭酸銀、フッ化銀、硝酸銀、亜硝酸銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、リン酸銀および酸化銀からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
前記銀化合物インク組成物は、さらにエタノール、ブタノール、プロピレングリコール、および水からなる群より選択される1種以上の溶媒を含むことが好ましい。
前記エチレンジアミンに対する前記アルキルアミンの比は、容量基準で4:1~1:4であることが好ましい。
前記ギ酸または前記ギ酸の塩に対する前記アルキルアミンの比は、モル基準で少なくとも2:1であることが好ましい。
前記銀塩を含む銀化合物インク組成物の塗膜を例えば120℃以下で加熱することにより、塗膜中に銀を生成して導電層を形成することができる。
【0028】
<銀ナノ粒子インク組成物>
銀ナノ粒子インク組成物は、銀ナノ粒子と、溶剤とを含み、前記銀ナノ粒子の表面がアミンによって被覆された塗料である。
銀ナノ粒子インク組成物を基材の表面に所望のパターンで印刷し、これを例えば130℃以下、0.5~3時間で加熱すると、アミンの少なくとも一部が揮発し、パターン中に銀が生成し、所望のパターンの銀を含む導電層が形成される。
このような銀ナノ粒子インク組成物としては、例えば、WO2017/175661等に記載された公知の銀ナノ粒子インク組成物が挙げられる。
【0029】
銀ナノ粒子は、一次粒子の大きさ(平均一次粒子径)が1000nm未満である粒子である。ここで粒子径は走査型電子顕微鏡で観察した10個の一次粒子の直径(最大径)の平均である。表面が前記保護剤で被覆された銀ナノ粒子における、銀ナノ粒子部分の平均一次粒子径は、例えば0.5~100nmが挙げられ、好ましくは0.5~80nm、より好ましくは1~70nm、さらに好ましくは1~60nmである。
【0030】
銀ナノ粒子インク組成物の粘度(25℃、せん断速度10(1/s)における)は60Pa・s以上であることが好ましい。この粘度は、例えば、レオメーター(商品名「PhysicaMCR301」、AntonPaar社製)又はその上位互換機を使用して測定することができる。
【0031】
前記アミンは銀ナノ粒子の表面を修飾する。前記アミンとしては、例えば、総炭素数6以上の脂肪族モノアミン(1)と、総炭素数5以下の脂肪族モノアミン(2)及び/又は総炭素数8以下の脂肪族ジアミン(3)とを含むものが好ましい。
【0032】
前記脂肪族モノアミン(1)としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第一級アミン;イソヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-オクチルアミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第一級アミン;シクロヘキシルアミン等のシクロアルキル基を有する第一級アミン; オレイルアミン等のアルケニル基を有する第一級アミン等;N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジペンチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジペプチルアミン、N,N-ジオクチルアミン、N,N-ジノニルアミン、N,N-ジデシルアミン、N,N-ジウンデシルアミン、N,N-ジドデシルアミン、N-プロピル-N-ブチルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第二級アミン;N,N-ジイソヘキシルアミン、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第二級アミン;トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第三級アミン;トリイソヘキシルアミン、トリ(2-エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第三級アミン等が挙げられる。
【0033】
前記脂肪族モノアミン(2)としては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、tert-ペンチルアミン等の、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5の第一級アミン;N,N-ジメチルアミン、N,N-ジエチルアミン、N-メチル-N-プロピルアミン、N-エチル-N-プロピルアミン等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5の第二級アミン等が挙げられる。
【0034】
前記脂肪族ジアミン(3)としては、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0035】
脂肪族モノアミン(1)と、脂肪族モノアミン(2)及び/又は脂肪族ジアミン(3)とを併せる含有割合は、例えば、アミン全量[モノアミン(1)+モノアミン(2)+ジアミン(3);100モル%]を基準として、モノアミン(1)の含有量は5~65モル%であり、モノアミン(2)とジアミン(3)の合計含有量は35~95モル%であることが好ましい。
【0036】
前記溶剤はテルペン系溶剤を少なくとも含むことが好ましい。前記溶剤の総質量のうち沸点が130℃未満の溶剤の含有量は20質量%以下であることが好ましい。
前記溶剤は、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt - ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び3 - メトキシ- 1- ブタノールから選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0037】
銀ナノ粒子組成物は、さらに脂肪族モノカルボン酸の1種以上を含んでもよい。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸等の炭素数4以上の飽和脂肪族モノカルボン酸;オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸等の炭素数8以上の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
<第二態様>
本発明の第二態様の導電パターン積層体は、基材と、前記基材の第一面に任意のパターンで形成された第一導電層と、前記第一面に積層された、前記第一導電層を被覆する第一誘電体層と、前記第一誘電体層の前記基材と反対側の第二面に積層された第二誘電体層と、前記第二誘電体層の前記第一誘電体層と反対側の第三面に任意のパターンで形成された第三導電層と、を備える。
前記第一導電層及び前記第三導電層は、前記銀化合物インク組成物又は前記銀ナノ粒子インク組成物の硬化物によって形成されている。
【0039】
本態様の一例として、図2,3に導電パターン積層体20を示す。図2は導電パターン積層体20を平面視した図であり、そのA-A間で矢視した断面図が図3である。
導電パターン積層体20は、基材21と、基材21の第一面21aに任意のパターンで形成された第一導電層22と、第一面21aに積層された、第一導電層22を被覆する第一誘電体層23と、第一誘電体層23の基材21と反対側の第二面23aに積層された第二誘電体層25と、第二誘電体層25の第一誘電体層23と反対側の第三面25aに任意のパターンで形成された第三導電層26と、を備える。
【0040】
図示例では、基材21は平坦な第一面21aを有するフィルムである。第一導電層22は、第一面21aにおいてX方向に延びたラインパターン(配線)を形成している。第一面21aの第一導電層22が形成されていない領域には第一誘電体層23が積層している。第一誘電体層23は第一導電層22を被覆しており、第一誘電体層23の第二面23aは第一面21aと同様に基本的に平坦面である。第二面23aには第二誘電体層25が積層しており、第二誘電体層25の第三面25aも基本的には平坦面である。
【0041】
第三導電層26は、第三面25aにおいてX方向の一方のみに延びたラインパターンを形成している。積層方向(Z方向)に見て第一導電層22と第三導電層26が部分的に重なり平行とされている。
【0042】
第三導電層26は貫通接続部Tを有する。貫通接続Tは、第二誘電体層25及び第一誘電体層23を貫通し、第一導電層22に接続する部分であり、Z方向に延びる領域を有する。この領域が第一誘電体層23に設けられた第一貫通孔部23hと、第二誘電体層25に設けられた第二貫通孔部25hとを貫通している。つまり、第一貫通孔部23h及び第二貫通孔部25hが積層方向で重なる位置に形成される空間に、第三導電層26の一部が充填して貫通接続部Tが形成されている。
【0043】
図2,3から理解されるように、平面視略円形の第一貫通孔部23hと、平面視略円形の第二貫通孔部25hとは積層方向に見て重なっているので、仮に貫通接続部Tを除去した場合には平面視で第一導電層22の一部が露出して見える。
なお、各貫通孔部の平面視の形状は略円形でなくてもよく、楕円形、四角形、その他の多角形等に近似可能な任意の形状とすることができる。
【0044】
第一貫通孔部23hの開口径D1としては、例えば500μm~1000μmとすることができる。
第二貫通孔部25hの開口径D2としては、例えば800μm~1500μmとすることができる。
ここで各開口径は、各貫通孔部を平面視し、電子顕微鏡で観察した開口縁を含む(囲む)最小円の直径である。
【0045】
第一貫通孔部23hの開口径D1が第二貫通孔部25hの開口径D2よりも小さくされているので、第一貫通孔部23hと第二貫通孔部25hは段差Sを形成している。すなわち、段差Sは、第一導電層22から第一誘電体層23の第二面23aの高さまで登るステップと、第二面23aから第二誘電体層25の第三面25aの高さまで登るステップとを有する。
【0046】
第三導電層26の貫通接続部Tは、段差Sを介して段階的に第一導電層22に接続しているので、段差Sが無い場合(第三面25aから第一導電層22まで一気に接続する場合)に比べて、貫通接続部Tの構造的な安定性が高まっている(換言すれば、誘電体層に対する導電層の密着面積が増大している)。これにより、貫通接続部Tに応力が加えられた場合に断線することを防ぎ、その耐久性が向上している。
【0047】
貫通接続部Tにおける構造的安定性をさらに向上させる目的で、貫通接続部Tの少なくとも一部を被覆する導電被覆層27が備えられていることが好ましい。導電被覆層27は貫通接続部Tの全体を上方から被覆していてもよいが、図示例では貫通接続部Tの第一導電層22と反対側の表面に形成された段状部Kの少なくとも一部を覆うように、貫通接続部Tの上方を部分的に被覆している。貫通接続部Tの表面に形成された段状部Kは、段差Sの形状を反映した段状の部分である。
【0048】
導電被覆層27は、貫通接続部Tを補強する効果が高いことから、導電性粒子を含む導電粒子組成物の硬化物によって形成されていることが好ましい。このような導電性粒子組成物は、1種以上の導電性粒子と、1種以上のバインダ樹脂とを含む公知の組成物が適用され得る。
前記導電性粒子としては、例えば、カーボン粒子、銀粒子、金属層で被覆された樹脂粒子等が挙げられる。
前記バインダ樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーンゴム等の各種ゴム系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0049】
導電被覆層27に導電性粒子が含まれる場合、導電被覆層27の総質量に対する導電性粒子の含有量は、例えば、60~80質量%が挙げられる。
【0050】
導電性粒子による上記補強効果をより高める観点から、導電性粒子の平均粒子径は1μm~10μmが好ましく、3~5μmが好ましい。
ここで導電性粒子の平均粒子径は、導電被覆層27のバインダ樹脂を化学的に溶解又は分解して取り出した導電性粒子を電子顕微鏡で観察し、その観察視野から無作為に選択される20個の導電性粒子の直径(最大径)を計測して平均した値である。
【0051】
本態様におけるその他の構成、例えば、各導電層の厚さ、各誘電体層の厚さ、導電層が導電配線を形成している場合の配線幅等の構成については、第一態様と同様とすることができる。
【0052】
≪静電容量センサ≫
本発明の第三態様は、上述の第一態様及び第二態様のうち少なくとも一方の導電パターン積層体を備えた静電容量センサである。
本態様の静電容量センサにおいて、導電パターン積層体が有する各導電層は、配線を形成していてもよいし、電極を形成していてもよい。それらの配線や電極はキャパシタを構成していてもよい。
本発明の静電容量センサにおいて、上述の導電パターン積層体を有すること以外の構成は、公知の静電容量センサと同様とすることができる。
【実施例0053】
[比較例1]
平均粒子径1μm以上のカーボン粒子と、バインダ樹脂とを含む市販の導電性ペーストを使用し、基材表面に導電パターンを印刷し、加熱することにより導電層を形成する方法によって、導電パターン積層体100を作成した。その厚さ方向の断面の電子顕微鏡写真を図5に示す。
図5の積層構成において、基材101はフィルム基材であり、第一導電層102及び第二導電層104は上記導電性ペーストの硬化物からなり、第一誘電体層103及び第二誘電体層105は絶縁性樹脂からなる。
第一導電層102及び第二導電層104は各々が導電配線を形成しているが、写真ではその幅方向の断面を示している。導電性粒子を含み、その平均粒子径が1μm以上であるため、その断面は蒲鉾型となっており、これ以上薄くすることが困難である。なお、写真の各導電層の厚さは10μmを超えている。
【0054】
[比較例2]
比較例1と同様にして形成した導電層を備える導電パターン積層体100(ただし、第二誘電体層105は形成していない。)の平面視の電子顕微鏡写真を図6に示す。
図6の平面視の構成において、第一誘電体層103は絶縁性樹脂からなる平面を提供しており、その平面上に第二導電層104が複数のラインパターンからなる配線を形成している。
第二導電層104は導電性粒子を含み、その平均粒子径が1μm以上であるため、幅方向に滲みが発生しており、配線同士をさらに近づけて狭ピッチにすることが困難である。なお、写真の各配線の幅は170μmを超えている。
【0055】
[実施例1]
前述した銀化合物インク組成物の市販品(GenesInk社製)を使用し、基材表面にパターンを印刷し、加熱してパターン中に銀を生成し、導電パターンを形成する方法によって、導電パターン積層体30を作成した。その厚さ方向の断面の電子顕微鏡写真を図7に示す。
図7の積層構成において、基材31はフィルム基材であり、第一導電層32及び第二導電層34は上記導電パターンからなり、第一誘電体層33及び第二誘電体層35は絶縁性樹脂からなる。
第一導電層32及び第二導電層34は各々が導電配線を形成しているが、写真ではその幅方向の断面を示している。平均粒子径が1μm以上の導電性粒子を含まないので、その断面は比較例に比べて格段に薄くすることが可能である。第一導電層32が第一誘電体層33を突き破って第二導電層34に短絡する懸念は全くない。なお、写真の各導電層の厚さは10μm未満であり、平均的には2~3μmである。
【0056】
[実施例2]
実施例1と同様にして作製した導電層を備える導電パターン積層体30(ただし、第二誘電体層35は形成していない。)の平面視の電子顕微鏡写真を図8に示す。
図8の平面視の構成において、第一誘電体層33は絶縁性樹脂からなる平面を提供しており、その平面上に第二導電層34が複数のラインパターンからなる配線を形成している。
第二導電層34は、平均粒子径が1μm以上の導電性粒子を含まないので、幅方向に滲みは発生しておらず、配線同士を近づけて狭ピッチにすることが可能である。なお、写真の各配線の幅は約100μmである。
【符号の説明】
【0057】
1…基材、1a…第一面、2…第一導電層、3…第一誘電体層、3a…第二面、4…第二導電層、5…第二誘電体層、5a…第三面、6…第三誘電体層、10…導電パターン積層体、20…導電パターン積層体、21…基材、21a…第一面、22…第一導電層、23…第一誘電体層、23a…第二面、23h…第一貫通孔部、25…第二誘電体層、25a…第三面、25h…第二貫通孔部、26…第三導電層、27…導電被覆層、K…段状部、S…段差、T…貫通接続部、20…導電パターン積層体、31…基材、32…第一導電層、33…第一誘電体層、34…第二導電層、35…第二誘電体層、100…基材、101a…第一面、102…第一導電層、103…第一誘電体層、103a…第二面、104…第二導電層、105…第二誘電体層、105a…第三面、106…第三誘電体層、100…導電パターン積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8