(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067457
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】車両の窓ガラス周辺構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20230509BHJP
B62D 37/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
B62D37/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178719
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大熊 渓介
(57)【要約】
【課題】車外に向けて突出する外装材を、その取付け性と強度を確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことにある。
【解決手段】外装材(10)には、窓ガラス(8)の周辺位置の車両ボディ(3)に連結される連結側部位(13)と、窓ガラス(8)を臨むように車外に延びる窓ガラス側部位(14)とが、外装材の角部(17)を介して連続して形成されており、連結側部位(13)を補強する補強部材(40)が設けられていると共に、補強部材(40)は、連結側部位(13)から角部(17)を通って窓ガラス側部位(14)に延設されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスの周辺位置に、外装材が車外に突出するように連結されて取付けられている車両の窓ガラス周辺構造において、
前記外装材には、前記窓ガラスの周辺位置の車両ボディに連結される連結側部位と、前記窓ガラスを臨むように車外に延びる窓ガラス側部位とが、前記外装材の角部を介して連続して形成されており、
前記連結側部位を補強する補強部材が設けられていると共に、前記補強部材は、前記連結側部位から前記角部を通って前記窓ガラス側部位に延設されている車両の窓ガラス周辺構造。
【請求項2】
前記窓ガラスに沿うように移動する可動部材が前記車両ボディに取付けられており、
前記窓ガラス側部位に配置された前記補強部材は、前記外装材に向けて移動しようとする前記可動部材を受けられる位置に配置されている請求項1に記載の車両の窓ガラス周辺構造。
【請求項3】
前記窓ガラス側部位に配置された前記補強部材の少なくとも一部は、前記窓ガラス側部位の窓ガラスを臨む外面に露出した状態で、前記可動部材を受けられる位置に配置されている請求項2に記載の車両の窓ガラス周辺構造。
【請求項4】
前記窓ガラス側部位には、前記外面からその反対側の内面に前記補強部材の通過を許容する通過部が設けられている請求項3に記載の車両の窓ガラス周辺構造。
【請求項5】
前記外装材としてのスポイラが、前記窓ガラスの上縁に沿うように配置されていると共に、前記窓ガラス側部位に配置された前記補強部材は、車両の高さ方向上側に回動する前記可動部材としてのワイパを受けられる位置に配置されている請求項2~4のいずれか一項に記載の車両の窓ガラス周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓ガラスの周辺位置に、外装材が車外に突出するように連結されて取付けられている車両の窓ガラス周辺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の窓ガラスの周辺構造が特許文献1に記載されている。この特許文献1の車両では、その後面に設けられたバックドアパネル(車両ボディ)に、平面視で矩形のリヤウインドガラス(窓ガラス)が取付けられている。またバックドアパネルの上部には、外装材としてのリヤスポイラが車幅方向に延びるように配設されている。このリヤスポイラは、その車両前側の連結部分がバックドアパネルに連結されることで、このバックドアパネルの上部から車外に突出するように配置されている。そして、リヤスポイラの下面は、車両前側の連結部分から車両後側に延びるように形成されており、リヤウインドガラスの上側を覆うように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで一般的な車両では、洗浄機の洗車ブラシやワイパ等の部材がリヤウインドガラス(窓ガラス)上を移動することがあるが、このリヤウインドガラスの周辺位置には、上述のリヤスポイラ等の外装材が配設されている。このためリヤウインドガラスに沿って移動する部材との接触で外装材に荷重が加えられるおそれがある。例えば特許文献1では、外装材としてのリヤスポイラの下面が、リヤウインドガラスの上側を覆うように車両後側に突出しており、上記部材によって上向きの荷重が加えられ易くなっている。そして上向きの荷重の加えられたリヤスポイラが変形してバックドアパネルから外れたり、ワイパ等が当たることでリヤスポイラの下面が傷ついたりするおそれがある。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車外に向けて突出する外装材を、その取付け性と強度を確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両の窓ガラス周辺構造では、車両の窓ガラスの周辺位置に、外装材が車外に突出するように連結されて取付けられている。そして外装材には、窓ガラスの周辺位置の車両ボディに連結される連結側部位と、窓ガラスを臨むように車外に延びる窓ガラス側部位とが、外装材の角部を介して連続して形成されている。この種の構成においては、車外に向けて突出する外装材を、その取付け性と強度を確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことが望ましい。そこで本発明では、連結側部位を補強する補強部材が設けられていると共に、補強部材は、連結側部位から角部を通って窓ガラス側部位に延設されている。本発明の外装材では、その連結側部位が補強部材にて補強されている。そして補強部材が、外装材の角部を通って窓ガラス側部位に延設されることで、窓ガラス側から加わる荷重に対する外装材の取付け性(剛性)と強度を確保できるようになる。
【0006】
第2発明の車両の窓ガラス周辺構造は、第1発明の車両の窓ガラス周辺構造において、窓ガラスに沿うように移動する可動部材が車両ボディに取付けられており、窓ガラス側部位に配置された補強部材は、外装材に向けて移動しようとする可動部材を受けられる位置に配置されている。本発明では、可動部材を補強部材で受けられるため、窓ガラス側から加わる荷重に対する外装材の強度をより確実に確保できるようになる。
【0007】
第3発明の車両の窓ガラス周辺構造は、第2発明の車両の窓ガラス周辺構造において、窓ガラス側部位に配置された補強部材の少なくとも一部は、窓ガラス側部位の窓ガラスを臨む外面に露出した状態で、可動部材を受けられる位置に配置されている。本発明では、外装材に向けて移動する可動部材を、外面に露出した補強部材で受けられるため、可動部材が窓ガラス側部位に直接当たり難くなる。
【0008】
第4発明の車両の窓ガラス周辺構造は、第3発明の車両の窓ガラス周辺構造において、窓ガラス側部位には、外面からその反対側の内面に補強部材の通過を許容する通過部が設けられている。本発明では、補強部材を連結側部位の内面に配置した場合においても、その補強部材の少なくとも一部を、窓ガラス側部位に形成された通過部を通じてその外面に配置できるようになる。
【0009】
第5発明の車両の窓ガラス周辺構造は、第2発明~第4発明のいずれかの車両の窓ガラス周辺構造において、外装材としてのスポイラが、窓ガラスの上縁に沿うように配置されていると共に、窓ガラス側部位に配置された補強部材は、車両の高さ方向上側に回動する可動部材としてのワイパを受けられる位置に配置されている。本発明では、スポイラに向けて上回動するワイパを補強部材で受けられるようになり、スポイラの取付け性と強度の確保に資する構成となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、車外に向けて突出する外装材を、その取付け性と強度を確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことができる。また第2発明によれば、可動部材が当てられることが想定される外装材を、その取付け性と強度を確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことができる。また第3発明によれば、外装材を、その強度をより確実に確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことができる。また第4発明によれば、外装材を、その強度を更に確実に確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことができる。そして第5発明によれば、ワイパが当てられることが想定されるスポイラを、その取付け性と強度を確保しつつ窓ガラスの周辺に取付けておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1のII-II線断面に相当する窓ガラス周辺構造の縦断面図である。
【
図3】スポイラーインナを示す車両上部の斜視図である。
【
図4】補強部材を示す窓ガラス周辺構造の拡大斜視図である。
【
図5】補強部材を示す窓ガラス周辺構造の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図5を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。そして
図1では、便宜上、可動部材としてのワイパアームの回動軌跡を、符号52Tを付した破線で図示する。また
図2及び
図5では、便宜上、リヤガラス側からリヤスポイラに加えられる荷重の向きを示す矢印に符号Fを付す。
【0013】
[車両の後部構造]
車両2の窓ガラス周辺構造について説明する前に、先ず、車両2の後部構造を説明する。
図1に示す車両2の後面(車両ボディ3)にはリヤドア開口部4が設けられており、このリヤドア開口部4が、上下回動式のバックドア5によって開閉可能に構成されている。このバックドア5は、車両下側のドア本体部6と、車両上側のリヤ窓部7とを有し、車両ボディ3の一部を構成している。このリヤ窓部7には、車幅方向(左右方向)に長い角形のリヤガラス8が固定されている。そしてリヤ窓部7の上部には、そのリヤガラス8の上縁に沿うように、車幅方向に延びるリヤスポイラ10(詳細後述)が車外に突出するように配設されている。
【0014】
また
図1に示すリヤ窓部7の上部側にはワイパ装置50が取付けられている。このワイパ装置50は、リヤ窓部7の車幅方向の中央に配設されたピボット軸51と、このピボット軸51を中心に上下回動するワイパアーム52と、図示しない駆動機構とを有している。そして可動部材としてのワイパアーム52がピボット軸51を中心に上下回動することで、このワイパアーム52に取付けられたブレード53がリヤガラス8に沿うように移動する(
図1中、ワイパアームの回動軌跡52Tを参照)。また回動上限位置(52u)に達したワイパアーム52は、ピボット軸51と概ね同じ高さ位置で車両左側に延びるように配置される。そして回動上限位置のワイパアーム52が、リヤスポイラ10の左側に形成されたワイパ収容部20に収容されるようになる。
【0015】
[車両の窓ガラス周辺構造]
そして車両2の窓ガラス周辺構造では、
図1及び
図2を参照して、上記したようにリヤガラス8の周辺位置となるリヤ窓部7の上部に、外装材としてのリヤスポイラ10が車外に突出するように連結されている。このリヤスポイラ10は、
図2に示すように、その車両前側(後述する連結側部位13)がリヤ窓部7の上部に連結されて、リヤガラス8の上側を覆うように車両後側に延びている。上記構成では、リヤスポイラ10の下面側(後述する窓ガラス側部位14)が、リヤガラス8を臨むように車両前後方向に延びている。このため窓ガラス側部位14には、リヤガラス8側から荷重が加わり易くなり、例えば過回動したワイパアーム52や洗車ブラシ80が当てられるおそれがある(
図2中、荷重の加わる向きを示す矢線Fを参照)。そこで本実施例では、後述する補強部材40(40a)にて、車外に向けて突出するリヤスポイラ10を、その取付け性(剛性)と強度を確保しつつリヤガラス8の周辺に取付けておくこととした。以下、車両2の窓ガラス周辺構造の各構成を、リヤスポイラ10と補強部材40,40aの順に詳述する。
【0016】
[リヤスポイラ(外装材)]
図1及び
図2に示すリヤスポイラ10は、車両走行時における揚力減少と装飾とを兼ねた外装材であり、例えば樹脂などの剛性に優れる素材で形成されている。このリヤスポイラ10は、
図2に示すように、その外形を構成するスポイラーアウタ11と、このスポイラーアウタ11の車両下側に配置されるスポイラーインナ12とから縦断面略横U字形に構成されている。スポイラーアウタ11は、縦断面視において車両前後方向に延びるように形成されていると共に、車両後側に向かうにつれて下側に傾斜している。そしてスポイラーアウタ11の前端部110は、リヤ窓部7の上側に係止されていると共に、スポイラーアウタ11の後端部111には後述するスポイラーインナ12の後端部121が接合されている。即ち、スポイラーアウタ11の後端部111は、車両前側且つ下側に鋭角に曲げられており、この曲げられた後端部111にスポイラーインナ12の後端部121が接合されている。
【0017】
またスポイラーインナ12は、
図2に示すように、スポイラーアウタ11の下側に配置されていると共に、リヤ窓部7の上部に連結具61を介して連結されるように構成されている。ここで
図3に示すスポイラーインナ12は、その左側にワイパ収容部20が形成されており、その右側は、ワイパ収容部を除いて左側と概ね同一の基本構成を有している。そこでワイパ収容部20の形成されたスポイラーインナ12の左側を一例にその詳細を説明する。
図2に示すスポイラーインナ12は、そのリヤ窓部7を臨む車両前側に連結側部位13が形成されている。この連結側部位13は、リヤ窓部7に連結される部位であり、車両の高さ方向上側に立ち上がる縦壁状に形成されている。そして、連結側部位13の上側は、スポイラーアウタ11を車両下側から支持できるように車両前側に曲げられていると共に、縦板状のリブ131がリヤ窓部7の上部に沿わせられるように形成されている。
【0018】
またスポイラーインナ12の左側には、
図2及び
図3を参照して、上記したようにワイパ収容部20が形成されている。このワイパ収容部20は、スポイラーインナ12を部分的に折り曲げることで形成されている。即ち、スポイラーインナ12には、連結側部位13の下端からリヤガラス8を臨むように車両後側(車外)に延びる窓ガラス側部位14と、この窓ガラス側部位14の後端から車両下側に延びる縦壁部位15とが形成されている。そして、窓ガラス側部位14と縦壁部位15とで囲まれた空間部がワイパ収容部20となっている。ここで連結側部位13と窓ガラス側部位14とはスポイラーインナ12の前下角部17を介して連続しており、この前下角部17が本発明の角部に相当する。またスポイラーインナ12では、窓ガラス側部位14のリヤガラス8を臨む面が外面(各図の下面)に相当し、外面とは反対側の面が内面(各図の上面)に相当する。
【0019】
そして
図2に示すスポイラーインナ12では、上記した縦壁部位15の下端から後部位16が車両後側に延びるように形成されている。この後部位16は、車両後側に向かうにつれて上側に傾斜していると共に、その後端位置に形成された後端部121が車両前側且つ上側に鋭角に曲げられている。そして曲げられた後端部121にスポイラーアウタ11の後端部111が被せられて接合されている。なおスポイラーインナ12の右側は、その連結側部位の下端から後部位が車両後側に延びるように形成されている。
【0020】
そして
図3に示すスポイラーインナ12には、左右一対の収容凹部30,30aが車幅方向に適宜の間隔をあけて形成されている。この左右の収容凹部30(30a)には、
図1に示すように、後述する補強部材40(40a)を嵌め付けておけるようになっている。そして左側の収容凹部30は、
図4及び
図5に示すように、連結側部位13に形成された上収容凹部31と、窓ガラス側部位14に形成された下収容凹部32とから構成されている。上収容凹部31は、連結側部位13を車両前側に凹ませた部位であり、平面視で上下に長い角形に形成されている。この上収容凹部31には、その下部に後述する連結具61を挿通可能な挿通部310が形成されている。挿通部310は、
図5に示すように連結側部位13を厚み方向に貫通し、リヤ窓部7に設けられたボディ側挿通部70と一致する位置に形成されている。そして、上収容凹部31は、連結側部位13と窓ガラス側部位14間に形成された前下角部17を通じて、後述する下収容凹部32に連続している。なお
図3に示す右側の収容凹部30aは、下収容凹部が省略されている以外は左側の収容凹部30と同一の基本構成を有している。
【0021】
また
図4及び
図5に示す下収容凹部32は、窓ガラス側部位14を車両下側に凹ませた部位であり、平面視で角形に形成されている。そして下収容凹部32の後端位置には、
図4に示すように、後述する左側の補強部材40の通過を許容する通過部320が形成されている。この通過部320は、窓ガラス側部位14を厚み方向に貫通していると共に、車幅方向に延びる長孔状に形成されている。ここで
図2を参照して、窓ガラス側部位14の下側には、上記した上回動限界位置のワイパアーム52が配置されている。そして下収容凹部32の通過部320は、上回動限界位置のワイパアーム52の車両前側に形成されている。これにより、通過部320よりも車両後側の窓ガラス側部位14の外面部分140が、上回動限界位置のワイパアーム52の直上に配置されるようになる。
【0022】
[補強部材]
つづいて
図1に示す左右一対の補強部材40,40aについて説明する。この左右一対の補強部材40,40aは、
図3を参照して、スポイラーインナ12の連結側部位13を補強する板状部材であり、上記したスポイラーインナ12の対応する収容凹部30,30aに収容される。そして左側の補強部材40は、本発明の補強部材に相当する。この左側の補強部材40は、
図4及び
図5に示すように、縦断面略L字形に形成されており、上収容凹部31に嵌められる上側補強部41と、下収容凹部32に嵌められる下側補強部42とを一体で有している。さらに左側の補強部材40は、その右縁部が略直角に曲げられたフランジ部43が形成されることで、車両上下方向に撓み難くなっている。そして上側補強部41は、平面視で上下に長い角形に形成されており、その下部には、後述するケースナット60を嵌められる矩形の窪み部410が形成されている。また上側補強部41の下部には、連結具61を差し込むための差込み部411が形成されている。この差込み部411は、上側補強部41を厚み方向に貫通するように形成されており、上側補強部41の左縁から窪み部410を横切るように車幅方向に延びている。そして上側補強部41は、
図5に示すように、その下端側がスポイラーインナ12の前下角部17に倣って車両後側に曲げられており、この曲げられた部分に、後述する下側補強部42が連続している。なお
図1及び
図3を参照して、右側の補強部材40aも、その下端が、スポイラーインナ12の後部位16に沿わせられるように車両後側に曲げられている。
【0023】
そして
図4に示す下側補強部42は、平面視で前後に延びる角形に形成されていると共に、その前後方向の途中でクランク状に曲げられている。即ち、下側補強部42は、上側補強部41に連続して車両前後方向に延びる本体板部421と、この本体板部421の車両後側且つ下側で車両前後方向に延びる露出板部422とを有している。また本体板部421と露出板部422とは、これらの間で下側に延びる段差板部423で繋げられている。そしてこの段差板部423が、
図2及び
図4に示す窓ガラス側部位14の通過部320に差し込まれるようになっている。
【0024】
[補強部材の配設]
つづいて
図4及び
図5を参照して、リヤスポイラ10に対する補強部材の取付け手法を、左側の補強部材40を一例に説明する。この左側の補強部材40の取付けに際しては、その下側補強部42を車両上下方向に向けながら、窓ガラス側部位14の通過部320に差し込んでいく。そして下側補強部42の段差板部423が通過部320に差し込まれた状態で、左側の補強部材40をスポイラーインナ12の左側の収容凹部30に向けて倒していく。これにより、左側の補強部材40の上側補強部41が、上収容凹部31に嵌められて、連結側部位13の内面(各図の後面)に沿うように配置される。そして、上側補強部41の下端側が、上記したスポイラーインナ12の前下角部17の内面(各図の後面又は上面)に沿うように配置されるようになる。また下側補強部42は、その本体板部421が下収容凹部32に嵌められることで、窓ガラス側部位14の内面(各図の上面)に沿うように配置される。そして、下側補強部42では、
図2に示すように段差板部423が通過部320に差し込まれた状態となり、この段差板部423の下端から車両後側に延びる露出板部422が外部に露出する。これにより、露出板部422が、上記したスポイラーインナ12の外面部分140を覆いながら、上回動限界位置のワイパアーム52の直上に位配置されるようになる。さらに露出板部422は、車両2を後側から見た場合に、上記したワイパ収容部20の縦壁部位15にて覆い隠されるように配置されるため、車両2の見栄えを維持できるようになる。
【0025】
上記したように左側の補強部材40を左側の収容凹部30に収容したのち、
図5に示すように、上側補強部41の窪み部410にケースナット60を嵌めておく。次にケースナット60に、頭部61aを備えたボルト状の連結具61の軸を挿通していく。これにより、連結側部位13の挿通部310と、リヤ窓部7のボディ側挿通部70とに連結具61が挿設されて、スポイラーインナ12をリヤ窓部7の上部に連結することができる。また
図2に示すように、スポイラーアウタ11をスポイラーインナ12とリヤ窓部7とに取付けて、リヤスポイラ10を構成する。こうしてリヤスポイラ10が、リヤ窓部7の上部に連結された状態で、リヤガラス8の上側を覆うように車外に突出して配置される。
【0026】
[補強部材の働き]
図2に示すリヤスポイラ10は、上記したように、リヤガラス8の上側を覆うように車外に突出している。このため、リヤスポイラ10の窓ガラス側部位14には、リヤガラス8側から荷重が加わり易くなる。例えば洗車時等には、リヤガラス8に沿うように洗車ブラシ80が上下動するが、この洗車ブラシ80によって窓ガラス側部位14が突き上げられるおそれがある。またリヤガラス8に沿って移動するワイパアーム52が上回動限界位置を超えた場合、この過回動したワイパアーム52が窓ガラス側部位14に当たるおそれがある。そして、上向きの荷重の加えられたリヤスポイラ10が変形して、その連結側部位13が破損することでリヤ窓部7から外れるおそれがある。例えばリヤスポイラ10では、
図5に示すように、スポイラーインナ12の前下角部17の近くにケースナット60が嵌められている。このため、リヤスポイラ10が車両上側に撓むことで、その前下角部17がケースナット60と接触して破断した場合、この前下角部17の破断をきっかけに連結側部位13が破損するおそれがある。
【0027】
そこで本実施例のリヤスポイラ10には、
図2及び
図5を参照して、連結側部位13を補強する補強部材40等が設けられていると共に、補強部材40等は、連結側部位13から前下角部17を通って窓ガラス側部位14に延設されている。上記構成によると、左側の補強部材40等の働きで、リヤガラス8側から荷重がリヤスポイラ10に加わったとしても、この荷重の加えられたリヤスポイラ10がリヤ窓部7から外れにくくなる。即ち、上向きの荷重の加えられたリヤスポイラ10の変形が、その内面側に配置された左側の補強部材40で抑制されるため、連結側部位13の破損を極力阻止できるようになる。特にリヤスポイラ10の連結側部位13から前下角部17にかけての部分を、左側の補強部材40にて補強することにより、連結側部位13の破損をより確実に阻止できるようになる。こうしてリヤスポイラ10の適所を左側の補強部材40等にて補強することにより、このリヤスポイラ10のリヤ窓部7に対する取付け性(剛性)を確保できるようになる。こうして上記構成によれば、リヤ窓部7に対するリヤスポイラ10の連結点数(機械締結点数)を過度に増やすことなく、リヤスポイラ10の外れ防止を図ることができる。
【0028】
また上記構成では、
図1及び
図2を参照して、リヤガラス8に沿って移動するワイパアーム52(可動部材)が過回動してリヤスポイラ10の窓ガラス側部位14に当たるおそれがある。そこで
図2に示すリヤスポイラ10では、左側の補強部材40(下側補強部42)の露出板部422が、窓ガラス側部位14の外面部分140に沿うように配置されて、上回動限界位置のワイパアーム52の直上に位置している。これにより、リヤスポイラ10に向けて過回動するワイパアーム52を、窓ガラス側部位14の外面部分140を覆う露出板部422で受けられるようになり、ワイパアーム52との直接接触による窓ガラス側部位14の傷付きを極力回避することができる。こうして本実施例では、リヤスポイラ10に向けて上回動するワイパアーム52を補強部材40等で受けられるようになり、リヤスポイラ10の強度の確保に資する構成となる。さらに左側の補強部材40にてリヤスポイラ10を保護することにより、このリヤスポイラ10とワイパアーム52間の隙を極力狭くすることができる。
【0029】
以上説明した通り、本実施例のリヤスポイラ10(外装材)では、その連結側部位13が補強部材40等にて補強されている。そして補強部材40等が、リヤスポイラ10の前下角部17を通って窓ガラス側部位14に延設されることで、リヤガラス側から加わる荷重に対するリヤスポイラ10の取付け性(剛性)と強度を確保できるようになる。このため本実施例によれば、車外に向けて突出するリヤスポイラ10を、その取付け性と強度を確保しつつリヤガラス8の周辺に取付けておくことができる。
【0030】
さらに本実施例では、ワイパアーム52(可動部材)を補強部材40等で受けられるため、リヤガラス側から加わる荷重に対するリヤスポイラ10の強度をより確実に確保できるようになる。特にリヤスポイラ10に向けて移動するワイパアーム52を、外面に露出した補強部材40等(露出板部422)で受けられるため、ワイパアーム52が窓ガラス側部位14に直接当たり難くなる。そして本実施例では、補強部材40等を連結側部位13の内面に配置した場合においても、その補強部材40等の少なくとも一部を、窓ガラス側部位14に形成された通過部320を通じてその外面に配置できるようになる。
【0031】
本実施形態の車両の窓ガラス周辺構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、外装材と補強部材の構成を例示したが、外装材と補強部材の構成を限定する趣旨ではない。外装材は、その内面と外面の少なくとも一方に補強部材を取付けておくことができる。例えば外装材の外面に補強部材を取付ける場合、その連結側部位と窓ガラス側部位の外面に収納凹部を連続して形成しておくことができる。また補強部材は、外装材を補強できればよく、その形状や寸法は特に限定されないが、外装材よりも高剛性又は高強度であることが望ましい。例えば補強部材を、外装材よりも高強度の材料(鉄などの金属や繊維強化プラスチック等)で形成してもよく、補強部材にリブやビードを設けたり厚みを増したりするなどして構造的に高剛性としてもよい。また補強部材の取付け位置や取付け数も適宜変更することができ、例えば
図1に示す左側と右側の補強部材の少なくとも一方に本実施例の構成を適用できる。
【0032】
また本実施形態では、外装材としてリヤスポイラを例示したが、外装材の種類を限定する趣旨ではない。この種の外装材として、
図1に示すリヤガラス(窓ガラス)の車両上側又は下側、車幅方向における右側又は左側に連結される外装材を想定できる。例えばワイパ装置が窓ガラスの車両下側に配設されている場合には、窓ガラスの車両下側の外装材に実施例の構成を適用することができ、当該外装材の上面側が窓ガラス側部位となる。そして本実施例の構成は、車両の後面のほか、車両の前面や右側面や左側面に配置される窓ガラスの周辺構造に適用できる。また外装材の形状や寸法も適宜変更でき、例えばリヤスポイラは、スポイラーインナとスポイラーアウタとが一体とされていてもよく、ワイパ収容部が形成されていなくともよい。
【0033】
また車両ボディに対する外装材の連結手法も特に限定しない。例えば連結具として、ボルト状やビス状の連結具のほか、クリップ状の連結具などの各種の連結具を使用することができ、可能ならば溶接などの連結手法を使用することもできる。また連結具にナットを用いる場合、ケースナットのほか、各種形状のナットを使用することができる。そして可動部材として、ワイパアームのほか、窓ガラスに向けて畳まれるように移動するドアミラーなどの各種の車両部品を想定でき、その移動方向も適宜設定される。なお本実施例の構成は、可動部材の備えられていない窓ガラスの周辺構造にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
2 車両
3 車両ボディ
4 リヤドア開口部
5 バックドア(車両ボディ)
6 ドア本体部(車両ボディ)
7 リヤ窓部(車両ボディ)
70 ボディ側挿通部
8 リヤガラス(本発明の窓ガラス)
10 リヤスポイラ(本発明の外装材)
11 スポイラーアウタ
110 (スポイラーアウタの)前端部
111 (スポイラーアウタの)後端部
12 スポイラーインナ
121 (スポイラーインナの)後端部
13 連結側部位
131 リブ
14 窓ガラス側部位
140 (窓ガラス側部位の)外面部分
15 縦壁部位
16 後部位
17 前下角部(本発明の角部)
20 ワイパ収容部
30 左側の収容凹部
31 上収容凹部
310 挿通部
32 下収容凹部
320 通過部
30a 右側の収容凹部
40 左側の補強部材(本発明の補強部材)
41 上側補強部
410 窪み部
411 差込み部
43 フランジ部
42 下側補強部
421 本体板部
422 露出板部
423 段差板部
40a 右側の補強部材
50 ワイパ装置
51 ピボット軸
52 ワイパアーム
53 ブレード
52T 回動軌跡
60 ケースナット
61 連結具
61a 頭部
80 洗車ブラシ