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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067735
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ダイブロック装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 25/02 20060101AFI20230509BHJP
   B21C 29/04 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B21C25/02 A
B21C29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114632
(22)【出願日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2021178531
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】川合 佑人
(72)【発明者】
【氏名】西岡 典洋
【テーマコード(参考)】
4E029
【Fターム(参考)】
4E029MA04
4E029MA05
4E029SA01
4E029SA02
4E029SA08
(57)【要約】
【課題】運転位置と交換位置の間を往復移動できる簡易な構成の冷却機構を備える押出成形機におけるダイブロック装置を提供すること。
【解決手段】本発明のダイブロック装置(10)は、押出を行う運転位置(P1)とダイスの交換を行う交換位置(P2)との間を往復移動するダイブロック部(20)と、ダイブロック部に向けて冷却気体(CG)を供給する気体供給部(40)と、を備える。ダイブロック部(20)は、ダイスが支持される支持面(21C,21D)を有するブロック体(21)と、冷却気体(CG)の供給口(24D)と、供給口(24D)からブロック体(21)を貫通して支持面に開口する吐出口(24C)と、を有する気体流路(24)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出を行う運転位置とダイスの交換を行う交換位置との間を往復移動するダイブロック部と、
前記ダイブロック部に向けて冷却気体を供給する気体供給部と、を備え、
前記ダイブロック部は、
前記ダイスが支持される支持面を有するブロック体と、
前記冷却気体の供給口と、前記供給口から前記ブロック体を貫通して前記支持面に開口する吐出口と、を有する気体流路と、を備え、
前記気体供給部は、
前記ダイブロック部が前記運転位置にあるときに、前記供給口を介して前記気体流路に連通するように設けられる供給路を備える、ダイブロック装置。
【請求項2】
前記ダイブロック部は、複数の前記気体流路を備え、
前記気体供給部は、複数の前記気体流路のそれぞれに連通する前記供給路を備える、
請求項1に記載のダイブロック装置。
【請求項3】
前記支持面は、正面視した形状が円弧面をなし、
前記円弧面の曲率中心を基準にして、高さ方向に対して±30°の範囲に前記気体流路の前記吐出口が開口する、
請求項1または請求項2に記載のダイブロック装置。
【請求項4】
前記ブロック体は、押出を担う小径部と、前記小径部に連なる大径部とを備える前記ダイスを保持し、
前記ブロック体は、前記ダイスの前記小径部を支持する小径支持部と、前記ダイスの前記大径部を支持する大径支持部と、を備え、
前記気体流路は、前記小径支持部に設けられる、
請求項1または請求項2に記載のダイブロック装置。
【請求項5】
前記ブロック体は、押出を担う小径部と、前記小径部に連なる大径部とを備える前記ダイスを保持し、
前記ブロック体は、前記ダイスの前記小径部を支持する小径支持部と、前記ダイスの前記大径部を支持する大径支持部と、を備え、
前記気体流路は、前記大径支持部に設けられる、
請求項1または請求項2に記載のダイブロック装置。
【請求項6】
前記ブロック体は、温度センサを内蔵し、
前記温度センサによる前記ブロック体の検出温度が、予め設定される設定温度を超えると、前記供給路に前記冷却気体が供給される、
請求項1または請求項2に記載のダイブロック装置。
【請求項7】
前記ブロック体は、ヒータを内蔵し、
前記検出温度が予め設定される設定温度を超えると、前記ヒータによる加熱設定温度を低下させて、さらに前記検出温度を予め定められる設定時間だけ監視し、前記検出温度が前記設定温度を超えていると、前記検出温度が前記設定温度を下回るまで、前記供給路に前記冷却気体が供給される、
請求項6に記載のダイブロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出プレス機に用いられるダイブロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出プレス機は、加工容易な金属材料、例えば、アルミニウム又はその合金(以後:アルミ材)をダイスに押圧させて、所定断面形状のアルミ製品を連続的にダイスから押し出す(押出成形)ことによりアルミ製品を製造する装置である。ダイスには、アルミ製品の断面形状を模した開口部が形成されており、押出成形された長尺のアルミ製品は所定の長さに切断されて個々のアルミ製品となる。
【0003】
従来の押出プレス機とその押出工程について図1を参照しながら説明する。図1は、詳細な構成の図示を割愛した押出プレス機100の構成の概要を示す概略断面側面図である。押出成形されるアルミ材は、製造する押出製品Wに見合った所定の直径の円筒形のビレットBとして形成され、コンテナ1内の空隙であるビレット収納部1Aに挿入される。
【0004】
押出圧力を発生させるメインシリンダ4は、シリンダロッドを前進させるための油室のみを有する油圧シリンダを構成し、メインラム4Aがシリンダロッドに相当する。そして、このメインラム4Aに押出ステム3が取り付けられている。メインポンプユニット5から油圧回路を介してメインシリンダ4の油室に供給される作動油によって、メインラム4Aの位置(ラム位置)がダイス2側に移動(前進/図1の右側)すると、押出ステム3も移動(前進)し、ビレットBをダイス2に押圧させる。この押圧により、ビレットBはコンテナ1内で加圧され、ダイス2の、押出製品Wの断面形状を模した開口部から連続的に押し出される。6がエンドプラテン、6aがエンドプラテン6に埋設され、ダイス2に作用する押圧力を受けるプレッシャーリングである。なお、図1では、図を簡単にするためにメインポンプユニット5を油圧ポンプとして図示している。
【0005】
図1では図示を省略しているが、ダイス2は複数の部材から構成され、また、ダイブロック(ダイカセットとも呼称される)に収納されて、押出工程時の押出運転位置と押出プレス機から離間したダイス交換位置との間をダイスライド機構(図示せず)により、移動可能に配置される。ダイス2は、小径部2Aと大径部2Bを備えるが、小径部2Aの部分が押出を担う部分である。
【0006】
そして、ダイブロックには、特許文献1のように、押出方向と平行に、複数の加熱手段が配置されることがある。これは、押出成形のために、予め400℃程度に予熱されたビレットに対して、ダイス2の周面を加熱して所望の温度に保持することにより、押出製品の寸法精度不良や形状不良を防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-085830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、押出工程が継続されると、ダイスの押出製品の断面形状を模した開口を有する押出を担う部分の内周面と押し出される押出製品との摩擦によってダイスの温度が上昇する。このダイスの温度上昇は押出製品の品質の低下を招く虞がある。一方、ダイスの温度上昇を抑制するために、ダイブロックに冷却機構を配置しようとすると、ダイブロックはダイスライド機構によって押出運転位置(運転位置)とダイス交換位置(交換位置)との間を移動するため、冷却機構も移動させる必要があり、冷却機構の配管が複雑になるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、運転位置と交換位置の間を往復移動できる簡易な構成の冷却機構を備える押出成形機におけるダイブロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明におけるダイブロック装置は、押出を行う運転位置とダイスの交換を行う交換位置との間を往復移動するダイブロック部と、ダイブロック部に向けて冷却気体を供給する気体供給部と、を備える。
ダイブロック部は、ダイスが支持される支持面を有するブロック体と、冷却気体の供給口と、供給口からブロック体を貫通して支持面に開口する吐出口と、を有する気体流路と、を備える。
気体供給部は、ダイブロック部が運転位置にあるときに、供給口を介して気体流路に連通するように設けられる供給路を備える。
【0011】
本発明におけるダイブロック部は、複数の気体流路を備え、気体供給部は、複数の気体流路のそれぞれに連通する供給路を備えることができる。
【0012】
本発明における支持面は、正面視した形状が円弧面をなし、円弧面の曲率中心を基準にして、高さ方向に対して±30°の範囲に気体流路の吐出口が開口することができる。
【0013】
本発明におけるブロック体は、押出を担う小径部と、小径部に連なる大径部とを備えるダイスを保持し、ブロック体は、ダイスの小径部を支持する小径支持部と、ダイスの大径部を支持する大径支持部と、を備えることができる。
そして、気体流路は、小径支持部および大径支持部の一方または双方に設けられる。
【0014】
本発明におけるブロック体は、好ましくは、温度センサを内蔵し、温度センサによるブロック体の検出温度が、予め設定される設定温度を超えると、供給路に冷却気体が供給される。
【0015】
本発明におけるブロック体は、好ましくは、ヒータを内蔵し、検出温度が予め設定される設定温度を超えると、ヒータによる加熱設定温度を低下させて、さらに検出温度を予め定められる設定時間だけ監視し、検出温度が設定温度を超えていると、検出温度が設定温度を下回るまで、供給路に冷却気体が供給される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るダイブロック装置は、運転位置と交換位置との間を往復移動するダイブロック部に気体流路を設ける一方、ダイブロック部が運転位置にあるときには、気体供給部の供給路が気体流路に連通する。そして、ダイブロック部が運転位置から交換位置に移動すると、気体流路と供給路の連通が解除される。このように、ダイブロック部の位置の如何に関わらず、気体供給部は位置が固定されている。したがって、気体供給部が供給路の他の要素、例えば開閉切替弁、ストップバルブなどを備えていても、ダイブロック部の移動に合わせてこれら関連構成を移動させる必要はない。したがって、本発明によるダイブロック装置はダイスを冷却する冷却機構を備えていても、冷却機構が複雑になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】押出プレス機の構成の概要を示す概略断面側面図である。
図2】第1実施形態に係るダイブロック装置を示す図であって、図1のA-A矢視相当図である。
図3】第1実施形態に係るダイブロック装置を示す図であって、図2のB-B矢視図である。
図4】第1実施形態に係るダイブロック装置を示す図であって、図2のC-C矢視図である。
図5】第1実施形態に係るダイブロック装置を示す図であって、図1のA-A矢視相当図であり、ダイブロックのダイス交換位置への移動を示す図である。
図6】第1実施形態に係るダイブロック装置の変更例を示す図である。
図7】第1実施形態に係るダイブロック装置における冷却気体CGの第1制御形態を示すフロー図である。
図8】第1実施形態に係るダイブロック装置における冷却気体CGの第2制御形態を示すフロー図である。
図9】第2実施形態に係るダイブロック装置を示す図であって、図2のC-C矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
[第1実施形態:図2図3図4図5図6図7
第1実施形態に係る押出プレス機100のダイブロック装置10について図2乃至図7を参照して説明する。図2は第1実施形態に係るダイブロック装置10を示す図であって、図1のA-A矢視相当図である。同様に、図3図4も第1実施形態に係るダイブロック装置10を示す図であって、図3図2のB-B矢視図、図4図2のC-C矢視図である。
【0020】
ダイブロック装置10は、図2図4に示されるように、ダイブロック体21を含むダイブロック部20と、ダイブロック体21に冷却気体CGを供給する気体供給部40と、を備える。ダイブロック部20は、図2に示される運転位置P1と図5に示される交換位置P2との間を幅方向Yに往復移動可能とされる。これに対して気体供給部40は位置が固定される。気体供給部40は、後述するように複数種類の構成を備えるが、その位置が固定されているために、構造が簡易である。以下、ダイブロック部20、気体供給部40の順にその構成を説明した後に、ダイブロック装置10の動作を説明する。
【0021】
[ダイブロック部20:図2図4
図2乃至図4に示すように、ダイブロック部20は、ダイス2を収容して支持するダイブロック体21と、ダイブロック体21に内蔵されるヒータ22および温度センサ23と、を備える。また、ダイブロック部20は、ダイブロック体21に保持されるダイス2に向けて冷却気体CGを供給する気体流路24A,24Bを備えている。
【0022】
[ダイブロック体21]
ダイブロック体21は、ダイス2の小径部2Aを支持する小径支持部21Aと、ダイス2の大径部2Bを支持する大径支持部21Bと、を備える。図1に示されるように、小径支持部21Aがコンテナ1の側に配置され、大径支持部21Bがエンドプラテン6の側に配置される。したがって、コンテナ1の側(図2の手前側)において小径支持部21Aが小径部2Aを保持し、エンドプラテン6の側において大径支持部21Bが大径部2Bを支持する。図1に示されるように、ビレットBはダイス2の小径部2Aにおいて押出成形されて押出製品Wとなり、押出製品Wは大径部2Bおよびエンドプラテン6を順に通過する。
【0023】
ダイブロック体21の小径支持部21Aおよび大径支持部21Bは、それぞれダイス2の小径部2Aおよび大径部2Bを支持する小径支持面21Cおよび大径支持面21Dを備える。小径支持面21Cおよび大径支持面21Dは、正面視して、どちらも円弧面から構成される。この円弧面で取り囲まれる領域が、ダイス2の収容スペース21Sとなる。ただし、小径支持面21Cのほうが大径支持面21Dよりも曲率半径が小さい。ダイブロック体21によるダイス2の保持において、小径支持面21Cに小径部2Aが接し、大径支持面21Dに大径部2Bが接するが、ダイブロック体21とダイス2の間に冷却気体CGが流通する程度の隙間が存在する。
【0024】
小径支持面21Cおよび大径支持面21Dは、それぞれ下方支持面21Eと、下方支持面21Eに連なる一対の側方支持面21F,21Fと、を備える。側方支持面21F,21Fは、間に挟まれる収容スペース21Sの幅方向Yの両側に対向して設けられる。詳しくは後述するように、下方支持面21Eに対応して気体流路24A,24Bが設けられる。
【0025】
ダイブロック部20は、図示しないスライド装置により、押出方向Xと直交する幅方向Yに、運転位置P1(図2)と交換位置P2(図5)との間を往復移動することができる。そのため、ダイブロック部20は幅方向Yに延びる案内部材31(図4)を介して下部ギブ33の上に配置されている。そして、下部ギブ33は、エンドプラテン6から突出するように配置された下部ギブ支持部材35に支持されている。図2はダイブロック部20が運転位置P1にある状態を示し、図5はダイブロック部20が交換位置P2にある状態を示している。なお、ダイブロック部20の上方にも、ダイブロック体21の押出方向Xと直交する幅方向Yにおける、運転位置P1と交換位置P2との間の往復直線移動を案内する案内部材があるが、図を見易くする為、図示を割愛している。
【0026】
[ヒータ22,温度センサ23]
ダイブロック部20のダイブロック体21には、図2及び図3に示されるように、ヒータ22と温度センサ23とが内蔵されている。ヒータ22及び温度センサ23は、ダイブロック体21の大径支持部21Bの後端から前端まで穿孔される挿入孔(図2の奥/図3の上方)に挿入されることで、ダイブロック体21に内蔵される。
【0027】
ヒータ22は、例えば棒状のセラミックヒーター、電熱線ヒータ等の対象物を加熱し得る機器が広く採用される。ヒータ22は、その長さ方向が押出方向Xに沿うように設けられる。また、本実施形態において、複数のヒータ22がダイブロック体21のそれぞれが円弧状をなす小径支持面21Cおよび大径支持面21Dを取り囲むように配置されている。本実施形態においては、気体流路24Aと気体流路24Bの間にはヒータ22は設けられていない。ただし、気体流路(24A、24B)の配置によっては、両流路間にヒータ22が設けられる場合もある。
温度センサ23は、例えば熱電対、サーミスタ(thermister)、白金測温抵抗体、バイメタル式温度計等の温度を計測できる機器が広く採用される。一例として、温度センサ23も複数設けられるが、小径支持面21Cおよび大径支持面21Dの上端近傍の幅方向Yの両側に温度センサ23A,23Bが一つずつと、小径支持面21Cおよび大径支持面21Dの下端近傍に温度センサ23Cが一つ設けられる。
【0028】
[気体流路24A,24B:図2図4
ダイブロック部20は、図2および図4に示されるように、気体供給部40から供給される冷却気体CGをダイブロック体21に収容されるダイス2に向けて吐出する気体流路24A,24Bを備える。気体流路24A,24Bは、小径支持部21Aの外周面と小径支持面21Cとの間を貫通して、高さ方向Zに沿って形成される空隙である。気体流路24A,24Bは、気体供給部40からの冷却気体CGが供給される供給口24D,24Dと、供給される冷却気体CGがダイス2の小径部2Aに向けて吐出される吐出口24C,24Cと、を備えている。
【0029】
本実施形態における一対の気体流路24A,24Bは、円弧状の小径支持面21Cの曲率中心Cを通る高さ方向Zに延びる線分CL(図6を参照)を中心にして対称の位置に設けられている。それぞれの気体流路24A,24Bから吐出される冷却気体CGは、ダイブロック体21の小径支持部21Aとダイス2の小径部2Aとの間の隙間を通じて、主に下方支持面21Eから側方支持面21F,21Fに向けて流れ、小径支持部21Aとダイス2を冷やす。この冷却気体CGの主な流れは、ヒータ22が設けられている領域に対応している。気体流路24Aと気体流路24Bの間においても小径支持部21Aと小径部2Aの間を冷却気体CGは流れる。
【0030】
気体流路24は、ダイブロック体21の幅方向Yへの往復移動に伴ってその位置が移動する。なお、ここでは小径支持部21Aを穿孔して形成される空隙からなる気体流路24を説明したが、配管を用いて気体流路24を形成してもよい。
【0031】
ここで、図6において、線分CL上の曲率中心Cを基準にして±30°の中心角の範囲を下方エリアαと称し、下方エリアαよりも上方の領域を側方エリアβ,βと称する。温度センサ23A,23Bは側方エリアβ,βに設けられ、温度センサ23Cは下方エリアαに設けられる。また、気体流路24A,24Bも下方エリアαに設けられる。
【0032】
[気体供給部40:図2図5
次に、ダイブロック部20に向けて冷却気体CGを供給する気体供給部40について説明する。
気体供給部40は、冷却気体CGを気体流路24に向けて供給する供給路41(41A,41B)と、供給路41に配置される開閉切替弁43及びストップバルブ45と、供給路41に供給する冷却気体CGを蓄える気体供給源47と、を備えている。供給路41は、冷却気体CGの流れる向きの上流端において気体供給源47と接続される。また、供給路41は、開閉切替弁43よりも下流において、供給路41Aと供給路41Bに分岐される。
【0033】
運転位置P1と交換位置P2の間をダイブロック部20が移動する間、気体供給部40は定位置に留まる。供給路41Aは気体流路24Aに対応し、供給路41Bは気体流路24Bに対応し、図2に示されるように、運転位置P1において、供給路41Aと気体流路24Aとが連通し、供給路41Bと気体流路24Bとが連通する。図5に示されるように、運転位置P1から図示しないダイスライド機構で交換位置P2へダイブロック部20が移動すると、気体流路24A,24Bと供給路41A,41Bとの連通は解除される。そのため、供給路41を構成する供給路41、開閉切替弁43及びストップバルブ45は、運転位置P1にあるダイブロック部20の近傍の、位置が固定される下部ギブ支持部材35等に配置させればよく、ダイブロック部20の移動に合わせてこれら関連構成を移動させる必要はない。この構成により、ダイブロック部20に、ダイブロック部20に収納されるダイス2を冷却する冷却機構を配置させても、冷却機構の配管が複雑になることがない。
【0034】
なお、図示はしていないが、気体流路24A,24Bと供給路41との連通部分には、ダイブロック部20の側か、下部ギブ33側のいずれか一方の連通部分開口部に、パッキン等を配置させて、気体流路24A,24Bと供給路41との連通部分からの冷却気体CGの漏れを抑制することが好ましい。
【0035】
[気体流路24の変更例:図6
以上では、一対の気体流路24A,24Bを設ける例を説明したが、図6の上段に示すように、中心線CLに沿って一本の気体流路24を設けてもよい。また、図6の下段に示すように一本の気体流路24を中心にして二本の気体流路24,24を対称の位置に設けてもよい。後者の二本の気体流路24,24は、側方支持面21F,21Fに開口する。
【0036】
[コントローラ50:図2
ダイブロック装置10は、その動作を制御するコントローラ50を備える。
コントローラ50は、押出加工の過程において、ヒータ22によるダイス2の加熱制御とダイス2の冷却気体CGによる冷却制御とを担う。また、コントローラ50は、ダイブロック部20の往復移動の動作の制御を担うこともできる。
【0037】
コントローラ50は、ダイス2の加熱制御のために、予め設定されるダイス2の加熱・保温パターンを記憶する。また、コントローラ50は、検出される温度の上限に関する設定温度Ts、第2制御形態で使用される、予め設定される設定時間Ssに関する情報を記憶する。コントローラ50は、ダイブロック装置10の動作に必要な他の情報を記憶することができる。
【0038】
コントローラ50は、温度センサ23A,23B,23Cによる検出温度Td(TdA,TdB,TdC)に関する情報を継続的に取得するとともに、設定温度Tsと比較する。コントローラ50は、検出温度Tdと設定温度Tsの比較結果に基づいて、気体供給部40を動作させて、供給路41から気体流路24に冷却気体CGを供給させる。
また、コントローラ50は、ヒータ22の加熱抑制の経過時間Sdと設定時間Ssを比較する。コントローラ50は、経過時間Sdと設定時間Ssとの比較結果に基づいて、気体供給部40を動作させて、供給路41から気体流路24に冷却気体CGを供給させることができる。
コントローラは、以上の比較の結果を表示する、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置を備えることができる。
【0039】
[冷却制御:図7図8
次に、ダイブロック体21に収納されるダイス2の冷却制御について、図7(第1制御形態)および図8(第2制御形態)を参照して説明する。この冷却制御は、上述したコントローラ50からの指示に基づいて行われる。第1制御形態(図7)は、検出温度Tdと設定温度Tsの比較結果に基づいて、冷却気体CGをすぐにダイス2に向けて吐出する。第2制御形態(図8)は、冷却気体CGの吐出に先立って、ヒータ22による加熱温度を抑制する。以下、第1制御形態、第2制御形態の順に説明する。
【0040】
[第1制御形態:図7
押出工程が始まると、コントローラ50は、温度センサ23による検出温度Tdを参照しながら、予め設定されるダイス2の加熱・保温パターンに基づいて、ダイブロック体21の下方エリアα、側方エリアβのそれぞれの温度を制御するためにヒータ22を動作させる(図7 S101)。第1実施形態においては、ブロック体21の下方エリア及び両側面エリアの3エリアのそれぞれで加熱制御するように、温度センサ23(23A,23B,23C)は3か所に配置されている(図2)。温度センサ23A,23B,23Cのそれぞれで検出された温度をTdA,TdB,TdCとするが、検出温度Tdと総称することもある。
【0041】
押出工程が継続されると、ビレットBがダイス2に押圧されて、押出製品Wの断面形状を模した開口部から押出製品Wが押し出されることにより、ダイス2が、押出製品Wとの摩擦により加熱され、温度上昇する。温度センサ23A,23B,23Cは、押出工程が開始されてから継続して温度を検出し、検出結果である検出温度TdA,TdB,TdC(Td)はコントローラ50に伝えられる。コントローラ50は、予め記憶している設定温度Tsと取得した検出温度TdA,TdB,TdCのそれぞれとを比較する(S103)。
【0042】
コントローラ50は、検出温度TdA,TdB,TdC(Td)のいずれかが設定温度Tsを超えると判断すると(S103 Yes)、気体供給部40を動作させて供給路41A,41Bから気体流路24A,24Bへの冷却気体CGの供給を指示する(S110)。
【0043】
コントローラ50は、冷却気体CGの供給を指示した後も、検出温度TdA,TdB,TdCを継続的に取得し設定温度Tsと比較する。コントローラ50は、検出温度TdA,TdB,TdCのいずれかが設定温度Tsを超えていれば冷却気体CGの供給の指示を継続し(S111 No)、検出温度TdA,TdB,TdCの全てが設定温度Tsと同等か設定温度Ts未満となれば(S111 Yes)、冷却気体CGの供給の指示を停止する(S113)。
コントローラ50は、以上の一連の制御を押出工程が完了するまで継続する。
【0044】
[第2制御形態:図8
次に、図8を参照して、第2制御形態を説明する。第2制御形態は、その一部で第1制御形態を踏襲するので、以下において第1制御形態との相違点を中心にして説明する。
コントローラ50は、検出温度TdA,TdB,TdC(Td)のいずれかが設定温度Tsを超えていると判断すると(S103 Yes)、同設定温度を超える温度を検出したエリアの、ダイブロック体21に内蔵されたヒータ22による加熱を抑制するように指示する(図8 S105)。例えば、温度センサ23Aによる検出温度TdAが設定温度Tsを超えていれば、当該側方エリアβに属するヒータ22の加熱を抑制するように指示する。ここでいう、加熱の抑制とは、ヒータ22による加熱を停止させることおよび加熱温度を低下させることの双方を含む。
【0045】
コントローラ50は、加熱の抑制を行いつつ、同エリアの温度センサ23の検出温度Tdを監視する。そして、加熱の抑制を開始してからの経過時間Sdが予め設定される設定時間Ssを経過しても(S107 Yes)、同エリアの温度センサ23の検出温度Tdが設定温度Tsを下回らなければ(S109 No)、供給路41の開閉切替弁43を開放させて、供給路41及び気体流路24A,24Bを介して、冷却気体CGをダイス2の小径部2Aに噴射させて、ダイス2の冷却を開始する(S110)。この冷却は、温度センサ23A~23Cの全ての検出温度が同設定温度を下回るまで継続される(S111)。以後、第1制御形態と同じ手順で制御が行われる。
【0046】
なお、上記のように2つの冷却制御形態を説明したが、オペレータが確認するコントローラ50の表示装置に温度センサ23の検出温度TdA,TdB,TdC(Td)を表示させて、これら検出温度のいずれかが設定温度を超えている場合に、オペレータがマニュアル操作で気体供給部40を動作させて、供給路41から気体流路24に冷却気体CGを供給させてもよい。
【0047】
[第1実施形態が奏する効果]
これまで説明したように、ダイブロック体21に配置された気体流路24A,24Bと気体供給部40の供給路41とが、ダイブロック体21が運転位置にあるときに連通する構成が採用される。したがって、ダイブロック体21に、ダイブロック体21に収納されるダイス2を冷却する冷却機構を配置させても、冷却機構の配管が複雑になることがない。
【0048】
また、ブロック体21に収納されるダイス2の加熱・保温制御と冷却制御との両方を行うことができるため、ダイス2の周面を加熱して所望の温度に保持することにより、押出製品の寸法精度不良や形状不良を防止することができる。
【0049】
そして、第1実施形態においては、ダイス2の小径部2A近傍が、押出製品Wとの摩擦により加熱され、最も温度上昇する部位であることを想定して、冷却気体CGを噴射して冷却できるようにした。この第1実施形態により、ダイス2の冷却効率の向上が期待できる。一方、供給路41に流量制御弁を配置させて、噴射させる冷却気体CGの供給量を調整可能に構成させてもよい。
【0050】
[第2実施形態:図9
第1実施形態においては、押出工程において、押出製品Wとの摩擦により加熱され、最も温度上昇する部位をダイス2の小径部2Aとした。しかし、押出条件や押出製品によっては、ダイス2の小径部2A以外の部位、例えば、ダイス2の大径部2Bの所定部位の温度が最も上昇する場合もある。第2実施形態はこのような場合に対応する。
第2実施形態は、図9に示すように、ダイブロック体21の気体流路24A’,24B’が、ダイス2の大径部2Bを支持する、大径支持部21Bに設けられる。
【0051】
以上、発明を実施するための形態について、第1実施形態および第2実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で、色々な形で実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 コンテナ
2 ダイス
2A 小径部
2B 大径部
3 押出ステム
4 メインシリンダ
4A メインラム
5 メインポンプユニット
6 エンドプラテン
10 ダイブロック装置
20 ダイブロック部
21 ダイブロック体
21A 小径支持部
21B 大径支持部
21C 小径支持面
21D 大径支持面
21E 下方支持面
21F 側方支持面
21S 収容スペース
22 ヒータ
23,23A,23B,23C 温度センサ
24,24A,24B 気体流路
24C 吐出口
24D 供給口
31 案内部材
33 下部ギブ
35 下部ギブ支持部材
40 気体供給部
41,41A,41B 供給路
43 開閉切替弁
45 ストップバルブ
47 気体供給源
50 コントローラ
100 押出プレス機
P1 運転位置
P2 交換位置
B ビレット
C 曲率中心
CG 冷却気体
CL 中心線
CL 線分
Sd 経過時間
Ss 設定時間
Td,TdA,TdB,TdC 検出温度
Ts 設定温度
W 押出製品
X 押出方向
Y 幅方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9