(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067618
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/367 20210101AFI20230509BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20230509BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179023
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚之
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB02
5H012BB08
5H012CC10
5H012DD05
5H012FF01
5H040AA37
5H040AT02
5H040AY05
5H040CC01
5H040CC34
5H040CC38
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、安全性が向上された蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電装置1は、複数の蓄電素子100と、ガス排出路254を形成するガス排出路形成部材250と、仕切壁部155とを備える。複数の蓄電素子100のそれぞれは、Z軸プラス方向に向くガス排出弁105を有し、X軸方向に並べられている。ガス排出路形成部材250は、Z軸プラス方向において複数のガス排出弁105に対向して配置されている。仕切壁部155は、Z軸プラス方向から見た場合、複数の蓄電素子100のうちの隣り合う2つの蓄電素子100のガス排出弁105の間に配置され、X軸方向においてガス排出路254を2以上に仕切る。ガス排出路形成部材250は、ガス排出路形成部材250の内部から外部にガスを排出するための排出部255を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に向くガス排出弁をそれぞれが有し、前記第一方向と交差する第二方向に並べられた複数の蓄電素子と、
前記第一方向において複数の前記ガス排出弁に対向して配置された、ガス排出路を形成するガス排出路形成部材と、
前記第一方向から見た場合、前記複数の蓄電素子のうちの隣り合う2つの蓄電素子の前記ガス排出弁の間に配置され、前記第二方向において前記ガス排出路を2以上に仕切る仕切壁部とを備え、
前記ガス排出路形成部材は、前記ガス排出路形成部材の内部から外部にガスを排出するための排出部を有する、
蓄電装置。
【請求項2】
前記ガス排出路形成部材は、前記ガス排出路の、前記第一方向で前記複数の蓄電素子に対向する内面を形成する第一壁部と、前記第一壁部に接続され、前記ガス排出路の、前記第一方向及び前記第二方向に交差する第三方向に向く内面を形成する第二壁部とを有し、
前記排出部は、前記第二壁部に設けられている、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記排出部は、前記第二壁部の、前記第一方向において前記複数の蓄電素子に近い端部から前記第一方向に向けて切欠き状に形成された開口部である、
請求項2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記2つの蓄電素子の間には、前記仕切壁部を有する第一スペーサが配置されており、
前記第一スペーサは、前記2つの蓄電素子の間に位置するスペーサ本体を有し、
前記仕切壁部は、前記スペーサ本体から前記ガス排出路の内部に突出して設けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
さらに、前記2つの蓄電素子の間において前記第一スペーサに沿って配置され、かつ、電気的な絶縁性を有する第二スペーサを備える、
請求項4記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電池(蓄電素子)を備える組電池(蓄電装置)が開示されている。この組電池において、複数の電池のそれぞれは電池ホルダに保持されている。電池ホルダは、電池容器の幅広面に接する本体部材と、本体部材の上端に一端が固定されると共に他端が電池容器の上面に接して電池の厚み方向に延びる上部部材と、を備える。上部部材は、電池のガス排出弁を取り囲むように形成されると共にガス管路部材の下面に接してガス排出弁からガス管路部材へのガス流路を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置が備える蓄電素子では、通常予見される使用形態ではない、蓄電素子に異常な外力が作用した場合等に、蓄電素子内部の温度が上昇してガスが発生する可能性がある。ガスが発生すると蓄電素子の内圧が上昇することがあるため、蓄電素子の内圧が所定の圧力以上に上昇した場合に開口して内部のガスを放出するガス排出弁を、蓄電素子は備える。特許文献1に記載の従来の蓄電装置(組電池)では、一列に並べられた複数の蓄電素子(電池)のガス排出弁に対向する位置にガス管路部材が配置される。蓄電素子のガス排出弁からガスが排出された場合、ガス排出弁を囲むように配置された上部部材によって、そのガスはガス管路部材の内部に導かれる。この場合、複数の蓄電素子のうちの1つの蓄電素子のガス排出弁から排出されたガスの圧力は、1つのガス排出路を形成するガス管路部材を介して、他の全ての蓄電素子に影響し得る。具体的には、1つの蓄電素子のガス排出弁から排出されたガスの圧力によって他のいずれかの蓄電素子のガス排出弁が開放(開弁)し、蓄電素子内部の電解液が外部に漏出する可能性がある。この問題の解消のために、複数のガス排出弁のそれぞれに、個別のガスの排出路を形成する部材(排気パイプ等)を配置することが考えられる。しかしながらこの場合は、蓄電装置の構成が複雑化するという別の問題が生じる。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目してなされたものであり、比較的簡易な構成で、安全性が向上された蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、第一方向に向くガス排出弁をそれぞれが有し、前記第一方向と交差する第二方向に並べられた複数の蓄電素子と、前記第一方向において複数の前記ガス排出弁に対向して配置された、ガス排出路を形成するガス排出路形成部材と、前記第一方向から見た場合、前記複数の蓄電素子のうち隣り合う2つの蓄電素子のガス排出弁の間に配置され、前記第二方向において前記ガス排出路を2以上に仕切る仕切壁部とを備え、前記ガス排出路形成部材は、前記ガス排出路形成部材の内部から外部にガスを排出するための排出部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的簡易な構成で、安全性が向上された蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る蓄電素子ユニットの分解斜視図である。
【
図5】実施の形態に係る蓄電素子列の分解斜視図である。
【
図6A】実施の形態に係るガス排出路形成部材の斜視断面図である。
【
図6B】実施の形態に係るガス排出路形成部材の内部における仕切壁部の位置を示す模式図である。
【
図7】実施の形態に係るガス排出路形成部材と仕切壁部との構造上の関係を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、第一方向に向くガス排出弁をそれぞれが有し、前記第一方向と交差する第二方向に並べられた複数の蓄電素子と、前記第一方向において複数の前記ガス排出弁に対向して配置された、ガス排出路を形成するガス排出路形成部材と、前記第一方向から見た場合、前記複数の蓄電素子のうちの隣り合う2つの蓄電素子のガス排出弁の間に配置され、前記第二方向において前記ガス排出路を2以上に仕切る仕切壁部とを備え、前記ガス排出路形成部材は、前記ガス排出路形成部材の内部から外部にガスを排出するための排出部を有する。
【0010】
この構成によれば、ガス排出路形成部材は、隣り合う2つの蓄電素子のガス排出弁を一括して覆うように配置されており、かつ、ガス排出路形成部材の内部のガス排出路は、第一方向から見た場合に、2つの蓄電素子の間で仕切壁部によって仕切られる。そのため、共通のガス排出路形成部材で、隣り合う2つの蓄電素子のガス排出路を比較的簡易に形成できるとともに、当該隣り合う2つの蓄電素子の一方のガス排出弁から排出されるガスの圧力によって他方のガス排出弁が開放(開弁)することを抑制できる。さらに、ガス排出路形成部材が排出部を有することで、蓄電素子から排出されてガス排出路に流入したガスを、排出部を介してガス排出路形成部材の外部に流出させることができる。これにより、ガスの温度及び速度を低下させた状態で、そのガスをガス排出路形成部材の外部に排出させることができる。このように、本態様に係る蓄電装置によれば、比較的簡易な構成で、安全性を向上させることができる。
【0011】
前記ガス排出路形成部材は、前記ガス排出路の、前記第一方向で前記複数の蓄電素子に対向する内面を形成する第一壁部と、前記第一壁部に接続され、前記ガス排出路の、前記第一方向及び前記第二方向に交差する第三方向に向く内面を形成する第二壁部とを有し、前記排出部は、前記第二壁部に設けられている、としてもよい。
【0012】
この構成によれば、ガス排出路からのガスの出口である排出部は、ガス排出路形成部材においてガス排出弁の正面に位置しない第二壁部に設けられる。そのため、ガス排出弁から排出されたガスが排出部から排出される前に、当該ガスをより確実にガス排出路形成部材の内面(第一壁部)に衝突させることができる。これにより、そのガスの温度及び速度を、より確実に低下させることができる。
【0013】
前記排出部は、前記第二壁部の、前記第一方向において前記複数の蓄電素子に近い端部から前記第一方向に向けて切欠き状に形成された開口部である、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、排出部は、ガス排出路形成部材の側壁部である第二壁部の端縁から切欠き状に設けられる。そのため、プレス加工または鋳造等でガス排出路形成部材の全体形状を形成すると同時に、排出部である開口部を形成することができる。これにより、排出部を有するガス排出路を容易に形成できる。
【0015】
前記2つの蓄電素子の間には、前記仕切壁部を有する第一スペーサが配置されており、前記第一スペーサは、前記2つの蓄電素子の間に位置するスペーサ本体を有し、前記仕切壁部は、前記スペーサ本体から前記ガス排出路の内部に突出して設けられている、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、仕切壁部は、隣り合う2つの蓄電素子の間に配置される第一スペーサの一部として設けられる。そのため、第一スペーサとガス排出路形成部材とを組み合わせることで、仕切壁部を有するガス排出路を容易に形成できる。
【0017】
前記蓄電装置はさらに、前記2つの蓄電素子の間において前記第一スペーサに沿って配置され、かつ、電気的な絶縁性を有する第二スペーサを備える、としてもよい。
【0018】
この構成によれば、隣り合う2つの蓄電素子の容器間の電気的な絶縁を、第二スペーサに任せることができる。そのため、仕切壁部を有する第一スペーサを、金属または炭素繊維などの、樹脂よりも耐熱性が高い材料で形成することができる。これにより、仕切壁部がガスの熱で損傷する可能性が低減し、その結果、仕切壁部によりガス排出路を仕切ることによる効果がより確実に発揮される。
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置について説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。さらに、各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。尚、本実施の形態の各構成要素(各構成部材)の名称は、本実施の形態における名称であり、背景技術における各構成要素(各構成部材)の名称とは異なる場合がある。
【0020】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の外装体の短手方向、または、蓄電素子の短側面の対向方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の長手方向、または、複数の蓄電素子の並び方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の本体と蓋体との並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0021】
以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。単に「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0022】
さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0023】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、実施の形態に係る蓄電装置1の概略構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電装置1の分解斜視図である。
図3は、実施の形態に係る蓄電素子100の外観を示す斜視図である。外装体10の内部には、
図2以降の図に示される部材に加え、リレー及び制御装置等の電気機器、並びに、電気機器に接続される配線等が収容されているが、これらの部材の図示及び説明は適宜省略する。
【0024】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。蓄電装置1は、例えば、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置1は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0025】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置1は、外装体10と、外装体10に収容された蓄電素子ユニット20とを備えている。蓄電素子ユニット20の上方には、蓄電素子100に接合されるバスバー60を保持するバスバーホルダ30が配置されている。外装体10は、蓄電装置1の筐体を構成する箱形(略直方体形状)の容器(モジュールケース)である。外装体10は、蓄電素子ユニット20及びバスバーホルダ30の外方に配置され、これらを所定の位置で固定し、衝撃等から保護する。外装体10は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。
【0026】
外装体10は、外装体本体12と蓋体11とを有する。外装体本体12は、Z軸プラス方向の端部に開口部12aが形成された有底矩形筒状のハウジングであり、蓄電素子ユニット20等を収容する。蓋体11は、外装体本体12の開口部12aを閉塞する矩形状の部材である。蓋体11は、外装体本体12と、接着剤、ヒートシール、超音波溶着、またはレーザー溶着等によって接合される。
【0027】
蓋体11には、正極及び負極の一対のモジュール端子である一対の外部端子19が配置されている。蓄電装置1は、この一対の外部端子19を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子19は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、または銅合金等の金属製の導電部材で形成されている。蓋体11には、更に、外装体10の内部で発生したガスを外装体10の外部に導くための排気管15が設けられている。例えば1つの蓄電素子100が開弁してガスが排出された場合、そのガスを、排気管15を介して外装体10の内部から外部に送り出すよう蓄電装置1は設計されている。より詳細には、本実施の形態では、蓄電素子100から排出されたガスは、複数の蓄電素子100に沿って配置されたガス排出路形成部材250の内部から外部に排出され、その後、排気管15を介して外装体10の外部に排出される。蓄電装置1が自動車等に搭載された場合、排気管15には、例えばガスホース(図示せず)が接続される。これにより、蓄電素子100から排出されたガスは、当該ガスが蓄電素子100の周囲の他の部材及び人体等に影響を与えない状態で、所定の位置まで導かれる。
【0028】
蓄電素子ユニット20は、複数の蓄電素子100を含む蓄電素子列101と、蓄電素子列101を拘束する拘束部材200とを有する。蓄電素子列101は、複数の蓄電素子100と、複数の蓄電素子100のそれぞれに沿って配置されたセルホルダ130とを含む。本実施の形態では、蓄電素子列101は、8つの蓄電素子100と、8つのセルホルダ130とを有する。
【0029】
蓄電素子100は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)である。本実施の形態では、蓄電素子100はリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子100は、
図3に示すように、扁平な直方体形状(角形)の容器110と容器110に固定された一対の(正極及び負極の)電極端子120とを有している。容器110の内方には図示しない電極体、集電体及び電解液等が収容されている。蓄電素子100が有する電極体としては、正極板と負極板との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成された巻回型の電極体が例示される。その他、複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体が蓄電素子100に備えられてもよい。
【0030】
蓄電素子100は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子100は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子100は、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電素子100は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。また、蓄電素子100の形状は、上記角形には限定されず、それ以外の多角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、長円柱形状等であってもよい。
【0031】
本実施の形態では、容器110は、
図3に示すように、一対の長側面110aと、一対の短側面110bと、端子配置面110cとを有する。端子配置面110cは、正極及び負極の電極端子120が配置された面である。本実施の形態では、端子配置面110cにはさらに、ガス排出弁105が配置されている。ガス排出弁105は、容器110の内圧が過度に上昇した場合に、その内圧を受けて開放(開弁)し、これにより容器110の内部のガスを外部に排出する部位である。蓄電素子列101において、複数の蓄電素子100のそれぞれは、ガス排出弁105がZ軸プラス方向に向けられ、かつ、長側面110aが並び方向(X軸方向)に向けられた姿勢で並べられている。本実施の形態では、Z軸プラス方向は、第一方向の一例であり、X軸方向は第一方向と交差する第二方向の一例である。
【0032】
このように構成された蓄電素子列101は、拘束部材200によって、複数の蓄電素子100の並び方向(X軸方向)に拘束されている。拘束部材200は、蓄電素子列101のX軸方向の両側に配置された一対のエンド部材210と、蓄電素子列101のY軸方向の両側に配置された一対のサイド部材220と、蓄電素子列101のZ軸プラス方向に配置されたガス排出路形成部材250とを有する。本実施の形態では、ガス排出路形成部材250は、一対のエンド部材210をX軸方向で連結する役目を担うとともに、蓄電素子100から排出されるガスの排出路を形成する役目も担っている。ガス排出路形成部材250及びその周辺の構成については、
図4~
図7を用いて後述する。
【0033】
バスバーホルダ30は、蓄電素子100の端子配置面110cに対向して配置され、複数のバスバー60及び電気機器等(図示せず)を保持する扁平な矩形状の絶縁部材である。バスバーホルダ30は、上記の外装体10に使用可能ないずれかの電気的絶縁性の樹脂材料等で形成されていてもよい。バスバーホルダ30は、複数の蓄電素子100の端子配置面110cに接触し、かつ、外装体10に固定されていることで、複数の蓄電素子100の上方(Z軸プラス方向)への移動を規制する規制部材として機能してもよい。バスバーホルダ30に配置されたバスバー60は、接合相手である電極端子120に対して位置決めされ、その状態で、レーザー溶接等によって電極端子120に接合される。本実施の形態では、蓄電素子ユニット20が有する8つの蓄電素子100において、隣り合う2つの蓄電素子100がバスバー60により並列接続される。これにより、並列接続された蓄電素子100の組が4組形成される。さらに、4組の蓄電素子100が3つのバスバー60によって直列に接続されている。バスバー60による、8つの蓄電素子100の電気的な接続態様はこれに限定されず、例えば、8つの蓄電素子100の全てが複数のバスバー60によって直列に接続されてもよい。また、蓄電素子ユニット20が備える蓄電素子100の数は8には限定されない。蓄電素子ユニット20が備える蓄電素子100の数は2以上であればよい。
【0034】
このように構成された蓄電装置1において、拘束部材200の一部として配置されたガス排出路形成部材250は、その内部に、複数に仕切られたガス排出路を有している。このガス排出路形成部材250及びその周辺の構成について、以下、
図4~
図7を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
[2.ガス排出路形成部材及びその周辺の構成について]
図4は、実施の形態に係る蓄電素子ユニット20の分解斜視図である。
図5は、実施の形態に係る蓄電素子列101の分解斜視図である。
図6Aは、実施の形態に係るガス排出路形成部材250の斜視断面図である。
図6Aでは、ガス排出路形成部材250が、
図5のVI―VI線で切断された状態で図示されている。
図6Bは、実施の形態に係るガス排出路形成部材250の内部における仕切壁部155の位置を示す模式図である。
図7は、実施の形態に係るガス排出路形成部材250と仕切壁部155との構造上の関係を示す斜視断面図である。
図7における断面の位置は、
図6Aにおける断面の位置に準じている。
【0036】
図4及び
図5に示すように、蓄電素子ユニット20において、互いに隣り合う2つの蓄電素子100で構成される一組の蓄電素子100の両側にセルホルダ130が配置されている。本実施の形態では、一対のセルホルダ130と、当該一対のセルホルダ130に挟まれた2つの蓄電素子100からなる蓄電素子100群が、X軸方向に4つ並べられている。セルホルダ130は、第二スペーサの一例であり、上述の外装体10の材料として例示された、PC、PP、PE、及びPS等の樹脂で形成されている。
【0037】
本実施の形態では、一対のセルホルダ130に挟まれる2つの蓄電素子100は、バスバー60によって並列に接続されている。従って、当該2つの蓄電素子100の容器110が金属等の導電部材であり、かつ、当該2つの蓄電素子100の間に電気的な絶縁性を有するセルホルダ130を配置しない場合であっても、当該2つの蓄電素子100の間で短絡等の問題は生じにくい。
【0038】
蓄電素子列101において、2つのセルホルダ130が連続して並ぶ位置には、
図5に示すように、セル間プレート150が当該2つのセルホルダ130に挟まれて配置されている。セル間プレート150は、第一スペーサの一例であり、本実施の形態では、鉄またはアルミニウム合金等の金属で形成されている。本実施の形態では、セル間プレート150は、セル間プレート150を挟んで両側に位置する2つの蓄電素子100の間の空間を埋めるスペーサとしての機能を有する。本実施の形態において、蓄電素子列101には、2つのセルホルダ130がX軸方向で連続して並ぶ位置が3か所あり、従って、3つのセル間プレート150が蓄電素子列101に含まれている。
【0039】
このように、複数の蓄電素子100、複数のセルホルダ130、及び複数のセル間プレート150を有する蓄電素子列101は、上述のように、拘束部材200によって拘束されている。具体的には、
図4で示すように、X軸方向で対向する一対のエンド部材210は、一対のサイド部材220及びガス排出路形成部材250によって連結されており、これにより、蓄電素子列101をX軸方向で拘束することができる。本実施の形態では、サイド部材220のX軸方向の端部が、2つのボルト290によってエンド部材210のY軸方向の端部と接合される。具体的には、サイド部材220のX軸方向の端部を貫通して配置された2つのボルト290が、エンド部材210のY軸方向の端部に設けられた2つナット部211にねじ込まれる。ガス排出路形成部材250のX軸方向の端部が、1つのボルト290によってエンド部材210のZ軸プラス方向の端部と接合される。具体的には、ガス排出路形成部材250のX軸方向の端部を貫通して配置された1つのボルト290が、エンド部材210のZ軸プラス方向の端部に設けられたナット部212にねじ込まれる。このような構成により、X軸方向で対向する一対のエンド部材210は、一対のエンド部材210に挟まれた蓄電素子列101をX軸方向で強固に拘束することができる。
【0040】
本実施の形態では、拘束部材200は、鉄またはアルミニウム合金等の金属で形成されている。蓄電素子列101の、エンド部材210と対向する面は、蓄電素子列101の端部に配置されたセルホルダ130によって形成されている。従って、蓄電素子列101とエンド部材210とは、当該端部のセルホルダ130によって絶縁される。セルホルダ130は、容器110の短側面110bに対向する壁部であって、短側面110bとサイド部材220との間に位置する壁部を有している。従って、蓄電素子列101とサイド部材220とは、複数のセルホルダ130によって絶縁される。
【0041】
本実施の形態において、ガス排出路形成部材250は、
図4及び
図5に示すように、蓄電素子100のZ軸プラス方向の側方に位置する。具体的には、蓄電素子列101において、Z軸プラス方向に向けられ、かつ、X軸方向に並ぶ複数のガス排出弁105を一括して覆うように、ガス排出路形成部材250が配置されている。ガス排出路形成部材250は、
図6Aに示すように、第一壁部251と、第一壁部251のY軸方向の両端部に接続された第二壁部252とを有する。つまり、ガス排出路形成部材250では、第一壁部251と一対の第二壁部252とに囲まれる空間によって、ガス排出路254が形成されている。本実施の形態では、ガス排出路254は、
図6Bに示すように、仕切壁部155によってX軸方向において複数に仕切られている。具体的には、仕切壁部155は、
図5及び
図7に示すように、セル間プレート150の一部として蓄電装置1に配置されている。セル間プレート150は、2つの蓄電素子100の間に位置するプレート本体151と、プレート本体151からZ軸プラス方向に突出して設けられた仕切壁部155とを有する。プレート本体151は、第一スペーサが有するスペーサ本体の一例である。蓄電素子列101に対してガス排出路形成部材250が配置された場合、
図7に示すように、仕切壁部155が、ガス排出路254(
図6A、
図6B参照)の内部に挿入される。その結果、ガス排出路254は、セル間プレート150を挟んで対向する位置にある2つの蓄電素子100の間で、仕切壁部155によって仕切られる。
【0042】
例えば、3つのセル間プレート150の内の中央のセル間プレート150に着目した場合、セル間プレート150のX軸プラス方向の側方に蓄電素子100(
図5で蓄電素子100Aと表記)が配置される。セル間プレート150のX軸マイナス方向の側方にも蓄電素子100(
図5で蓄電素子100Bと表記)が配置される。このように、蓄電素子100Aと蓄電素子100Bとの間に位置するセル間プレート150の仕切壁部155は、蓄電素子100Aのガス排出弁105と、蓄電素子100Bのガス排出弁105との間に位置し、当該位置で、ガス排出路254を2つに仕切る。このような仕切壁部155を有するセル間プレート150は、本実施の形態では、蓄電素子列101に3つ備えられている。その結果、
図6Bに示すように、ガス排出路形成部材250の全体で形成される1つのガス排出路254は、4つのガス排出路254(
図6Bにおけるガス排出路254a、254b、254c、及び254d)に仕切られる。
【0043】
本実施の形態では、ガス排出路形成部材250の第二壁部252に、排出部255が設けられている。ガス排出弁105からガスが排出された場合、そのガスはガス排出路254に流入し、排出部255からガス排出路形成部材250の外方に排出される。より詳細には、ガス排出路254が3つの仕切壁部155によって仕切られることで形成された、ガス排出路254a~254dのそれぞれに排出部255が設けられている。
図5~
図6Aでは、ガス排出路形成部材250の、Y軸マイナス方向の第二壁部252に、4つの排出部255が形成されているが、Y軸プラス方向の第二壁部252に、4つの排出部255が形成されてもよい。Y軸方向で対向する一対の第二壁部252の両方に、1以上の排出部255が形成されてもよい。
【0044】
例えば
図5における蓄電素子100Aのガス排出弁105が開放した場合、
図6Bにおけるガス排出路254cに蓄電素子100Aから排出されるガスが流入する。流入したガスは、ガス排出路254cに面する排出部255から、ガス排出路形成部材250の外部に排出される。その後、そのガスは、外装体10に設けられた排気管15から外装体10の外部に排出される。
【0045】
以上、説明したように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、複数の蓄電素子100と、ガス排出路254を形成するガス排出路形成部材250と、仕切壁部155とを備える。複数の蓄電素子100のそれぞれは、第一方向であるZ軸プラス方向に向くガス排出弁105を有し、Z軸プラス方向と交差するX軸方向に並べられている。ガス排出路形成部材250は、Z軸プラス方向において複数のガス排出弁105に対向して配置されている。仕切壁部155は、Z軸プラス方向から見た場合、複数の蓄電素子100のうちの隣り合う2つの蓄電素子100のガス排出弁105の間に配置され、X軸方向においてガス排出路254を2以上に仕切る。ガス排出路形成部材250は、ガス排出路形成部材250の内部から外部にガスを排出するための排出部255を有する。
【0046】
このように、本実施の形態に係る、ガス排出路形成部材250は、隣り合う2つの蓄電素子100(例えば
図5の蓄電素子100A及び100B)に着目した場合、これら蓄電素子100A及び100Bのガス排出弁105を一括して覆うように配置されている。さらに、ガス排出路形成部材250の内部のガス排出路254は、Z軸プラス方向から見た場合(以下、「平面視」という。)において、蓄電素子100A及び100Bの間で仕切壁部155によって仕切られる。そのため、蓄電素子100A及び100Bのうちの一方のガス排出弁105から排出されるガスの圧力は、蓄電素子100A及び100Bのうちの他方のガス排出弁105に作用し難い。これにより、当該他方のガス排出弁105が開放(開弁)する可能性が低減される。つまり、隣り合う2つの蓄電素子100が連続して開弁する可能性が低減される。さらに、ガス排出路形成部材250が排出部255を有することで、蓄電素子100から排出されてガス排出路254に流入したガスを、排出部255を介してガス排出路形成部材250の外部に流出させることができる。これにより、ガスの温度及び速度を低下させた状態で、そのガスをガス排出路形成部材250の外部に排出させることができる。そのため、例えば外装体10に設けた排気管15を介して、規定の位置までそのガスを安全に案内することができる。その結果、2以上の蓄電素子100からガスが排出された場合に生じやすくなる、外装体10の損傷等の不具合の発生が抑制される。このように、本実施の形態に係る蓄電装置1によれば、簡易な構成で、安全性を向上させることができる。
【0047】
本実施の形態において、ガス排出路形成部材250は、第一壁部251と第二壁部252とを有する。第一壁部251は、ガス排出路254の、Z軸プラス方向で複数の蓄電素子100に対向する内面を形成する。第二壁部252は、第一壁部251に接続され、ガス排出路254の、Z軸プラス方向及びX軸方向に交差するY軸方向に向く内面を形成する。排出部255は、第二壁部252に設けられている。
【0048】
このように、ガス排出路254からのガスの出口である排出部255は、ガス排出路形成部材250においてガス排出弁105の正面に位置しない第二壁部252に設けられる。そのため、ガス排出弁105から排出されたガスを、より確実にガス排出路形成部材250の内面(第一壁部251)に衝突させることができる。これにより、そのガスの温度及び速度を、より確実に低下させることができる。
【0049】
本実施の形態に係る排出部255は、
図4~
図6Bに示すように、第二壁部252の、複数の蓄電素子100に近い端部からZ軸プラス方向に向けて切欠き状に形成された開口部である。
【0050】
このように、本実施の形態では、排出部255は、ガス排出路形成部材250の側壁部である第二壁部252の端縁から切欠き状に設けられる。そのため、プレス加工または鋳造等でガス排出路形成部材250の全体形状を形成すると同時に、排出部255である開口部を形成することができる。つまり、第二壁部252に対する穴あけ加工等の作業は不要である。
【0051】
本実施の形態において、仕切壁部155は、ガス排出路形成部材250とは別体の部材の一部によって実現されている。具体的には、2つの蓄電素子100の間には、仕切壁部155を有するセル間プレート150が配置されている。セル間プレート150は、2つの蓄電素子100の間に位置するプレート本体151を有する。仕切壁部155は、プレート本体151からガス排出路254の内部に突出して設けられている。
【0052】
このように、本実施の形態に係る仕切壁部155は、隣り合う2つの蓄電素子100の位置規制、または、当該2つの蓄電素子100それぞれの膨張の抑制等を図るセル間プレート150の一部として設けられる。そのため、セル間プレート150を含む蓄電素子列101に対してガス排出路形成部材250を配置することで、ガス排出路254を仕切る仕切壁部155の配置が完了する。従って、セル間プレート150とは別部材であって、仕切壁部155として機能する部材を、ガス排出路形成部材250に溶接するなどの作業は不要である。
【0053】
本実施の形態では、蓄電素子列101において、セル間プレート150が配置される位置にはさらにセルホルダ130が配置される。つまり、蓄電装置1は、2つの蓄電素子100の間においてセル間プレート150に沿って配置され、かつ、電気的な絶縁性を有するセルホルダ130を備える。
【0054】
この構成によれば、隣り合う2つの蓄電素子100の容器110間の絶縁を、セルホルダ130に任せることができる。そのため、仕切壁部155を有するセル間プレート150を、金属または炭素繊維などの、樹脂よりも耐熱性が高い材料で形成することができる。本実施の形態では、セル間プレート150は、鉄またはアルミニウム合金等の金属で形成されている。これにより、仕切壁部155がガスの熱で損傷する可能性は低減し、その結果、仕切壁部155によるガス排出路254を仕切ることによる効果がより確実に発揮される。
【0055】
[3.変形例]
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電装置1について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0056】
例えば、仕切壁部155は、セル間プレート150等の、ガス排出路形成部材250とは別体の部材の一部である必要はない。仕切壁部155は、ガス排出路形成部材250に固定された、ガス排出路254を仕切ることのみを目的とした部材であってもよい。この場合、仕切壁部155は、ガス排出路形成部材250に一体に設けられた部材(ガス排出路形成部材250の一部)であってもよい。仕切壁部155は、ガス排出路形成部材250とは別体の部材であって、溶接または接着等によってガス排出路形成部材250に接合された部材であってもよい。いずれの場合であっても、平面視における2つのガス排出弁105の間に仕切壁部155が位置することで、一方のガス排出弁105から排出されるガスの圧力が、他方のガス排出弁105に作用し難くなる効果は発揮される。
【0057】
ガス排出路形成部材250に対して配置される仕切壁部155の数は3には限定されず、2以下であってもよく、4以上であってもよい。上記実施の形態のように、蓄電素子列101に含まれる数が8である場合、平面視において互いに隣り合う2つのガス排出弁105の間に必ず1つの仕切壁部155が存在するように、7つの仕切壁部155が配置されてもよい。または、X軸方向に並ぶ8つのガス排出弁105の内の、X軸方向の中央の2つのガス排出弁105の間のみに1つの仕切壁部155が配置されてもよい。いずれの場合であっても、1つの仕切壁部155に着目すると、ガス排出路形成部材250の内部に、当該仕切壁部155によって仕切られた少なくとも2つのガス排出路254が存在する。従って、平面視において当該仕切壁部155の両側に位置する2つのガス排出弁105のうちの一方のガスの圧力が、他方のガス排出弁105に作用し難くなる効果は発揮される。
【0058】
ガス排出路形成部材250に1つの仕切壁部155が配置された場合に、仕切壁部155によって仕切られるガス排出路254の数は3以上であってもよい。例えば、ガス排出路形成部材250の第一壁部251のY軸方向の中央部に、Z軸マイナス方向に突出し、かつX軸方向に長尺状の壁部が存在する場合を想定する。この場合、ZY平面に平行な仕切壁部155であって、X軸方向に長尺状の壁部と交差する仕切壁部155がガス排出路形成部材250に配置された結果、ガス排出路形成部材250の内部において4つに区画されたガス排出路254が形成されてもよい。
【0059】
仕切壁部155が第一スペーサの一部として配置される場合、第一スペーサは、セル間プレート150である必要はない。仕切壁部155を有する第一スペーサは、X軸方向で並ぶ2つの蓄電素子100の間に存在する空間の少なくとも一部を埋めるサイズ及び形状の部材であればよい。例えば、セルホルダ130が、仕切壁部155を有する第一スペーサとして蓄電装置1に備えられてもよい。この場合、セルホルダ130は、耐熱性の高い樹脂で形成されることが好ましい。さらに、セルホルダ130が、第一スペーサとして蓄電装置1に備えられる場合、セル間プレート150が、第一スペーサに沿って配置される第二スペーサであってもよい。第二スペーサは、セルホルダ130のような、蓄電素子100を保持する形状を有することは必須ではない。第一スペーサであるセル間プレート150に沿って配置される第二スペーサは、絶縁性材料で形成された単なる平板状の部材であってもよい。
【0060】
ガス排出路形成部材250が有する排出部255は、第二壁部252の端縁から切欠き状に設けられた開口部である必要はない。排出部255は、第二壁部252を厚み方向(Y軸方向)に貫通する貫通孔であってもよい。排出部255は、蓄電素子100におけるガス排出弁105のような、通常時は閉塞した状態であり、かつ、内圧の上昇に応じて破断、破壊、または溶断することで開口部(貫通孔)を形成する部分(例えば薄肉部)であってもよい。つまり、排出部255は、蓄電素子100からガスが排出された場合、そのガスを、ガス排出路254からガス排出路形成部材250の外部に排出できる部分であればよい。排出部255は、蓄電素子100からガスが排出されていないときに閉じている部分(例えば、シート状の部材で塞がれた開口部、または、弾性部材で密閉された開口部等)であってもよい。
【0061】
ガス排出路形成部材250において排出部255が設けられる位置は、第二壁部252である必要はない。第一壁部251に排出部255が配置されてもよい。この場合、第一壁部251における、ガス排出弁105と対向しない領域に排出部255が配置されるのが好ましい。これにより、第一壁部251に排出部255が配置された場合であっても、ガス排出弁105から排出されたガスを、一旦、第一壁部251の内面に衝突させた後に排出部255からガス排出路形成部材250の外部に排出できる。従って、ガスの圧力及び温度をガス排出弁105からの排出時点よりも低下させた状態で、そのガスをガス排出路形成部材250の外部に排出させることができる。
【0062】
ガス排出路形成部材250は、拘束部材200の一部である必要はない。ガス排出路形成部材250は、複数のガス排出弁105に対向して配置された部材であって、かつ、一対のエンド部材210を連結しない部材であってもよい。この場合、ガス排出路形成部材250は、例えば、バスバーホルダ30の一部であってもよく、バスバーホルダ30に固定された、バスバーホルダ30とは別体の部材であってもよい。
【0063】
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 蓄電装置
100、100A、100B 蓄電素子
101 蓄電素子列
105 ガス排出弁
130 セルホルダ
150 セル間プレート
151 プレート本体
155 仕切壁部
200 拘束部材
210 エンド部材
220 サイド部材
250 ガス排出路形成部材
251 第一壁部
252 第二壁部
254、254a、254b、254c、254d ガス排出路
255 排出部