(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067671
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】浸水防止用シート
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20230509BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021191576
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】598106485
【氏名又は名称】有限会社 福富ヘルスサイエンスアンドサービス
(72)【発明者】
【氏名】福富 悌
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】大雨による洪水や津波などの増水時の災害において、簡単に設置することができる。更に、価格も安価であり、女性や高齢者等でも簡単に素早く設置することができる浸水防止用シートを提供することができる。
【解決手段】 水害などの災害から建屋を保護する浸水防止用シート1であり、建屋Hへの水の流入を防止するシート2と、シート2と平行に配置される本体部3と、本体部3の下端側に設けた敷設補助部5と、敷設補助部5に接合され、弾性を有するシート押さえ部材4を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の外周に設けて、水害などの災害から建屋を保護する浸水防止用シートであって、
建屋への水の流入を防止するシートと、
前記シートと平行に配置される本体部と、
前記本体部の下端側に設けた敷設補助部と、
前記敷設補助部に接合され、弾性を有するシート押さえ部材を設けることを特徴とする浸水防止用シート。
【請求項2】
前記本体部の形状は、板状であることを特徴とする請求項1に記載の浸水防止用シート。
【請求項3】
前記本体部の形状は、断面視して、一辺に直線部分を有することを特徴とする請求項1に記載の浸水防止用シート。
【請求項4】
前記シートは、前記本体部に対して接合手段を介して接合されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浸水防止用シート。
【請求項5】
前記敷設補助部は、円弧状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の浸水防止用シート。
【請求項6】
前記敷設補助部は、前記シート押さえ部材の上部に位置し、前記シート押さえ部材が垂直方向から平行方向へと折曲がることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の浸水防止用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近年発生する大雨による洪水や津波などの増水時に、建物のドアや窓などの隙間からの浸水を防ぐ浸水防止用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大雨による洪水や津波などの増水時に発生する被害として、床下浸水、または床上浸水の災害があげられる。このような水害と呼ばれる災害は、家屋の壁の中や床下に汚水や汚泥が入り込むことにより壁の中や床下が結露し、土台などの木部を腐朽させ、汚水や汚泥に含まれる雑菌やカビの発生により衛生被害も発生する。更に、汚水や汚泥により、漏電被害も発生する。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方端に建屋の外周に取り付ける嵌合部を有し、他方端に浸水防止シートを取り付けることができる浸水防止シートの取り付け具であり、浸水防止シートを挟持することにより、浸水防止シートの下方側から建屋への水の侵入を防止する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、建物の外壁などの建物への浸水領域に対して、所定の高さを有する止水板であり、最下段は接地面と接触する第1の止水板を設け、この第1の止水板の上部に第2の止水板を設ける。そして、この第1の止水板と第2の止水板の隙間に可撓性を有する部材を配置し、隙間をなくすように形成し、建物への水の侵入を防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-86657号公報
【特許文献2】特開2020-84696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2で記載された内容であると、水平方向に浸水防止シートと接地面である地面や床面に隙間が空かないよう、浸水を防止するように重量物を備える必要があり、その重量物を運搬する労力や時間が発生する。更に、災害時に止水板やシートを使用する場合はよいが、災害が発生していない不使用時においては、その止水板やシートの保管に際して場所を取り、無駄なスペースを要する。
【0007】
本発明の目的は、浸水防止用シートを建屋の外部に配置して、家屋への汚泥などの侵入を防止する浸水防止用シートであり、災害時に素早い設置を行うことができる。更に、設置工事が不要であり、価格も安価であり、女性や高齢者等でも簡単に素早く設置することができる浸水防止用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、建屋の外周に設けて、水害などの災害から建屋を保護する浸水防止用シートであって、建屋への水の流入を防止するシートと、
前記シートと平行に配置される本体部と、前記本体部の下端側に設けた敷設補助部と、前記敷設補助部に接合され、弾性を有するシート押さえ部材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浸水防止用シートを大雨による洪水や津波などの増水時の災害において、簡単に設置することができる。更に、重機などによる設置工事が不要であり、価格も安価であり、女性や高齢者等でも簡単に素早く設置することができる浸水防止用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による浸水防止用シートを示した斜視図である。
【
図2】
図1に示す浸水防止用シートを使用している使用状態を示した斜視図である。
【
図3】
図1に示す浸水防止用シートを使用している使用状態を示した要部拡大図である。
【
図4】
図1に示す浸水防止用シートを建屋に対して使用している使用状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態による浸水用防止用シート1について、
図1乃至
図4を用いて説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0013】
図4に示すように、浸水防止用シート1は、建屋Hの周囲に配置される。この浸水防止用シート1は、建屋Hの外周に設置することで、建屋Hへの浸水を防止する目的で使用される。
図1に示すように、浸水防止用シート1は、シート2と、本体部3と、シート押さえ部材4と、敷設補助部5を備える。
【0014】
シート2は、水害時に建屋Hの周囲に配置することにより、浸水による被害を防止することができる。シート2のサイズは建屋Hの大きさや設置環境に応じて、随時変更すればよいが、具体的には、その高さは、30cmから100cm程度であり、その厚さは、0.5mmから2.0mm程度である。なお、シート2の厚さは、厚いと取り扱いが難しくなる虞があり、薄いと防水機能が不十分になる虞がある。
【0015】
シート2は可撓性を有しており、シート2本体が折り畳み可能となり、建屋H内での保管時に際して、保管場所を取らず、軽量であり、取り扱いも容易であるため、非力な女性や高齢者等でも簡単に設置することができる。
【0016】
シート2は、例えばポリエチレン、エチレンと酢酸ビニル等とを共重合したポリエチレン系共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、各種エラストマー系樹脂などを適宜配合して形成された合成樹脂製のシートが好ましく、更に、水によって流されてきた木や砂利などの異物が接触しても破断しないような強度があればよい。
【0017】
本体部3について説明する。本体部3の形状は板状である。この板状の長手方向に沿って、前記シート2を接合する。例えば、溶着、粘着剤、接着剤や接合具による接合、縫製や面ファスナーなどによる結合があげられる。縫製の場合は、縫製部分がかくれるように、オーバーテープをすることで建屋H内への漏水を防止する。そして、シート2と本体部3の接合に際して、本体部3の一面を使用して接合を行うことで、シート2との接合面積を確保することができ、シート2と本体部3の安定した接合を行うことができる。
【0018】
なお、本体部3の形状は板状に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差し支えなく、例えば水の抵抗を受けない範囲で、一辺に直線部分を有する略四角柱などの多角形状や、半円形状などとすることもできる。更に、本体部3は長手方向に延伸しているが、その途中に補強のためのリブを設けても良い。また、シート2に取り付ける際は、直径部分を面ファスナーなどの接合部材を使用して、前記シート2に対して接合することで、本体部3とシート2との安定した接合を行うことができる。
【0019】
本体部3は、建屋Hに対して平行に、地面Gに対して垂直に配置される。本体部3の下端側は、敷設補助部5が設けられる。敷設補助部5は、本体部3の一端を曲げ加工することにより、若しくは円弧状の部材を接合する事により形成される。
【0020】
本体部3は、シート2と同様に、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、各種エラストマー系樹脂などを適宜配合して形成された合成樹脂製で形成してもよいが、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属でもよく、シート2を建屋Hに対して垂直方向で圧接できる強度があればその材料はこれに限らない。
【0021】
本体部3の高さは、シート2と同じであればよい。シート2と同じ高さにすることで、水害時に発生する水が建屋H内に侵入することを防止できる。具体的には、本体部3は、シート2を建屋Hに対して、地面Gから垂直方向に保持することで、シート2を建屋Hの外壁に対して隙間なく密着することができる。その結果として、建屋Hに対する浸水を確実に防止できる。
【0022】
続いて、シート押さえ部材4を説明する。シート押さえ部材4は、弾性を有する本体部3と平行に配置される平板形状である。また、シート押さえ部材4と本体部3との間には、敷設補助部5が介在される。
【0023】
浸水防止用シート1の保管時においては、シート押さえ部材4は、本体部3と平行に配置される。そして、
図2及び
図3に示すように、浸水防止用シート1の使用時においては、シート押さえ部材4は、本体部3から建屋Hを背面側にして、垂直方向(建屋の外側)に向かって配置される。具体的には、シート押さえ部材4は本体部3の自重に加えて、水害時に発生する水や汚泥などの重みにより、後述する敷設補助部5の外周に添うようにして、円弧が形成される。つまり、シート押さえ部材4は側面視すると、前述した通り、円弧を描く円弧部分4Aと平行に配置される直線部分4Bとで構成される。
【0024】
シート押さえ部材4の直線部分4Bは、地面Gの上に敷設されたシート2を覆うように設置される。そのため、本体部3の自重と水や汚泥などの重みにより、シート2に地面G方向に対して荷重が加わることになる。この荷重により、地面Gに対して隙間なくシート2を設置することができ、建屋Hに対する水や汚泥の侵入を防止することができる。更に、本体部3の自重と水や汚泥などの重みが直線部分4Bに加わることにより、シート2が勝手に移動することを防止して、所望の位置に確実に固定されることになり、その結果として、浸水を防止したい領域に対して確実に浸水を防止することができる。
【0025】
シート押さえ部材4の円弧部分4Aは、前述した通り、敷設補助部5の外周に沿って構成される。この円弧部分4Aが構成されることで、シート押さえ部材4にかかる荷重を敷設補助部5に対してかけることで、シート押さえ部材4の破損や破断を防止することができる。
【0026】
シート押さえ部材4は、炭素鋼・ステンレス鋼・ニッケル合金などの金属でよいが、天然ゴムや合成樹脂、セラミックなどの非金属でもよく、弾性を有する材質であればよい。
【0027】
シート押さえ部材4は、シート2を覆うように設置されているが、シート押さえ部材4の長手方向における長さはこれに限らず、前述した通り、シート2と地面Gとの隙間を防止することができれば、シート2よりも短くてもよい。
【0028】
また、シート押さえ部材4の形状は、平板状で説明したが、この形状に限らず、シート2を確実に地面Gに対して押さえることができて、且つ、敷設補助部5に沿って曲げることができ、シート押さえ部材4の破損や破断を防止することができる形状であれば、この限りではない。
【0029】
敷設補助部5について説明する。敷設補助部5は、本体部3の曲げ加工、若しくは円弧状の部材を接合する事により形成される。
【0030】
敷設補助部5の形状は円弧状である。敷設補助部5における幅方向の長さは、シート押さえ部材4の幅方向の長さと略同一であり、シート押さえ部材4の円弧部分4Aが敷設補助部5に当接して円弧を描く際に、敷設補助部5に対して均等に荷重が加わることが望ましい。つまり、シート押さえ部材4の使用時においては地面Gに設置されるため、シート押さえ部材4が略直角に変形する際、円弧部分4Aが形成される。そして、この円弧部分4Aが形成される際に、円弧の外側から内側にかかる圧力に対して敷設補助部5も円弧状であることから、敷設補助部5がその圧力を受けて、一体的に同形状になる事により、シ
【0031】
敷設補助部5は、本体部3と同様の素材であるが、別部材として接合する場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを適宜配合して形成された合成樹脂でよい。
【0032】
浸水防止用シート1における施工方法について説明する。本体部3とシート2は接合された状態で施工される。つまり、建屋Hにおける浸水を防止したい領域に対してシート2を設置する。シート2は、本体部3と同じ高さから地面Gにわたって設けられる。なお、地面Gに設けられたシート2の上には、シート押さえ部材4が設置される。
【0033】
本体部3はシート2に対して、等間隔で接合される。接合方法については、前述した通り、公知の接着剤などを使用すればよい。建屋Hにおける浸水を防止したい領域に対して、シート2が長尺でない場合、シート2は本体部3を介してつなぎ合わせることも可能である。この場合、つなぎ目の部分に対して、漏水しないように適宜接合をすればよい。また、シート2と本体部3を予め接合した状態で保管しておき、施工時にシート2を建屋Hにおける浸水を防止したい領域に対して設置してもよい。
【0034】
本体部3は、地面Gに対して垂直に、建屋Hに対して平行に設置される。本体部3の自重により、本体部3と平行であるシート押さえ部材4が地面Gに押し当てられることにより、地面Gと平行にシート押さえ部材4の直線部分4Bが形成される。このシート押さえ部材4の直線部分4Bは、地面Gの上部に設けられたシート2の上部に配置されるため、シート2の妄動を防止することができる。また、シート押さえ部材4の円弧部分4Aは、シート押さえ部材4が地面Gに押し当てられた際に、シート押さえ部材4に対する荷重がかかり破断や破損を防止するために設けられた敷設補助部5により、敷設補助部5の周囲に沿うようにして、形成される。また、敷設補助部5が配置されることにより、シート押さえ部材4の円弧部分4Aがどのような位置で折曲がるかのガイドの役割を担うこともできる。
【0035】
なお、この施工に際しては、建屋Hや地面Gに対して浸水防止用シート1を粘着剤、接着剤、面ファスナーなどによる粘着や接着といった従来の施工時に必要な作業を必要とせずに、簡単に施工を行うことができる。
【0036】
具体的には、建屋Hにおける浸水を防止したい領域に対して備えた浸水防止用シート1を災害時に発生する水の水圧を利用することで、地面Gと垂直方向に対しては、シート2と建屋Hが隙間なく密着するため、建屋Hと平行方向に対しては、シート2と地面Gが隙間なく密着するため、建屋Hに対する浸水を確実に防止することができる。
【0037】
ここで、本明細書において「建屋H」とは、住居用の一般家屋のほかに、集合住宅、車庫、倉庫、蔵、工場、店舗、その他、浸水被害から保護する価値を有する建造物を含む。
【0038】
その他、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 浸水防止用シート
2 シート
3 本体部
4 シート押さえ部材
4A 円弧部分
4B 直線部分
5 敷設補助部
H 建屋
G 地面
【手続補正書】
【提出日】2022-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
敷設補助部5の形状は円弧状である。敷設補助部5における幅方向の長さは、シート押さえ部材4の幅方向の長さと略同一であり、シート押さえ部材4の円弧部分4Aが敷設補助部5に当接して円弧を描く際に、敷設補助部5に対して均等に荷重が加わることが望ましい。つまり、シート押さえ部材4の使用時においては地面Gに設置されるため、シート押さえ部材4が略直角に変形する際、円弧部分4Aが形成される。そして、この円弧部分4Aが形成される際に、円弧の外側から内側にかかる圧力に対して敷設補助部5も円弧状であることから、敷設補助部5がその圧力を受けて、一体的に同形状になる事により、シート押さえ部材4の破損や板が戻ることを防止することができる。