(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067502
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルおよびこれを備えたバルーンカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230509BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20230509BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178807
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木佐 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】藤本 充千
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK04
4C160KK12
4C160KK30
4C160KK32
4C160KK36
4C160KK63
4C160MM38
4C267AA09
4C267BB42
4C267CC19
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG10
4C267GG11
(57)【要約】
【課題】手技の効率化に資するバルーンカテーテルおよびこれを備えたバルーンカテーテルシステムを提供する。
【解決手段】長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフト2と、シャフト2の遠位部に配置されているバルーン10と、バルーン10上に配置されている5個の第1焼灼電極31A~31Eと、を有し、5個の第1焼灼電極31A~31Eはそれぞれ六角形状を有し、5個の第1焼灼電極31A~31Eはシャフト2の長手軸周りに並べられているバルーンカテーテル1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、
前記バルーン上に配置されている5個の第1焼灼電極と、を有し、
前記5個の第1焼灼電極はそれぞれ六角形状を有し、前記5個の第1焼灼電極は前記シャフトの長手軸周りに並べられているバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記5個の第1焼灼電極は互いに合同な六角形状である請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記バルーンは拡張可能部を有しており、
前記5個の第1焼灼電極は前記拡張可能部の最大外径位置よりも遠位側に配置されている請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記5個の第1焼灼電極は、前記バルーンの遠位端よりも近位側に配置されている請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記バルーン表面の前記第1焼灼電極よりも近位側には、六角形状の第2焼灼電極と五角形状の第3焼灼電極が、前記シャフトの長手軸周りに交互に合計10個並べられている請求項1~4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
5個の前記第2焼灼電極は互いに合同な六角形状である請求項5に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
5個の前記第3焼灼電極は互いに合同な五角形状である請求項5または6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、
前記バルーン上に配置されている10個の第1焼灼電極と、を有し、
前記10個の第1焼灼電極はそれぞれ五角形状を有し、前記10個の第1焼灼電極は前記シャフトの長手軸周りに並べられているバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記10個の第1焼灼電極は互いに合同な五角形状である請求項8に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記バルーンは拡張可能部を有しており、
前記10個の第1焼灼電極は前記拡張可能部の最大外径位置よりも遠位側に配置されている請求項8または9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記10個の第1焼灼電極は、前記バルーンの遠位端よりも近位側に配置されている請求項8~10のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
前記10個の第1焼灼電極のうち隣り合う2つは、前記10個の第1焼灼電極よりも近位側で互いに電気的に接続されている請求項8~11のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
前記バルーン表面の前記第1焼灼電極よりも近位側には、五角形状の2個の第2焼灼電極と四角形状の2個の第3焼灼電極が、前記シャフトの長手軸周りに交互に合計20個並べられている請求項8~12のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
10個の前記第2焼灼電極は互いに合同な五角形状である請求項13に記載のバルーンカテーテル。
【請求項15】
10個の前記第3焼灼電極は互いに合同な四角形状である請求項13または14に記載のバルーンカテーテル。
【請求項16】
前記5個の第1焼灼電極の少なくとも1つは、前記シャフトの長手軸から前記バルーンの半径方向の外方に延びている第1部分と、前記第1部分よりも厚さが厚い第2部分と、を有している請求項1~7のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項17】
前記5個の第1焼灼電極の少なくとも1つは、その前記第1焼灼電極の内側に電極が存在していない第3部分を有し、前記第3部分は、前記シャフトの長手軸から前記バルーンの半径方向の外方に延びている請求項1~7のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
前記バルーンは、複数の折り目を有しており、
前記複数の折り目のうち少なくとも1つは、前記シャフトの長手軸から前記バルーンの半径方向の外方に延びており、かつ前記長手軸周りにおいて隣り合う2つの前記第1焼灼電極の間に配されている請求項1~15のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
前記折り目上に、前記第1焼灼電極よりも表面積が小さく、インピーダンスを測定するための測定電極が配置されている請求項18に記載のバルーンカテーテル。
【請求項20】
前記バルーンカテーテルは、さらに前記バルーンの外面に配置されている絶縁材を有し、前記絶縁材上に前記第1焼灼電極が配置されており、
前記折り目の位置での前記絶縁材の厚さは、前記折り目以外の位置での前記絶縁材の厚さよりも薄い請求項18または19に記載のバルーンカテーテル。
【請求項21】
前記シャフトの遠位端が、前記バルーンの遠位端よりも遠位側に位置している請求項1~20のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルと、
患者の体表面に設けられ、前記第1焼灼電極との間で高周波電流が印加される対極板と、を有するバルーンカテーテルシステム。
【請求項23】
請求項5~7のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルと、
前記5個の第1焼灼電極、前記5個の第2焼灼電極および前記5個の第3焼灼電極に接続されており、焼灼電極と生体組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記5個の第1焼灼電極のうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、前記少なくとも1つの第1焼灼電極と隣り合って配されている前記第2焼灼電極と前記第3焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されているバルーンカテーテルシステム。
【請求項24】
請求項13~15のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルと、
前記10個の第1焼灼電極、前記10個の第2焼灼電極および前記10個の第3焼灼電極に接続されており、焼灼電極と生体組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記10個の第1焼灼電極のうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、前記少なくとも1つの第1焼灼電極と隣り合って配されている前記第2焼灼電極と前記第3焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されているバルーンカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル、詳細には生体組織を焼灼することができるバルーンカテーテルとこれを備えたシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
心房細動の治療のための肺静脈隔離術では、バルーンを有するアブレーションカテーテルが用いられる。バルーンの外面には焼灼電極が設けられている。バルーンを拡張して焼灼電極を肺静脈開口部に接触させた状態で焼灼電極に高周波電流を流すことによって、肺静脈開口部の組織を焼灼することができる。肺静脈等の生体組織と焼灼電極が接触しているか否かを確認するために、バルーンの外面に焼灼電極とは別に電極を設けることが提案されている。
【0003】
特許文献1には、拡張可能なバルーンの遠位側に接続し、バルーンの遠位側にある遠位極からの円弧の30°以内にあるバルーンの遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極を具備する医療器具が開示されている。また、特許文献1には電極が多角形でない形状を有すること、遠位側にある電極を組織に接触させるためにバルーンを貫通するシャフトを含まないことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャフトの長手軸周りに延在している対象組織に対して効率よく焼灼を行うことができるバルーンカテーテルおよびこれを備えたシステムを提供することは有益である。そこで、本発明は、手技の効率化に資するバルーンカテーテルおよびこれを備えたバルーンカテーテルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明のバルーンカテーテルの一実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、バルーン上に配置されている5個の第1焼灼電極と、を有し、5個の第1焼灼電極はそれぞれ六角形状を有し、5個の第1焼灼電極はシャフトの長手軸周りに並べられている点に要旨を有する。上記バルーンカテーテルによれば、特定の形状を有する5個の第1焼灼電極がシャフトの長手軸周りに並べられていることにより、シャフトの長手軸周りに延在している対象組織を一斉に焼灼することができるため、手技の効率化が図られる。
【0007】
5個の第1焼灼電極は互いに合同な六角形状であってもよい。バルーンは拡張可能部を有しており、5個の第1焼灼電極は拡張可能部の最大外径位置よりも遠位側に配置されていてもよい。5個の第1焼灼電極は、バルーンの遠位端よりも近位側に配置されていてもよい。
【0008】
5個の第1焼灼電極を有するバルーンカテーテルにおいて、バルーン表面の第1焼灼電極よりも近位側には、六角形状の第2焼灼電極と五角形状の第3焼灼電極が、シャフトの長手軸周りに交互に合計10個並べられていてもよい。5個の第2焼灼電極は互いに合同な六角形状であってもよい。5個の第3焼灼電極は互いに合同な五角形状であってもよい。
【0009】
上記目的を達成し得た本発明のバルーンカテーテルの他の実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、バルーン上に配置されている10個の第1焼灼電極と、を有し、10個の第1焼灼電極はそれぞれ五角形状を有し、10個の第1焼灼電極はシャフトの長手軸周りに並べられている点に要旨を有する。上記バルーンカテーテルによれば、特定の形状を有する10個の第1焼灼電極がシャフトの長手軸周りに並べられていることにより、シャフトの長手軸周りに延在している対象組織を一斉に焼灼することができるため、手技の効率化が図られる。
【0010】
10個の第1焼灼電極は互いに合同な五角形状であってもよい。バルーンは拡張可能部を有しており、10個の第1焼灼電極は拡張可能部の最大外径位置よりも遠位側に配置されていてもよい。10個の第1焼灼電極は、バルーンの遠位端よりも近位側に配置されていてもよい。10個の第1焼灼電極のうち隣り合う2つは、10個の第1焼灼電極よりも近位側で互いに電気的に接続されていてもよい。
【0011】
10個の第1焼灼電極を有するバルーンカテーテルにおいて、バルーン表面の第1焼灼電極よりも近位側には、五角形状の2個の第2焼灼電極と四角形状の2個の第3焼灼電極が、シャフトの長手軸周りに交互に合計20個並べられていてもよい。10個の第2焼灼電極は互いに合同な五角形状であってもよい。10個の第3焼灼電極は互いに合同な四角形状であってもよい。
【0012】
5個の第1焼灼電極を有するバルーンカテーテルにおいて、5個の第1焼灼電極の少なくとも1つは、シャフトの長手軸からバルーンの半径方向の外方に延びている第1部分と、第1部分よりも厚みが厚い第2部分と、を有していてもよい。また、5個の第1焼灼電極の少なくとも1つは、その第1焼灼電極の内側に電極が存在していない第3部分を有し、第3部分は、シャフトの長手軸からバルーンの半径方向の外方に延びていてもよい。
【0013】
5個または10個の第1焼灼電極を有するバルーンカテーテルにおいて、バルーンは、複数の折り目を有しており、複数の折り目のうち少なくとも1つは、シャフトの長手軸からバルーンの半径方向の外方に延びており、かつ長手軸周りにおいて隣り合う2つの第1焼灼電極の間に配されていてもよい。折り目上に、第1焼灼電極よりも表面積が小さく、インピーダンスを測定するための測定電極が配置されていてもよい。5個または10個の第1焼灼電極を有するバルーンカテーテルは、さらにバルーンの外面に配置されている絶縁材を有し、絶縁材上に第1焼灼電極が配置されており、折り目の位置での絶縁材の厚さは、折り目以外の位置での絶縁材の厚さよりも薄くてもよい。5個または10個の第1焼灼電極を有するバルーンカテーテルにおいて、シャフトの遠位端が、バルーンの遠位端よりも遠位側に位置していてもよい。
【0014】
本発明は、バルーンカテーテルシステムも提供する。本発明のバルーンカテーテルシステムの一実施態様は、5個または10個の第1焼灼電極を有するバルーンカテーテルと、患者の体表面に設けられ、第1焼灼電極との間で高周波電流が印加される対極板と、を有するものである。
【0015】
本発明のバルーンカテーテルシステムの他の実施態様は、5個の第1焼灼電極と5個の第2焼灼電極と5個の第3焼灼電極を有するバルーンカテーテルと、5個の第1焼灼電極、5個の第2焼灼電極および5個の第3焼灼電極に接続されており、焼灼電極と生体組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有し、制御部は、5個の第1焼灼電極のうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、少なくとも1つの第1焼灼電極と隣り合って配されている第2焼灼電極と第3焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されている。
【0016】
本発明のバルーンカテーテルシステムのさらに他の実施態様は、10個の第1焼灼電極と10個の第2焼灼電極と10個の第3焼灼電極を有するバルーンカテーテルと、10個の第1焼灼電極、10個の第2焼灼電極および10個の第3焼灼電極に接続されており、焼灼電極と生体組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有し、制御部は、10個の第1焼灼電極のうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、少なくとも1つの第1焼灼電極と隣り合って配されている第2焼灼電極と第3焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
上記バルーンカテーテルおよびバルーンカテーテルシステムによれば、特定の形状を有する5個または10個の第1焼灼電極がシャフトの長手軸周りに並べられていることにより、シャフトの長手軸周りに延在している対象組織を一斉に焼灼することができるため、手技の効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係るバルーンカテーテルの側面図(一部断面図)である。
【
図2】
図1に示したバルーンカテーテルを遠位側から見た正面図である。
【
図3】
図1に示したバルーンカテーテルの変形例を示す側面図である。
【
図4】
図2に示したバルーンカテーテルの変形例を示す正面図である。
【
図5】
図2に示したバルーンカテーテルの他の変形例を示す正面図である。
【
図6】
図2に示したバルーンカテーテルのさらに他の変形例を示す正面図である。
【
図7】
図2に示したバルーンカテーテルのさらに他の変形例を示す正面図である。
【
図8】
図2に示したバルーンカテーテルのさらに他の変形例を示す正面図である。
【
図9】
図2に示したバルーンカテーテルのさらに他の変形例を示す正面図である。
【
図10】本発明の第2の実施態様に係るバルーンカテーテルを遠位側から見た正面図である。
【
図11】
図10に示したバルーンカテーテルの変形例を示す正面図である。
【
図12】
図10に示したバルーンカテーテルの他の変形例を示す正面図である。
【
図13】
図10に示したバルーンカテーテルのさらに他の変形例を示す正面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルシステムのブロック図である。
【
図15】
図14に示したバルーンカテーテルシステムの変形例を示すブロック図である。
【
図16】
図14に示したバルーンカテーテルシステムの他の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0020】
1.バルーンカテーテル
本発明のバルーンカテーテルの第1の実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、バルーン上に配置されている5個の第1焼灼電極と、を有し、5個の第1焼灼電極はそれぞれ六角形状を有し、5個の第1焼灼電極はシャフトの長手軸周りに並べられている点に要旨を有する。本発明のバルーンカテーテルの第2の実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、バルーン上に配置されている10個の第1焼灼電極と、を有し、10個の第1焼灼電極はそれぞれ五角形状を有し、10個の第1焼灼電極はシャフトの長手軸周りに並べられている点に要旨を有する。上記バルーンカテーテルによれば、特定の形状を有する5個または10個の第1焼灼電極がシャフトの長手軸周りに並べられていることにより、シャフトの長手軸周りに延在している対象組織を一斉に焼灼することができるため、手技の効率化が図られる。
【0021】
バルーンカテーテルは、生体組織を焼灼するアブレーションカテーテルである。バルーンカテーテルの用途の一例としては、心房細動の治療法の一つである肺静脈隔離術が挙げられる。肺静脈隔離術では、バルーンの外面に焼灼電極を設けて、バルーンを拡張し、焼灼電極を肺静脈開口部に接触させた状態で焼灼電極に高周波電流を流すことによって肺静脈開口部を焼灼する。これにより心房細動の原因となる異常な電気経路を遮断することができる。
【0022】
図1~
図13を参照してバルーンカテーテルの構成について説明する。
図1は本発明の第1の実施態様に係るバルーンカテーテルの側面図(一部断面図)である。
図2は
図1に示したバルーンカテーテルを遠位側から見た正面図である。
図3は
図1に示したバルーンカテーテルの変形例を示す側面図である。
図4~
図9は
図2に示したバルーンカテーテルの変形例を示す正面図である。
図10は本発明の第2の実施態様に係るバルーンカテーテルを遠位側から見た正面図である。
図11~
図13は
図10に示したバルーンカテーテルの変形例を示す正面図である。
図1では、シャフトの遠位側から近位側にわたってワイヤを挿通するオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルの構成例を示している。
図1~
図2に示すように、第1の実施態様に係るバルーンカテーテル1は、シャフト2と、バルーン10と、5個の第1焼灼電極31A~31Eを有する。
図1および
図10に示すように、第2の実施態様に係るバルーンカテーテル1は、シャフト2と、バルーン10と、10個の第1焼灼電極31A~31Jを有する。
図2、
図4~
図13では焼灼電極が設けられる位置を分かりやすくするために、焼灼電極にハッチングを付している。以下ではバルーンカテーテルを単にカテーテルと称することがある。
【0023】
まず、第1の実施態様と第2の実施態様で共通する構成について説明する。本明細書において、カテーテル1の遠位側とは、シャフト2の長手軸方向xの遠位端側であって処置対象側を指す。カテーテル1の近位側とは、シャフト2の長手軸方向xの近位端側であって使用者の手元側を指す。各部材をシャフト2の長手軸方向xにおいて二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。カテーテル1の半径方向において、内方はシャフト2の長手軸方向xに延びる中心軸cに向かう方向を指し、外方は内方とは反対の放射方向を指す。
【0024】
シャフト2は長手軸方向xと半径方向と周方向を有している。
図1に示すようにシャフト2は長手軸方向xに遠位端と近位端を有している。シャフト2の遠位部にはバルーン10が配置されている。シャフト2の近位部には、バルーン10の内部に流体を供給するためのシリンジ等の流体供給器72が接続されている。カテーテル1は、流体供給器72からシャフト2を通じてバルーン10の内部に流体が供給されるように構成されている。流体供給器72はヒーターとクーラーの少なくともいずれかを備えていてもよい。流体供給器72から供給される流体の温度は設定または制御されてもよい。
【0025】
シャフト2はその内部にバルーン10内に供給される流体の流路と、体腔内でのシャフト2の進行をガイドするワイヤの挿通路とを有していてもよい。流路は、シャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。ワイヤの挿通路も、シャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。
【0026】
シャフト2は少なくとも二重管から構成されているコアキシャル構造を有していてもよい。
図1ではシャフト2は内管3と外管4から構成されている。
図1では内管3の内腔はワイヤの挿通路として機能し、内管3と外管4の間の空間はバルーン10を拡張するための流体の流路として機能する。シャフト2の遠位部では、内管3が外管4の遠位端から延出してバルーン10を長手軸方向xに貫通している。
【0027】
バルーン10はシャフト2の遠位部に固定されている遠位固定部12と、遠位固定部12よりも近位側でシャフト2に固定されている近位固定部13と、遠位固定部12と近位固定部13の間に位置し且つシャフト2に固定されていない拡張可能部14と、を有している。バルーン10の内部に流体を供給すると拡張可能部14が拡張し、バルーン10から流体を排出することで拡張可能部14が収縮する。
図1では内管3の遠位部に遠位固定部12が固定され、外管4の遠位部に近位固定部13が固定されている。遠位固定部12と近位固定部13は、例えば溶着、または接着剤による接着等の方法でシャフト2に固定することができる。
【0028】
図1ではシャフト2の外管4の近位部が分岐している。分岐の第1の側4Aには流体供給器72が接続されている。分岐の第2の側4Bの近位端からは内管3が延出しており、内管3の近位部に操作部71が接続されている。操作部71は術者が把持する部分である。分岐の第2の側4Bまたは内管3の近位部はワイヤポートまたはケーブルコネクタに接続されてもよい。シャフト2と流体供給器72またはワイヤポートは、チューブやコネクタ等の接続部材を介して間接的に接続されていてもよい。
【0029】
シャフト2はマルチルーメン構造を有していてもよい。マルチルーメン構造は、1つのシャフト2が複数の内腔を有する構造である。複数の内腔は好ましくはそれぞれ長手軸方向xに延在しており、互いに平行に配されている。例えばシャフト2は長手軸方向xに延在している第1内腔および第2内腔と、シャフト2の側壁であってバルーン10の拡張可能部14と重なる位置にあり第1内腔と連通している第1側孔と、を有していてもよい。流体供給器72から第1内腔へバルーン拡張用の流体が供給されてもよい。
【0030】
体腔形状に沿ってシャフト2を変形させるために、シャフト2は可撓性を有していることが好ましい。形状保持のため、シャフト2は弾性を有していることが好ましい。シャフト2は樹脂、金属、または樹脂と金属の組み合わせから構成されていることが好ましい。シャフト2としては、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向xに接続したものが挙げられる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが挙げられる。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは、シャフト2の長手軸方向x全体に亘って一定の密度で形成されてもよく、シャフト2の長手軸方向xの位置によって密度が異なるように形成されてもよい。金属管の可撓性を高めるために、金属管の外側表面には切込みや溝が形成されていてもよい。切込みや溝の形状は、直線状、円弧状、環状、らせん状やこれらの組み合わせとすることができる。シャフト2の内管3と外管4は上記のいずれかの構造を有していてもよい。内管3と外管4の構造は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0031】
シャフト2を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シャフト2を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよいが、中でも熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。シャフト2を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。シャフト2は異なる材料または同じ材料による積層構造としてもよい。内管3と外管4の構成材料は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0032】
1つのシャフト2にはバルーン10が1つのみ配置されることが好ましいが、バルーン10は複数配置されてもよい。一のバルーンの内部に他のバルーンが配置されてもよく、複数のバルーンが長手軸方向xに並ぶように配置されてもよい。
【0033】
バルーン10は樹脂を成形することにより製造することができる。例えば、押出成形された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形することでバルーン10を製造することができる。金型の形状を変えることでバルーン10を任意の形状に形成することができる。二軸延伸ブロー成形以外にもディップ成形、射出成形、圧縮成形などの成形方法によりバルーン10を製造することができる。
【0034】
バルーン10を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バルーン10の薄膜化や柔軟性の点からは、エラストマー樹脂を用いることができる。
【0035】
バルーン10の内部に供給される流体としては、例えば、生理食塩水、造影剤、またはこれらの混合液等の液体や、空気、窒素、炭酸ガス等の気体を挙げることができる。
【0036】
拡張可能部14を拡張させたときの形状は特に限定されないが、球体状、長円球体状、柱体状、錐体状、錐台体状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができるが、球体状であることが好ましい。長円形状には、楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれ、以降の説明でも同様である。
【0037】
図1に示すように、シャフト2の遠位端が、バルーン10の遠位端よりも遠位側に位置していることが好ましく、シャフト2の遠位端が、バルーン10の拡張可能部14の遠位端よりも遠位側に位置していることがより好ましい。第1焼灼電極をシャフト2の長手軸周りに配置することが可能となるため、シャフト2の長手軸周りに延在している対象組織を焼灼することができる。また、バルーン10の表面で焼灼を行うことができるだけでなく、シャフト2の内腔にガイドワイヤ等の部材を通すことができる。
【0038】
次に第1の実施態様に係るカテーテル1について説明する。
図1~
図2に示すようにカテーテル1では、5個の第1焼灼電極31A~31Eがバルーン10上に配置されている。5個の第1焼灼電極31A~31Eはそれぞれ六角形状を有し、5個の第1焼灼電極31A~31Eはシャフト2の長手軸周りに並べられている。第1焼灼電極に高周波電流が通電されることによって、対象組織を焼灼することができる。カテーテル1によれば、特定の形状を有する5個の第1焼灼電極31A~31Eがシャフト2の長手軸周りに並べられていることにより、シャフト2の長手軸周りに延在している対象組織を一斉に焼灼することができるため、手技の効率化が図られる。
【0039】
まず、焼灼電極の構成について説明する。1つのバルーン10には第1焼灼電極を含む一または複数の焼灼電極を配置することができる。複数の焼灼電極はバルーン10上に規則的に配列されていることが好ましい。例えば、複数の焼灼電極はシャフト10の長手軸周り、または長手軸方向xに並べられていることが好ましい。複数の焼灼電極は等間隔に配置されていることが好ましい。このように複数の焼灼電極を配置することで、広範囲を均一に焼灼しやすくなる。
【0040】
焼灼電極は絶縁材等の他部材を介してバルーン10に固定されていてもよく、バルーン10の外面11に直接固定されていてもよい。対象組織と接触できるように焼灼電極はバルーン10の表面に露出している。
図1~
図2では、第1焼灼電極31A、31B、31C、31D、31Eがそれぞれ別の絶縁材20の上に配置されている例を示している。絶縁材20の構成については後述する。
【0041】
焼灼電極としては金属酸化物や金属の薄膜またはシートを用いることができる。これにより焼灼電極がバルーン10の変形に追従しやすくなる。
【0042】
薄膜を絶縁材20上に配することで焼灼電極を形成する方法としては、エッチング法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法、スクリーン印刷やオフセット印刷等の印刷方法を用いることができる。
【0043】
焼灼電極を構成する材料は導電性を有していればよく、例えば金属、または樹脂と金属を含む混合物から構成することができる。中でも、導電性樹脂や、金、銀、銅、白金、白金イリジウム合金、ステンレス、タングステン等の金属を用いることが好ましい。複数の焼灼電極を構成する材料は互いに異なっていてもよいが、焼灼電極に流れる高周波電流を制御しやすくする観点からはそれぞれ同じであることが好ましい。
【0044】
複数の焼灼電極の厚さは互いに異なっていてもよいが、それぞれ同じであることが好ましい。各焼灼電極を対象組織に同程度に接触させやすくなり、焼灼電極と対象組織の接触の程度を把握しやすくなる。
【0045】
焼灼電極は対象組織の焼灼だけでなく生体電位の測定に使用してもよい。生体電位は、例えばカテーテル1に好ましく設けられる参照電極と焼灼電極との電位差を測定することで取得できる。参照電極としては、シャフト2のうちバルーン10よりも遠位側または近位側に配される電極や、患者の体表面に貼り付けられる電極を用いることができる。
【0046】
長手軸方向xにおいて、焼灼電極が拡張可能部14の遠位部に位置していてもよい。全ての焼灼電極が拡張可能部14の遠位部に位置していてもよい。焼灼電極がバルーンカテーテル10の進行方向を向くため、焼灼電極を対象組織に接触させやすくなる。
【0047】
長手軸方向xにおいて、焼灼電極が拡張可能部14の近位部に位置していてもよい。全ての焼灼電極が拡張可能部14の近位部に位置していてもよい。
【0048】
焼灼電極の一部が、拡張可能部14の最大外径部141に位置していてもよい。焼灼電極を対象組織に接触させやすくなる。また、焼灼電極の一部が、長手軸方向xにおける拡張可能部14の中央に位置していてもよい。
【0049】
図2に示すように5個の第1焼灼電極31A~31Eはそれぞれ六角形状を有しているが、正六角形状である必要はない。本発明における六角形状とは、頂点が丸まっていることにより、外接する六角形よりも面積が10%以内小さいものを含むものである。以降の説明においても同様である。
【0050】
5個の第1焼灼電極31A~31Eは互いに異なる形状を有していてもよいが、それぞれ同じ形状を有していることが好ましい。中でも、5個の第1焼灼電極31A~31Eは互いに合同な六角形状であることがより好ましい。第1焼灼電極がこのような形状を有することでバルーン10の外面11にバランスよく配置しやすくなるため、対象組織に対して効率よく焼灼を行うことができる。
【0051】
多角形状を有する複数の焼灼電極が互いに合同であるとは、その焼灼電極の外縁によって形成される図形が合同、すなわちそれらの形と大きさが同じであるということである。詳細には、複数の多角形の対応する辺の長さが等しく、かつ、対応する角の大きさが等しいということである。これは、六角形状を有する5個の第1焼灼電極31A~31Eだけでなく、六角形状を有する5個の第2焼灼電極32A~32E、五角形状を有する5個の第3焼灼電極33A~33E、五角形状を有する10個の第1焼灼電極31A~31J、五角形状を有する10個の第2焼灼電極32A~32J、四角形状を有する10個の第3焼灼電極33A~33Jの説明においても同様である。なお、合同な複数の焼灼電極の表面積は互いに等しくなる。
【0052】
各第1焼灼電極を絶縁するために、シャフト2の長手軸周りにおいて、5個の第1焼灼電極31A~31Eは互いに離れて配置されていることが好ましい。
【0053】
シャフト2の長手軸周りにおいて、隣り合う2つの第1焼灼電極(例えば第1焼灼電極31Aと31B)の隙間は、それら2つの第1焼灼電極の1つ当たりの長さよりも短いことが好ましい。また、シャフト2の長手軸周りにおいて、第1焼灼電極が配置されていない区間の長さが、第1焼灼電極が配置されている区間の合計長さよりも短いことが好ましい。シャフト2の長手軸周りにおいて対象組織の広範囲を一斉に焼灼しやすくなる。
【0054】
図1から理解できるように、5個の第1焼灼電極31A~31Eはバルーン10の遠位端よりも近位側に配置されていることが好ましく、バルーン10の拡張可能部14の遠位端よりも近位側に配置されていることがより好ましい。すなわち、バルーン10の最遠位端には焼灼電極が配置されていないことが好ましい。これにより、シャフト2の長手軸周りに配される生体組織を適切に焼灼することができるようになる。
【0055】
図2では、5個の第1焼灼電極31A~31Eが、直線状の第1辺41、第2辺42、第3辺43、第4辺44、第5辺45、第6辺46を有している。シャフト2を遠位側から見て、時計回りに第1辺41~第6辺46が順に並んでいる。各第1焼灼電極において、第1辺41と第4辺44が対向しており、第2辺42と第5辺45が対向しており、第3辺43と第6辺46が対向している。対向する2つの辺は平行であることが好ましい。
【0056】
図2に示すようにシャフト2を遠位側から見たときに、最もシャフト2に近い位置にある辺がバルーン10の半径方向に垂直な方向に延在していることが好ましい。
図2では第
1辺41が最もシャフト2に近い位置にある。5個の第1辺41がシャフト2の軸周りに並べられていることにより、シャフト2の遠位側から見て、バルーン10には焼灼電極が存在しない五角形状の第1領域17が形成されていてもよい。第1領域17を貫通するようにシャフト2が配置されることとなる。
【0057】
シャフト2を遠位側から見たときに、第1焼灼電極の少なくとも1つの辺がバルーン10の半径方向に延在していることが好ましい。
図2では、第1焼灼電極31Aの第2辺42と第6辺46がバルーン10の半径方向に延在している。
【0058】
シャフト2の長手軸周りにおいて、隣り合う2つの第1焼灼電極の辺どうしが対向するように並べられていることが好ましい。
図2では第1焼灼電極31Aの第6辺46と、第1焼灼電極31Bの第2辺42が対向している。その場合、隣り合う2つの第1焼灼電極の対向する辺どうしは平行であることが好ましく、互いに平行な2つの辺はバルーン10の半径方向に延在していることが好ましい。
【0059】
図1~
図2に示すように、5個の第1焼灼電極31A~31Eはバルーン10の拡張可能部14の最大外径位置141よりも遠位側に配置されていることが好ましい。第1焼灼電極がバルーンカテーテル10の進行方向を向くため、第1焼灼電極を対象組織に接触させやすくなる。
【0060】
図3から理解できるように、5個の第1焼灼電極31A~31Eはバルーン10の最大外径位置141よりも近位側に配置されていてもよい。
【0061】
5個の第1焼灼電極31A~31Eは個別に通電されることが好ましい。カテーテル1に対する組織の位置や組織の広がり度合いに応じて複数の第1焼灼電極の中から必要な電極のみを選択的に通電することができるため、病変以外の組織が焼灼されにくくなる。
【0062】
図4に示すように、バルーン10の表面の第1焼灼電極31A~31Eよりも近位側には、六角形状の第2焼灼電極と五角形状の第3焼灼電極が、シャフト2の長手軸周りに交互に合計10個並べられていることが好ましい。第2焼灼電極と第3焼灼電極に高周波電流が通電されることによって、対象組織を焼灼することができる。このように特定の形状を有する第2焼灼電極と第3焼灼電極がシャフト2の長手軸周りに並べられていることにより、シャフト2の長手軸周りに延在している対象組織のさらに広範囲を一斉に焼灼することができるようになる。
【0063】
図4に示したカテーテル1は、5個の第2焼灼電極32A~32Eと、5個の第3焼灼電極33A~33Eを有している。
図4では、時計周りに電極32A、33A、32B、33B、32C、33C、32D、33D、32E、33Eの順に並べられている。
【0064】
シャフト2の長手軸周りにおいて、隣り合う第2焼灼電極と第3焼灼電極(例えば、第2焼灼電極32Aと第3焼灼電極33A)は互いに離れて配置されていることが好ましい。各焼灼電極が絶縁されるため、個別に通電することができる。
【0065】
5個の第2焼灼電極32A~32Eはそれぞれ六角形状を有している。5個の第2焼灼電極32A~32Eは正六角形状であることが好ましい。
【0066】
5個の第2焼灼電極32A~32Eは互いに異なる形状を有していてもよいが、それぞれ同じ形状を有していることが好ましい。中でも、5個の第2焼灼電極32A~32Eは互いに合同な六角形状であることがより好ましい。第2焼灼電極がこのような形状を有することで、第1焼灼電極とともにバルーン10の外面11にバランスよく配置しやすくなるため、対象組織に対して効率よく焼灼を行うことができる。
【0067】
シャフト2を遠位側から見たときに、バルーン10の半径方向において、隣り合う第1焼灼電極と第2焼灼電極(例えば第1焼灼電極31Aと第2焼灼電極32A)は互いに離れて配置されていることが好ましい。
【0068】
5個の第1焼灼電極31A~31Eと5個の第2焼灼電極32A~32Eは、互いに合同な六角形状であることが好ましい。
【0069】
第1焼灼電極と同様に、5個の第2焼灼電極32A~32Eはそれぞれ6個の直線状の辺を有していることが好ましい。
図4から理解できるように、各第2焼灼電極が、第1辺41~第6辺46を有していることが好ましい。第1辺41と第4辺が対向しており、第2辺42と第5辺が対向しており、第3辺と第6辺46が対向している。対向する2つの辺は平行であることが好ましい。第1辺41がシャフト2に最も近い位置にあることが好ましい。その他の構成は、第1焼灼電極の説明を参照することができる。
【0070】
第2焼灼電極の最も遠位側に位置する辺と、第1焼灼電極の最も近位側に位置する辺とが対向するように第1焼灼電極と第2焼灼電極が並べられていることが好ましい。例えば
図4では、第2焼灼電極32Aの第1辺41と第1焼灼電極31Aの第4辺44が対向している。その場合、これらの辺は互いに平行であることが好ましい。互いに平行な2つの辺は、バルーン10の半径方向に垂直な方向に延在していることが好ましい。
【0071】
5個の第3焼灼電極33A~33Eはそれぞれ五角形状を有している。5個の第3焼灼電極33A~33Eは正五角形状であることが好ましい。本発明における五角形状とは、頂点が丸まっていることにより、外接する五角形よりも面積が10%以内小さいものを含むものである。以降の説明においても同様である。
【0072】
5個の第3焼灼電極33A~33Eは互いに異なる形状であってもよいが、5個の第3焼灼電極33A~33Eは互いに合同な五角形状であることが好ましい。第3焼灼電極がこのような形状を有していることにより、第1焼灼電極と第2焼灼電極によって形成された隙間を埋めるように第3焼灼電極が配されるため、対象組織の広範囲を効率よく焼灼することができる。
【0073】
シャフト2を遠位側から見たときに、バルーン10の半径方向において、隣り合う第1焼灼電極と第3焼灼電極(例えば第1焼灼電極31Aと第3焼灼電極33A)は互いに離れて配置されていることが好ましい。
【0074】
5個の第3焼灼電極33A~33Eはそれぞれ5個の直線状の辺を有していることが好ましい。
図4に示すように、5個の第3焼灼電極33A~33Eの一つの頂点が、シャフト2の遠位側を向いていることが好ましい。シャフト2の長手軸周りにおいて、遠位側を向いている頂点が、隣り合う2つの第1焼灼電極の間に位置していることが好ましい。
【0075】
シャフト2の長手軸周りにおいて、隣り合う第2焼灼電極と第3焼灼電極は、第2焼灼電極のうち最も第3焼灼電極に近い位置にある辺と、第3焼灼電極のうち最も第2焼灼電極に近い位置にある辺とが平行となるように配置されていることが好ましい。
【0076】
隣り合う第3焼灼電極と第1焼灼電極は、第3焼灼電極のうち最も第1焼灼電極に近い位置にある辺と、第1焼灼電極のうち最も第3焼灼電極に近い位置にある辺とが平行となるように配置されていることが好ましい。
【0077】
第3焼灼電極は第1焼灼電極よりも表面積が小さいことが好ましい。また、第3焼灼電極は第2焼灼電極よりも表面積が小さいことが好ましい。
【0078】
各焼灼電極は第1導線(図示せず)に接続されており、第1導線は手元側まで延びて高周波発生器73に接続されている。高周波電界を印加することで焼灼電極を加熱することができる。焼灼電極と同様に、第1導線は絶縁材20に固定されていることが好ましい。高周波発生器73は電源回路や高周波発振回路を含んでいてもよい。焼灼電極と高周波発生器73の間にはインピーダンス整合回路が設けられてもよい。
【0079】
第1導線は、導電ワイヤなどの導電性の線状体、絶縁材20にプリントされた導電性物質、またはこれらを接続したものであってもよい。第1導線は、バルーン10の内面上、バルーン10と絶縁材20の間、または絶縁材20の外面上に配置することができる。第1導線は金属酸化物や金属の薄膜であってもよい。絶縁材20上に薄膜状の導線を形成する方法は、絶縁材20上に薄膜状の焼灼電極を形成する方法の説明を参照することができる。シャフト2においては、第1導線はシャフト2の外面上、内面上、外面と内面の間の肉厚部分、ルーメン内の少なくともいずれか1つに配置することができる。
【0080】
第1焼灼電極は対極板35との間で高周波電流が印加されてもよい。これにより、第1焼灼電極をモノポーラ電極として使用することができる。対極板と、第1焼灼電極、第2焼灼電極、第3焼灼電極の少なくともいずれかとの間で高周波電流が印加されてもよい。
【0081】
複数の第1焼灼電極のうち2つの第1焼灼電極の間に高周波電流が印加されることが好ましい。第1焼灼電極をバイポーラ電極として用いることができる。モノポーラに比べて電流を局所的に流すことができるため、非対象の組織の焼灼を防ぐことができる。同様の趣旨から、2つの第2焼灼電極の間、2つの第3焼灼電極の間、第1焼灼電極と第2焼灼電極の間、第1焼灼電極と第3焼灼電極の間、第2焼灼電極と第3焼灼電極の間の少なくともいずれかに高周波電流が印加されてもよい。
【0082】
バルーン10の折り畳みに好適な構成について説明する。
図5に示すように、5個の第1焼灼電極31A~31Eの少なくとも1つは、シャフト2の長手軸からバルーン10の半径方向の外方に延びている第1部分51と、第1部分51よりも厚さが厚い第2部分52と、を有していることが好ましい。第1部分51に沿って第1焼灼電極が折れ曲がりやすくなるため、バルーン10を折り畳むときに第1部分51をガイドとして機能させることができる。
【0083】
第1部分51は第2部分52よりも厚さが薄い部分であるが、第1部分51にも電極が存在している。第1焼灼電極のうち、第1部分51は第2部分52以外の全ての部分であることが好ましい。第1部分51の表面積は第2部分52の表面積よりも小さいことが好ましい。
【0084】
第1部分51の平均厚さは、第2部分52の平均厚さの3/4以下であることが好ましく、1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることが好ましい。また、第1部分51の平均厚さは、第2部分52の平均厚さの1/20以上、1/15以上、1/10以上であってもよい。
【0085】
図5に示すように5個の第1焼灼電極31A~31Eはそれぞれ第1部分51と第2部分52を有していることが好ましい。全ての第1焼灼電極31A~31Eにおいて、第1部分51に沿ってバルーン10を折り畳みやすくなる。シャフト2の長手軸周りにおいて、複数の第1部分51は等間隔に配されていることが好ましい。
【0086】
第1部分51の形状は特に限定されないが、例えば、線状または帯状であることが好ましい。第1部分51の形状は直線状であることがより好ましい。第1部分51は、第1辺41から第4辺44に向かって延在していることが好ましい。
【0087】
バルーン10の半径方向において、第1部分51の長さは、対向する第1辺41と第4辺44を最短距離で結ぶ直線の長さの半分以上であることが好ましく、2/3以上であることがより好ましく、3/4以上であることがさらに好ましい。また、第1部分51の長さは、上記直線の長さと等しくてもよく、上記直線の長さの9/10以下であってもよい。このように第1部分51の長さを設定することでバルーン10を折り畳みやすくなる。
【0088】
第1部分51は、第1焼灼電極の外縁と交差するように配されていることが好ましい。第1部分51は、第1焼灼電極の第1辺41と第4辺44と交差するように配されていることが好ましい。第1部分51は、第1焼灼電極の第1辺41の中点と第4辺44の中点と交差するように配されていることが好ましい。
【0089】
図6に示すように、5個の第1焼灼電極31A~31Eの少なくとも1つは、その第1焼灼電極の内側に電極が存在していない第3部分53を有し、第3部分53は、シャフト2の長手軸からバルーン10の半径方向の外方に延びていることが好ましい。第3部分53に沿って電極が折れ曲がりやすくなるため、バルーン10を折り畳むときに第3部分53をガイドとして機能させることができる。
【0090】
第3部分53は前述の第1部分とは異なり、電極が存在していない部分である。以下では、第1焼灼電極のうち第3部分53以外の電極が存在している部分を第4部分54と称する。第3部分53の表面積は、第4部分54の表面積よりも小さいことが好ましい。
【0091】
図6に示すように、5個の第1焼灼電極31A~31Eはそれぞれ第3部分53を有していることが好ましい。全ての第1焼灼電極31A~31Eにおいて、第3部分53に沿ってバルーン10を折り畳みやすくなる。シャフト2の長手軸周りにおいて、複数の第3部分53は等間隔に配されていることが好ましい。
【0092】
第3部分53から絶縁材20が露出していてもよい。また、第3部分53には絶縁材20が配置されていなくてもよい。その場合、第3部分53からバルーン10の外面11が露出していてもよい。
【0093】
第3部分53の形状は特に限定されないが、例えば、線状または帯状であることが好ましい。第3部分53の形状は直線状であることがより好ましい。第3部分53は、第1辺41から第4辺44に向かって延在していることが好ましい。
【0094】
図6に示すように、第3部分53は第1焼灼電極の外縁よりも内側に配されていることが好ましい。第4部分54の表面積を大きく確保することができ、また、第1焼灼電極の外縁に近い部分を用いて焼灼することができる。
【0095】
バルーン10の半径方向において、第3部分53の長さは、対向する第1辺41と第4辺44を最短距離で結ぶ直線の長さの半分以上であることが好ましく、2/3以上であることがより好ましく、3/4以上であることがさらに好ましい。また、第3部分53の長さは、上記直線の長さより短ければよく、上記直線の長さの9/10以下であってもよい。このように第3部分53の長さを設定することでバルーン10を折り畳みやすくなる。
【0096】
第3部分53は、第1焼灼電極の外縁と交差するように配されていてもよい。その場合、第3部分53は、第1焼灼電極の第1辺41と第4辺44のいずれかのみと交差するように配されていることが好ましい。第3部分53は、第1焼灼電極の第1辺41の中点と第4辺44の中点のいずれかのみと交差するように配されていることがより好ましい。
【0097】
図示していないが、5個の第1焼灼電極31A~31Eのうち少なくとも1つが第1部分51と第2部分52を有し、残りの第1焼灼電極が第3部分53と第4部分54を有していてもよい。
【0098】
図7~
図8に示すように、バルーン10は一または複数の折り目57を有していてもよい。
図7はバルーン10に絶縁材20が配置されていない例を示し、
図8はバルーン10に絶縁材20が配置され、絶縁材20の上に焼灼電極が配置されている例を示している。折り目57は、例えば、収縮状態のバルーン10に対して、折り畳み装置を用いること、またはバルーン10の折り目57を形成する部位を押さえた状態から収縮させること(プリーツ)などの方法によって付けられる。また、折り目57はプリーツされたバルーン10を拡張させた後、圧力流体を除去することにより自発的に収縮させてバルーン10を再度折り畳む(リラッピング)ときのガイドとしても機能する。折り目57が形成されていることでバルーン10を折り畳んだときの外径を小さくできる。
【0099】
折り目57は曲線状、例えばらせん状であってもよいが、直線状であることが好ましい。折り目57は、シャフト2の長手軸からバルーン10の半径方向の外方に延びていることが好ましい。折り目57は、シャフト2の長手軸方向に延びていてもよい。
【0100】
折り目57の数は第1焼灼電極の数より多くてもよいが、少なくてもよい。
【0101】
バルーン10が複数の折り目57を有している場合、
図7~
図8に示すように複数の折り目57のうち少なくとも1つは、シャフト2の長手軸からバルーン10の半径方向の外方に延びており、かつ長手軸周りにおいて隣り合う2つの第1焼灼電極(例えば、第1焼灼電極31Aと31B)の間に配されていることが好ましい。隣り合う2つの第1焼灼電極の間に折り目57が配されていることにより、第1焼灼電極を保護しながらバルーン10を効率よく折り畳むことができる。
【0102】
バルーン10を折り畳みやすくするために、折り目57は第1焼灼電極よりも近位側まで延在していてもよい。
【0103】
図7~
図8に示すように折り目57は、5個の第3焼灼電極33A~33Eの少なくとも1つと重なるように配されていてもよい。その場合、折り目57によって第3焼灼電極の表面積が二等分割されてもよい。
【0104】
折り目57は、5個の第1焼灼電極31A~31Eの少なくとも1つと重ならないように配されていてもよく、全ての第1焼灼電極31A~31Eと重ならないように配されていてもよい。また、折り目57は、5個の第2焼灼電極32A~32Eの少なくとも1つと重ならないように配されていてもよく、全ての第2焼灼電極32A~32Eと重ならないように配されていてもよい。その場合、折り目57によって第3焼灼電極の表面積が二等分割されてもよい。
【0105】
図8に示すように、折り目57が5個の第1焼灼電極31A~31Eの少なくとも1つと重なるように配されていてもよい。
図8に示すように、折り目57が5個の第2焼灼電極32A~32Eの少なくとも1つと重なるように配されていてもよい。
【0106】
図1~
図2に示すようにカテーテル1は絶縁材20を有していてもよい。絶縁材20は、焼灼電極をバルーン10に保持するために設けられるものであり、電気を通しにくい部材である。好ましくは、絶縁材20の上に第1焼灼電極が配置される。バルーン10の変形に追従させるために、絶縁材20は可撓性を有する材料から構成されることが好ましい。形状保持のため、絶縁材20は弾性を有していてもよい。
【0107】
図1~
図2では絶縁材20はバルーン10の外面11に配置されている。絶縁材20はバルーン10の一部のみに配置されており、バルーン10の全体には配置されていないことが好ましい。また、絶縁材20はバルーン10の一部のみに固定されており、バルーン10の外面11の全体には固定されていないことが好ましい。絶縁材20を部分的に設けることでバルーン10の柔軟性が確保される。絶縁材20はバルーン10の外面11に配されるコーティングやプリントを兼ねていてもよい。
【0108】
絶縁材20はバルーン10の外面11に固定されていることが好ましく、バルーン10の拡張可能部14の外面11に固定されていることがより好ましい。絶縁材20は、バルーン10の外面11に直接接合されていてもよく、他の部材を介して間接的に接合されていてもよい。絶縁材20は、溶着または接着剤による接着等の方法でバルーン10の外面11に固定することができる。
【0109】
絶縁材20は樹脂から構成されていることが好ましい。絶縁材20の電気絶縁性を確保できるとともにバルーン10に固定しやすくなる。絶縁材20を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。なお、絶縁材20はゴムまたはエラストマーから構成されていてもよい。
【0110】
絶縁材20の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。絶縁材20の形状は、焼灼電極の形状と相似であることが好ましい。ここで絶縁材20の形状とはバルーン10を膨張させたときに視認できる形状を指すものとする。
【0111】
絶縁材20に焼灼電極を固定しやすくするために、焼灼電極の外縁は、絶縁材20の外縁よりも内側に位置していてもよい。また、絶縁材20の広範囲に焼灼電極を配置するために、焼灼電極の外縁の一部が絶縁材20と重なっていてもよく、焼灼電極の外縁の全体が絶縁材20と重なっていてもよい。
【0112】
1つのバルーン10には絶縁材20が1つのみ配置されてもよいが、複数の絶縁材20が配置されることが好ましい。各絶縁材20に焼灼電極を1つずつ配置することができる。複数の絶縁材20は、バルーン10上であって、シャフト2の長手軸周りに並べられていることが好ましい。また、複数の絶縁材20は等間隔に配置されていることがさらに好ましい。
【0113】
複数の絶縁材20の厚さは互いに異なっていてもよいが、それぞれ同じであることが好ましい。各絶縁材20に配置されている焼灼電極を対象組織に同程度に接触させやすくなる。
【0114】
複数の絶縁材20を構成する材料は互いに異なっていてもよいが、手技中のバルーン10の変形度合いを管理しやすくするためにはそれぞれ同じであることが好ましい。
【0115】
1つのバルーン10が複数の絶縁材20を有している場合、複数の絶縁材20の形状はそれぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、第1の形状を有する絶縁材20と、第1の形状とは異なる第2の形状を有する絶縁材20とが、長手軸方向xまたはバルーン10の周方向に並んでいてもよい。
【0116】
折り目57は、絶縁材20と重なるように配されていてもよい。折り目57はまた、シャフト2の長手軸周りにおいて隣り合う2つの絶縁材20の外縁と重なるように配されていてもよい。
【0117】
1つの絶縁材20は全体が同じ厚さを有していてもよく、部分毎に異なる厚さを有していてもよい。
図8に示すように絶縁材20上に第1焼灼電極(例えば第1焼灼電極31A)が配置されている場合、バルーン10の折り目57の位置での絶縁材20の厚さは、折り目57以外の位置での絶縁材20の厚さよりも薄いことが好ましい。このように絶縁材20の厚さを調整することによって、バルーン10を折り畳みやすくなる。
【0118】
折り目57の位置での絶縁材20の平均厚さは、折り目57以外の位置での絶縁材20の平均厚さの3/4以下であることが好ましく、1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることが好ましい。また、折り目57の位置での絶縁材20の平均厚さは、折り目57以外の位置での絶縁材20の平均厚さの1/20以上、1/15以上、1/10以上であってもよい。
【0119】
絶縁材20は可撓性基材であってもよい。可撓性基材としては、樹脂フィルムや樹脂シートを挙げることができる。可撓性基材はバルーン10の変形に追従しやすいため、焼灼電極を対象組織に接触させやすくなる。
【0120】
可撓性基材は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。可撓性基材は焼灼電極よりも薄くてもよいが、バルーン10に第1焼灼電極を保持しやすくするためには、可撓性基材は第1焼灼電極よりも厚いことが好ましい。
【0121】
図1~
図7では、シャフト2の長手軸周りにおいて隣り合う2つの絶縁材20が接している例を示した。
図9に示すように、シャフト2の長手軸周りにおいて隣り合う2つの絶縁材20が離れて配置されていてもよい。隣り合う絶縁材20同士の隙間に沿ってバルーン10を折り畳みやすくなる。また、
図9に示すように折り目57はシャフト2の長手軸周りにおいて隣り合う2つの絶縁材20の間に配されていてもよい。
【0122】
図7~
図8に示すように、カテーテル1は対象組織のインピーダンスを測定するための測定電極60を有していてもよい。例えばカテーテル1に好ましく設けられる参照電極と測定電極60との電位差を測定することで生体電位を取得することができる。取得した生体電位を用いることでインピーダンスの測定が可能であり、これにより測定電極60と対象組織の接触状態を検出することができる。この検出結果から、焼灼電極と対象組織の具体的な接触状態、例えば焼灼電極のどの部分が接触しているかを把握することができる。
【0123】
カテーテル1は、一または複数の測定電極60を有していることが好ましく、複数の測定電極60を有していることがより好ましい。複数の測定電極60は、測定に際してそれぞれ絶縁されていることが必要である。したがって、各測定電極60は焼灼電極から離れて配置されていることが好ましい。
【0124】
測定電極60としては、金属酸化物や金属の薄膜を用いることができる。測定電極60がバルーンの変形に追従しやすくなる。
【0125】
測定電極60は、焼灼電極が配置されている絶縁材20上に配置されていてもよく、焼灼電極を配置する絶縁材20とは別の、測定電極60を配置するための絶縁材上に配置されていてもよい。
【0126】
測定電極60は絶縁材20に固定されていることが好ましい。測定電極60を絶縁材20上に固定する方法、厚さ、構成材料、形状については、焼灼電極のこれらの説明を参照することができる。測定電極60はバルーン10の外面11に固定されていてもよい。
【0127】
測定電極60は、焼灼電極よりも表面積が小さいことが好ましい。測定電極60は、焼灼電極の周囲に配置されることが好ましい。測定電極60は、焼灼電極の頂点に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0128】
測定電極60の形状は特に限定されず、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。
図7~
図8では測定電極60が円形状である例を示した。
【0129】
測定電極60は第2導線(図示せず)に接続されており、第2導線は手元側まで延びて測定部75に接続されていることが好ましい。これにより測定電極60で測定された生体電位の信号を測定部へ送ることができる。測定部75によって測定電極60と焼灼電極の間、2つの測定電極60の間、または測定電極60と対極板35の間のインピーダンスを測定することができる。第2導線の構成やシャフト2への配置は第1導線の説明を参照することができる。
【0130】
図7に示すようにバルーン10が折り目57を有している場合、折り目57上に、第1焼灼電極(例えば第1焼灼電極31A)よりも表面積が小さく、インピーダンスを測定するための測定電極60が配置されていることが好ましい。折り目57は第1焼灼電極の近くに配されるため、折り目57上に測定電極60を配置することで対象組織への第1焼灼電極の接触状態を適切に判別することができる。
【0131】
次に第2の実施態様に係るカテーテル1について説明する。第1の実施態様に係るカテーテル1と同様の構成については説明を省略する。
図10に示したカテーテルでは、10個の第1焼灼電極31A~31Jがバルーン10上に配置されている。10個の第1焼灼電極31A~31Jはそれぞれ五角形状を有し、10個の第1焼灼電極31A~31Jはシャフト2の長手軸周りに並べられている。このカテーテル1によれば、特定の形状を有する10個の第1焼灼電極31A~31Jがシャフト2の長手軸周りに並べられていることにより、シャフト2の長手軸周りに延在している対象組織を一斉に焼灼することができるため、手技の効率化が図られる。
【0132】
図10に示すように10個の第1焼灼電極31A~31Jはそれぞれ五角形状を有しているが、正五角形状である必要はない。
【0133】
10個の第1焼灼電極31A~31Jは互いに異なる形状を有していてもよいが、それぞれ同じ形状を有していることが好ましい。中でも、10個の第1焼灼電極31A~31Jは互いに合同な五角形状であることがより好ましい。第1焼灼電極がこのような形状を有することでバルーン10の外面11にバランスよく配置しやすくなるため、対象組織に対して効率よく焼灼を行うことができる。
【0134】
シャフト2の長手軸周りにおいて、10個の第1焼灼電極31A~31Jは互いに離れて配置されていることが好ましい。
【0135】
シャフト2の長手軸周りにおいて、10個の第1焼灼電極31A~31Jのうち隣り合う2つは、五角形の頂点が反対方向を向いていることが好ましい。例えば、第1焼灼電極31Aの第2辺42と第3辺43に挟まれている頂点は、第1焼灼電極31Bの第4辺44と第5辺45に挟まれている頂点と反対方向を向いている。
【0136】
図1および
図10から理解できるように、10個の第1焼灼電極31A~31Jは、バルーン10の遠位端よりも近位側に配置されていることが好ましく、バルーン10の拡張可能部14の遠位端よりも近位側に配置されていることがより好ましい。すなわち、バルーン10の最遠位端には焼灼電極が配置されていないことが好ましい。
【0137】
図10では、10個の第1焼灼電極31A~31Jが、直線状の第1辺41、第2辺42、第3辺43、第4辺44、第5辺45を有している。シャフト2を遠位側から見て、時計回りに第1辺41~第5辺45が順に並んでいる。バルーン10の半径方向において対向している2つの辺が平行であることが好ましい。例えば第1焼灼電極31Aでは第1辺41と第4辺44が平行である。
【0138】
図10に示すようにシャフト2を遠位側から見たときに、最もシャフト2に近い位置にある辺がバルーン10の半径方向に垂直な方向に延在していることが好ましい。
図10では第1辺41が最もシャフト2に近い位置にある。10個の第1辺41がシャフト2の長手軸周りに並べられていることにより、シャフト2の遠位側から見て、バルーン10には焼灼電極が存在しない五角形状の第1領域17が形成されていてもよい。
【0139】
シャフト2を遠位側から見たときに、第1焼灼電極の少なくとも1つの辺がバルーン10の半径方向に延在していることが好ましく、複数の辺がバルーン10の半径方向に延在していることがより好ましい。
図10では、第1焼灼電極31Aの第2辺42と第5辺45がバルーン10の半径方向に延在している。
【0140】
図1および
図10から理解できるように、10個の第1焼灼電極31A~31Jはバルーン10の拡張可能部14の最大外径位置141よりも遠位側に配置されていることが好ましい。第1焼灼電極がバルーンカテーテル10の進行方向を向くため、第1焼灼電極を対象組織に接触させやすくなる。なお、
図3と同様に、10個の第1焼灼電極31A~31Jは最大外径位置141よりも近位側に配置されていてもよい。
【0141】
10個の第1焼灼電極31A~31Jは個別に通電されることが好ましい。他方、10個の第1焼灼電極31A~31Jのうち隣り合う2つは、10個の第1焼灼電極31A~31Jよりも近位側で互いに電気的に接続されていてもよい。詳細には、10個の第1焼灼電極31A~31Jが2つずつ電気的に接続されることによって、仮想的に5個の電極として機能させてもよい。このように2つの第1焼灼電極を接続することで、一度に複数の電極の通電を制御しやすくなるため、効率よく焼灼を行うことができる。例えば、第1焼灼電極31Aと31Bが接続され、第1焼灼電極31Cと31Dが接続され、第1焼灼電極31Eと31Fが接続され、第1焼灼電極31Gと31Hが接続され、第1焼灼電極31Iと31Jが接続されてもよい。
【0142】
図11~
図12に示すように、バルーン10の表面の第1焼灼電極31A~31Jよりも近位側には、五角形状の2個の第2焼灼電極と四角形状の2個の第3焼灼電極が、シャフト2の長手軸周りに交互に合計20個並べられていることが好ましい。第2焼灼電極と第3焼灼電極に高周波電流が通電されることによって、対象組織を焼灼することができる。このように特定の形状を有する第2焼灼電極と第3焼灼電極がシャフト2の長手軸周りに並べられていることにより、シャフト2の長手軸周りに延在している対象組織のさらに広範囲を一斉に焼灼することができるようになる。
【0143】
図11~
図12に示したカテーテル1は、10個の第2焼灼電極32A~32Jと、10個の第3焼灼電極33A~33Jを有している。
図11では、時計周りに、電極32A、32B、33A、33B、32C、32D、33C、33D、32E、32F、33E、33F、32G、32H、33G、33H、32I、32J、33I、33Jの順に並べられている。
【0144】
シャフト2の長手軸周りにおいて、隣り合う2つの第2焼灼電極(例えば、第2焼灼電極32Aと32B)は互いに離れて配置されていることが好ましい。また、シャフト2の長手軸周りにおいて、隣り合う2つの第3焼灼電極(例えば、第3焼灼電極33Aと33B)は互いに離れて配置されていることが好ましい。シャフト2の長手軸周りにおいて、隣り合う第2焼灼電極と第3焼灼電極(例えば、第2焼灼電極32Bと第3焼灼電極33A)は互いに離れて配置されていることが好ましい。
【0145】
シャフト2を遠位側から見たときに、バルーン10の半径方向において、隣り合う第1焼灼電極と第2焼灼電極(例えば第1焼灼電極31Aと第2焼灼電極32A)は互いに離れて配置されていることが好ましい。シャフト2を遠位側から見たときに、バルーン10の半径方向において、隣り合う第1焼灼電極と第3焼灼電極(例えば第1焼灼電極31Bと第3焼灼電極33A)は互いに離れて配置されていることが好ましい。
【0146】
10個の第2焼灼電極32A~32Jはそれぞれ五角形状を有しているが、正五角形状である必要はない。
【0147】
10個の第2焼灼電極32A~32Jは互いに異なる形状を有していてもよいが、それぞれ同じ形状を有していることが好ましい。中でも、10個の第2焼灼電極32A~32Jは互いに合同な五角形状であることがより好ましい。第2焼灼電極がこのような形状を有することで、第1焼灼電極とともにバルーン10の外面11にバランスよく配置しやすくなるため、対象組織に対して効率よく焼灼を行うことができる。
【0148】
10個の第1焼灼電極31A~31Jと10個の第2焼灼電極32A~32Jは、互いに合同な五角形状であることが好ましい。
【0149】
第1焼灼電極と同様に、10個の第2焼灼電極32A~32Jはそれぞれ5つの直線状の辺を有していることが好ましい。
図11から理解できるように、各第2焼灼電極が第1辺~第5辺を有していることが好ましい。
【0150】
隣り合う2つの第2焼灼電極(例えば第2焼灼電極32Aと32B)は互いに平行な辺を有していることが好ましい。
【0151】
10個の第3焼灼電極33A~33Jはそれぞれ四角形状を有しているが、正四角形状である必要はない。本発明における四角形状とは、頂点が丸まっていることにより、外接する四角形よりも面積が10%以内小さいものを含むものである。
【0152】
10個の第3焼灼電極33A~33Jは互いに異なる形状を有していてもよいが、それぞれ同じ形状を有していることが好ましい。中でも、10個の第3焼灼電極33A~33Jは互いに合同な四角形状であることがより好ましい。第3焼灼電極がこのような形状を有していることにより、第1焼灼電極と第2焼灼電極によって形成された隙間を埋めるように第3焼灼電極が配されるため、対象組織の広範囲を効率よく焼灼することができる。
【0153】
10個の第3焼灼電極33A~33Jはそれぞれ4個の直線状の辺を有していることが好ましい。
図11に示すように、10個の第3焼灼電極33A~33Jの一つの頂点が、シャフト2の遠位側を向いていることが好ましい。シャフト2の長手軸周りにおいて、遠位側を向いている頂点が、隣り合う2つの第1焼灼電極の間に位置していることが好ましい。
【0154】
図11に示すように、1つの絶縁材20に複数の第1焼灼電極(例えば、第1焼灼電極31Aと31B)が配置されていてもよい。同様に、1つの絶縁材20に複数の第2焼灼電極(例えば、第2焼灼電極32Aと32B)が配置されていてもよく、1つの絶縁材20に複数の第3焼灼電極(例えば、第3焼灼電極33Aと33B)が配置されていてもよい。
【0155】
図12に示すように、1つの絶縁材20に1つの第1焼灼電極が配置されていてもよい。同様に、1つの絶縁材20に1つの第2焼灼電極が配置されていてもよく、1つの絶縁材20に1つの第3焼灼電極が配置されていてもよい。
【0156】
図13に示すように、複数の折り目57のうち少なくとも1つは、シャフト2の長手軸からバルーン10の半径方向の外方に延びており、かつ長手軸周りにおいて隣り合う2つの第2焼灼電極(例えば、第2焼灼電極32Aと32B)の間に配されていることが好ましい。また、複数の折り目57のうち少なくとも1つは、シャフト2の長手軸からバルーン10の半径方向の外方に延びており、かつ長手軸周りにおいて隣り合う2つの第3焼灼電極(例えば、第3焼灼電極33Aと33B)の間に配されていることが好ましい。
【0157】
バルーン10を折り畳みやすくするために、バルーン10の折り目57の位置での絶縁材20の厚さは、折り目57以外の位置での絶縁材20の厚さよりも薄くてもよい。
【0158】
2.バルーンカテーテルシステム
本発明は、バルーンカテーテル1を含むバルーンカテーテルシステム100も提供する。以下では、バルーンカテーテルシステムを単にシステムと称することがある。
図14は、
図1または
図10に示したカテーテル1を含むシステム100のブロック図である。
図15~
図16は、
図14に示したバルーンカテーテルシステムの変形例を示すブロック図である。カテーテル1の構成は、「1.バルーンカテーテル」の説明を参照することができる。
【0159】
図1および
図14に示すように、システム100は、5個の第1焼灼電極31A~31Eまたは10個の第1焼灼電極31A~31Jを有するカテーテル1と、患者の体表面に設けられ、第1焼灼電極との間で高周波電流が印加される対極板35と、を有することが好ましい。これにより、第1焼灼電極をモノポーラ電極として使用することができる。
【0160】
対極板35としては、患者の体表面に貼り付け可能な電極パッドが挙げられる。電極パッドは、例えば、導電層と、導電層上に配される粘着ゲル層またはソリッドゲル層とを有する。対極板35の導電層を構成する材料の説明は、第1焼灼電極を構成する材料の説明を参照することができる。
【0161】
図14に示すように、対極板35は、第1焼灼電極と対極板35との通電を制御する制御部74に接続されていることが好ましい。
【0162】
図4および
図15に示すように、システム100は、少なくとも5個の第1焼灼電極31A~31Eと5個の第2焼灼電極32A~32Eと5個の第3焼灼電極33A~33Eを有するカテーテル1と、5個の第1焼灼電極31A~31E、5個の第2焼灼電極32A~32Eおよび5個の第3焼灼電極33A~33Eに接続されており、焼灼電極と生体組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部74と、を有することが好ましい。その場合、制御部74は、5個の第1焼灼電極31A~31Eのうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、少なくとも1つの第1焼灼電極と隣り合って配されている第2焼灼電極と第3焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されていることが好ましい。第1焼灼電極が生体組織と所定の接触をしていない場合でも、その第1焼灼電極と近い位置にある第2焼灼電極や第3焼灼電極を用いて焼灼を行うことができるため、対象組織の広範囲を一斉に焼灼することができる。
【0163】
例えば、第1焼灼電極31Aが生体組織と所定の接触していないと制御部74が判別したときに、第2焼灼電極32A、第3焼灼電極33A、第3焼灼電極33Eの少なくともいずれか1つを通電させるように構成されていることが好ましい。
【0164】
複数の焼灼電極を通電させる順序は特に限定されない。制御部74では、5個の第1焼灼電極31A~31Eの少なくとも1つに通電させた後、5個の第2焼灼電極32A~32Eの少なくとも1つに通電させるように構成されていてもよい。制御部74では、5個の第2焼灼電極32A~32Eの少なくとも1つに通電させた後、5個の第1焼灼電極31A~31Eの少なくとも1つに通電させるように構成されていてもよい。制御部74では、5個の第1焼灼電極31A~31Eの少なくとも1つに通電させた後、5個の第3焼灼電極33A~33Eの少なくとも1つに通電させるように構成されていてもよい。制御部74では、5個の第2焼灼電極32A~32Eの少なくとも1つに通電させた後、5個の第3焼灼電極33A~33Eの少なくとも1つに通電させるように構成されていてもよい。
【0165】
制御部74は、5個の第2焼灼電極32A~32Eのうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、少なくとも1つの第2焼灼電極と隣り合って配されている第1焼灼電極と第3焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されていてもよい。例えば、第2焼灼電極32Aが生体組織と所定の接触していないと制御部74が判別したときに、第1焼灼電極31A、第3焼灼電極33A、第3焼灼電極33Eの少なくともいずれか1つを通電させるように構成されていることが好ましい。
【0166】
制御部74は、5個の第3焼灼電極33A~33Eのうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、少なくとも1つの第3焼灼電極と隣り合って配されている第1焼灼電極と第2焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されていてもよい。例えば、第3焼灼電極33Aが生体組織と所定の接触していないと制御部74が判別したときに、第1焼灼電極31A、31B、第2焼灼電極32A、32Bの少なくともいずれか1つを通電させるように構成されていることが好ましい。
【0167】
図11および
図16に示すように、システム100は、少なくとも10個の第1焼灼電極31A~31Jと10個の第2焼灼電極32A~32Jと10個の第3焼灼電極33A~33Jを有するカテーテル1と、10個の第1焼灼電極31A~31J、10個の第2焼灼電極32A~32Jおよび10個の第3焼灼電極33A~33Jに接続されており、焼灼電極と生体組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部74と、を有していてもよい。その場合、制御部74は、10個の第1焼灼電極のうち少なくとも1つが生体組織と所定の接触をしていないと判別したときに、少なくとも1つの第1焼灼電極と隣り合って配されている第2焼灼電極と第3焼灼電極の少なくともいずれかを通電させるように構成されていることが好ましい。第1焼灼電極が生体組織と所定の接触をしていない場合でも、その第1焼灼電極と近い位置にある第2焼灼電極や第3焼灼電極を用いて焼灼を行うことができるため、対象組織の広範囲を一斉に焼灼することができる。
【0168】
例えば、第1焼灼電極31Aが生体組織と所定の接触していないと制御部74が判別したときに、第2焼灼電極32A、第3焼灼電極33Jの少なくともいずれか1つを通電させるように構成されていることが好ましい。
【0169】
図14~
図16に示すように制御部74は、一または複数の測定電極60に接続されていることが好ましい。制御部74は、後述する測定部75を介して測定電極60に接続されていてもよい。制御部74は、測定電極60と対象組織との接触状態の判別結果を用いて、第1焼灼電極、第2焼灼電極、第3焼灼電極のうち少なくとも1つが対象組織と所定の接触をしているか否かを判別することが好ましい。術者は対象組織に対する焼灼電極の接触の程度を把握することができるため、手技の効率化が図られる。
【0170】
システム100は、第1焼灼電極、第2焼灼電極、第3焼灼電極の少なくともいずれかと一または複数の測定電極60のうちの1つの間のインピーダンス(第1のインピーダンス)、複数の測定電極60のうち一の測定電極60と他の測定電極60の間のインピーダンス(第2のインピーダンス)、一または複数の測定電極60のうちの1つと対極板35との間のインピーダンス(第3のインピーダンス)の少なくともいずれかを測定する測定部75を有していてもよい。
【0171】
第1のインピーダンスは、生体に所定の大きさの交流電流を流したときに一または複数の測定電極60と、第1焼灼電極、第2焼灼電極、第3焼灼電極の少なくともいずれかで測定された生体電位に基づき測定することができる。第2のインピーダンスは複数の測定電極で測定された生体電位、第3のインピーダンスは測定電極60と対極板35で測定された生体電位に基づき測定することができる。
【0172】
測定部75としては、LCRメータ等のインピーダンス測定器を用いることができる。測定部75は、生体信号を増幅する増幅器、アナログディジタル変換器、雑音除去のためのフィルタ等を含むことができる。
【0173】
図14~
図16に示すように、5個または10個の第1焼灼電極が対象組織に所定の接触をしているか否かの判別を行うために、システム100は、制御部74に接続されておりかつ測定電極60によって測定されたインピーダンスと基準値との比較を行う処理部76を有していてもよい。例えば、測定されたインピーダンスが基準値以下である場合に、当該測定電極60が対象組織と接触したと判別することができる。測定されたインピーダンスが基準値を超える場合、当該測定電極60が対象組織と接触していないと判別することができる。処理部76では、上記比較以外の処理、例えば雑音除去のためのフィルタ処理を行ってもよい。
【0174】
処理部76で用いられる基準値は、予めシステム100内に格納されていてもよく、記録媒体等によってシステム100に供給されてもよい。
【0175】
システム100が備える少なくともいずれか1つの機能、例えば、制御部74や処理部76の機能は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアによって実現されてもよい。ハードウェアとしては、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路に形成された論理回路を挙げることができる。
【0176】
システム100は、制御部74および処理部76の少なくともいずれか1つの機能を実現するためのソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えていてもよい。コンピュータは、プロセッサと、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えていることが好ましい。プロセッサがコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されたプログラムを実行することによって、上記機能が実現される。プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)を用いることができる。記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)等を用いることができる。また、記録媒体には、RAM(Random Access Memory)を含むこともできる。上記プログラムは、このプログラムを伝送可能な任意の伝送媒体を介して上記コンピュータに供給されてもよい。伝送媒体としては、通信ネットワークや通信回線等が挙げられる。
【符号の説明】
【0177】
1:バルーンカテーテル
2:シャフト
10:バルーン
20:絶縁材
31A~31J:第1焼灼電極
32A~32J:第2焼灼電極
33A~33J:第3焼灼電極
51:第1部分
52:第2部分
53:第3部分
54:第4部分
57:折り目
60:測定電極
71:操作部
72:流体供給器
73:高周波発生器
74:制御部
75:測定部
76:処理部
100:バルーンカテーテルシステム