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特開2023-67432オフセット印刷用インキ組成物、金属印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067432
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】オフセット印刷用インキ組成物、金属印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20230509BHJP
   C09D 11/033 20140101ALI20230509BHJP
   B41M 1/28 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C09D11/10
C09D11/033
B41M1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178666
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】植杉 隆二
(72)【発明者】
【氏名】伊永 浩治
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA05
2H113BB10
2H113BB12
2H113BB13
2H113BB24
2H113BC02
2H113CA25
2H113DA15
2H113DA28
4J039AB03
4J039AE06
4J039BA25
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC16
4J039BC20
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE23
4J039CA08
4J039EA36
4J039EA48
4J039FA01
4J039GA02
(57)【要約】
【課題】金属材料に対する印刷性に優れ、かつ、インキミストの発生を低減することが可能なオフセット印刷用インキ組成物、およびこれを用いた金属印刷物を提供する。
【解決手段】顔料と、アルキド樹脂または変性アルキド樹脂と、油と、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤のうち少なくともいずれか1つと、を含む金属材料向けのオフセット印刷用インキ組成物であって、前記オフセット印刷用インキ組成物はフュームドシリカを0.5質量%以上、10質量%以下の範囲で含み、前記フュームドシリカは、BET法によって測定した比表面積が100m/g以上、410m/g以下の範囲であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、アルキド樹脂または変性アルキド樹脂と、油と、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤のうち少なくともいずれか1つと、を含む金属材料向けのオフセット印刷用インキ組成物であって、
前記オフセット印刷用インキ組成物は、フュームドシリカを0.5質量%以上、10質量%以下の範囲で含み、
前記フュームドシリカは、BET法によって測定した比表面積が100m/g以上、410m/g以下の範囲であることを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物。
【請求項2】
前記フュームドシリカは、親水性フュームドシリカまたは疎水性フュームドシリカのうち、少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷用インキ組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオフセット印刷用インキ組成物を金属材料に塗布した金属印刷物であって、
前記金属材料は、アルミニウム、鉄、銅のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする金属印刷物。
【請求項4】
前記金属印刷物におけるオフセット印刷用インキ組成物の乾燥後の塗膜は、JIS K5600-5-4(鉛筆法)に準拠した引っかき硬度試験における鉛筆硬度がH以上であり、かつ、JIS K5600-5-3(デュポン式)に準拠した耐おもり落下性試験において、おもり高さ200mm、撃ち型および受け台の寸法をそれぞれ1/2インチ、おもり質量300gに設定した際に剥離面積が全体の20%未満であることを特徴とする請求項3に記載の金属印刷物。
【請求項5】
前記金属材料が金属缶であることを特徴とする請求項3または4に記載の金属印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料に対するオフセット印刷に用いるオフセット印刷用インキ組成物、およびこれを用いた金属印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷において、版胴からブランケット(転写体)にインキを転写する際にインキミスト(ミスチング)が発生し、こうしたインキミストが印刷対象物である金属材料、例えば金属缶に転写され、金属缶の印刷部分を汚損することがある。
【0003】
このようなインキを転写する際のインキミストの発生を抑制するために、粘弾性や凝集力を高めたインキが知られている。例えば、特許文献1では、着色顔料と、アルキド樹脂と、重合アマニ油と、を含み、アルキド樹脂および重合アマニ油の含有量を特定の範囲にしたオフセット印刷用インキが開示されている。こうしたオフセット印刷用インキによれば、インキ流動性に優れ、印刷物の着肉が良好でかつ、インキミストの発生が低減されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-055937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたようなオフセット印刷用インキは、印刷対象物が金属である場合には、インキ流動性や印刷物の着肉が必ずしも良好ではない。このため、金属材料に対するオフセット印刷に好適で、かつ、インキミストの発生を低減することが可能なオフセット印刷用インキ組成物が求められていた。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、金属材料に対する印刷性に優れ、かつ、インキミストの発生を低減することが可能なオフセット印刷用インキ組成物、およびこれを用いた金属印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、顔料と、アルキド樹脂または変性アルキド樹脂と、油と、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤のうち少なくともいずれか1つと、を含む金属材料向けのオフセット印刷用インキ組成物であって、前記オフセット印刷用インキ組成物は、フュームドシリカを0.5質量%以上、10質量%以下の範囲で含み、前記フュームドシリカは、BET法によって測定した比表面積が100m/g以上、410m/g以下の範囲であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、オフセット印刷用インキ組成物がBET法によって測定した比表面積が100m/g以上、410m/g以下の範囲のフュームドシリカを0.5質量%以上、10質量%以下の範囲で含むことによって、オフセット印刷時の印刷性(パイリング、インキの転写性、インキの着肉性など)を低下させることなく、転写時のインキミストの発生を低減させることが可能なオフセット印刷用インキ組成物を実現できる。
【0009】
また、本発明では、前記フュームドシリカは、親水性フュームドシリカまたは疎水性フュームドシリカのうち、少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0010】
本発明の金属印刷物は、前記各項に記載のオフセット印刷用インキ組成物を金属材料に塗布した金属印刷物であって、前記金属材料は、アルミニウム、鉄、銅のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記金属印刷物におけるオフセット印刷用インキ組成物の乾燥後の塗膜は、JIS K5600-5-4(鉛筆法)に準拠した引っかき硬度試験における鉛筆硬度がH以上であり、かつ、JIS K5600-5-3(デュポン式)に準拠した耐おもり落下性試験において、おもり高さ200mm、撃ち型および受け台の寸法をそれぞれ1/2インチ、おもり質量300gに設定した際に剥離面積が全体の20%未満であってもよい。
【0012】
また、本発明では、前記金属材料が金属缶であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属材料に対する印刷性に優れ、かつ、インキミストの発生を低減することが可能なオフセット印刷用インキ組成物、およびこれを用いた金属印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態のオフセット印刷用インキ組成物、およびこれを用いた金属印刷物について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
(オフセット印刷用インキ組成物)
本発明の一実施形態のオフセット印刷用インキ組成物(以下、単にインキと称することがある)は、金属材料、例えばアルミニウムなどを用いて成型した金属缶の表面に、任意の絵柄をオフセット印刷するために用いるインキである。
【0016】
本実施形態のインキは、任意の色調の顔料と、アルキド樹脂または変性アルキド樹脂と、ベヒクルとして油と、溶剤としてアルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤のうち少なくともいずれか1つと、フュームドシリカとを含んだものからなる。
【0017】
こうした本実施形態のインキは、金属材料に塗布して、溶剤成分を揮発させることによって乾燥、硬化され、金属材料に塗膜を形成した金属印刷物が形成される。従って、インキの成分の酸化や重合などの化学反応によって硬化して塗膜が形成されるものではない。
【0018】
(顔料)
顔料は、無機顔料、有機顔料の何れであってもよく、任意の色調のものを用いることができる。無機顔料は、鉱石や金属酸化物などから形成される。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、黄鉛、亜鉛黄、酸化鉄赤、エメラルド緑、チタン白亜鉛華、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0019】
有機顔料としては、例えば、ニトロ系色素、アゾ系色素、スチレン系色素、チオインジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、フタロシアニン系色素、キノフタロン系色素など、各種の有機顔料を用いることができる。
【0020】
(アルキド系樹脂)
アルキド系樹脂は、ポリエステルの一種であり、多価アルコールと多塩基酸の縮合によって合成される。こうしたアルキド系樹脂は、脂肪酸、多塩基酸、多価アルコールをポリエステル化したり、油脂と多価アルコールとの反応によってモノグリセリドを生成し、これに多塩基酸を加えてエステル化することにより得られる。
【0021】
二塩基酸と二価アルコールとの縮合,あるいは不乾性脂肪酸で変性したアルキド樹脂は、エステル、ケトン、芳香族炭化水素などに可溶であり、変性アルキド樹脂と称される。これらアルキド樹脂、変性アルキド樹脂は、不飽和脂肪酸などと反応させることで、高弾性、耐水性、耐薬性を有する屈曲性のある金属用のインキに好適な塗料の成分にすることができる。
【0022】
(ベヒクル)
ベヒクルとしては、油を用いることができる。ベヒクルとして用いる油としては、鉱油、鉱物油、ミネラルオイル、高沸点石油系溶剤、芳香族系炭化水素(例えば、トルエン、ゴム揮発油、キシレン、ソルベントナフサなど)、パラフィン(脂肪族)系炭化水素(例えば、n-ヘキサン、ミネラルスピリット、パラフィンなど)、ナフテン(シクロアルカン)系炭化水素(例えば、シクロヘキサン、シクロパラフィンなど)など、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0023】
(溶剤)
顔料を溶解、分散させる溶剤としては、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤のうち少なくともいずれか1つ、または2つ以上を含むものであればよい。
【0024】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、変性エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコールなどが挙げられる。
【0025】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどが挙げられる。
【0026】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0027】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトールなどが挙げられる。
【0028】
(フュームドシリカ)
フュームドシリカは、四塩化ケイ素を原料とし、酸水素火炎中で加水分解することによって生成される高純度の非結晶性の微粉末シリカである。燃焼により形成された真球状の粒子(直径5~30nm)が数珠状に凝集・融着し、嵩高の凝集体(粒径100~400nm程度)が形成される。こうしたフュームドシリカは、製造時の酸水素火炎の温度、四塩化ケイ素、酸素、および水素の供給比率などの製造条件を変化させることにより、粒子径や比表面積を任意に制御したフュームドシリカを得ることができる。
【0029】
オフセット印刷用インキ組成物にフュームドシリカを含有させることによって、粘弾性や凝集力が向上し、オフセット印刷において、インキミストの発生を低減させることができる。
【0030】
フュームドシリカは、水に対する特性によって、親水性フュームドシリカと、疎水性フュームドシリカとに分けることができる。
フュームドシリカは、表面に親水性のシラノール基(Si-OH)と、疎水性のシロキサン(Si-O-Si)が存在している。シラノール基は化学的に活性であり、加水分解によって製造したフュームドシリカは親水性フュームドシリカであり、この親水性フュームドシリカに適切な有機処理剤、例えばシランによって反応させることで疎水性を付与した疎水性フュームドシリカを生成することができる。
本実施形態では、親水性フュームドシリカまたは疎水性フュームドシリカのいずれも用いることができ、これらを混合したものも用いることができる。
【0031】
本実施形態では、フュームドシリカは、オフセット印刷用インキ組成物の全体重量に対して、0.5質量%以上、10質量%以下の重量範囲で含まれている。フュームドシリカの含有量が0.5質量%未満では、粘弾性や凝集力の向上が限定的となり、インキミストの発生を低減させる効果が得られない懸念がある。一方、フュームドシリカの含有量が10質量%未満では、印刷時のパイリング、インキの転写不良、インキの着肉不良など、印刷性に支障が生じる懸念がある。
【0032】
また、本実施形態では、フュームドシリカは、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法によって測定した比表面積が100m/g以上、410m/g以下の範囲のものを用いる。
BET法は、吸着占有面積が既知の分子を粉体粒子表面に低温で吸着させ、その吸着量から試料の比表面積を求める方法である。
BET法による比表面積の測定は、測定装置としてQuantachrome社製のガス吸着量測定装置(AUTOSORB-iQ2-MP)を使用し、脱気処理を温度100℃で60分間実施した後、測定ガスとしてKrガスを用いて、測定を行った。
なお、粒子が球形であると仮定した場合、シリカの比重(ρ)を2.2g/cmとすると、上記のBET法より得られた比表面積(S)よりフュームドシリカの粒子の直径(D)を、下記の式1より求めると、6.6nm以上、27nm以下の範囲となる。
D = 6/(ρ×S)・・・(1)
【0033】
フュームドシリカのBET比表面積が100m/g未満であると、インキに必要な粘弾性を得にくく、また粒径が比較的大きくなることにより、パイリング等が生じやすくなる懸念がある。また、BET比表面積が410m/gより大きいと、フュームドシリカの一次粒子同士の凝集力が強くなりすぎてしまい、インキの分散性低下、流動性低下等が生じやすくなる懸念がある。
【0034】
よって、BET法による比表面積が上述した範囲のフュームドシリカを用いることによって、オフセット印刷用インキ組成物の印刷性を損なわずに粘弾性や凝集力を向上させて、印刷時のインキミストの発生を抑制することができる。
【0035】
以上のような組成の本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物によれば、BET法によって測定した比表面積が100m/g以上、410m/g以下の範囲のフュームドシリカを用いて、このフュームドシリカをオフセット印刷用インキ組成物の全体重量に対して0.5質量%以上、10質量%以下の重量範囲で含ませることによって、オフセット印刷時の印刷性(パイリング、インキの転写性、インキの着肉性など)を低下させることなく、転写時のインキミストの発生を低減させることが可能なオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
【0036】
(金属印刷物)
本発明の一実施形態の金属印刷物は、金属材料、例えば金属缶の表面に、上述したオフセット印刷用インキ組成物を用いた塗膜を形成したものである。こうした塗膜は、オフセット印刷用インキ組成物を用いてオフセット印刷によって印刷した後に乾燥させて、インキに含まれる溶剤を蒸発させることにより得られる。
【0037】
従って、本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物を用いた塗膜の形成は、溶剤を揮発させることによって乾燥、硬化するだけであり、インキの成分の酸化や重合などの化学反応によって塗膜が形成されるものではない。
【0038】
本実施形態の金属印刷物を構成する金属材料としては、アルミニウム、鉄、銅のうち、少なくともいずれか1つを含むものであればよい。本実施形態では、金属材料として、アルミニウム缶を用いている。
【0039】
本実施形態の金属印刷物の乾燥後の塗膜は、JIS K5600-5-4(鉛筆法)に準拠した引っかき硬度試験における鉛筆硬度がH以上であり、かつ、JIS K5600-5-3(デュポン式)に準拠した耐おもり落下性試験において、おもり高さ200mm、撃ち型および受け台の寸法をそれぞれ1/2インチ、おもり質量300gに設定した際に剥離が発生しないような、物理的な耐久性を備えたものであればよい。
【0040】
本実施形態の金属印刷物によれば、塗膜を形成するためのインキにアルキド樹脂や変性アルキド樹脂を含んでいることによって、例えば、表面が湾曲した金属缶などであっても、硬度が高く、密着性に優れ、耐水性、耐薬性を有する塗膜を備えた金属印刷物を実現できる。
【0041】
また、塗膜を形成するためのインキにフュームドシリカを含んでいることによって、オフセット印刷時にインキミストの発生が低減されるため、微細なインキの飛散の無い、鮮明なデザインの塗膜を備えた金属印刷物を実現できる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0043】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物の効果を検証した。
検証にあたって、本発明の実施例1~28の試料と、従来の比較例1~21の試料とを用意した。
実施例1として、金属材料向けのオフセット印刷用インキに添加したフュームドシリカ(日本アエロジル株式会社社製、種類:親水性、BET比表面積:100m/g)がインキに含まれる割合として、外割で、0.5質量%(インキを100質量部とすると、フュームドシリカの添加量が0.5質量部)となるように秤量・混合後、3本ロールミルを用いて十分に混練し。実施例1のインキ(試料)を作成した。
実施例2~28、比較例1~21として、表1に示すように、フュームドシリカの含有量を変化させたり、BET比表面積の異なるフュームドシリカを用いたインキ(試料)を作成した。
【0044】
【表1】
【0045】
(インキミスト評価試験)
インコメーター(東洋精機製作所株式会社製)を用いて、インコメーターのロール温調水温を40℃、ロール回転数を1200rpmに設定とした。更に、矩形のガラス板(サイズ:100mm×100mm、厚さ0.7mm)の一端を、インコメーターのメタルロールの直下から5mm離間した箇所に、ガラス板の他端をバイブレーションロールの直下から85mm離間した箇所にそれぞれなるようにガラス板を設置した。
【0046】
次に、専用のスポイトを使用して、各試料のインキ2.62ccを採取し、上述した設定にされたインコメーターのトップロールの表面全体にインキを塗り広げた後、各ロール同士を接触させた状態でロールの回転を開始した。ロールの回転を開始してから5分間経過後、ロールの回転を停止した。そして、ロールから飛散したインキ(インキミスト)の付着したガラス板の質量を秤量し、インキミスト付着前のガラス板の質量との差分から得られたインキの質量をインキミスト量とした。
【0047】
インキミスト量の評価方法は、フュームドシリカを含まないインキ(比較例1)のインキミスト量を100とした時、インキにフュームドシリカを添加した場合のインキミスト量の相対値が、60を超える場合を不合格とし、60以下の場合を合格とした。
こうしたインキミスト量の評価結果を表1に示す。
【0048】
(塗膜の耐衝撃性評価試験)
矩形のアルミニウム板(サイズ:長さ200mm、幅100mm、厚さ0.285mm)のアルミ基材上に、バーコーター#0を用いて各試料のインキを塗布し、更にバーコーター#3を用いて外面保護用ニスを塗布した。塗布されたアルミ板をボックス型乾燥炉を用いて、220℃で3分間乾燥させることにより、各試料のインキの塗膜が形成された金属印刷物を得た。
【0049】
得られた金属印刷物を用いて、JIS K5600-5-3(デュポン式)に準拠した耐おもり落下性試験(おもり高さ200mm、撃ち型および受け台の寸法をそれぞれ1/2インチ、おもり質量300gに設定)を行った。
【0050】
塗膜の耐衝撃性の評価方法は、上述した耐おもり落下性試験において剥離面積が全体の20%未満の場合を合格、20%以上の場合を不合格とした。
こうした塗膜の耐衝撃性の評価結果を表1に示す。
【0051】
(塗膜の硬度評価試験)
上述した塗膜の耐衝撃性評価試験と同様にして得られたそれぞれのインキの金属印刷物を用いて、JIS K5600-5-4(鉛筆法)に準拠した引っかき硬度試験を行った。塗膜硬度の評価方法は、上述した引っかき硬度試験において、Hで削れる場合を合格、Fで削れる場合を不合格とした。
こうした塗膜硬度の評価結果を表1に示す。
【0052】
表1に示す結果によれば、BET法によって測定した比表面積が100m/g以上、410m/g以下の範囲のフュームドシリカを0.5質量%以上、10質量%以下の範囲で含むインキを用いた実施例1~28の試料は、インキミスト評価試験、塗膜の耐衝撃性評価試験、および塗膜の硬度評価試験のいずれも合格となり、金属材料向けのオフセット印刷用インキ組成物として、優れた特性を有することが確認された。
【0053】
一方、フュームドシリカの比表面積が100m/g未満であったり、フュームドシリカの含有量が0.5質量%未満や10質量%を超えているインキを用いた比較例1~21の試料は、インキミスト評価試験が不合格であったり、塗膜の耐衝撃性評価試験や塗膜の硬度評価試験が不合格となるなど、金属材料向けのオフセット印刷用インキ組成物として用いる場合に、インキミスト発生量が多くなりすぎたり、強度や耐久性に劣ることが確認された。
よって、本発明のオフセット印刷用インキ組成物の効果が確認できた。