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特開2023-67553布帛の製造方法、および、布帛の製造装置
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  • 特開-布帛の製造方法、および、布帛の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067553
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】布帛の製造方法、および、布帛の製造装置
(51)【国際特許分類】
   D06J 1/02 20060101AFI20230509BHJP
   D04H 1/74 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
D06J1/02
D04H1/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178922
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 直貴
【テーマコード(参考)】
3B154
4L047
【Fターム(参考)】
3B154AB22
3B154BA36
3B154BB47
3B154BC23
4L047BD02
4L047DA00
4L047EA22
(57)【要約】
【課題】
構成繊維が厚さ方向へより配向していることで、十分な嵩高さを有する布帛の提供を目的とする。
【解決手段】
本願発明にかかる布帛の製造方法および製造装置では、一対の規制部材間を通過中のプリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における、前記規制部材と接する部分の移動速度を加速させることを特徴としている。その結果、本願発明にかかる製造方法によって製造された、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料からなる布帛では、その両主面に存在する構成繊維が表面方向へ傾いだ状態となるのが防止されている。
以上から、本願発明によって 構成繊維が厚さ方向へより配向していることで、十分な嵩高さを有する布帛を提供できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造方法であって、
(1)互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材間へ、布帛材料を搬送する工程、
(2)前記工程(1)における前記布帛材料の搬送速度よりも、前記一対の規制部材間を通過する前記布帛材料の速度が遅くなるように調整することで、前記布帛材料をプリーツ形状に折りたたむ工程、
(3)プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料を前記規制部材と接触させた状態で、前記一対の規制部材間を通過させる工程、
を備えており、
前記工程(3)において、前記プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における、前記規制部材と接する部分の移動速度を加速させることを特徴とする、厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造方法。
【請求項2】
布帛材料の搬送手段と、互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材とを備えた、厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造装置であって、
前記布帛材料の搬送速度よりも、前記一対の規制部材間を通過する前記布帛材料の速度が遅いことで、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料を前記規制部材と接触させた状態で、前記一対の規制部材間を通過させるものであり、
前記プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における前記規制部材と接する部分の移動速度を、加速可能な手段を備えることを特徴とする、
厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、厚さ方向へ構成繊維が配向している嵩高な布帛を製造可能な製造方法、および、当該布帛を製造可能な製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から嵩高な布帛は、例えば、気体フィルタや液体フィルタあるいは吸音材やクッションなど様々な産業用途に活用されている。このような嵩高な布帛を提供する方法として、例えば、実開平05-85890(特許文献1)などに開示されている布帛の製造方法および製造装置が知られている。
【0003】
具体的には、
(1)互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材間へ、布帛材料を搬送する工程、
(2)前記工程(1)における前記布帛材料の搬送速度よりも、前記一対の規制部材間を通過する前記布帛材料の速度が遅くなるように調整することで、前記布帛材料をプリーツ形状に折りたたむ工程、
(3)プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料を前記規制部材と接触させた状態で、前記一対の規制部材間を通過させる工程、
を備えた、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料からなる、布帛の製造方法が知られている。
【0004】
一般的に、繊維ウェブや不織布などの布帛材料を構成している繊維は、主として、布帛材料の厚さ方向と垂直を成す方向(以降、表面方向と称することがある)へ配向しており嵩高さに劣る傾向がある。それに対し、特許文献1にかかる製造方法および製造装置により製造された布帛では、布帛材料がプリーツ形状に折りたたまれているため、構成繊維が厚さ方向へ配向している。そのため、特許文献1にかかる製造方法を用いることによって、厚さ方向へ繊維が配向していることで、嵩高な布帛を提供し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平05-85890
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本願出願人検討したところ、特許文献1など従来技術にかかる製造方法および製造装置では次の現象が発生していることがあった。
【0007】
特許文献1にかかる製造方法の工程(3)において、布帛材料はプリーツ形状に折りたたまれた状態で一対の規制部材間を通過してゆく。このとき、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における両主面は、規制部材の主面に擦れながら一対の規制部材間を通過してゆく。その結果、製造された布帛では、その両主面に存在する構成繊維は布帛の表面方向へ向かい傾いだ状態となっており、嵩高さが低下することがあった。
【0008】
つまり、以上の現象が発生する従来技術にかかる製造方法および製造装置を用いる限り、厚さ方向へ繊維が配向している布帛を、十分な嵩高さを有する態様で提供することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、
「(請求項1)厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造方法であって、
(1)互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材間へ、布帛材料を搬送する工程、
(2)前記工程(1)における前記布帛材料の搬送速度よりも、前記一対の規制部材間を通過する前記布帛材料の速度が遅くなるように調整することで、前記布帛材料をプリーツ形状に折りたたむ工程、
(3)プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料を前記規制部材と接触させた状態で、前記一対の規制部材間を通過させる工程、
を備えており、
前記工程(3)において、前記プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における、前記規制部材と接する部分の移動速度を加速させることを特徴とする、厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造方法。
(請求項2)布帛材料の搬送手段と、互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材とを備えた、厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造装置であって、
前記布帛材料の搬送速度よりも、前記一対の規制部材間を通過する前記布帛材料の速度が遅いことで、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料を前記規制部材と接触させた状態で、前記一対の規制部材間を通過させるものであり、
前記プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における前記規制部材と接する部分の移動速度を、加速可能な手段を備えることを特徴とする、
厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造装置。」
である。
【発明の効果】
【0010】
本願発明にかかる布帛の製造方法は、工程(3)において、一対の規制部材間を通過中のプリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における、前記規制部材と接する部分の移動速度を加速させることを特徴としている。その結果、本願発明にかかる製造方法によって製造された、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料からなる布帛では、その両主面に存在する構成繊維が表面方向へ傾いだ状態となるのが防止されている。
【0011】
また、本願発明にかかる布帛の製造装置は、布帛材料の搬送手段と、互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材に加え、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における規制部材と接する部分の移動速度を加速可能な手段を備えている。つまり、本願発明にかかる布帛の製造装置では、当該加速手段の働きによって、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における前記規制部材と接する部分の、一対の規制部材間を通過する速度を加速できる。その結果、本願発明にかかる製造装置によって、その両主面に存在する構成繊維が表面方向へ傾いだ状態となるのが防止されている、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料からなる布帛を製造できる。
【0012】
以上から、本願発明によって 構成繊維が厚さ方向へより配向していることで、十分な嵩高さを有する布帛を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来技術にかかる、厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造装置を表した、模式図である。
図2】本願発明にかかる、厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造装置を表した、模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本願発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行った。また、25℃温度条件下で測定を行った。そして、本願発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、前記値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。そして、本願発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0015】
本願発明にかかる、厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造方法および製造装置について、その製造装置を表した模式図である図1および図2を用いて説明する。なお、図1および図2は、製造装置を側面側から見た模式図を表している。
【0016】
従来技術にかかる厚さ方向へ繊維が配向している布帛の製造装置(101)および製造方法では、次のようにして、厚さ方向へ繊維が配向している布帛(11、以降、布帛と略すことがある)が製造される。
【0017】
まず、布帛材料の製造装置(図示せず)、あるいは、ロールなどの布帛材料の搬送手段(0)から送り出されてきた布帛材料(1)は、互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材(2a、2b、以降、一対の規制部材と略すことがある)の間へ供される。
このとき、布帛材料(1)の搬送速度に対し、一対の規制部材(2a、2b)間を通過する布帛材料(1)の速度が遅くなるよう調整されている。そのため、布帛材料(1)はプリーツ形状に折りたたまれた状態で一対の規制部材(2a、2b)間を通過してゆき、次いで、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料(3、以降、プリーツ布帛材料と称することがある)は、一対の規制部材(2a、2b)における布帛材料(1)が運ばれてきた側と反対側から送り出される。
【0018】
このようにして、表面方向へ繊維配向を有する布帛材料(1)がプリーツ形状に折りたたまれて形成された布帛(11)が製造される。そのため、製造された布帛(11)では、多くの構成繊維が厚さ方向へ配向している。
【0019】
しかし、従来技術にかかる製造装置(101)およびその製造方法において、一対の規制部材(2a、2b)間を通過するプリーツ布帛材料(3)における両主面は、規制部材(2a、2b)の主面に擦れながら一対の規制部材(2a、2b)間を通過してゆく。その結果、製造された布帛(11)では、その両主面に存在する構成繊維は布帛(11)の表面方向へ傾いだ状態となり易い。
【0020】
このような従来技術に対し、本願発明にかかる製造装置(102)およびその製造方法は、プリーツ布帛材料(3)における規制部材(2a、2b)と接する部分の移動速度を加速可能な手段(4a、4b、以降、加速手段と略すことがある)を、一対の規制部材(2a、2b)における布帛材料(1)が搬送されて来る側に備えている。なお、図2では加速手段(4a、4b)の一例として、一方の加速手段(4a)として時計回りに回転するロールと、もう一方の加速手段(4b)として反時計回りに回転するロールを図示している。
【0021】
つまり、加速手段(4a、4b)の働きによって、プリーツ布帛材料(3)における規制部材(2a、2b)と接する部分の、一対の規制部材(2a、2b)間を通過する速度の低下が防止されている。その結果、製造された布帛(12)では、その両主面に存在する構成繊維は布帛(12)の表面方向へ傾いだ状態となるのが防止されている。
【0022】
そのため、本願発明によって 構成繊維が厚さ方向へより配向していることで、十分な嵩高さを有する布帛(12)を提供できる。
【0023】
本願発明でいう布帛材料(1)とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの繊維シートである。そして、これらの一般的な繊維シートでは、繊維シートの構成繊維が、主として、その厚さ方向と垂直を成す方向(表面方向)に配向している。
【0024】
なお、本願発明でいう繊維の配向方向(ならびに、繊維が主として当該方向へ配向しているか否か)は、測定対象物を以下の判断方法へ供することで判断できる。
【0025】
(判断方法)
(1)布帛材料(1)や布帛(11,12)などの測定対象物から、任意サイズの矩形試料を採取する。
(2)採取した試料を厚さ方向に切断する。
(3)厚さ方向に切断された試料の断面に対し、光学顕微鏡写真あるいは電子顕微鏡写真(以降、併せて断面写真と称する)を撮影する。なお、撮影倍率は以降の工程における確認が可能な倍率に調整する。
(4)断面写真に写る繊維の中から、一方の主面付近に存在している繊維の内からランダムに30本の繊維、もう一方の主面付近に存在している繊維の内からランダムに30本の繊維、両主面間の中間部分に存在している繊維の内からランダムに30本の繊維を選択する。
(5)選択した断面写真に写る繊維の各々に対し、断面写真に写る繊維上からはみ出すことなく引ける、最も長い線分を引く。
(6)引かれた線分と試料における厚さ方向とが成す角度(90°以下の角度)を測定し、その角度の絶対値を求める。
(7)選択した各繊維について上述した(5)~(6)の工程を行い、各々絶対値を求める。
(8)求めた各絶対値の平均値を算出する。
(9)算出された平均値が0°以上45°未満であった場合、当該測定対象物は、厚さ方向へ繊維が配向している(繊維が主として厚さ方向へ配向している)ものであると判断する。また、算出された平均値が45°より大きく90°以下であった場合、当該測定対象物は、厚さ方向と垂直を成す方向(表面方向)へ繊維が配向している(繊維が主として表面方向へ配向している)ものであると判断する。なお、算出された平均値が45°であった場合には、当該測定対象物は特定の繊維配向を有していないものであると判断する。
【0026】
布帛材料(1)の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0027】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0028】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0029】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0030】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0031】
布帛材料(1)が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、布帛材料(1)に強度と形態安定性を付与でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。
【0032】
布帛材料(1)が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0033】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、後述するバインダ樹脂によって構成繊維同士を一体化させる以外にも、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどして接着繊維(全溶融型接着繊維や芯鞘型接着繊維など)によって構成繊維同士を接着一体化させる方法などを挙げることができる。
【0034】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0035】
布帛材料(1)が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
【0036】
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物を、上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0037】
布帛材料(1)の構成繊維の繊度や繊維長は特に限定するものではなく、適宜調整できる。繊度は、1~50dtexあることができ、5~40dtexあることができ、10~30dtexあることができる。構成繊維は、直接紡糸繊維(メルトブロー繊維や静電紡糸繊維など)のように、特定の長さを有さない連続長を有する繊維であってもよい。また、構成繊維は特定の繊維長を有するステープル繊維であってもよく、その繊維長は、30~120mmあることができ、40~100mmあることができ、50~80mmあることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0038】
布帛材料(1)の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定するものではなく、適宜調整できる。厚さは、3~50mmであることができ、5~40mmであることができ、10~30mmであることができる。目付は、20~500g/mであることができ、50~400g/mであることができ、80~300g/mであることができる。なお、本願発明において厚さとは、主面と垂直方向へ0.5g/cm圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0039】
以上に説明した布帛材料(1)は、布帛材料の製造装置(図示せず)、あるいは、ロールなどの布帛材料の搬送手段(0)から送り出され、互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材(2a、2b)間へ供される。
【0040】
なお、布帛材料(1)を効率良くプリーツ形状に折りたたむことができるよう、加速手段(4)における布帛材料(1)が運ばれてくる側に、搬送されてきた布帛材料(1)をスイング可能な部材(図示せず)を設けても良い。このような部材を設けることで、搬送されてきた布帛材料(1)をスイングさせて、効率良くプリーツ形状に折りたたむことができる。
【0041】
一対の規制部材(2a、2b)は、プリーツ布帛材料(3)をその間に通過させると共に規制部材(2a、2b)の主面と接触させることで、一対の規制部材(2a、2b)間を通過してゆくプリーツ布帛材料(3)の移動速度を、布帛材料の搬送速度よりも遅くなるように調整する役割を担う。このように、一対の規制部材(2a、2b)の存在によって、搬送手段(0)から送り出された布帛材料(1)は、プリーツ形状に折りたたまれた状態となる。また、規制部材(2a、2b)は、布帛材料(1)を圧縮して繊維密度を高める役割を担うこともできる。
【0042】
規制部材(2a、2b)の種類は適宜選択できるが、例えば、ベルトコンベア、平板(無孔の平板あるいは多孔を有する平板)などを採用できる。
【0043】
互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材(2a、2b)間の距離は、本願発明にかかる布帛(12)を求める厚さで製造できるように適宜調整する。具体例として、当該間の最短距離は1~10cmであることができ、2~9cmであることができ、3~7cmであることができる。また、一対の規制部材(2a、2b)における布帛材料(1)と接触する部分同士は、互いに平行を成す状態であっても、平行を成さない状態であってもよい。しかし、効率良く本願発明にかかる布帛(12)を製造可能であることから、平行を成す状態であるのが好ましい。
【0044】
なお、規制部材(2aおよび/または2b)は可動可能なものでも可動しないものでも良い。ベルトコンベアなどの可動可能な規制部材(2aおよび/または2b)を採用することで、プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料(3)の移動速度を調整して、本願発明にかかる布帛(12)を求める態様で製造できる。可動可能な規制部材(2aおよび/または2b)を採用する場合、プリーツ布帛材料(3)が、一対の規制部材(2a、2b)における布帛材料(1)が運ばれてきた側と反対側から送り出されるのを促すように可動しても、送り出されるのを妨げるように可動してもよい。このとき、規制部材(2aおよび/または2b)の表面が移動する速度は適宜調整する。
【0045】
本願発明にかかる製造方法および製造装置(102)では、プリーツ布帛材料(3)における規制部材(2a、2b)と接する部分の移動速度を加速可能な手段(4a、4b)を、一対の規制部材(2a、2b)における布帛材料(1)が搬送されて来る側に備えている。
【0046】
加速手段(4a、4b)の種類は適宜選択できるが、例えば、一対のベルトコンベア、一対のローラ(表面が平滑なローラあるいは表面にスパイクなど凹凸を有するローラなど)を採用できる。
【0047】
加速手段(4a、4b)の働きによって、一対の規制部材(2a、2b)間を通過する、プリーツ布帛材料(3)における規制部材(2a、2b)と接する部分の移動速度が加速される。その結果、一対の規制部材(2a、2b)間を通過したプリーツ布帛材料(3)からなる布帛(12)では、その両主面に存在する構成繊維が表面方向へ傾いだ状態となるのが防止されている。
【0048】
そのため、本願発明によって 構成繊維が厚さ方向へより配向していることで、十分な嵩高さを有する布帛(12)を提供できる。
【0049】
このような効果が発揮されるよう、一対の規制部材(2a、2b)間を通過してゆくプリーツ布帛材料(3)の移動速度以上となるよう、加速手段(4a、4b)がプリーツ布帛材料(3)における規制部材(2a、2b)と接する部分を移動させる速度を調整する。
【0050】
一対の加速手段(4)間の最短距離は、本願発明にかかる布帛(12)を求める態様で製造できるように適宜調整する。具体例として、当該間の距離は1~10cmであることができ、2~9cmであることができ、3~7cmであることができる。
【0051】
上述のようにして製造した布帛(12)では、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、リライアントプレス処理などの、表面を平滑とするための加圧処理工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程などの、各種二次工程へ供してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明の布帛は様々な産業用途に活用可能であって、例えば、食品や医療品の生産工場用途、精密機器の製造工場用途、農作物の室内栽培施設用途、一般家庭用途あるいは病院やオフィスビルなどの産業施設用途、空気清浄機用途やOA機器用途などの電化製品用途、自動車や航空機などの各種車両用途において、気体フィルタや液体フィルタとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0053】
101・・・従来技術にかかる製造装置
102・・・本願発明にかかる製造装置
0・・・布帛材料の搬送手段
1・・・布帛材料
2a、2b・・・互いに主面を対向させ間隙を設けた一対の規制部材
3・・・プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料(プリーツ布帛材料)
4a、4b・・・プリーツ形状に折りたたまれた布帛材料における規制部材と接する部分の移動速度を加速可能な手段(加速手段)
11・・・従来技術にかかる製造装置によって製造された、厚さ方向へ繊維が配向している布帛
12・・・本願発明にかかる製造装置によって製造された、厚さ方向へ繊維が配向している布帛
図1
図2