(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067634
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】空調コントローラ、空調設備
(51)【国際特許分類】
F24F 11/88 20180101AFI20230509BHJP
F24F 120/00 20180101ALN20230509BHJP
【FI】
F24F11/88
F24F120:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179047
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 貴弘
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA64
3L260FA02
3L260FA20
3L260FC34
(57)【要約】
【課題】空調設備に対する信頼性の向上と耳障りな動作音の抑制とを実現すること。
【解決手段】空調コントローラ50には、可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、可動端子を変位させる駆動用のコイルとを有するラッチングタイプのリレーユニット71が搭載されており、空調装置40にはリレーユニット71を通じて制御信号が伝送される。空調コントローラ50のCPU61は、コイルを通電させることにより、接点部の状態を、空調装置40を運転停止とする停止用の制御信号に対応した初期状態を含む複数の状態に切替可能となっている。CPU61は、空調コントローラ50の起動処理を実行する場合に空調コントローラ50の電源がOFFとなっていた電源OFF時間を特定し、電源OFF時間が基準時間よりも長い場合には接点部を初期状態とする一方、電源OFF時間が基準時間よりも短い場合には接点部を起動前の状態のままとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、
前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部と
を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、切替回避条件が成立していない場合には前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記切替回避条件が成立している場合には前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【請求項2】
前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される場合に、前記空調コントローラの電源がオフとなっていたオフ時間を特定する時間特定部を備え、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が予め設定されている基準時間よりも長い場合には、前記切替回避条件成立として前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短い場合には、前記切替回避条件不成立として前記接点部を起動前の状態のままとする請求項1に記載の空調コントローラ。
【請求項3】
外部電源から前記空調コントローラへの電力供給を監視する監視部を備え、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも長く且つ前記監視部により前記起動処理の前に前記電力供給が遮断されたと判定された場合には、前記切替回避条件不成立として前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短く且つ前記監視部により前記起動処理の前に前記電力供給が遮断されていないと判定された場合には、前記切替回避条件成立として前記接点部を起動前の状態のままとする請求項2に記載の空調コントローラ。
【請求項4】
前記空調コントローラに記憶されているプログラムをアップデートするアップデート実行部と、
前記アップデート実行部により前記アップデートが実行される場合に、当該アップデートが実行される旨を示すアップデート情報を記憶する情報記憶部と
を備え、
前記アップデートに際して前記再起動条件が成立し、前記情報記憶部は前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される前に前記アップデート情報を記憶する構成となっており、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも長く且つ前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されていない場合には、前記切替回避条件不成立として前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短く且つ前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されている場合には、前記切替回避条件成立として前記接点部を起動前の状態のままとする請求項2に記載の空調コントローラ。
【請求項5】
可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電終了後も、前記可動端子を変位後の位置に保持可能となっており、
前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、
前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される場合に、前記空調コントローラの電源がオフとなっていたオフ時間を特定する時間特定部と
を有し、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が予め設定されている基準時間よりも長い場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短い場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【請求項6】
可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、
前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部と
を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、
外部電源から前記空調コントローラへの電力供給を監視する監視部を備え、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記監視部により当該起動処理の前に前記電力供給が遮断されていたと判定された場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記監視部により当該起動処理の前に前記電力供給が遮断されていないと判定された場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【請求項7】
可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、
前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部と
を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、
前記空調コントローラに記憶されているプログラムをアップデートするアップデート実行部と、
前記アップデート実行部により前記アップデートが実行される場合に、当該アップデートが実行される旨を示すアップデート情報を記憶する情報記憶部と
を備え、
前記アップデートに際して前記再起動条件が成立し、前記情報記憶部は前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される前に前記アップデート情報を記憶する構成となっており、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されていない場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されている場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の空調コントローラと当該空調コントローラによって制御される前記空調装置とを備えている空調設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調コントローラ及び空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物に適用される空調設備には、ユーザにより運転モード(冷房、暖房、除湿、送風)等の設定操作が行われる空調コントローラと、当該空調コントローラに搭載されたリレーを通じて伝送される制御信号(指令)に基づいて空調を行う空調装置とを備えているものがある。例えば特許文献1に記載されたサーモスタット(空調コントローラに相当)には、送風運転用リレー、冷房運転用リレー、暖房運転用リレー等の複数のリレーが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したリレーを、固定端子及び可動端子からなる接点部と可動端子用の駆動コイルとを有する有接点タイプ(所謂メカニカルリレー)とし且つ駆動コイルの通電終了後も可動端子が変位後の位置に保持される構成とすれば、空調コントローラにおける消費電力の低減に寄与できる。但し、空調コントローラには設置や配置変更等の施工時(特に搬送時)に振動等の外力が加わる可能性があり、当該外力の影響によって可動端子が変位する可能性を否定できない。仮に、可動端子の配置が冷房等の運転に対応した配置となり、そのまま空調コントローラが起動した場合には、施工時に空調装置の運転が不意に開始されるといった事象が発生すると懸念される。このような事象は、空調設備に対する信頼性を低下させる要因になるため好ましくない。
【0005】
本願の発明者は、このような事情に配慮して、空調コントローラの制御部にて当該空調コントローラの起動処理を実行する場合に各リレーを運転停止に対応する状態(所定の状態)に強制的に切り替える技術を考案した。このような構成とすれば、施工時に空調装置の運転が不意に開始されることを回避し、空調設備に対する信頼性の向上に寄与できる。
【0006】
ここで、空調コントローラには空調制御用のプログラムがインストールされており、このプログラムを事後的にアップデート可能とすることで製品の品質向上等に寄与できる。このようなアップデート等を行う場合にはそれを契機として空調コントローラを再起動させる必要が生じ得る。上述したように空調コントローラの起動処理を実行する場合にリレーを所定の状態に強制的に切り替える機能とアップデート等を契機として空調コントローラを再起動させる機能とを併存させようとした場合には以下の新たな懸念が生じる。
【0007】
アップデート等を契機とした再起動に際して上記起動処理が実行される場合に、メカニカルリレーの状態を切り替えると、可動端子の変位に伴って衝突音(クリック音)が発生し得る。空調コントローラはユーザの操作に配慮して室内(壁等)に配置されることが多く、このような環境下にて上記衝突音が発生することはユーザにとって耳障りとなる。特に、ユーザの意識が空調コントローラに向いていない状況下にてそのような衝突音が発生することでユーザに不快感を与えやすくなる。これはユーザの満足度を低下させる要因になるため好ましくない。このように、空調設備に対する信頼性の向上と耳障りな動作音の抑制とを図る上で空調コントローラに係る構成には未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、空調設備に対する信頼性の向上と耳障りな動作音の抑制とを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0010】
手段1.可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部とを備え、前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、切替回避条件が成立していない場合には前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記切替回避条件が成立している場合には前記接点部を起動前の状態のままとする。
【0011】
空調コントローラに搭載されたメカニカルリレー(詳しくは接点部)は、切替回避条件が不成立のまま当該空調コントローラの起動処理が実行される場合に空調装置を運転停止とする制御信号に対応した所定の状態(例えば初期状態)に強制的に切替可能となっている。所定の状態への切り替えを行うことにより、仮に設置や配置変更(移設)等の施工時に空調コントローラに振動等の外力が加わる等して可動端子が保持位置から変位したとしても、空調コントローラを起動させた際に不意に空調装置の運転が開始されることを回避できる。これは、空調設備に対する信頼性の向上を実現する上で好ましい。
【0012】
ここで、上述した強制切替については、空調コントローラの起動に際して切替回避条件が成立している場合には実行されない。つまり、当該強制切替には除外条件として切替回避条件が設けられており、この条件が成立している場合にはメカニカルリレーの状態が起動前の状態のまま維持される。このような構成によれば、例えば空調コントローラにインストールされているプログラムをインターネット等を通じて事後的にアップデートし、当該アップデートを契機として空調コントローラを再起動させる場合に、メカニカルリレーの強制切替を回避する構成を実現可能となる。つまり、アップデート等を契機とした再起動に際して可動端子の変位に伴う衝突音(クリック音)が発生することを抑制する構成を実現可能となる。空調コントローラはユーザによる操作を想定して室内(壁等)に配置されることが多く上記衝突音はユーザにとって耳障りとなりやすいため、衝突音の発生を抑えることには明確な技術的意義がある。以上の理由から、本手段に示す構成によれば、空調設備に対する信頼性の向上及び耳障りな作動音の抑制を図り、ユーザの満足度の向上に寄与できる。
【0013】
手段2.可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部を備え、前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電終了後も、前記可動端子を変位後の位置に保持可能となっており、前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される場合に、前記空調コントローラの電源がオフとなっていたオフ時間を特定する時間特定部とを有し、前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が予め設定されている基準時間よりも長い場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短い場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする。
【0014】
手段2に示す構成によれば、手段1と同様に、空調設備に対する信頼性及びユーザの満足度の向上に寄与できる。また、空調コントローラの電源がオフとなっている時間は状況によって大きく異なる。例えば、出荷された空調コントローラを施工現場に搬送したり、リフォーム等で空調コントローラを移設したりする際のオフ時間は、空調コントローラのアップデートや異常状態からの自己復帰の際の電源オフ時間と比べて長くなる傾向がある。そこで、本手段に示すように、オフ時間と基準時間とを対比してメカニカルリレーの強制切替の可否が決まる構成とすれば、起動処理の契機に応じた対応が可能となる。
【0015】
手段3.可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部とを備え、前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、外部電源から前記空調コントローラへの電力供給を監視する監視部を備え、前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記監視部により当該起動処理の前に前記電力供給が遮断されていたと判定された場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記監視部により当該起動処理の前に前記電力供給が遮断されていないと判定された場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする。
【0016】
手段3に示す構成によれば、手段1と同様に、空調設備に対する信頼性の向上等に寄与できる。また、空調コントローラの設置又は移設等の施工時には外部電源からの電力供給についても一旦は遮断される。そこで、電力供給が遮断された場合には接点部を所定の状態とすることにより、空調装置が突如として動作することを回避する効果を好適に発揮させることができる。また、空調コントローラをアップデートや異常状態の回復を契機として再起動させる場合には電力供給は遮断されない。そこで、電力供給が遮断されていない場合には接点部をそのままの状態に維持することにより、上記衝突音の発生を抑制する効果を好適に発揮させることができる。
【0017】
手段4.可動端子及び固定端子が設けられた接点部と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイルとを有するメカニカルリレーを備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置に制御信号を伝送する空調コントローラであって、前記空調コントローラの起動条件又は再起動条件が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部と、前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態を含む複数の状態に切り替える切替部とを備え、前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、前記空調コントローラに記憶されているプログラムをアップデートするアップデート実行部と、前記アップデート実行部により前記アップデートが実行される場合に、当該アップデートが実行される旨を示すアップデート情報を記憶する情報記憶部とを備え、前記アップデートに際して前記再起動条件が成立し、前記情報記憶部は前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される前に前記アップデート情報を記憶する構成となっており、前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されていない場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されている場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする。
【0018】
手段4に示す構成によれば、手段1と同様に、空調設備に対する信頼性の向上等に寄与できる。また、空調コントローラにてプログラムのアップデートが実行される際には、当該空調コントローラが再起動される。アップデートを実行する場合には、起動処理が実行される前(例えば空調コントローラのシャットダウン前)にアップデートが実行される旨を示すアップデート情報が記憶される。アップデート情報が記憶されていない場合には、接点部を所定の状態とすることにより、空調装置が突如として動作することを回避する効果を好適に発揮させることができる。一方、アップデート情報が記憶されている場合には、接点部をそのままの状態に維持することにより、上記衝突音の発生を抑制する効果を好適に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態における建物及び空調設備を示す概略図。
【
図4】リレーの状態と運転モードとの関係を示す概略図。
【
図5】空調コントローラの移設の様子を例示した概略図。
【
図6】(a)電源OFF時間監視の準備処理を示すフローチャート、(b)リレー用処理を示すフローチャート。
【
図7】空調コントローラの起動の流れを例示したタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物に設けられた空調設備に具体化されている。
【0021】
図1に示すように、建物10に設けられた空調設備30は、屋内(機械室24)に設置された空調装置40、屋外に設置された室外機41、空調装置40及び室外機41を繋ぐ熱交換用の配管44、空調装置40に空調用の空気を取り込む取込ダクト45~47、空調空気を建物10の居室21,22等へ供給する供給ダクト48,49、屋外へ空気を排出する排気ダクトを備えている。
【0022】
建物10の内部(屋内空間IS)には複数の居室が設けられており、それら居室毎に上述した取込ダクトの吸込口と供給ダクトの供給口とが配設されている。例えば居室21には取込ダクト45に設けられた吸込口45aと供給ダクト48に設けられた供給口48aとが配されており、居室22についても取込ダクト46に設けられた吸込口46aと供給ダクト49に設けられた供給口49aとが配されている。本実施形態に示す建物10は高気密・高断熱住宅であり、空調設備30(空調装置40)によって館内全体の空調が行われる(所謂全館空調)。
【0023】
また、空調設備30は、居室21の壁部に配設された空調コントローラ50を有している。空調コントローラ50は、ユーザによる運転モード(冷房、暖房、除湿、送風)等の設定操作等が可能となっており、設定された運転モードに応じて空調装置40及び室外機41が動作する。
【0024】
図2に示すように、空調コントローラ50は、空調に関する各種制御を行うCPU61と、制御用の各種プログラムやデータが記憶されるメモリ(ROM62、RAM63)とを備えている。空調コントローラ50は外部電源(商用電源)に接続されており、CPU61は外部電源から供給される電力によって動作する。
【0025】
本実施形態に示す空調コントローラ50については、インターネットを通じてクラウドサーバに接続されており、クラウドサーバから空調制御用の最新のプログラムやデータをダウンロード可能となっている。つまり、空調コントローラ50に記憶されている空調制御用のプログラムやデータについては製品出荷後も最新のものにアップデート可能となっている。このアップデート(オンラインアップデート)については、ユーザによるアップデート操作に基づいて実行される手動アップデートと、空調コントローラ50自身がアップデートの有無を随時確認しアップデート用のプログラム等の配信を確認した場合に実行される自動アップデートとに大別される。手動アップデート及び自動アップデートの何れが実行される場合であっても、プログラム等のダウンロード及びインストールが完了したタイミングで空調コントローラ50が再起動されることとなる。
【0026】
なお、メモリには、アップデート用の処理を実行するためのプログラムの他に、空調コントローラ50にフリーズ等の異常(エラー)が発生していないかを自己診断するためのプログラムや、異常が発生しているとの診断結果となった場合に当該異常の解消を図るためのプログラムが記憶されている。本実施形態においては、空調コントローラ50の起動や再起動に際して後述する起動処理が実行され、この起動処理の一環としてCPU61やメモリの一時記憶エリア等に記憶されている情報が消去される構成となっている。異常解消用のプログラムは、空調コントローラ50を強制的に再起動させて、一時記憶エリアに記憶されている情報、すなわち異常の原因となっている可能性がある情報を消去することで異常の解消を図るためのものである。
【0027】
また、空調コントローラ50には、リアルタイムクロック(以下、RTC64という)と当該RTC64用の内蔵電源とが搭載されている。RTC64は内蔵電源から供給される電力によって動作し、空調コントローラ50が外部電源に接続されていない状況下、すなわち空調コントローラ50の電源がOFFとなっている状況下においても動作可能となっている。詳細については後述するが、CPU61は、RTC64から現在の時刻を読み出してメモリの時刻記憶エリアに記憶する。なお、時刻記憶エリアは不揮発性メモリに設けられており、外部電源から空調コントローラ50への電力供給が行われていない状況下においても記憶している情報を保持可能な構成となっている。なお、時刻記憶エリアは起動処理における情報消去の対象外となっている。
【0028】
空調コントローラ50の入出力部65には、ハーネスを介して空調装置40が接続されている。具体的には、入出力部65には暖房運転用リレー、冷房運転用リレー、除湿運転用リレー、送風運転用リレー、風量設定用リレー、風向き設定用リレー等を含む複数(本実施形態においては8つ)リレーR1~R8からなるリレーユニット71が配設されており、ハーネスを構成する配線がリレーR1~R8に各々取り付けられている。リレーR1~R4は運転モード切替用のリレーであり、リレーR5~R8は風量等の制御用のリレーである。空調装置40はそれらリレーR1~R8及びハーネスを通じて伝送される制御信号(制御指令)に基づいて動作する。ここで、
図3を参照して、リレーR1~R8の構造について説明する。リレーR1~R8は、何れも2巻線ラッチング型のメカニカルリレーであり、主たる構造が共通となっている。
【0029】
リレーR1~R8は、ハーネスの各配線に接続される信号線72と、信号線72を寸断する一対の固定端子73及びそれら固定端子73とともに信号伝達経路の一部を形成する可動端子74からなる接点部75と、可動端子74用の駆動部としての駆動コイルとを各々有してなる。各リレーR1~R8の信号線72は空調コントローラ50に設けられた変換回路等を介して外部電源に繋がっており、空調コントローラ50が起動することで当該変換回路から各信号線72に電圧が印加される構成となっている。
【0030】
駆動コイルは、セットコイル76とリセットコイル77とからなり、それらセットコイル76及びリセットコイル77が接点部75(詳しくは可動端子74)を挟んで相対向するように配置されている。セットコイル76及びリセットコイル77は、CPU61により通電状態/非通電状態に個別に切替可能となっている。
【0031】
セットコイル76が通電状態且つリセットコイル77が非通電状態となることで当該セットコイル76に可動端子74を引き寄せる引力が生じる。この引力により引き寄せられた可動端子74は、固定端子73に当接することでそれ以上のセットコイル76側への変位が妨げられ、当該固定端子73とともに信号伝達経路を形成する(
図3(a)→
図3(b)参照)。以下の説明では、この状態を「閉状態」と称する。
【0032】
固定端子73には可動端子74を吸着する磁力が付与されており、固定端子73に当接する位置へ変位した可動端子74はセットコイル76の通電解除後も当該当接する位置に留まることとなる(
図3(b)参照)。つまり、リレーは閉状態のままとなる。リレーが閉状態となっている状況下にて当該リレーから空調装置40に電流が流れることにより、当該空調装置40にオン信号(HIレベル信号)が入力される。
【0033】
リレーが閉状態となっている状況下にてリセットコイル77が通電され、セットコイル76が非通電状態且つリセットコイル77が通電状態となることでリセットコイル77に可動端子74を引き寄せる引力が生じる。可動端子74が固定端子73の磁力に抗してリセットコイル77側へ引き寄せられることにより、可動端子74が固定端子73から離れる。固定端子73から離れた可動端子74は、接点部75に併設されたストッパ78に当たる。これにより、可動端子74のそれ以上の変位(リセットコイル77側への変位)が妨げられることとなる(
図3(b)→
図3(c)参照)。
【0034】
ストッパ78にも可動端子74を吸着する磁力が付与されており、可動端子74はリセットコイル77の通電解除後もストッパ78に当接する位置に留まることとなる。固定端子73と可動端子74とが離間した状態では、当該リレーから空調装置40にオフ信号(LOWレベル信号)が出力される。以下の説明では、この状態を「開状態」と称する。
【0035】
次に、
図4を参照して、空調装置40の運転モードと制御指令との関係について説明する。
【0036】
各リレーR1~R4が何れも開状態となっている場合には、それらリレーR1~リレーR4から空調装置40に入力される信号が何れもオフ信号となる。空調装置40は、運転中にこの制御指令が入力された場合には運転を停止し、運転停止中にこの制御指令が入力された場合には運転停止のままとなる。以下の説明では、各リレーR1~R4が開状態となっているリレーユニット71の状態を「初期状態」と称する。
【0037】
リレーR1が閉状態且つリレーR2~R4が開状態となっている場合には、リレーR1から空調装置40にオン信号が入力され且つリレーR2~R4から空調装置40にオフ信号が入力される。空調装置40は、運転中にこの制御指令が入力された場合には運転モードを暖房モードに切り替え、運転停止中にこの制御指令が入力された場合には暖房モードでの運転を開始する。
【0038】
リレーR1,R3~R4が開状態且つリレーR2が閉状態となっている場合には、リレーR1,R3~R4から空調装置40にオフ信号が入力され且つリレーR2から空調装置40にオン信号が入力される。空調装置40は、運転中にこの制御指令が入力された場合には運転モードを冷房モードに切り替え、運転停止中にこの制御指令が入力された場合には冷房モードでの運転を開始する。
【0039】
リレーR1~R2,R4が開状態且つリレーR3が閉状態となっている場合には、リレーR1~R2,R4から空調装置40にオフ信号が入力され且つリレーR3から空調装置40にオン信号が入力される。空調装置40は、運転中にこの制御指令が入力された場合には運転モードを除湿モードに切り替え、運転停止中にこの制御指令が入力された場合には除湿モードでの運転を開始する。
【0040】
リレーR1~R3が開状態且つリレーR4が閉状態となっている場合には、リレーR1~R3から空調装置40にオフ信号が入力され且つリレーR4から空調装置40にオン信号が入力される。空調装置40は、運転中にこの制御指令が入力された場合には運転モードを送風モードに切り替え、運転停止中にこの制御指令が入力された場合には送風モードでの運転を開始する。
【0041】
以上詳述したように、リレーR1~R4が全て開状態となっているリレーユニット71の状態(初期状態)は運転停止用の制御指令の出力に対応した状態であり、リレーR1~R4の何れかが閉状態となっているリレーユニット71の状態は運転用の制御指令の出力に対応した状態である。
【0042】
次に、
図5を参照して、空調コントローラ50の設置に係る構成について補足説明する。
図5に示す例では、居室Aに設置された空調コントローラ50を居室Bへ移設する場合について例示している。
【0043】
居室Aの壁部31Aには、空調コントローラ50と外部電源、空調装置40、インターネット用のルータとを繋ぐ上記ハーネスが埋設されており、当該ハーネスに付属のコネクタ32Aが壁部31Aに設けられたブラケットに固定されている。このブラケットは壁部31Aへ空調コントローラ50を取り付ける取付手段を構成しており、空調コントローラ50は空調に係る各種情報を表示する表示画面51が手前側を向くようにして当該ブラケットに固定されている。空調コントローラ50がブラケットに固定された状態では、当該空調コントローラ50の背面部に設けられたコネクタ52が上記コネクタ32Aに接続されている。コネクタ52とコネクタ32Aとが接続されることで、外部電源から空調コントローラ50への電力供給経路(電力ライン)、空調コントローラ50から空調装置40への信号伝達経路、クラウドサーバとの通信経路が形成される。
【0044】
リフォーム等で空調コントローラ50を居室Aから居室Bへ移設する場合には、空調コントローラ50を操作して空調装置40の運転を停止させる。この停止操作によって、リレーユニット71は上述した初期状態に切り替わる。その後、空調コントローラ50をブラケットから取り外すことによりコネクタ32Aとコネクタ52とが分離され、外部電源から空調コントローラ50への電力供給が遮断される。これにより、空調装置40に入力される制御指令についても運転停止に対応したものとなる。
【0045】
本実施形態に示す空調コントローラ50については当該空調コントローラ50の電源をON/OFFするための電源ボタン(電源操作部)が不具備となっており、電力供給が遮断されたタイミングで空調コントローラ50の電源がOFFとなる。取り外された空調コントローラ50は居室Bへ搬送される。
【0046】
居室Bの壁部31Bにも、空調コントローラ50と外部電源、空調装置40、インターネット用のルータとを繋ぐ上記ハーネスが埋設されており、このハーネスのコネクタ32Bが壁部31Bに設けられたブラケットに固定されている。居室Bへ運んだ空調コントローラ50を当該ブラケットへ固定することにより、空調コントローラ50側のコネクタ52とブラケット側のコネクタ32Bとが接続される。コネクタ52とコネクタ32Bとが接続されることで、外部電源から空調コントローラ50への電力供給経路(電力ライン)、空調コントローラ50から空調装置40への信号伝達経路、クラウドサーバとの通信経路が形成される。そして、外部電源から空調コントローラ50への電力供給が再開され、空調コントローラ50の電源がオンとなる。
【0047】
本実施形態に示す空調コントローラ50についてはラッチング機能を有しており、駆動コイルの通電終了後も可動端子74が変位後の位置に保持される。しかしながら、空調コントローラ50には設置や配置変更等の施工時(特に搬送時)に振動等の外力が加わる可能性があり、当該外力の影響によって可動端子74が変位する可能性を否定できない。このような変位によってリレーユニット71が暖房、冷房、除湿、送風の何れかに対応した制御指令を出力する状態に切り替わった場合には、空調コントローラ50の起動に伴って空調装置40が不意に運転を開始するといった事象が発生し得る。例えば、
図3に示す例では、空調コントローラ50を運んでいる最中に外力の影響によってリレーR2の可動端子74が変位し、当該リレーR2が開状態から閉状態に切り替わっている。つまり、リレーユニット71の状態が運転停止に対応する初期状態から冷房運転に対応した状態に切り替わっている。この状態のまま空調コントローラ50が居室Bに設置され、当該空調コントローラ50が起動した場合には、施工時に空調装置40の運転が不意に開始されることとなる。このような事象は、施工の妨げになったり、空調設備30に対する信頼性を低下させる要因になったりするため好ましくない。
【0048】
本実施形態では、このような事情に配慮して以下の工夫がなされていることを特徴の1つとしている。すなわち、空調コントローラ50のCPU61により当該空調コントローラ50を起動させる処理(起動処理)が実行される際に、リレーユニット71を強制的に初期状態に切替可能とすることにより、空調装置40の不意の運転開始を抑制している。
【0049】
但し、本空調コントローラ50においては、アップデートを実行する際や異常状態の解消を図る際に再起動条件成立となり起動処理が実行される。このため、空調コントローラ50の起動処理を実行する場合にリレーユニット71を初期状態に強制的に切り替える機能とアップデート等を契機として空調コントローラ50を再起動させる機能とを併存させようとした場合に以下の新たな懸念が生じる。すなわち、アップデート等を契機とした再起動に際して上記起動処理が実行される場合に、リレーユニット71の状態を切り替えると、可動端子74の変位に伴って衝突音(クリック音)が発生し得る。空調コントローラ50はユーザの操作に配慮して室内に配置されることが多く、このような環境下にて上記衝突音が発生することはユーザにとって耳障りとなる。特に、ユーザの意識が空調コントローラ50に向いていない状況下にてそのような衝突音が発生することでユーザに不快感を与えやすくなる。これはユーザの満足度を低下させる要因になるため好ましくない。
【0050】
本実施形態ではこのような課題を解決するための更なる工夫がされていることを特徴の1つとしている。具体的には、空調コントローラ50を起動(再起動)させる場合に、その契機がアップデートや異常状態の解消である場合に上記強制切替を回避する構成となっており、その判断材料として空調コントローラ50の電源がOFFとなる電源OFF時間を監視していることを特徴の1つとしている。以下、当該工夫に係る構成、具体的にはCPU61にて実行される各種処理を
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
CPU61では、空調コントローラ50の起動条件や再起動条件が成立した場合に当該空調コントローラ50を起動させるべく上記起動処理が実行される。この起動処理の完了後は、定期処理の一環として上記電源OFF時間を監視するための準備処理(電源OFF時間監視の準備処理)を実行する。
【0052】
図6(a)に示すように、電源OFF時間監視の準備処理においては先ず、ステップS101にて先の時刻取得から予め設定されているインターバル時間(本実施形態では1分)が経過したか否かを判定する。インターバル時間が経過していない場合には、ステップS101にて否定判定をして本準備処理を終了する。インターバル時間が経過している場合にはステップS101にて肯定判定をしてステップS102~S103の現在時刻の取得処理を実行した後、本準備処理を終了する。具体的には、ステップS102にてRTC64から現在の時刻を読み出し、続くステップS103ではステップS102にて読み出した時刻を不揮発性メモリの時刻記憶エリアに格納(上書き)する。これにより、1分毎に時刻記憶エリアに記憶されている現在時刻が更新される。時刻記憶エリアに格納された時刻は、空調コントローラ50の電源がOFFとなった後も消去されることなく保持される。
【0053】
空調コントローラ50のCPU61は、(1)外部電源から空調コントローラ50への電力供給が開始された場合、(2)アップデートや異常診断を契機として再起動条件が成立した場合に起動処理を実行する。この起動処理の一環として、リレーユニット71の状態を切り替えるリレー用処理が含まれている。
【0054】
図6(b)に示すように、リレー用処理においては先ず、ステップS201にて過去時刻を読み出す。具合的には、時刻記憶エリアに格納されている時刻を読み出す。続くステップS202では、RTC64から現在の時刻を読み出す。そして、ステップS203では、過去時刻と現在時刻とを対比して、空調コントローラ50の電源がOFFとなっていた電源OFF時間を算出(推定)する。
【0055】
次に、ステップS203にて算出した電源OFF時間と予め設定されている基準時間(本実施形態では3分)とを対比する。本実施形態においては、アップデートや異常診断を契機として再起動条件が成立した場合には、電源OFFから電源ON(起動処理)までの時間(ブランク)が基準時間よりも短くなるように設定されている。詳しくは、当該ブランクが数秒となるように設定されている。つまり、基本的にはアップデートや異常診断を契機として再起動条件が成立した場合には電源OFF時間<基準時間となる。これに対して、出荷された空調コントローラ50を建物10に設置する場合や設置済みの空調コントローラ50を移設する場合には、空調コントローラ50の(取り外し→)搬送→設置の手順を踏む必要があり、電源OFF時間は基本的に基準時間よりも十分に長くなる。言い換えれば、基準時間はこのような手順を考慮して、移設等の所要時間よりも長くなるように設定されている。
【0056】
算出した電源OFF時間が基準時間よりも長い場合には、ステップS204にて肯定判定をしてステップS205に進み、リレーユニット71を初期状態に切り替える(強制切替)。これにより、起動処理の完了後に空調装置40へ出力される制御指令は運転停止に対応したものとなる。
【0057】
一方、電源OFF時間が基準時間よりも短い場合には、ステップS204にて否定判定をして、そのまま本リレー用処理を終了する。つまり、上記強制切替が回避され、リレーユニット71の状態は再起動前の状態のままとなる。
【0058】
ここで、
図7を参照して、空調コントローラ50の起動の流れについて説明する。
図7(a)は空調コントローラ50の配置を変更する場合の流れを例示したタイミングチャート、
図7(b)は空調コントローラ50にて自動アップデートが実行される場合の流れを例示したタイミングチャートである。
【0059】
図7(a)に示す例では、taのタイミングで空調コントローラ50が上述したブラケットから取り外されており、この取り外しに伴って空調コントローラ50の電源がOFFとなっている。本来であれば空調コントローラ50を取り外す前に空調装置40の運転を停止させるべきところ、
図7(a)に示す例では運転停止操作を行うことなく空調コントローラ50が取り外されている。但し、この取り外しによって空調装置40へ入力される制御指令は運転(冷房)に対応するものから運転停止に対応するものに切り替わる。これにより、空調装置40の運転についてもtaのタイミングで停止されている。なお、空調コントローラ50を取り外した状態では、リレーユニット71が冷房運転に対応した制御指令を出力可能な状態のままとなっており、この状態のまま空調コントローラ50が別室へ搬送されている。
【0060】
taのタイミングから凡そ45分が経過したtbのタイミングでは、空調コントローラ50が別室に用意されたブラケットに固定されている。これにより、外部電源から空調コントローラ50への電力供給が開始され、当該空調コントローラ50のCPU61にて起動処理が開始されている。この起動処理では、空調コントローラ50の電源OFF時間が算出(推定)される。
図7(a)の例では、電源OFF時間が基準時間(3分)を上回っているため、起動処理中にリレーユニット71が初期状態に強制的に切り替えられることとなる。具体的には、リレーR1~R8が全て開状態となるように各リセットコイル77が通電されている。これにより、空調コントローラ50の起動が完了したtcのタイミングにて空調装置40に入力される制御指令については運転停止に対応するものとなる。つまり、空調装置40は運転停止のままとなり、不意の運転開始が回避されている。なお、空調コントローラ50を建物10に最初に設置する場合も電源OFF時間が基準時間を上回ることとなり、
図7(a)に示す例と同様の挙動(リレーR1~R8→開状態)となる。
【0061】
図7(b)に示す例では、冷房運転中のtdのタイミングにて空調コントローラ50の自動アップデートが開始されている。自動アップデート開始後のteのタイミングでは、新たに配信されたプログラムのダウンロード及びインストールが完了し、空調コントローラ50の再起動条件が成立している。このteのタイミングではCPU61にて電断処理が実行され、空調コントローラ50の電源がOFFとなっている。電源OFF直後のtfのタイミング、具体的には電源OFFから上記ブランク(数秒)が経過したタイミングでは空調コントローラ50の電源がONとなり空調コントローラ50の起動処理が開始されている。
【0062】
アップデートを契機として空調コントローラ50の電源がOFF→ONとなる場合には、電源OFF時間が上記基準時間よりも短くなる。このため、リレーユニット71の強制切替が回避され、当該リレーユニット71は電源ON前の状態のままとなる。空調コントローラ50の起動が完了したtgのタイミングでは、空調装置40への制御指令の出力が再開されることとなる。この制御指令については、再起動前と同様に運転(冷房)に対応するものとなる。なお、手動アップデートの場合にも基本的に電源OFF時間が上記基準時間よりも短くなり、
図7(b)に示す例と同様の挙動(リレーユニット71の強制切替回避)となる。
【0063】
以上詳述した実施形態によれば、以下の優れた効果が期待できる。
【0064】
空調コントローラ50の設置や配置変更等の施工時に空調装置40の運転が不意に開始されることは、施工の妨げになったり、空調設備30に対する信頼性を低下させる要因になったりするため好ましくない。本実施形態では、空調コントローラ50のCPU61により当該空調コントローラ50の起動処理が実行される際に、リレーユニット71を強制的に初期状態に切替可能とすることにより、空調装置40の不意の運転開始を抑制している。
【0065】
一方、アップデート等を契機とした再起動に際して起動処理が実行される場合には、初期状態への切り替えが回避される。これにより、可動端子74の変位に起因した衝突音(クリック音)の発生を抑えている。ユーザにとって耳障りとなる衝突音の発生を抑えてユーザに不快感を与えにくくすることで、当該衝突音によってユーザの満足度が低下することを抑制できる。
【0066】
ラッチング型のメカニカルリレーについては空調コントローラ50の消費電力の軽減等を実現する上で好ましいものの、その構造上、空調コントローラ50に振動等の外力が加わった場合に当該外力の影響によって可動端子74が変位する可能性を否定できない。空調コントローラ50の搬送に注意を払って丁寧な作業を心がけることで、外力の影響を抑えることは可能であるが、作業にそのような制約が生じることは作業効率の低下の要因となり得る。
【0067】
ここで、本実施形態では、空調コントローラ50の起動に際して当該空調コントローラ50の電源OFF時間が基準時間よりも長い場合には、今回の起動は空調コントローラ50の設置又は配置変更を契機とする可能性が高い点に着目し、このような場合には空調コントローラ50の起動時にリレーユニット71を初期状態に切り替える構成とすることで、空調装置40の運転が不意に開始されることを好適に回避できる。これにより、上述した懸念を好適に払しょくできる。
【0068】
また、初期状態への強制切替については、空調コントローラ50の起動に際して電源OFF時間が基準時間よりも短い場合には回避される。つまり、当該強制切替には除外条件(切替回避条件)が設けられており、この条件が成立している場合にはリレーユニット71の状態が起動前の状態のまま維持される。このような構成によれば、例えばアップデートや異常状態の解消を契機として空調コントローラ50を再起動させる場合に、可動端子74の変位に伴う衝突音(クリック音)が発生すること好適に抑制できる。衝突音はユーザにとって耳障りとなりやすいため、衝突音の発生を抑えることには明確な技術的意義がある。
【0069】
出荷された空調コントローラ50を施工現場に搬送したり、リフォーム等で空調コントローラ50の配置を変更(移設)したりする場合には、電力供給の開始を契機として空調コントローラ50が起動する。これに対して、空調コントローラ50のアップデートや異常状態の解消(自己復帰)については電力供給が続いている状態で空調コントローラ50が起動(再起動)する。前者を想定した場合の電源OFF時間は、後者を想定した場合の電源OFF時間と比べて長くなる。そこで、本実施形態に示したように、電源OFF時間と基準時間とを対比して初期状態への強制切替の可否を決める構成とすれば、起動処理の契機に応じた対応が可能となる。
【0070】
本実施形態に示したように、定期的に現在の時刻を記憶する構成とすれば、空調コントローラ50の電源がOFFとなるタイミングにて時刻を保存しなくても大まかな電源OFF時間を推定可能となる。これは、電源OFF時の処理(空調コントローラ50に係る電気的構成)の簡素化を図る上で好ましい。
【0071】
<その他の実施形態>
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、空調コントローラ50の起動処理が実行される場合に、当該空調コントローラ50のOFF時間を算出(推定)し、算出したOFF時間を基準時間と対比することにより、リレーユニット71を初期状態(「所定の状態」に相当)に切り替えるか否かを決定する構成とした。空調コントローラ50の設置や配置変更等の施工時には外部電源から当該空調コントローラ50への電力供給(電力供給ライン)が遮断される一方、アップデート時や異常状態からの自己回復時には電力供給(電力供給ライン)が遮断されない点に鑑みれば、リレーユニット71の強制切替に係る構成を以下のように変更してもよい。
【0073】
すなわち、空調コントローラ50に外部電源からの電力供給状況を監視する監視部とし監視回路を設け、起動前に電力供給が遮断されていた場合には起動時にリレーユニット71を初期状態に切り替える一方、起動前に電力供給が遮断されていなかった場合にはリレーユニット71を起動前の状態のままとする(初期状態に切り替えない)構成としてもよい。
【0074】
また、監視回路による電力供給の監視機能とOFF時間の算出機能とを併用し、OFF時間が基準時間よりも長く且つ起動前に電力供給が遮断されていたと判定した場合には、起動時にリレーユニット71を初期状態に切り替える一方、OFF時間が基準時間よりも短く且つ起動前に電力供給が遮断されていなかったと判定した場合には、リレーユニット71を起動前の状態のままとする(初期状態に切り替えない)構成としてもよい。なお、OFF時間が基準時間よりも短いと判定した場合又は起動前に電力供給が遮断されていたと判定した場合に、リレーユニット71を起動前の状態のままとする構成とすることも可能である。
【0075】
・空調コントローラ50をアップデートする場合に、アップデートを実行する旨を示すアップデートフラグ(アップデート情報)をRAM63の保持エリア(起動に際して情報が消去されることなく保持されるエリア)に格納する構成とし、起動処理が実行される場合には、当該アップデートフラグの有無によってリレーユニット71を初期状態に切り替えるか否かを決定する構成としてもよい。具体的には、起動時にアップデートフラグが格納されていない場合にはリレーユニット71を初期状態に切り替える一方、起動時にアップデートフラグが格納されている場合にはリレーユニット71を起動前の状態のままとする構成としてもよい。なお、アップデートフラグについては起動処理完了時に消去される構成とするとよい。
【0076】
また、アップデートフラグによるアップデートの有無の識別機能とOFF時間の算出機能とを併用し、OFF時間が基準時間よりも長く且つアップデートフラグが格納されていない場合には、起動時にリレーユニット71を初期状態に切り替える一方、OFF時間が基準時間よりも短く且つアップデートフラグが格納されている場合には、リレーユニット71を起動前の状態のままとする(初期状態に切り替えない)構成としてもよい。なお、OFF時間が基準時間よりも短いと判定した場合又はアップデートフラグが格納されている場合に、リレーユニット71を起動前の状態のままとする構成とすることも可能である。
【0077】
・上記実施形態では、空調コントローラ50のCPU61は、RTC64から現在の時刻を取得する構成としたが、これに限定されるものではない。例えばインターネットから現在の時刻を取得する構成とすることも可能である。
【0078】
・上記実施形態に示したOFF時間の計測方法(推定方法)については任意である。例えば、電源OFF時間をタイマカウンタを用いて計測する構成としてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、空調コントローラ50にインストールされているプログラム(ソフトフェア)のアップデートを実行する場合、又は空調コントローラ50に異常状態が発生している場合に自動回復を実行する場合に空調コントローラ50を再起動させる構成について例示したが、これら2つの機能の一方のみを有する構成を否定するものではない。
【0080】
・上記実施形態では、ユーザがアップデート操作を行わなくても、プログラムのアップデートの要否を空調コントローラ50が自己判断し自動でアップデートが行われる構成としたが、これに代えて又は加えてユーザのアップデート操作に基づいてアップデートを実行する構成としてもよい。また、ユーザが異常状態の回復操作(リセット操作)を行わなくても、異常の有無を空調コントローラ50が自己判断し自動で回復を行う構成としたが、これに代えて又は加えてユーザの回復操作に基づいて回復を行う構成してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、リレーR1~R8が全て開状態となっている場合に空調装置40が運転停止となるように構成、すなわち「所定の状態」では各リレーR1~R8が何れも開状態となるように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、「所定の状態」では、各リレーR1~R8が何れも閉状態となるように構成してもよい。
【0082】
・リレーR1~R8については、ラッチング機能を有するメカニカルリレーであれば足り、例えばラチェット式のメカニカルリレーとすることも可能である。
【0083】
・上記実施形態では、起動処理完了後はRTC64から定期的に時刻を記憶する構成としたが、これを以下のように変更してもよい。すなわち、空調コントローラ50にパワーコンデンサ等の蓄電部を設け、外部電源からの電源供給が遮断された場合には当該蓄電部からCPU61に電断処理を実行するための電力が供給される構成とし、この電断処理時にRTC64から時刻を取得する構成としてもよい。
【0084】
・上記実施形態に示した空調コントローラ50に当該空調コントローラ50の電源をON/OFFするための電源ボタンを設けてもよい。この場合、電源ボタンの操作(手動操作)を契機として起動処理が実行される場合と、電源ボタンの操作以外(アップデート等)を契機として自動で起動処理(再起動)が実行される場合とで、リレーユニット71の初期状態への強制切替を行うか否かが分かれる構成としてもよい。具体的には、電源ボタンの操作を契機としている場合にはリレーユニット71を初期状態に切り替える一方、電源ボタンの操作を契機としていない場合にはリレーユニット71をそのままの状態に維持する構成とするとよい。
【0085】
・上記実施形態に示した空調コントローラ50については、全館空調に代えて、ルームエアコン、空気清浄装置等の他の空調設備に適用してもよい。また、当該空調コントローラ50については、建物用の空調設備に限らず車、列車、飛行機等の乗り物に搭載される空調設備に適用することも可能である。
【0086】
<上記実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0087】
特徴1.可動端子(可動端子74)及び固定端子(固定端子73)が設けられた接点部(接点部75)と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイル(コイル76,77)とを有するメカニカルリレー(リレーユニット71)を備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置(空調装置40)に制御信号を伝送する空調コントローラ(空調コントローラ50)であって、
前記空調コントローラの起動条件(外部電源からの電力供給の開始)又は再起動条件(アップデートや異常等)が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部(CPU61にて起動処理を実行する機能)と、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態(初期状態)を含む複数の状態に切り替える切替部(CPU61におけるリレーユニット71の切替機能)と
を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、切替回避条件が成立していない場合には前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記切替回避条件が成立している場合には前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【0088】
空調コントローラに搭載されたメカニカルリレー(詳しくは接点部)は、切替回避条件が不成立のまま当該空調コントローラの起動処理が実行される場合に空調装置を運転停止とする制御信号に対応した所定の状態(例えば初期状態)に強制的に切替可能となっている。所定の状態への切り替えを行うことにより、仮に設置や配置変更(移設)等の施工時に空調コントローラに振動等の外力が加わる等して可動端子が保持位置から変位したとしても、空調コントローラを起動させた際に不意に空調装置の運転が開始されることを回避できる。これは、空調設備に対する信頼性の向上を実現する上で好ましい。
【0089】
ここで、上述した強制切替については、空調コントローラの起動に際して切替回避条件が成立している場合には実行されない。つまり、当該強制切替には除外条件として切替回避条件が設けられており、この条件が成立している場合にはメカニカルリレーの状態が起動前の状態のまま維持される。このような構成によれば、例えば空調コントローラにインストールされているプログラムをインターネット等を通じて事後的にアップデートし、当該アップデートを契機として空調コントローラを再起動させる場合に、メカニカルリレーの強制切替を回避する構成を実現可能となる。つまり、アップデート等を契機とした再起動に際して可動端子の変位に伴う衝突音(クリック音)が発生することを抑制する構成を実現可能となる。空調コントローラはユーザによる操作を想定して室内(壁等)に配置されることが多く上記衝突音はユーザにとって耳障りとなりやすいため、衝突音の発生を抑えることには明確な技術的意義がある。以上の理由から、本手段に示す構成によれば、空調設備に対する信頼性の向上及び耳障りな作動音の抑制を図り、ユーザの満足度の向上に寄与できる。
【0090】
なお、例えば空調コントローラが自身の異常を監視し、異常状態からの回復時(復帰時)に再起動する構成に対して本特徴に示す技術的思想を適用すれば、当該再起動に際して上記衝突音の発生を抑制する構成を好適に実現可能となる。
【0091】
因みに、本特徴に示す「所定の状態」を「初期状態」に変更するとともに「前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際して、切替回避条件が成立していない場合には前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際して、前記切替回避条件が成立している場合には前記接点部を起動前の状態のままとする」との記載を「前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際して、復帰条件が成立している場合には前記接点部を前記初期状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際して、前記復帰条件が成立していない場合には前記接点部を起動前の状態のままとする」に変更してもよい。
【0092】
また、本特徴に示す構成を「可動端子(可動端子74)及び固定端子(固定端子73)が設けられた接点部(接点部75)と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイル(コイル76,77)とを有するメカニカルリレー(リレーユニット71)を備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置(空調装置40)に制御信号を伝送する空調コントローラ(空調コントローラ50)であって、前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする所定の状態(初期状態)を含む複数の状態に切り替える切替部(CPU61におけるリレーユニット71の切替機能)を備え、前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、前記切替部は、前記接点部が前記所定の状態となっていない状況下における前記空調コントローラの起動に際し、切替回避条件が成立していない場合には前記接点部を前記所定の状態に切り替える一方、前記切替回避条件が成立している場合には前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。」とすることも可能である。
【0093】
特徴2.前記空調コントローラの起動完了後に前記メカニカルリレーを通じた前記制御信号の伝送が開始される構成となっており、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記切替回避条件が成立していない場合には、前記制御信号の伝送が開始される前に前記接点部を前記所定の状態に切り替える一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記切替回避条件が成立している場合には、今回の起動処理を契機とした前記接点部の状態の切り替えを行わない特徴1に記載の空調コントローラ。
【0094】
切替回避条件が成立していない場合には、制御信号の伝送が開始される前に接点部を所定の状態に切り替えることで空調装置が突如として停止→運転となることを好適に抑制できる。一方、切替回避条件が成立している場合には、接点部の状態を切り替えることなくそのままとすることで上記衝突音の発生を好適に抑制できる。
【0095】
特徴3.前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される場合に、前記空調コントローラの電源がオフとなっていたオフ時間を特定する時間特定部(CPU61にて電源OFF時間を算出する機能)を備え、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が予め設定されている基準時間よりも長い場合には、前記切替回避条件成立として前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短い場合には、前記切替回避条件不成立として前記接点部を起動前の状態のままとする特徴1又は特徴2に記載の空調コントローラ。
【0096】
空調コントローラの電源がオフとなっている時間は状況によって大きく異なる。例えば、出荷された空調コントローラを施工現場に搬送したり、リフォーム等で空調コントローラを移設したりする際のオフ時間は、空調コントローラのアップデートや異常状態からの自己復帰の際のオフ時間と比べて長くなる。そこで、本特徴に示すように、オフ時間と基準時間とを対比してメカニカルリレーの強制切替の可否を決める構成とすれば、起動処理の契機に応じた対応が可能となる。
【0097】
特徴4.可動端子(可動端子74)及び固定端子(固定端子73)が設けられた接点部(接点部75)と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイル(コイル76,77)とを有するメカニカルリレー(リレーユニット71)を備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置(空調装置40)に制御信号を伝送する空調コントローラ(空調コントローラ50)であって、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態(初期状態)を含む複数の状態に切り替える切替部(CPU61におけるリレーユニット71の切替機能)を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電終了後も、前記可動端子を変位後の位置に保持可能となっており、
前記空調コントローラの起動条件(外部電源からの電力供給の開始)又は再起動条件(アップデート完了等)が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部(CPU61にて起動処理を実行する機能)と、
前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される場合に、前記空調コントローラの電源がオフとなっていたオフ時間を特定する時間特定部(CPU61にて電源OFF時間を算出する機能)と
を有し、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が予め設定されている基準時間よりも長い場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短い場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【0098】
本特徴に示す構成によれば、特徴1に示した構成と同様に、空調設備に対する信頼性及びユーザの満足度の向上に寄与できる。また、空調コントローラの電源がオフとなっている時間は状況によって大きく異なる。例えば、出荷された空調コントローラを施工現場に搬送したり、リフォーム等で空調コントローラを移設したりする際のオフ時間は、空調コントローラのアップデートや異常状態からの自己復帰の際の電源オフ時間と比べて長くなる傾向がある。そこで、本特徴に示すように、オフ時間と基準時間とを対比してメカニカルリレーの強制切替の可否を決定する構成とすれば、起動処理の契機に応じた対応が可能となる。
【0099】
特徴5.前記再起動条件が成立して前記起動処理が実行される場合の前記オフ時間は、前記基準時間よりも短くなるように設定されている特徴3又は特徴4に記載の空調コントローラ。
【0100】
特徴3等に示した技術的思想を具現化する場合には、本特徴に示すように再起動条件が成立して空調コントローラを再起動させる場合のオフ時間が基準時間よりも短くなるように設定するとよい。
【0101】
特徴6.前記時間特定部は、前記起動処理の実行後に定期的に現在の時刻を記憶する時刻記憶部(RAM63の保持エリア)と、前記起動処理が実行される場合に現在の時刻を取得する時刻取得部(CPU61にて起動時の時刻を取得する機能)と、前記時刻記憶部に記憶されている時刻と前記時刻取得部が取得した時刻とに基づいて前記オフ時間を特定する特徴3乃至特徴5のいずれか1つに記載の空調コントローラ。
【0102】
本特徴に示すように、定期的に現在の時刻を記憶する構成とすれば、空調コントローラの電源がオフとなるタイミングにて時刻を保存しなくても大まかなオフ時間を推定可能となる。これは、電源オフ時の処理の簡素化を図る上で好ましい。また、コンデンサ等を用いて電源オフのタイミングを意図的に遅延させるといった構成も不要であり、空調コントローラに係る電気的構成の簡素化を図る上で好ましい。
【0103】
なお、時刻記憶部は、周期的に現在の時刻を記憶する構成とし、その周期を基準時間よりも短い時間とするとよい。
【0104】
特徴7.外部電源から前記空調コントローラへの電力供給を監視する監視部(電源ライン監視回路)を備え、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも長く且つ前記監視部により前記起動処理の前に前記電力供給が遮断されたと判定された場合には、前記切替回避条件不成立として前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短く且つ前記監視部により前記起動処理の前に前記電力供給が遮断されていないと判定された場合には、前記切替回避条件成立として前記接点部を起動前の状態のままとする特徴3乃至特徴6のいずれか1つ記載の空調コントローラ。
【0105】
空調コントローラの設置又は移設等の施工時にはオフ時間が長くなりやすく且つ外部電源からの電力供給についても一旦は遮断されるものと想定される。そこで、これら2つの要件が成立している場合に接点部を所定の状態とすることにより、空調装置の不意の動作を回避する効果を好適に発揮させることができる。また、空調コントローラをアップデートや異常状態の回復を契機として再起動させる場合には、オフ時間が0又は僅か且つ電力供給は遮断されない。そこで、これら2つの要件が成立している場合に接点部をそのままの状態に維持することにより、上記衝突音の発生を抑制する効果を好適に発揮させることができる。
【0106】
特徴8.可動端子(可動端子74)及び固定端子(固定端子73)が設けられた接点部(接点部75)と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイル(コイル76,77)とを有するメカニカルリレー(リレーユニット71)を備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置(空調装置40)に制御信号を伝送する空調コントローラ(空調コントローラ50)であって、
前記空調コントローラの起動条件(外部電源からの電力供給の開始)又は再起動条件(アップデートや異常等)が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部(CPU61にて起動処理を実行する機能)と、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態(初期状態)を含む複数の状態に切り替える切替部(CPU61におけるリレーユニット71の切替機能)と
を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、
外部電源から前記空調コントローラへの電力供給を監視する監視部(電源ライン監視回路)を備え、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記監視部により当該起動処理の前に前記電力供給が遮断されていたと判定された場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記監視部により当該起動処理の前に前記電力供給が遮断されていないと判定された場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【0107】
本特徴に示す構成によれば、特徴1に示した構成と同様に、空調設備に対する信頼性の向上等に寄与できる。また、空調コントローラの設置又は移設等の施工時には外部電源からの電力供給についても一旦は遮断される。そこで、電力供給が遮断された場合には接点部を所定の状態とすることにより、空調装置が突如として動作することを回避する効果を好適に発揮させることができる。また、空調コントローラをアップデートや異常状態の回復を契機として再起動させる場合には電力供給は遮断されない。そこで、電力供給が遮断されていない場合には接点部をそのままの状態に維持することにより、上記衝突音の発生を抑制する効果を好適に発揮させることができる。
【0108】
特徴9.前記空調コントローラに記憶されているプログラムをアップデートするアップデート実行部(CPU61にてアップデート処理を実行する機能)と、
前記アップデート実行部により前記アップデートが実行される場合に、当該アップデートが実行される旨を示すアップデート情報(アップデートフラグ)を記憶する情報記憶部(RAM63の保持エリア)と
を備え、
前記アップデートに際して前記再起動条件が成立し、前記情報記憶部は前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される前に前記アップデート情報を記憶する構成となっており、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも長く且つ前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されていない場合には、前記切替回避条件不成立として前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記時間特定部により特定された前記オフ時間が前記基準時間よりも短く且つ前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されている場合には、前記切替回避条件成立として前記接点部を起動前の状態のままとする特徴3乃至特徴5のいずれか1つに記載の空調コントローラ。
【0109】
空調コントローラにてプログラムのアップデートが実行される際には、当該空調コントローラが再起動される。アップデートを実行する場合には、起動処理が実行される前(例えば空調コントローラのシャットダウン前)にアップデートが実行される旨を示すアップデート情報が記憶される。オフ時間>基準時間であり且つアップデート情報が記憶されていない場合には、接点部を所定の状態とすることにより、空調装置が突如として動作することを回避する効果を好適に発揮させることができる。一方、オフ時間<基準時間であり且つアップデート情報が記憶されている場合には、接点部をそのままの状態に維持することにより、上記衝突音の発生を抑制する効果を好適に発揮させることができる。
【0110】
特徴10.可動端子(可動端子74)及び固定端子(固定端子73)が設けられた接点部(接点部75)と、前記可動端子を前記固定端子に接触する位置及び接触しない位置に変位させる駆動コイル(コイル76,77)とを有するメカニカルリレー(リレーユニット71)を備え、前記メカニカルリレーを通じて空調装置(空調装置40)に制御信号を伝送する空調コントローラ(空調コントローラ50)であって、
前記空調コントローラの起動条件(外部電源からの電力供給の開始)又は再起動条件(アップデートや異常等)が成立した場合に前記空調コントローラの起動処理を実行する起動処理実行部(CPU61にて起動処理を実行する機能)と、
前記駆動コイルを通電させることにより、前記接点部の状態を、前記空調装置を運転停止とする停止用の制御信号に対応した所定の状態(初期状態)を含む複数の状態に切り替える切替部(CPU61におけるリレーユニット71の切替機能)と
を備え、
前記メカニカルリレーは、前記駆動コイルの通電によって変位した前記可動端子を通電終了後も変位後の位置に保持可能となっており、
前記空調コントローラに記憶されているプログラムをアップデートするアップデート実行部(CPU61にてアップデート処理を実行する機能)と、
前記アップデート実行部により前記アップデートが実行される場合に、当該アップデートが実行される旨を示すアップデート情報(アップデートフラグ)を記憶する情報記憶部(RAM63の保持エリア)と
を備え、
前記アップデートに際して前記再起動条件が成立し、前記情報記憶部は前記起動処理実行部により前記起動処理が実行される前に前記アップデート情報を記憶する構成となっており、
前記切替部は、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されていない場合には、前記接点部を前記所定の状態とする一方、前記起動処理実行部による前記起動処理の実行に際し、前記情報記憶部に前記アップデート情報が記憶されている場合には、前記接点部を起動前の状態のままとする空調コントローラ。
【0111】
本特徴に示す構成によれば、特徴1に示した構成と同様に、空調設備に対する信頼性の向上等に寄与できる。また、空調コントローラにてプログラムのアップデートが実行される際には、当該空調コントローラが再起動される。アップデートを実行する場合には、起動処理が実行される前(例えば空調コントローラのシャットダウン前)にアップデートが実行される旨を示すアップデート情報が記憶される。アップデート情報が記憶されていない場合には、接点部を所定の状態とすることにより、空調装置が突如として動作することを回避する効果を好適に発揮させることができる。一方、アップデート情報が記憶されている場合には、接点部をそのままの状態に維持することにより、上記衝突音の発生を抑制する効果を好適に発揮させることができる。
【0112】
特徴11.前記メカニカルリレーには、前記駆動コイルの通電により前記接触しない位置に変位した前記可動端子に当接することで、当該可動端子のそれ以上の変位を阻止するストッパ(ストッパ78)が設けられている特徴1乃至特徴10のいずれか1つに記載の空調コントローラ。
【0113】
上記接触しない位置へ変位した可動端子に当接するストッパが設けられている場合には、可動端子とストッパとが当たった際に衝突音(クリック音)が発生し得る。このような構成に対して、特徴1等に示した各種技術的思想を適用することにより、衝突音の発生機会を好適に減らすことができる。
【0114】
特徴12.特徴1乃至特徴11のいずれか1つに記載の空調コントローラと当該空調コントローラによって制御される前記空調装置とを備えている空調設備。
【0115】
本特徴に示す空調設備によれば、空調設備に対する信頼性の向上及び耳障りな作動音の抑制を図り、ユーザの満足度の向上に寄与できる。
【符号の説明】
【0116】
30…空調設備、40…空調装置、50…空調コントローラ、61…CPU、63…RAM、64…RTC、65…I/O、71…リレーユニット、73…固定端子、74…可動端子、75…接点部、76…セットコイル、77…リセットコイル、78…ストッパ、R1~R8…リレー。