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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067658
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】身体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20230509BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230509BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/36
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179092
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】杉本 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】森川 稔之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC711
4C083AC712
4C083BB05
4C083BB07
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洗い上がりのツッパリ感を抑制または解消することができ、硬水使用時においても良好な泡立ちが得られ、さらに温暖や寒冷条件下のいずれにおいても心地よさを感じられる適度な泡弾力を付与することができる身体洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】(a)成分:式(1)で表されるN-アシルアミノ酸系界面活性剤を1~20質量%、(b)成分:炭素数8~22の脂肪酸塩を5~50質量%、(c)成分:式(2)で表される両性界面活性剤を1~20質量%含有する身体洗浄剤組成物。

(例えば、N-ラウロイル-N-ヒドロキシエチル-β-アラニンナトリウム等)

(例えば、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:式(1)で表されるN-アシルアミノ酸系界面活性剤を1~20質量%、
(b)成分:炭素数8~22の脂肪酸塩を5~50質量%、
(c)成分:式(2)で表される両性界面活性剤を1~20質量%含有する身体洗浄剤組成物。

【化1】
(式(1)中、RCOは炭素数8~22の脂肪酸アシル基を示し、Rは単結合または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示し、Rは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示し、Mはアルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子、有機アンモニウムまたはアミノ酸塩を示す。)

【化2】
(式(2)中、Rは炭素数8~22のアルキル基または炭素数8~22のアルケニル基を示し、RおよびRは各々独立してメチル基またはエチル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料などの身体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
身体洗浄剤組成物は、汚れを除去する洗浄力はもちろんのこと、泡も重要視されるものである。例えば、キメ細かく濃密な泡は、肌を擦る際に肌と手やタオルなどとの間の緩衝材となって肌への摩擦を軽減する効果があり、またキメ細かい泡が毛穴から汚れを掻き出し易くするので、洗浄力が増すなどの効果が期待できる。これらの背景から、身体洗浄剤組成物に配合される洗浄成分としては、良好な泡質(特にキメが細かく濃密な泡)が速く得られやすい点で、脂肪酸塩が汎用されている。
しかしながら、脂肪酸塩は洗浄力が高い反面、肌の保湿成分も取り除いてしまうことで、肌荒れやツッパリ感を引き起こすといった問題点がある。
【0003】
このような問題点を解決する手段として、脂肪酸塩に様々な化合物を組み合わせる試みがなされている。例えば、特許文献1では、脂肪酸塩に親水性コポリマーを組み合わせた皮膚洗浄料が開示されており、本洗浄料は洗い上がり後のツッパリ感を抑制している。また特許文献2では、脂肪酸塩にN-長鎖アシル酸性アミノ酸アルギニン塩を組み合わせた皮膚洗浄剤組成物が開示されており、本組成物は肌のうるおい成分が奪われずにしっとりと洗い上がり、ツッパリ感を抑制している。
【0004】
しかし、このN-長鎖アシル酸性アミノ酸アルギニン塩のようなN-長鎖アシル酸性アミノ酸型陰イオン界面活性剤は、肌への負担は減らせるものの、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの金属イオンが含まれる硬水使用時において、脂肪酸やN-長鎖アシル酸性アミノ酸型陰イオン界面活性剤がこれらの金属イオンと塩を形成するので、泡立ちや泡質が低下する問題がある。
そこで、特許文献3では、特定のアシルアミノ酸系陰イオン界面活性剤を用いることによって、硬水使用時においても良好な泡立ちが得られることが示されている。
【0005】
一方で、洗浄剤の泡に対して消費者が求める性能は多くなってきている。例えば、速く豊富な泡を得ることはもちろんのこと、クッション泡と称されるように弾力(コシ)のある泡は塗布面をやさしく包み込むことで心地よい感触を感じさせるので重要視されているが、上述した洗浄剤組成物では、特定環境下において泡弾力で劣ることがあった。例えば、夏場の浴室などのような温暖条件で泡立てた場合に、泡弾力が失われてスカスカした泡となってしまい、心地よさを感じにくいことがある。反対に、寒冷地などのような寒冷条件で泡立てた場合に、脂肪酸塩の水への溶解性が低下した結果、塗布面においてアシルアミノ酸系陰イオン界面活性剤の滑りが低下することにより、ネバつきのように感じられ、心地よさを感じにくくなることがある。
したがって、洗い上がり後にツッパリ感がなく、泡立ちも良好であり、温暖・寒冷条件下においても心地よさが感じられる適度な泡弾力を有する身体洗浄剤組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-216427号公報
【特許文献2】特開2008-94725号公報
【特許文献3】特開2016-190812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、洗い上がりのツッパリ感を抑制または解消することができ、硬水使用時においても良好な泡立ちが得られ、さらに温暖や寒冷条件下のいずれにおいても心地よさを感じられる適度な泡弾力を付与することができる身体洗浄剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、脂肪酸塩を含有する身体洗浄剤組成物において、特定のアシルアミノ酸系陰イオン界面活性剤と特定の両性界面活性剤とをそれぞれ所定量含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(a)成分:式(1)で表されるN-アシルアミノ酸系界面活性剤を1~20質量%、(b)成分:炭素数8~22の脂肪酸塩を5~50質量%、(c)成分:式(2)で表される両性界面活性剤を1~20質量%含有する身体洗浄剤組成物である。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、RCOは炭素数8~22の脂肪酸アシル基を示し、Rは単結合または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示し、Rは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示し、Mはアルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子、有機アンモニウムまたはアミノ酸塩を示す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式(2)中、Rは炭素数8~22のアルキル基または炭素数8~22のアルケニル基を示し、RおよびRは各々独立してメチル基またはエチル基を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の身体洗浄剤組成物によれば、洗い上がりのツッパリ感を抑制または解消することができ、硬水使用時においても良好な泡立ちが得られ、さらに温暖や寒冷条件下のいずれにおいても心地よさを感じられる適度な泡弾力を付与することができる。
なお、本発明における「身体洗浄剤組成物」は、人体における各部、具体的には顔面を含む頭部、頚部、胴部、腕部および脚部における体表面を洗浄するための洗浄剤組成物を表し、毛髪を含む全身を洗浄するための全身洗浄剤組成物も概念的に包含する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は2以上かつ4以下を表す。
【0016】
本発明の身体洗浄剤組成物は、下記(a)成分、(b)成分および(c)成分を少なくとも含有する。まず(a)成分から順次説明する。
【0017】
〔(a)成分〕
本発明に用いられる(a)成分は、下記式(1)で表される界面活性剤である。
【0018】
【化1】
【0019】
式(1)中のRCOは炭素数8~22の脂肪族アシル基を示す。
脂肪族アシル基としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸を由来とするアシル基のみならず、これら脂肪酸の二種以上を含む混合脂肪酸由来のアシル基が含まれる。例えば、オクタノイル基(カプリロイル基)、ノナノイル基(ペラルゴニル基)、デカノイル基(カプロイル基)、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、エイコサノイル基、オレオイル基、リノレノイル基、リノレオイル基、アラキジノイル基、ベヘノイル基などが挙げられる。また、これらアシル基の2種以上が混合したものでもよく、例えば、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基、パーム油脂肪酸アシル基などの混合アシル基が挙げられる。好ましくは、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基であり、より好ましくは、ラウロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基である。
【0020】
式(1)中のRは単結合または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示す。
としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などが挙げられ、好ましくはエチレン基、n-プロピレン基である。すなわち、式(1)中のROHとしては、例えば、モノヒドロキシエチル基、モノヒドロキシプロピル基、モノヒドロキシイソプロピル基、モノヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基などが挙げられ、好ましくは、モノヒドロキシエチル基、モノヒドロキシプロピル基である。
【0021】
式(1)中のRは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。
としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などが挙げられ、好ましくは、エチレン基、n-プロピレン基である。すなわち、RCOOHは、例えば、モノカルボキシメチレン基、モノカルボキシエチレン基、モノカルボキシプロピレン基、モノカルボキシイソプロピレン基、モノカルボキシブチレン基、モノカルボキシイソブチレン基などが挙げられ、好ましくは、モノカルボキシエチレン基である。
【0022】
式(1)中のMは、アルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子、有機アンモニウムまたはアミノ酸塩を示す。
アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。なお、1/2アルカリ土類金属原子における1/2は対イオンとしてのカチオン等価物となるための係数を表す。
有機アンモニウムとしては、例えば、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムなどが挙げられる。
アミノ酸塩は、例えば、アミノ酸とアルカリ金属、アミノ酸と1/2アルカリ土類金属、またはアミノ酸と有機アミンとでそれぞれ形成される塩であり、N-アシルアミノ酸の対イオンとして作用する。アミノ酸塩を形成するアミノ酸としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、チロシン、N-メチルグリシン、N-メチル-β-アラニン、N-(2-ヒドロキシエチル)-β-アラニン、タウリン、メチルタウリンなどが挙げられる。アミノ酸塩を形成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、上記で例示したものが挙げられる。アミノ酸塩を形成する有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
なお、本発明における「有機アンモニウム」は、アミノ酸と有機アミンとで形成されたアミノ酸アンモニウムを概念的に含まないものとする。
として好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、トリエタノールアンモニウムであり、より好ましくは、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアンモニウムである。
【0023】
式(1)で表される界面活性剤の具体例としては、例えば、N-ラウロイル-N-ヒドロキシエチルアラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-ヒドロキシエチルアラニントリエタノールアミン、N-ラウロイル-N-ヒドロキシプロピルアラニントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-ヒドロキシエチルアラニンナトリウムなどが挙げられる。
本発明において(a)成分は、上記式(1)で包含される化合物のうち一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0024】
(a)成分の含有量は、身体洗浄剤組成物に対して、1~20質量%であり、好ましくは3~15質量%であり、より好ましくは5~10質量%である。(a)成分の含有量が少なすぎる場合には、肌のツッパリ感を抑制できなかったり、洗浄時の泡立ちや泡の弾力(コシ)が不十分となったりすることがある。(a)成分の含有量が多すぎる場合には、塗布面においてネバつきのように感じられ、心地よさを感じにくくなることがある。
なお、式(1)で表される界面活性剤の複数種を併用する場合には、これら複数種の含有量の総量が上記の範囲であればよい。
【0025】
〔(b)成分〕
本発明に用いられる(b)成分は、炭素数8~22の脂肪酸塩である。
脂肪酸塩を形成する脂肪酸の炭素数は、10~20が好ましく、12~18がより好ましい。炭素数8~22の脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、脂肪酸の混合物である混合脂肪酸を用いることができ、かかる混合脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸などが挙げられる。炭素数8~22の脂肪酸として好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸であり、より好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。
また、脂肪酸塩を形成する対イオンとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミンであり、より好ましくはカリウムである。
(b)成分の好ましい具体例としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。
本発明において(b)成分は、上記脂肪酸と対イオンとの組み合わせからなる脂肪酸塩のうち一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0026】
(b)成分の含有量は、身体洗浄剤組成物に対して、5~50質量%であり、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは5~10質量%である。(b)成分の含有量が少なすぎる場合には、泡立ちが不十分になることがあり、(b)成分の含有量が多すぎる場合には、肌にツッパリ感が生じ、また寒冷時において固形物が析出しやすく、望むような剤形の調製や機能発現が困難になることがある。
なお、(b)成分の複数種を併用する場合には、これら複数種の含有量の総量が上記の範囲であればよい。
【0027】
〔(c)成分〕
本発明に用いられる(c)成分は、下記式(2)で表される両性界面活性剤、すなわちアルキルヒドロキシスルホベタイン型両性界面活性剤である。
【0028】
【化2】
【0029】
式(2)中のRは炭素数8~22のアルキル基または炭素数8~22のアルケニル基を示す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は8~18であることが好ましい。アルキル基およびアルケニル基は直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、飽和化合物または不飽和化合物を由来とするアルキル基またはアルケニル基のみならず、これら化合物の二種以上を含む混合化合物由来のアルキル基またはアルケニル基、例えば混合油脂由来のアルキル基またはアルケニル基が含まれる。
飽和化合物または不飽和化合物を由来とするアルキル基またはアルケニル基としては、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、アラキジル基、ベヘニル基が挙げられる。また、混合油脂由来のアルキル基またはアルケニル基としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アルキル基、パーム核油脂肪酸アルキル基、牛脂脂肪酸アルキル基などが挙げられる。好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、ヤシ油脂肪酸アルキル基、パーム核油脂肪酸アルキル基である。
【0030】
式(2)中のRおよびRは各々独立してメチル基またはエチル基を示し、好ましくはRおよびRのいずれもがメチル基である。
【0031】
式(2)で表されるアルキルヒドロキシスルホベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ココヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
本発明において(c)成分は、上記式(2)で包含される化合物のうち一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0032】
(c)成分の含有量は、身体洗浄剤組成物に対して、1~20質量%であり、好ましくは3~15質量%であり、より好ましくは5~10質量%である。(c)成分の含有量が少なくすぎる場合には、洗浄時の泡立ちや泡の弾力(コシ)が不十分となることがあり、(c)成分の含有量が多すぎる場合には、肌表面に両性界面活性剤に由来する、ぬるつき感が生じやすくなることがある。
なお、式(2)で表される両性界面活性剤の複数種を併用する場合には、これら複数種の含有量の総量が上記の範囲であればよい。
【0033】
本発明の身体洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分および(c)成分を少なくとも含有し、更に水などの溶剤を含有する。
水などの溶剤の含有量は、身体洗浄剤組成物に対して、通常、10~93質量%であり、好ましくは40~90質量%であり、より好ましくは60~85質量%である。
【0034】
本発明の身体洗浄剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の界面活性剤や保湿剤、油分、水溶性高分子、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤など、毛髪や身体の洗浄剤に一般的に用いられている各種の任意成分を含有していてもよい。
他の界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤(但し、(a)および(b)成分を除く。)、両性界面活性剤(但し、(c)成分を除く。)、非イオン性界面活性剤が挙げられるが、中でも非イオン性界面活性剤を含有させることが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンパルミチン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル類;グリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリンラウリン酸エステル;ポリグリセリンラウリルエーテル;ショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル類;ラウレス-4などのポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ラウリン酸PEG-4やPEG-7グリセリルココエートなどのポリオキシアルキレンエステル類;さらに、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどのアルキロールアミド類などが挙げられる。
【0035】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、ソルビトールなどが挙げられる。
油分としては、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、ワセリンなどの炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピルなどのエステル油;ジメチルポリシロキサンなどのストレートシリコーンオイルやポリエーテル基、アミノ基、脂肪酸アミド基などが導入された変性シリコーンオイルなどのシリコーン油などが挙げられる。
水溶性高分子としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、キサンタンガムなどの非イオン性高分子;カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、アラビアガムなどの陰イオン性高分子;カチオン性デンプン;塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7)、カチオン化セルロース(ポリクオタニウム-10)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22)、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-39)などの陽イオン性高分子などが挙げられる。
防腐剤および殺菌剤としては、例えば、安息香酸またはその塩、パラオキシ安息香酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどのパラベン類、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどの有機酸およびその塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0036】
本発明の身体洗浄剤組成物がその他の任意成分を含有する場合、その含有量は、身体洗浄剤組成物に対して、通常、20質量%以下であり、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは1~10質量%である。
なお、本発明の身体洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分および溶剤の総含有量が、通常、80~100質量%であり、好ましくは85~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%である。
また、(b)成分の含有量に対する(a)成分の含有量の比を(a)成分/(b)成分と定義したとき、ツッパリ感の抑制効果の観点から、(a)成分/(b)成分の値は0.4~4.0が好ましく、より好ましくは0.6~2.0である。
さらに、(b)成分の含有量に対する(a)成分および(c)成分の合計含有量の比を((a)成分+(c)成分)/(b)成分と定義したとき、寒冷時の泡のべたつきを抑制する観点から、((a)成分+(c)成分)/(b)成分の値は1.4~3.2が好ましく、より好ましくは1.6~2.4である。
【0037】
本発明の身体洗浄剤組成物は、通常の方法に従って製造することができる。例えば、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分、必要に応じてその他の任意成分、および水を混合し、組成物の全量が100質量%となるように水で調整することにより本発明の身体洗浄剤組成物が得られる。
【実施例0038】
次に、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0039】
[実施例1~7および比較例1~6]
<身体洗浄剤組成物の調製>
表1、2に記載の各成分を水に添加し、これらを混合して均一にした後、水で全量を100質量%に調整して、実施例1~7および比較例1~6の身体洗浄剤組成物を調製した。
なお、表1、2中の各成分としては、化粧品用として提供されている市販の製品を用いた。表1、2中の各成分の含有量は質量%にて示す。各成分の配合量は配合した製品中に含まれる有効成分(目的成分)または固形分の含有量から換算した値である。
【0040】
実施例および比較例で得られた身体洗浄剤組成物を試料として、下記のとおり評価を行った。表1、2中の各評価結果に併記した数値は、それぞれにおいて得られた評価結果または平均点を示す。
【0041】
<身体洗浄剤組成物の評価>
(1)ツッパリ感の抑制
20名の男女(24~40才)をパネラーとし、試料5gを手に取り、硬度が150で40℃の湯水を用いて手を洗い、洗った後に手を数回振って水気を切った後の肌のツッパリ感を評価した。ツッパリ感がないと感じた場合を2点、ツッパリ感をやや感じた場合を1点、ツッパリ感を感じた場合を0点として20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上;ツッパリ感を全く感じない。
○:合計点が30点以上、35点未満;ツッパリ感を感じない。
△:合計点が20点以上、30点未満;わずかにツッパリ感を感じる。
×:合計点が20点未満;ツッパリ感を強く感じる。
【0042】
(2)泡立ち
20名の男女(24~40才)をパネラーとし、試料5gを手に取り、硬度が150で40℃の湯水を用いて泡立てた時の泡立ちを評価した。泡立ちが良好と感じた場合を2点、泡立ちがやや良いと感じた場合を1点、泡立ちが悪いと感じた場合を0点として20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上;泡立ちが非常に良好である。
○:合計点が30点以上、35点未満;泡立ちが良好である。
△:合計点が20点以上、30点未満;泡立ちがあまり良くない。
×:合計点が20点未満;泡立ちが悪い。
【0043】
(3)温暖時の泡弾力
試料3gを市販の泡立て器に入れ、そこへ硬度が150で40℃の湯水10gを用いて泡立てた。なお、泡立て器は、円筒形の容器と、前記容器内を上下に移動することができ、かつ中央に穴が開いた蓋とを有する器具であり、前記容器内に試料(液体)を入れ、前記蓋を上下運動させることにより泡立たせることができる。
(株)アントンパール・ジャパン製のレオメータ(MCR302)を使用して、上記の泡を測定用試料としてプレート上に準備し、プレート温度40℃、角振動数7(rad/s)、振動角度90°の条件で、測定開始から60秒後における貯蔵弾性率G’(Pa)の数値を読み取ることで泡弾力を評価した。なお、測定回数は3回であり、その平均値を算出した。
◎:G’値が0.30Pa以上;弾力に優れ、良好な心地よさを感じる泡である。
○:G’値が0.20Pa以上、0.30Pa未満;弾力があり、心地よさを感じる泡である。
△:G’値が0.10Pa以上、0.20Pa未満;弾力があまりなく、心地よさを感じにくい泡である。
×:G’値が0.10Pa未満;弾力がなく、心地よさを感じない泡である。
【0044】
(4)寒冷時の泡弾力
試料3gを上記の泡立て器に入れ、そこへ硬度が150で5℃の冷水10gを用いて泡立てた。(株)トリニティーラボ製の静動摩擦測定器(TL201Tt)を使用して、上記の泡を速やかに人工皮革上に約1mL置き、触覚センサーで泡を押さえ、垂直荷重50gの条件で、静摩擦係数(μ)の数値を読み取ることで泡のネバつき感を評価した。なお、測定回数は3回であり、その平均値を算出した。
◎:μ値が0.30未満;初動に対する抵抗が少ないので、泡がその場に留まろうとするネバつきを感じさせない。即ち、良好に心地よい感触を肌に付与する泡である。
○:μ値が0.30以上、0.45未満;初動に対する抵抗がやや少ないので、泡がその場に留まろうとするネバつきをあまり感じさせない。即ち、心地よい感触を肌に付与する泡である。
△:μ値が0.45以上、0.60未満;初動に対する抵抗がやや多いので、泡がその場に留まろうとするネバつきを少し感じさせる。即ち、やや不快な感触を肌に付与する泡である。
×:μ値が0.60以上;初動に対する抵抗が非常に多いので、泡がその場に留まろうとするネバつきを強く感じさせる。即ち、不快な感触を肌に付与する泡である。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1~7はいずれの項目においても良好な評価であった。
一方、比較例1は、ツッパリ感は感じられなかったものの、(b)成分の含有量が少ないため、泡立ちが不十分であり、また寒冷時の泡の感触も十分ではなかった。
比較例2は、(a)成分の代わりに(a’)成分としてN-アシルアミノ酸系界面活性剤であるN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウムが含まれているので、(a)成分と(c)成分の相乗効果が発揮されなかったことで、温暖時および寒冷時の泡の弾力性が不十分であった。
比較例3は、(a)成分の代わりに(a’)成分としてN-アシルアミノ酸系界面活性剤であるN-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウムが含まれているので、(a)成分と(c)成分の相乗効果が発揮されなかったことで、比較例2と同様に、温暖時および寒冷時の泡の弾力性が不十分であった。また、泡立ちもあまり良くなかった。
【0048】
比較例4は、(a)成分と(b)成分が含まれているが、(c)成分の代わりに(c’)成分として両性界面活性剤であるヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが含まれているので、(a)成分と(c)成分の相乗効果が発揮されなかったことで、温暖時および寒冷時の泡の弾力性が不十分であった。
比較例5は、(b)成分と(c)成分が含まれているが、(a)成分が含まれていないため、ツッパリ感の抑制が不十分であり、また(b)成分の可溶化力が低下することによる析出が生じて泡立ちも不十分であった。更に、(a)成分と(c)成分の相乗効果が発揮されなかったことで、温暖時および寒冷時の泡の弾力性も不十分であった。
比較例6は、(c)成分が含まれていないため、(a)成分と(c)成分の相乗効果が発揮されなかったことで、温暖時および寒冷時の泡の弾力性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の身体洗浄剤組成物は、身体の洗浄を目的とするものであれば、液状、ゲル状等の使用形態は限定されず、例えば、ボディーシャンプー、洗顔料、ハンドソープとして用いることができる。