(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067609
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G01L1/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179011
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000173795
【氏名又は名称】公益財団法人電磁材料研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 英二
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049BA13
2F049CA01
2F049DA04
(57)【要約】
【課題】ノイズの影響を軽減することにより、ひずみに対する検知感度の向上を図ることができる力センサを提供する。
【解決手段】力センサは、弾性を有する起歪体(10)と、起歪体(10)の周縁部に沿って全周にわたり延在し、下面(102)から突出している外側突出部(12)と、起歪体(10)の下面(102)から突出している内側突出部(14)と、起歪体(10)の主面方向に等方的なゲージ率を有する感歪部材(21~24)と、を備えている。感歪部材(21~24)は起歪体(10)の主面(101)の指定緯度範囲(R1、R2)に配置されている。感歪部材(21~24)は、1箇所で分断され、極点(O)を取り囲む環状に延在する一対の環状感歪部分および当該一対の環状感歪部分の一端部を接続する接続部分により構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向する主面を有する板状の起歪体と、
前記起歪体の周縁部に沿って全周にわたり連続的または離散的に延在し、前記起歪体の主面から突出している外側突出部と、
前記起歪体の主面に配置されている、当該主面方向に等方的なゲージ率を有する感歪部材と、
前記起歪体の前記外側突出部よりも内側において前記起歪体の主面から突出している内側突出部と、を備え、
前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する振動が作用した際に、前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する力が作用した際に極点を基準とした前記起歪体の経線方向についての第1ひずみ量および前記起歪体の緯線方向についての第2ひずみ量の和の大きさが基準値以上となる共通の指定緯度範囲において、1箇所で分断された前記極点を取り囲む環状に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分と、当該一対の環状感歪部分のそれぞれの一端部を接続する接続部分と、により前記感歪部材が構成されている
力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の力センサにおいて、
前記起歪体の主面において、前記極点を基準とした前記一対の環状感歪部分のそれぞれの分断箇所の方位角範囲が少なくとも部分的に重なるように、当該一対の環状感歪部分が配置されている
力センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の力センサにおいて、
前記起歪体の主面において、共通の前記指定緯度範囲に形成されている複数の前記感歪部材のそれぞれの、前記極点を基準とした前記一対の環状感歪部分のそれぞれの分断箇所の方位角範囲が少なくとも部分的に重なるように、当該複数の感歪部材が配置されている
力センサ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の力センサにおいて、
前記起歪体の主面において、複数の前記指定緯度範囲のそれぞれに形成されている前記感歪部材のそれぞれの、前記極点を基準とした前記一対の環状感歪部分のそれぞれの分断箇所の方位角範囲が少なくとも部分的に重なるように、当該複数の感歪部材が配置されている
力センサ。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の力センサにおいて、
少なくとも一の前記感歪部材を構成する前記一対の環状感歪部分のそれぞれが、緯線方向について少なくとも部分的に、経線方向について当該一対の環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅Wの2倍以下の間隔で隣接するように前記起歪体の主面に配置されている
力センサ。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の力センサにおいて、
前記起歪体の形状が、前記極点を通る主面の垂線に平行な軸線を基準とする回転対称性または前記極点を通る主面に垂直な平面を基準とする鏡像対称性を有し、
前記外側突出部の配置態様が、前記軸線を基準とする回転対称性または前記平面を基準とする鏡像対称性を有し、
前記感歪部材を構成する前記一対の環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分が、前記軸線を基準とする回転対称性または前記平面を基準とする鏡像対称性を有するように前記起歪体の主面に配置され、かつ、
前記内側突出部の配置態様が、前記軸線を基準とする回転対称性または前記平面を基準とする鏡像対称性を有する
力センサ。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の力センサにおいて、
前記起歪体に設置され、前記感歪部材とともにひずみ検知用回路を構成する抵抗部材をさらに備えている
力センサ。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の力センサにおいて、
前記感歪部材がCr基薄膜により構成されている
力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感歪部材を用いた力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者により、感歪部材の端点間の電気抵抗値の変化量の増大、ひいては起歪体に作用した力の垂線方向成分の測定精度の向上が図られるような力センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この力センサによれば、支持部により周縁を全周にわたり連続的または離散的に支持されている起歪体の主面において、極点を取り囲むように周方向(緯線方向)に環状に延在する指定緯度範囲に感歪部材が1箇所で分断された環状に延在するように配置されている。「指定緯度範囲」は、起歪体の経線方向についての第1ひずみ量および起歪体の緯線方向についての第2ひずみ量の大きさの和が基準値以上となる緯度範囲である。
【0003】
起歪体に力が作用した場合、緯度範囲において極点を挟んで反対側にある一対の箇所のそれぞれにおける起歪体のひずみの垂線方向成分の極性が同じになる一方で当該ひずみの主面方向成分の極性が逆になる。このため、極点を取り囲む1箇所で分断された環状に延在する感歪部材の当該一対の箇所において、起歪体のひずみの垂線方向成分に応じた電気抵抗値の変化が重畳され、その一方で起歪体のひずみの主面方向成分に応じた電気抵抗値の変化が相殺されうる。よって、感歪部材の端点間の電気抵抗値の変化量に基づき、起歪体に作用した力のうち主面方向成分が少なくとも部分的に除去され、当該力の垂線方向成分が測定されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記構成の力センサによれば、ノイズの影響を受けやすく、これにより起歪体の微小なひずみの検知感度が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、ノイズの影響を軽減することにより、ひずみに対する検知感度の向上を図ることができる力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の力センサは、
一対の対向する主面を有する板状の起歪体と、
前記起歪体の周縁部に沿って全周にわたり連続的または離散的に延在し、前記起歪体の主面から突出している外側突出部と、
前記起歪体の主面に配置されている、当該主面方向に等方的なゲージ率を有する感歪部材と、
前記起歪体の前記外側突出部よりも内側において前記起歪体の主面から突出している内側突出部と、を備え、
前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する振動が作用した際に、前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する力が作用した際に極点を基準とした前記起歪体の経線方向についての第1ひずみ量および前記起歪体の緯線方向についての第2ひずみ量の和の大きさが基準値以上となる共通の指定緯度範囲において、1箇所で分断された前記極点を取り囲む環状に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分と、当該一対の環状感歪部分のそれぞれの一端部を接続する接続部分と、により前記感歪部材が構成されている。
【0008】
当該構成の力センサによれば、外側突出部により周縁を全周にわたり連続的に支持されている起歪体の主面において、極点を取り囲むように環状に延在する指定緯度範囲に感歪部材が配置されている。各感歪部材は、共通の指定緯度範囲において、1箇所で分断された、極点を取り囲むように環状に延在する一対の環状感歪部分および当該一対の環状感歪部分のそれぞれの一端部を接続する接続部分により構成されている(
図1参照)。
【0009】
起歪体10に力が作用した場合、指定緯度範囲のそれぞれにおいて極点Oを挟んで反対側にある一対の箇所のそれぞれにおける起歪体10に垂直方向(z方向)の力が作用した時に生じるひずみの極性が同じになる(
図5A参照)。その一方、この場合、当該一対の箇所のそれぞれにおける起歪体10に主面方向(x、y方向)の力が作用した時に生じるひずみの極性が逆になる(
図5Bおよび
図5C参照)。
図5A~
図5Cでは、感歪部材に対して符号「20」が付されている。
【0010】
このため、1箇所で分断された一対の環状感歪部分により構成されている感歪部材のそれぞれの当該一対の箇所において、起歪体に作用する力(慣性力)の垂線方向成分に応じた電気抵抗値の変化が重畳され、その一方で力(慣性力)の主面方向成分に応じた電気抵抗値の変化が相殺されうる。よって、感歪部材のそれぞれの端点間の電気抵抗値の変化量に基づき、起歪体に作用した力のうち主面方向成分が除去され、当該力の垂線方向成分が測定されうる。
【0011】
また、起歪体の内側突出部によって、当該起歪体に作用する慣性力の増大が図られる。さらに、指定緯度範囲のそれぞれは、起歪体の経線方向についての第1ひずみ量および緯線方向についての第2ひずみ量の和の絶対値の大きさが基準値以上となる緯度範囲である(
図3参照)。よって、感歪部材のそれぞれの端点間の電気抵抗値の変化量の増大、ひいては起歪体に作用した振動(加速度)の垂線方向成分の測定精度の向上が図られる。
【0012】
各感歪部材を構成する一対の環状感歪部分により囲まれている領域、すなわち1箇所で分断された略環状(円環状)に延在する囲繞領域の面積は、各感歪部材が1箇所で分断された略同径の単一の環状感歪部分により構成されている場合における、当該単一の環状感歪部分により囲まれている囲繞領域の面積と比較して狭小化が図られている。これにより、当該囲繞領域の面積が大きいことに由来して、各感歪部材がアンテナとして機能することに由来するノイズの低減が図られる。
【0013】
前記構成の力センサにおいて、
前記起歪体の主面において、前記極点を基準とした前記一対の環状感歪部分のそれぞれの分断箇所の方位角範囲が少なくとも部分的に重なるように、当該一対の環状感歪部分が配置されていることが好ましい。
【0014】
当該構成の力センサによれば、ひずみ検知回路を構成するために起歪体の主面に形成され、一対の環状感歪部分のそれぞれの少なくとも一端部に接続される導電性部材(接続部分、導線部材および/または抵抗部材)の短縮化および/または当該導電性部材により少なくとも部分的に囲まれる領域の狭小化が図られる。このため、当該導電性部材がアンテナの一部として機能することに由来するノイズの低減が図られる。
【0015】
前記構成の力センサにおいて、
前記起歪体の主面において、共通の前記指定緯度範囲に形成されている複数の前記感歪部材のそれぞれの、前記極点を基準とした前記一対の環状感歪部分のそれぞれの分断箇所の方位角範囲が少なくとも部分的に重なるように、当該複数の感歪部材が配置されていることが好ましい。
【0016】
当該構成の力センサによれば、ひずみ検知回路を構成するために起歪体の主面において共通の指定緯度範囲に形成された、複数の感歪部材のそれぞれを構成する一対の環状感歪部分の少なくとも一端部に接続される導電性部材(接続部分、導線部材および/または抵抗部材)の短縮化および/または当該導電性部材により少なくとも部分的に囲まれる領域の狭小化が図られる。このため、当該導電性部材がアンテナの一部として機能することに由来するノイズの低減が図られる。
【0017】
前記構成の力センサにおいて、
前記起歪体の主面において、複数の前記指定緯度範囲のそれぞれに形成されている前記感歪部材のそれぞれの、前記極点を基準とした前記一対の環状感歪部分のそれぞれの分断箇所の方位角範囲が少なくとも部分的に重なるように、当該複数の感歪部材が配置されていることが好ましい。
【0018】
当該構成の力センサによれば、ひずみ検知回路を構成するために起歪体の主面において複数の指定緯度範囲のそれぞれに形成された感歪部材のそれぞれを構成する一対の環状感歪部分のそれぞれの少なくとも一端部に接続される導電性部材(接続部分、導線部材および/または抵抗部材)の短縮化および/または当該導電性部材により少なくとも部分的に囲まれる領域の狭小化が図られる。このため、当該導電性部材がアンテナの一部として機能することに由来するノイズの低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態としての力センサの構成に関する説明図。
【
図2】
図1のII-II線に沿った力センサの断面図。
【
図4】第1実施形態におけるひずみ検知用回路の例示図。
【
図5A】第1の力作用態様に応じた力センサの機能に関する説明図。
【
図5B】第2の力作用態様に応じた力センサの機能に関する説明図。
【
図5C】第3の力作用態様に応じた力センサの機能に関する説明図。
【
図6】本発明の第2実施形態としての力センサの構成に関する説明図。
【
図7】第2実施形態におけるひずみ検知用回路の例示図。
【
図8】本発明の第3実施形態としての力センサの構成に関する説明図。
【
図9】第3実施形態におけるひずみ検知用回路の例示図。
【
図10】本発明の第4実施形態としての力センサの構成に関する説明図。
【
図11】第4実施形態におけるひずみ検知用回路の例示図。
【
図12】本発明の第5実施形態としての力センサの構成に関する説明図。
【
図13】第5実施形態におけるひずみ検知用回路の例示図。
【
図14】実施例の荷重印加試験における測定経過時間に対する印加荷重。
【
図15】実施例の力センサについての荷重印加試験結果。
【
図16】実施例の力センサについての荷重印加試験結果の拡大図。
【
図17】比較例の荷重印加試験における測定経過時間に対する印加荷重。
【
図18】比較例の力センサについての荷重印加試験結果。
【
図19】比較例の力センサについての荷重印加試験結果の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
(構成)
図1および
図2に示されている本発明の第1実施形態としての力センサは、起歪体10(起歪体)と、外側突出部12と、内側突出部14と、4つの感歪部材21~24と、8つの導線部材L11、L12、L21、L24、L32、L33、L41およびL44と、を備えている。力センサの構成要素の位置および姿勢の説明のため、起歪体10の上面101の中心点を原点とする3次元直交座標系(X、Y、Z)を用いる。
【0021】
起歪体10は、Z方向を厚さ方向とし、一対の主面としてX-Y平面に略平行な一対の主面として上面101および下面102を有する略円板形状に形成されている。起歪体10の厚さは均一であってもよく、局所的に肉薄になる領域が存在する場合のように不均一であってもよい。起歪体10の形状は、極点Oを通る上面101の垂線に平行な軸線(Z軸)を基準とする回転対称性または極点Oを通る上面101に垂直な平面(例えば、X-Z平面)を基準とする鏡像対称性を有している。
【0022】
起歪体10は、外周縁の全周にわたり外側突出部12により支持されている。外側突出部12は略円筒状に形成されている。外側突出部12は、部分的に径方向外側に張り出しているフランジ様の張出部を有していてもよい。外側突出部12は、外形が軸線方向(z方向)に略同一の略円筒形状であってもよい。起歪体10の上面101の高さ位置と、外側突出部12の上端面の高さ位置と、は同じである。起歪体10および外側突出部12は切削加工および/または鋳造など一体成型された構造体である。起歪体10および外側突出部12は、ボルト-ナット等の機械的な固定方式のほか、接着または溶接などの固定方式によって固定されていてもよい。また、起歪体10の外周縁における外側突出部12による連続的な支持態様が、前記軸線を基準とする回転対称性(前記回転対称性と相違していてもよい。)または前記平面を基準とする鏡像対称性を有している。
【0023】
前記のように起歪体10が外周縁において全周にわたり外側突出部12によって支持されていることにより起歪体10に力が作用した際に起歪体10にひずみが生じる。
【0024】
起歪体10は、下面102から下方に突出している略円柱状の内側突出部14を備えている。内側突出部14の下端の高さ位置(Z座標値)は、外側突出部12の下端の高さ位置と同じである。内側突出部14は、円柱状のほか、角柱状、円錐台状、円錐状または角錐状など、様々な形状であってもよい。内側突出部14の下端の高さ位置は、外側突出部12の高さ位置よりも高くてもよく、低くてもよい。
【0025】
図3には、起歪体10の内側突出部14に上向き(Zの正方向)に力が作用した場合における当該起歪体10のひずみ特性の計算結果が示されている。起歪体10の極点Oから周縁までの経線方向または径方向についての起歪体10のひずみ量である「第1ひずみ量」の変化態様が実線(ε
r)で示され、緯線方向または周方向についての起歪体10のひずみ量である「第2ひずみ量」の変化態様が二点鎖線(ε
θ)で示され、第1ひずみ量および第2ひずみ量の和が一点鎖線(ε
r+ε
θ)で示されている。「負」のひずみ量は起歪体10(正確には上面101(応力負荷側表面))の収縮量を表わしている一方、「正」のひずみ量は起歪体10(同上)の伸長量を表わしている。
【0026】
図3において、経線の長さDを基準として、極点Oからの距離0~0.25Dの範囲S1は、起歪体10の下面102において内側突出部14が存在する領域に相当する。極点Oからの距離0.75D~1.0Dの範囲S3は、起歪体10の下面102において外側突出部12が存在する領域に相当する。極点Oからの距離0.25D~0.75Dの範囲S2は、起歪体10の下面102において外側突出部12および内側突出部14に挟まれている中間領域に相当する。
【0027】
ここで、起歪体10、外側突出部12および内側突出部14は、SUS316L(ヤング率:193GPa、ポアソン比:0.28)により一体成形された。起歪体10は、厚さ0.05mm、径4.0mm(=φ)の円板により構成された。外側突出部12は、内径3.0mm(=0.75φ)、外径4.0mm(=1.0φ)、起歪体10の下面102からの突出量(高さ)0.55mm、側壁の厚さ0.60mmの略円筒形状の断面を有する円環により構成された。内側突出部14は、径1.0mm(=0.25φ)、起歪体10の下面102からの突出量(高さ)が0.85mmの円柱により構成された。
【0028】
起歪体10は、外側突出部12の外側面の全体を介して支持部材(図示略)に対して固定されている。外部から印加した力として内側突出部14の端面に対してZ方向に一様に100Nの力が作用した場合、当該起歪体10の中心を基準とする円筒極座標系(r,θ,z)において定義された0.1mm刻みのメッシュのそれぞれにおけるひずみが有限要素法にしたがって計算された。
【0029】
第1ひずみ量および第2ひずみ量の和(正値)の大きさの最大値の80%が基準値として設定された場合、経線の長さDを基準として、極点Oから距離0.254D~0.321Dの範囲にある環状の第1指定緯度範囲R1において、当該ひずみ量の和(正値)の大きさが基準値以上である。第1ひずみ量および第2ひずみ量の和(正値)の大きさの最大値の95%が基準値として設定された場合、経線の長さDを基準として、極点Oから距離0.260D~0.292Dの範囲にある環状の第1指定緯度範囲R1において、当該ひずみ量の和(正値)の大きさが基準値以上である。
【0030】
第1ひずみ量および第2ひずみ量の和(負値)の絶対値の大きさの最大値の80%が基準値として設定された場合、経線の長さDを基準として、極点Oから距離0.685D~0.761Dの範囲にある環状の第2指定緯度範囲R2において、当該ひずみ量の和(負値)の絶対値の大きさが基準値以上である。第1ひずみ量および第2ひずみ量の和(負値)の絶対値の大きさの最大値の95%が基準値として設定された場合、経線の長さDを基準として、極点Oから距離0.718D~0.755Dの範囲にある環状の第2指定緯度範囲R2において、当該ひずみ量の和(正値)の絶対値が基準値以上である。
【0031】
一般的に、第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2は、起歪体10の形状およびサイズ、さらには振動によって起歪体10に作用する力(慣性力)に応じて変化する。このため、起歪体10に対する想定作用力に基づき、第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2が適応的に設定されうる。
【0032】
起歪体10は、例えば、弾性を有する金属もしくは合成樹脂またはこれらの組み合わせにより構成されている。起歪体10が金属などの導電性材料からなる場合、その上面101は少なくとも感歪部材21~24および抵抗部材41~42が形成される領域において、絶縁性薄膜により被覆されている。これにより、起歪体10と、感歪部材21~24および抵抗部材41~42とが電気的に絶縁されている。
【0033】
起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1には、第1感歪部材21および第3感歪部材23が配置されている。起歪体10の上面101の第2指定緯度範囲R2には、第2感歪部材22および第4感歪部材24が配置されている。
【0034】
図1に示されているように、第1感歪部材21は、第1指定緯度範囲R1において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212と、当該一対の環状感歪部分211および212のそれぞれの一端部を接続する第1接続部分210と、により構成されている。極点Oからみた第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212のそれぞれの分断箇所の方位角範囲がほぼ一致するように、当該一対の環状感歪部分211および212が配置されている。
【0035】
同じく
図1に示されているように、第3感歪部材23は、第1指定緯度範囲R1において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第3内側環状感歪部分231および第3外側環状感歪部分232と、当該一対の環状感歪部分231および232のそれぞれの一端部を接続する第3接続部分230と、により構成されている。極点Oからみた第3内側環状感歪部分231および第3外側環状感歪部分232のそれぞれの分断箇所の方位角範囲がほぼ一致するように、当該一対の環状感歪部分231および232が配置されている。
【0036】
図1に示されているように、第1指定緯度範囲R1において、略円環状の4つの環状感歪部分231、211、212および232が、径方向(経線方向)に相互に離間して内側から外側に順に配置されている。環状感歪部分231、211、212および232のうち隣接しあう環状感歪部分の間隔が、当該隣接しあう環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅の2倍以下であることが好ましい。
【0037】
図1に示されているように、第2感歪部材22は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222と、当該一対の環状感歪部分221および222のそれぞれの一端部を接続する第2接続部分220と、により構成されている。極点Oからみた第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222のそれぞれの分断箇所の方位角範囲がほぼ一致するように、当該一対の環状感歪部分221および222が配置されている。
【0038】
同じく
図1に示されているように、第4感歪部材24は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第4内側環状感歪部分241および第4外側環状感歪部分242と、当該一対の環状感歪部分241および242のそれぞれの一端部を接続する第4接続部分240と、により構成されている。極点Oからみた第4内側環状感歪部分241および第4外側環状感歪部分242のそれぞれの分断箇所の方位角範囲がほぼ一致するように、当該一対の環状感歪部分241および242が配置されている。
【0039】
図1に示されているように、第2指定緯度範囲R2において、略円環状の4つの環状感歪部分221、241、242および222が、径方向(経線方向)に相互に離間して内側から外側に順に配置されている。環状感歪部分221、241、242および222のうち隣接しあう環状感歪部分の間隔が、当該隣接しあう環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅の2倍以下であることが好ましい。
【0040】
起歪体10の上面101において、極点Oからみた第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、第3内側環状感歪部分231および第3外側環状感歪部分232のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、第4内側環状感歪部分241および第4外側環状感歪部分242のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、が少なくとも部分的に重なるように、4つの感歪部材21~24が配置されている。
【0041】
少なくとも一の部材の分断箇所の方位がその他の部材の分断箇所の方位と相違していてもよい。例えば、第1指定緯度範囲R1において極点Oからみて少なくとも部分的に重なる、第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212のそれぞれの分断箇所の方位角範囲および第3内側環状感歪部分231および第3外側環状感歪部分232のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、が、第2指定緯度範囲R2において極点Oからみて少なくとも部分的に重なる、第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222のそれぞれの分断箇所の方位角範囲および第4内側環状感歪部分241および第4外側環状感歪部分242のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、が極点Oからみて重なっていなくてもよい。
【0042】
第1指定緯度範囲R1において、第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212のそれぞれの分断箇所の方位角範囲および第3内側環状感歪部分231および第3外側環状感歪部分232のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、が、極点Oからみて重なっていなくてもよい。第2指定緯度範囲R2において、第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222のそれぞれの分断箇所の方位角範囲、および/または、第4内側環状感歪部分241および第4外側環状感歪部分242のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、が極点Oからみて重なっていなくてもよい。
【0043】
感歪部材21~24のそれぞれは、起歪体10の上面101に形成されている。感歪部材21~24のそれぞれは、ゲージ率(ゲージ率は3以上である。)について等方性を有しており、例えば、特許文献1に記載されているCrおよび不可避不純物からなるCr薄膜、または、Cr、Nおよび不可避不純物からなるCr-N薄膜により構成されている。Cr-N薄膜は、例えば、一般式Cr100-xNxで表され、組成比xは原子%で0.0001≦x≦30である。
【0044】
感歪部材21~24のそれぞれは、一般式Cr100-xMnx(xは原子%であり、0.1≦x≦34である)または一般式Cr100-xAlx(xは原子%であり、4≦x≦25である)で表されるCr基薄膜により構成されていてもよい(特許文献2参照)。感歪部材21~24のそれぞれは、一般式Cr100-x-yAlxNy(x、yは原子%であり、4≦x≦25、0.1≦y≦20である。)で表されるCr基薄膜により構成されていてもよい(特許文献3参照)。当該薄膜は、スパッタリング法等により起歪体10の上面101に形成される。Cr-N薄膜は、抵抗温度係数(TCR)が極めて小さいため(<±50ppm/℃)、温度変化に対して安定である。
【0045】
室温近傍から500℃近傍までの全温度領域において約3以上の大きなゲージ率および横感度を示すのはCr薄膜に固有の性質である。その性質はCr-N薄膜、Cr-Mn薄膜、Cr-Al薄膜、Cr-Al-N薄膜だけでなく、それ以外の元素を一つまたは複数または多数含むものでもCrの成分比率が多いものではその性質が現れることから、それらも感歪部材21~24を構成するCr基薄膜に含まれる。また、Cr-SiO2、Cr-Al2O3、Cr-SiC、Cr-Cr酸化物、Cr-Cr窒化物など、すなわちCr母相に別の化合物が分散析出した薄膜もCrの成分比率が多いものでは上記の性質が現れることから、それらも感歪部材21~24を構成するCr基薄膜に含まれる。さらに、CrとCr窒化物相、Cr酸化物相、Cr炭化物相のいずれか一つまたは複数が混在する薄膜もCrの成分比率が多いものでは上記Crの性質を保持するため感歪部材21~24を構成するCr基薄膜に含まれる。逆に言えば、Crを主成分とする上記性質を有する薄膜は全て感歪部材21~24を構成するCr基薄膜である。
【0046】
4つの感歪部材21~24は、
図4に示されているような4アクティブゲージ法のブリッジ回路を構成している。
図1に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1の内側には、当該ブリッジ回路の端子T1~T4が形成されている。当該ブリッジ回路の端子T1~T4のうち少なくとも一部が起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲および/または第2指定緯度範囲R2の外側に形成されていてもよい。
【0047】
第1感歪部材21は、第1内側環状感歪部分211の他端部において第1端子T1に導線部材L11を介して接続され、第1外側環状感歪部分212の他端部において第2端子T2に導線部材L12を介して接続されている。第2感歪部材22は、第2内側環状感歪部分221の他端部において第4端子T4に導線部材L24を介して接続され、第2外側環状感歪部分222の他端部において第2端子T2に導線部材L22を介して接続されている。第3感歪部材23は、第3内側環状感歪部分231の他端部において第1端子T1に導線部材L31を介して接続され、第3外側環状感歪部分232の他端部において第3端子T3に導線部材L33を介して接続されている。第4感歪部材24は、第4内側環状感歪部分241の他端部において第4端子T4に導線部材L44を介して接続され、第4外側環状感歪部分242の他端部において第3端子T3に導線部材L43を介して接続されている。
【0048】
感歪部材21~24のそれぞれの厚さ、幅および長さ、さらには電気伝導率などの電気特性のそれぞれは、ブリッジ回路(ひずみ検出用回路)を構成する観点からそれらの抵抗値が全てほぼ一致するように、適当に設計されている。導線部材L11、L12、L22、L24、L31、L33、L43およびL44の厚さ、幅および長さ、さらには素材(電気伝導率を定める。)のそれぞれは、感歪部材21~24のそれぞれと同様に当該ブリッジ回路を構成する観点からそれらの抵抗値が全てほぼ一致するように、適当に設計されている。
【0049】
なお、断線等が生じないよう薄膜の連続性を確保するために感歪部材を構成するセンサ薄膜が導線部材および端子部分まで含めた形で一体成型されたうえで、その導線部材や端子および電極部分に比抵抗およびゲージ率の小さいNiおよび/またはAuなどの膜を重ねて形成し、導線部材や端子および電極とすることが好ましい。そうすることで、薄膜素子に断線が生じにくくなるとともに、導線部材および端子部分といった検知対象以外の無関係な場所からの出力(雑音)や抵抗値を無視できるほどに小さくすることが可能となる。さらに、電極部分を外部に信号を取り出すためのリード線を接続するのに適した材料とすることが必要である。
【0050】
(機能)
本発明の第1実施形態としての力センサによれば、
図1に示されているように、外側突出部12により周縁を全周にわたり連続的に支持されている起歪体10の主面101において、極点Oを取り囲むように環状に延在する指定緯度範囲に感歪部材21~24が配置されている。
【0051】
図1に示されているように、各感歪部材21、22、23、24は、共通の指定緯度範囲において、1箇所で分断された、極点Oを取り囲むように環状に延在する一対の環状感歪部分および当該一対の環状感歪部分のそれぞれの一端部を接続する接続部分により構成されている。
【0052】
起歪体10に力Fが作用した場合、指定緯度範囲R1およびR2のそれぞれにおいて極点Oを挟んで反対側にある一対の箇所のそれぞれにおける起歪体10に垂直方向(z方向)の力が作用した時に生じるひずみの極性が同じになる(
図5A参照)。その一方、この場合、当該一対の箇所のそれぞれにおける起歪体10に主面方向(x、y方向)の力が作用した時に生じるひずみの極性が逆になる(
図5Bおよび
図5C参照)。
【0053】
このため、1箇所で分断された一対の環状感歪部分により構成されている感歪部材21~24のそれぞれの当該一対の箇所において、起歪体10に作用する力(慣性力)の垂線方向成分に応じた電気抵抗値の変化が重畳され、その一方で力(慣性力)の主面方向成分に応じた電気抵抗値の変化が相殺されうる。よって、感歪部材21~24のそれぞれの端点間の電気抵抗値の変化量に基づき、起歪体10に作用した力のうち主面方向成分が除去され、当該力の垂線方向成分が測定されうる。
【0054】
また、起歪体10の内側突出部14によって、当該起歪体10に作用する慣性力の増大が図られる。さらに、指定緯度範囲R1およびR2のそれぞれは、起歪体10の経線方向についての第1ひずみ量および緯線方向についての第2ひずみ量の和の絶対値の大きさが基準値以上となる緯度範囲である(
図3参照)。よって、感歪部材21~24のそれぞれの端点間の電気抵抗値の変化量の増大、ひいては起歪体10に作用した振動(加速度)の垂線方向成分の測定精度の向上が図られる。
【0055】
感歪部材21~24のそれぞれが(1)Crおよび不可避不純物からなるCr基薄膜またはCr、Nおよび不可避不純物からなるCr基薄膜、(2)CrおよびMnからなるCr基薄膜またはCrおよびAlからなるCr基薄膜、(3)Cr、AlおよびNからなるCr基薄膜、(1)、(2)、(3)に示される以外の添加元素を一つまたは複数または多数含むものでCrの成分比率が多いCr基薄膜、Cr-SiO2、Cr-Al2O3、Cr-SiC、Cr-Cr酸化物、Cr-Cr窒化物など、すなわちCr母相に別の化合物が分散析出した薄膜もCrの成分比率が多いCr基薄膜、CrとCr窒化物相、Cr酸化物相、Cr炭化物相のいずれか一つまたは複数が混在するCrの成分比率が多いCr基薄膜、などの、すなわち約3以上の大きなゲージ率および横感度を示すCr基薄膜のうちいずれか1つのCr基薄膜により構成されている。このため、感歪部材21、22の電気抵抗は、縦ひずみおよび横ひずみによる形状変化への寄与分よりも、当該感歪部材の格子構造、ひいてはキャリア(電子)のバンドエネルギー構造の変化への寄与分によって大きく変化するので、起歪体10に作用した振動(加速度)の測定精度のさらなる向上が図られる。
【0056】
各感歪部材21、22、23、24を構成する一対の環状感歪部分により囲まれている領域、すなわち1箇所で分断された略環状(円環状)に延在する囲繞領域の面積は、各感歪部材が1箇所で分断された略同径の単一の環状感歪部分により構成されている場合における、当該単一の環状感歪部分により囲まれている囲繞領域の面積と比較して狭小化が図られている。これにより、当該囲繞領域の面積が大きいことに由来して、各感歪部材21、22、23、24がアンテナとして機能することに由来するノイズの低減が図られる。
【0057】
(第2実施形態)
(構成)
図6に示されている本発明の第2実施形態としての力センサでは、起歪体10の上面101の第2指定緯度範囲R2に第1感歪部材21および第2感歪部材22が形成されている。第1感歪部材21および/または第2感歪部材22が、第2指定緯度範囲R2ではなく第1指定緯度範囲R1に形成されていてもよい。
【0058】
図6に示されているように、第1感歪部材21は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212と、当該一対の環状感歪部分211および212のそれぞれの一端部を接続する第1接続部分210と、により構成されている。同じく
図6に示されているように、第2感歪部材23は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222と、当該一対の環状感歪部分221および222のそれぞれの一端部を接続する第2接続部分220と、により構成されている。
【0059】
図6に示されているように、第2指定緯度範囲R2において、略円環状の4つの環状感歪部分221、211、212および222が、径方向(経線方向)に相互に離間して内側から外側に順に配置されている。環状感歪部分221、211、212および222のうち隣接しあう環状感歪部分の間隔が、当該隣接しあう環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅の2倍以下であることが好ましい。
【0060】
起歪体10の上面101において、極点Oからみた第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、が少なくとも部分的に重なるように、2つの感歪部材21~22が配置されている。少なくとも一の部材(部分)の分断箇所の方位がその他の部材の分断箇所の方位と相違していてもよい。
【0061】
図6に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲には、略円弧状の第1抵抗部材41および第2抵抗部材42が径方向に相互に離間して内側から順に形成されている。2つの感歪部材21~22は、2つの抵抗部材41~42とともに、
図7に示されているような2アクティブゲージ法のブリッジ回路を構成している。
図6に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲には、当該ブリッジ回路の端子T1~T4が形成されている。当該ブリッジ回路の端子T1~T4のうち少なくとも一部が起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1の内側および/または第2指定緯度範囲R2の外側に形成されていてもよい。
【0062】
第1感歪部材21は、第1内側環状感歪部分211の他端部において第2端子T2に導線部材L12を介して接続され、第1外側環状感歪部分212の他端部において第1端子T1に導線部材L11を介して接続されている。第2感歪部材22は、第2内側環状感歪部分221の他端部において第2端子T2に導線部材L22を介して接続され、第2外側環状感歪部分222の他端部において第3端子T3に導線部材L23を介して接続されている。第1抵抗部材41は、一端部において第1端子T1に接続され、他端部において第4端子T4に接続されている。第2抵抗部材42は、一端部において第3端子T3に接続され、他端部において第4端子T4に接続されている。
【0063】
感歪部材21~22および抵抗部材41~42のそれぞれの厚さ、幅および長さ、さらには電気伝導率などの電気特性のそれぞれは、ブリッジ回路(ひずみ検出用回路)を構成する観点から適当に設計されている。導線部材L11、L12、L22およびL23の厚さ、幅および長さ、さらには素材(電気伝導率を定める。)のそれぞれは、感歪部材21~22および抵抗部材41~42のそれぞれと同様に当該ブリッジ回路を構成する観点から適当に設計されている。
【0064】
これら以外の点では、本発明の第2実施形態としての力センサは、本発明の第1実施形態としての力センサ(
図1および
図2参照)とほぼ同様の構成であるため、共通の構成要素に対して同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0065】
(第3実施形態)
(構成)
図8に示されている本発明の第2実施形態としての力センサでは、起歪体10の上面101の第2指定緯度範囲R2に第1感歪部材21および第2感歪部材22が形成されている。第1感歪部材21および/または第2感歪部材22が、第2指定緯度範囲R2ではなく第1指定緯度範囲R1に形成されていてもよい。
【0066】
図8に示されているように、第1感歪部材21は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212と、当該一対の環状感歪部分211および212のそれぞれの一端部を接続する第1接続部分210と、により構成されている。同じく
図8に示されているように、第2感歪部材22は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222と、当該一対の環状感歪部分221および222のそれぞれの一端部を接続する第2接続部分220と、により構成されている。
【0067】
図8に示されているように、第2指定緯度範囲R2において、略円環状の4つの環状感歪部分221、211、212および222が、径方向(経線方向)に相互に離間して内側から外側に順に配置されている。環状感歪部分221、211、212および222のうち隣接しあう環状感歪部分の間隔が、当該隣接しあう環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅の2倍以下であることが好ましい。
【0068】
図8に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲には、略円弧状の第1抵抗部材41および第2抵抗部材42が径方向に相互に離間して内側から順に形成されている。2つの感歪部材21~22は、3つの抵抗部材41~43とともに、
図9に示されているような1アクティブゲージ法(直列式)のブリッジ回路を構成している。
図8に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲には、当該ブリッジ回路の端子T1~T4が形成されている。当該ブリッジ回路の端子T1~T4のうち少なくとも一部が起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1の内側および/または第2指定緯度範囲R2の外側に形成されていてもよい。
【0069】
第1感歪部材21は、第1内側環状感歪部分211の他端部において第2内側環状感歪部分221の他端部に接続され、第1外側環状感歪部分212の他端部において第1端子T1に導線部材L11を介して接続されている。第2感歪部材22は、第2外側環状感歪部分222の他端部において第2端子T2に導線部材L22を介して接続されている。第1抵抗部材41は、一端部において第1端子T1に接続され、他端部において第4端子T4に接続されている。第2抵抗部材42は、一端部において第2端子T2に接続され、他端部において第3端子T3に接続されている。第3抵抗部材43は、一端部において第3端子T3に接続され、他端部において第4端子T4に接続されている。
【0070】
感歪部材21~22および抵抗部材41~43のそれぞれの厚さ、幅および長さ、さらには電気伝導率などの電気特性のそれぞれは、ブリッジ回路(ひずみ検出用回路)を構成する観点から適当に設計されている。導線部材L11およびL22の厚さ、幅および長さ、さらには素材(電気伝導率を定める。)のそれぞれは、感歪部材21~22および抵抗部材41~43のそれぞれと同様に当該ブリッジ回路を構成する観点から適当に設計されている。
【0071】
これら以外の点では、本発明の第3実施形態としての力センサは、本発明の第2実施形態としての力センサ(
図6および
図7参照)とほぼ同様の構成であるため、共通の構成要素に対して同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0072】
(第4実施形態)
(構成)
図10に示されている本発明の第4実施形態としての力センサでは、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1に第1感歪部材21が形成され、第2指定緯度範囲R2に第2感歪部材22が形成されている。第1感歪部材21および第2感歪部材22がともに第1指定緯度範囲R1または第2指定緯度範囲R2に形成されていてもよい。
【0073】
図10に示されているように、第1感歪部材21は、第1指定緯度範囲R1において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212と、当該一対の環状感歪部分211および212のそれぞれの一端部を接続する第1接続部分210と、により構成されている。同じく
図10に示されているように、第2感歪部材22は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222と、当該一対の環状感歪部分221および222のそれぞれの一端部を接続する第2接続部分220と、により構成されている。
【0074】
隣接しあう環状感歪部分211および212の間隔が、当該隣接しあう環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅の2倍以下であることが好ましい。隣接しあう環状感歪部分221および222の間隔が、当該隣接しあう環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅の2倍以下であることが好ましい。
【0075】
図10に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1の内側または内側付近には1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する第1抵抗部材41が形成され、第2指定緯度範囲R2の外側または外側付近には同じく1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する第2抵抗部材42が形成されている。2つの感歪部材21~22は、2つの抵抗部材41~42とともに、
図11に示されているような対辺2アクティブゲージ法(2線式)のブリッジ回路を構成している。抵抗部材41~42は、第1感歪部材21および第2感歪部材22とともに対辺2アクティブゲージ法(3線式)のブリッジ回路を構成していてもよい。
【0076】
図10に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1の内側付近には当該ブリッジ回路の端子T1およびT4が形成され、第2指定緯度範囲R2の外側付近には当該ブリッジ回路の端子T2およびT3が形成されている。当該ブリッジ回路の端子T1~T4のうち少なくとも一部が起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲に形成されていてもよい。
【0077】
起歪体10の上面101において、極点Oからみた第1内側環状感歪部分211および第1外側環状感歪部分212のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、第2内側環状感歪部分221および第2外側環状感歪部分222のそれぞれの分断箇所の方位角範囲と、第1抵抗部材41の分断箇所の方位角範囲と、第2抵抗部材42の分断箇所の方位角範囲と、が少なくとも部分的に重なるように、2つの感歪部材21~22および2つの抵抗部材41~42が配置されている。少なくとも一の部材(部分)の分断箇所の方位がその他の部材(部分)の分断箇所の方位と相違していてもよい。
【0078】
第1感歪部材21は、第1内側環状感歪部分211の他端部において第1端子T1に接続され、第1外側環状感歪部分212の他端部において第2端子T2に導線部材L12を介して接続されている。第2感歪部材22は、第2内側環状感歪部分221の他端部において第4端子T4に導線部材L24を介して接続され、第2外側環状感歪部分222の他端部において第3端子T3に接続されている。第1抵抗部材41は、一端部において第1端子T1に接続され、他端部において第4端子T4に接続されている。第2抵抗部材42は、一端部において第2端子T2に接続され、他端部において第3端子T3に接続されている。
【0079】
感歪部材21~22および抵抗部材41~42のそれぞれの厚さ、幅および長さ、さらには電気伝導率などの電気特性のそれぞれは、ブリッジ回路(ひずみ検出用回路)を構成する観点から適当に設計されている。導線部材L12およびL24の厚さ、幅および長さ、さらには素材(電気伝導率を定める。)のそれぞれは、感歪部材21~22および抵抗部材41~42のそれぞれと同様に当該ブリッジ回路を構成する観点から適当に設計されている。
【0080】
これら以外の点では、本発明の第4実施形態としての力センサは、本発明の第3実施形態としての力センサ(
図8および
図9参照)とほぼ同様の構成であるため、共通の構成要素に対して同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0081】
(第5実施形態)
(構成)
図12に示されている本発明の第5実施形態としての力センサでは、起歪体10の上面101の第2指定緯度範囲R2に感歪部材20が形成されている。感歪部材20が第1指定緯度範囲R1に形成されていてもよい。
【0082】
図12に示されているように、感歪部材20は、第2指定緯度範囲R2において、1箇所で分断された極点Oを取り囲む環状(略円環状)に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分、すなわち内側環状感歪部分201および外側環状感歪部分202と、当該一対の環状感歪部分201および202のそれぞれの一端部を接続する接続部分200と、により構成されている。
【0083】
環状感歪部分201および202のうち隣接しあう環状感歪部分の間隔が、当該隣接しあう環状感歪部分のうち少なくとも一方の環状感歪部分の幅の2倍以下であることが好ましい。
【0084】
図12に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲には、略円弧状の第1抵抗部材41および第2抵抗部材42が径方向に相互に離間して内側から順に形成されている。2つの感歪部材21~22は、3つの抵抗部材41~43とともに、
図13に示されているような1アクティブゲージ法(2線式または3線式)のブリッジ回路を構成している。
【0085】
図12に示されているように、起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1および第2指定緯度範囲R2の中間緯度範囲には、当該ブリッジ回路の端子T1~T4が形成されている。当該ブリッジ回路の端子T1~T4のうち少なくとも一部が起歪体10の上面101の第1指定緯度範囲R1の内側および/または第2指定緯度範囲R2の外側に形成されていてもよい。
【0086】
感歪部材20は、内側環状感歪部分201の他端部において第1端子T1に導線部材L01を介して接続され、第1外側環状感歪部分212の他端部において第2端子T2に導線部材L02を介して接続されている。第1抵抗部材41は、一端部において第1端子T1に接続され、他端部において第4端子T4に接続されている。第2抵抗部材42は、一端部において第2端子T2に接続され、他端部において第3端子T3に接続されている。第3抵抗部材43は、一端部において第3端子T3に接続され、他端部において第4端子T4に接続されている。
【0087】
感歪部材20および抵抗部材41~43のそれぞれの厚さ、幅および長さ、さらには電気伝導率などの電気特性のそれぞれは、ブリッジ回路(ひずみ検出用回路)を構成する観点から適当に設計されている。導線部材L01およびL02の厚さ、幅および長さ、さらには素材(電気伝導率を定める。)のそれぞれは、感歪部材20および抵抗部材41~43のそれぞれと同様に当該ブリッジ回路を構成する観点から適当に設計されている。
【0088】
これら以外の点では、本発明の第5実施形態としての力センサは、本発明の第4実施形態としての力センサ(
図10および
図11参照)とほぼ同様の構成であるため、共通の構成要素に対して同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0089】
(実施例)
第1実施形態にしたがって4アクティブゲージ法のブリッジ回路用に感歪部材が形成されている実施例の力センサが作製された。具体的には、直径4mm×厚さ0.4mmのSUS316Lからなる略円形板状の起歪体10の一方の主面101に、SiO2からなる絶縁性薄膜が形成された。その上で、1箇所で分断された略円環状のCr-N薄膜からなる感歪部材21~24が当該絶縁性薄膜の上に形成された。その位置は例えば、感歪部材21として第1内側環状感歪部分211の内半径0.8mm、外半径0.82mm、第1外側環状感歪部分212の内半径0.84mm、外半径0.86mm、感歪部材22として第2内側環状感歪部分221の内半径1.408mm、外半径1.443mm、第2外側環状感歪部分222の内半径1.463mm、外半径1.500mm、感歪部材23として第3内側環状感歪部分231の内径0.88mm、外径0.902mm、第3外側環状感歪部分232の内半径0.922mm、外半径0.944mm、感歪部材24として第4内側環状感歪部分241の内半径1.353mm、外半径1.388mm、第4外側環状感歪部分242の内半径1.520mm、外半径1.557mm付近に、また、各感歪部材21、22、23、24の分断箇所の周方向の長さはそれぞれ0.21mm、0.07mm、0.16mm、0.14mm程度に設計された。なお、それらの位置や長さは、素子製作上の都合等により問題のない範囲で変更されてもよい。
【0090】
Cr-N薄膜の作製には高周波マグネトロン方式のスパッタリング装置を使用し、さらにArとともに微量の窒素ガスを導入して成膜を行う反応性スパッタリング法を加えて用いた。ターゲットには公称純度99.9%で直径3インチのCr円盤を用いた。成膜前真空度(背景真空度)、ターゲット-基板間距離(T-S距離)、スパッタガス圧、スパッタガス総流量、窒素ガス流量比、入力電力および基板水冷温度をそれぞれ2×10-5Pa、43mm、0.67Pa、5SCCM、0.06%、10Wおよび20℃として成膜を行った。薄膜パターンはフォトリソグラフィーおよびエッチング技術を用いて上記の通り形成し、熱処理は大気中において200℃の温度で1時間保持して行った。作製した薄膜のリード線部分を含む所定の位置にAu/Ni/Cr薄膜を重ねて形成し、これを抵抗測定のための電極とした。4つの受感部はフルブリッジを構成することができ、荷重印加によりダイアフラムに生じるひずみを電気信号に変換して出力する。
【0091】
実施例の力センサの起歪体10が外側突出部12および内側突出部14と一体成形により加工形成され外側突出部12に固定されている。その上で、その外側突出部12を上下方向から挟むように固定する、中央に外側突出部12の内径程度の貫通穴をそれぞれ有する外部固定治具によって起歪体10(作製したダイアフラム型力センサ素子)を、内側突出部14を上部外側に突出する向きに保持し、それにより感歪部材が形成されている起歪体10の上面101は下側を向き、それにより感歪部材は下側の外部固定治具の内部の貫通穴からなる空間の上部に天井様に収まり、さらに、その空間内において電極には異方性導電膜を用いてフレキシブルケーブル基板が接続された。この時、起歪体10は下側の外部固定治具のスリーブ部によりその底面から貫通穴内にて浮いて保持された状態を成してダイアフラムとして機能する可動空間を有し、機械試験機を用いて内側突出部14の上端に荷重を印加した。また、前記スリーブ部の一部に形成された切り欠き部から前記フレキシブルケーブル基板の信号線が外部に導出され、電源および計測機器に結線し、信号を取り出した。信号はそれら計測機器により数値化され記録装置(コンピューター等)に記録された。金属からなる外部固定治具の外形は四角形状を成して十分な厚みを持ち、中心の貫通穴の外側の四隅にボルトを通すための穴を有する。そして、起歪体の10の外側突出部12と同じ厚さをもつ中央に起歪体10がちょうど収まる貫通穴を有し、さらにその貫通穴の外側の四隅に外部固定治具と共通のボルトを通すための穴を有する金属部材1個を起歪体の外側を埋めるスペーサーとして使用して、起歪体10をそのスペーサーの貫通穴に納めて一緒に外部固定治具で上下から挟み込み、四隅の穴に上下からボルトを挿入し固定することで、起歪体10(作製したダイアフラム型力センサ素子)を測定可能な体勢に保持した。
【0092】
実施例の力センサの性能を評価するため、
図14に示されているように、内側突出部14を介して起歪体10に対してz方向の力を1Nから7Nまで1Nずつ増加させながら断続的に作用させた。この時、極点を基準とした前記起歪体の経線方向についての第1ひずみ量および前記起歪体の緯線方向についての第2ひずみ量の和の大きさが基準値以上となる共通の指定緯度範囲R1において、1箇所で分断された前記極点を取り囲む環状に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分211と、当該一対の環状感歪部分212のそれぞれの一端部を接続する接続部分210と、により構成されている前記感歪部材21についての信号を調べるために、それらの電極部T1とT2を介して4端子法による出力(抵抗変化)測定を行った。
【0093】
図15に、感歪部材21の測定経過時間に対する出力を示す。その出力波形の形状は
図14の印加荷重とほぼ一致していることがわかる。また、
図16に、
図15の横軸40秒から60秒までを縦軸0.4Ω分の変化について拡大して示す。信号線を除くベースラインに0.025Ω程の抵抗変化が見られるが、1Nの信号を検知できなくなるようなノイズは生じていないことがわかる。よって、接続部分210を有する感歪部材21を用いることによって、ひずみに対する検知感度の向上を図ることができる力センサを提供することができる。
【0094】
(比較例)
従来の構成の力センサはノイズの影響を受けやすく、これにより起歪体の微小なひずみの検知感度が低下する可能性があった。その従来の構成の力センサを製作し、その性能評価を行った。第1実施形態にしたがって4アクティブゲージ法のブリッジ回路用に感歪部材が形成されている力センサが作製された。具体的には、直径4mm×厚さ0.4mmのSUS316Lからなる略円形板状の起歪体10の一方の主面101に、SiO2からなる絶縁性薄膜が形成された。その上で、1箇所で分断された略円環状のCr-N薄膜からなる感歪部材21~24が当該絶縁性薄膜の上に形成された。その位置は例えば、感歪部材21として内半径0.82mm、外半径0.84mm、感歪部材22として内半径1.435mm、外半径1.471mm、感歪部材23として内半径0.901mm、外半径0.923mm、感歪部材24として内半径1.436mm、外半径1.472mm付近に、また、各感歪部材21、22、23、24の分断箇所の周方向の長さはそれぞれ0.11mm、0.04mm、0.08mm、0.07mm程度に設計された。感歪部材を成すCr-N薄膜および電極の作製方法は前記実施例と同様とした。
【0095】
比較例の力センサの起歪体10が外側突出部12および内側突出部14と一体成形により加工形成され外側突出部12に固定されている。その上で、その外側突出部12を下方向および外周側面から密接して支えるように固定する、中央に外側突出部12の内径程度の貫通穴を有する略円筒形状の外部固定治具によって起歪体10(作製したダイアフラム型力センサ素子)を、内側突出部14を上部外側に突出する向きに保持し、それにより感歪部材が形成されている起歪体10の上面101は下側を向き、それにより感歪部材は下側の外部固定治具の内部の貫通穴からなる空間の上部(天井)に収まり、さらに、その空間内において電極には異方性導電膜を用いてフレキシブルケーブル基板が接続された。この時、起歪体10は下側の外部固定治具のスリーブ部によりその底面から浮いて保持された状態を成してダイアフラムとして機能する可動空間を有し、機械試験機を用いて内側突出部14の上端に荷重を印加した。また、前記スリーブ部の一部に形成された切り欠き部から前記フレキシブルケーブル基板の信号線が外部に導出され、電源および計測機器に結線し、信号を取り出した。信号はそれら計測機器により数値化され記録装置(コンピューター等)に記録された。
【0096】
比較例の力センサの性能を評価するため、
図17に示されているように、内側突出部14を介して起歪体10に対してz方向の力を0.5Nから3.5Nまで0.5Nずつ増加させながら断続的に作用させた。この時、極点を基準とした前記起歪体の経線方向についての第1ひずみ量および前記起歪体の緯線方向についての第2ひずみ量の和の大きさが基準値以上となる共通の指定緯度範囲R1において、1箇所で分断された前記極点を取り囲む環状に延在する、接続部分210が存在せずに一対の環状感歪部分211のみにより構成されている前記感歪部材21についての信号を調べるために、それらの電極部T1と、環状感歪部分211のもう一方の端に形成される電極を介して4端子法による出力(抵抗変化)測定を行った。
【0097】
図18に、感歪部材21の測定経過時間に対する出力を示す。その出力波形の形状については、荷重が印加されている時の細い信号線は
図17の印加荷重とほぼ一致しているものの、それらの間のベースラインに丸みを帯びた約0.1Ωのノイズが生じていることがわかる。
図19に、
図18の横軸700秒から900秒までを縦軸0.4Ω分の変化について拡大して示す。
図16の実施例の場合と比較すると、同じ0.4Ωの縦軸に対して大きな丸みを帯びたノイズの存在が確認でき、さらに
図18から0.5Nに対する出力信号はそのノイズに完全に埋まり、1Nに対する信号も半分程がそのノイズに埋まってしまうことがわかる。よって、環状感歪部分212および接続部分210を有することのない従来の構成からなる感歪部材21を用いる場合、ひずみに対する検知感度の向上を図ることができる力センサを提供することができないことがわかる。
該発明は力センサの小型化および高耐荷重化を実現するのに有効な、等方的感度を有する感歪部材を環状に配設する技術における問題点を感歪部材の新規構成を用いることによって解決した新たな技術であり、検知感度の向上を図ることができる。
【0098】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、すべての感歪部材が起歪体10の上面101に形成されていたが、他の実施形態として、一部の感歪部材が上面101に形成される一方で残りの感歪部材が下面102に形成されていてもよい。この場合、感歪部材の位置および負荷の形態によっては上面101および下面102の別によって正負の符号が異なる場合があるので、注意を要する。ひずみ検知用回路を構成するための導線部材を配置するため、起歪体10に貫通孔が設けられていてもよく、ビア構造を有する導線部材が起歪体10に埋設されていてもよい。
【0099】
前記実施形態では、起歪体10が略円形板状であったが、他の実施形態として、起歪体10が略楕円形板状、略三角形状、略矩形板状、略平行四辺形板状、略台形板状または略正多角形板状(正方形、正十二角形板状、正二十角形板状など)、様々な形状とされてもよい。起歪体10は極点Oを通り、上面101に垂直な軸線(例えばZ軸)まわりの回転対称性を有する形状のほか、回転対称性を有しない形状であってもよい。起歪体10の極点Oが起歪体10の中心点からずれていてもよい。
【0100】
前記実施形態では、起歪体10が外側突出部12の外側面を介して支持部材に対して全周にわたり固定されていたが、起歪体10が外側突出部12の外側面を介して支持部材に対して周方向に離散的に固定されていてもよい。
【0101】
前記実施形態では、前記起歪体の前記外側突出部よりも内側において前記起歪体の主面から突出している内側突出部を備え、前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する振動(加速度)が作用した際に、内側突出部14によって、当該起歪体10に作用する慣性力の増大が図られ、それによって起歪体10に生じるひずみからその振動(加速度)の大きさを検知することができ、また、前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する力が内側突出部14の端面に対して作用した際に起歪体10に生じるひずみからその力の大きさを検知することができるとされていたが、
起歪体10は内側突出部を備えていなくてもよく、その場合、起歪体10の全面に対して主面の該垂線方向成分を有する力が一様に作用した際に起歪体10に生じるひずみからその一様な力(例えば流体等の圧力)の大きさを検知することができる。
【0102】
前記実施形態では、前記起歪体上の共通の指定緯度範囲において、1箇所で分断された前記極点を取り囲む環状に延在する、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分と、当該一対の環状感歪部分のそれぞれの一端部を接続する接続部分と、により前記感歪部材が構成されていたが、一対の環状感歪部分のいずれか一方が導線部材であってもよい。
【0103】
前記実施形態では、前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する振動が作用した際に、前記起歪体に対して主面の垂線方向成分を有する力が作用した際に極点を基準とした前記起歪体の経線方向についての第1ひずみ量および前記起歪体の緯線方向についての第2ひずみ量の和の大きさが基準値以上となる共通の指定緯度範囲において、1箇所で分断された前記極点を取り囲む環状に延在する感歪部材について、経線方向に相互に離間している一対の環状感歪部分と、当該一対の環状感歪部分のそれぞれの一端部を接続する接続部分と、により力センサが構成されているが、前記起歪体に力が作用した際に前記起歪体の基準点を基準として相互に隣接するまたは離間する複数の方位角範囲のそれぞれにおいて前記起歪体にひずみが生じるように、前記支持部材が前記起歪体の周縁部の少なくとも一部を支持し、前記複数の方位角範囲のうち少なくとも1つの方位角範囲で、前記起歪体に力が作用した際に前記基準点を基準とした方位線に沿った前記起歪体の第1ひずみ量および当該方位線に直交または交差する線分に沿った前記起歪体の第2ひずみ量の和の大きさが基準値以上となるような当該線分としての指定線分に沿って延在する感歪部材についても、経線方向に相互に離間している一対の円弧状感歪部分と、当該一対の円弧状感歪部分のそれぞれの一端部を接続する接続部分と、により力センサが構成されていてもよい。
【0104】
前記実施形態では、囲繞領域の面積が大きいことに由来して、各感歪部材がアンテナとして機能することに由来するノイズの低減を図るために、各感歪部材を構成する一対の環状感歪部分により囲まれている領域、すなわち1箇所で分断された略環状(円環状)に延在する細長い囲繞領域の面積は、各感歪部材が1箇所で分断された略同径の単一の環状感歪部分により構成されている場合における、当該単一の環状感歪部分により囲まれている略円形の囲繞領域の面積と比較して狭小化が図られているが、導線部材の成す囲繞領域も含めた狭小化がなされるとさらに好ましい。
【0105】
前記実施形態では、起歪体10は、外側突出部12の外側面の全体を介して支持部材に対して固定されているが、外側突出部12の上面、下面または上下両面の全体を介して支持部材に対して固定されてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10‥起歪体、12‥外側突出部、14‥内側突出部、20‥感歪部材、21‥第1感歪部材、22‥第2感歪部材、23‥第3感歪部材、24‥第4感歪部材、41、42、43、44‥抵抗部材、101‥起歪体の上面(主面)、102‥起歪体の下面(主面)、200‥接続部分、201‥内側環状感歪部分、202‥外側環状感歪部分、210‥第1接続部分、211‥第1内側環状感歪部分、212‥第1外側環状感歪部分、220‥第2接続部分、221‥第2内側環状感歪部分、222‥第2外側環状感歪部分、230‥第3接続部分、231‥第3内側環状感歪部分、232‥第3外側環状感歪部分、240‥第4接続部分、241‥第4内側環状感歪部分、242‥第4外側環状感歪部分、O‥極点、R1‥第1指定緯度範囲、R2‥第2指定緯度範囲。