(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006769
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】位置確認治具、基礎施工治具及び基礎施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20230111BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20230111BHJP
E04G 9/10 20060101ALI20230111BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E04G21/18 B
E04G9/10 104A
E04B1/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109535
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(71)【出願人】
【識別番号】391004148
【氏名又は名称】株式会社タカシマ
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 奈津生
(72)【発明者】
【氏名】表 敏久
(72)【発明者】
【氏名】岸田 久之
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩史
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】朱 華佳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健一
【テーマコード(参考)】
2D046
2E150
2E174
【Fターム(参考)】
2D046AA03
2E150AA40
2E150LA21
2E150LB03
2E150MA02Z
2E174DA32
2E174DA41
(57)【要約】
【課題】建物の基礎を施工するにあたって、柱の芯位置を容易に確認することが可能な位置確認治具を提供する。
【解決手段】位置確認治具30は、基礎コンクリートに複数のアンカーボルトF2を突出させた状態で埋設するためのアンカー吊り下げ治具20の上部に取り付けられ、複数のアンカーボルトF2によって支持される柱の芯位置を確認するための治具である。位置確認治具30は、柱の芯位置となる部分を通過し、上面視において複数のアンカーボルトのうち、第1アンカーボルトF2A及び第2アンカーボルトF2Bを連結するように延びている第1延出部31と、柱の芯位置となる部分において第1延出部31と連結され、第1延出部31の延出方向とは交差する方向に延出し、上面視において第1延出部31及び第3アンカーボルトF2Cを連結するように延びている第2延出部32と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートに複数のアンカーボルトを突出させた状態で埋設するためのアンカー吊り下げ治具の上部に取り付けられ、前記複数のアンカーボルトによって支持される柱の芯位置を確認するための位置確認治具であって、
前記柱の芯位置となる部分を通過し、上面視において前記複数のアンカーボルトのうち、第1アンカーボルト及び第2アンカーボルトを連結するように延びている第1延出部と、
前記柱の芯位置となる部分において前記第1延出部と連結され、前記第1延出部の延出方向とは交差する方向に延出し、上面視において前記第1延出部及び第3アンカーボルトを連結するように延びている第2延出部と、を備えていることを特徴とする位置確認治具。
【請求項2】
前記位置確認治具は、
平板状のプレート体からなり、
前記アンカー吊り下げ治具において基礎用型枠の上面に架設される部分よりも上方位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の位置確認治具。
【請求項3】
前記位置確認治具は、
前記第1延出部と、前記第2延出部とを有する平板状の位置確認プレートと、
前記位置確認プレートのうち、前記柱の芯位置となる部分から鉛直方向の下方に延びている下げ振りと、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置確認治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置確認治具と、前記アンカー吊り下げ治具と、を備え、建物の基礎を施工するための基礎施工治具であって、
前記アンカー吊り下げ治具は、
基礎用型枠の上部に架設され、前記アンカーボルトの水平方向における位置決めを行うためのアンカー定規と、
上下方向に長尺に延びており、前記アンカー定規と前記アンカーボルトを連結し、前記アンカー定規に対して前記アンカーボルトの高さ位置を変更可能な状態で取り付けられるアンカー高さ調整部材と、を有し、
前記位置確認治具は、
前記第1アンカーボルト、前記第2アンカーボルト及び前記第3アンカーボルトそれぞれに取り付けられた前記アンカー高さ調整部材の上端部によって支持され、
前記アンカー定規よりも上方位置に配置されていることを特徴とする基礎施工治具。
【請求項5】
前記アンカー定規は、前記複数のアンカー高さ調整部材を支持する枠状のアンカー支持部を有し、
前記位置確認治具は、前記第1延出部と、前記第2延出部とを有する位置確認プレートと、前記位置確認プレートのうち、前記柱の芯位置となる部分に設けられる下げ振りと、を備えており、
前記下げ振りは、前記アンカー支持部の枠内を通過し、鉛直方向の下方に延びていることを特徴とする請求項4に記載の基礎施工治具。
【請求項6】
複数のアンカーボルトを突出させた状態で埋設するためのアンカー吊り下げ治具と、前記複数のアンカーボルトによって支持される柱の芯位置を確認するための位置確認治具と、を用いた建物の基礎施工方法であって、
基礎用型枠を組み立てる型枠組み立て工程と、
前記基礎用型枠の上部に前記アンカー吊り下げ治具を架設する治具架設工程と、
前記アンカー吊り下げ治具に前記アンカーボルトを吊り下げるように組み付けるアンカー組み付け工程と、
前記アンカー吊り下げ治具の上部に前記位置確認治具を取り付ける治具取り付け工程と、を含み、
前記治具取り付け工程では、前記位置確認治具を、前記柱の芯位置となる部分を通過し、上面視において第1アンカーボルト、第2アンカーボルト及び第3アンカーボルトによって支持されるように取り付けることを特徴とする基礎施工方法。
【請求項7】
前記基礎用型枠内に基礎コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
打設された前記基礎コンクリート上に、前記柱を支持する柱支持具を前記基礎コンクリート内に一部埋設した状態で設置する柱支持具設置工程と、をさらに含み、
前記治具取り付け工程では、平板状の位置確認プレートと、前記位置確認プレートのうち、前記柱の芯位置となる部分から鉛直方向の下方に延びている下げ振りとを有する前記位置確認治具を取り付けることとし、
前記柱支持具設置工程では、前記下げ振りの真下位置に前記柱支持具を設置することを特徴とする請求項6に記載の基礎施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置確認治具、基礎施工治具及び基礎施工方法に係り、特に、アンカーボルトによって支持される柱の芯位置を確認するための位置確認治具、基礎施工治具及び基礎施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物(鉄筋コンクリート製の建物)の基礎を施工する際に、基礎用型枠の上部に架設され、基礎コンクリートに複数のアンカーボルトを一部突出させた状態で埋設するために用いられるアンカー吊り下げ治具が知られている。
具体的には、アンカー吊り下げ治具は、基礎用型枠の上面に架設され、アンカーボルトの水平方向における位置決めを行うアンカー定規と、上下方向に長尺に延びており、アンカー定規とアンカーボルトを連結し、アンカー定規に対してアンカーボルトの高さ位置を変更可能な状態で取り付けられるアンカー高さ調整部材と、から主に構成されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-057408号公報
【特許文献2】特開2004-211480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の基礎を施工するにあたっては、複数のアンカーボルトによって支持される柱(柱脚)の芯位置を容易に確認する技術が求められていた。
詳しく説明すると、建物の基礎に対し柱(柱脚)を連結させるために、基礎コンクリート内に複数のアンカーボルトを突出させた状態で埋設するとともに、打設された基礎コンクリートが固まる前に、基礎コンクリート上に柱支持具(シア金物)を一部埋設した状態で設置する施工作業が行われている。当該柱支持具を設置することで、柱脚にブレースからのせん断力が加わった場合であっても柱支持具が基礎を支圧し、当該せん断力を基礎へと効率良く伝達することが可能となる。
このとき、基礎に対し柱を鉛直に連結させるためには、上記柱支持具を柱の芯位置に設置する必要がある。そのため、柱の芯位置を容易に確認するための技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、建物の基礎を施工するにあたって、柱の芯位置を容易に確認することが可能な位置確認治具、基礎施工治具及び基礎施工方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、基礎コンクリート上において柱の芯位置となる部分に柱支持具(シア金物)を容易に設置することが可能な位置確認治具、基礎施工治具及び基礎施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の位置確認治具によれば、基礎コンクリートに複数のアンカーボルトを突出させた状態で埋設するためのアンカー吊り下げ治具の上部に取り付けられ、前記複数のアンカーボルトによって支持される柱の芯位置を確認するための位置確認治具であって、前記柱の芯位置となる部分を通過し、上面視において前記複数のアンカーボルトのうち、第1アンカーボルト及び第2アンカーボルトを連結するように延びている第1延出部と、前記柱の芯位置となる部分において前記第1延出部と連結され、前記第1延出部の延出方向とは交差する方向に延出し、上面視において前記第1延出部及び第3アンカーボルトを連結するように延びている第2延出部と、を備えていること、により解決される。
上記構成により、建物の基礎を施工するにあたって、柱の芯位置を容易に確認することが可能な位置確認治具を実現することができる。
詳しく述べると、位置確認治具は、上記第1延出部と、上記第2延出部とを備えており、第1延出部及び第2延出部の連結部分が柱の芯位置となっている。そのため、当該連結部分の位置を認識することで柱の芯位置を容易に確認することができる。
また、位置確認治具が、上面視において複数のアンカーボルトを連結するように延びているため、それぞれのアンカーボルトの位置(水平位置)と、柱の芯位置との相対位置(相対距離)を容易に確認することもできる。
また、位置確認治具が、少なくとも3本のアンカーボルトによって三点支持されているため、位置確認治具を安定して取り付けることができる。
【0007】
このとき、前記位置確認治具は、平板状のプレート体からなり、前記アンカー吊り下げ治具において基礎用型枠の上面に架設される部分よりも上方位置に配置されていると良い。
上記構成により、プレート状の位置確認治具と、アンカー吊り下げ治具との上下方向の間にスペース(隙間)を形成することができる。当該スペースを利用することで、例えば、基礎コンクリート上に柱支持具(シア金物)を容易に設置することができる。すなわち、他の部材と干渉することなく、柱支持具を設置することができる。
また、位置確認治具を利用することで、基礎コンクリート上において柱の芯位置となる部分に柱支持具を容易に設置することもできる。
【0008】
このとき、前記位置確認治具は、前記第1延出部と、前記第2延出部とを有する平板状の位置確認プレートと、前記位置確認プレートのうち、前記柱の芯位置となる部分から鉛直方向の下方に延びている下げ振りと、を備えていると良い。
上記のように、位置確認治具が下げ振りをさらに備えているため、柱の芯位置を一層容易に確認することができる。また、下げ振りを目印とすることで、基礎コンクリート上の所定位置に柱支持具(シア金物)を一層容易に設置することもできる。
【0009】
また前記課題は、上記位置確認治具と、前記アンカー吊り下げ治具と、を備え、建物の基礎を施工するための基礎施工治具であって、前記アンカー吊り下げ治具は、基礎用型枠の上部に架設され、前記アンカーボルトの水平方向における位置決めを行うためのアンカー定規と、上下方向に長尺に延びており、前記アンカー定規と前記アンカーボルトを連結し、前記アンカー定規に対して前記アンカーボルトの高さ位置を変更可能な状態で取り付けられるアンカー高さ調整部材と、を有し、前記位置確認治具は、前記第1アンカーボルト、前記第2アンカーボルト及び前記第3アンカーボルトそれぞれに取り付けられた前記アンカー高さ調整部材の上端部によって支持され、前記アンカー定規よりも上方位置に配置されていることを特徴とする基礎施工治具によっても解決される。
上記構成により、柱の芯位置を容易に確認することが可能な基礎施工治具を実現できる。
また上記構成により、位置確認治具と、アンカー定規との上下方向の間にスペース(間隔)を形成することができる。当該スペースを利用することで、基礎コンクリート上に柱支持具(シア金物)を設置し易くなる。
【0010】
このとき、前記アンカー定規は、前記複数のアンカー高さ調整部材を支持する枠状のアンカー支持部を有し、前記位置確認治具は、前記第1延出部と、前記第2延出部とを有する位置確認プレートと、前記位置確認プレートのうち、前記柱の芯位置となる部分に設けられる下げ振りと、を備えており、前記下げ振りは、前記アンカー支持部の枠内を通過し、鉛直方向の下方に延びていると良い。
上記構成により、下げ振りを目印として、基礎コンクリート上の所定位置に柱支持具(シア金物)を容易に設置することができる。
また、アンカー定規(アンカー支持部)の枠内を通過させて柱支持具を設置することができる。その結果、下げ振りを伝って柱支持具を設置することができるため、柱支持具を精度良く設置することができる。
【0011】
また前記課題は、複数のアンカーボルトを突出させた状態で埋設するためのアンカー吊り下げ治具と、前記複数のアンカーボルトによって支持される柱の芯位置を確認するための位置確認治具と、を用いた建物の基礎施工方法であって、基礎用型枠を組み立てる型枠組み立て工程と、前記基礎用型枠の上部に前記アンカー吊り下げ治具を架設する治具架設工程と、前記アンカー吊り下げ治具に前記アンカーボルトを吊り下げるように組み付けるアンカー組み付け工程と、前記アンカー吊り下げ治具の上部に前記位置確認治具を取り付ける治具取り付け工程と、を含み、前記治具取り付け工程では、前記位置確認治具を、前記柱の芯位置となる部分を通過し、上面視において第1アンカーボルト、第2アンカーボルト及び第3アンカーボルトによって支持されるように取り付けることを特徴とする基礎施工方法によっても解決される。
【0012】
このとき、前記基礎用型枠内に基礎コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、打設された前記基礎コンクリート上に、前記柱を支持する柱支持具を前記基礎コンクリート内に一部埋設した状態で設置する柱支持具設置工程と、をさらに含み、前記治具取り付け工程では、平板状の位置確認プレートと、前記位置確認プレートのうち、前記柱の芯位置となる部分から鉛直方向の下方に延びている下げ振りとを有する前記位置確認治具を取り付けることとし、前記柱支持具設置工程では、前記下げ振りの真下位置に前記柱支持具を設置すると良い。
上記構成により、下げ振りを目印として、柱の芯位置を一層容易に確認することができる。また、下げ振りを伝って柱支持具を設置することができるため、柱支持具を精度良く設置することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の位置確認治具、基礎施工治具及び基礎施工方法によれば、建物の基礎を施工するにあたって、柱の芯位置を容易に確認することが可能となる。
また、基礎コンクリート上において柱の芯位置となる部分に柱支持具(シア金物)を容易に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】基礎施工治具を示す斜視図であって、アンカー吊り下げ治具にアンカーボルトが組み付けられた状態を示す図である。
【
図2】
図1の要部拡大図であって、アンカー吊り下げ治具に位置確認治具が取り付けられた状態を示す図である。
【
図3】アンカー吊り下げ治具(アンカー定規、アンカー高さ調整部材)、アンカーボルトを示す分解斜視図である。
【
図5】アンカー吊り下げ治具及び位置確認治具を示す上面図である。
【
図6A】アンカー吊り下げ治具にアンカーボルトが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図6B】基礎コンクリートを打設した状態を示す斜視図である。
【
図6C】基礎コンクリート上に柱支持具を設置した状態を示す斜視図である。
【
図6D】基礎施工治具を取り外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について
図1-
図7を参照して説明する。
本実施形態は、基礎コンクリートに複数のアンカーボルトを突出させた状態で埋設するためのアンカー吊り下げ治具の上部に取り付けられ、複数のアンカーボルトによって支持される柱の芯位置を確認するための「位置確認治具」の発明に関するものである。
また、当該位置確認治具を備えた「基礎施工治具」の発明、当該基礎施工治具を用いた「基礎施工方法」の発明に関するものである。
【0016】
<基礎施工治具>
本実施形態の基礎施工治具1は、
図1、
図2に示すように、鉄筋コンクリート製の建物の基礎を施工する際に用いられる治具であって、例えば、ハイベース工法(露出型固定柱脚工法)による基礎の施工の際に用いられる治具である。
具体的には、基礎施工治具1は、基礎コンクリートを打設する際に用いられ、基礎の形状に合わせて組まれた基礎用型枠10と、基礎用型枠10の上部に架設され、基礎コンクリートに複数のアンカーボルトF2を一部突出させた状態で埋設するためのアンカー吊り下げ治具20と、アンカー吊り下げ治具20の上部に取り付けられ、柱(柱脚)の芯位置を確認するための位置確認治具30と、から主に構成されている。
【0017】
なお、基礎内部には、
図1に示すように、基礎地盤上に設置されるプレート状のアンカー支持具F1と、アンカー支持具F1によって支持され、基礎と柱(柱脚)を連結するための複数のアンカーボルトF2と、アンカー支持具F1によって支持され、複数のアンカーボルトF2を囲むように配置される不図示の鉄筋ユニット(柱型鉄筋ユニット)とが埋設されることになる。
また、基礎内部には、
図6Cに示すように、打設された基礎コンクリートF4が固まる前に、基礎コンクリートF4上に柱支持具F3(シア金物)が一部埋設された状態で設置されることになる。
【0018】
アンカー支持具F1は、
図1に示すように、基礎地盤上の所定位置に設置されるプレート状の支持ベースF1aと、支持ベースF1a上に設けられ、アンカーボルトF2を下方から支持する複数のアンカー支持部F1bと、支持ベースF1a上に設けられ、鉄筋ユニットを側方及び下方から支持する複数の鉄筋支持部F1cと、を備えている。
なお、アンカー支持部F1bの上端部には、アンカーボルトF2の下端部に設けられた被係合部に着脱可能に係合する係合部が形成されている。
アンカー支持部F1b、鉄筋支持部F1cは、それぞれ支持ベースF1aの外縁部分に所定の間隔を空けて設けられている。詳しく述べると、アンカー支持部F1bと鉄筋支持部F1cが、交互に並ぶように配置されている。
【0019】
アンカーボルトF2は、
図1、
図3に示すように、アンカーボルトF2の本体部となる上下方向に長尺なアンカー本体部F2aと、アンカー本体部F2aから連続して上方に延びているアンカーネジ部F2bと、アンカー本体部F2aの下端部に設けられた円板状のアンカー定着部F2cと、から主に構成されている。
柱支持具F3は、
図6Cに示すように、基礎コンクリートF4上において柱の芯位置となる部分に設置されるプレート状の支持プレートF3aと、支持プレートF3a上から上方に突出するようにそれぞれ設けられ、柱の下端部(ベースプレート)に連結する枠状連結部F3bと、枠状連結部F3bの内部に配置される軸連結部F3cと、支持プレートF3aの底面から下方に突出し、基礎コンクリートF4内に埋設される埋設部F3dと、から主に構成されている。
【0020】
上記構成において、
図6Dに示すように、基礎の施工完了後には、基礎コンクリートF4上に複数のアンカーボルトF2及び柱支持具F3が一部突出した状態で固定される。そして、複数のアンカーボルトF2及び柱支持具F3に対し、柱(柱脚)の下端部に設けられたベースプレートが連結され、柱を鉛直に立設することができる。
【0021】
基礎用型枠10は、
図1に示すように、基礎(基礎となる空間)の幅方向の両側部分に対向するようにそれぞれ設けられ、基礎の延出方向に沿って配置される型枠である。
組み立てられた基礎用型枠10の上面には、基礎の延出方向に沿ってアンカー吊り下げ治具20(アンカー定規21)が組み付けられる。
なお、
図1において基礎用型枠10が一部省略されている。
【0022】
アンカー吊り下げ治具20は、
図1-
図4に示すように、基礎用型枠10(具体的には、基礎用型枠10A、10B)の上面に架設され、アンカーボルトF2の水平方向における位置決めを行うためのアンカー定規21と、上下方向に長尺に延びており、アンカー定規21とアンカーボルトF2を連結し、アンカー定規21に対してアンカーボルトF2の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられるアンカー高さ調整部材22と、を備えている。
【0023】
アンカー定規21は、
図1、
図2に示すように、所定の幅を有する平板を組み合わせた枠状体からなり、基礎用型枠10の上面に締結部材を用いて固定されている。
具体的には、アンカー定規21は、基礎用型枠10の上面に固定される枠状の型枠固定部21aと、型枠固定部21aよりも内側位置に配置され、複数のアンカー高さ調整部材22を支持する枠状のアンカー支持部21bと、型枠固定部21a及びアンカー支持部21bを連結する複数の連結部21cと、を有している。
アンカー支持部21bは、矩形枠状からなり、アンカー支持部21bの四隅には、アンカー高さ調整部材22を組み付けるための組み付け穴21dがそれぞれ形成されている。
【0024】
アンカー高さ調整部材22は、
図3、
図4に示すように、上下方向に延びてアンカー定規21(組み付け穴21d)を貫通している長尺ボルト22aと、長尺ボルト22aに螺合され、アンカー定規21を上下方向で挟み込む挟持ナット22b、22cと、長尺ボルト22aに下部から螺合され、上下方向に延びている高さ調整ナット22d(長ナット)と、から主に構成されている。
また、高さ調整ナット22dの下部には、アンカーボルトF2のアンカーネジ部F2bが螺合されており、高さ調整ナット22d及びアンカーボルトF2が一体となって連結されている。
【0025】
上記構成において、アンカー高さ調整部材22は、長尺ボルト22aに対して高さ調整ナット22dの螺合位置を調整することで、アンカー定規21に対するアンカーボルトF2の高さ位置を変更することが可能である。
【0026】
位置確認治具30は、
図2、
図5に示すように、アンカー吊り下げ治具20のうち、複数の長尺ボルト22aの上端部に取り付けられ、柱の芯位置を確認するための治具である。
具体的には、位置確認治具30は、平板状の位置確認プレート31と、位置確認プレート31のうち、柱の芯位置となる部分から鉛直方向の下方に延びている下げ振り32と、を備えている。
なお、位置確認治具30は、複数の長尺ボルト22aの上端部にそれぞれ組み付けられた支持ナット33によって支持されている。そのため、各支持ナット33の高さ位置を微調整することで、位置確認治具30の水平出し(レベル出し)を容易に行うことができる。
【0027】
位置確認プレート31は、
図2、
図5に示すように、T字形状のプレート体からなり、アンカー定規21よりも上方位置に浮かせた状態で配置されている。
位置確認プレート31は、柱の芯位置となる部分を通過し、上面視において複数のアンカーボルトF2のうち、第1アンカーボルトF2A及び第2アンカーボルトF2Bを連結するように延びている第1延出部31aと、柱の芯位置となる部分において第1延出部31aと連結され、第1延出部31aの延出方向とは交差する方向に延出し、上面視において第1延出部31a及び第3アンカーボルトF2Cを連結するように延びている第2延出部31bと、を備えている。
【0028】
詳しく述べると、第1延出部31aは、上面視において複数のアンカーボルトF2のうち、対角線上に位置する第1アンカーボルトF2A及び第2アンカーボルトF2Bを連結するように直線状に延びている。
第2延出部31bは、第1延出部とは直交する方向に延びており、上面視において第1アンカーボルトF2A及び第2アンカーボルトF2Bそれぞれと隣り合う第3アンカーボルトF2Cを連結するように延びている。
位置確認プレート31において第1延出部31a及び第2延出部31bの連結部分が、位置確認プレート31の中心部分(中央部分)となっており、かつ、柱の芯位置となる部分となっている。
【0029】
第1延出部31aにおいて第1アンカーボルトF2A、第2アンカーボルトF2Bに対応する位置には、それぞれ長尺ボルト22aを貫通させて組み付けられ、長尺ボルト22aに螺合された支持ナット33に支持される組み付け穴31cが形成されている。
また、第2延出部31bにおいて第3アンカーボルトF2Cに対応する位置にも同様に、組み付け穴31cが形成されている。
これら組み付け穴31cは、位置確認プレート31の中心部分から等距離の位置に配置されている。
【0030】
下げ振り32は、
図2、
図6A-Cに示すように、位置確認プレート31のうち、柱の芯位置となる部分(中心部分)に取り付けられ、アンカー定規21(アンカー支持部21b)の枠内を通過し、鉛直方向の下方に延びている。
具体的には、下げ振り32は、位置確認プレート31の上面に設置される円柱状の支持体32aと、支持体32aの外周面に巻き付けられ、支持体32aから延出し、位置確認プレート31の中心位置に形成された挿通孔31dを通過し、下方に延びている下げ振り糸32bと、下げ振り糸32bの延出端部に取り付けられる円錐形状の振り子32cと、を備えている。
【0031】
支持体32aは、例えば永久磁石からなり、位置確認プレート31の所定位置に着脱可能に固定することができる。
【0032】
上記構成のように、位置確認プレート31及び下げ振り32を利用することで、柱の芯位置を容易に確認することが可能となる。また、基礎コンクリートF4上において柱の芯位置となる部分に柱支持具F3(シア金物)を容易に設置することが可能となる。
【0033】
また上記構成において、
図2に示すように、位置確認プレート31は、T字形状のプレート体からなり、アンカー定規21よりも上方位置に配置されている。
そのため、位置確認プレート31と、アンカー吊り下げ治具20(アンカー定規21)との上下方向の間にスペース(隙間)を形成することができる。当該スペースを利用することで、
図6Cに示すように、基礎コンクリートF4上に柱支持具F3を容易に設置することができる。すなわち、他の部材と干渉することなく、柱支持具F3を設置することができる。
【0034】
また上記構成において、
図2に示すように、位置確認プレート31は、アンカー定規21の長尺ボルト22aの上端部に組み付けられている。
そのため、位置確認プレート31と、アンカー定規21の間により大きなスペース(隙間)を形成することができる。
そのほか、位置確認プレート31を用いて柱の芯位置と、アンカーボルトの位置との水平距離を測定するときに、例えば巻き尺が長尺ボルト22aに干渉し、測定結果が延びてしまうことを防ぐことができる。なお、好ましくは、位置確認プレート31の上面と、長尺ボルト22aの上面とが略面一になっていると良い。
【0035】
また上記構成において、
図5に示すように、位置確認プレート31は、アンカー定規21(アンカー支持部21b)よりも幅狭となるように形成されている。
そのため、位置確認プレート31と、アンカー定規21の間により大きなスペース(隙間)を形成することができる。
なお、位置確認プレート31は、他の基礎施工治具と比較して剛性を必要とするものではないため、極力シンプルな形状となるように工夫されている。
【0036】
また上記構成において、
図2、
図6A-Cに示すように、位置確認治具30は下げ振り32を備えており、当該下げ振り32がアンカー定規21(アンカー支持部21b)の枠内を通過し、鉛直方向の下方に延びている。
そのため、下げ振り32を目印として、基礎コンクリートF4上の所定位置に柱支持具F3(シア金物)を容易に設置することができる。特に、下げ振り32を伝って柱支持具F3を設置することができるため、柱支持具F3を精度良く設置することができる。
【0037】
<基礎施工方法>
次に、建物の基礎施工方法について
図7に基づいて説明する。
まずは、
図1に示すように、基礎工の作業者が、基礎地盤上にアンカー支持具F1を設置し、不図示の固定部材(例えば、コンクリート釘)を用いて固定する「アンカー支持具設置工程」(ステップS1)から始まる。
このとき、基礎地盤上に予め描かれた墨出し線を目印とすることで、アンカー支持具F1を基礎地盤上の所定位置(柱の立設位置)に精度良く設置できる。
【0038】
その後、作業者が、アンカー支持具F1上にアンカーボルトF2を設置する「アンカー設置工程」を行い(ステップS2)、さらに不図示の鉄筋ユニットを組み立てる「鉄筋組み立て工程」を行う(ステップS3)。
このとき、設置された複数のアンカーボルトF2を側方から保持するように不図示の鉄筋ユニットを組み立てると良い。なお、上記ステップS2とステップS3の順番を入れ替えても良い。その場合には、鉄筋ユニットを設置し、当該鉄筋ユニットによって囲まれた領域に上方からアンカーボルトF2を設置すると良い。
【0039】
その後、
図1に示すように、作業者が、基礎となる空間の幅方向の両側部分に基礎用型枠10A、10Bを対向するように組み立てる「型枠組み立て工程」を行い(ステップS4)、さらに基礎用型枠10の上部にアンカー吊り下げ治具20を架設する「治具架設工程」を行う(ステップS5)。
【0040】
その後、
図1、
図3、
図4に示すように、作業者が、アンカー吊り下げ治具20にアンカーボルトF2を吊り下げるように組み付ける「アンカー組み付け工程」を行う(ステップS6)。
このとき、長尺ボルト22aに対し高さ調整ナット22dの螺合位置を調整することで、アンカー定規21に対するアンカーボルトF2の高さ位置を変更することが可能である。
上記ステップS1~S6の工程を行うことで、アンカーボルトF2が位置決めされる。具体的には、アンカー支持具F1及びアンカー定規21によってアンカーボルトF2の水平方向における位置決めを行うことができる。また、アンカー高さ調整部材22によってアンカーボルトF2の高さ方向における位置決めを行うことができる。
なお、アンカー支持具F1のアンカー支持部F1bを例えばボルトナット機構を用いて高さ調整可能となるように構成しても良い。そうすれば、アンカーボルトF2の初期の高さ位置を調整することができる。
【0041】
その後、
図2、
図6Aに示すように、作業者が、アンカー吊り下げ治具20の上部に位置確認治具30を取り付ける「治具取り付け工程」を行う(ステップS7)。
このとき、位置確認治具30を、柱の芯位置となる部分を通過し、上面視において第1アンカーボルトF2A、第2アンカーボルトF2B及び第3アンカーボルトF2Cによって支持されるように取り付ける。
詳しく述べると、アンカー高さ調整部材22の上端部に位置確認プレート31を取り付けて、位置確認プレート31の中心部分に下げ振り32を垂れ下げるように取り付ける。
【0042】
その後、
図6B、
図6Cに示すように、作業者が、基礎用型枠10内に基礎コンクリートF4を打設する「コンクリート打設工程」を行う(ステップS8)。そして、打設された基礎コンクリートF4が固まる前に、基礎コンクリートF4上に柱支持具F3(シア金物)を一部埋設した状態で設置する「柱支持具設置工程」を行う(ステップS9)。
柱支持具F3を設置する工程では、下げ振り32(振り子32c)を目印とし、下げ振り32の真下位置に柱支持具F3を設置する。また、基礎コンクリートF4上に柱支持具F3(シア金物)を一部埋設した状態で設置する。
上記ステップS9の工程を終えて、一連の作業工程を終了する。
なお、上記作業工程の終了後には、基礎施工治具1を取り外す(
図6D参照)。
【0043】
上記基礎施工方法であれば、建物の基礎を施工するにあたって、柱の芯位置を容易に確認することが可能となる。
また、基礎コンクリート上において柱の芯位置となる部分に柱支持具(シア金物)を容易に設置することが可能となる。
【0044】
なお、上記基礎施工方法において、各作業工程の順番を適宜入れ替えても良い。
例えば、S1の「支持具固定工程」、S2の「アンカー設置工程」、S3の「鉄筋組み立て工程」の前に、S4の「型枠組み立て工程」、S5の「治具架設工程」を先に行っても良い。そのとき、S2の「アンカー設置工程」及びS6の「アンカー組み付け工程」を同時に行うこととしても良い。
また例えば、アンカー吊り下げ治具20に位置確認治具30を予め組み付けておいても良い。すなわち、S5の「治具架設工程」にて、位置確認治具30付きのアンカー吊り下げ治具20を架設することとしても良い。その場合には、S7の「治具取り付け工程」を省くことができる。
また例えば、アンカー支持具F1を不要としても良い。その場合には、S1の「支持具固定工程」を省くことができる。
【0045】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図2に示すように、位置確認治具30が、位置確認プレート31と、下げ振り32とを備えているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、位置確認治具30が位置確認プレート31のみを備え、下げ振り32を不要の構成としても良い。
【0046】
上記実施形態では、
図2に示すように、位置確認プレート31が、平板状のプレート体として形成されているが、特に限定されることなく変更可能である。
すなわち、位置確認治具30(位置確認プレート31)は、できる限りコンパクトな形状であることが好ましいが、所定の形状を有する位置確認部材であっても良い。
【0047】
上記実施形態では、
図2、
図5に示すように、位置確認治具30が、T字形状からなり、3つのアンカーボルトF2(厳密には、3つの長尺ボルト22a)によって3点支持されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、位置確認治具30が、十字形状からなり、4つのアンカーボルトF2によって4点支持されていても良い。その場合には、位置確認治具30をより安定して組み付けることができる。
あるいは、位置確認治具30が、2つのアンカーボルトF2によって2点支持されていても良い。その場合であっても、位置確認治具30と、アンカー吊り下げ治具20との上下方向の間にスペース(隙間)を形成することができる。
【0048】
上記実施形態では、
図3、
図4に示すように、アンカー高さ調整部材22が、長尺ボルト22a及び高さ調整ナット22dから構成される「高さ調整手段」を備えているが、当該高さ調整手段について特に限定されることなく変更可能である。
例えば、機械的構造による公知な高さ調整手段を採用しても良い。
【0049】
上記実施形態では、主として本発明に係る位置確認治具、基礎施工治具及び基礎施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
F 基礎
F1 アンカー支持具
F1a 支持ベース
F1b アンカー支持部
F1c 鉄筋支持部
F2 アンカーボルト
F2A 第1アンカーボルト
F2B 第2アンカーボルト
F2C 第3アンカーボルト
F2a アンカー本体部
F2b アンカーネジ部
F2c アンカー定着部
F3 柱支持具(シア金物)
F3a 支持プレート
F3b 枠状連結部
F3c 軸連結部
F3d 埋設部
F4 基礎コンクリート
1 基礎施工治具
10(10A、10B) 基礎用型枠
20 アンカー吊り下げ治具
21 アンカー定規
21a 型枠固定部
21b アンカー支持部
21c 連結部
21d 組み付け穴
22 アンカー高さ調整部材
22a 長尺ボルト
22b、22c 挟持ナット
22d 高さ調整ナット
30 位置確認治具
31 位置確認プレート(位置確認部材)
31a 第1延出部
31b 第2延出部
31c 組み付け穴
31d 挿通孔
32 下げ振り
32a 支持体
32b 下げ振り糸
32c 振り子
33 支持ナット