(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067582
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルおよびこれを備えたバルーンカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230509BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20230509BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178968
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木佐 俊哉
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK12
4C160KK30
4C160KK32
4C160KK36
4C160KK63
4C160MM38
4C267AA09
4C267BB42
4C267CC19
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG10
4C267GG11
(57)【要約】
【課題】対象組織に焼灼電極を接触させやすいバルーンカテーテルとこれを備えたバルーンカテーテルシステムを提供する。
【解決手段】長手軸方向xに遠位端と近位端を有するシャフト2と、シャフト2の遠位部に配置されているバルーン10と、バルーン10の外面11に配置されている絶縁材20と、絶縁材20上に配置されている焼灼電極30と、を有し、絶縁材20は、長手軸方向xに延在している第1部分21と、第1部分21から長手軸方向xとは異なる方向に延在し、長手軸方向xにおいて互いに離れて配されている複数の第2部分22と、を有するバルーンカテーテル1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、
前記バルーンの外面に配置されている絶縁材と、
前記絶縁材上に配置されている焼灼電極と、を有し、
前記絶縁材は、前記長手軸方向に延在している第1部分と、前記第1部分から前記長手軸方向とは異なる方向に延在し、前記長手軸方向において互いに離れて配されている複数の第2部分と、を有するバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記複数の第2部分は、それぞれ前記バルーンの周方向に延在している請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記複数の第2部分は、前記バルーンの周方向において前記第1部分を挟んだ一方側と他方側にそれぞれ配されている請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記バルーンの周方向において前記第1部分を挟んだ一方側に配されている前記複数の第2部分のうちの1つと、前記第1部分を挟んだ他方側に配されている前記複数の第2部分のうちの1つとが、前記長手軸方向において互いに重なり合う位置にある請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記バルーンの周方向において前記第1部分を挟んだ一方側に配されている前記複数の第2部分のうちの1つと、前記第1部分を挟んだ他方側に配されている前記複数の第2部分のうちの1つとが、前記長手軸方向において互いにずれた位置にある請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記焼灼電極は、前記第1部分と前記複数の第2部分に配置されている請求項1~5のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記焼灼電極は、前記長手軸方向に延在している主部と、前記主部から前記長手軸方向とは異なる方向に延在し、前記長手軸方向において互いに離れて配されている複数の副部と、を有する請求項1~6のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記主部が前記第1部分に配置され、
前記副部が前記第2部分に配置されている請求項7に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記焼灼電極の外縁は、前記絶縁材の外縁よりも内側に位置している請求項1~8のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
一の前記絶縁材上に、前記長手軸方向に並んでいる複数の前記焼灼電極が配置されている請求項1~9のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記焼灼電極は、前記長手軸方向に延在している主部と、前記主部から前記長手軸方向とは異なる方向に延在し、前記長手軸方向において互いに離れて配されている複数の副部と、を有し、
前記バルーンの周方向において前記第1部分を挟んだ一方側と他方側で、1つの前記第2部分に前記副部が少なくとも2つ配置され、
さらに、前記バルーンカテーテルは、
前記焼灼電極よりも表面積が小さく、前記第1部分を挟んだ前記一方側の前記絶縁材の前記第2部分上であって隣り合う2つの前記副部の間に配置され、インピーダンスを測定するための第1測定電極と、
前記焼灼電極よりも表面積が小さく、前記第1部分を挟んだ前記他方側の前記絶縁材の前記第2部分上であって隣り合う2つの前記副部の間に配置され、インピーダンスを測定するための第2測定電極と、を有する請求項1~10のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
前記絶縁材は、前記バルーンの周方向において前記第1部分を挟んだ一方側と他方側に、前記長手軸方向において隣り合う2つの前記第2部分の間であって前記第1部分から離れた位置で前記長手軸方向に延在している第3部分をそれぞれ有し、
さらに、前記バルーンカテーテルは、
前記焼灼電極よりも表面積が小さく、前記第1部分を挟んだ前記一方側の前記第3部分上に配置され、インピーダンスを測定するための第1測定電極と、
前記焼灼電極よりも表面積が小さく、前記第1部分を挟んだ前記他方側の前記第3部分上に配置され、インピーダンスを測定するための第2測定電極と、を有する請求項1~10のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
前記バルーン上であって前記第1部分と前記第3部分の間に接着材が配されている請求項12に記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルと、
前記第1測定電極と前記焼灼電極の間のインピーダンス、前記第2測定電極と前記焼灼電極の間のインピーダンス、前記第1測定電極と前記第2測定電極の間のインピーダンスの少なくともいずれか1つを測定する測定部と、
前記測定部に接続され、前記インピーダンスの測定結果を用いて、前記第1測定電極と前記第2測定電極のうちの少なくともいずれかと対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有するバルーンカテーテルシステム。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルと、
患者の体表面に設けられ、前記焼灼電極との間で高周波電流が通電される対極板と、
前記第1測定電極と前記第2測定電極の少なくともいずれかと前記対極板との間のインピーダンスを測定する測定部と、
前記測定部に接続され、前記インピーダンスの測定結果を用いて、前記第1測定電極と前記第2測定電極のうちの少なくともいずれかと対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有するバルーンカテーテルシステム。
【請求項16】
前記制御部は、前記第1測定電極と前記第2測定電極の少なくともいずれかと対象組織との接触状態の判別結果を用いて、前記焼灼電極と対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する請求項14または15に記載のバルーンカテーテルシステム。
【請求項17】
前記バルーンカテーテルには、前記第1測定電極と前記第2測定電極のペアが前記長手軸方向に並んで少なくとも3つ設けられ、
前記制御部は、前記長手軸方向において隣り合う2つの測定電極のペアを用いて、前記焼灼電極の一部が、対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する請求項16に記載のバルーンカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル、詳細には生体組織を焼灼することができるバルーンカテーテルとこれを備えたシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
心房細動の治療のための肺静脈隔離術では、バルーンを有するアブレーションカテーテルが用いられる。バルーンの外面には焼灼電極が設けられている。バルーンを拡張して焼灼電極を肺静脈開口部に接触させた状態で焼灼電極に高周波電流を流すことによって、肺静脈開口部の組織を焼灼することができる。肺静脈等の生体組織と焼灼電極が接触しているか否かを確認するために、バルーンの外面に焼灼電極とは別に電極を設けることが提案されている。
【0003】
特許文献1~2には、フレックス回路電極アセンブリを備えたバルーンカテーテルが開示されている。フレックス回路電極アセンブリが複数の放射状リーフ又はストリップを有することも開示されている。リーフは、遠位端及びバルーンの周りに均一に分配される。それぞれのリーフは、より狭い遠位部分に対して徐々に先細りする、より広い近位部分を有する。フレックス回路電極アセンブリは、基板と、基板の外側表面上のコンタクト電極とを備えている。各リーフにおいて、フレックス回路電極アセンブリは、例えば生体適合性材料で構成された可撓性があり弾力的なシート状の基板を含むことも開示されている。特許文献3では、フレックス回路電極アセンブリが複数の放射状基材又はストリップを有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-202306号公報
【特許文献2】特開2019-13759号公報
【特許文献3】特開2020-867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルーンの外側表面に設けられる基材には可撓性が付与されているが、焼灼電極を対象組織に良好に接触させる観点では改善の余地があった。そこで、本発明は、対象組織に焼灼電極を接触させやすいバルーンカテーテルとこれを備えたバルーンカテーテルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明のバルーンカテーテルの一実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、バルーンの外面に配置されている絶縁材と、絶縁材上に配置されている焼灼電極と、を有し、絶縁材は、長手軸方向に延在している第1部分と、第1部分から長手軸方向とは異なる方向に延在し、長手軸方向において互いに離れて配されている複数の第2部分と、を有する点に要旨を有する。上記バルーンカテーテルによれば、絶縁材が第1部分とは異なる方向に延在している複数の第2部分を有しているため、第1部分に対して第2部分が曲がりやすくなり、絶縁材に可撓性を付与することができる。また、絶縁材上に配置されている焼灼電極も変形させやすくなり、肺静脈等の対象組織に接触させやすくなる。その結果、焼灼のやり直しなどを防ぐことができるため、手技の効率化が図られる。
【0007】
上記バルーンカテーテルにおいて、複数の第2部分は、それぞれバルーンの周方向に延在していてもよい。複数の第2部分は、バルーンの周方向において第1部分を挟んだ一方側と他方側にそれぞれ配されていてもよい。バルーンの周方向において第1部分を挟んだ一方側に配されている複数の第2部分のうちの1つと、第1部分を挟んだ他方側に配されている複数の第2部分のうちの1つとが、長手軸方向において互いに重なり合う位置にあってもよい。バルーンの周方向において第1部分を挟んだ一方側に配されている複数の第2部分のうちの1つと、第1部分を挟んだ他方側に配されている複数の第2部分のうちの1つとが、長手軸方向において互いにずれた位置にあってもよい。
【0008】
上記バルーンカテーテルにおいて、焼灼電極は、第1部分と複数の第2部分に配置されていてもよい。焼灼電極は、長手軸方向に延在している主部と、主部から長手軸方向とは異なる方向に延在し、長手軸方向において互いに離れて配されている複数の副部と、を有していてもよい。主部が第1部分に配置され、副部が第2部分に配置されていてもよい。焼灼電極の外縁は、絶縁材の外縁よりも内側に位置していてもよい。一の絶縁材上に、長手軸方向に並んでいる複数の焼灼電極が配置されていてもよい。
【0009】
上記バルーンカテーテルにおいて、焼灼電極は、長手軸方向に延在している主部と、主部から長手軸方向とは異なる方向に延在し、長手軸方向において互いに離れて配されている複数の副部と、を有し、バルーンの周方向において第1部分を挟んだ一方側と他方側で、1つの第2部分に副部が少なくとも2つ配置され、さらに、バルーンカテーテルは、焼灼電極よりも表面積が小さく、第1部分を挟んだ一方側の絶縁材の第2部分上であって隣り合う2つの副部の間に配置され、インピーダンスを測定するための第1測定電極と、焼灼電極よりも表面積が小さく、第1部分を挟んだ他方側の絶縁材の第2部分上であって隣り合う2つの副部の間に配置され、インピーダンスを測定するための第2測定電極と、を有していてもよい。絶縁材は、バルーンの周方向において第1部分を挟んだ一方側と他方側に、長手軸方向において隣り合う2つの第2部分の間であって第1部分から離れた位置で長手軸方向に延在している第3部分をそれぞれ有し、さらに、バルーンカテーテルは、焼灼電極よりも表面積が小さく、第1部分を挟んだ一方側の第3部分上に配置され、インピーダンスを測定するための第1測定電極と、焼灼電極よりも表面積が小さく、第1部分を挟んだ他方側の第3部分上に配置され、インピーダンスを測定するための第2測定電極と、を有していてもよい。バルーン上であって第1部分と第3部分の間には接着材が配されていてもよい。
【0010】
本発明は、バルーンカテーテルシステムも提供する。本発明のバルーンカテーテルシステムの一実施態様は、上記バルーンカテーテルと、第1測定電極と焼灼電極の間のインピーダンス、第2測定電極と焼灼電極の間のインピーダンス、第1測定電極と第2測定電極の間のインピーダンスの少なくともいずれか1つを測定する測定部と、測定部に接続され、インピーダンスの測定結果を用いて、第1測定電極と第2測定電極のうちの少なくともいずれかと対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有する点に要旨を有する。
【0011】
本発明のバルーンカテーテルシステムの他の実施態様は、上記バルーンカテーテルと、患者の体表面に設けられ、焼灼電極との間で高周波電流が通電される対極板と、第1測定電極と第2測定電極の少なくともいずれかと対極板との間のインピーダンスを測定する測定部と、測定部に接続され、インピーダンスの測定結果を用いて、第1測定電極と第2測定電極のうちの少なくともいずれかと対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部と、を有する点に要旨を有する。
【0012】
上記バルーンカテーテルシステムによれば、各測定電極を焼灼電極の近くに配置することができる。また、各インピーダンス測定電極と対象組織の接触状態の検出結果から、焼灼電極と対象組織の具体的な接触状態を把握することができる。したがって、焼灼に先立ちバルーンカテーテルを生体内の適切な位置に配置でき、焼灼のやり直しなどを防ぐことができるため、手技の効率化が図られる。
【0013】
上記バルーンカテーテルシステムにおいて、制御部は、第1測定電極と第2測定電極の少なくともいずれかと対象組織との接触状態の判別結果を用いて、焼灼電極と対象組織が所定の接触をしているか否かを判別するものでもよい。また、上記バルーンカテーテルシステムにおいて、バルーンカテーテルには、第1測定電極と第2測定電極のペアが長手軸方向に並んで少なくとも3つ設けられ、制御部は、長手軸方向において隣り合う2つの測定電極のペアを用いて、焼灼電極の一部が対象組織と所定の接触をしているか否かを判別するものでもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記バルーンカテーテルおよびバルーンカテーテルシステムによれば、第1部分に対して第2部分が曲がりやすくなり、絶縁材に可撓性を付与することができる。また、絶縁材上に配置されている焼灼電極も変形させやすくなり、肺静脈等の対象組織に接触させやすくなる。その結果、焼灼のやり直しなどを防ぐことができるため、手技の効率化が図られる。上記バルーンカテーテルシステムによれば、各測定電極を焼灼電極の近くに配置することができる。各インピーダンス測定電極と対象組織の接触状態の検出結果から、焼灼電極と対象組織の具体的な接触状態を把握することができるため、焼灼に先立ちバルーンカテーテルを生体内の適切な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施態様に係るバルーンカテーテルの側面図(一部断面図)である。
【
図2】
図1に示したバルーンカテーテルの変形例を示す断面図(一部側面図)である。
【
図3】
図1に示したバルーンカテーテルの他の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
【
図4】
図1に示した絶縁材と焼灼電極の配置の変形例を示す模式図である。
【
図5】
図4に示した絶縁材の第1部分と第2部分の位置を示した模式図である。
【
図6】
図4に示した絶縁材と焼灼電極の配置の他の変形例を示す模式図である。
【
図7】
図4に示した絶縁材と焼灼電極の配置のさらに他の変形例を示す模式図である。
【
図8】
図4に示した絶縁材と焼灼電極の配置のさらに他の変形例を示す模式図である。
【
図9】
図8に示した焼灼電極の主部と副部の位置を示した模式図である。
【
図10】
図4に示した絶縁材と焼灼電極の配置のさらに他の変形例を示す模式図である。
【
図11】
図4に示した絶縁材と焼灼電極の配置のさらに他の変形例を示す模式図である。
【
図12】
図11に示した絶縁材の第1部分と第2部分の位置を示した模式図である。
【
図13】
図4に示した絶縁材と焼灼電極の配置のさらに他の変形例を示す模式図である。
【
図14】
図13に示した絶縁材の第1部分と第2部分と第3部分の位置を示した模式図である。
【
図15】
図13に示した絶縁材と焼灼電極の配置の変形例を示す模式図である。
【
図16】
図13に示した絶縁材と焼灼電極の配置の他の変形例を示す模式図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルシステムのブロック図である。
【
図18】
図17に示したバルーンカテーテルシステムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0017】
1.バルーンカテーテル
本発明のバルーンカテーテルの一実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、シャフトの遠位部に配置されているバルーンと、バルーンの外面に配置されている絶縁材と、絶縁材上に配置されている焼灼電極と、を有し、絶縁材は、長手軸方向に延在している第1部分と、第1部分から長手軸方向とは異なる方向に延在し、長手軸方向において互いに離れて配されている複数の第2部分と、を有する点に要旨を有する。上記バルーンカテーテルによれば、絶縁材が第1部分とは異なる方向に延在している複数の第2部分を有しているため、第1部分に対して第2部分が曲がりやすくなり、絶縁材に可撓性を付与することができる。また、絶縁材上に配置されている焼灼電極も変形させやすくなり、肺静脈等の対象組織に接触させやすくなる。その結果、焼灼のやり直しなどを防ぐことができるため、手技の効率化が図られる。
【0018】
バルーンカテーテルは、生体組織を焼灼するアブレーションカテーテルである。バルーンカテーテルの用途の一例としては、心房細動の治療法の一つである肺静脈隔離術が挙げられる。肺静脈隔離術では、バルーンの外面に焼灼電極を設けて、バルーンを拡張し、焼灼電極を肺静脈開口部に接触させた状態で焼灼電極に高周波電流を流すことによって肺静脈開口部を焼灼する。これにより心房細動の原因となる異常な電気経路を遮断することができる。
【0019】
図1~
図16を参照して、バルーンカテーテルの構成について説明する。
図1は本発明の一実施態様に係るバルーンカテーテルの側面図(一部断面図)である。
図2~
図3は
図1に示したバルーンカテーテルの変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図4は
図1に示した絶縁材と焼灼電極の配置の変形例を示す模式図である。
図6~
図8、
図10~
図11および
図13は
図4に示した絶縁材と焼灼電極の配置の変形例を示す模式図である。
図5は
図4に示した絶縁材の第1部分と第2部分の位置を示した模式図である。
図9は
図8に示した焼灼電極の主部と副部の位置を示した模式図である。
図12は
図11に示した絶縁材の第1部分と第2部分の位置を示した模式図である。
図14は
図13に示した絶縁材の第1部分と第2部分と第3部分の位置を示した模式図である。
図15~
図16は
図13に示した絶縁材と焼灼電極の配置の変形例を示す模式図である。
図5では焼灼電極を省略している。
図12および
図14では焼灼電極と測定電極を省略している。
図11、
図13、
図15~
図16では焼灼電極と測定電極の配置をわかりやすくするためにこれらをハッチングで示している。
図1では、シャフトの遠位側から近位側にわたってワイヤを挿通するオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルの構成例を示している。バルーンカテーテル1は、シャフト2と、バルーン10と、絶縁材20と、焼灼電極30と、を有する。以下ではバルーンカテーテルを単にカテーテルと称することがある。
【0020】
本明細書において、カテーテル1の遠位側とは、シャフト2の長手軸方向xの遠位端側であって処置対象側を指す。カテーテル1の近位側とは、シャフト2の長手軸方向xの近位端側であって使用者の手元側を指す。各部材をシャフト2の長手軸方向xにおいて二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。カテーテル1の径方向において、内方はシャフト2の長手軸方向xに延びる中心軸cに向かう方向を指し、外方は内方とは反対の放射方向を指す。
【0021】
シャフト2は長手軸方向xと径方向と周方向を有している。
図1に示すようにシャフト2は長手軸方向xに遠位端と近位端を有している。シャフト2の遠位部にはバルーン10が配置されている。シャフト2の近位部には、バルーン10の内部に流体を供給するためのシリンジ等の流体供給器62が接続されている。カテーテル1は、流体供給器62からシャフト2を通じてバルーン10の内部に流体が供給されるように構成されている。流体供給器62は、流体を加熱するヒーターや流体を冷却するクーラーの少なくともいずれか一方を備えていてもよい。流体供給器62から供給される流体の温度は設定または制御されてもよい。
【0022】
シャフト2はその内部にバルーン10内に供給される流体の流路と、体腔内でのシャフト2の進行をガイドするワイヤの挿通路とを有していてもよい。流路は、シャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。ワイヤの挿通路も、シャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。
【0023】
シャフト2は少なくとも二重管から構成されているコアキシャル構造を有していてもよい。
図1ではシャフト2は内管3と外管4から構成されている。
図1では内管3の内腔はワイヤの挿通路として機能し、内管3と外管4の間の空間はバルーン10を拡張するための流体の流路として機能する。シャフト2の遠位部では、内管3が外管4の遠位端から延出してバルーン10を長手軸方向xに貫通している。
【0024】
バルーン10はシャフト2の遠位部に固定されている遠位固定部12と、遠位固定部12よりも近位側でシャフト2に固定されている近位固定部13と、遠位固定部12と近位固定部13の間に位置し且つシャフト2に固定されていない拡張可能部14と、を有している。バルーン10の内部に流体を供給すると拡張可能部14が拡張し、バルーン10から流体を排出することで拡張可能部14が収縮する。
図1では内管3の遠位部に遠位固定部12が固定され、外管4の遠位部に近位固定部13が固定されている。遠位固定部12と近位固定部13は、例えば溶着、または接着剤による接着等の方法でシャフト2に固定することができる。
【0025】
図1ではシャフト2の外管4の近位部が分岐している。分岐の第1の側4Aには流体供給器62が接続されている。分岐の第2の側4Bの近位端からは内管3が延出しており、内管3の近位部に操作部61が接続されている。操作部61は術者が把持する部分である。分岐の第2の側4Bまたは内管3の近位部はワイヤポートまたはケーブルコネクタに接続されてもよい。シャフト2と流体供給器62またはワイヤポートは、チューブやコネクタ等の接続部材を介して間接的に接続されていてもよい。内管3はその近位部の側壁に内管3の内腔と連通している側孔を有していてもよい。側孔を通じて内管3の内腔にワイヤを挿通することができる。側孔は薬剤等の注入口や体内の流体等の吸引口として用いられてもよい。
【0026】
シャフト2はマルチルーメン構造を有していてもよい。マルチルーメン構造は、1つのシャフト2が複数の内腔を有する構造である。複数の内腔は好ましくはそれぞれ長手軸方向xに延在しており、互いに平行に配されている。例えばシャフト2は長手軸方向xに延在している第1内腔および第2内腔と、シャフト2の側壁であってバルーン10の拡張可能部14と重なる位置にあり第1内腔と連通している第1側孔と、を有していてもよい。流体供給器62から第1内腔へバルーン拡張用の流体が供給されるようにシャフト2に流体供給器62が接続されてもよい。
【0027】
体腔形状に沿ってシャフト2を変形させるために、シャフト2は可撓性を有していることが好ましい。形状保持のため、シャフト2は弾性を有していることが好ましい。シャフト2は樹脂、金属、または樹脂と金属の組み合わせから構成されていることが好ましい。シャフト2としては、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向xに接続したものが挙げられる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが挙げられる。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは、シャフト2の長手軸方向x全体に亘って一定の密度で形成されてもよく、シャフト2の長手軸方向xの位置によって密度が異なるように形成されてもよい。金属管の可撓性を高めるために、金属管の外側表面には切込みや溝が形成されていてもよい。切込みや溝の形状は、直線状、円弧状、環状、らせん状やこれらの組み合わせとすることができる。シャフト2の内管3と外管4は上記のいずれかの構造を有していてもよい。内管3と外管4の構造は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0028】
シャフト2を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シャフト2を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよいが、中でも熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。シャフト2を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。シャフト2は異なる材料または同じ材料による積層構造としてもよい。内管3と外管4の構成材料は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0029】
1つのシャフト2にはバルーン10が1つのみ配置されることが好ましいが、バルーン10は複数配置されてもよい。一のバルーンの内部に他のバルーンが配置されてもよく、複数のバルーンが長手軸方向xに並ぶように配置されてもよい。
【0030】
バルーン10は樹脂を成形することにより製造することができる。例えば、押出成形された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形することでバルーン10を製造することができる。金型の形状を変えることでバルーン10を任意の形状に形成することができる。二軸延伸ブロー成形以外にもディップ成形、射出成形、圧縮成形などの成形方法によりバルーン10を製造することができる。
【0031】
バルーン10を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バルーン10の薄膜化や柔軟性の点からは、エラストマー樹脂を用いることができる。
【0032】
バルーン10の内部に供給される流体としては、例えば、生理食塩水、造影剤、またはこれらの混合液等の液体や、空気、窒素、炭酸ガス等の気体を挙げることができる。
【0033】
拡張可能部14を拡張させたときの形状は特に限定されないが、球体状、長円球体状、柱体状、錐体状、錐台体状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができる。長円形状には、楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれ、以降の説明でも同様である。
【0034】
絶縁材20は、少なくとも焼灼電極30をバルーン10に保持するために設けられるものであり、電気を通しにくい部材である。バルーン10の変形に追従させるために、絶縁材20は可撓性を有する材料から構成されることが好ましい。また、形状保持のため、絶縁材20は弾性を有していてもよい。
【0035】
絶縁材20はバルーン10の外面11に配置されている。絶縁材20はバルーン10の一部のみに配置されており、バルーン10の全体には配置されていないことが好ましい。また、絶縁材20はバルーン10の一部のみに固定されており、バルーン10の外面11の全体には固定されていないことが好ましい。絶縁材20を部分的に設けることでバルーン10の可撓性が確保される。絶縁材20はバルーン10の外面11に配されるコーティングやプリントを兼ねていてもよい。
【0036】
絶縁材20はバルーン10の外面11に固定されていることが好ましく、バルーン10の拡張可能部14の外面11に固定されていることがより好ましい。絶縁材20は、バルーン10の外面11に直接接合されていてもよく、他の部材を介して間接的に接合されていてもよい。絶縁材20は、溶着または接着剤による接着等の方法でバルーン10の外面11に固定することができる。
【0037】
図1に示すように、長手軸方向xにおいて、拡張可能部14のうち拡張時に外径が最大となる部分を最大外径部141とする。絶縁材20は最大外径部141に位置していることが好ましい。焼灼電極30も最大外径部141に配置しやすくなり、焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。また、絶縁材20は、長手軸方向xにおける拡張可能部14の中央に位置していてもよい。
【0038】
長手軸方向xにおいて、絶縁材20は拡張可能部14の遠位部に位置していてもよい。焼灼電極30をバルーンカテーテル1の進行方向に向けることができ、焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。なお、長手軸方向xにおいて、絶縁材20は拡張可能部14の近位部に位置していてもよい。
【0039】
絶縁材20は樹脂から構成されていることが好ましい。絶縁材20の電気絶縁性を確保できるとともにバルーン10に固定しやすくなる。絶縁材20を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。なお、絶縁材20はゴムまたはエラストマーから構成されていてもよい。
【0040】
絶縁材20の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。絶縁材20の形状は、帯形状、リーフ形状、ストリップ形状などであってもよい。絶縁材20は長手軸方向xに長尺な形状を有していることが好ましい。バルーン10の可撓性を確保しながら、焼灼電極30をバルーン10に保持させやすくなる。絶縁材20の詳細な形状については後述する。ここで絶縁材20の形状とはバルーン10を膨張させたときに視認できる形状を指すものとする。
【0041】
図1に示すように1つのバルーン10には絶縁材20が1つのみ配置されてもよいが、
図2に示すように複数の絶縁材20が配置されることが好ましい。各絶縁材20に焼灼電極30を配置することができる。複数の絶縁材20はバルーン10の周方向に並んでいることがより好ましい。複数の絶縁材20はバルーン10の周方向において等間隔に配置されていることがさらに好ましい。複数の絶縁材20は長手軸方向xに並んでいてもよい。
【0042】
複数の絶縁材20の厚さは互いに異なっていてもよいが、それぞれ同じであることが好ましい。各絶縁材20に配置されている焼灼電極30を対象組織に同程度に接触させやすくなる。
【0043】
複数の絶縁材20を構成する材料は互いに異なっていてもよいが、手技中のバルーン10の変形度合いを管理しやすくするためにはそれぞれ同じであることが好ましい。
【0044】
複数の絶縁材20の形状は長手軸方向xを回転軸とする回転対称であることが好ましい。焼灼電極30をバルーン10上にバランスよく配置しやすくなるため、バルーン10の周方向において均一に焼灼を行いやすくなる。
【0045】
1つのバルーン10が複数の絶縁材20を有している場合、複数の絶縁材20の形状はそれぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、第1の形状を有する絶縁材20と、第1の形状とは異なる第2の形状を有する絶縁材20とが、長手軸方向xまたはバルーン10の周方向に並んでいてもよい。
【0046】
図2に示すように絶縁材20は可撓性基材200であって第1面201と、第1面201と反対側の第2面202を有し、第1面201がバルーン10側を向いており、焼灼電極30は第2面側202に配置されていることが好ましい。可撓性基材200としては、樹脂フィルムや樹脂シートを挙げることができる。可撓性基材200はバルーン10の変形に追従しやすいため、焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。
【0047】
可撓性基材200は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。以下では第1面201から第2面202に向かう方向における厚さを、可撓性基材200の厚さという。第1面201から第2面202に向かう方向に垂直な方向を面方向という。可撓性基材200は、面方向の最小長さに対して厚さ方向の最大長さが短いものであることが好ましい。
【0048】
可撓性基材200は焼灼電極30よりも薄くてもよいが、バルーン10に焼灼電極30を保持しやすくするためには、可撓性基材200は焼灼電極30よりも厚いことが好ましい。なお、可撓性基材200は拡張前のバルーン10の膜厚よりも厚くてもよく、薄くてもよい。可撓性基材200は、面方向の全体が同じ厚さを有していてもよく、部分毎に異なる厚さを有していてもよい。
【0049】
焼灼電極30は、絶縁材20上に配置されているものである。焼灼電極30に高周波電流が通電されることによって、対象組織を焼灼することができる。
【0050】
1つのバルーン10には焼灼電極30が1つのみ配置されてもよいが、複数の焼灼電極30が配置されることが好ましい。複数の焼灼電極30はバルーン10の周方向に並んでいることが好ましい。複数の焼灼電極30はバルーン10の周方向において等間隔に配置されていることがより好ましい。複数の焼灼電極30は長手軸方向xに並んでいてもよい。このように焼灼電極30を複数配置することで、広範囲を一斉に焼灼しやすくなる。
【0051】
図1~
図2では、焼灼電極30は絶縁材20の外面に固定されている。対象組織と接触できるように、焼灼電極30はバルーン10の表面に露出している。
【0052】
焼灼電極30としては金属酸化物や金属の薄膜またはシートを用いることができる。これにより焼灼電極30がバルーン10の変形に追従しやすくなる。
【0053】
薄膜を絶縁材20上に配することで焼灼電極30を形成する方法としては、エッチング法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法、スクリーン印刷やオフセット印刷等の印刷方法を用いることができる。
【0054】
焼灼電極30を構成する材料は導電性を有していればよく、例えば金属、または樹脂と金属を含む混合物から構成することができる。中でも、導電性樹脂や、金、銀、銅、白金、白金イリジウム合金、ステンレス、タングステン等の金属を用いることが好ましい。複数の焼灼電極30を構成する材料は互いに異なっていてもよいが、焼灼電極30に流れる高周波電流を制御しやすくする観点からはそれぞれ同じであることが好ましい。
【0055】
焼灼電極30の形状は、例えば円形状、長円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせとすることができる。焼灼電極30は、長手軸方向xに長尺な形状を有していることが好ましい。複数の焼灼電極30の形状は互いに異なっていてもよいが、複数の焼灼電極30を対象組織に均一に接触しやすくする観点からはそれぞれ同じであることが好ましい。
図1~
図2では焼灼電極30が正方形状である例を示している。
【0056】
複数の焼灼電極30の厚さは互いに異なっていてもよいが、それぞれ同じであることが好ましい。各焼灼電極30を対象組織に同程度に接触させやすくなり、焼灼電極30と対象組織の接触の程度を把握しやすくなる。
【0057】
焼灼電極30は対象組織の焼灼だけでなく生体電位の測定に使用してもよい。生体電位は、例えばカテーテル1に好ましく設けられる参照電極と焼灼電極30との電位差を測定することで取得できる。参照電極としては、シャフト2のうちバルーン10よりも遠位側または近位側に設けられる電極や、患者の体表面に貼り付けられる電極を用いることができる。
【0058】
図1に示すように、焼灼電極30の一部が、拡張可能部14の最大外径部141に位置していることが好ましい。焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。また、焼灼電極30の一部が、長手軸方向xにおける拡張可能部14の中央に位置していてもよい。
【0059】
長手軸方向xにおいて、焼灼電極30が拡張可能部14の遠位部に位置していてもよい。全ての焼灼電極30が拡張可能部14の遠位部に位置していてもよい。焼灼電極30がバルーンカテーテル1の進行方向を向くため、焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。
【0060】
長手軸方向xにおいて、焼灼電極30が拡張可能部14の近位部に位置していてもよい。全ての焼灼電極30が拡張可能部14の近位部に位置していてもよい。
【0061】
図3に示すように、カテーテル1は、患者の体表面に設けられ、焼灼電極30との間で高周波電流が印加される対極板35を有していてもよい。これにより、焼灼電極30をモノポーラ電極として使用することができる。
【0062】
対極板35としては、患者の体表面に貼り付け可能な電極パッドが挙げられる。電極パッドは、例えば、導電層と、導電層上に配される粘着ゲル層またはソリッドゲル層とを有するものとすることができる。対極板35の導電層を構成する材料の説明は、焼灼電極30を構成する材料の説明を参照することができる。
【0063】
図4に示すように焼灼電極30が複数設けられる場合、2つの焼灼電極30の間に高周波電流が印加されてもよい。これらの電極をバイポーラ電極として用いることができる。モノポーラに比べて電流を局所的に流すことができるため、対象組織以外の組織の焼灼を防ぐことができる。
【0064】
図1~
図3に示すように1つの絶縁材20に焼灼電極30が1つのみ配置されてもよい。
図4に示すように1つの絶縁材20に複数の焼灼電極30が配置されてもよい。
【0065】
焼灼電極30は第1導線(図示せず)に接続されており、第1導線は手元側まで延びて高周波発生器63に接続されている。高周波電界を印加することで焼灼電極30を加熱することができる。焼灼電極30と同様に、第1導線は絶縁材20に固定されていることが好ましい。高周波発生器63は電源回路や高周波発振回路を含んでいてもよい。焼灼電極30と高周波発生器63の間にはインピーダンス整合回路が設けられてもよい。
【0066】
第1導線は、後述するバルーンカテーテルシステム100の測定部64に接続されてもよい。焼灼電極30で測定された生体電位の信号を測定部64に送信することで、第1測定電極41と第2測定電極42の少なくともいずれかと、焼灼電極30の間のインピーダンスを測定することができる。
【0067】
第1導線は、導電ワイヤなどの導電性の線状体、絶縁材20にプリントされた導電性物質、またはこれらを接続したものであってもよい。第1導線は、バルーン10の内面上、バルーン10と絶縁材20の間、または絶縁材20の外面上に配置することができる。第1導線は金属酸化物や金属の薄膜であってもよい。絶縁材20上に薄膜状の第1導線を形成する方法は、絶縁材20上に薄膜状の焼灼電極30を形成する方法の説明を参照することができる。シャフト2においては、第1導線はシャフト2の外面上、内面上、外面と内面の間の肉厚部分、ルーメン内の少なくともいずれか1つに配置することができる。
【0068】
図1に示すように、絶縁材20は、長手軸方向xに延在している第1部分21と、第1部分21から長手軸方向xとは異なる方向に延在し、長手軸方向xにおいて互いに離れて配されている複数の第2部分22と、を有する。上記バルーンカテーテル1によれば、絶縁材20が第1部分21とは異なる方向に延在している複数の第2部分22を有しているため、第1部分21に対して第2部分22が曲がりやすくなり、絶縁材20に可撓性を付与することができる。また、絶縁材20上に配置されている焼灼電極30も変形させやすくなり、肺静脈等の対象組織に接触させやすくなる。その結果、焼灼のやり直しなどを防ぐことができるため、手技の効率化が図られる。
【0069】
図4~
図14を用いて絶縁材20の構成について説明する。
図5では焼灼電極30を省略して記載している。
図5の細い実線が第1部分21の外縁25を示しており、太い実線が第2部分22の外縁26を示しており、点線が第1部分21と第2部分22の境界27を示している。
図4~
図5の左右方向がシャフト2の長手軸方向xであり、
図4~
図5の上下方向がバルーン10の周方向pである。
図4~
図5の左側がシャフト2の遠位端側であり、右側がシャフト2の近位端側である。
図4~
図8では、絶縁材20が第2部分221、222、223、224を有している。
図10では絶縁材20が第2部分221、22、223、224、225を有している。
【0070】
1つの絶縁材20中の第1部分21の数は特に限定されないが、1個のみ設けられていることが好ましい。第1部分21から延びるように第2部分22を配置しやすくなる。
【0071】
第1部分21の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、第1部分21の形状は、帯形状、リーフ形状、ストリップ形状などであってもよい。1つのバルーン10に設けられている複数の第1部分21の形状は、それぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0072】
図5に示すように、第1部分21の外縁25は角部を有してもよい。外縁25は、一または複数の角部を有していてもよい。角部の角度は直角に限定されず、鋭角でも鈍角でもよい。外縁25は一または複数の丸みを有していてもよい。
【0073】
図4に示すように、本明細書では、第1部分21のうちバルーン10の周方向pにおける長さを第1長さ21aといい、長手軸方向xにおける長さを第2長さ21bという。第1長さ21aおよび第2長さ21bはバルーン10を拡張させた状態で計測される。
【0074】
図4に示すように、第1部分21は長手軸方向xに長尺な形状を有していることが好ましい。すなわち第2長さ21bは第1長さ21aよりも長いことが好ましい。
【0075】
第1長さ21aが長手軸方向xの位置によって異なっていてもよい。第1部分21は、バルーン10の遠位端側に向かって第1長さ21aが短くなっている部分を有していてもよい。第1部分21は、バルーン10の近位端側に向かって第1長さ21aが短くなっている部分を有していてもよい。第1部分21が遠位側から近位側に向かって順に、遠位区間と中央区間と近位区間を有しており、バルーン10の周方向における中央区間の第1長さ21aの平均値が、遠位区間の第1長さ21aの平均値および近位区間の第1長さ21aの平均値よりも長くてもよい。このように中央区間において第1部分21が幅広に形成されていてもよい。なお、遠位区間と中央区間と近位区間は長手軸方向xにおいて第1部分21を三等分割して形成される。
【0076】
第1部分21は、拡張可能部14からバルーン10の遠位固定部12まで延在していてもよい。第1部分21は、拡張可能部14からバルーン10の近位固定部13まで延在していてもよい。第1部分21は、バルーン10の拡張可能部14のみに配されていてもよい。
【0077】
第2部分22は、第1部分21を起点として長手軸方向xとは異なる方向に延出している部分である。第1部分21と第2部分22は一続きに構成されていることが好ましい。第1部分21と第2部分22は分離されていてもよいが、分離されていないことが好ましい。
【0078】
1つの絶縁材20中の第2部分22の数は2個以上であれば特に限定されないが、4個以上、8個以上、12個以上、16個以上であることが好ましい。第2部分22を4個以上設けることで、バルーン10が変形したときに絶縁材20も追従して変形しやすくなる。第2部分22の数は、50個以下、40個以下、または30個以下であることが好ましい。第2部分22の数を50個以下に設定することで、バルーン10の表面から第2部分22が剥がれないように第2部分22を固定しやすくなる。
【0079】
第2部分22の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、第2部分22の形状は、帯形状、リーフ形状、ストリップ形状などであってもよい。1つの絶縁材20が有する複数の第2部分22の形状は、それぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0080】
図5に示すように、第2部分22の外縁26は角部を有してもよい。外縁26は、一または複数の角部を有していてもよい。角部の角度は直角に限定されず、鋭角でも鈍角でもよい。外縁26は一または複数の丸みを有していてもよい。
【0081】
図4、
図6~
図7に示すように、本明細書では、第2部分22のうち、バルーン10の周方向pにおける長さを第3長さ22aといい、長手軸方向xにおける長さを第4長さ22bという。第3長さ22aおよび第4長さ22bはバルーン10を拡張させた状態で計測される。第3長さ22aは第4長さ22bよりも長いことが好ましい。第2部分22は、第1部分21から離れる方向に向かって長尺な形状を有していることが好ましい。
【0082】
第2部分22の第3長さ22aは、第1部分21の第1長さ21aより長くてもよく、短くてもよい。第2部分22の第4長さ22bは、第1部分21の第1長さ21aより長くても短くてもよい。
【0083】
第2部分22は長手軸方向xに垂直な方向に延在していてもよく、バルーン10の周方向pに延在していてもよい。
図4~
図5に示すように、複数の第2部分22は、それぞれバルーン10の周方向pに延在していることが好ましい。バルーン10の形状変化に追従して絶縁材20が変形しやすくなる。第2部分22は長手軸方向xに対して傾斜した方向に延在していてもよい。
図6では、第2部分22は第1部分21から離れる方向に向かうにしたがって近位側から遠位側に延在している。
図7では、第2部分22は第1部分21から離れる方向に向かうにしたがって遠位側から近位側に延在している。
【0084】
以下では、バルーン10の周方向pにおいて第1部分21を挟んだ一方側p1を第1側p1、バルーン10の周方向pにおいて第1部分21を挟んだ他方側p2を第2側p2と称することがある。
【0085】
図4に示すように、複数の第2部分22のうち、少なくとも1つの第2部分221が第1側p1に配されており、少なくとも1つの第2部分222が第2側p2に配されていることが好ましい。
【0086】
図4~
図7に示すように、複数の第2部分22は第1側p1と第2側p2にそれぞれ配されていることが好ましい。第1部分21の両側にそれぞれ第2部分22を複数設けることにより、バルーン10に追従して絶縁材20がより一層変形しやすくなる。
図4では、第2部分221、223が第1側p1に、第2部分222、224が第2側p2に配されている。
【0087】
第1側p1に配されている第2部分22の数は、第2側p2に配されている第2部分22の数よりも多くても少なくてもよく、同じであってもよい。
【0088】
複数の第2部分22のうち少なくとも1つの第2部分22の第4長さ22bは、バルーン10の周方向pにおいて一定であってもよい。複数の第2部分22のうち少なくとも1つの第2部分22の第4長さ22bは、バルーン10の周方向pの位置によって異なっていてもよい。第2部分22は、第1部分21から離れる方向に向かうにしたがって第4長さ22bが短くなっている部分を有していてもよい。第2部分22は、第1部分21から離れる方向に向かうにしたがって第4長さ22bが長くなっている部分を有していてもよい。
【0089】
複数の第2部分22は、長手軸方向xに並んでいることが好ましい。第1側p1と第2側p2にそれぞれ複数の第2部分22が配されており、それらが長手軸方向xに並んでいることが好ましい。
【0090】
長手軸方向xに隣り合う2つの第2部分22は同じ方向に延在していてもよい。また、長手軸方向xに隣り合う2つの第2部分22は互いに異なる方向に延在していてもよい。
【0091】
第1側p1または第2側p2において、長手軸方向xに互いに離れ、かつ隣り合って配されている2つの第2部分22の最大間隔をdとする。
図4に示すように最大間隔dは、長手軸方向xに隣り合う2つの第2部分22のうち最大の第4長さ22bよりも長くてもよい。また、最大間隔dは、長手軸方向xに隣り合う2つの第2部分22のうち最大の第4長さ22bよりも短くてもよい。
【0092】
第1側p1に配されている複数の第2部分22のうちの1つと、第2側p2に配されている複数の第2部分22のうちの1つとが、長手軸方向xにおいて互いに重なり合う位置にあることが好ましい。複数の第2部分22上の焼灼電極30がバルーン10の周方向pにバランスよく配置されやすくなる。例えば、
図8では、第2部分221と222が互いに重なり合う位置にある。また、第2部分223と224も互いに重なり合う位置にある。
【0093】
ここで2つの第2部分22が長手軸方向xにおいて互いに重なり合う位置にあるとは、第1側p1と第2側p2のそれぞれ1つの第2部分22が、長手軸方向xにおいて完全に重なり合う位置にある態様だけでなく、一部が重なり合う態様も含まれる。完全に重なり合う位置にある態様とは、例えば、第1側p1の1つの第2部分22の遠位端の位置が第2側p2の1つの第2部分22の遠位端の位置と一致し、かつ、第1側p1の上記1つの第2部分22の近位端の位置が第2側p2の上記1つの第2部分22の近位端の位置と一致する態様である。一部が重なり合う態様とは、例えば、第1側p1の1つの第2部分22の遠位端と近位端の間に、第2側p2の1つの第2部分22の一部が存在している態様である。
【0094】
図4~
図8に示すように、第1側p1の第2部分22と第2側p2の第2部分22は、第1部分21を挟んで対称に配されていることが好ましい。
【0095】
第1側p1に配されている複数の第2部分22のうちの1つと、第2側p2に配されている複数の第2部分22のうちの1つとが、長手軸方向xにおいて互いにずれた位置にあることが好ましい。このような態様によっても絶縁材20に可撓性を付与することができる。絶縁材20が有する全ての第2部分22が長手軸方向xにおいて互いにずれた位置にあることがより好ましい。
【0096】
ここで2つの第2部分22が互いにずれた位置にあるとは、長手軸方向xにおいて互いに重ならない位置にあることを意味する。
図10では、第2部分221の近位端が第2部分222の遠位端より遠位側にある。第2部分223の遠位端は、第2部分222の近位端よりも近位側にある。
【0097】
複数の第2部分22のうち少なくとも1つの第4長さ22bが、他の少なくとも1つの第2部分22の第4長さ22bよりも長くてもよい。
図11~
図12では、第2部分228が第2部分227よりも幅広く形成されている。これにより、幅広の第2部分228上に焼灼電極30や測定電極40などを配置しやすくなる。なお、幅広の第2部分228の第4長さ22bは、第1部分21の第1長さ21aの最大値よりも長くてもよい。幅広の第2部分228の第3長さ22aは、第2部分228よりも幅が狭い第2部分22(例えば第2部分227)の第3長さ22aよりも長くてもよい。
【0098】
図13~
図14に示すように、絶縁材20は、第1側p1と第2側p2の少なくともいずれかに、長手軸方向xにおいて隣り合う2つの第2部分22の間であって第1部分21から離れた位置で長手軸方向xに延在している第3部分23を有していてもよい。第3部分23上に、焼灼電極30や測定電極40などを配置することができる。
【0099】
図14では第2部分22と第3部分23が境界28で区切られているが、境界28は便宜上図示したものであって実際に視認することができなくてもよい。第3部分23は第2部分22と接触していてもよい。第3部分23は第2部分22と接続されていてもよい。また、第3部分23は第2部分22と一体的に形成されていてもよい。
図14では、第3部分23よりも遠位側にある第2部分2201と第3部分23の遠位端部が接続されており、第3部分23よりも近位側にある第2部分2202と第3部分23の近位端部が接続されている。
【0100】
第3部分23は、長手軸方向xにおいて隣り合う2つの第2部分22からそれぞれ離れて位置していてもよい。
【0101】
バルーン10の周方向pにおいて、第1部分21と第3部分23の間には間隙29が存在していてもよい。間隙29を設けることにより、絶縁材20に可撓性をより一層付与することができる。
【0102】
第3部分23の少なくとも一部が長手軸方向xにおいて隣り合う2つの第2部分22の間に配されていればよい。第3部分23の一部が隣り合う2つの第2部分22のいずれか一方よりも第1部分21から離れた位置に配されていてもよい。
【0103】
バルーン10の周方向pにおいて、第3部分23の外方端は、隣り合う2つの第2部分22のいずれか一方の外方端よりも第1部分21側に配されていてもよい。
【0104】
図15に示すように、バルーン10上であって第1部分21と第3部分23の間に接着材45が配されていることが好ましい。間隙29に接着材45が配されていることが好ましい。換言すれば、接着材45はバルーン10に直接接合するように配される。第1部分21と第3部分23の間に接着材45が配されるとアンカーのようになって絶縁材20とバルーン10の外面11との接着性を向上させることができる。
【0105】
接着材45は、バルーン10の面方向における間隙29の一部のみに配されていてもよく、間隙29の全体に配されていてもよい。間隙29を画定する第1部分21と第2部分22と第3部分23の外縁と接するように接着材45が配されていることが好ましい。間隙29の全体に接着材45が充填されていてもよい。
【0106】
バルーン10の膜の厚さ方向において、接着材45の最大高さは絶縁材20の最大高さよりも高くてもよく、低くてもよい。
【0107】
接着材45としては、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、またはシリコーン系の接着剤を挙げることができる。
【0108】
焼灼電極30は、絶縁材20上のどのような位置に配されていてもよいが、例えば以下のように配することができる。
図4に示すように、一の絶縁材20上に、長手軸方向xに並んでいる複数の焼灼電極30が配置されていることが好ましい。このように焼灼電極30を飛び飛びに配置することで、バルーン10の可撓性を保ちやすくなる。なお、1つの絶縁材20上にバルーン10の周方向に並んでいる複数の焼灼電極30が配置されていてもよい。
【0109】
図4および
図8に示すように、焼灼電極30の外縁30aは、絶縁材20の外縁20aよりも内側に位置していることが好ましい。この場合、バルーン10を拡張させた状態で外から絶縁材20を視認可能である。絶縁材20の外縁20aまで焼灼電極30に固定しやすくなり、絶縁材20から焼灼電極30が剥がれにくくなる。焼灼電極30の外縁30aの一部のみが絶縁材20の外縁20aより内側に位置していてもよいが、焼灼電極30の外縁30aの全体が絶縁材20の外縁20aよりも内側に位置していることがより好ましい。
【0110】
焼灼電極30の外縁30aが、絶縁材20の外縁20aと重なっていてもよい。この場合、バルーン10を拡張させて、その面方向と垂直な方向から見たときに外縁20aの少なくとも一部が焼灼電極30に隠れて視認できなくなる。絶縁材20の広範囲に焼灼電極30が配置されるため、焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。焼灼電極30の外縁30aの一部のみが絶縁材20の外縁20aと重なっていてもよく、焼灼電極30の外縁30aの全体が絶縁材20の外縁20aと重なっていてもよい。
【0111】
焼灼電極30は第1部分21に配置されていることが好ましい。焼灼電極30は第1部分21の全体に配置されていてもよいが、第1部分21の一部のみに配置されていてもよい。
図4、
図6~
図7に示すように焼灼電極30は第1部分21のみに配され、第2部分22には配置されていなくてもよい。
【0112】
図8および
図10に示すように、焼灼電極30は1つの絶縁材20が有する複数の第2部分22のうち少なくとも1つに配置されていてもよい。また、焼灼電極30は、1つの絶縁材20が有する複数の第2部分22のうち少なくとも1つに配置されており、残りには配置されていなくてもよい。
【0113】
図8および
図10に示すように焼灼電極30は、第1部分21と複数の第2部分22に配置されていることが好ましい。絶縁材20の変形に追従して焼灼電極30も変形しやすくなるため、焼灼電極30が対象組織に接触しやすくなる。
【0114】
図8および
図10に示すように、焼灼電極30は、全ての第2部分22に配置されていることが好ましい。焼灼電極30と対象組織の接触面積を増やすことができる。
【0115】
図9に示すように、焼灼電極30は、長手軸方向xに延在している主部31と、主部31から長手軸方向xとは異なる方向に延在し、長手軸方向xにおいて互いに離れて配されている複数の副部32と、を有することが好ましい。絶縁材20の広範囲に焼灼電極30が配置されやすくなるため、焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。
【0116】
図9では絶縁材20を省略して記載している。
図9の細い実線が主部31の外縁35を示しており、太い実線が副部32の外縁36を示しており、点線が主部31と副部32の境界37を示している。
【0117】
1つの焼灼電極30中の主部31の数は特に限定されないが、1個のみ設けられていることが好ましい。主部31から延びるように副部32を配置しやすくなる。
【0118】
主部31の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、主部31の形状は、帯形状、リーフ形状、ストリップ形状などであってもよい。1つのバルーン10に設けられている複数の主部31の形状は、それぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。主部31の形状は、絶縁材20の第1部分21の形状と相似または合同であってもよい。
【0119】
図9に示すように、主部31の外縁35は角部を有してもよい。外縁35は、一または複数の角部を有していてもよい。角部の角度は直角に限定されず、鋭角でも鈍角でもよい。外縁35は一または複数の丸みを有していてもよい。
【0120】
図8~
図9に示すように、主部31は長手軸方向xに長尺な形状を有していることが好ましい。
【0121】
主部31は、拡張可能部14からバルーン10の遠位固定部12まで延在していてもよい。主部31は、拡張可能部14からバルーン10の近位固定部13まで延在していてもよい。主部31は、バルーン10の拡張可能部14のみに配されていてもよい。
【0122】
副部32は、主部31を起点として長手軸方向xとは異なる方向に延出している部分である。主部31と副部32は一続きに構成されていることが好ましい。主部31と副部32は分離されていてもよいが、分離されていないことが好ましい。
【0123】
1つの焼灼電極30中の副部32の数は2個以上であれば特に限定されないが、4個以上、8個以上、12個以上、16個以上であることが好ましい。副部32を4個以上設けることで、バルーン10が変形したときに焼灼電極30が追従して変形しやすくなる。副部32の数は、50個以下、40個以下、または30個以下であることが好ましい。副部32の数を50個以下に設定することで、絶縁材20の表面から副部32が剥がれないように副部32を固定しやすくなる。
【0124】
副部32の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、副部32の形状は、帯形状、リーフ形状、ストリップ形状などであってもよい。1つの焼灼電極30が有する複数の副部32の形状は、それぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。副部32は、主部31から離れる方向に向かって長尺な形状を有していることが好ましい。
【0125】
図9に示すように、副部32の外縁36は角部を有してもよい。外縁36は、一または複数の角部を有していてもよい。角部の角度は直角に限定されず、鋭角でも鈍角でもよい。外縁36は一または複数の丸みを有していてもよい。
【0126】
図9に示すように、副部32は長手軸方向xに垂直な方向に延在していてもよい。すなわち、副部32はバルーン10の周方向pに延在していてもよい。副部32は長手軸方向xに対して傾斜した方向に延在していてもよい。副部32は主部31から離れる方向に向かうにしたがって近位側から遠位側に延在していてもよい。副部32は主部31から離れる方向に向かうにしたがって遠位側から近位側に延在していてもよい。
【0127】
図8に示すように複数の副部32は同じ方向に延在していてもよく、互いに異なる方向に延在していてもよい。
【0128】
複数の副部32のうち、少なくとも1つの副部32がバルーン10の周方向pにおいて第1側p1に配されており、少なくとも1つの副部32がバルーン10の周方向pにおいて第2側p2に配されていてもよい。
【0129】
図8および
図10に示すように、主部31が第1部分21に配置され、副部32が第2部分22に配置されていることが好ましい。絶縁材20の広範囲に焼灼電極30を配置しやすくなるため、焼灼電極30を対象組織に接触させやすくなる。
【0130】
長手軸方向xにおいて、隣り合う第2部分22にそれぞれ副部32が配置されていてもよい。長手軸方向xにおいて、全ての第2部分22に副部32が配置されていてもよい。
【0131】
主部31は第1部分21に沿って延在していることが好ましい。副部32は第2部分22に沿って延在していることが好ましい。
【0132】
1つの第2部分22に複数の副部32が配置されてもよい。例えば
図11に示すように幅広の第2部分228に複数の副部32が配置されてもよい。第1側p1と第2側p2のそれぞれで第2部分228に2つの副部32が長手軸方向xに並ぶように配置されていてもよい。このように副部32を配置することで、長手軸方向xにおいて2つの副部32の間に測定電極40を配置しやすくなる。
【0133】
カテーテル1は対象組織のインピーダンスを測定するための測定電極40を有していてもよい。例えばカテーテル1に好ましく設けられる参照電極と測定電極40との電位差を測定することで生体電位を取得することができる。取得した生体電位を用いることで、インピーダンスの測定が可能である。インピーダンスを測定することで、測定電極40と対象組織の接触状態を検出することができる。この検出結果から、焼灼電極30と対象組織の具体的な接触状態、例えば焼灼電極30のどの部分が接触しているかを把握することができる。したがって、焼灼に先立ちカテーテル1を生体内の適切な位置に配置できるようになる。
【0134】
カテーテル1は、一または複数の測定電極40を有していることが好ましく、複数の測定電極40を有していることがより好ましい。複数の測定電極40は、測定に際してそれぞれ絶縁されていることが必要である。したがって、各測定電極40は焼灼電極30から離れて配置されていることが好ましい。
【0135】
測定電極40としては、金属酸化物や金属の薄膜を用いることができる。測定電極40がバルーン10の変形に追従しやすくなる。
【0136】
測定電極40は、焼灼電極30が配置されている絶縁材20上に配置されていることが好ましいが、焼灼電極30が配置されている絶縁材20とは別の絶縁材上に配置されていてもよい。
【0137】
測定電極40は絶縁材20に固定されていることが好ましい。測定電極40を絶縁材20上に固定する方法、厚さ、構成材料、形状については、焼灼電極30のこれらの説明を参照することができる。焼灼電極30と測定電極40を形成しやすくするためには、焼灼電極30と測定電極40の絶縁材20上への固定方法、厚さ、構成材料および形状の少なくともいずれか1つが同じであることが好ましい。
【0138】
測定電極40は、焼灼電極30よりも表面積が小さいことが好ましい。測定電極40は、焼灼電極30の周囲に配置されることが好ましい。
【0139】
測定電極40は第2導線(図示せず)に接続されており、第2導線は手元側まで延びて測定部64に接続されている。これにより測定電極40で測定された生体電位の信号を測定部64へ送ることができる。測定部64によって測定電極40と焼灼電極30の間、2つの測定電極40の間、または測定電極40と対極板35の間のインピーダンスを測定することができる。第2導線の構成やシャフト2への配置は第1導線の説明を参照することができる。
【0140】
以下では、測定電極40の一例としてカテーテル1が第1測定電極41と第2測定電極42を有している態様を説明するが、カテーテル1は3つ以上の測定電極40を有していてもよい。
【0141】
図11に示すように第1側p1と第2側p2の少なくともいずれかで、1つの第2部分22に少なくとも2つの副部32が長手軸方向xに並ぶように配置されている場合、2つの副部32の間に測定電極40が配置されていることが好ましい。
【0142】
詳細には、焼灼電極30は、長手軸方向xに延在している主部31と、主部31から長手軸方向xとは異なる方向に延在し、長手軸方向xにおいて互いに離れて配されている複数の副部32と、を有し、バルーン10の周方向pにおいて第1側p1と第2側p2で、1つの第2部分22に副部32が少なくとも2つ配置されている。この場合、カテーテル1は、焼灼電極30よりも表面積が小さく、第1側p1の絶縁材20の第2部分22上であって隣り合う2つの副部32の間に配置され、インピーダンスを測定するための第1測定電極41と、焼灼電極30よりも表面積が小さく、第2側p2の絶縁材20の第2部分22上であって隣り合う2つの副部32の間に配置され、インピーダンスを測定するための第2測定電極42と、を有することが好ましい。第1測定電極41と第2測定電極42についてインピーダンスを測定することで、各測定電極40と対象組織の接触状態を検出することができる。また、隣り合う2つの副部32の間に測定電極40を配置することで、焼灼電極30と対象組織の具体的な接触状態を把握しやすくなる。
【0143】
図13では、絶縁材20は、バルーン10の周方向pにおいて第1側p1と第2側p2に、長手軸方向xにおいて隣り合う2つの第2部分22の間であって第1部分21から離れた位置で長手軸方向xに延在している第3部分23をそれぞれ有している。この場合、カテーテル1は、焼灼電極30よりも表面積が小さく、第1側p1の第3部分23上に配置され、インピーダンスを測定するための第1測定電極41と、焼灼電極30よりも表面積が小さく、第2側p2の第3部分23上に配置され、インピーダンスを測定するための第2測定電極42と、を有することが好ましい。このように第3部分23を設けることによっても測定電極40を配置することができる。測定電極40をこの位置に配置することで、焼灼電極30と対象組織の具体的な接触状態を把握しやすくなる。
【0144】
図16では、カテーテル1には、第1測定電極41と第2測定電極42のペアが長手軸方向xに並んで少なくとも3つ設けられている。このように測定電極40のペアを複数設けることによって、対象組織に対する焼灼電極30の部位毎の接触状態を把握しやすくなる。
【0145】
バルーン10の周方向pにおいて、測定電極40の一部が、その測定電極40の隣にある副部32と重なる位置にあることが好ましい。バルーン10の周方向pにおいて、測定電極40の外方端は、その測定電極40の隣にある副部32の外方端よりも第1部分21側に配されていてもよい。対象組織に対する焼灼電極30の接触状態を適切に把握しやすくなる。
【0146】
2.バルーンカテーテルシステム
本発明は、上述したカテーテル1を含むバルーンカテーテルシステム100も提供する。以下では、バルーンカテーテルシステムを単にシステムと称することがある。
図17~
図18は本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルシステム100のブロック図である。
図17に示すように、システム100は、カテーテル1と、第1測定電極41と焼灼電極30の間のインピーダンス(第1のインピーダンス)、第2測定電極42と焼灼電極30の間のインピーダンス(第2のインピーダンス)、第1測定電極41と第2測定電極42の間のインピーダンス(第3のインピーダンス)の少なくともいずれか1つを測定する測定部64と、測定部64に接続され、インピーダンスの測定結果を用いて、第1測定電極41と第2測定電極42のうちの少なくともいずれかと対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部65と、を有することが好ましい。上記バルーンカテーテルシステム100によれば、各測定電極40を焼灼電極30の近くに配置することができる。また、各測定電極40と対象組織の接触状態の検出結果から、焼灼電極30と対象組織の具体的な接触状態を把握することができる。したがって、焼灼に先立ちバルーンカテーテル1を生体内の適切な位置に配置でき、焼灼のやり直しなどを防ぐことができるため、手技の効率化が図られる。
【0147】
第1のインピーダンスを例に説明する。第1測定電極41と焼灼電極30が対象組織に接触していると、第1測定電極41と焼灼電極30の間の部分も対象組織、例えば肺静脈壁と接触している可能性が高い。このとき第1測定電極41から焼灼電極30には対象組織を介して電流が流れる。他方、第1測定電極41と焼灼電極30の少なくともいずれかが対象組織に非接触であると、第1測定電極41と焼灼電極30の間の部分は血液と接触している可能性が高い。このとき第1測定電極41から焼灼電極30には血液を介して電流が流れる。対象組織と血液とでは電気抵抗率が異なるため、第1測定電極41が対象組織に接触している場合、非接触の場合に比べてインピーダンスが高くなる。このようにしてインピーダンスの測定結果から、第1測定電極41と対象組織が接触しているか否かを判別することができる。
【0148】
図18に示すように、システム100は、カテーテル1と、患者の体表面に設けられて焼灼電極30との間で高周波電流が通電される対極板35と、第1測定電極41と対極板35の間のインピーダンス(第4のインピーダンス)、第2測定電極42と対極板35の間のインピーダンス(第5のインピーダンス)の少なくともいずれかを測定する測定部64と、測定部64に接続され、インピーダンスの測定結果を用いて、第1測定電極41と第2測定電極42のうちの少なくともいずれかと対象組織が所定の接触をしているか否かを判別する制御部65と、を有していてもよい。このように第4または第5のインピーダンスを測定することによっても、焼灼電極30と対象組織の具体的な接触状態を把握することができる。
【0149】
図16に示すように、カテーテル1に、第1測定電極41と第2測定電極42のペアが長手軸方向xに並んで少なくとも3つ設けられている場合、制御部65は、長手軸方向xにおいて隣り合う2つの測定電極40のペアを用いて、焼灼電極30の一部が対象組織と所定の接触をしているか否かを判別することが好ましい。このように測定電極40のペアを複数設けることによって、焼灼電極30の部位毎の接触状態を効率よく把握することができる。
【0150】
測定部64は、第1のインピーダンス、第2のインピーダンス、第3のインピーダンス、第4のインピーダンス、第5のインピーダンスの少なくともいずれか1つを測定する。第1または第2のインピーダンスは、生体に所定の大きさの交流電流を流したときに第1測定電極41または第2測定電極42と、焼灼電極30で測定された生体電位に基づき測定することができる。第3のインピーダンスは第1測定電極41と第2測定電極42で測定された生体電位、第4または第5のインピーダンスは第1測定電極41または第2測定電極42と、対極板35で測定された生体電位に基づき測定することができる。
【0151】
測定部64としては、LCRメータ等のインピーダンス測定器を用いることができる。測定部64は、生体信号を増幅する増幅器、アナログディジタル変換器、雑音除去のためのフィルタ等を含むことができる。
【0152】
制御部65は、測定部64に接続されている。制御部65は、第1測定電極41と第2測定電極42の少なくともいずれかと対象組織との接触状態の判別結果を用いて、焼灼電極30と対象組織が所定の接触をしているか否かを判別することが好ましい。これにより、術者は対象組織に対する焼灼電極30の接触の程度を把握することができるため、手技の効率化が図られる。
【0153】
図17~
図18に示すように、制御部65は、焼灼電極30に接続されていることが好ましい。焼灼が不十分であると判別された部位について、制御部65が焼灼電極30に対して追加の焼灼を行うように指示することが好ましい。
【0154】
図17~
図18に示すように、第1測定電極41または第2測定電極42が対象組織に所定の接触をしているか否かの判別を行うために、システム100は制御部65に接続されており、測定されたインピーダンスと基準値との比較を行う処理部66を有していてもよい。例えば、測定されたインピーダンスが基準値以下である場合に、当該測定電極40が対象組織と接触したと判別することができる。測定されたインピーダンスが基準値を超える場合、当該測定電極40が対象組織と接触していないと判別することができる。処理部66では、上記比較以外の処理、例えば雑音除去のためのフィルタ処理を行ってもよい。
【0155】
処理部66で用いられる基準値は、予めシステム100内に格納されていてもよく、記録媒体等によってシステム100に供給されてもよい。
【0156】
システム100が備える少なくともいずれか1つの機能、例えば、制御部65や処理部66の機能は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアによって実現されてもよい。ハードウェアとしては、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路に形成された論理回路を挙げることができる。
【0157】
システム100は、制御部65および処理部66の少なくともいずれか1つの機能を実現するためのソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えていてもよい。コンピュータは、プロセッサと、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えていることが好ましい。プロセッサがコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されたプログラムを実行することによって、上記機能が実現される。プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)を用いることができる。記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)等を用いることができる。また、記録媒体には、RAM(Random Access Memory)を含むこともできる。上記プログラムは、このプログラムを伝送可能な任意の伝送媒体を介して上記コンピュータに供給されてもよい。伝送媒体としては、通信ネットワークや通信回線等が挙げられる。
【符号の説明】
【0158】
1:バルーンカテーテル
2:シャフト
10:バルーン
20:絶縁材
21:第1部分、22:第2部分、23:第3部分
30:焼灼電極
31:主部、32:副部
41:第1測定電極
42:第2測定電極
61:操作部
62:流体供給器
63:高周波発生器
64:測定部
65:制御部
66:処理部
100:バルーンカテーテルシステム