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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067666
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】背広又は背広型衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/28 20060101AFI20230509BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20230509BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20230509BHJP
   A41D 1/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A41D27/28 D
A41D13/002 105
A41D1/00 E
A41D1/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021190544
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】518451932
【氏名又は名称】株式会社サワダSMJ
(71)【出願人】
【識別番号】521512033
【氏名又は名称】株式会社tatamass
(71)【出願人】
【識別番号】521277143
【氏名又は名称】ダブルフェイスKHI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521277132
【氏名又は名称】村松 優太
(72)【発明者】
【氏名】澤田 正和
【テーマコード(参考)】
3B011
3B030
3B031
3B035
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA09
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC18
3B030AA04
3B030AB08
3B031AA07
3B031AB06
3B031AC04
3B035AA09
3B035AA19
3B035AA23
3B035AB03
3B035AB05
3B035AC18
3B035AD14
3B035AD16
(57)【要約】
【課題】 本発明は、背広又は背広型衣服においてエクリン腺の密度が高い腋窩箇所から発生する汗を軽減せしめ、腋窩を冷却することにより真夏の屋外勤務に役立てたせることを目的とする。
【解決手段】 本発明は、背広又は背広型衣服において、アームホール部に、シームファスナーを用いた第1開放部とメッシュ素材を用いた第2開放部を設け、第2開放部周辺部の裏地に伸止め部材を設ける。本発明では、第1開放部のシームファスナーを開放せしめることにより通風通気性を開始し、また、シームファスナーにより開放部が外部から目立つこともないように、このような2箇所の開放部と伸止め部材を設けることにより、適切な開放幅を有するベンチレーションシステムと好ましくは送風システムの同時冷却機能効果を実現できる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地を有する袖部と胴体部が縫製されたアームホールに、前記表地の非縫製部に囲まれた第1の開放部と前記裏地の非縫製部に囲まれた第2の開放部とを設け、前記第1の開放部周辺部の表地に前記第1の開放部を覆うシームファスナーが縫合され、前記第2の開放部にこの第2開放部を覆うメッシュ素材を設け、前記第2の開放部周辺部の裏地に伸止め部材を設け、前記シームファスナーで前記第1の開放部の開閉・閉鎖を行い、前記伸止め部材で前記第2の開放部の広がりを防止することを特徴とする背広又は背広型衣服。
【請求項2】
表地内袖縫い目の縫い止めと表地前脇縫い目の縫い止め間に第1の開放部を形成し、裏地内袖縫い目の縫い止めと裏地前脇縫い目の縫い止め間に第2の開放部を形成してなることを特徴とする請求項第1記載の背広又は背広型衣服。
【請求項3】
伸び止め部材の一方及び他方の端部が第2の開放部周辺の幅広部の両側に固定されてなることを特徴とする請求項1又は3記載の背広又は背広型衣服。
【請求項4】
胴部内に、送風機構を設置し、前記送風機構から第1および第2の開放部に送風することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の背広又は背広型衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背広又は背広型衣服に関し、人体におけるエクリン腺の密度が高い腋窩から発汗される汗の脇部への浸み出しを減少させる背広又は背広型衣服を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
夏季の屋外気温上昇における、背広又は背広型衣服を着用した状態で、通勤通学、銀行員、訪問営業、物品搬入を伴う外勤業務、葬祭参列時等において、腋窩より発汗する汗の脇部箇所への浸みだし18(図9のbに示す)は避けることができない不快感を伴う状態であった。脇汗パッドなどを装着するも、廃棄交換の必要があることから、脇部箇所発汗に対してあまり防止効果を得られず、廃棄交換の必要がないベンチレーションシステムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“https://www.roomle.jp/2020/02/592149/“「ワークマンイージススノー防水防寒ジャケット」株式会社ワークマン
【0004】
【特許文献1】実登3086049号広報
【0005】
【特許文献2】実公平1-18579号広報
【0006】
ワークマン(株)において市販されている非特許文献1のジャケットは[不快なムレを逃す、脇ベンチレーション]として裏地全体にメッシュ部材を使い、設置箇所が目立つファスナーによる開放部が設けられている。
作業服、キルテイングの冷却効果や着脱効果を高める工夫[脇部に網地開閉・開放部を設けファスナーで開閉する構成]は、たとえば特許文献1、2、に提案されている。非特許文献の改良ではファスナー設置箇所が目立ち、生地とファスナー設置形状は背広に適さない。また、特許文献においても、衣服の両脇部、上着がズボンと一体型の両脇部、ラグラン袖両脇部にファスナーが用いられており、背広又は背広型衣服の脇部に用いる場合、目立つファスナーは衣服デザインとして違和感がある。特に上半身において脇部は、最も羞恥を感じる箇所であり好ましいものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術によれば、ベンチレーションとしての機能およびファスナー形状では不十分である。背広又は背広型衣服において、裏地全部をメッシュとする開放部のファスナーを全開にして、作業動作を行うことを考えた場合、開放部のファスナー箇所が際限なく両脇に広がり、さらに開放部のメッシュ裏地素材も同時に両脇に広がる。またメッシュ素材がストレッチ性を有するために開放部から外部へ飛び出すこともあり不都合が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表地と裏地を有する袖部と胴体部が縫製されたアームホールに、前記表地の非縫製部に囲まれた第1の開放部と前記裏地の非縫製部に囲まれた第2の開放部とを設け、前記第1の開放部周辺部の表地に前記第1の開放部を覆うシームファスナーが縫合され、前記第2の開放部にこの第2開放部を覆うメッシュ素材を設け、前記第2の開放部周辺部の裏地に伸止め部材を設け、前記シームファスナーで前記第2の開放部の開閉・閉鎖を行い、前記伸止め部材で前記第2の開放部の広がりを防止することを特徴とする背広又は背広型衣服を提供する。また、本発明は、上記衣服において、表地内袖縫い目の縫い止めと表地前脇縫い目の縫い止め間に第1の開放部を形成し、裏地内袖縫い目の縫い止めと裏地前脇縫い目の縫い止め間に第2の開放部を形成してなることを特徴とする。さらに、本発明は、上記衣服において、伸び止め部材の一方及び他方の端部が、第2の開放部周辺部の幅広部の両側に固定されてなることを特徴とする。また、本発明は、上記衣服において、胴部内に、送風機を設置し、前記送風機構から第1および第2の開放部に送風することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明において、2箇所の開放部を用いたベンチレーションを機能させる場合、アームホール第1開放部に設置したシームファスナーの引き手ジップトップを下部縫止めまで下げることによりベンチレーション第1開放部が開口する。また、第2開放部に設置したメッシュは、第1開放部のシームファスナー開口により通気性・通風性が復活し、背広又は背広型衣服を着用しての通勤通学時および銀行員、一般営業員等による外勤業務、物品搬入を伴う外勤業務、葬祭参列時における正装着の着用等で、劣悪な熱中環境において腋窩箇所の発汗を抑制し、清潔環境を整えることに役立つ。更に、本発明によれば、第2開放部周辺の裏地に設けた伸止め部材により、開放部の開放幅を適切に調整することができる。また、腋窩への冷却効果を促進せしめるため胴部内に送風機構を設置し、蓄電池を備えた軽量送風機をポケットに収納し、簡易スイッチにて始動することにより瞬時に送風が開始される。これらの送風機能復活により課題であった脇部箇所からの発汗による脇部箇所外部への浸みだしと汗臭が解消され快適な衣服装着状態が長く続き、更なる不快感解消に役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従来から背広の縫製工程はテーラード衿箇所部があるために、身頃部と袖部を個別に縫製をしてアームホール箇所部で縫合わせる工程があった。その際に脇部の接合箇所が多重になり縫製困難な状態になる。前記縫製困難を解決させるために多重縫製位置を1.5cm~2cmに振分移動させることにより前記縫製困難箇所が容易になった。17(図9のaに示すように)全ての背広または背広衣服の脇部にズレ17が構成されているのはこの為であり、これらの縫製仕様は200年前から背広に用いられ、現在に至るまで慣習継続されてきた。そのため背広の脇部と身頃部が一直線上で接合縫製された形状は存在していない。ジャンパーなどはテーラード衿部が存在せず、背広のアームホール脇部縫製のズレ形状がないため縫製工程を簡素化させることが可能になり、表地と裏地を同時に縫合わせすることが容易である。すなわちジャンバーなどでは、表地の身頃部と表地の袖部を一直線状に縫合わせ、裏地の身頃部と裏地の袖部を一直線上に縫合わせた状態を実施し、また全てのパーツを表地側と裏地側に設置し、表地側と裏地側を縫合わせる縫製工程において1箇所部に返し口穴を設け、どんでん仕様と総称されている裏返しすることにより、脇部と身頃部を容易に一直線で縫製することができる。しかるに、背広又は背広型衣服においてはテーラード衿部が存在するために前記どんでん(裏返し)仕様が不可である。本発明は、身頃脇箇所部と袖脇箇所部にシームファスナーを設置せしめることによりアームホール脇縫いズレ部を一直線上で縫製できることに着眼し、開閉、閉鎖を実施し通風通気性を有するベンチレーション装置として容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例の背広又は背広型衣服の脇部のアームホールにおける2箇所の開放部とシームファスナー閉鎖状態を示す模式図である。
図2】本発明の実施例の背広又は背広型衣服の脇部のアームホールにおける2箇所の開放部とシームファスナー開放状態を示す模式図である。
図3】本発明の実施例の背広又は背広型衣服の脇部における第1開放部シームファスナー閉鎖時の側面および裏側メッシュ透視図である。
図4】本発明の実施例の背広又は背広型衣服の脇部における第1開放部シームファスナー開放時の側面および裏側メッシュ透視図である。
図5】本発明の他の実施例の背広又は背広型衣服の脇部における第2開放部メッシュ素材のシームファスナー閉鎖時の裏側側面図である。
図6】本発明の他の実施例の背広又は背広型衣服の脇部における第2開放部メッシュ素材のシームファスナー開放時の裏側側面図で送風状態を表す図である。
図7】本発明の実施例の背広又は背広型衣服における第2開放部のメッシュ素材個所に設けた伸止めテープ部の拡大図である。
図8】通常の衣服およびジャケット等に用いるメタルファスナーまたは、ビスロンファスナーを示す図(a)、本発明の実施例の背広又は背広型衣服に用いる第1開放部のシームファスナーを示す図(b)である。
図9】従来依の背広又は背広型衣服における脇部のアームホールの側面図(a)、胴脇部の汗浸み出し状態図(b)である。
【0012】
本発明の、背広又は背広型衣服による2箇所のベンチレーション開放部を有する装置の有用性について説明する。たとえば2箇所の開放部を用いたベンチレーションを本発明に用いるシームファスナーを開放し、脇箇所部から発汗発熱がメッシュ素材をへて開放部を通過する場合、通風通気性が発生し脇部温度を冷却せしめる。このとき、伸び止め部材により、メッシュ素材の開放部の不要な広がりを防止し、適切な開放幅を得ることができる。また、実施例に示すように胴部に設置した送風機を電池駆動させることにより冷感機能を回復せしめ、背広または背広型衣服の装着時に、熱射による体感温度が上昇するも脇部冷却補完に役立つ。蓄電池は、送風機内の蓄電が時間の経過により消耗しても、再度、充電を実行し送風効果の継続が可能である。
【0013】
これまで、一般的に冷感素材を用いた背広または背広型衣服が[夏に涼しい]と称され販売されているが、着用状態において実際に持続性冷感効果はなく、涼しい背広、または背広型衣服と言えるのか甚だ疑問を生ずるものであった。また、裏地箇所部を省き[軽くて涼しい]と称するも着用状態において涼しくはなく、この程度の冷感効果では熱中環境の中で夏用衣服として不十分である。本発明によれば、脇部冷感効果を第1開放部に設けたシームファスナーを開放せしめ、第2開放部に設けたメッシュ素材と通風通気性を連動させることにより、ベンチレーション機構効果が発揮される。更に、送風機による脇部箇所への的確な送風効果により、容易に冷感持続効果を発生させる装置を提供する。
【実施例0014】
以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。背広の袖部と胴体部間に形成されるアームホール30において、表地の開放部3にシームファスナー31、裏地の開放部33に伸縮作用があり、空気が通過するメッシュ素材13を設ける。メッシュ素材13はその周辺にパイピングテープ11を接合し、テープ11を開放部33の内側に縫合して取り付けられる。開放部3は、表地6の非縫製部と表地内袖縫い目1の縫い止め21と表地前脇縫い目2の縫い止め22間に形成されている。シームファスナー31は、表地の袖部と前脇部の裁断箇所(表地開放部3の周辺生地部)の内側に形成された折り返し部分に縫合されており、内袖縫い目1、ファスナー31、前袖縫い目2が一体的かつ直線上に配置された図1の閉鎖状態が形成される。ジップトップ4を指で操作し、図2の開放状態を得ることができる。裏地開放部33は、夏用の背広又は背広型衣服に用いる背抜き仕様の後身頃裏側部の裏地14の非縫製部と裏地内袖縫い目9の縫い止め23と裏地前脇縫い目10の縫い止め24間に形成されている。伸び止めテープ12は図7に示すように、裏地開放部33の周辺の裏地に取り付けられ、開放部33におけるメッシュ素材の不要な伸びを抑制し、開放幅を適切に制御している。背広の袖部を上げた状態の外側を示す図3から明らかなように、シームファスナー31の閉鎖時には、メッシュ素材は隠れるとともに、前述したように、内袖縫い目1と前脇縫い目2とファスナー部が一直線上に並んだ一体となった状態が得られ、シームファスナー31の使用により、ファスナーの接合部(虫部)も外部から見えない状況も得られる。暑い時の発汗防止のため、シームファスナー31の開放時は、図4図3の状態からのファスナー開放)に示すように、メッシュ素材13を有する開放部3が開口し、空気の流れが生じるベンチレーション機構が形成され、発汗減少効果が発揮される。図5、6の16は、背広の内側ポケットに風を通風せしめるためにメッシュ素材を用いて形成した送風機40の収納部であり、図6に示すように、ここからの送風を開放部3、33を通じて外部に放散でき、更なる発汗防止効果が得られる。本実施例のベンチレーション機構部における2個の開放部、送風機収納部は生地の加工で形成でき、原材料は安価である。送風機40も小型で薄型の蓄電池機能付きを用いれば、収納も容易で効果的に送風でき、利用可能性は絶大である。
【0015】
また、ファッションにおいてカジュアルおよびスポーツと称される分野では、ファスナーをデザインの一部として認知されているが、背広又は背広型衣服にファスナーをデザインとして用いる例をあまり見ることはない。また、議員や銀行員および一般会社員等が装着する衣服には適していない。本発明は、ファスナーを閉鎖すると設置跡を見分けることができないシームファスナーを用い、議員や銀行員および一般会社員等が装着するも、対人間においてファスナーを見知されることが無いシームファスナーをアームホール脇部に設置した。また、開放部に図8bのシームファスナー設置縫製を実施することにより開放後継続してベンチレーション効果を発揮する。
【0016】
近年、人手不足よる人員確保が困難な状況にあり、営業員が配達員と商品搬入を兼務する業態が増加している。ビールケースやウオーターサーバーなど軽作業を伴う業務を実施する場合、背広又は背広型衣服などを装着して物品を持ち上げる際に、アームホール背後部に負荷がかかり窮屈感がある。また、棚部上方向に持ち上げた場合にはアームホール袖脇に吊れが生じ窮屈感を感じる。また、アームホール脇部に負荷がかかり縫い裂けが生ずることもある。本来背広又は背広型衣服は搬入動作に適していないために、軽作業が可能になる背広又は背広型衣服が人手不足の就業環境から広く求められていた。また、ストレッチ性素材を表生地、裏生地(メッシュ)に用いた背広又は背広型衣服などは多く市販されているが軽作業を実行するには、アームホール可動部周辺に窮屈感が残り軽作業には不十分であった。本発明は、アームホール脇部箇所に2箇所の開放部を設けることにより本発明であるアームホールの可動域が広がることに着目し、これらを実施し窮屈感を改善した。
【0017】
本発明におけるアームホール箇所部は、従来の200年来、多重縫製部を回避するために振分け縫製した箇所を改善し、一直線上にシームファスナーを設置せしめた。また、背広又は背広型衣服の袖部と身頃部にシームファスナーを一直線上に用いた例はこれまでに存在していない。アームホールの振分け移動による差異は背広の歴史以来の慣習であるためにこれまで作成されてこなかった。本発明は、これらの慣習を改めシームファスナーによる冷感継続機能を有するベンチレーションを設置し、夏季の熱中下における身体補完対策として社会に役立つ。
【0018】
本発明によるシームファスナー設置の効果について説明する。身体の腋窩にはエクリン腺の密度が高く、発汗作用による汗が多量に放出される箇所である。また、脇部のファスナー設置状態を対人から見知されることは羞恥につながることであり、特に女性にとっては尚更である。本発明は、アームホール脇部箇所に柔らかくて湾曲しても復元力のあるシームファスナーを用い、設置箇所を対人から見知されない第1開放部の作成を実現した。
【0019】
本発明による伸止めテープ効果について説明する。第2開放部に設けたメッシュ素材に縫製した伸止めテープは、際限なく広がるメッシュ素材の特性を、伸止めテープ効果により定めた開放幅の可動域を補完するためである。一般的に裏地としてメッシュ素材を用いる場合は裏地部の設置箇所全てに用いる。第2開放部の裏地全てにメッシュ素材を用い、縫製仕様を簡素化する方法もあるが、これでは開放部において物品搬入における作業動作によりメッシュ素材の伸長が止まらず外部にはみ出す。本発明は、これを防止せしめるために伸縮性を有さない裏地と、伸縮性を有するメッシュ素材にパイピングテープと伸止めテープを用い、異素材による切替え箇所を縫い合わせ、これらを実施することにより解決した。
【0020】
一般市場において[脇汗パッド]と称される商品は、男性、女性を問わず多品種が大量販売されている。前記脇汗パッドを装着し、脇汗吸収後の商品をいずれも使い捨てる形態であって廃棄処分される。このことにより環境問題が問われる現在において廃棄物抑制には不十分であった。本発明による2箇所の開放部を設けたベンチレーション機構は前記腋窩部に冷感継続が可能なために廃棄処分の必要性は皆無である。
【0021】
一般慣習において、背広又は背広型衣服は、時間と場所及び上下服着用の原則があるために、過度に逸脱したデザインは好ましくなく、背広又は背広型衣服の原型仕様を保つことが基本であった。本発明は、背広又は背広型衣服にベンチレーション機構を設置せしめるために、ファスナーを閉鎖すると外部から設置跡を見分けることができないシームファスナーを用い、通風通気性を有するベンチレーションと、送風機効果を同時に発揮させることにより、迅速且つ簡便に行えるようにしてある。また、背広の基本であるための原型仕様に2箇所の開放部における工夫を施すことにより、背広又は背広型衣服を実現した。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、2箇所の開放部を有し、伸び止め部材により見苦しいメッシュ素材が目立つことを少なくしつつ、シームファスナーによる開放を実施することができる。開放部は、通気通風機能を発揮するベンチレーションにより構成され、脇汗を軽減することが可能になる。さらに望ましくは胴部内に設置した送風機を稼働させることにより、瞬時に腋窩部温度の冷却効果的作用が実現する。真夏日における屋外環境は厳しさを極めるが、本発明は、背広又は背広型衣服を装着した状態で冷感継続が発揮される。本発明が広く普及することにより多くの人々に脇汗の不快感を軽減し、清潔状態を補完する。また、アームホールの可動域の広がりにより、軽作業に従事する多くの人々の作業動作による負荷を軽減できる。
【符号の説明】
【0023】
1 表地内袖縫い目
2 表地前脇縫い目
3 表地開放部
6 表生地
9 裏地内袖縫い目
10 裏地前脇縫い目
12 伸び止めテープ
13 メッシュ素材
14 裏生地
15 後身頃裏側部
16 送風機収納部
21 表地内袖縫い目の縫い止め
22 表地前脇縫い目の縫い止め
23 裏地内袖縫い目の縫い止め
24 裏地前脇縫い目の縫い止め
30 アームホール
31 シームファスナー
33 裏地開放部
40 送風機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9