(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067431
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】X線透視撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
A61B6/00 320M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178665
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】亀井 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 祐
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA36
4C093EA02
4C093EB12
4C093EB13
4C093FA14
4C093FA15
4C093FA45
4C093FA59
4C093FC14
4C093FC16
4C093FD03
4C093FF28
4C093FG13
(57)【要約】
【課題】透視後のX線撮影を適切に行うことができるX線透視撮影装置を提供する。
【解決手段】
被検体に向けてX線を照射するX線照射部と、被検体を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器からの出力信号に基づいて透視像を生成する透視像生成部と、前記透視像に写り込む像の輝度を示す参照値を取得する参照値取得部と、前記参照値と前記輝度の基準である基準値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定するX線照射制御部を備えるX線透視撮影装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けてX線を照射するX線照射部と、
被検体を透過したX線を検出する検出器と、
前記検出器からの出力信号に基づいて透視像を生成する透視像生成部と、
前記透視像に写り込む像の輝度を示す参照値を取得する参照値取得部と、
前記参照値と前記輝度の基準である基準値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定するX線照射制御部を備えるX線透視撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線透視撮影装置において、
前記検出器は、フラットパネルディテクタであるX線透視撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線透視撮影装置において、
前記X線照射制御部は、前記基準値に前記参照値が近づくようにX線透視の照射条件を設定可能な範囲内で制御することを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線透視撮影装置において、
前記X線照射制御部は、前記照射条件が設定可能な限界値に達しても前記参照値が前記基準値とならない場合に、前記基準値と前記照射条件が限界値にあるときの前記参照値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定するX線透視撮影装置。
【請求項5】
請求項3に記載のX線透視撮影装置において、
前記参照値が前記基準値となったときの前記照射条件から被検体の体厚を算出する体厚算出部を備え、
前記体厚算出部は、前記照射条件が設定可能な限界値に達しても前記参照値が前記基準値とならない場合に、前記基準値と前記照射条件が限界値にあるときの前記参照値とに基づいて前記体厚を算出するX線透視撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線透視撮影装置において、
前記X線照射制御部は、前記体厚算出部が算出した被検体の体厚に基づいて後続のX線撮影の照射条件を決定するX線透視撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のX線透視撮影装置において、
前記参照値取得部は、前記透視像の所定領域における各画素の輝度に基づいて前記参照値を取得するX線透視撮影装置。
【請求項8】
請求項3ないし請求項7のいずれかに記載のX線透視撮影装置において、
前記X線照射制御部が、前記参照値が前記基準値に近づくようにX線透視の管電圧、管電流、パルス幅、ビームハードニングフィルタの少なくとも1つを変化させる制御を実行するX線透視撮影装置。
【請求項9】
請求項5または請求項6に記載のX線透視撮影装置において、
前記体厚算出部は、前記照射条件が設定可能な限界値に達しても前記参照値が前記基準値とならない場合に、前記基準値と前記照射条件が限界値にあるときの前記参照値との比に基づいて前記体厚を算出するX線透視撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透視撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場においては、被検体にX線を照射してX線画像を撮影するX線透視撮影装置が配備される。このようなX線透視撮影装置は、まず、連続X線またはパルス状のX線を繰り返し被検体に向けて照射して、所定のフレームレートで透視を行い、透視を終了させた後にX線撮影(例えばスポット撮影)を行う構成となっている。
【0003】
X線撮影を行うには、被検体の体厚を測定する必要がある。従来のX線透視撮影装置は、X線撮影前の透視段階でこの体厚を測定するようにしている。従来構成では、X線透視の照射条件についての自動制御を利用して被検体の体厚を計測する。すなわち、従来のX線透視撮影装置は、透視段階において撮影されるフレームに写り込む像の視認性が最適となるようにX線の照射条件を自動的に変更する。例えば、被検体の体厚が厚い場合、X線の照射条件は、像の視認性が最適となるまでX線の線量を増加させるように変更される。従って、透視段階においてX線の照射条件が安定すると、体厚に応じたX線透視の線量の調整が終了したことになる。被検体の体厚は、透視段階における最終的なX線の照射条件に基づいて計測される。
【0004】
しかしながら、体厚の厚さが著しく厚いまたは薄い場合、X線透視の照射条件を変更しても像の視認性が最適とならない場合がある。透視段階におけるX線の照射条件(例えば、管電圧)に上限・下限があるからである。上述した体厚の測定方法は、像の視認性が最適となった時点におけるX線透視の照射条件が必要であるから、このような場合は、体厚を測定することができない。この点、下記の先行技術文献にはイメージインテンシファイアに付属のアイリス絞りの調整により上述の問題を解決する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては、次の様な問題点がある。すなわち、上述の解決法は、アイリス絞りを有しないX線透視撮影装置には用いることができない。
【0007】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、透視後のX線撮影を適切に行うことができるX線透視撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明のX線透視撮影装置は、被検体に向けてX線を照射するX線照射部と、被検体を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器からの出力信号に基づいて透視像を生成する透視像生成部と、前記透視像に写り込む像の輝度を示す参照値を取得する参照値取得部と、前記参照値と前記輝度の基準である基準値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定するX線照射制御部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のX線透視撮影装置は、透視像に写り込む像の輝度を示す参照値と透視像の輝度の基準である目標値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定するX線照射制御部を備える。本発明のX線透視撮影装置は、上述のX線照射制御部を備えることで被検体の体厚が極端に厚い場合や薄い場合でも後続のX線撮影を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係るX線透視撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【
図2】実施例に係るX線透視撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】実施例に係る透視像を説明する模式図である。
【
図4】実施例に係る体厚算出部が参照するテーブルである。
【
図5】実施例に係るX線照射制御部が参照するテーブルである。
【
図6】実施例に係るスポット撮影を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係るX透視撮影装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下ではX線透視に続いて、X線撮影の一例であるスポット撮影を行う場合を例に採って説明する。実施例に係るX線透視撮影装置1は、
図1に示すように水平姿勢をとる被検体を載置させる天板2と、被検体に対してX線を照射する天板2の下方に配置されたX線管3と、被検体を透過したX線を検出する天板2の上方に配置された検出器4と、被検体に対するX線ビームの照射範囲を制限する天板2とX線管3とに挟まれる位置に設けられたコリメータ5を有している。検出器4は、フラットパネルディテクタである。フラットパネルディテクタとしては、X線を蛍光に変換するシンチレータ層を有する間接変換型と、シンチレータ層を有さずX線を直接電気信号に変換する直接変換型がある。本例では、何れの変換型のフラットパネルディテクタも使用可能である。
【0012】
透視像生成部11は、検出器4からの出力信号に基づいて透視像Pを生成する。透視像Pとは、連続X線またはパルス状のX線を繰り返し被検体に向けて照射して、所定のフレームレート(例えば30f/s)でX線透視を行ったときに生成される動画である。透視像生成部11は、検出器4から次々と出力される出力信号に基づいて、透視像Pを構成するフレームを時系列的に生成する。
【0013】
参照値取得部12は、透視像Pに写り込む像の輝度を示す参照値を取得する。参照値は、透視像Pを構成するピクセルの画素値の平均値である。画素値は、0から4,095までの範囲の値を取りうるので、参照値はこの範囲内の値となる。
【0014】
体厚算出部13は、X線透視の照射条件や参照値から被検体の体厚を推定する。体厚算出部13は、2つのモードのうちの何れかで被検体の体厚を推定する。第1のモードは、透視時のX線照射条件から被検体の体厚を算出するモードであり、第2のモードは、透視時の参照値から被検体の体厚を算出するモードである。第2のモードは、体厚が極端に厚い、または極端に薄い場合に利用され、第1のモードはそれ以外の場合に利用される。
【0015】
スポット画像生成部14は、検出器4からの出力信号に基づいてスポット画像SPを生成する。スポット画像SPとは、パルス状のX線を被検体に向けて照射して得られる1枚の静止画である。
【0016】
X線照射制御部21は、X線管3の制御装置であって、X線透視の照射条件を設定可能な範囲内で制御する。X線照射制御部21は、X線透視における管電圧、管電流および照射時間に関する制御信号をX線管3に対して送信し、X線管3は、この制御信号に基づいてX線の照射動作を行う。X線透視時の管電圧、管電流を特に透視管電圧、透視管電流とよぶ。
【0017】
入力部22は、X線透視開始、スポット撮影の開始、コリメータ5の制御等、X線透視撮影装置1の制御に関する術者の操作を受け付けるヒューマンインターフェースである。本例におけるヒューマンインターフェースは、例えば操作パネル、操作卓である。
【0018】
記憶部23は、後述のテーブルT1,T2,T3等、X線透視撮影装置1の動作に必要な情報を記憶している。
【0019】
主制御部24は、各部11,12,13,14,21を統括的に制御する制御装置である。主制御部24は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、各種のプログラムを実行することにより各部11,12,13,14,21を実現する。各部は、主制御部24から独立したプロセッサーで実現されてもよい。また、主制御部24は、入力部22を通じた術者のX線透視撮影装置1に対する指示を受け付ける。
【0020】
モニタ31は、透視像生成部11で生成された透視像P,スポット画像生成部14で生成されたスポット画像SPを表示する。
【0021】
<X線透視撮影装置の動作>
以降、
図2が示すフローチャートに沿ってX線透視撮影の動作について説明する。X線透視撮影の動作は、ステップS1が示す様に、天板2に載置された被検体に対するX線透視から開始される。透視像Pは、被検体をリアルタイムに観察できる反面、写り込む像のコントラストは低い。被検体の病変を適切に診断するには、後述するスポット撮影で取得されるスポット画像SPが適している。
【0022】
X線透視が開始されると、モニタ31に透視像Pが表示される。術者は入力部22を通じて天板2をX線管3に対して移動させ、コリメータ5の開度を調節することができる。視野に関する調整が終了すると、術者は、入力部22を通じ、
図3に示す様にモニタ31上の透視像Pを4行4列に16分割する格子を透視像Pに重畳表示させることができる。術者は、入力部22を通じて透視像Pの断片P1~P16のうちのいずれか1つを選択することが可能である。選択された断片は、X線透視の輝度を示す参照値を取得する際の注目領域となる。術者が入力部22を通じて断片の何れかを選択すると、処理はステップS2に進み、参照値の取得が開始される。この参照値の取得は、本例では、X線透視が終了するまで続けられる。つまり、参照値は、透視像を構成するフレーム毎に算出される動的なパラメータである。
【0023】
例えば、術者が入力部22を通じ、断片P15を選択すると、参照値取得部12は、断片P15を構成する各画素の画素値に基づいて参照値を取得する。参照値の取得方法の具体例としては、例えば、画素値の平均値を参照値とする方法、断片P15についてヒストグラム解析を行い、ピークが位置する画素値を参照値とする方法等が考えられる。また、術者は、16個の断片のうち、例えば、空気が写り込む断片、被検体に埋め込まれた金属部材が写り込む断片を避けて断片の指定をすることができる。X線透視の目的以外のものが写り込んでいる断片は、X線透視の輝度を示す参照値の取得には適していない場合がある。
【0024】
参照値の取得が開始されると、処理は、ステップS3に進む。ステップS3では、参照値と、記憶部23に記憶されている目標値との比較が実行される。目標値は、本発明の基準値に相当する。目標値と参照値が等しければ、処理は後述のステップS6に進み、等しくなければ処理はステップS4に進む。目標値とは、透視像の視認性が良好になる輝度に設定されている。したがって、参照値が目標値に等しければ、このときの透視像は、輝度が適切で観察がし易いことになる。一般的には、X線透視開始時の参照値は目標値に等しくなく、処理はステップS4に進む。
【0025】
ステップS4では、X線透視の照射条件が設定可能な限界値となっているか否かが判断される。当該判断が真なら、処理は後述のステップS6に進み、偽なら、処理はステップS5に進む。X線管3には、透視管電圧の上限、下限が定められている。ステップS4では、透視管電圧が上限の110kVであるか否かが判断され、透視管電圧が110kVの場合、判断は真となる。また、ステップS4では、透視管電圧が下限の40kVであるか否かが判断され、透視管電圧が40kVの場合、判断は真となる。X線透視の開始時における透視管電圧は、中間的な値なので、当該判断は偽となり、処理はステップS5に進む。
【0026】
ステップS5は、参照値が目標値に近づくようにX線透視の照射条件が変更される。従って、参照値が目標値を上回っている場合、X線照射制御部21は、透視管電圧を低下させるようにX線管3を制御する。また、参照値が目標値を下回っている場合、X線照射制御部21は、透視管電圧を上昇させるようにX線管3を制御する。ステップS5の後、処理はステップS3に戻る。
【0027】
ステップS3~ステップS5が繰り返されると、参照値が目標値に次第に近づき、それに伴って透視像Pの視認性が向上する。すなわち、参照値が目標値を上回っていた場合、ステップS3~ステップS5が幾度か繰り返されることで透視管電圧が次第に低下し、最終的には、参照値が目標値に等しくなる。この時点で、ステップS3~ステップS5に係るフィードバック処理は終了する。一方、参照値が目標値を下回っていた場合、ステップS3~ステップS5が幾度か繰り返されることで透視管電圧が次第に上昇し、最終的には、参照値が目標値に等しくなる。この時点で、ステップS3~ステップS5に係るフィードバック処理は終了する。
【0028】
<ステップS6:第1のモード>
透視管電圧が100kVのときに参照値が目標値に等しくなる場合、透視管電圧は、上限にも下限にも達しない状態で上述のフィードバック処理は終了する。従って、この場合、処理は、ステップS3が真になることでステップS3~ステップS5で構成されるループから抜ける。すると、処理は、ステップS6に進み、最終的な透視管電圧に基づいて被検体の体厚が算出される。すなわち、体厚算出部13は、上述した第1のモードによって被検体の体厚を算出する。第1のモードにおいて、体厚算出部13は、
図4における上段に示すテーブルT1を記憶部23から読み出して、最終的な透視管電圧に対応する体厚を取得する。テーブルT1は、参照値が目標値に等しくなったときの透視管電圧が下限から上限までの範囲内にある条件下における透視管電圧と体厚との関連性を示している。テーブルT1は、被検体に見立てたアクリル板(ファントム)を実際に透視することで生成できる。つまり、テーブルT1を作成するには、厚さが70mm~270mmのアクリル板を複数枚用意し、それぞれのアクリル板についてX線透視して、参照値が目標値に等しくなったときの透視管電圧が実測される。本例では、透視管電圧が100kVで安定したから、体厚は260mmと推定される。ちなみに、
図4における透視管電流の値は、透視管電圧を決定するとそれに伴って定まる従属変数である。
【0029】
<ステップS6:第2のモード>
上述の説明は、X線透視において参照値が目標値に等しくなる時点で体厚が推定される例を示しているが、例えば、体厚が極端に厚い場合は、上述のフィードバック処理では参照値は目標値に達することはない。透視管電圧には上限が定められているからである。本例では、この場合でも適切に体厚を推定することができる。透視管電圧が上限の110kVとなっても参照値が依然として目標値を下回っている場合、透視管電圧は、上限に達した状態で上述のフィードバック処理は終了する。従って、この場合、処理は、ステップS4が真になることでステップS3~ステップS5で構成されるループから抜ける。すると、処理は、ステップS6に進み、目標値に対する参照値の比(ここではパーセンテージ)に基づいて被検体の体厚が算出される。すなわち、体厚算出部13は、上述した第2のモードによって被検体の体厚を算出する。第2のモードにおいて、体厚算出部13は、
図4における下段に示すテーブルT2を記憶部23から読み出して、パーセンテージに対応する体厚を取得して被検体の体厚を推定する。テーブルT2は、参照値が目標値を下回ったまま透視管電圧が上限となっている条件下におけるパーセンテージと体厚との関連性を表している。例えば、パーセンテージが50%の場合は、体厚算出部13は、テーブルT2を参照して体厚を320mmと推定する。すなわち、体厚算出部13は、X線透視の照射条件が一定のとき、体厚が厚くなるに応じて透視像の輝度は低下するという現象を利用して体厚の推定を行う。
【0030】
同様に、テーブルT2は、参照値が目標値を上回ったまま透視管電圧が下限となっている条件下におけるパーセンテージと体厚との関連性も表している。例えば、パーセンテージが110%の場合は、体厚算出部13は、テーブルT2を参照して体厚を40mmと推定する。すなわち、体厚算出部13は、X線照射条件が一定のとき、体厚が薄くなるに応じて透視像の輝度は増加するという現象を利用して体厚の推定を行う。テーブルT2は、被検体に見立てたアクリル板を実際に透視することで生成できる。
【0031】
このように、テーブルT2は、参照値が目標値を下回った場合に備えて、透視管電圧を最大にした状態で、肉厚のアクリル板の透視を行うことにより、上述のパーセンテージを実測することで生成される。また、テーブルT2は、参照値が目標値を上回った場合に備えて、透視管電圧を最小にした状態で、肉薄のアクリル板の透視を行うことにより、上述のパーセンテージを実測することで生成される。
【0032】
<体厚推定後の動作>
第1のモードまたは第2のモードに基づいて体厚の推定が終了すると、処理は、ステップS7に進み、入力部22を通じた術者の指示を受けてX線透視が終了する。その後、処理は、ステップS8に進み、ステップS6で求められた体厚に基づいて決定されたX線撮影の照射条件の下、入力部22を通じた術者の指示を受けてスポット撮影が実行される。スポット撮影の際、X線照射制御部21は、記憶部23に記憶されている
図5に示すテーブルT3を参照して、推定された体厚に対応するX線撮影の照射条件を取得して、この条件下でスポット撮影が実行される。
図6は、スポット撮影により取得されたスポット画像SPを示している。スポット画像SPは、透視像よりもコントラストが高い静止画となっており、種々の診断に適している。スポット画像SPの取得をもって本例のX線透視撮影装置1の動作は終了となる。テーブルT3は、被検体に見立てたアクリル板を実際にX線撮影することで生成できる。
【0033】
<実施形態の構成による効果>
以降、本例におけるX線透視撮影装置1の構成と、その効果について説明する。
(1)本例のX線透視撮影装置1は、被検体に向けてX線を照射するX線管3と、被検体を透過したX線を検出する検出器4と、検出器4からの出力信号に基づいて透視像を生成する透視像生成部11と、透視像に写り込む像の輝度を示す参照値を取得する参照値取得部12と、参照値と輝度の基準である目標値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定するX線照射制御部21を備える。
【0034】
上述のX線透視撮影装置1によれば、X線照射制御部21は、参照値と輝度の基準である目標値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定する。本例のX線透視撮影装置1は、上述のX線照射制御部21を備えることで被検体の体厚が極端に厚い場合や極端に薄い場合でも体厚を算出することができる。
【0035】
(2) (1)に記載のX線透視撮影装置において、検出器4は、フラットパネルディテクタである。
【0036】
上述のように、検出器4がフラットパネルディテクタであれば、イメージインテンシファイアを検出器として用いるよりも装置の小型化が可能である。本例の参照値取得部12は、アイリス絞りを備えないX線透視撮影装置にも適用が可能である。
【0037】
(3) (1)または(2)に記載のX線透視撮影装置においてX線照射制御部12は、目標値に参照値が近づくようにX線透視の照射条件を設定可能な範囲内で制御する。
【0038】
上述のように、X線照射制御部12が目標値に参照値が近づくようにX線透視の照射条件を設定可能な範囲内で制御すれば、透視像の輝度が次第に基準に近づくので、透視像の視認性が向上する。
【0039】
(4) (3)に記載のX線透視撮影装置において、X線照射制御部12は、照射条件が設定可能な限界値に達しても参照値が目標値とならない場合に、目標値と照射条件が限界値にあるときの参照値とに基づいて後続のX線撮影の撮影条件を決定する。
【0040】
上述のように照射条件が設定可能な限界値に達しても参照値が目標値とならない場合に、目標値と照射条件が限界値にあるときの参照値とに基づいて後続のX線撮影であるスポット撮影の撮影条件を決定するようにすれば、参照値が目標値とならない場合でも後続のX線撮影を適切な撮影条件で撮影できる。
【0041】
(5) (3)に記載のX線透視撮影装置において、参照値が目標値となったときの照射条件から被検体の体厚を算出する体厚算出部13を備え、体厚算出部13は、照射条件が設定可能な限界値に達しても参照値が目標値とならない場合に、目標値と照射条件が限界値にあるときの参照値とに基づいて前記体厚を算出する。
【0042】
上述のように照射条件が設定可能な限界値に達しても参照値が目標値とならない場合に、目標値と照射条件が限界値にあるときの参照値とに基づいて前記体厚を算出する体厚算出部13を備えるようにすれば、参照値が目標値とならない場合であっても種々のX線撮影を行うときの重要なパラメータである体厚を算出することができる。
【0043】
(6) (5)に記載のX線透視撮影装置において、X線照射制御部21は、体厚算出部13が算出した被検体の体厚に基づいて後続のX線撮影の照射条件を決定する。
【0044】
上述のように、X線照射制御部21は、体厚算出部13が算出した被検体の体厚に基づいてX線撮影の照射条件を決定すれば、被検体の体厚が極端な場合でも適切な照射条件に基づいたX線撮影が可能となる。すなわち、上述の構成によれば、照射条件が設定可能な限界値に達して参照値が目標値とならない場合であっても体厚の算出が可能であるので、算出された体厚に基づいて種々のX線撮影も可能となる。
【0045】
(7) (1)ないし(6)のいずれかに記載のX線透視撮影装置において、参照値取得部12は、透視像の所定領域における各画素の輝度に基づいて参照値を取得する。
【0046】
上述のように、参照値取得部12が透視像の所定領域における各画素の輝度に基づいて参照値を取得するようにすれば、透視像に写り込む被検体以外の像を避けて参照値を取得することができ、被検体の体厚をより正確に算出することが可能となる。
【0047】
(8) (3)ないし(7)のいずれかに記載のX線透視撮影装置において、X線照射制御部21が、参照値が目標値に近づくようにX線透視の管電圧、管電流、パルス幅、ビームハードニングフィルタの少なくとも1つを変化させる制御を実行する。
【0048】
上述のように、X線照射制御部21が、参照値が目標値に近づくようにX線透視の管電圧を変化させる制御を実行するようにすれば、より確実に輝度の基準である目標値に参照値を近づけることができる。
【0049】
(9) (5)または(6)に記載のX線透視撮影装置において、体厚算出部13は、照射条件が設定可能な限界値に達しても参照値が目標値とならない場合に、目標値と照射条件が限界値にあるときの参照値との比に基づいて体厚を算出する。
【0050】
上述のように、体厚算出部13が、照射条件が設定可能な限界値に達しても参照値が目標値とならない場合に、目標値と照射条件が限界値にあるときの参照値との比に基づいて体厚を算出するようにすれば、体厚算出部13は、算出が簡便なパラメータを利用して被検体の体厚を容易に算出することができる。
【0051】
<他の実施例>
なお、今回開示された実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲、並びに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。例として、本発明は下記の様に変形実施することができる。
【0052】
(1)体厚算出部13,X線照射制御部21は、テーブルT1,T2,T3に代えて各テーブルに対応する方程式を用いて動作するようにしてもよい。
【0053】
(2)テーブルT1,T2,T3を生成する際に、アクリルを使用する必要はなく、金属など他の材料を用いるようにしてもよい。また、被検体の体厚をメジャーによる実測等、他の方法で測定して、テーブルT1,T2,T3を生成する様にしてもよい。
【0054】
(3)参照値取得部12は、透視像を所定の大きさに分割(例えば、16分割)して構成される断片のうちの1つに含まれる画素の画素値から参照値を取得するようにしていたが、複数の断片に基づいて参照値を取得するようにしてもよい。また、参照値取得部12は、術者による入力部22を通じた領域の中心と領域の大きさの指定に基づいて、透視像内に矩形の注目領域を設けて、注目領域に基づいて参照値を取得するようにしてもよい。もちろん、参照値取得部12は、透視像全体から参照値を取得するようにしてもよい。
【0055】
(4)推定された体厚は、スポット撮影以外にもサブトラクション血管造影などの他の撮影にも使用できる。
【0056】
(5)
図4に示すテーブルT1における透視管電圧の値、
図4に示すテーブルT2におけるパーセンテージ、
図5に示すテーブルT3における体厚の値は、実際に記憶部23が記憶するデータの一部を抜粋したものであるが、各テーブルのデータ点数は、装置の目的に合わせて増減することができる。
【0057】
(6)上述の実施例では、被検体の体厚を推定することによりスポット撮影におけるX線撮影の照射条件を決定していたが、本発明はこの構成に限られない。透視条件と被検体の体厚とが関連したテーブルT1、および被検体の体厚とスポット撮影におけるX線撮影の照射条件とが関連したテーブルT3に基づいて、透視条件とスポット撮影におけるX線撮影の照射条件が関連したテーブルを作成するようにしてもよい。同様に、透視条件、パーセンテージ、被検体の体厚が関連したテーブルT2、およびテーブルT3に基づいて透視条件、パーセンテージ、スポット撮影におけるX線撮影の照射条件が関連したテーブルを作成するようにしてもよい。本例では、透視像の撮影条件およびパーセンテージに基づいて被検体の体厚を推定することなく直接的にスポット撮影におけるX線撮影の照射条件を算出することができる。本例に係るテーブルは、対応する方程式に代えることもできる。
【0058】
(7)上述の実施例では、透視像の生成中では参照値が目標値となるようにX線線量の調整が実行されていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、
図2で説明したフローチャートのステップS3~ステップS5を省略した構成とすることもできる。本例の透視は、例えば管電圧を70kVにして実行される。このときのパーセンテージが100である場合は、被検体の体厚は180mmであることが分かる(
図4参照)。被検体の体厚が180mmよりも厚くなる程、パーセンテージは100から低下し、被検体の体厚が180mmよりも薄くなる程、パーセンテージは100から増加する。被検体の厚さとパーセンテージの関連性を示すテーブルは、管電圧を70kVとして種々の厚さのアクリル板(ファントム)を実際に透視してパーセンテージを算出することで求めることができる。
【0059】
(8)上述した実施例では、管電圧を変化させることにより参照値を目標値に近づけるような制御がなされていたが、本発明はこの構成に限られない。管電圧に代えて、管電流、X線パルスのパルス幅、ビームハードニングフィルタのいずれかを変更することにより参照値を目標値に近づけるように構成してもよい。何れの場合でも、種々の厚さのアクリル板(ファントム)を実際に透視することで、
図4のテーブルT1,テーブルT2に相当するテーブルを作成することができる。本例では、当該テーブルに基づいて被検体の体厚を推定する。
【符号の説明】
【0060】
1 X線透視撮影装置
3 X線管
4 検出器
11 透視像生成部
12 参照値取得部
13 体厚算出部
21 X線照射制御部