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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067694
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】キャパシタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 201L
H01G4/30 201D
H01G4/30 201G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032223
(22)【出願日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0146877
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ス ジ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることができるキャパシタ部品を提供する。
【解決手段】
本開示によるキャパシタ部品は、内部電極層、及び隣接する上記内部電極層の間に配置された誘電体層を含む本体と、上記本体の一面に配置される外部電極と、を含み、上記内部電極層及び上記誘電体層のそれぞれは、モリブデン(Mo)を含有し、上記誘電体層は、厚さ方向の中央部と、上記中央部と上記内部電極層との間に配置された外郭部を有し、上記誘電体層の中央部に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、上記誘電体層の外郭部に含有されたモリブデン(Mo)含有量よりも少ない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極層、及び隣接する前記内部電極層の間に配置された誘電体層を含む本体と、
前記本体の一面に配置される外部電極と、を含み、
前記内部電極層及び前記誘電体層のそれぞれは、モリブデン(Mo)を含有し、
前記誘電体層は、厚さ方向の中央部と、前記中央部と前記内部電極層との間に配置された外郭部を有し、
前記誘電体層の中央部に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、前記誘電体層の外郭部に含有されたモリブデン(Mo)含有量よりも少ない、キャパシタ部品。
【請求項2】
前記誘電体層の外郭部は、前記誘電体層と前記内部電極層との界面から前記誘電体層の中央部側に50nmまでの領域である、請求項1に記載のキャパシタ部品。
【請求項3】
前記誘電体層の外郭部に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、前記外郭部の互いに離隔した5つ以上の地点におけるモリブデン(Mo)含有量に対する平均値である、請求項2に記載のキャパシタ部品。
【請求項4】
前記誘電体層の中央部に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、前記中央部の互いに離隔した5つ以上の地点におけるモリブデン(Mo)含有量に対する平均値である、請求項3に記載のキャパシタ部品。
【請求項5】
前記誘電体層の中央部においてモリブデン(Mo)は、バリウム(Ba)100at%に対して0.05at%以上0.5at%以下含有された、請求項1から4のいずれか一項に記載のキャパシタ部品。
【請求項6】
前記誘電体層の外郭部においてモリブデン(Mo)は、バリウム(Ba)100at%に対して0.5at%以上1at%以下含有された、請求項5に記載のキャパシタ部品。
【請求項7】
前記内部電極層に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、前記誘電体層の中央部に含有されたモリブデン(Mo)含有量よりも多い、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャパシタ部品。
【請求項8】
前記内部電極層に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、前記誘電体層の外郭部に含有されたモリブデン(Mo)含有量よりも多い、請求項7に記載のキャパシタ部品。
【請求項9】
前記内部電極層に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、前記内部電極層の厚さ方向の中央部の互いに離隔した5つ以上の地点におけるモリブデン(Mo)含有量に対する平均値である、請求項8に記載のキャパシタ部品。
【請求項10】
前記内部電極層においてモリブデン(Mo)は、ニッケル(Ni)100wt%に対して0.1wt%以上5wt%以下含有された、請求項7に記載のキャパシタ部品。
【請求項11】
前記外部電極は、
前記本体に配置された第1電極層、及び前記第1電極層に配置された第2電極層を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のキャパシタ部品。
【請求項12】
前記第2電極層は、ニッケル(Ni)及びスズ(Sn)の少なくとも一つを含む、請求項11に記載のキャパシタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ部品の一つであるMLCCは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、通信、コンピュータ、家電、自動車などの産業に用いられる重要なチップ部品であり、特に、携帯電話、コンピュータ、デジタルTVなどの各種電気、電子、情報通信機器に用いられる核心受動素子である。
【0003】
MLCCの高性能化の要求に応じて、誘電体層はますます薄くなっている。しかし、誘電体層が薄くなると容量は向上させることができるが、その他の特性、例えば、温度特性及びDC-biasなどの電気的特性及び信頼性が低下するという問題が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第2021-0071496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、信頼性を向上させることができるキャパシタ部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、内部電極層、及び隣接する上記内部電極層の間に配置された誘電体層を含む本体と、上記本体の一面に配置される外部電極と、を含み、上記内部電極層及び上記誘電体層のそれぞれは、モリブデン(Mo)を含有し、上記誘電体層は、厚さ方向の中央部と、上記中央部と上記内部電極層との間に配置された外郭部を有し、上記誘電体層の中央部に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、上記誘電体層の外郭部に含有されたモリブデン(Mo)含有量よりも少ない、キャパシタ部品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によると、キャパシタ部品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るキャパシタ部品を概略的に示した図面である。
図2図1のI-I'線に沿った断面を概略的に示した図面である。
図3】本体の一領域に対するTEMイメージを概略的に示した図面である。
図4】本体の一領域に対するTEMイメージを概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0010】
また、各実施形態の図面に示された同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。
【0011】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0012】
また、明細書全体において、「上に」形成されるというのは、直接的に接触して形成されることを意味するだけでなく、間に他の構成要素をさらに含むことを意味することができると文脈に応じて適切に解釈されるべきである。
【0013】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体において類似する部分については、類似した図面符号を付与する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るキャパシタ部品を概略的に示した図面であり、図2は、図1のI-I'線に沿った断面を概略的に示した図面であり、図3及び図4のそれぞれは、本体の一領域に対するTEMイメージを概略的に示した図面である。
【0015】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るキャパシタ部品100は、本体110並びに第1及び第2外部電極130、140を含む。
【0016】
本体110は、キャパシタ容量の形成に寄与する部分としての活性領域と、上下マージン部として活性領域の上下部にそれぞれ形成される上部カバー112、及び下部カバー113を含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、本体110は形状に特に制限はないが、実質的に六面体状であることができる。すなわち、本体110は、内部電極層121、122の配置に応じた厚さの差及び角部の研磨により、完全な六面体状ではないが、実質的に六面体に近い形状を有することができる。
【0018】
本発明の実施形態を明確に説明するために、六面体の方向を定義すると、図面上に示されたL、W及びTは、それぞれ長さ方向、幅方向及び厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向は、誘電体層が積層された積層方向と同一概念として用いることができる。
【0019】
また、本体110において、T方向に互いに対向する両面を第1面1及び第2面2と定義し、第1面1及び第2面2と連結され、L方向に互いに対向する両面を第3面3及び第4面4と定義し、第1面1及び第2面2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、かつW方向に互いに対向する両面を第5面5及び第6面6と定義する。このとき、第1面1は実装面となることができる。
【0020】
上記活性領域は、複数の誘電体層111と、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極層121、122とが交互に積層される構造からなることができる。
【0021】
誘電体層111は、高誘電率を有するセラミック粉末、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO)系粉末を用いて形成されることができ、本発明がこれに限定されるものではない。ここで、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系粉末を用いて誘電体層111が形成されるというのは、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末を主成分とし、主成分に副成分粉末を追加したものを用いたことを意味することができる。副成分は、チタン酸バリウム(BaTiO)のペロブスカイト構造(ABO)において、バリウム(Ba)及び/またはチタン(Ti)の格子位置、すなわち、A-site及び/またはB-siteを置換(substitute)または侵入(interstitial)することができる元素のカチオンを含む化合物(酸化物及び窒化物などを意味する)を含むことができる。
【0022】
誘電体層111の厚さは、キャパシタ部品100の容量設計に合わせて任意に変更することができ、本体110の大きさ及び容量を考慮して1層の厚さは焼成後に0.1μm~10μmとなるように構成することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。一方、誘電体層111の厚さとは、W方向の中央部で切り取った本体100のL-T断面に対する光学顕微鏡写真、SEM写真またはTEM写真に示されたいずれか一つの誘電体層111のT方向に沿った数値(dimension)をL方向に複数回測定した算術平均値を意味することができる。ここで、L方向に沿った複数回測定は、L方向に沿って等間隔であることができるが、これに制限されるものではない。または、誘電体層111の厚さとは、上記写真に示された複数の誘電体層111のそれぞれについて、上述したT方向に沿った数値の算術平均値を求め、これらの合計を誘電体層111の総数で割った値を意味することができる。
【0023】
第1内部電極層121及び第2内部電極層122は、誘電体層111を間に挟んで互いに向かい合うように配置されることができる。
【0024】
第1内部電極層121及び第2内部電極層122は、誘電体層111を形成するための誘電体グリーンシート上に所定厚さで導電性金属を含む導電性ペーストを印刷して誘電体グリーンシートを間に挟んで誘電体グリーンシートの積層方向に沿って積層した後、このような積層体を焼結することにより形成されることができる。第1内部電極層121及び第2内部電極層122は、積層体が焼結されて形成された本体110の第3面3及び第4面4を介して交互に露出するように形成されることができ、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁されることができる。
【0025】
このような第1内部電極層121及び第2内部電極層122は、本体110の第3面3及び第4面4を介して交互に露出する部分によって第1外部電極130及び第2外部電極140とそれぞれ電気的に連結されることができる。
【0026】
したがって、第1外部電極130及び第2外部電極140に電圧を印加すると、互いに対向する第1内部電極層121及び第2内部電極層122の間に電荷が蓄積され、このとき、キャパシタ部品100の静電容量は、第1内部電極層121及び第2内部電極層122の互いに重なる領域の面積に比例するようになる。
【0027】
このような第1内部電極層121及び第2内部電極層122の厚さは用途に応じて決定されることができ、例えば、セラミック本体110の大きさ及び容量を考慮して0.1μm~1.0μmの範囲内になるように決定されることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。一方、例えば、第1内部電極層121の厚さとは、上述した誘電体層111の厚さに対する測定方法と同一測定方法で算出されることができる。
【0028】
誘電体層111及び第1内部電極層121、第2内部電極層122のそれぞれは、モリブデン(Mo)を含有することができる。すなわち、誘電体層111はモリブデン(Mo)を含有することができ、第1内部電極層121はモリブデン(Mo)を含有することができ、第2内部電極層122はモリブデン(Mo)を含有することができる。
【0029】
誘電体層111がモリブデン(Mo)を含有する場合、モリブデン(Mo)がドナー(Donor)として機能し、誘電体層111の信頼性特性を改善することができる。すなわち、例えば、誘電体層111がBaTiO系誘電体を含む場合、+6価と知られているモリブデン(Mo)がBaTiO系誘電体のTi位のうち少なくとも一部を置換することができるが、このとき、モリブデン(Mo)がドナー(donor)として適用して誘電体層111において酸素空孔の濃度を下げることができる。これにより、誘電体層111の信頼性特性が改善されることができる。
【0030】
第1内部電極層121、第2内部電極層122がモリブデン(Mo)を含む場合、第1内部電極層121、第2内部電極層122の信頼性特性を改善することができる。すなわち、第1内部電極層121、第2内部電極層122に含まれているモリブデン(Mo)は、可塑及び焼成の熱処理過程中にほとんど第1内部電極層121、第2内部電極層122のニッケル(Ni)と合金を形成するようになるが、モリブデン(Mo)の融点(2623℃)は、ニッケル(Ni)の融点(1455℃)よりも1000℃以上高いため、第1内部電極層121、第2内部電極層122がニッケル(Ni)-モリブデン(Mo)合金を含む場合、大きい熱的安定性を有するようになる。さらに、ニッケル(Ni)-モリブデン(Mo)合金の場合、異種元素であるモリブデン(Mo)が第1内部電極層121、第2内部電極層122を構成する結晶粒の結晶粒界(grain boundary)にpinningされる傾向が優勢であるため、第1内部電極層121、第2内部電極層122の結晶粒を小さくすることができる。また、ニッケル(Ni)-モリブデン(Mo)合金の場合、他のニッケル系合金と比較して、拡散係数の差が100倍以上があるため、焼結過程中に影響を及ぼして第1内部電極層121、第2内部電極層122の平坦度及び連結性が改善されることができる。また、ニッケル(Ni)-モリブデン(Mo)合金は、耐腐食性に優れた合金として広く知られているが、本実施形態の場合、第1内部電極層121、第2内部電極層122がニッケル(Ni)-モリブデン(Mo)合金を含むようになるため、外部電極などを形成するためのめっき工程におけるニッケル(Ni)腐食による不良を改善することができる。これにより、高温高湿信頼性の評価においても改善された特性を示すことができる。さらに、ニッケル(Ni)-モリブデン(Mo)合金は、主に第1内部電極層121、第2内部電極層122の界面領域に分布するようになるが、モリブデン(Mo)の融点(2623℃)は誘電体であるBaTiOの融点(1625℃)よりも非常に高いため、焼結時に発生する第1内部電極層121、第2内部電極層122と誘電体層111との間の焼結mismatchを克服することにおいて効果的である。
【0031】
誘電体層111は、厚さ方向Tに中央部111aと、中央部111aと第1内部電極層121、第2内部電極層122との間に配置された外郭部111bを有することができ、誘電体層111の中央部111aに含有されたモリブデン(Mo)含有量は、誘電体層111の外郭部111bに含まれたモリブデン(Mo)含有量よりも少ないことができる。第1内部電極層121、第2内部電極層122のモリブデン(Mo)含有量は、誘電体層111の中央部111a及び外郭部111bのそれぞれのモリブデン(Mo)含有量よりも高いことができる。すなわち、誘電体層111においてモリブデン(Mo)含有量は、領域別に相違し、誘電体層111のうち第1内部電極層121、第2内部電極層122と比較的近い外郭部111bでさらに高いことができる。これは、第1内部電極層121、第2内部電極層122に比較的高い含有量で含有されたモリブデン(Mo)が焼結過程中に誘電体層111に拡散するためである可能性があるが、本発明の範囲はこれに制限されるものではない。誘電体層111のうち第1内部電極層121、第2内部電極層122と比較的近い外郭部111bでモリブデン(Mo)含有量がさらに高いため、本実施形態に係るキャパシタ部品1の信頼性を向上させることができる。具体的には、モリブデン(Mo)の融点(2623℃)は、誘電体であるBaTiOの融点(1625℃)よりも非常に高いため、誘電体層111と第1内部電極層121、第2内部電極層122との間の界面に近い領域にモリブデン(Mo)含有量を増加させることで焼結時に発生する第1内部電極層121、第2内部電極層122と誘電体層111との間の焼結mismatchを減少させることができる。ここで、誘電体層111の外郭部111bは、誘電体層111と第1内部電極層121、第2内部電極層122との間の界面から誘電体層111の中央部111a側に50nmまでの領域を意味することができる。また、誘電体層111の中央部111aは、誘電体層111のうち誘電体層111の上下部の外郭部111bを除外した領域を意味することができる。
【0032】
誘電体層111の中央部111aに含有されたモリブデン(Mo)含有量は、キャパシタ部品1の幅方向Wの中央で切り取った長さ方向-厚さ方向の断面(LT断面)において、誘電体層111の中央部111aの複数の地点に対してTEM-EDSマッピングを行い、各地点別にモリブデン(Mo)含有量を取得し、これを算術平均して導出することができる。例えば、図3を参照すると、誘電体層111の中央部111aのモリブデン(Mo)含有量は、誘電体層111の中央部111aの100nm間隔で互いに離隔した5つのポイントにTEM-EDSを行い、これにより取得したモリブデン(Mo)含有量に対する算術平均値を意味することができる。誘電体層111の外郭部111bに含有されたモリブデン(Mo)含有量は、キャパシタ部品1の幅方向Wの中央で切り取った長さ方向-厚さ方向の断面(LT断面)において、誘電体層111の外郭部111bの複数の地点に対してTEM-EDSマッピングを行い、各地点別にモリブデン(Mo)含有量を取得し、これを算術平均して導出することができる。例えば、図3を参照すると、誘電体層111の外郭部111bのモリブデン(Mo)含有量は、それぞれ誘電体層111と第1内部電極層121、第2内部電極層122との間の界面から誘電体層111の中央部111a側に50nm離れており、100nm間隔で互いに離隔した5つのポイントにTEM-EDSを行い、これにより取得したモリブデン(Mo)含有量に対する算術平均値を意味することができる。第1内部電極層121、第2内部電極層122に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、キャパシタ部品1の幅方向Wの中央で切り取った長さ方向-厚さ方向の断面(LT断面)において、厚さ方向Tの中央に配置されたいずれか一つの第1内部電極層121、第2内部電極層122の複数の地点に対してTEM-EDSマッピングを行い、各地点別にモリブデン(Mo)含有量を取得し、これを算術平均して導出することができる。例えば、図4を参照すると、第1内部電極層121、第2内部電極層122に含有されたモリブデン(Mo)含有量は、第1内部電極層121、第2内部電極層122の厚さ方向Tの中央にそれぞれ配置され、100nm間隔で互いに離隔した5つのポイントにTEM-EDSを行い、これにより取得したモリブデン(Mo)含有量に対する算術平均値を意味することができる。
【0033】
誘電体層111の中央部111aにおいて、モリブデン(Mo)は、例えば、バリウム(Ba)100at%に対して0.05at%以上0.5at%以下含有されることができる。モリブデン(Mo)含有量が0.05at%未満の場合には、加速寿命テスト(HALT)で不良が発生する可能性がある。モリブデン(Mo)含有量が0.5at%超過の場合には、加速寿命評価(HALT:Highly Accelerated Life Time Test)で不良が発生する可能性があり、耐電圧特性が低下することがある。誘電体層111の外郭部111bにおいて、モリブデン(Mo)は、バリウム(Ba)100at%に対して0.5at%以上1at%以下含有されることができる。
【0034】
第1内部電極層121、第2内部電極層122において、モリブデン(Mo)は、ニッケル(Ni)100wt%に対して0.1wt%以上5wt%以下含有されることができる。0.1wt%未満または5wt%超過の場合、耐電圧特性の低下、加速寿命テスト(HALT)不良、及び8585テスト不良の少なくとも一つが発生する可能性がある。
【0035】
上部及び下部カバー112、113は、内部電極層を含まないことを除いては、上記活性領域の誘電体層111と同一材料で形成されることができる。または、カバー112、113は、誘電体層111と異なる材質であるセラミック誘電体粉末を用いて形成されることができる。ここで、カバー112、113が誘電体層111と異なる材質のセラミック誘電体粉末を用いて形成されるとは、カバー112、113を形成するために用いられる誘電体粉末と、誘電体層111を形成するための誘電体粉末が互いに同一元素で構成されるが、これらの比、上述した副成分の元素の種類、または上述した副成分の元素の含有量が異なることを意味することもできる。
【0036】
上部カバー112及び下部カバー113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を上記活性領域の上下面にそれぞれT方向に積層して形成されたものと見なされ、基本的に物理的または化学的ストレスによる第1内部電極層121及び第2内部電極層122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0037】
外部電極130、140は本体100の第3面3及び第4面4に配置され、第1内部電極層121、第2内部電極層122と連結される。具体的には、第1外部電極130は、本体110の第3面3に配置され、本体110の第3面3に露出した第1内部電極層121と連結される。第2外部電極140は、本体110の第4面4に配置され、本体110の第4面4に露出した第2内部電極層122と連結される。第1外部電極130及び第2外部電極140は、第1電極層131、141及び第1電極層131、141上に配置される第2電極層132、142をそれぞれ含むことができる。一方、第1外部電極130及び第2外部電極140は、第1内部電極層121、第2内部電極層122との連結関係及び本体110に形成された位置のみが異なる。したがって、以下では、説明の便宜のため、本体110の第3面3に配置された第1外部電極130を中心に説明し、第2外部電極140に対する説明は省略する。後述する第1外部電極130に対する説明は、第2外部電極140にも同様に適用されることができる。
【0038】
第1電極層131は、本体110の第3面3を介して露出した第1内部電極層121とそれぞれ接触して直接的に連結されることにより、第1外部電極130と第1内部電極層121との間の電気的導通を確保する。第1電極層131は、例えば、銅(Cu)及び銀(Ag)の少なくとも一つを含む導電性粉末を含む導電性ペーストを塗布した後、これを硬化または焼成したものであることができる。他の例として、第1電極層131は、銅(Cu)めっき層であることができる。
【0039】
第2電極層132は、第1電極層131に配置される。制限されない例として、第2電極層132は電解めっきで形成されためっき層であることができる。第2電極層132は、例えば、ニッケルめっき層及びスズめっき層が順に積層された構造であることができる。
【0040】
第1外部電極130は、本体の第3面3に形成される接続部と、上記接続部から本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6のそれぞれの少なくとも一部まで延長するバンド部を含むことができる。但し、本実施形態の範囲が上記説明に制限されるものではなく、第1外部電極130は、例えば、L型、C型などに多様に変形されることができる。
【0041】
下記の表1は、誘電体層の中央部におけるモリブデン含有量の変化による破壊電圧(Break Down Voltage、BDV)評価及び加速寿命評価(High Accelerated Life Test;HALT)を示す。下記の表2は、誘電体層の中央部でモリブデン含有量を固定し、内部電極層でモリブデン含有量を変化させることによって破壊電圧(BDV)評価、加速寿命評価(HALT)及び耐湿信頼性評価(8585)を行った結果を示す。
【0042】
下記の表において、「誘電体層のMo含有量」は、誘電体層の中央部においてat%単位でモリブデン含有量及びバリウム含有量を測定した後、バリウム(Ba)100at%に対するモリブデンのat%の比を記載した。下記の表において、「内部電極層のMo含有量」は、内部電極層の厚さ方向の中央領域において、wt%単位でモリブデン含有量及びニッケル含有量を測定した後、ニッケル100wt%に対するモリブデンのwt%の比を記載した。
【0043】
下記の実験例は、上述内容のモリブデン含有量のみを異ならせて、他の条件、例えば、i)誘電体グリーンシートの組成、ii)内部電極層形成用導電性ペーストに含まれたセラミック粉末の組成及び含有量、iii)グリーン本体のsize(L×W×T)、iv)昇温条件及び焼結雰囲気などの焼結条件、v)誘電体層の総層数、vi)内部電極層の総層数、vii)内部電極層の平均厚さ、viii)誘電体層の平均厚さ、ix)外部電極組成及び形成条件などを同様にした。例えば、実験例1~5ともに、各内部電極層の平均厚さは480nm、各誘電体層の平均厚さは550nm、内部電極層の総数は287、グリーン本体のsizeはL=785μm、W=440μm、T=430μmと互いに同一である。
【0044】
破壊電圧(Break Down Voltage、BDV)評価は、各実験例当たり20個のサンプルに対して破壊電圧を測定し、これを平均した値が評価基準電圧(例えば、36.5V)に満たない場合を不良(×)と判定した。
【0045】
加速寿命試験(High Accelerated Life Test;HALT)評価は、各実験例当たり40個のサンプルに対して105℃で1.5Vrの直流電圧を印加状態に維持し、絶縁抵抗の劣化程度を測定した。この時、12時間の間、各サンプルを評価して抵抗の劣化する程度を確認し、絶縁抵抗が初期の絶縁抵抗に対して2order以上(10以上)低下するサンプルが1/10以上である場合、不良(×)と判定した。
【0046】
耐湿信頼性評価(8585)は、各実験例当たり40個のサンプルに対して温度85℃、相対湿度85%、及び印加電圧1.5Vrを実験条件で、時間(t)による絶縁抵抗(IR)の変化を測定して行った。6時間の間評価して絶縁抵抗が初期の絶縁抵抗に対して2order以上(10以上)低下するサンプルが1/10以上である場合、不良(×)と判定した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1を参照すると、中央部111aのモリブデン(Mo)含有量(バリウム含有量に対する割合)が0.05未満である実験例1では、加速寿命試験(HALT)で不良が発生した。中央部111aのモリブデン(Mo)含有量(バリウム含有量に対する割合)が0.5超過である実験例5では、BDV評価及びHALT評価のすべてにおいて不良が発生した。
【0049】
【表2】
【0050】
表2を参照すると、内部電極層のモリブデン(Mo)含有量(ニッケル含有量に対する割合)が0.1未満である実験例6及び12では、8585評価で不良が発生した。内部電極層のモリブデン(Mo)含有量(ニッケル含有量に対する割合)が5超過である実験例11及び17では、BDV評価、HALT評価及び8585評価のすべてにおいて不良が発生した。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0052】
100 キャパシタ部品
110 本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極層
130、140 第1及び第2外部電極
131、141 第1電極層
132、142 第2電極層
図1
図2
図3
図4