(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067499
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】エンジンの吸排気システム
(51)【国際特許分類】
F02M 25/00 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
F02M25/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178800
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕
(72)【発明者】
【氏名】宮内 健太
(57)【要約】
【課題】未燃アンモニアの排出を抑制する。
【解決手段】エンジン100の吸排気システム1は、複数の気筒を有するエンジン100と、エンジン100の各気筒の燃焼室108と連通する吸気流路200と、気筒ごとに設けられるアンモニア噴射弁と、複数の気筒のうちの一部の気筒(第6気筒#6)の排気ポート104bと、一部の気筒以外の他の気筒(第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5)の吸気ポート104aとを連通する供給流路500と、一部の気筒における空気量に対するアンモニア量の比であるアンモニア当量比を、他の気筒におけるアンモニア当量比よりも小さくする制御装置600と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有するエンジンと、
前記エンジンの各気筒の燃焼室と連通する吸気流路と、
前記気筒ごとに設けられるアンモニア噴射弁と、
前記複数の気筒のうちの一部の気筒の排気ポートと、前記一部の気筒以外の他の気筒の吸気ポートとを連通する供給流路と、
前記一部の気筒における空気量に対するアンモニア量の比であるアンモニア当量比を、前記他の気筒における前記アンモニア当量比よりも小さくする制御装置と、
を備える、
エンジンの吸排気システム。
【請求項2】
前記他の気筒の燃焼室と連通する排気流路と、
前記排気流路と前記供給流路とを連通する接続流路と、
前記一部の気筒の排気ポートと前記排気流路とが前記接続流路を介して連通し、かつ、前記一部の気筒の排気ポートと前記他の気筒の吸気ポートとが前記供給流路を介して連通しない第1状態と、前記一部の気筒の排気ポートと前記排気流路とが前記接続流路を介して連通せず、かつ、前記一部の気筒の排気ポートと前記他の気筒の吸気ポートとが前記供給流路を介して連通する第2状態とを切り替える切替弁と、
を備える、
請求項1に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記エンジンの負荷が基準負荷より低い場合に、前記第2状態への切り替えを前記切替弁に行わせ、前記一部の気筒における前記アンモニア当量比を、前記他の気筒における前記アンモニア当量比よりも小さくする、
請求項2に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項4】
前記制御装置は、吸気温度が基準温度より低い場合に、前記第2状態への切り替えを前記切替弁に行わせ、前記一部の気筒における前記アンモニア当量比を、前記他の気筒における前記アンモニア当量比よりも小さくする、
請求項2または3に記載のエンジンの吸排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの吸排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンに関する種々の提案がなされている。例えば、特許文献1に開示されているように、エンジンの燃料としてアンモニアを用いる技術が提案されている。エンジンの燃料としてアンモニアを用いることによって、二酸化炭素の排出が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの燃料としてアンモニアを用いる場合、エンジンの燃焼室への空気の供給量に対するアンモニアの供給量の比であるアンモニア当量比が低いと、温室効果ガスである亜酸化窒素(N2O)が多く排出されてしまう。ゆえに、アンモニア当量比をある程度高くする必要がある。しかしながら、アンモニア当量比を高くすると、未燃アンモニアの排出量が増大してしまう。よって、未燃アンモニアの排出を抑制することが望ましい。
【0005】
本開示の目的は、未燃アンモニアの排出を抑制することが可能なエンジンの吸排気システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のエンジンの吸排気システムは、複数の気筒を有するエンジンと、エンジンの各気筒の燃焼室と連通する吸気流路と、気筒ごとに設けられるアンモニア噴射弁と、複数の気筒のうちの一部の気筒の排気ポートと、一部の気筒以外の他の気筒の吸気ポートとを連通する供給流路と、一部の気筒における空気量に対するアンモニア量の比であるアンモニア当量比を、他の気筒におけるアンモニア当量比よりも小さくする制御装置と、を備える。
【0007】
他の気筒の燃焼室と連通する排気流路と、排気流路と供給流路とを連通する接続流路と、一部の気筒の排気ポートと排気流路とが接続流路を介して連通し、かつ、一部の気筒の排気ポートと他の気筒の吸気ポートとが供給流路を介して連通しない第1状態と、一部の気筒の排気ポートと排気流路とが接続流路を介して連通せず、かつ、一部の気筒の排気ポートと他の気筒の吸気ポートとが供給流路を介して連通する第2状態とを切り替える切替弁と、を備えてもよい。
【0008】
制御装置は、エンジンの負荷が基準負荷より低い場合に、第2状態への切り替えを切替弁に行わせ、一部の気筒におけるアンモニア当量比を、他の気筒におけるアンモニア当量比よりも小さくしてもよい。
【0009】
制御装置は、吸気温度が基準温度より低い場合に、第2状態への切り替えを切替弁に行わせ、一部の気筒におけるアンモニア当量比を、他の気筒におけるアンモニア当量比よりも小さくしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、未燃アンモニアの排出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る吸排気システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るエンジンの各気筒の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、変形例に係る吸排気システムの構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る吸排気システムにおいて連通状態が第1状態になっている場合のガスの流れを示す模式図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る吸排気システムにおいて連通状態が第2状態になっている場合のガスの流れを示す模式図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る制御装置が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例に係る制御装置が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る吸排気システム1の構成を示す模式図である。吸排気システム1は、エンジン100の吸気および排気に関するシステムである。
図1に示すように、吸排気システム1は、エンジン100と、吸気流路200と、排気流路300と、過給機400と、供給流路500と、制御装置600とを備える。
【0014】
エンジン100は、ディーゼルエンジンである。エンジン100は、複数の気筒を有する。
図1の例では、エンジン100は、第1気筒#1と、第2気筒#2と、第3気筒#3と、第4気筒#4と、第5気筒#5と、第6気筒#6とを有する。ただし、エンジン100の気筒数は、6つ以外であってもよい。
【0015】
図2は、本実施形態に係るエンジン100の各気筒の構成を示す模式図である。
図2では、吸気ポート104a、排気ポート104b、アンモニア噴射弁112および非アンモニア燃料噴射弁114が、同一断面上に図示されている。ただし、吸気ポート104a、排気ポート104b、アンモニア噴射弁112および非アンモニア燃料噴射弁114は、同一断面上に位置しなくてもよい。
【0016】
図2に示すように、エンジン100は、シリンダライナ102、シリンダヘッド104、および、ピストン106を備える。ピストン106は、シリンダライナ102内に収容される。シリンダライナ102、シリンダヘッド104およびピストン106によって、燃焼室108が形成される。
【0017】
シリンダヘッド104には、吸気ポート104aおよび排気ポート104bが形成される。吸気ポート104aおよび排気ポート104bは、燃焼室108に開口する。吸気弁110aは、吸気ポート104aのうち、燃焼室108側の開口を開閉する。排気弁110bは、排気ポート104bのうち、燃焼室108側の開口を開閉する。吸気弁110aおよび排気弁110bの開閉動作は、不図示のカムシャフトの回転に伴って行われる。
【0018】
吸気ポート104aには、後述する吸気流路200の分岐流路202を形成する配管が接続される。吸気ポート104aを介して、燃焼室108に吸気が流入する。排気ポート104bには、後述する排気流路300の分岐流路302を形成する配管が接続される。燃焼室108から排気ポート104bを介して排気ガスが排出される。なお、後述するように、複数の気筒のうち、第6気筒#6の排気ポート104bには、排気流路300を形成する配管ではなく、供給流路500を形成する配管が接続される。
【0019】
アンモニア噴射弁112は、燃料として用いられるアンモニアの供給源と接続される。アンモニアの供給源は、例えば、不図示のアンモニアタンク等である。
図2の例では、アンモニア噴射弁112は、吸気流路200の分岐流路202に設けられる。アンモニア噴射弁112の先端部は、吸気ポート104aに臨む。アンモニア噴射弁112は、アンモニアを燃料ガスとして吸気ポート104aに噴射する。アンモニア噴射弁112からは、気体のアンモニアが噴射される。このように、エンジン100は、アンモニアを燃料として用いるエンジンである。
【0020】
ただし、アンモニア噴射弁112は、燃焼室108に設けられてもよい。この場合、アンモニア噴射弁112は、例えば、燃焼室108内に臨むようにシリンダヘッド104に設けられ、アンモニアを燃焼室108内に直接噴射する。この場合、アンモニア噴射弁112からは、気体または液体のアンモニアが噴射される。このように、アンモニア噴射弁112は、吸気流路200または燃焼室108に、気筒ごとに設けられる。
【0021】
非アンモニア燃料噴射弁114は、アンモニア以外の燃料である非アンモニア燃料の供給源と接続される。非アンモニア燃料としては、例えば、軽油が用いられる。この場合、非アンモニア燃料の供給源は、例えば、不図示の軽油タンク等である。ただし、非アンモニア燃料として重油等の軽油以外の燃料が用いられてもよい。非アンモニア燃料噴射弁114は、燃焼室108に設けられる。
図2の例では、非アンモニア燃料噴射弁114は、燃焼室108内に臨むようにシリンダヘッド104に設けられ、非アンモニア燃料を燃焼室108内に直接噴射する。非アンモニア燃料噴射弁114からは、例えば、液体の非アンモニア燃料が噴射される。
【0022】
アンモニアは、他の燃料と比べると燃焼しにくい性質である難燃性を有する。ゆえに、エンジン100では、燃焼室108における燃焼性を確保するために、燃料として、アンモニアに加えて非アンモニア燃料が用いられる。
【0023】
エンジン100は、4サイクルエンジンである。吸気行程において、アンモニア噴射弁112からアンモニアが噴射され、吸気弁110aが開弁し、排気弁110bが閉弁した状態になる。ピストン106が下死点に向かい、吸気ポート104aから燃焼室108に吸気およびアンモニアが吸入される。圧縮行程において、吸気弁110aおよび排気弁110bが閉弁した状態になる。ピストン106が上死点に向かい、燃焼室108内の混合気が圧縮される。ピストン106が上死点近傍に到達したタイミングで、非アンモニア燃料噴射弁114から非アンモニア燃料が噴射され、燃焼室108における燃焼性が高められる。それにより、燃焼室108内の混合気が着火されて燃焼する。膨脹行程において、ピストン106が下死点側に押圧される。排気行程において、吸気弁110aが閉弁し、排気弁110bが開弁した状態になる。ピストン106が上死点に向かい、燃焼後の排気ガスが排気ポート104bを通って燃焼室108から排出される。以下、
図1に戻り、説明を続ける。
【0024】
吸気流路200は、エンジン100の各気筒の燃焼室108と連通する。吸気流路200には、燃焼室108に供給される空気である吸気が流通する。吸気流路200の上流側の端部には、空気が外部から取り込まれる不図示の吸気口が設けられる。吸気流路200は、各気筒の燃焼室108とそれぞれ連通する複数の分岐流路202を有する。複数の分岐流路202は、吸気流路200の下流側に設けられる。各気筒の燃焼室108と吸気流路200とは、複数の分岐流路202によって接続される。上述したように、分岐流路202を形成する配管は、エンジン100の吸気ポート104aと接続される。吸気ポート104aは、分岐流路202のうちの下流側の端部に相当する。吸気ポート104aは、吸気流路200に含まれる。
【0025】
第6気筒#6と接続される分岐流路202は、吸気流路200における第1位置P1から分岐する。第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5とそれぞれ接続される分岐流路202は、吸気流路200における第1位置P1より下流側の第2位置P2から分岐する。
【0026】
排気流路300は、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒の燃焼室108と連通する。排気流路300には、燃焼室108から排出された排気ガスが流通する。排気流路300の下流側の端部には、排気ガスが外部に排出される不図示の排気口が設けられる。排気流路300は、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒の燃焼室108とそれぞれ連通する複数の分岐流路302を有する。複数の分岐流路302は、排気流路300の上流側に設けられる。上述したように、分岐流路302を形成する配管は、エンジン100の排気ポート104bと接続される。第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の排気ポート104bは、分岐流路302のうちの上流側の端部に相当する。第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の排気ポート104bは、排気流路300に含まれる。
【0027】
過給機400は、コンプレッサ402とタービン404とを有する。コンプレッサ402の翼車、および、タービン404の翼車は、一体として回転する。コンプレッサ402の翼車とタービン404の翼車とは、シャフトによって連結されている。
【0028】
コンプレッサ402は、吸気流路200のうち第1位置P1より上流側に設けられている。コンプレッサ402は、吸気口から取り込まれた吸気を圧縮して、下流側に送出する。コンプレッサ402から送出された吸気は、各分岐流路202を介して各燃焼室108に送られる。
【0029】
タービン404は、排気流路300のうち分岐流路302より下流側に設けられている。エンジン100から排出された排気ガスは、各分岐流路302を介してタービン404に送られる。タービン404は、タービン404の翼車が排気ガスによって回されることによって、回転動力を生成する。タービン404により生成された回転動力は、シャフトを介してコンプレッサ402に伝達される。タービン404を通過した排気ガスは、排気口から排出される。
【0030】
供給流路500は、第6気筒#6の排気ポート104bと、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の吸気ポート104aとを連通する。第6気筒#6の排気ポート104bから排出された排気ガスは、供給流路500に送られる。供給流路500において、第6気筒#6の排気ポート104b側を上流側と呼び、第6気筒#6の排気ポート104b側に対して逆側を下流側と呼ぶ。
【0031】
供給流路500の上流端は、第6気筒#6の排気ポート104bと接続される。
図1の例では、供給流路500の下流端は、吸気流路200のうち第1位置P1より下流側、かつ、第2位置P2より上流側と接続される。ゆえに、第6気筒#6の排気ポート104bから排出された排気ガスは、供給流路500を通過して、吸気流路200のうち第1位置P1より下流側、かつ、第2位置P2より上流側に送られる。そして、供給流路500から吸気流路200に送られた排気ガスは、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の吸気ポート104aから、これらの気筒の燃焼室108に供給される。
【0032】
制御装置600は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む。制御装置600は、吸排気システム1中の各装置の動作を制御する。例えば、制御装置600は、エンジン100の各装置の動作を制御する。
【0033】
また、制御装置600は、吸排気システム1中のセンサから情報を取得する。例えば、吸排気システム1では、吸気流路200に吸気圧力センサ204が設けられる。吸気圧力センサ204は、吸気流路200における吸気の圧力である吸気圧力を検出する。
図1の例では、吸気圧力センサ204は、吸気流路200のうち第1位置P1より上流側に設けられている。
【0034】
特に、制御装置600は、アンモニア噴射弁112から噴射されるアンモニアの噴射量であるアンモニア噴射量を制御することによって、各気筒のアンモニア当量比を制御できる。アンモニア当量比は、燃焼室108への空気の供給量に対するアンモニアの供給量の比である。各気筒のアンモニア当量比が適切に制御されることにより、後述するように、未燃アンモニアの排出が抑制される。以下、
図3を参照して、制御装置600によるアンモニア当量比の制御について説明する。
【0035】
図3は、本実施形態に係る制御装置600が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、
図3に示される制御フローは、予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。
【0036】
図3に示される制御フローが開始されると、ステップS101において、制御装置600は、各気筒の燃焼室108への空気の供給量を推定する。制御装置600は、例えば、吸気圧力センサ204の検出結果に基づいて、各気筒の燃焼室108への空気の供給量を推定できる。
【0037】
ステップS101の次に、ステップS102において、制御装置600は、第6気筒#6におけるアンモニア当量比が他の気筒におけるアンモニア当量比よりも小さくなるように、各気筒のアンモニア噴射量を制御し、
図3に示される制御フローは終了する。上記の他の気筒は、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5である。
【0038】
例えば、制御装置600は、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒におけるアンモニア当量比を、N2Oの排出が抑制される程度に高い値に制御する。一方、制御装置600は、第6気筒#6におけるアンモニア当量比を、多量のN2Oが排出される程度に低い値に制御する。ゆえに、第6気筒#6の排気ポート104bから排出された排気ガスには多量のN2Oが含まれる。そして、N2Oを含む排気ガスが、供給流路500に送られ、供給流路500を通過して、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒の燃焼室108に供給される。
【0039】
ここで、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒の燃焼室108に供給されたN2Oは、燃焼室108内の燃焼を促進させる。具体的には、N2Oは、高温環境である燃焼室108内において、N2とO2とに分解される。このような分解反応により生成されたO2によって燃焼室108内の燃焼が促進される。それにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒からの未燃アンモニアの排出が抑制される。
【0040】
以上説明したように、吸排気システム1では、制御装置600は、一部の気筒である第6気筒#6におけるアンモニア当量比を、他の気筒である第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5におけるアンモニア当量比よりも小さくする。それにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒からの未燃アンモニアの排出が抑制される。さらに、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の各気筒におけるアンモニア当量比を十分に高くすることができるので、N2Oの排出も適切に抑制される。
【0041】
上記では、
図1を参照して、第6気筒#6の排気ポート104bに供給流路500が接続される例を説明した。ただし、供給流路500は、第6気筒#6以外の気筒の排気ポート104bに接続されていてもよい。また、供給流路500は、2つ以上の気筒の排気ポート104bに接続されていてもよい。
【0042】
上記では、
図1を参照して、供給流路500の下流端は、吸気流路200のうち第1位置P1より下流側、かつ、第2位置P2より上流側と接続される例を説明した。ただし、供給流路500の下流側は、分岐して、各分岐流路202にそれぞれ接続されていてもよい。
【0043】
以下、
図4から
図8を参照して、変形例に係る吸排気システム1Aについて説明する。
【0044】
図4は、変形例に係る吸排気システム1Aの構成を示す模式図である。
図4に示すように、変形例に係る吸排気システム1Aでは、上述した吸排気システム1と比較して、接続流路700と、切替弁800とがさらに設けられている点が主に異なる。
【0045】
図4に示すように、吸排気システム1Aでは、排気流路300と供給流路500とが、接続流路700を介して連通している。
図4の例では、接続流路700は、排気流路300のうち複数の分岐流路302の合流部分よりも上流側と接続されている。ただし、接続流路700は、排気流路300のうち複数の分岐流路302の合流部分よりも上流側と接続されていてもよい。
【0046】
切替弁800は、供給流路500のうち接続流路700との接続部分に設けられる。切替弁800は、例えば、三方弁である。切替弁800は、吸排気システム1Aの連通状態を、供給流路500のうち切替弁800より上流側の部分が接続流路700と連通する第1状態と、供給流路500のうち切替弁800より上流側の部分が供給流路500のうち切替弁800より下流側の部分と連通する第2状態とに切り替える。
【0047】
図5は、変形例に係る吸排気システム1Aにおいて連通状態が第1状態になっている場合のガスの流れを示す模式図である。第1状態では、供給流路500のうち切替弁800より上流側の部分は、接続流路700と連通する。一方、供給流路500のうち切替弁800より上流側の部分は、供給流路500のうち切替弁800より下流側の部分とは連通しない。つまり、第1状態では、第6気筒#6の排気ポート104bと排気流路300とが接続流路700を介して連通し、かつ、第6気筒#6の排気ポート104bと第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の吸気ポート104aとが供給流路500を介して連通しない。ゆえに、
図5に示すように、第6気筒#6の排気ポート104bから排出された排気ガスは、接続流路700を通過して、排気流路300に送られる。
【0048】
図6は、変形例に係る吸排気システム1Aにおいて連通状態が第2状態になっている場合のガスの流れを示す模式図である。第2状態では、供給流路500のうち切替弁800より上流側の部分は、供給流路500のうち切替弁800より下流側の部分と連通する。一方、供給流路500のうち切替弁800より上流側の部分は、接続流路700とは連通しない。つまり、第2状態では、第6気筒#6の排気ポート104bと排気流路300とが接続流路700を介して連通せず、かつ、第6気筒#6の排気ポート104bと第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の吸気ポート104aとが供給流路500を介して連通する。ゆえに、
図6に示すように、第6気筒#6の排気ポート104bから排出された排気ガスは、供給流路500を通過して、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の吸気ポート104aに送られ、これらの気筒の燃焼室108に供給される。
【0049】
また、
図4に示すように、吸排気システム1Aでは、吸気流路200に吸気温度センサ206がさらに設けられる。吸気温度センサ206は、吸気流路200における吸気の温度である吸気温度を検出する。吸気温度は外気温と略一致するので、例えば、外気温を検出するセンサが吸気温度センサ206として用いられ得る。吸気温度センサ206は、吸気流路200に設けられてもよく、吸気流路200以外の箇所に設けられてもよい。吸気温度センサ206の検出結果は、制御装置600に出力される。
【0050】
以上説明したように、吸排気システム1Aでは、切替弁800は、第6気筒#6の排気ポート104bと排気流路300とが接続流路700を介して連通し、かつ、第6気筒#6の排気ポート104bと第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の吸気ポート104aとが供給流路500を介して連通しない第1状態と、第6気筒#6の排気ポート104bと排気流路300とが接続流路700を介して連通せず、かつ、第6気筒#6の排気ポート104bと第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の吸気ポート104aとが供給流路500を介して連通する第2状態とを切り替える。
【0051】
第1状態では、第6気筒#6におけるアンモニア当量比を第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5におけるアンモニア当量比と同程度にすることによって、第6気筒#6の出力が他の気筒と同程度にまで高められる。第2状態では、上述した吸排気システム1と同様に、第6気筒#6におけるアンモニア当量比を第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5におけるアンモニア当量比よりも小さくすることによって、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼が促進される。それにより、未燃アンモニアの排出が抑制される。
【0052】
したがって、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が不要な場合に、吸排気システム1Aの連通状態を第1状態にすることで、エンジン100の出力が高められる。一方、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が必要な場合に、吸排気システム1Aの連通状態を第2状態にすることで、未燃アンモニアの排出が適切に抑制される。
【0053】
以下、
図7および
図8を参照して、吸排気システム1Aにおける連通状態の切り替え、および、アンモニア当量比の制御に関する第1の処理例および第2の処理例を説明する。
【0054】
図7は、制御装置600が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。例えば、
図7に示される制御フローは、予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。
【0055】
図7に示される制御フローが開始されると、ステップS201において、制御装置600は、エンジン100の負荷を取得する。
【0056】
ステップS201の次に、ステップS202において、制御装置600は、エンジン100の負荷が基準負荷より低いか否かを判定する。ここで、エンジン100の負荷が低いほど、燃焼室108内における燃焼性が低下し、未燃アンモニアが生じやすくなる。ゆえに、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進の必要性が高くなる。基準負荷は、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が必要であると判断できる程度に低い負荷に設定される。
【0057】
エンジン100の負荷が基準負荷より低い場合、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が必要な状況になる。一方、エンジン100の負荷が基準負荷以上である場合、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が不要な状況になる。
【0058】
エンジン100の負荷が基準負荷以上であると判定された場合(ステップS202/NO)、ステップS203に進む。ステップS203において、制御装置600は、第1状態への切り替えを切替弁800に行わせ、吸排気システム1Aの連通状態を第1状態に切り替える。
【0059】
ステップS203の次に、ステップS204において、制御装置600は、第6気筒#6におけるアンモニア当量比を他の気筒におけるアンモニア当量比と同程度にし、
図7に示される制御フローは終了する。
【0060】
一方、エンジン100の負荷が基準負荷より低いと判定された場合(ステップS202/YES)、ステップS205に進む。ステップS205において、制御装置600は、第2状態への切り替えを切替弁800に行わせ、吸排気システム1Aの連通状態を第2状態に切り替える。
【0061】
ステップS205の次に、ステップS206において、制御装置600は、第6気筒#6におけるアンモニア当量比を他の気筒におけるアンモニア当量比よりも小さくし、
図7に示される制御フローは終了する。
【0062】
なお、ステップS204およびステップS206における各気筒のアンモニア当量比の制御は、具体的には、上述したように、各気筒の燃焼室108への空気の供給量の推定値に基づいて行われる。
【0063】
以上説明したように、
図7の第1の処理例では、制御装置600は、エンジン100の負荷が基準負荷より低い場合に、第2状態への切り替えを切替弁800に行わせ、一部の気筒である第6気筒#6におけるアンモニア当量比を、他の気筒である第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5におけるアンモニア当量比よりも小さくする。それにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が不要か必要かを、エンジン100の負荷に基づいて適切に判断した上で、吸排気システム1Aの連通状態を切り替えることができる。ゆえに、燃焼促進が不要な場合にはエンジン100の出力が高められる一方で、燃焼促進が必要な場合には未燃アンモニアの排出が適切に抑制される。
【0064】
図8は、制御装置600が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。例えば、
図8に示される制御フローは、予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。
【0065】
図8の第2の処理例では、上述した
図7の第1の処理例と比較して、ステップS201およびステップS202がステップS301およびステップS302に置き換えられている点が異なる。
【0066】
図8に示される制御フローが開始されると、ステップS301において、制御装置600は、吸気温度を取得する。吸気温度は、例えば、吸気温度センサ206から取得され得る。
【0067】
ステップS301の次に、ステップS302において、制御装置600は、吸気温度が基準温度より低いか否かを判定する。ここで、吸気温度が低いほど、燃焼室108内における燃焼性が低下し、未燃アンモニアが生じやすくなる。ゆえに、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進の必要性が高くなる。基準温度は、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が必要であると判断できる程度に低い温度に設定される。
【0068】
吸気温度が基準温度より低い場合、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が必要な状況になる。一方、吸気温度が基準温度以上である場合、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が不要な状況になる。
【0069】
吸気温度が基準温度以上であると判定された場合(ステップS302/NO)、ステップS203に進む。そして、上述した
図7の第1の処理例と同様に、ステップS203およびステップS204が行われ、
図8に示される制御フローは終了する。
【0070】
一方、吸気温度が基準温度より低いと判定された場合(ステップS302/YES)、ステップS205に進む。そして、上述した
図7の第1の処理例と同様に、ステップS205およびステップS206が行われ、
図8に示される制御フローは終了する。
【0071】
以上説明したように、
図8の第2の処理例では、制御装置600は、吸気温度が基準温度より低い場合に、第2状態への切り替えを切替弁800に行わせ、一部の気筒である第6気筒#6におけるアンモニア当量比を、他の気筒である第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5におけるアンモニア当量比よりも小さくする。それにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第4気筒#4および第5気筒#5の燃焼室108内の燃焼促進が不要か必要かを、吸気温度に基づいて適切に判断した上で、吸排気システム1Aの連通状態を切り替えることができる。ゆえに、燃焼促進が不要な場合にはエンジン100の出力が高められる一方で、燃焼促進が必要な場合には未燃アンモニアの排出が適切に抑制される。
【0072】
なお、制御装置600は、吸排気システム1Aの連通状態を第2状態に切り替える条件として、エンジン100の負荷が基準負荷より低いこと、および、吸気温度が基準温度より低いことの双方を用いてもよい。例えば、制御装置600は、エンジン100の負荷が基準負荷より低く、かつ、吸気温度が基準温度より低い場合に、第2状態への切り替えを切替弁800に行わせてもよい。例えば、制御装置600は、エンジン100の負荷が基準負荷より低いこと、および、吸気温度が基準温度より低いことのいずれか一方が満たされている場合に、第2状態への切り替えを切替弁800に行わせてもよい。
【0073】
上記では、切替弁800が三方弁である例を説明した。ただし、切替弁800は、吸排気システム1Aの連通状態を第1状態と第2状態とに切り替えられればよく、上記の例に限定されない。例えば、接続流路700に設けられる第1開閉弁と、供給流路500のうち接続流路700との接続部分より下流側に設けられる第2開閉弁とが、切替弁800として用いられてもよい。この場合、第1開閉弁を開状態にして第2開閉弁を閉状態にすることで、吸排気システム1Aの連通状態が第1状態になる。一方、第2開閉弁を開状態にして第1開閉弁を閉状態にすることで、吸排気システム1Aの連通状態が第2状態になる。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標7.「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する。」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 吸排気システム
1A 吸排気システム
100 エンジン
104a 吸気ポート
104b 排気ポート
108 燃焼室
112 アンモニア噴射弁
200 吸気流路
300 排気流路
500 供給流路
600 制御装置
700 接続流路
800 切替弁