(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067601
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ガス検知器の点検方法およびガス検知器の点検装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G08B17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178999
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠也
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 祐一
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AB03
5G405CA13
5G405CA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】点検用ガスの濃度にばらつきがある場合にも、ガス検知器の正確な点検を行うことが可能なガス検知器の点検方法を提供する。
【解決手段】ガス検知器の入力が所定の範囲内であるかを点検するガス検知器の点検方法であって、ガス検知器に供給される点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップと、入力されたガス成分の濃度情報に基づいて、所定の範囲を決定するステップと、決定した所定の範囲を表示部に表示するステップと、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検知器の出力が所定の範囲内であるかを点検する前記ガス検知器の点検方法であって、
前記ガス検知器に供給される点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップと、
入力された前記ガス成分の濃度情報に基づいて、前記所定の範囲を決定するステップと、を備える、ガス検知器の点検方法。
【請求項2】
前記所定の範囲を決定するステップは、入力された前記ガス成分の濃度情報に基づいて、前記点検用ガスの濃度を推定し、推定された前記点検用ガスの濃度に基づいて、前記所定の範囲を決定するステップを含む、請求項1に記載のガス検知器の点検方法。
【請求項3】
前記所定の範囲を決定するステップは、入力された前記ガス成分の濃度情報から、前記ガス成分の濃度情報を前記点検用ガスの濃度に換算するための換算係数により、前記点検用ガスの濃度を推定し、推定された前記点検用ガスの濃度に基づいて、前記所定の範囲を決定するステップを含む、請求項2に記載のガス検知器の点検方法。
【請求項4】
前記ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップは、予め設定された値を書き換えられるように、前記ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス検知器の点検方法。
【請求項5】
前記ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップは、前記点検用ガスの成分のうち、最大濃度の前記ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス検知器の点検方法。
【請求項6】
ガス検知器の出力が所定の範囲内であるかを点検する前記ガス検知器の点検装置であって、
前記ガス検知器に供給される点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報の入力を受け付ける入力受付部と、
入力された前記ガス成分の濃度情報に基づいて、前記所定の範囲を決定する制御部と、を備える、ガス検知器の点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス検知器の点検方法およびガス検知器の点検装置に関し、特に、点検用ガスによりガス検知器を点検するガス検知器の点検方法およびガス検知器の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点検用ガスによりガス検知器を点検するガス検知器の点検方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、点検用ガスによりガス検知器を点検するガス検知器の点検処理システムが開示されている。ガス検知器の点検処理システムは、ガス検知器を収容するシステム本体を備えている。システム本体は、ガス検知器に点検用ガスを供給することにより、ガス検知器のガス警報機能が正常に作動するか否かを確認するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されガス検知器の点検処理システムでは、点検用ガスの濃度にばらつきがある場合、ガス検知器の正確な点検が困難である。このため、点検用ガスの濃度にばらつきがある場合にも、ガス検知器の正確な点検を可能にすることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、点検用ガスの濃度にばらつきがある場合にも、ガス検知器の正確な点検を行うことが可能なガス検知器の点検方法およびガス検知器の点検装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるガス検知器の点検方法は、ガス検知器の出力が所定の範囲内であるかを点検するガス検知器の点検方法であって、ガス検知器に供給される点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップと、入力されたガス成分の濃度情報に基づいて、所定の範囲を決定するステップと、を備える。
【0008】
この発明の第1の局面によるガス検知器の点検方法では、上記のように、ガス検知器に供給される点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップと、入力されたガス成分の濃度情報に基づいて、所定の範囲を決定するステップと、を設ける。これにより、点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報に基づいて、点検の基準となる所定の範囲を決定することができるので、点検用ガスの濃度にばらつきがある場合にも、正確な所定の範囲を決定することができる。その結果、点検用ガスの濃度にばらつきがある場合にも、ガス検知器の正確な点検を行うことができる。
【0009】
上記第1の局面によるガス検知器の点検方法において、好ましくは、所定の範囲を決定するステップは、入力されたガス成分の濃度情報に基づいて、点検用ガスの濃度を推定し、推定された点検用ガスの濃度に基づいて、所定の範囲を決定するステップを含む。このように構成すれば、点検用ガスの濃度に基づく所定の範囲を決定することができるので、ガス検知器の出力が点検用ガスの濃度に基づく出力である場合に、点検の基準となる所定の範囲を適切に決定することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、所定の範囲を決定するステップは、入力されたガス成分の濃度情報から、ガス成分の濃度情報を点検用ガスの濃度に換算するための換算係数により、点検用ガスの濃度を推定し、推定された点検用ガスの濃度に基づいて、所定の範囲を決定するステップを含む。このように構成すれば、ガス成分の濃度情報を点検用ガスの濃度に換算するための換算係数により換算するだけの簡単な処理で、点検用ガスの濃度を推定することができるので、点検用ガスの濃度に基づく所定の範囲を簡単な処理で決定することができる。
【0011】
上記第1の局面によるガス検知器の点検方法において、好ましくは、ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップは、予め設定された値を書き換えられるように、ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップを含む。このように構成すれば、ガス成分の濃度情報が得られない場合には、ガス成分の濃度情報として、予め設定された値を使用することができる。その結果、ガス成分の濃度情報が得られない場合にも、簡易な所定の範囲を決定して簡易なガス検知器の点検を行うことができる。また、ガス成分の濃度情報が得られる場合には、予め設定された値をガス成分の濃度情報に書き換えて入力することができる。その結果、ガス成分の濃度情報が得られる場合には、正確な所定の範囲を決定して正確なガス検知器の点検を行うことができる。
【0012】
上記第1の局面によるガス検知器の点検方法において、好ましくは、ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップは、点検用ガスの成分のうち、最大濃度のガス成分の濃度情報の入力を受け付けるステップを含む。このように構成すれば、点検用ガスの成分のうち代表的な成分である最大濃度のガス成分の濃度情報に基づいて、所定の範囲を決定することができるので、所定の範囲を精度良く決定することができる。
【0013】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面によるガス検知器の点検装置は、ガス検知器の出力が所定の範囲内であるかを点検するガス検知器の点検装置であって、ガス検知器に供給される点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報の入力を受け付ける入力受付部と、入力されたガス成分の濃度情報に基づいて、所定の範囲を決定する制御部と、を備える。
【0014】
この発明の第2の局面によるガス検知器の点検装置では、上記のように、ガス検知器に供給される点検用ガスの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報の入力を受け付ける入力受付部と、入力されたガス成分の濃度情報に基づいて、所定の範囲を決定する制御部と、を設ける。これにより、上記第1の局面によるガス検知器の点検方法と同様に、点検用ガスの濃度にばらつきがある場合にも、ガス検知器の正確な点検を行うことが可能なガス検知器の点検装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、点検用ガスの濃度にばらつきがある場合にも、ガス検知器の正確な点検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態によるガス検知器の点検システムを示した図である。
【
図2】一実施形態によるガス検知器の点検システムを示したブロック図である。
【
図3】一実施形態によるガス検知器の点検装置の設定画面を示した図である。
【
図4】一実施形態によるガス検知器の点検装置の合格範囲の計算の一例を説明するための図である。
【
図5】一実施形態によるガス検知器の点検装置の合格範囲の決定に関する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1~
図4を参照して、一実施形態によるガス検知器202の点検装置100を備える点検システム200の構成について説明する。
【0019】
(点検システムの構成)
図1に示す点検システム200は、ガス源201と、ガス検知器202と、点検装置100とを備える。点検システム200は、ガス源201から供給される点検用ガスGを用いて、点検装置100によりガス検知器202の出力が所定の範囲R(
図3参照)内であるかを点検するガス検知器202の点検システムである。本実施形態では、点検用ガスGは、都市ガス13Aである。都市ガス13Aは、メタン、エタン、プロパンおよびブタンなどの複数種類のガス成分の混合ガスである。また、都市ガス13Aは、メタンを最大濃度のガス成分として含むように各ガス成分を含んでいる。
【0020】
図1および
図2に示すように、ガス源201は、点検装置100を介してガス検知器202に点検用ガスGを供給するように構成されている。ガス源201は、ガス配管201aを介して点検装置100に点検用ガスGを供給可能に接続されている。ガス源201は、ガスボンベである。ガス源201には、エアをバランスガスとして点検用ガスGが封入されている。また、ガス源201に封入された点検用ガスGには、ガスボンベの製造元により製造時に許容されている製造誤差に起因して、濃度にばらつきがある場合がある。
【0021】
ガス検知器202は、都市ガス13Aを検知して、検知した都市ガス13Aに応じた出力を行うように構成されている。具体的には、ガス検知器202は、ガス検知部202aと、制御部202bとを含む。ガス検知部202aは、都市ガス13Aを検知し、検知した都市ガス13Aの濃度に応じた出力信号を出力するように構成されている。ガス検知部202aは、都市ガス13Aを検知可能な検知素子として、たとえば接触燃焼式ガス検知素子を有する。制御部202bは、ガス検知部202aにより出力された出力信号に基づいて、都市ガス13Aの濃度を表す指示値を取得し、取得した指示値を出力するように構成されている。具体的には、制御部202bは、都市ガス13Aの爆発下限界濃度(%LEL:% Lower Explosive Limit)を指示値として出力する。制御部202bは、プロセッサにより構成され、プログラムを実行することによりガス検知器202の全体の制御処理を行うように構成されている。
【0022】
また、ガス検知器202は、点検装置100による点検時には、ガス源201から点検用ガスGを供給されることが可能なように、ガス配管202cを介して点検装置100に接続されている。
【0023】
点検装置100は、ガス検知器202の出力が所定の範囲R(
図3参照)内であるかを点検するように構成されている。具体的には、点検装置100は、入力受付部11と、制御部12と、表示部13と、記憶部14とを含む。入力受付部11は、ユーザによる数字の入力操作などの各種の入力操作を受け付けるように構成されている。入力受付部11は、キーボードである。制御部12は、プロセッサにより構成され、プログラムを実行することにより点検装置100の全体の制御処理を行うように構成されている。
【0024】
制御部12は、ガス検知器202の点検時には、ガス配管201aおよびガス配管202cに接続された点検装置100内のガス配管15を介して、ガス源201からガス検知器202に点検用ガスGを供給する制御を行うように構成されている。そして、制御部12は、赤外線通信などの通信により、点検用ガスGによるガス検知器202の出力をガス検知器202から取得するように構成されている。具体的には、制御部12は、点検用ガスGによるガス検知部202aの出力信号に基づいて取得された点検用ガスGの指示値を制御部202bから取得するように構成されている。そして、制御部12は、取得したガス検知器202の出力(指示値)が所定の範囲R内であるかを点検する制御を行うように構成されている。そして、制御部12は、ガス検知器202の点検結果を表示部13に表示する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部12は、ガス検知器202の出力が所定の範囲R内である場合、ガス検知器202の出力が正常であることを表示部13に表示し、ガス検知器202の出力が所定の範囲R外である場合、ガス検知器202の出力が異常であることを表示部13に表示する制御を行うように構成されている。
【0025】
表示部13は、後述する設定画面16などの各種の情報を表示するように構成されている。表示部13は、たとえば液晶表示装置により構成されている。また、表示部13は、タッチパネル機能を有する表示操作部である。記憶部14は、後述する換算係数Cなどの各種の情報を記憶するように構成されている。記憶部14は、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置により構成されている。
【0026】
ここで、本実施形態では、
図3および
図4に示すように、点検装置100は、ガス検知器202の点検前に、ガス検知器202の出力の合格範囲を表す所定の範囲Rを決定可能に構成されている。具体的には、点検装置100は、入力受付部11により、ガス検知器202に供給される点検用ガスGの成分(メタン、エタン、プロパンおよびブタン)のうち、一部のガス成分(メタン)の濃度情報Aの入力を受け付けるとともに、入力されたガス成分の濃度情報Aに基づいて、制御部12により、所定の範囲Rを決定するように構成されている。また、本実施形態では、点検装置100は、入力受付部11により、点検用ガスGの成分のうち、最大濃度のガス成分(メタン)の濃度情報Aの入力を受け付けるように構成されている。なお、点検用ガスGの各ガス成分の濃度情報は、たとえば、ガス源201(ガスボンベ)に記載されている。ユーザは、ガス源201などに記載されている点検用ガスGの各ガス成分の濃度情報のうち、入力すべきガス成分(メタン)の濃度情報を入力する。
【0027】
また、本実施形態では、制御部12は、入力されたガス成分の濃度情報Aに基づいて、点検用ガスGの濃度Bを推定し、推定された点検用ガスGの濃度に基づいて、所定の範囲Rを決定するように構成されている。この際、制御部12は、入力されたガス成分の濃度情報Aから、ガス成分の濃度情報Aを点検用ガスGの濃度Bに換算するための換算係数Cにより、点検用ガスGの濃度Bを推定し、推定された点検用ガスGの濃度Bに基づいて、所定の範囲Rを決定するように構成されている。また、制御部12は、推定された点検用ガスGの濃度Bに所定値Dを減算および加算することにより、所定の範囲Rの下限および上限を決定するように構成されている。
【0028】
図4を参照して、所定の範囲Rの決定の一例について説明する。ここでは、ガス成分の濃度情報Aとして、0.88vol%が入力されたとする。この場合、まず、制御部12は、濃度情報Aの0.88vol%に、単位換算係数Eの10000ppm/vol%を乗算することにより単位換算を行い、単位換算後の濃度情報Aの8800ppmを取得する。そして、制御部12は、単位換算後の濃度情報Aの8800ppmに、換算係数Cの20/8800を乗算することにより、濃度Bの20%LELを推定する。なお、換算係数Cの20/8800とは、メタンガスの濃度と点検用ガスGの濃度との関係を表す比例係数である。メタンガスの濃度と点検用ガスGの濃度との間には線形の比例関係がある。換算係数Cは、実験などにより予め求められて、記憶部14に記憶されている。
【0029】
また、最終的に取得する濃度Bを小数点以下で四捨五入した値とする場合、制御部12は、濃度情報Aに換算係数Cを乗算後の値に、0.5を加算して小数点以下の値を切り捨てた値を濃度Bとして取得する。これにより、制御部12は、小数点以下を四捨五入した値として濃度Bを取得可能である。そして、制御部12は、濃度Bの20%LELに、所定値Dの4を減算することにより、所定の範囲Rの下限の16%LELを決定するとともに、濃度Bの20%LELに、所定値Dの4を加算することにより、所定の範囲Rの上限の24%LELを決定する。なお、所定値Dは、実験などにより予め決定されて、記憶部14に記憶されている。そして、制御部12は、16%LEL以上24%LEL以下の範囲を所定の範囲Rとして決定する。このように所定の範囲Rを決定することにより、点検用ガスGの濃度のばらつきに起因するガス成分(メタン)の濃度情報Aのばらつきに応じて所定の範囲Rを変化させることが可能である。
【0030】
また、
図3に示すように、制御部12は、ガス成分の濃度情報Aを入力するための設定画面16を表示部13に表示する制御を行うように構成されている。設定画面16は、濃度情報入力欄16aと、範囲表示領域16bと、設定変更ボタン16cと、戻るボタン16dとを有する。濃度情報入力欄16aは、ガス成分の濃度情報Aが入力される欄である。ユーザは、表示部13上の濃度情報入力欄16aをタッチして選択した状態で、入力受付部11により、濃度情報入力欄16aに対してガス成分の濃度情報Aの入力操作を行う。点検装置100は、入力受付部11により、濃度情報入力欄16aに対するガス成分の濃度情報Aの入力を受け付けるように構成されている。また、濃度情報入力欄16aには、ユーザが濃度情報入力欄16aにガス成分の濃度情報Aを入力する前から、予め設定された値が表示されている。このため、本実施形態では、点検装置100は、入力受付部11により、予め設定された値を書き換えられるように、ガス成分の濃度情報Aの入力を受け付けるように構成されている。なお、予め設定された値として、ガス成分の濃度情報Aの初期値が濃度情報入力欄16aに表示されている。初期値としては、点検用ガスGの濃度のばらつきにおける入力すべきガス成分(メタン)の濃度の略中央値(略平均値)が採用されている。すなわち、ガス源201(ガスボンベ)の製造元により製造時に許容されている製造誤差がない場合の点検用ガスGの入力すべきガス成分(メタン)の濃度が初期値として採用されている。
【0031】
範囲表示領域16bには、ガス成分の濃度情報Aに基づいて決定された所定の範囲Rが表示される。ユーザは、ガス成分の濃度情報Aの入力後に範囲表示領域16bに表示される所定の範囲Rを確認可能である。
【0032】
設定変更ボタン16cは、所定の範囲Rによる設定変更を行うための表示上のボタンである。ユーザは、表示部13上の設定変更ボタン16cをタッチして選択することにより、決定された所定の範囲Rがガス検知器202の点検時の所定の範囲Rとなるような設定変更を行う。この設定変更では、決定された所定の範囲Rがガス検知器202の点検時の所定の範囲Rとして直接的に記憶部14に記憶されるのではなく、単位換算後のガス成分の濃度情報A(
図4では、8800ppm)が、決定された所定の範囲Rを計算するための情報として記憶部14に記憶される。そして、ガス検知器202の点検時には、記憶部14に記憶された単位換算後のガス成分の濃度情報Aに基づいて、制御部12により、所定の範囲Rが計算される。これにより、たとえば換算係数Cが変わった場合などに、容易に所定の範囲Rの計算に反映可能である。
【0033】
戻るボタン16dは、設定画面16から別の画面に画面を遷移させるための表示上のボタンである。ユーザは、所定の範囲Rの設定変更を完了した場合、表示部13上の戻るボタン16dをタッチして選択することにより、設定画面16から別の画面に画面を遷移させる。
【0034】
(所定の範囲の決定に関する制御処理)
次に、
図5を参照して、本実施形態の点検装置100による所定の範囲Rの決定に関する制御処理をフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
図5に示すように、まず、ステップS101において、入力受付部11により、ガス検知器202に供給される点検用ガスGの成分(メタン、エタン、プロパンおよびブタン)のうち、一部のガス成分(メタン)の濃度情報Aの入力が受け付けられる。具体的には、ステップS101では、入力受付部11により、点検用ガスGの成分のうち、最大濃度のガス成分(メタン)の濃度情報Aの入力が受け付けられる。また、ステップS101では、入力受付部11により、予め設定された値(初期値)が書き換えられるように、ガス成分の濃度情報Aの入力が受け付けられる。あるいは、ステップS101では、入力受付部11により、予め設定された値(初期値)としてのガス成分の濃度情報Aの入力が受け付けられる。
【0036】
そして、ステップS102において、入力されたガス成分の濃度情報Aに基づいて、制御部12により、所定の範囲Rが決定される。具体的には、ステップS102では、入力されたガス成分の濃度情報Aに基づいて、制御部12により、点検用ガスGの濃度Bが推定され、推定された点検用ガスGの濃度Bに基づいて、所定の範囲Rが決定される。より具体的には、ステップS102では、制御部12により、入力されたガス成分の濃度情報Aから、ガス成分の濃度情報Aを点検用ガスGの濃度Bに換算するための換算係数Cにより、点検用ガスGの濃度Bが推定される。また、ステップS102では、制御部12により、推定された点検用ガスGの濃度Bに所定値Dが減算および加算されることにより、所定の範囲Rの下限および上限が決定される。この結果、ステップS102では、制御部12により、所定の範囲Rが決定される。
【0037】
そして、ステップS103において、制御部12により、決定された所定の範囲Rが表示部13に表示される。そして、設定画面16の設定変更ボタン16cが操作されることにより、決定された所定の範囲Rによる設定変更が行われて、制御処理が終了される。
【0038】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0039】
本実施形態では、上記のように、ガス検知器202の点検方法は、ガス検知器202の出力が所定の範囲R内であるかを点検するガス検知器202の点検方法であって、ガス検知器202に供給される点検用ガスGの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報Aの入力を受け付けるステップと、入力されたガス成分の濃度情報Aに基づいて、所定の範囲Rを決定するステップと、を備える。
【0040】
また、ガス検知器202の点検装置100は、ガス検知器202の出力が所定の範囲R内であるかを点検するガス検知器202の点検装置100であって、ガス検知器202に供給される点検用ガスGの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報Aの入力を受け付ける入力受付部11と、入力されたガス成分の濃度情報Aに基づいて、所定の範囲Rを決定する制御部12と、を備える。
【0041】
上記構成により、点検用ガスGの成分のうち、一部のガス成分の濃度情報Aに基づいて、点検の基準となる所定の範囲Rを決定することができるので、点検用ガスGの濃度Bにばらつきがある場合にも、正確な所定の範囲Rを決定することができる。その結果、点検用ガスGの濃度Bにばらつきがある場合にも、ガス検知器202の正確な点検を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、所定の範囲Rを決定するステップは、入力されたガス成分の濃度情報Aに基づいて、点検用ガスGの濃度Bを推定し、推定された点検用ガスGの濃度Bに基づいて、所定の範囲Rを決定するステップを含む。これにより、点検用ガスGの濃度Bに基づく所定の範囲Rを決定することができるので、ガス検知器202の出力が点検用ガスGの濃度Bに基づく出力である場合に、点検の基準となる所定の範囲Rを適切に決定することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、所定の範囲Rを決定するステップは、入力されたガス成分の濃度情報Aから、ガス成分の濃度情報Aを点検用ガスGの濃度Bに換算するための換算係数Cにより、点検用ガスGの濃度Bを推定し、推定された点検用ガスGの濃度Bに基づいて、所定の範囲Rを決定するステップを含む。これにより、ガス成分の濃度情報Aを点検用ガスGの濃度Bに換算するための換算係数Cにより換算するだけの簡単な処理で、点検用ガスGの濃度Bを推定することができるので、点検用ガスGの濃度Bに基づく所定の範囲Rを簡単な処理で決定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、ガス成分の濃度情報Aの入力を受け付けるステップは、予め設定された値を書き換えられるように、ガス成分の濃度情報Aの入力を受け付けるステップを含む。これにより、ガス成分の濃度情報Aが得られない場合には、ガス成分の濃度情報Aとして、予め設定された値を使用することができる。その結果、ガス成分の濃度情報Aが得られない場合にも、簡易な所定の範囲Rを決定して簡易なガス検知器202の点検を行うことができる。また、ガス成分の濃度情報Aが得られる場合には、予め設定された値をガス成分の濃度情報Aに書き換えて入力することができる。その結果、ガス成分の濃度情報Aが得られる場合には、正確な所定の範囲Rを決定して正確なガス検知器202の点検を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、ガス成分の濃度情報Aの入力を受け付けるステップは、点検用ガスGの成分のうち、最大濃度のガス成分の濃度情報Aの入力を受け付けるステップを含む。これにより、点検用ガスGの成分のうち代表的な成分である最大濃度のガス成分の濃度情報Aに基づいて、所定の範囲Rを決定することができるので、所定の範囲Rを精度良く決定することができる。
【0046】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0047】
たとえば、上記実施形態では、ガス検知器の指示値(出力)が所定の範囲内であるかを点検する例を示したが、本発明はこれに限られない。ガス検知器の指示値以外の出力(ガス検知部の出力信号の値(センサ値)、ガス検知部の出力信号を補正した値(補正センサ値)など)が所定の範囲内であるかを点検してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、点検用ガスが都市ガス13Aである例を示したが、本発明はこれに限られない。点検用ガスが都市ガス13A以外の複数種類のガス成分を含む混合ガスであってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、点検用ガスの成分のうち、最大濃度の1種類のガス成分の濃度情報の入力を受け付ける例を示したが、本発明はこれに限られない。所定の範囲を適切に決定可能であれば、点検用ガスの成分のうち、最大濃度以外のガス成分(エタン、プロパンおよびブタンなど)の濃度情報の入力を受け付けてもよい。また、点検用ガスの成分のうち、全ての成分とならない範囲で複数種類のガス成分の濃度情報の入力を受け付けてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、1つの換算係数が記憶部に記憶されている例を示したが、本発明はこれに限られない。換算係数はガス源(ガスボンベ)の製造元によって異なるため、複数の製造元のガス源(ガスボンベ)に対応可能なように、換算係数のデータベースが記憶部に記憶されていてもよい。そして、ガス源(ガスボンベ)の製造元に応じて、換算係数のデータベースから適切な換算係数が選択されてもよい。また換算係数のデータベースへのデータの追加や書き換えが可能なように構成されてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、点検用ガスの濃度に所定値を減算および加算することにより、所定の範囲の下限および上限を決定する例を示したが、本発明はこれに限られない。所定の範囲を適切に決定可能であれば、点検用ガスの濃度に所定値を減算することのみ、または、加算することのみにより、所定の範囲を決定してもよい。また、上記実施形態では、減算する所定値および加算する所定値が同じ値である例を示したが、減算する所定値および加算する所定値は異なる値であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、入力されたガス成分の濃度情報を単位換算する例を示したが、本発明はこれに限られない。入力されたガス成分の濃度情報を単位換算しなくてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、予め設定された値として、初期値が設定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。予め設定された値として、初期値以外の前回使用時の入力値などが設定されていてもよい。また、初期値や前回使用時の入力値が、設定されていなくてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ガス成分の濃度情報が記憶部に記憶されるとともに、ガス検知器の点検時に、記憶部に記憶されたガス成分の濃度情報に基づいて、所定の範囲が計算される例を示したが、本発明はこれに限られない。所定の範囲が記憶部に記憶されるとともに、ガス検知器の点検時に、記憶部に記憶された所定の範囲が読み出されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、点検装置の入力受付部としてキーボードを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。ガス成分の濃度情報の入力を受付可能であれば、点検装置の入力受付部としてキーボード以外を設けてもよい。たとえば、表示操作部にガス成分の濃度情報の入力を受け付けるための情報を表示し、表示操作部を点検装置の入力受付部として機能させてもよい。また、たとえば、点検装置が、タブレット端末などの外部機器と通信する通信部を備え、外部機器で入力されたガス成分の濃度情報を通信部により受け取ることにより、ガス成分の濃度情報の入力を受け付けるように構成されていてもよい。この場合、通信部は、点検装置の入力受付部である。
【符号の説明】
【0056】
11 入力受付部
12 制御部
100 点検装置
202 ガス検知器
A ガス成分の濃度情報
B 点検用ガスの濃度
C 換算係数
G 点検用ガス
R 所定の範囲