(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067586
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】異常診断装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20230509BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20230509BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04694
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178972
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】岩見 潤
(72)【発明者】
【氏名】森一 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】徳永 拡之
(72)【発明者】
【氏名】荒関 裕貴
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB02
5H127AB08
5H127AB23
5H127AC14
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127DB09
5H127DB19
5H127DB29
5H127DB39
5H127DB50
5H127DB90
5H127DC99
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】燃料電池装置で発生する異常の内容を適切に診断できる異常診断装置の提供。
【解決手段】異常診断装置4であって、異常診断処理は、燃料電池装置10の測定器の測定結果及び燃料電池装置10の動作環境の少なくとも一方が所定の判定条件を満たしているか否かを判定する判定処理が複数個組み合わされて構成され、判定条件を満たしているか否かに応じて定まる判定処理の判定結果は、別の判定処理への移行が指示される場合と、異常診断処理の診断結果の特定に至る場合との少なくとも一種類を含み、燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信した測定結果に異常が現れる場合、記憶部4aに記憶している、当該異常に対応する異常診断処理の内容と、燃料電池装置10の測定器の測定結果及び燃料電池装置10の動作環境の少なくとも一方とに基づいて、受信した測定結果に現れる異常についての診断結果を特定する診断処理部4bとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置される燃料電池装置から情報通信回線を介して受信した情報に基づいて前記燃料電池装置で発生する異常の内容を診断する異常診断装置であって、
前記燃料電池装置が有する複数の測定器のうちの少なくとも一つの前記測定器の測定結果に現れる異常と、当該異常の発生要因及び当該異常への対処法の少なくとも一方を含む当該異常について考えられる複数の診断結果のうちの一つを特定するための異常診断処理とを関連付けて、複数の前記異常毎に記憶する記憶部を備え、
前記異常診断処理は、前記燃料電池装置の前記測定器の前記測定結果及び前記燃料電池装置の動作環境の少なくとも一方が所定の判定条件を満たしているか否かを判定する判定処理が複数個組み合わされて構成され、
前記判定条件を満たしているか否かに応じて定まる前記判定処理の判定結果は、別の前記判定処理への移行が指示される場合と、前記異常診断処理の前記診断結果の特定に至る場合との少なくとも一種類を含み、
前記燃料電池装置から前記情報通信回線を介して受信した前記測定結果に前記異常が現れる場合、前記記憶部に記憶している、当該異常に対応する前記異常診断処理の内容と、前記燃料電池装置の前記測定器の前記測定結果及び前記燃料電池装置の前記動作環境の少なくとも一方とに基づいて、受信した前記測定結果に現れる前記異常についての前記診断結果を特定する診断処理部を備える異常診断装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記燃料電池装置の管理者の連絡先及び前記燃料電池装置のメンテナンス担当者の連絡先及び前記燃料電池装置の製造関係者の連絡先の少なくとも一つを記憶しており、
前記診断処理部は、特定した前記診断結果を、前記管理者の連絡先及び前記メンテナンス担当者の連絡先及び前記製造関係者の連絡先の少なくとも一つに出力する請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記診断結果は、前記異常の発生要因として、前記燃料電池装置の特定の部位で発生している不具合の内容を含む請求項1又は2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記診断結果は、前記異常への対処法として、前記燃料電池装置の特定の構成部品の交換指示又は修理指示を含む請求項1~3の何れか一項に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記燃料電池装置の前記構成部品の修理作業又は交換作業の難易度を示す情報を複数の前記構成部品毎に記憶しており、
前記診断結果は、前記異常への対処法として、前記難易度を示す情報を含む請求項4に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記燃料電池装置の前記構成部品の修理作業又は交換作業を説明する動画データを複数の前記構成部品毎に記憶しており、
前記診断結果は、前記異常への対処法として、前記動画データを含む請求項4又は5に記載の異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設に設置される燃料電池装置から情報通信回線を介して受信した情報に基づいて燃料電池装置で発生する異常の内容を診断する異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2016-184319号公報)には、発電システムの故障部位を診断及び特定でき、故障時の誤診断を抑えられるシステムが記載されている。
具体的には、特許文献1に記載のシステムでは、発電システムが故障した場合、発電装置の各部位に設けられた複数の検出手段それぞれでの検出信号履歴を含む故障データが生成される。そして、データベースに記録された過去故障時データの中から、今回の故障時の故障データと相関関係が強い相関故障時データが選択される。更に、選択された相関故障時データに対応付けられた故障診断結果及び故障対応記録が出力される。このように、特許文献1に記載のシステムでは、今回の故障が発生した場合に検出される検出信号履歴を含む故障時データと相関関係が強い過去故障時データを特定し、今回の故障も、その相関関係が強い過去故障時データと同様の故障原因によって発生したものと見なしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相関関係の強さという統計的な手法によらずに、燃料電池装置の動作状態を診断する手法も求められている。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池装置で発生する異常の内容を適切に診断できる異常診断装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る異常診断装置の特徴構成は、施設に設置される燃料電池装置から情報通信回線を介して受信した情報に基づいて前記燃料電池装置で発生する異常の内容を診断する異常診断装置であって、
前記燃料電池装置が有する複数の測定器のうちの少なくとも一つの前記測定器の測定結果に現れる異常と、当該異常の発生要因及び当該異常への対処法の少なくとも一方を含む当該異常について考えられる複数の診断結果のうちの一つを特定するための異常診断処理とを関連付けて、複数の前記異常毎に記憶する記憶部を備え、
前記異常診断処理は、前記燃料電池装置の前記測定器の前記測定結果及び前記燃料電池装置の動作環境の少なくとも一方が所定の判定条件を満たしているか否かを判定する判定処理が複数個組み合わされて構成され、
前記判定条件を満たしているか否かに応じて定まる前記判定処理の判定結果は、別の前記判定処理への移行が指示される場合と、前記異常診断処理の前記診断結果の特定に至る場合との少なくとも一種類を含み、
前記燃料電池装置から前記情報通信回線を介して受信した前記測定結果に前記異常が現れる場合、前記記憶部に記憶している、当該異常に対応する前記異常診断処理の内容と、前記燃料電池装置の前記測定器の前記測定結果及び前記燃料電池装置の前記動作環境の少なくとも一方とに基づいて、受信した前記測定結果に現れる前記異常についての前記診断結果を特定する診断処理部を備える点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、異常診断処理は複数個の判定処理が組み合わされて構成され、各判定処理の判定結果は、別の前記判定処理への移行が指示される場合と、前記異常診断処理の前記診断結果の特定に至る場合との少なくとも一種類を含む。つまり、診断処理部は、燃料電池装置が有する複数の測定器のうちの少なくとも一つの測定器の測定結果に現れる異常について、燃料電池装置の測定器の測定結果及び燃料電池装置の動作環境の少なくとも一方に基づいて、異常診断処理を構成する少なくとも一つの判定処理を経て、一つの診断結果を特定する。つまり、異常診断装置は、異常の発生からその異常についての診断結果の特定までを、予め作成された異常診断処理の手順に従って自動で行うことができる。
【0008】
例えば、燃料電池装置が有する複数の測定器のうちの少なくとも一つの測定器の測定結果に異常が現れたという事実のみに基づいてメンテナンス担当者などが出動した場合、その場でメンテナンス担当者がその異常の診断結果を下す必要がある。ところが本特徴構成では、異常診断装置がその異常についての診断結果の特定を自動で行うため、メンテナンス担当者などはその診断結果に応じた準備を事前に行った上で出動できる。
従って、燃料電池装置で発生する異常の内容を適切に診断できる異常診断装置を提供できる。
【0009】
本発明に係る異常診断装置の別の特徴構成は、前記記憶部は、前記燃料電池装置の管理者の連絡先及び前記燃料電池装置のメンテナンス担当者の連絡先及び前記燃料電池装置の製造関係者の連絡先の少なくとも一つを記憶しており、
前記診断処理部は、特定した前記診断結果を、前記管理者の連絡先及び前記メンテナンス担当者の連絡先及び前記製造関係者の連絡先の少なくとも一つに出力する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、燃料電池装置の所有者などの管理者、燃料電池装置のメンテナンス担当者、燃料電池装置の製造関係者は、燃料電池装置の診断結果を知ることができる。その結果、燃料電池装置の修理などの現場に到着する前に、燃料電池装置のメンテナンス担当者は診断結果に応じた修理などの準備を行うことができ、燃料電池装置の製造関係者は診断結果に応じた修理などに必要な部品の準備を行うことができる。その結果、実際に修理などを行う現場で、修理を行う技能を持つ人員がいないといった問題や、修理に必要な部品を持参していなかったという問題などが発生することを回避できる。
【0011】
本発明に係る異常診断装置の更に別の特徴構成は、前記診断結果は、前記異常の発生要因として、前記燃料電池装置の特定の部位で発生している不具合の内容を含む点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、燃料電池装置の管理者及びメンテナンス担当者及び製造関係者などは、異常の発生要因として、燃料電池装置の特定の部位で発生している不具合の内容が分かれば、その部位の部品修理や部品交換などの必要な作業を決定できる。
【0013】
本発明に係る異常診断装置の更に別の特徴構成は、前記診断結果は、前記異常への対処法として、前記燃料電池装置の特定の構成部品の交換指示又は修理指示を含む点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、異常への対処法として、燃料電池装置の特定の構成部品の交換指示又は修理指示が含まれていれば、交換する構成部品を事前に用意することや、交換作業又は修理作業に必要な人員を事前に決定できる。
【0015】
本発明に係る異常診断装置の更に別の特徴構成は、前記記憶部は、前記燃料電池装置の前記構成部品の修理作業又は交換作業の難易度を示す情報を複数の前記構成部品毎に記憶しており、
前記診断結果は、前記異常への対処法として、前記難易度を示す情報を含む点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、異常への対処法として、構成部品の修理作業又は交換作業の難易度を示す情報が含まれていれば、その難易度に応じた技能を持つ人員を派遣する準備を事前に行うことができる。
【0017】
本発明に係る異常診断装置の更に別の特徴構成は、前記記憶部は、前記燃料電池装置の前記構成部品の修理作業又は交換作業を説明する動画データを複数の前記構成部品毎に記憶しており、
前記診断結果は、前記異常への対処法として、前記動画データを含む点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、異常への対処法として、燃料電池装置の構成部品の修理作業又は交換作業を説明する動画データが含まれていれば、構成部品の修理作業又は交換作業の担当者はその動画データを確認して、修理作業又は交換作業を確実に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】異常診断装置を備える診断システムの構成を示す図である。
【
図3】異常診断処理の例を説明するフローチャートである。
【
図4】異常診断処理の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係る異常診断装置4について説明する。
図1は、異常診断装置4を備える診断システムの構成を示す図である。図示するように、住戸及び事業者などの施設1に燃料電池装置10が設けられている。また、施設1には、電力消費装置5、ガス消費装置6、HEMS(Home Energy Management System)7も設けられている。HEMS7は、電力消費装置5、燃料電池装置10、ガス消費装置6などの制御対象装置の動作を制御する装置であり、制御対象装置との間で通信線を介して情報通信を行って、各装置からの情報を受信すると共に、各装置への情報の伝達を行うことができる。また、HEMS7は、各装置から受信した情報を、情報通信回線2を介して異常診断装置4などに送信することもできる。
【0021】
電力消費装置5及び燃料電池装置10は、電力系統に連系される電力線8に接続されて、電力系統からの電力供給を受けることができる。また、燃料電池装置10の発電電力を、電力線8を介して電力系統に供給することもできる。ガス消費装置6及び燃料電池装置10は、ガス供給管9から供給される例えば都市ガスなどのガスの供給を受けることができる。
図1では2つの施設1を描いているが、その数は適宜変更可能である。以下の説明では、ガス供給管9から供給される例えば都市ガスなどのガスを「原燃料」と記載することがある。
【0022】
燃料電池装置10は、HEMS7を介して、或いは、HEMS7を介さずに、情報通信回線2にアクセスできる。そして、燃料電池装置10は、情報通信回線2に接続されている異常診断装置4、情報提供サーバ装置3、メンテナンス担当者端末装置60、製造関係者端末装置61、管理者端末装置62などとの間で情報通信を行うことができる。
【0023】
図2は、燃料電池装置10の構成を示す図である。燃料電池装置10は、外側容器11の内部に各種部品を備えている。以下に、燃料電池装置10の構成を、ホットモジュール13、原燃料供給系、空気供給系、還流ガス供給系、水回収系、改質用水供給系、排熱回収系に分けて説明する。
【0024】
〔ホットモジュール13〕
外側容器11の内部には、高温環境下で動作するセルスタック18等などの機器を収容するホットモジュール13が設けられる。具体的には、ホットモジュール13の内部には、気化器14、改質器15、マニホールド16、セルスタック18などが設けられる。気化器14は、改質用水を気化させて改質器15に供給する。改質器15は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する。改質器15には、改質器15の例えば改質触媒(図示せず)の温度を測定する改質器温度測定器としての温度測定器T1が設けられている。
【0025】
セルスタック18は、燃料ガス供給路L2によって供給される、改質器15で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セル17を有する。例えば、改質器15で生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路L2を通ってマニホールド16に至り、マニホールド16で、燃料ガスは各燃料電池セル17に分配される。
【0026】
セルスタック18の上方の空間は、セルスタック18から排出されるオフガスを燃焼する燃焼部19となる。この燃焼熱は、その上方の気化器14及び改質器15に伝達される。燃焼部19の温度は、燃焼部温度測定器としての温度測定器T2で測定される。点火器20は、オフガスに点火させる。
【0027】
ホットモジュール13の給気口21には空気供給路L10が接続され、ホットモジュール13の内部に空気が供給される。ホットモジュール13の排気口22から、ホットモジュール13の内部に存在するガスがホットモジュール13の外部に排出される。排気口22には、排出されるガスに含まれる水素、一酸化炭素などを、酸素を用いて触媒燃焼させる燃焼触媒部23が設けられている。
【0028】
燃焼触媒部23を通過した排出ガスは、排熱回収用熱交換器34に供給される。排熱回収用熱交換器34では、排出ガスと、湯水循環路L7を流れる排熱回収用熱媒としての湯水との熱交換、即ち、排出ガスの冷却が行われ、排出ガスに含まれていた水分が凝縮する。
【0029】
排熱回収用熱交換器34の下流側には、排出ガスに含まれる凝縮水を分離する気液分離部35が設けられる。そして、排出ガス中の気相成分は排出ガス流路L4を通って外側容器11の外部に排出され、排出ガス中の液相成分は水回収路L5を通って水精製器37に供給される。また、外側容器11には、換気口55も設けられている。外側容器11の内部の、換気口55の近傍には温度測定器T3が設けられている。この温度測定器T3によって、例えば外気の温度が測定される。
【0030】
〔原燃料供給系〕
原燃料供給系は、原燃料供給路L1を介して、改質器15に原燃料を供給する系統である。具体的には、原燃料供給系は、遮断弁26、圧力測定器27、原燃料流量測定器28、ゼロガバナ29、原燃料供給器30、脱硫器31を備える。
【0031】
遮断弁26は、原燃料供給路L1への原燃料の流入を許可する状態又は遮断する状態に切り替える。圧力測定器27は、原燃料供給路L1に流入する原燃料の圧力を測定する。原燃料供給器30は、改質器15に原燃料を供給する。具体的には、原燃料供給器30は、改質器15に供給する原燃料の単位時間当たりの流量を調節する。原燃料流量測定器28は、原燃料供給器30によって改質器15に供給される原燃料の単位時間当たりの流量を測定する。例えば、原燃料供給器30は、原燃料流量測定器28で測定される原燃料の流量が目標流量になるように原燃料供給器30を動作させる。ゼロガバナ29は、原燃料供給路L1を流れる原燃料の圧力を大気圧と同じに調節する。脱硫器31は、原燃料に含まれる硫黄化合物などを除去する。
【0032】
〔空気供給系〕
空気供給系は、空気供給路L10を介して、ホットモジュール13に空気を供給する系統である。空気供給器41は、内側容器12の内部に空気を供給する。具体的には、空気供給器41は、内側容器12の内部に供給する空気の単位時間当たりの流量を調節する。空気流量測定器42は、空気供給器41によって内側容器12の内部に供給される空気の単位時間当たりの流量を測定する。異物除去フィルタ40は、空気供給器41によって内側容器12の内部に供給される空気に含まれる異物を捕捉する。
【0033】
〔還流ガス供給系〕
還流ガス供給系は、還流ガス供給路L3を介して、改質器15で生成された燃料ガスの一部を原燃料供給路L1に供給する系統である。還流ガス供給路L3は、燃料ガス供給路L2の途中の分岐部24から分岐して、脱硫器31よりも上流側の原燃料供給路L1の途中の合流部25に合流し、燃料ガス供給路L2を流れる燃料ガスの一部を原燃料供給路L1に供給する。それにより、脱硫器31に水素を供給できる。還流ガス供給路L3は、ホットモジュール13の内部から外部に引き出される。オリフィス33は、還流ガス供給路L3の途中に設けられ、還流ガス供給路L3を流れる燃料ガスの単位時間当たりの流量を調節する。温度調節部材32は、還流ガス供給路L3を流れる改質ガスの温度を保つために還流ガス供給路L3の少なくとも一部分の周囲に設けられる。凝縮水回収器36は、還流ガス供給路L3で発生した凝縮水を回収する。温度測定器T4は、温度調節部材32が設けられている部位での還流ガス供給路L3の温度を測定する。例えば、温度測定器T4は、還流ガス供給路L3を構成する配管の外表面の温度を測定する機器、還流ガス供給路L3を構成する配管の内部の温度を測定する機器などである。
【0034】
〔水回収系〕
水回収系は、燃料電池装置10で生成された水を回収する系統である。水回収路L5を用いて回収した凝縮水は改質用水タンク38に供給される。図示する例では、水回収路L5は、気液分離部35から水を回収する第1回収路L5aと、凝縮水回収器36から水を回収する第2回収路L5bとを有する。第1回収路L5a及び第2回収路L5bによって回収された凝縮水は、水精製器37を経由して、改質用水タンク38に供給される。水精製器37は、回収した凝縮水に含まれる不純物を除去するための機器である。例えば、水精製器37は、イオン交換樹脂等を充填しており、回収した凝縮水に含まれる電解質のイオン(例えば、イオン化して溶存している塩類やアンモニアなど)を例えばH+、OH-と交換することで、回収水した凝縮水に含まれる電解質の濃度を相対的に低くさせる(即ち、電気伝導度を低くさせる)機能を果たす。
【0035】
〔改質用水供給系〕
改質用水供給系は、改質用水供給路L6を介して、改質器15に改質用水を供給する系統である。尚、本実施形態では、改質用水タンク38に貯えられている改質用水は気化器14に供給され、気化器14から改質器15に供給される。改質用水供給系は、改質用水供給路L6、改質用水タンク38、改質用水供給器39などを備える。改質用水タンク38は、改質用水を貯える。改質用水供給器39は、改質器15に向けて改質用水を供給する。具体的には、改質用水供給器39は、改質用水供給路L6の途中に設けられ、改質用水供給路L6を流れる改質用水の単位時間当たりの流量を調節する。
【0036】
〔排熱回収系〕
排熱回収系は、燃料電池装置10で発生する熱を回収する系統である。排熱回収系は、貯湯タンク45、給水路L8、出湯路L9、湯水循環路L7、循環ポンプ44などを備える。貯湯タンク45には、湯水が貯えられる。湯水循環路L7は、貯湯タンク45と排熱回収用熱交換器34との間で湯水を循環させる。貯湯タンク45には、相対的に低温の湯水がその下部に貯えられ、相対的に高温の湯水がその上部に貯えられるように、即ち、温度成層を形成する状態で湯水が貯えられる。具体的に説明すると、湯水循環路L7は、貯湯タンク45から排熱回収用熱交換器34へ湯水を移送する往路と、排熱回収用熱交換器34から貯湯タンク45へ湯水を移送する復路とで構成され、往路の途中に設けられる循環ポンプ44とを有する。
【0037】
このような構成により、貯湯タンク45の下部から湯水循環路L7の往路を介して排熱回収用熱交換器34に供給される湯水はその排熱回収用熱交換器34で加熱され、加熱後の湯水は湯水循環路L7の復路を介して貯湯タンク45の上部に供給される。復路の途中に、排熱回収用熱交換器34から貯湯タンク45へ移送される湯水の温度を測定する温度測定器T5が設けられる。本実施形態では、燃料電池制御部49は、復路を流れて貯湯タンク45に流入する湯水の温度(温度測定器T5で測定される湯水の温度)が所定の貯湯目標温度(例えば65℃など)になるように循環ポンプ44の動作を制御する。このようにして、貯湯タンク45に温度成層を形成する状態で湯水が貯湯、即ち、蓄熱される。
【0038】
貯湯タンク45の下部には、貯湯タンク45に上水を供給するための給水路L8が接続され、貯湯タンク45の上部には、貯湯タンク45で貯えている湯水を排出するための出湯路L9が接続される。貯湯タンク45が貯えている湯水には、給水路L8の内部に加わっている給水圧が加わっている。このような構成により、貯湯タンク45では、例えば出湯路L9に接続される水栓(図示せず)が開かれることで出湯路L9へ貯湯タンク45から湯水が排出されるのに伴って、給水路L8から貯湯タンク45に上水が供給される。
【0039】
燃料電池装置10のセルスタック18は、電力変換回路部46を介して電力線8に接続される。
図2には、電力変換回路部46が昇圧回路47とインバータ48とを備える例を記載している。
【0040】
燃料電池装置10は、燃料電池制御部49と、燃料電池装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部50と、通信部51とを備える。燃料電池制御部49には、燃料電池装置10が備える測定器の測定結果が伝達され、その測定結果は記憶部50に記憶される。例えば、燃料電池制御部49には、本発明の「測定器」としての、上述した圧力測定器27、原燃料流量測定器28、空気流量測定器42、ガス測定器43、温度測定器T1,T2,T3,T4,T5の測定結果が伝達される。そして、燃料電池制御部49は、それらの測定結果を所定タイミングで通信部51から異常診断装置4に送信する。また、燃料電池制御部49は、それらの測定結果に現れる異常も、測定結果の一部として通信部51から異常診断装置4に送信する。
【0041】
燃料電池制御部49は、上述した点火器20、遮断弁26、原燃料供給器30、改質用水供給器39、空気供給器41、循環ポンプ44、電力変換回路部46などの各種機器の動作を制御する。
【0042】
次に、異常診断装置4が、施設1に設置される燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信した情報に基づいて燃料電池装置10で発生する異常の内容を診断する手法について説明する。異常診断装置4は、記憶部4aと診断処理部4bとを備える。
【0043】
異常診断装置4の記憶部4aは、燃料電池装置10が有する複数の測定器のうちの少なくとも一つの測定器の測定結果に現れる異常と、異常の発生要因及び異常への対処法の少なくとも一方を含むその異常について考えられる複数の診断結果のうちの一つを特定するための異常診断処理とを関連付けて、複数の異常毎に記憶する。具体的には、異常診断処理は、燃料電池装置10の測定器の測定結果及び燃料電池装置10の動作環境の少なくとも一方が所定の判定条件を満たしているか否かを判定する判定処理が複数個組み合わされて構成される。判定条件を満たしているか否かに応じて定まる判定処理の判定結果は、別の判定処理への移行が指示される場合と、異常診断処理の診断結果の特定に至る場合との少なくとも一種類を含む。
【0044】
そして、異常診断装置4の診断処理部4bは、燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信した測定結果に異常が現れる場合、記憶部4aに記憶している、当該異常に対応する異常診断処理の内容と、燃料電池装置10の測定器の測定結果及び燃料電池装置10の動作環境の少なくとも一方とに基づいて、受信した測定結果に現れる異常についての診断結果を特定する。
【0045】
表1は、異常の種類と異常診断処理との組み合わせ例を記載したものである。本例では、燃料電池装置10が有する複数の測定器の測定結果に「点火不良」が現れた場合には「異常診断処理1」によって、その空気流量偏差異常について考えられる複数の診断結果のうちの一つを特定するための処理が診断処理部4bによって行われる。同様に、燃料電池装置10が有する複数の測定器の測定結果に「還流ガス温度異常」が現れた場合には「異常診断処理2」が行われる。尚、図示は省略するが、他の様々な異常に対して、各別に異常診断処理が予め設定されて、記憶部4aに記憶されている。
【0046】
【0047】
〔異常診断処理1〕
図3は、点火不良異常という異常が現れた場合に診断処理部4bが行う異常診断処理1の内容を示すフローチャートである。
燃料電池装置10の燃料電池制御部49は、燃料電池装置10の起動時において、原燃料流量測定器28で測定される原燃料の流量が起動時の目標流量になるように原燃料供給器30を動作させると共に、点火器20に対して点火指令を行う。そして、燃料電池制御部49は、点火器20に対して点火指令を行った後での温度測定器(燃焼部温度測定器)T2の測定結果を監視している。燃料電池制御部49は、点火処理が開始された後、所定の判定期間の間に、温度測定器T2で測定される燃焼部19の温度が設定燃焼部温度以上にならない場合、即ち、正常な燃焼が行われていないと想定される場合、点火不良異常という異常が発生したと判定する。そして、燃料電池制御部49は、点火不良異常という異常が発生したという測定結果を、通信部51から異常診断装置4に伝達する。
【0048】
異常診断装置4は、燃料電池装置10から点火不良異常という異常が発生したという測定結果の通知を受けた場合、記憶部4aに記憶している情報を参照して、対応する異常診断処理1を読み出す。そして、診断処理部4bがその異常診断処理1を実行する。
【0049】
図3に示すように、異常診断処理1は、工程#10の判定処理、工程#11の判定処理、工程#12の判定処理という3個の判定処理を組み合わせて構成される。
【0050】
工程#10の判定処理は、点火処理が開始された後、所定の判定期間の間に燃焼部19の温度が上昇傾向にあるという第1判定条件を満たしているか否かを判定するものである。つまり、工程#10では、燃焼部19の温度を測定する温度測定器T2の測定結果が所定の判定条件を満たしているか否かを判定している。
【0051】
工程#10の判定処理において診断処理部4bは、点火処理が開始された後、所定の判定期間の間に燃焼部19の温度が上昇傾向にあるという第1判定条件が満たされると判定した場合には工程#12の判定処理に移行する。つまり、点火処理が開始された後、所定の判定期間の間に燃焼部19の温度が上昇傾向にある場合、想定通りの燃焼熱は発生していないものの、オフガスの燃焼は行われていると推測される。例えば、診断処理部4bは、温度測定器T2で測定された燃焼部19の温度の上記判定期間内での移動平均が増加している場合、燃焼部19の温度が上昇傾向にあると判定する。
【0052】
それに対して、診断処理部4bは、第1判定条件が満たされないと判定した場合には工程#11の判定処理に移行する。つまり、点火処理が開始された後、所定の判定期間の間に燃焼部19の温度が上昇傾向にない場合、オフガスの燃焼がほぼ行われていない又は全く行われていないと推測される。このように、工程#10の判定処理の判定結果は、別の判定処理への移行が指示される場合を含んでいる。
【0053】
工程#11の判定処理は、燃料電池装置10への原燃料の供給不良が発生しているという第2判定条件を満たしているか否かを判定するものである。例えば、異常診断装置4は、複数の施設1の各装置及びHEMS7との間で情報通信を行っている。そのため、異常診断装置4は、施設1に設けられる電力消費装置5、燃料電池装置10、ガス消費装置6で異常が発生した場合には、どの施設1の装置でどのような異常が発生したのか示す情報を受信できる。また、異常診断装置4の記憶部4aには、各施設1の住所や緯度及び経度などの位置情報も記憶されている。従って、異常診断装置4は、特定の燃料電池装置10と地理的に近い場所に設置された、原燃料を使用(即ち、燃焼)する原燃料燃焼装置でも原燃料の燃焼不良が発生している場合、例えば、本例と同じ点火不良異常という異常が発生している場合、その特定の燃料電池装置10でも、原燃料の供給不良が発生していると判定できる。例えば、特定の地域でガス供給管9を介して供給されるガス中の水分が多くなった場合、その地域のガス消費装置6ではそのガスの燃焼不良が発生する割合が高くなると考えられる。また、特定の地域でガス供給管9を介したガスの供給が停止している場合、その地域のガス消費装置6ではそのガスの燃焼不良(即ち、燃焼不能)が発生する。つまり、工程#11では、燃料電池装置10の動作環境が所定の判定条件を満たしているか否かを判定している。
【0054】
工程#11の判定処理において診断処理部4bは、燃料電池装置10への原燃料の供給不良が発生していると判定した場合には、燃料電池装置10に故障なしという診断結果A2に至り、燃料電池装置10への原燃料の供給不良が発生していないと判定した場合には、点火器20の異常という診断結果A1に至る。つまり、工程#11の判定処理の判定結果は、異常診断処理1の診断結果の特定に至る場合を含んでいる。
【0055】
工程#12の判定処理は、原燃料供給器30が設定通りの動作をしているか否かを判定するものである。例えば、工程#12の判定処理は、原燃料供給器30としてのブロアの回転速度が起動時用の設定回転速度になっているか否かを判定するものである。上述のように、燃料電池制御部49は、燃料電池装置10の起動時において、原燃料流量測定器28で測定される原燃料の流量が起動時の目標流量になるように原燃料供給器30を動作させる。原燃料流量測定器28が熱式流量計の場合、測定される原燃料の単位時間当たりの流量は、燃料電池装置10で使用が想定される原燃料の比熱に応じて定まるコンバージョンファクターを用いて決定される。そのため、燃料電池装置10に実際に供給される原燃料の熱量と、燃料電池装置10で使用が想定される原燃料の熱量とが大きく異なっている場合、原燃料流量測定器28で測定される原燃料の流量が起動時の目標流量に一致していたとしても、原燃料供給器30としてのブロアの回転速度が起動時用の設定回転速度にはならない。
【0056】
加えて、改質器15に対して単位時間当たりに供給される例えば炭化水素の炭素量及び水素量は、起動時の目標量とは大きく異なることになる。そして、改質器15で生成される単位時間当たりの水素量が異なってくる。そのため、オフガスに含まれる単位時間当たりの燃焼成分の量も異なり、結果的に燃焼部19の温度が設定温度以上にならないという点火不良異常に至る可能性がある。つまり、原燃料流量測定器28のコンバージョンファクターが不適切な値になっているという不具合が発生しているとも言える。また、オフガスに含まれる単位時間当たりの燃焼成分の量が異なるということは、空気供給器41によって供給される単位時間当たりの空気の流量も不適切な値になっていることにもなる。
【0057】
工程#12の判定処理において診断処理部4bは、原燃料供給器30が設定通りの動作をしていないと判定した場合には、供給されている原燃料の熱量と使用が想定されている原燃料の熱量とが一致していないという診断結果A4に至る。また、工程#12の判定処理において診断処理部4bは、原燃料供給器30が設定通りの動作をしていると判定した場合には、ホットモジュール13の異常という診断結果A3に至る。例えば、原燃料流量測定器28と燃焼部19との間でのガス漏洩が発生していた場合、即ち、燃焼部19へ燃焼成分が十分に到達しないというようなホットモジュール13の異常が発生していた場合、点火不良異常という異常が発生すると考えられる。つまり、工程#12の判定処理の判定結果は、異常診断処理1の診断結果の特定に至る場合を含んでいる。
【0058】
〔異常診断処理2〕
図4は、還流ガス温度異常という異常が現れた場合に診断処理部4bが行う異常診断処理2の内容を示すフローチャートである。
燃料電池装置10の燃料電池制御部49は、還流ガス温度測定器としての温度測定器T4の測定結果である、温度調節部材32が設けられている部位での還流ガス供給路L3の温度、即ち、還流ガス供給路L3を流れる燃料ガスの温度である還流ガス温度を監視している。そして、燃料電池制御部49は、還流ガス温度が設定温度以下の場合、還流ガス温度異常という異常が発生したと判定する。そして、燃料電池制御部49は、還流ガス温度異常という異常が発生したという測定結果を、通信部51から異常診断装置4に伝達する。
【0059】
異常診断装置4は、燃料電池装置10から還流ガス温度異常という異常が発生したという測定結果の通知を受けた場合、記憶部4aに記憶している情報を参照して、対応する異常診断処理2を読み出す。そして、診断処理部4bがその異常診断処理2を実行する。
【0060】
図4に示すように、還流ガス温度異常という異常が現れた場合に実行される異常診断処理2は、工程#20の判定処理、工程#21の判定処理、工程#22の判定処理という3個の判定処理を組み合わせて構成される。
【0061】
工程#20の判定処理は、燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信した、改質器温度測定器としての温度測定器T1で測定される改質器15の温度の温度実測値を参照して、温度実測値が、記憶部4aに記憶している温度目標値よりも高く且つ所定の温度目標値に対する温度実測値の乖離量が第1設定乖離値以上であるという第1判定条件を満たしているか否かを判定するものである。つまり、工程#20では、改質器15の温度を測定する温度測定器T1の測定結果が所定の判定条件を満たしているか否かを判定している。尚、異常診断装置4は、上記温度目標値を燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信してもよい。
【0062】
工程#20の判定処理において診断処理部4bは、温度測定器T1で測定される温度実測値が温度目標値よりも高く且つ温度目標値に対する温度実測値の乖離量が第1設定乖離値以上であるという条件を満たすと判定した場合には、改質器15に対する改質用水の供給不良が発生している、例えば、改質用水供給器39の動作異常が発生しているという診断結果B1の特定に至る。それに対して、工程#20の判定処理において診断処理部4bは、改質器温度測定器で測定される温度実測値が温度目標値よりも高く且つ温度目標値に対する温度実測値の乖離量が第1設定乖離値以上であるという条件を満たさないと判定した場合には工程#21の判定処理に移行する。つまり、工程#20の判定処理の判定結果は、別の判定処理への移行が指示される場合と、異常診断処理2の診断結果の特定に至る場合との両方を含んでいる。
【0063】
具体的に説明すると、改質器15に対する改質用水の供給不良が発生している場合、改質器15に対して単位時間当たりに供給される改質用水の量が少なくなるため、改質器15で単位時間当たりに生成される燃料ガスの量が少なくなる。そして、燃料ガス供給路L2から還流ガス供給路L3へ流入する燃料ガスの単位時間当たりの流量も少なくなる。つまり、還流ガス供給路L3を流れる高温の燃料ガスの流量が少なくなるため、還流ガス温度が設定温度以下になるという還流ガス温度異常の状態に至ると推測される。加えて、改質器15に対する改質用水の供給不良が発生している場合、改質器15に対して単位時間当たりに供給される改質用水の量が少なくなるため、改質器15で利用される熱量が少なくなり、改質器15の温度が高くなると推測される。従って、診断処理部4bは、改質器温度測定器で測定される温度実測値が温度目標値よりも高く且つ温度目標値に対する温度実測値の乖離量が第1設定乖離値以上であるという第1判定条件が満たされ、且つ、還流ガス温度が設定温度以下の場合、診断結果B1の特定に至る。
【0064】
このように、診断結果B1の例として、改質器15に対する改質用水の供給不良が発生しているという診断結果、及び、改質用水供給器39の動作異常が発生しているという診断結果を記載したが、それらは単独で用いられてもよく、或いは、併せて用いられてもよい。
【0065】
工程#21の判定処理は、原燃料流量測定器28で測定される原燃料の流量実測値を参照して、記憶部4aに記憶している流量目標値に対する流量実測値の乖離量が第2設定乖離値以上であるという第2判定条件を満たしているか否かを判定するものである。つまり、工程#21では、原燃料流量測定器28で測定される測定結果が所定の判定条件を満たしているか否かを判定している。尚、異常診断装置4は、上記流量目標値を燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信してもよい。
【0066】
工程#21の判定処理において診断処理部4bは、原燃料流量測定器28で測定される原燃料の流量実測値とその流量目標値とを参照して、流量目標値に対する流量実測値の乖離量が第2設定乖離値以上であるという第2判定条件が満たされる場合には、凝縮水回収器36による凝縮水の回収に異常が発生している、即ち、ドレン排水不良という診断結果B2の特定に至り、第2判定条件が満たされない場合には工程#22の判定処理に移行する。つまり、工程#21の判定処理の判定結果は、別の判定処理への移行が指示される場合と、異常診断処理2の診断結果の特定に至る場合との両方を含んでいる。
【0067】
具体的に説明すると、還流ガス供給路L3は燃料ガス供給路L2の分岐部24から原燃料供給路L1の合流部25に至る流路である。そして、還流ガス供給路L3を流れる燃料ガスには、水素だけでなく、水蒸気も含まれている。そのため、還流ガス供給路L3では上述したように凝縮水が発生し、その凝縮水を回収する凝縮水回収器36も設けられている。但し、凝縮水回収器36から第2回収路L5bへの凝縮水の流動が正常に行われていない場合、溢れた凝縮水が原燃料供給路L1の合流部25に流入し、場合によってはゼロガバナ29及び原燃料流量測定器28にも到達することもあり得る。
【0068】
そして、溢れた凝縮水が原燃料供給路L1の合流部25に流入することで原燃料供給路L1の一部が凝縮水で閉塞された場合、原燃料供給器30が動作していても原燃料供給路L1を原燃料が流れ難くなるため、原燃料流量測定器28で測定される原燃料の流量実測値は流量目標値に対して非常に小さくなる。但し、原燃料供給器30は動作しているため、原燃料供給路L1での原燃料の圧力が高まると、ある時点で原燃料供給路L1を閉塞している凝縮水と共に原燃料は気化器14の方へと一気に流れ出す。このように、凝縮水回収器36による凝縮水の回収に異常が発生している、即ち、ドレン排水不良という異常が発生している場合には、原燃料の流量目標値に対する流量実測値の乖離量が第2設定乖離値以上になるという現象が現れると考えられる。
【0069】
尚、
図4には、凝縮水回収器36による凝縮水の回収に異常が発生しているという診断結果B2を記載しているが、診断結果B2は、ゼロガバナ29及び原燃料流量測定器28の少なくとも一方を交換する必要があるというものでも良い。
このように、診断結果B2の例をいくつか記載したが、それらは単独で用いられてもよく、或いは、他の何れかと併せて用いられてもよい。
【0070】
工程#22の判定処理は、外気温測定器としての温度測定器T3で測定される外気温が設定外気温度以下であるという第3判定条件が満たされるか否かを判定するものである。
上述したように、還流ガス供給路L3を流れる改質ガスの温度を保つための温度調節部材32が還流ガス供給路L3の少なくとも一部分の周囲に設けられる。例えば、外気温測定器としての温度測定器T3で還流ガスの温度が測定される部分に温度調節部材32が設けられている。そのため、温度測定器T3で測定される還流ガスの温度は上記設定温度よりも高くなる。ところが、還流ガス供給路L3に対する温度調節部材32の装着が不十分である場合、温度測定器T3で測定される外気温が設定外気温度以下ではない場合でも、還流ガス温度が設定温度以下になるという還流ガス温度異常という異常が発生する。つまり、診断処理部4bは、工程#22の判定処理において、温度測定器T3で測定される外気温が設定外気温度以下であるという第3判定条件が満たされない場合、還流ガス供給路L3に対する温度調節部材32の装着が不十分であるという診断結果B4の特定に至る。
【0071】
それに対して、診断処理部4bは、工程#22の判定処理において、温度測定器T3で測定される外気温が設定外気温度以下であるという第3判定条件が満たされない場合、オリフィス33の異常であるという診断結果B3の特定に至る。つまり、工程#22の判定処理の判定結果は、異常診断処理2の診断結果の特定に至る場合を含んでいる。
【0072】
以上のように、異常診断装置4は、異常の発生からその異常についての診断結果の特定までを、予め作成された異常診断処理の手順に従って自動で行うことができる。そして、特定された診断結果は、異常診断装置4の記憶部4aに記憶される。また、異常診断装置4の記憶部4aは、燃料電池装置10の管理を行っている所有者等の管理者の連絡先及び燃料電池装置10のメンテナンス担当者の連絡先及び燃料電池装置10の組み立て者や部品製造者等の製造関係者の連絡先の少なくとも一つを記憶しており、診断処理部4bは、特定した診断結果を、管理者の連絡先及びメンテナンス担当者の連絡先及び製造関係者の連絡先の少なくとも一つに出力する。例えば、診断処理部4bは、燃料電池装置10の管理者の電子メールアドレス及び燃料電池装置10のメンテナンス担当者の電子メールアドレス及び燃料電池装置10の製造関係者の電子メールアドレスなどに、診断結果を送信する。その結果、燃料電池装置10の管理者はその管理者端末装置62で診断結果を確認でき、燃料電池装置10のメンテナンス担当者はそのメンテナンス担当者端末装置60で診断結果を確認でき、燃料電池装置10の製造関係者はその製造関係者端末装置61で診断結果を確認できる。このように、異常診断装置4がその異常についての診断結果の特定を自動で行うため、メンテナンス担当者などはその診断結果に応じた準備を事前に行った上で出動できる。
【0073】
例えば、燃料電池装置10の修理などの現場に到着する前に、燃料電池装置10のメンテナンス担当者は診断結果に応じた修理などの準備を行うことができ、燃料電池装置10の製造関係者は診断結果に応じた修理などに必要な部品の準備を行うことができる。その結果、実際に修理などを行う現場で、修理を行う技能を持つ人員がいないといった問題や、修理に必要な部品を持参していなかったという問題などが発生することを回避できる。
【0074】
上述した例では、異常診断処理1の診断結果は、異常の発生要因として、「点火器20の異常(診断結果A1)」、「ホットモジュール13の異常(診断結果A3)」、「供給されている原燃料の熱量と使用が想定されている原燃料の熱量とが一致していない(診断結果A4)」というように、燃料電池装置10の特定の部位で発生している不具合の内容を含む。また、異常診断処理2の診断結果は、異常の発生要因として、「改質用水供給器39の動作異常(診断結果B1)」、「オリフィス33の異常(診断結果B3)」、「還流ガス供給路L3に対する温度調節部材32の装着が不十分(診断結果B4)」など、燃料電池装置10の特定の部位で発生している不具合の内容を含む。燃料電池装置10の管理者及びメンテナンス担当者及び製造関係者などは、異常の発生要因として、燃料電池装置10の特定の部位で発生している不具合の内容が分かれば、その部位の部品修理や部品交換などの必要な作業を決定できる。
【0075】
尚、診断結果は上述した例に限定されず、適宜変更可能である。
具体例を挙げると、診断結果は、異常への対処法として、燃料電池装置10の特定の構成部品の交換指示又は修理指示を含んでもよい。例えば、異常診断処理1の診断結果A1は「点火器20の交換又は修理」等であってもよい。異常診断処理1の診断結果A3は「ホットモジュール13の交換又は修理」等であってもよい。異常診断処理1の診断結果A4は「原燃料流量測定器28のコンバージョンファクターを適正値に変更」、「空気供給器41によって供給される単位時間当たりの空気の流量を適正値に変更」等であってもよい。また、異常診断処理2の診断結果B1は「改質用水供給器39の交換」等であってもよい。異常への対処法として、燃料電池装置10の特定の構成部品の交換指示又は修理指示が含まれていれば、交換する構成部品を事前に用意することや、交換作業又は修理作業に必要な人員を事前に決定できる。
【0076】
他にも、燃料電池装置10の特定の構成部品の交換指示又は修理指示を行う場合、その難易度が分かれば好ましい。そのため、記憶部4aが、燃料電池装置10の構成部品の修理作業又は交換作業の難易度を示す情報を複数の構成部品毎に記憶しており、診断結果は、異常への対処法として、その難易度を示す情報を含んでもよい。異常への対処法として、構成部品の修理作業又は交換作業の難易度を示す情報が含まれていれば、その難易度に応じた技能を持つ人員を派遣する準備を事前に行うことができる。
【0077】
加えて、燃料電池装置10の特定の構成部品の交換指示又は修理指示を行う場合、その交換又は修理を実際に行うメンテナンス担当者にとっては、修理作業又は交換作業を説明する動画データを事前に又は現場で見ることができれば好ましい。そのため、記憶部4aが、燃料電池装置10の構成部品の修理作業又は交換作業を説明する動画データを複数の構成部品毎に記憶しており、診断結果は、異常への対処法として、動画データを含んでもよい。異常への対処法として、燃料電池装置10の構成部品の修理作業又は交換作業を説明する動画データが含まれていれば、構成部品の修理作業又は交換作業の担当者はその動画データを確認して、修理作業又は交換作業を確実に実施できる。
【0078】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、燃料電池装置10の構成について具体的に説明したが、その構成は適宜変更可能である。
また、診断結果の内容も適宜変更可能である。
【0079】
<2>
上記実施形態では、点火不良異常という異常が発生したことを燃料電池制御部49が判定し、燃料電池制御部49が、点火不良異常という異常が発生したという測定結果を、通信部51から異常診断装置4に伝達する例を説明したが、他の形態でもよい。例えば、異常診断装置4の診断処理部4bが、燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信した燃焼部19の温度を参照して、点火不良異常という異常が発生したと判定してもよい。
【0080】
同様に、上記実施形態では、還流ガス温度異常という異常が発生したことを燃料電池制御部49が判定し、燃料電池制御部49が、還流ガス温度異常という異常が発生したという測定結果を、通信部51から異常診断装置4に伝達する例を説明したが、他の形態でもよい。例えば、異常診断装置4の診断処理部4bが、燃料電池装置10から情報通信回線2を介して受信した還流ガス温度を参照して、還流ガス温度異常という異常が発生したと判定してもよい。
【0081】
<3>
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、燃料電池装置で発生する異常の内容を適切に診断できる異常診断装置に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 :施設
2 :情報通信回線
4 :異常診断装置
4a :記憶部
4b :診断処理部
10 :燃料電池装置
27 :圧力測定器(測定器)
28 :原燃料流量測定器(測定器)
42 :空気流量測定器(測定器)
43 :ガス測定器(測定器)
T1 :温度測定器(測定器、改質器温度測定器)
T2 :温度測定器(測定器、燃焼部温度測定器)
T3 :温度測定器(測定器、外気温測定器)
T4 :温度測定器(測定器、還流ガス温度測定器)
T5 :温度測定器(測定器)