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特開2023-67551車両用サンシェード及び車両用サンシェードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067551
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】車両用サンシェード及び車両用サンシェードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/00 20060101AFI20230509BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20230509BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20230509BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B60J7/00 C
B32B3/12 Z
B32B27/10
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178920
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000100780
【氏名又は名称】アイシン化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本村 将太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】中島 領平
(72)【発明者】
【氏名】大平 隆行
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01E
4F100AK53B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100DC01A
4F100DG10A
4F100DG10D
4F100GB33
4F100JA06
4F100JB13B
4F100JK07
(57)【要約】
【課題】強度を確保しつつ構造を簡素化できる車両用サンシェード及び車両用サンシェードの製造方法を提供する。
【解決手段】サンシェード50は、紙製のハニカムシート101と、ハニカムシート101を被覆する被覆部102と、を有する基材層100と、外装を構成する表皮層150と、を備える。被覆部102は、熱硬化性樹脂によって構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた採光部から前記車両の室内に入る光を遮る車両用サンシェードであって、
紙製のハニカムシートと、前記ハニカムシートを被覆する被覆部と、を有する基材層と、
外装を構成する表皮層と、を備え、
前記被覆部は、熱硬化性樹脂によって構成される
車両用サンシェード。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である
請求項1に記載の車両用サンシェード。
【請求項3】
前記基材層において、厚さ方向と交差する一方の面を第1面とし、前記第1面とは反対側の面を第2面としたとき、
前記基材層の前記第1面に接合される第1耐水層と、
前記基材層の前記第2面に接合される第2耐水層と、を備える
請求項1又は請求項2に記載の車両用サンシェード。
【請求項4】
前記第1耐水層は、基紙と、前記基紙の片面を覆う樹脂被膜と、を有し、
前記基材層は、前記第1耐水層の前記基紙に接合される
請求項3に記載の車両用サンシェード。
【請求項5】
前記第1耐水層の前記樹脂被膜は、熱可塑性樹脂によって構成され、
前記表皮層は、前記第1耐水層の前記樹脂被膜に接合される
請求項4に記載の車両用サンシェード。
【請求項6】
紙製のハニカムシートに液状の熱硬化性樹脂を塗布する塗布工程と、
前記ハニカムシートに塗布した前記熱硬化性樹脂を硬化させることにより基材層を成形する成形工程と、
車両用サンシェードの外装を構成する表皮層を前記基材層に積層する積層工程と、を備える
車両用サンシェードの製造方法。
【請求項7】
前記塗布工程は、前記ハニカムシートに液状の前記熱硬化性樹脂をスプレー塗布する工程であり、
スプレー塗布される液状の前記熱硬化性樹脂は、液状のエポキシ樹脂と硬化剤とグリコール系の希釈剤とを含み、粘度が30Pa・s以下である
請求項6に記載の車両用サンシェードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サンシェード及び車両用サンシェードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の天窓を塞ぐ位置と車両の天窓を開放する位置との間を変位するサンシェードが記載されている。サンシェードは、発泡ウレタン層、ガラス繊維マット、接着フィルム、表皮材及び裏材などを積層した積層体を加熱しながら加圧することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-537582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなサンシェードは、強度を確保しつつ構造を簡素化する点で改善の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用サンシェードは、車両に設けられた採光部から前記車両の室内に入る光を遮る車両用サンシェードであって、紙製のハニカムシートと、前記ハニカムシートを被覆する被覆部と、を有する基材層と、外装を構成する表皮層と、を備え、前記被覆部は、熱硬化性樹脂によって構成される。
【0006】
車両用サンシェードは、ハニカムシートを熱硬化性樹脂で被覆した基材層を備える。このため、車両用サンシェードは、基材層単体で強度を確保できる。言い換えれば、車両用サンシェードは、強度を確保するために、基材層にガラス繊維のシートなどを積層しなくてもよくなる。この点で、車両用サンシェードは、強度を確保しつつ構造を簡素化できる。
【0007】
車両用サンシェードにおいて、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
車両用サンシェードは、他の熱硬化性樹脂を用いる場合と比較して、基材層の強度を高めやすくなる。
【0008】
前記基材層において、厚さ方向と交差する一方の面を第1面とし、前記第1面とは反対側の面を第2面としたとき、前記基材層の前記第1面に接合される第1耐水層と、前記基材層の前記第2面に接合される第2耐水層と、を備えることが好ましい。
【0009】
車両用サンシェードは、基材層が厚さ方向において第1耐水層及び第2耐水層に覆われている。このため、車両用サンシェードは、高湿な環境で使用されたとしても、水分によって基材層の経年劣化が進むことを抑制できる。
【0010】
前記第1耐水層は、基紙と、前記基紙の片面を覆う樹脂被膜と、を有し、前記基材層は、前記第1耐水層の前記基紙に接合されることが好ましい。
第1耐水層は、基紙と基紙の片面を覆う樹脂被膜とを有する簡素な構成のため、軽量かつ安価に構成できる。
【0011】
前記第1耐水層の前記樹脂被膜は、熱可塑性樹脂によって構成され、前記表皮層は、前記第1耐水層の前記樹脂被膜に接合されることが好ましい。
第1耐水層を加熱すると、第1耐水層の樹脂被膜が溶融する。このため、第1耐水層に重ねた表皮層を加熱した後に冷却することにより、表皮層は第1耐水層に接合される。つまり、車両用サンシェードは、別途に接着剤を用いなくても、第1耐水層に表皮層を接合可能である。
【0012】
上記課題を解決する車両用サンシェードの製造方法は、紙製のハニカムシートに液状の熱硬化性樹脂を塗布する塗布工程と、前記ハニカムシートに塗布した前記熱硬化性樹脂を硬化させることにより基材層を成形する成形工程と、車両用サンシェードの外装を構成する表皮層を前記基材層に積層する積層工程と、を備える。
【0013】
車両用サンシェードの製造方法は、上述した車両用サンシェードの作用効果と同等の作用効果を得ることができる。
車両用サンシェードの製造方法において、前記塗布工程は、前記ハニカムシートに液状の前記熱硬化性樹脂をスプレー塗布する工程であり、スプレー塗布される液状の前記熱硬化性樹脂は、液状のエポキシ樹脂と硬化剤とグリコール系の希釈剤とを含み、粘度が30Pa・s以下であることが好ましい。
【0014】
車両用サンシェードの製造方法は、液状の硬化性樹脂をハニカムシートにスプレー塗布することにより、液状の硬化性樹脂をハニカムシートに均一に塗布できる。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、車両用サンシェードの強度を確保しつつ構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、車両のルーフの斜視図である。
図2図2は、車両のルーフに設置されるサンシェード装置の斜視図である。
図3図3は、サンシェード装置のシェードパネルの積層構造を示す模式図である。
図4図4は、サンシェード装置のサンシェードの製造方法を示す工程図である。
図5図5は、サンシェードの製造方法の工程の一部を説明する模式図である。
図6図6は、サンシェードの製造方法の工程の一部を説明する模式図である。
図7図7は、サンシェードの製造方法の工程の一部を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、車両用サンシェード及び車両用サンシェードの製造方法について説明する。
<車両10>
図1に示すように、車両10は、車体20と、サンシェード装置30と、を備える。
【0018】
<車体20>
車体20は、開口部21が設けられるルーフ22と、開口部21を塞ぐガラスパネル23と、を有する。ルーフ22は、車体20の天井を構成する部位である。開口部21は、幅方向を長手方向とし前後方向を短手方向とする矩形状をなしている。開口部21は、幅方向を短手方向とし前後方向を長手方向とする矩形状とすることもできるし、円形状とすることもできる。本実施形態において、ガラスパネル23は固定パネルであるが、他の実施形態において、ガラスパネル23は可動パネルとすることもできる。ガラスパネル23は、室内に光を採り込むための「採光部」の一例に相当している。この点で、ガラスパネル23は、透明な樹脂パネルであってもよい。
【0019】
<サンシェード装置30>
図2に示すように、サンシェード装置30は、開口部21の両側で前後方向に延びる2つのガイドレール40と、ガラスパネル23を介して車両10の室内に入る光を遮るサンシェード50と、を有する。
【0020】
2つガイドレール40は、車体20に固定されている。ガイドレール40は、長手方向に対して一定の断面形状を有することが好ましい。ガイドレール40は、例えば、アルミニウムなどの軽量かつ高剛性の金属材料によって構成されることが好ましい。
【0021】
サンシェード50は、パネル状をなすシェードパネル51と、シェードパネル51の幅方向における両端部に装着される複数の摺動部品52と、シェードパネル51の前端部に装着される取っ手53と、を有する。
【0022】
シェードパネル51は、平板状をなすパネル本体511と、摺動部品52が装着される複数の第1装着部512と、取っ手53が装着される第2装着部513と、を有する。複数の第1装着部512は、パネル本体511の幅方向における両端部に位置している。本実施形態では、パネル本体511の幅方向における両側において、2つの第1装着部512が前後方向に間隔をあけて位置している。第2装着部513は、パネル本体511の幅方向における中央部であって、パネル本体511の前端部に位置している。
【0023】
図1及び図2に示すように、サンシェード50は、2つのガイドレール40に両端部が支持される。そして、サンシェード50は、2つのガイドレール40と摺動することにより、2つのガイドレール40の長手方向に移動する。詳しくは、サンシェード50は、ガラスパネル23を介して車内に光が入らないようにする遮光位置と、ガラスパネル23を介して車内に光が入ることを許容する全開位置と、の間を前後方向に移動する。
【0024】
<シェードパネル51の積層構造>
図3を参照して、シェードパネル51の積層構造について説明する。図3に示すシェードパネル51は、図2に示すシェードパネル51よりも単純化して図示している。
【0025】
図3に示すように、シェードパネル51は、複数の層を含んで構成されている。シェードパネル51は、複数の層として、基材層100と、第1中間層110及び第2中間層120と、第1耐水層130及び第2耐水層140と、表皮層150と、を備える。
【0026】
基材層100は、紙製のハニカムシート101と、ハニカムシート101を被覆する被覆部102と、を有する。
ハニカムシート101は、紙製である点で、液体を吸収できる材質であるといえる。ハニカムシート101は、いわゆるハニカムコアであるため、ハニカムシート101の上面及び下面には、無数の孔が規則的に開口している。本実施形態において、ハニカムシート101は、無数の六角柱状の筒体を隙間なく並べた構造を取っている。他の実施形態において、ハニカムシート101は、無数の円柱状の筒体を隙間なく並べた構造を取っていてもよいし、無数の多角柱状の筒体を隙間なく並べた構造を取っていてもよい。
【0027】
被覆部102は、基材層100を被覆している。被覆部102は、熱硬化性樹脂によって構成されている。熱硬化性樹脂は、単体で硬化した状態において、線形変形領域の曲げ弾性率が2.7GPa以上であることが好ましい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂である。基材層100は、被覆部102でハニカムシート101が被覆されることにより、熱硬化性樹脂によってハニカム構造が構成されている。つまり、ハニカムシート101の無数の孔が熱硬化性樹脂で埋められているわけではない。こうして、基材層100は、強度を確保しつつ軽量に構成されている。以降の説明では、基材層100の厚さ方向と交差する一方の面を第1面S1といい、第1面S1とは反対側の面を第2面S2という。
【0028】
第1中間層110は、基材層100の第1面S1及び第1耐水層130の間の層であり、第2中間層120は、基材層100の第2面S2及び第2耐水層140の間の層である。第1中間層110及び第2中間層120は、基材層100の被覆部102と同一の材質によって構成されている。つまり、第1中間層110及び第2中間層120は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により構成されている。第1中間層110及び第2中間層120の厚さは、0.1mm程度であればよい。
【0029】
第1耐水層130及び第2耐水層140は、同一な構成である。第1耐水層130及び第2耐水層140は、基紙131と、基紙131の片面を覆う樹脂被膜132と、を有する。基紙131は、耐水性の高い紙であることが好ましい。樹脂被膜132は、熱可塑性樹脂によって構成されている。熱可塑性樹脂は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂並びにポリスチレン樹脂などであればよい。本実施形態では、樹脂被膜132は、基紙131の片面を覆っているが、他の実施形態において、樹脂被膜132は、基紙131の両面を覆っていてもよい。基紙131の厚さは、第1耐水層130及び第2耐水層140の厚さの大部分を占めている。
【0030】
第1耐水層130の基紙131は、第1中間層110を介して基材層100に接合されている。このとき、第1耐水層130の基紙131は、全面にわたって第1中間層110に覆われる。こうした点で、第1中間層110は、基材層100と第1耐水層130との接着層として機能するとともに、第1耐水層130の基紙131の基材層100を向く面に対する被膜として機能する。同様に、第2耐水層140の基紙131は、第2中間層120を介して基材層100に接合されている。このとき、第2耐水層140の基紙131は、全面にわたって第2中間層120に覆われる。こうした点で、第2中間層120は、基材層100と第2耐水層140との接着層として機能するとともに、第2耐水層140の基紙131の基材層100を向く面に対する被膜として機能する。
【0031】
表皮層150は、サンシェード50の外装を構成する部分である。表皮層150は、サンシェード装置30が車体20に設置された状態において、車室を向く面である。このため、表皮層150は、意匠面を構成する部位であるということもできる。表皮層150の材質は、車両10の内装によって適宜に変更可能である。表皮層150は、発泡ウレタンによって構成されるクッション層を有していてもよい。
【0032】
<サンシェード50の製造方法>
図4に示すように、サンシェード50の製造方法は、裁断工程S11と、塗布工程S12と、第1積層工程S13と、成形工程S14と、第2積層工程S15と、貼付工程S16と、装着工程S17と、を備える。
【0033】
裁断工程S11は、ハニカムシート101と第1耐水層130及び第2耐水層140とを所定の大きさに裁断する工程である。既に、ハニカムシート101と第1耐水層130及び第2耐水層140とが所定の大きさに裁断された状態である場合、裁断工程S11は省略可能である。
【0034】
図5に示すように、塗布工程S12は、塗布装置210を用いて、液状の熱硬化性樹脂をハニカムシート101と第1耐水層130及び第2耐水層140とに塗布する工程である。塗布工程S12は、ハニカムシート101の両面に熱硬化性樹脂を塗布する。このとき、塗布工程S12は、ハニカムシート101を構成する六角柱の内側面に均一に熱硬化性樹脂を塗布することが好ましい。言い換えれば、塗布工程S12は、紙製のハニカムシート101に熱硬化性樹脂を満遍なく含浸させる工程ということもできる。また、塗布工程S12は、第1耐水層130及び第2耐水層140のうち、樹脂被膜132に覆われない面に熱硬化性樹脂を塗布する。
【0035】
ハニカムシート101と第1耐水層130及び第2耐水層140に塗布される熱硬化性樹脂は、後に硬化されるため、強度の要求される部位には熱硬化性樹脂が厚く塗布されることが好ましい。この点で、塗布工程S12は、シェードパネル51の複数の第1装着部512となる部分、言い換えれば、ハニカムシート101の幅方向における両端部に対して、熱硬化性樹脂を厚く塗布してもよい。
【0036】
本実施形態において、塗布工程S12で使用される塗布装置210は、スプレーガンである。つまり、塗布工程S12は、液状の熱可塑性樹脂をハニカムシート101にスプレー塗布する工程である。スプレー塗布する点で、液状の熱可塑性樹脂の粘度は30Pa・s以下であることが好ましい。エアレススプレーガンを使用する場合には、液状の熱可塑性樹脂の粘度は30Pa・s以下であればよいが、エアスプレーガンを使用する場合には、液状の熱可塑性樹脂の粘度は10Pa・s以下であることが好ましい。他の実施形態において、塗布工程S12で使用される塗布装置210は、平ノズル、ディスペンサー、ロールコーター及びカーテンコーターなどでもよい。この場合、液状の熱可塑性樹脂の最適粘度は、上記の値とは異なる値となる。
【0037】
図6に示すように、第1積層工程S13は、熱硬化性樹脂を塗布したハニカムシート101の両側に、熱硬化性樹脂を塗布した第1耐水層130及び第2耐水層140をそれぞれ積層させる工程である。以降の説明では、この積層体を1次積層体51Aという。1次積層体51Aにおいて、第1耐水層130は、熱硬化性樹脂が塗布された面がハニカムシート101の第1面S1を向き、第2耐水層140は、熱硬化性樹脂が塗布された面がハニカムシート101の第2面S2を向く。
【0038】
図6に示すように、成形工程S14は、1次積層体51Aを金型220に挟んだ状態で加熱することにより、ハニカムシート101と第1耐水層130及び第2耐水層140とを圧着する工程である。一例として、成形工程S14は、1次積層体51Aを160℃で2分間加熱したり、1次積層体51Aを180℃で1分間加熱したりすればよい。成形工程S14を実施することで、ハニカムシート101に塗布された熱硬化性樹脂が硬化する。つまり、被覆部102が生成されることにより、基材層100が成形される。また、第1耐水層130及び第2耐水層140に塗布された熱硬化性樹脂が硬化することにより、第1中間層110及び第2中間層120が生成される。なお、成形工程S14において、金型220の表面に凹凸を設けることにより、成形後の1次積層体51Aの断面形状に変化を設けることもできる。
【0039】
図7に示すように、第2積層工程S15は、圧着された1次積層体51Aの第1耐水層130に表皮層150を積層させた2次積層体51Bを構成する工程である。言い換えれば、第2積層工程S15は、第1耐水層130を介して、基材層100に表皮層150を積層する工程である。このとき、表皮層150は、第1耐水層130の樹脂被膜132に重ねられる。第2積層工程S15は「積層工程」の一例に相当している。
【0040】
図7に示すように、貼付工程S16は、圧着された1次積層体51Aに表皮層150を貼り付ける工程、言い換えれば、2次積層体51Bを一体化する工程である。貼付工程S16は、2次積層体51Bの表皮層150を、加熱部230で一時的に加熱する。すると、溶融した第1耐水層130の樹脂被膜132が固化する際に、第1耐水層130と表皮層150とが接合する。こうして、貼付工程S16は、接着剤を別途に用いることなく、1次積層体51Aと表皮層150とを接合する。貼付工程S16は、1次積層体51Aに表皮層150を重ねる際、表皮層150で1次積層体51Aの端面を覆うことが好ましい。言い換えれば、貼付工程S16は、表皮層150で1次積層体51Aの端面を包むことが好ましい。これによれば、1次積層体51Aの端面が露出しなくなる。なお、貼付工程S16における表皮層150の加熱条件は、成形工程S14における1次積層体51Aの加熱条件よりも緩やかであることが好ましい。言い換えれば、第1耐水層130の樹脂被膜132を溶融させるための温度は、ハニカムシート101などに塗布される熱硬化性樹脂を硬化させるための温度よりも低くなっている。
【0041】
装着工程S17は、別途に製造した複数の摺動部品52をシェードパネル51の複数の第1装着部512に装着する工程である。また、装着工程S17は、別途に製造した取っ手53をシェードパネル51の第2装着部513に装着する工程である。
【0042】
こうして、複数の工程を経て、サンシェード50が製造される。
<比較例及び実施例>
以下、塗布工程S12において、スプレー塗布される液状の熱硬化性樹脂の一例について詳しく説明する。
【0043】
表1に示す原材料を混合機で混合することで、比較例1,2及び実施例1~3のサンプルを作成した。表1に示す原材料の配合量の単位は、質量部である。実施例1~3のサンプルは、本実施形態における液状の熱硬化性樹脂に相当する。
【0044】
表1において、エポキシ樹脂は、例えば液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、充填剤は、例えば炭酸カルシウムであり、希釈剤は、例えばグリコール系の希釈剤である。本実施形態の希釈剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)である。
【0045】
粘度増加率は、サンプルを作成してから5日経過したときの粘度の増大割合を示している。例えば、粘度増加率が50%である場合には、サンプルを作成してから5日経過することで、サンプルの粘度が1.5倍になることを示す。弾性率は、熱硬化後のサンプルを曲げ強度試験したときの線形変形領域の弾性率である。すなわち、弾性率は、曲げ弾性率であり、熱硬化後の熱硬化性樹脂単体での物性である。
【0046】
【表1】
表1に示すように、サンプルの粘度は、希釈剤の部数を多くするほど低下する。上述したように、塗布工程S12において、液状の熱硬化性樹脂をスプレー塗布するためには、粘度が30Pa・s以下であることが好ましい。この点で、希釈剤の部数は5よりも多いとよい。粘度増加率は、希釈剤の部数を多くするほど増大する。ただし、希釈剤の部数が最も多い実施例3でも、粘度増加率は34%に留まっている。サンシェード50の製造工程における作業性を踏まえると、粘度増加率は50%以下であることが好ましい。弾性率は、希釈剤の部数が多くなるほど小さくなっている。弾性率は、サンシェード50に対する外力を踏まえると、2.7GPa以上であることが好ましい。以上より、希釈剤の部数は、10~20であることが好ましいといえる。
【0047】
表1の配合表に記載の部数は一例である。例えば、エポキシ樹脂の部数は、60以上120以下であればよく、充填剤の部数は、0以上60以下であればよい。また、硬化剤の部数は、6以上14以下であればよく、添加剤の部数は、0以上8以下であればよい。
【0048】
なお、グリコール系の希釈剤の代わりに、イソパラフィン、軽質芳香族溶剤、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールを用いた場合には、サンプルの粘度が増大した。このため、こうした希釈剤を用いた場合には、塗布工程S12を実施できなくなるおそれがある。一方、グリコール系の希釈剤の代わりに、メチルエチルケトンを用いた場合には、サンプルの粘度変化がグリコール系の希釈剤と同等であった。このため、劇物であることに留意すれば、希釈剤として、メチルエチルケトンを用いることもできる。
【0049】
<本実施形態の作用及び効果>
(1)サンシェード50は、ハニカムシート101を熱硬化性樹脂で被覆した基材層100を備える。このため、サンシェード50は、基材層100単体で強度を確保できる。言い換えれば、サンシェード50は、強度を確保するために、基材層100にガラス繊維のシートなどを積層しなくてもよくなる。この点で、サンシェード50は、強度を確保しつつ構造を簡素化できる。
【0050】
(2)サンシェード50において、被覆部102を構成する熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である。このため、サンシェード50は、他の熱硬化性樹脂を用いる場合と比較して、基材層100の強度を高めやすくなる。
【0051】
(3)サンシェード50は、基材層100が厚さ方向において第1耐水層130及び第2耐水層140に覆われている。このため、サンシェード50は、高湿な環境で使用されたとしても、水分によって基材層100の経年劣化が進むことを抑制できる。
【0052】
(4)第1耐水層130及び第2耐水層140は、基紙131と基紙131の片面を覆う樹脂被膜132とを有する簡素な構成のため、軽量かつ安価に構成できる。
(5)貼付工程S16において、第1耐水層130を加熱すると、第1耐水層130の樹脂被膜132が溶融する。このため、第1耐水層130に重ねた表皮層150を加熱した後に冷却することにより、表皮層150は第1耐水層130に接合される。つまり、サンシェード50は、別途に接着剤を用いなくても、第1耐水層130に表皮層150を接合可能である。
【0053】
(6)塗布工程S12は、低粘度の液状の硬化性樹脂をハニカムシート101にスプレー塗布するため、液状の硬化性樹脂をハニカムシート101に均一に塗布できる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・サンシェード50は、第1耐水層130及び第2耐水層140を備えなくてもよい。この場合、サンシェード50は、基材層100及び表皮層150の間にクッション層を備えることが好ましい。これによれば、基材層100の第1面S1及び第2面S2における凹凸が表皮層150に表面に表れにくくなる。
【0055】
・第1耐水層130及び第2耐水層140は、樹脂被膜132を備えなくてもよい。この場合、塗布工程S12において、第1耐水層130及び第2耐水層140の両面に熱硬化性樹脂を塗布することが好ましい。
【0056】
・第1耐水層130が樹脂被膜132を備えるか否かに関わらず、貼付工程S16は、接着剤により、表皮層150を第1耐水層130に接合してもよい。
・貼付工程S16は、第2耐水層140に対しても表皮層150を接合してもよい。
【符号の説明】
【0057】
S11…裁断工程
S12…塗布工程
S13…第1積層工程
S14…成形工程
S15…第2積層工程(積層工程)
S16…貼付工程
S17…装着工程
10…車両
20…車体
23…ガラスパネル(採光部の一例)
30…サンシェード装置(車両用サンシェード装置)
50…サンシェード(車両用サンシェード)
51…シェードパネル
100…基材層
101…ハニカムシート
102…被覆部
S1…第1面
S2…第2面
110…第1中間層
120…第2中間層
130…第1耐水層
131…基紙
132…樹脂被膜
140…第2耐水層
150…表皮層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7