IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 共立精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-撹拌脱泡機 図1
  • 特開-撹拌脱泡機 図2
  • 特開-撹拌脱泡機 図3
  • 特開-撹拌脱泡機 図4
  • 特開-撹拌脱泡機 図5
  • 特開-撹拌脱泡機 図6
  • 特開-撹拌脱泡機 図7
  • 特開-撹拌脱泡機 図8
  • 特開-撹拌脱泡機 図9
  • 特開-撹拌脱泡機 図10
  • 特開-撹拌脱泡機 図11
  • 特開-撹拌脱泡機 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067766
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】撹拌脱泡機
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20230509BHJP
   B01F 29/10 20220101ALI20230509BHJP
   B01F 35/221 20220101ALI20230509BHJP
   B01F 35/42 20220101ALI20230509BHJP
【FI】
B01D19/00 102
B01F29/10
B01F35/221
B01F35/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152567
(22)【出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021177525
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】沼尾 道夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 拓自
【テーマコード(参考)】
4D011
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4D011AA06
4D011AA16
4D011AB06
4D011AC10
4G036AA26
4G037DA25
4G037DA27
4G037EA05
(57)【要約】
【課題】被混練物を撹拌又は脱泡する際の環境条件を変更可能とすることによって、被混練物の効率的な撹拌又は脱泡を可能にした撹拌脱泡機を提供する。
【解決手段】容器アダプタ10に内蔵され、この容器アダプタ10と共に自転軸Yを中心に回転可能であって自転軸Yの方向に揺動可能に構成されたピストン11と、このピストン11と容器アダプタ10との間に形成された容積室12と、ピストン11を自転軸Yの方向に揺動させる揺動機構と、ピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用して容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、この支持体に対して回転可能に支持されたロータと、このロータを駆動する駆動モータと、前記ロータの公転軸に対して傾斜した自転軸で前記ロータに対して回転可能に支持された有底筒状の容器アダプタと、この容器アダプタに収容される容器とを備えた撹拌脱泡機において、
前記容器アダプタに内蔵され、この容器アダプタと共に前記自転軸を中心に回転可能であって前記自転軸方向に揺動可能に構成されたピストンと、このピストンと前記容器アダプタとの間に形成された容積室と、前記ピストンを前記自転軸方向に揺動させる揺動機構と、前記ピストンの揺動に伴う前記容積室の体積変化を利用して前記容器アダプタの内部の圧力を変化させる変圧機構とを有することを特徴とする撹拌脱泡機。
【請求項2】
前記揺動機構が、前記ピストンを前記支持体側に向かって付勢する弾性部材と、前記ピストンの前記支持体側の端部に形成された起伏面と、この起伏面と当接するように配設されたベアリングからなることを特徴とする請求項1に記載の撹拌脱泡機。
【請求項3】
前記揺動機構が、前記ピストンの外周面に形成された溝部と、この溝部に嵌合するピンからなることを特徴とする請求項1に記載の撹拌脱泡機。
【請求項4】
前記容積室と前記容器アダプタの内部とを連通させる第1流路と、前記容積室と前記容器アダプタの外部とを連通させる第2流路とを有し、前記第1流路が前記容積室への流入のみを許容する第1逆止弁を備え、前記第2流路が前記容積室からの流出のみを許容する第2逆止弁を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の撹拌脱泡機。
【請求項5】
前記容積室と前記容器アダプタの内部とを連通させる第1流路と、前記容積室と前記容器アダプタの外部とを連通させる第2流路とを有し、前記第2流路が前記容積室への流入のみを許容する第1逆止弁を備え、前記第1流路が前記容積室からの流出のみを許容する第2逆止弁を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の撹拌脱泡機。
【請求項6】
前記ピストンの前記自転軸方向の揺動の有無を切り替える揺動切替機構を有することを特徴とする請求項2に記載の撹拌脱泡機。
【請求項7】
前記容器アダプタが前記容器と前記ピストンとを互いに連結する連結機構を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の撹拌脱泡機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌脱泡機に関し、更に詳しくは、被混練物を撹拌又は脱泡する際の環境条件を変更可能とすることによって、被混練物の効率的な撹拌又は脱泡を可能にした撹拌脱泡機に関する。
【背景技術】
【0002】
自転公転式の撹拌脱泡機において、自転、公転を利用して被混練物の撹拌や脱泡を行っている。しかしながら、被混練物の種類によっては時間が掛かったり、撹拌や脱泡が十分に行えていない場合がある。また、被混練物の撹拌や脱泡を促進するために、容器内部を減圧することが行われている。容器内を減圧して真空状態にするため、撹拌脱泡機に真空ポンプを取り付けることが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、真空ポンプを取り付けるにあたって設置場所を確保する必要があるため、撹拌脱泡機の装置全体が大型化することや装置全体を大幅に改変せざるを得ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4422683号公報
【特許文献2】特許第3896449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被混練物を撹拌又は脱泡する際の環境条件を変更可能とすることによって、被混練物の効率的な撹拌又は脱泡を可能にした撹拌脱泡機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の撹拌脱泡機は、支持体と、この支持体に対して回転可能に支持されたロータと、このロータを駆動する駆動モータと、前記ロータの公転軸に対して傾斜した自転軸で前記ロータに対して回転可能に支持された有底筒状の容器アダプタと、この容器アダプタに収容される容器とを備えた撹拌脱泡機において、前記容器アダプタに内蔵され、この容器アダプタと共に前記自転軸を中心に回転可能であって前記自転軸方向に揺動可能に構成されたピストンと、このピストンと前記容器アダプタとの間に形成された容積室と、前記ピストンを前記自転軸方向に揺動させる揺動機構と、前記ピストンの揺動に伴う前記容積室の体積変化を利用して前記容器アダプタの内部の圧力を変化させる変圧機構とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の撹拌脱泡機では、容器アダプタの回転に応じて、ピストンは自転軸を中心に回転しながら自転軸方向に所定区間で揺動(往復運動)し、変圧機構がピストンの揺動に伴う容積室の体積変化を利用して容器アダプタの内部の圧力を変化させる。例えば、容積室の体積変化を利用して容器アダプタの内部から外部に空気を排出することにより、容器アダプタの内部を減圧して真空状態にすることができる。また、容積室の体積変化を利用して容器アダプタの外部から内部に空気を送り込むことにより、容器アダプタの内部を加圧することができる。これにより、被混練物を撹拌又は脱泡する際の圧力条件を最適化し、被混練物を効率的に撹拌又は脱泡することができる。また、従来の撹拌脱泡機から大幅に改変せずに、容器アダプタ周辺の機構を変更するだけで済むので、省スペースかつ低コストで導入することができる。
【0007】
本発明の撹拌脱泡機において、揺動機構は、ピストンを支持体側に向かって付勢する弾性部材と、ピストンの支持体側の端部に形成された起伏面と、この起伏面と当接するように配設されたベアリングからなることが好ましい。或いは、揺動機構は、ピストンの外周面に形成された溝部と、この溝部に嵌合するピンからなることが好ましい。いずかの構造を有する揺動機構を用いることで、変圧機構が、円滑に、ピストンの揺動に伴う容積室の体積変化を利用し、容器アダプタの内部の圧力を変化させることができる。
【0008】
容積室と容器アダプタの内部とを連通させる第1流路と、容積室と容器アダプタの外部とを連通させる第2流路とを有し、第1流路は容積室への流入のみを許容する第1逆止弁を備え、第2流路は容積室からの流出のみを許容する第2逆止弁を備えているとよい。或いは、容積室と容器アダプタの内部とを連通させる第1流路と、容積室と容器アダプタの外部とを連通させる第2流路とを有し、第2流路は容積室への流入のみを許容する第1逆止弁を備え、第1流路は容積室からの流出のみを許容する第2逆止弁を備えているとよい。
【0009】
ピストンの自転軸方向の揺動の有無を切り替える揺動切替機構を有することが好ましい。これにより、ピストンの揺動運動を任意に停止させた状態で、被混練物の撹拌又は脱泡を行うことができる。
【0010】
容器アダプタは容器とピストンとを互いに連結する連結機構を有することが好ましい。これにより、ピストンと容器が一体的に揺動し、より効率的に被混練物を脱泡又は撹拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】撹拌脱泡機の実施形態を例示した説明図である。
図2図1の撹拌脱泡機の容器アダプタを拡大して示す断面図である。
図3図2の容器アダプタのピストンを拡大して示し、図3(A)は断面図であり、図3(B)は斜視図である。
図4】撹拌脱泡機の容器アダプタの他の実施形態を例示した断面図である。
図5】撹拌脱泡機の容器アダプタの他の実施形態を例示した断面図である。
図6】撹拌脱泡機の容器アダプタの他の実施形態を例示した断面図である。
図7】撹拌脱泡機の容器アダプタの他の実施形態を例示した断面図である。
図8図7の容器アダプタのピストンを拡大して示し、図8(A)は断面図であり、図8(B)は斜視図である。
図9】撹拌脱泡機の容器アダプタの他の実施形態を例示した断面図である。
図10】撹拌脱泡機の容器アダプタの他の実施形態を例示した断面図である。
図11】撹拌脱泡機の容器アダプタの他の実施形態を例示した断面図である。
図12】(A)~(D)はそれぞれ容器アダプタの内外と容積室を連通させるための流路を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の撹拌脱泡機の実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の撹拌脱泡機の内部の基本構造を例示したものである。図2~6の各々は、図1の基本構造を有する撹拌脱泡機であって、第1の揺動機構を備える実施形態であり、図7~11の各々は、図1の基本構造を有する撹拌脱泡機であって、第2の揺動機構を備える実施形態である。
【0013】
(第1の揺動機構を備える実施形態)
図1に例示するように、撹拌脱泡機(以下、装置1という)は、有底筒状に形成された架台フレーム2と、その上部に開閉自在に構成された蓋部3とを備えている。この架台フレーム2の内部には、支持体4が水平に保持されている。この支持体4には、ロータ5がその中心軸を鉛直方向にして回転可能に支持され、少なくとも1つ(図1では2つ)の駆動モータ6,7が取り付けられている。駆動モータ6は公転駆動用であり、駆動モータ7は自転駆動用である。
【0014】
この駆動モータ6,7の駆動力は、プーリやベルト、歯車、チェーン等を適宜組み合わせてなる動力伝達機構を介して、ロータ5及び少なくとも1つ(図1では1つ)の容器アダプタ10に伝達される。これにより、ロータ5が中心軸(公転軸X)の廻りに回転し、容器アダプタ10が中心軸(自転軸Y)の廻りに回転する。容器アダプタ10の自転軸Yは、ロータ5の公転軸Xに対して傾斜している。
【0015】
ロータ5の外縁部にはアダプタ支持部51が固定されており、このアダプタ支持部51に対して容器アダプタ10が回転自在に支持されている。アダプタ支持部51と容器アダプタ10との間には、円環状のベアリング53が配置されている。アダプタ支持部51の支持体4側の端部を覆うようにカバー部52が配設されている。
【0016】
容器アダプタ10は、有底筒状に形成されたアダプタ本体10aと、その上部において開閉自在に構成された蓋部10eとを備えている。容器アダプタ10の内部には有底筒状の容器8が収容され、この容器8の内部には被混練物が投入される。容器8は蓋を備えておらず、容器アダプタ10に収容された容器8は、その開口部が蓋部10eにより封止されるが、完全に密閉されるのではなく、僅かな隙間があり、空気が流通することは可能である。更に、アダプタ本体10aは、容器8と当接する最内層10bと、この最内層10bを覆う中間層10cと、この中間層10cを覆う最外層10dとを含んでいる。最内層10bと中間層10cの間及び中間層10cと最外層10dの間には、それぞれ僅かな隙間があり、シール部材により封止されていない限り、この隙間が空気の流路となる。
【0017】
なお、上述した装置1の内部構造は撹拌脱泡機における一般的な例を示すものであり、これに限定されるものではない。そのため、装置1の動力伝達機構は、駆動モータの駆動力をロータ及び容器アダプタに伝達するものであれば種々の形態を採用することができる。また、駆動モータや容器アダプタの台数は特に限定されるものではなく、動力伝達機構の構成を適宜変更することにより、1台の駆動モータを用いることができ、複数台の容器アダプタを用いることもできる。
【0018】
本発明に係る撹拌脱泡機によれば、被混練物を撹拌又は脱泡する際の環境条件を変更することができる。撹拌時又は脱泡時の環境条件として、以下では減圧する場合、加圧する場合、減圧しながら容器アダプタを揺動させる場合、加圧しながら容器アダプタを揺動させる場合を例示する。
【0019】
撹拌時又は脱泡時に減圧する場合、図2に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。この装置1は、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構を有している。容器アダプタ10に内蔵されたピストン11は、容器アダプタ10と共に自転軸Yを中心に回転し、かつ自転軸Y方向に揺動することができる。変圧機構は、このピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用するものである。この容積室12は、ピストン11と容器アダプタ10(最外層10d)との間に形成されている。容積室12は、空気が内包された略円筒状の密閉空間であり、ピストン11の揺動により容積が可変するようになっている。
【0020】
図3(A),(B)に例示するように、ピストン11は、自転軸Y方向に延びる円柱状の軸部11aと、この軸部11aの一方側の端部に形成された円柱状の拡張部11bからなる。また、ピストン11の軸部11aには、他方側(支持体4側)の端部に起伏面11xが形成されている。この起伏面とは、自転軸Yに直交する平坦な面ではなく、自転軸Yに直交する面に対して起伏を有することを意味する。図3(A),(B)において、起伏面11xは、自転軸Yに直交する面に対して傾斜した傾斜面を有している。或いは、起伏面11xとして周方向に局所的に突起を形成してもよい。なお、図3(A)に示すように、軸部11aの他方側(支持体4側)の端部において、突出量が最大となる端点11yと突出量が最小となる端点11zの間の距離dは、ピストン11の自転軸Y方向の揺動ストローク量に相当する。
【0021】
ピストン11は、弾性部材13により自転軸Y方向に支持体4側に向かって付勢されている。この弾性部材13として、例えば皿バネを用いることができる。ピストン11の起伏面11xとカバー部52との間には、ピストン11の起伏面11xと当接するようにベアリング14が配設されている。このベアリング14により、ピストン11は自転軸Yを中心に円滑に回転することができる。ベアリング14として、例えばボールベアリングを用いることができる。なお、ピストン11に起伏面11xとして局所的に突起が形成された場合、この突起と当接するようにベアリング14は配置される。
【0022】
このように第1の揺動機構として、ピストン11を支持体4側に向かって付勢する弾性部材13と、ピストン11の支持体4側の端部に形成された起伏面11xと、この起伏面11xと当接するように配設されたベアリング14とを有することで、ピストン11は回転に応じて上下移動する。より具体的には、ピストン11が回転してベアリング14との当接位置が端点11yから端点11zに移動するにつれてピストン11が下方に移動し、端点11zから端点11yに移動するにつれてピストン11が上方に移動する。つまり、ピストン11は1回転するごとに上下に1往復する。
【0023】
なお、起伏面11xの形状は、上述した形状に限定されるものではなく、例えば、ピストン11の1/4周(90°)の回転でピストン11が下死点から上死点に変位するように起伏面11xを形成してもよい。この場合には、ピストン11の周上において端点11y,11zが交互に2箇所ずつ形成されることになり、ピストン11は1回転するごとに上下に2往復する。
【0024】
ピストン11の拡張部11bには揺動切替機構20が配設されている。この揺動切替機構20は、ピストン11の自転軸Y方向の揺動の有無を切り替える機能を有している。揺動切替機構20として、例えば、ピストン11の拡張部11bに設けられ、自転軸Y方向に沿って移動可能に構成されたボルトを用いることができる。このボルトを容積室12側に突き出すことにより、ボルトが最外層10dに対する突っ張り部材として機能し、ピストン11が上方に位置した状態で保持することができる。これにより、ピストン11の揺動を任意に停止させることができる。
【0025】
ピストン11の軸部11aには回転抑制機構25が配設されている。この回転抑制機構25は、ピストン11の相対的な回転を抑制する機能を有している。回転抑制機構25として、例えば、ピストン11の軸部11aの外周面に形成され、自転軸Y方向に延在する溝部と、この溝部に嵌合する嵌合部材とを組み合わせて構成することができる。これにより、ピストン11の容器アダプタ10に対する回転時の滑りを抑制し、両者を一体的に回転させることができる。更に、溝部の長さを適宜調整することで、ピストン11の揺動の変位量を制限する機能を付加することもできる。
【0026】
ピストン11の軸部11aの外周には、ピストン11を自転軸Y方向に摺動可能に支持する円筒状の軸受部材15が配設されている。軸受部材15として、例えば滑り軸受を用いることができる。また、ピストン11の軸部11a及び拡張部11bの各々の外周には、容積室12の空気を封止するための円環状のシール部材16が配設されている。シール部材16として、例えばOリングを用いることができる。また、他にも空気を封止するための円環状のシール部材17が配設されている。
【0027】
容器アダプタ10は、容積室12と容器アダプタ10の内部とを連通させる流路の中途位置に第1逆止弁41を有すると共に、容積室12と容器アダプタ10の外部とを連通させる流路の中途位置に第2逆止弁42を有している。第1逆止弁41は容積室12への流入のみを許容し、第2逆止弁42は容積室12からの流出のみを許容する。これら第1逆止弁41及び第2逆止弁42として、例えば、基端部がボルト等によりピストン11に固定され、かつ先端部が自由端とされて片持ち状に支持される薄膜の弁を用いることができる。また、ピストン11の拡張部11bの容積室12側の端面に凹部が形成され、この凹部において拡張部11bを厚さ方向に貫通するように通気路43が設けられ、通気路43の一方側の端部は第1逆止弁41により封止されている。また、容積室12と容器アダプタ10の中間層10cとの間に通気路44が設けられ、通気路44の一方側の端部は第2逆止弁42により封止されている。更に、容器アダプタ10の側面には通気口10xが設けられ、容器アダプタ10の底面の中央部において中間層10cを厚さ方向に貫通するように通気口10yが設けられている。
【0028】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11とピストン11の起伏面11xと弾性部材13とベアリング14と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10x,10yと通気路43,44とを含んでいる。なお、ピストン11は、図3(A),(B)に例示する内部構造を有している。
【0029】
撹拌時に加圧する場合、図4に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。この装置1の実施形態において、容器アダプタ10の中間層10cの底面には、径方向の縁部から中央部に向かって延びる通気路45が設けられている。この通気路45の一方側の端部は通気路43の近傍に開口している。また、容器アダプタ10の中間層10cを厚さ方向に貫通するように通気路46が設けられている。この通気路46は、通気路44に隣接して配置されている。なお、ピストン11は、図3(A),(B)に例示する内部構造を有している。
【0030】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11とピストン11の起伏面11xと弾性部材13とベアリング14と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10xと通気路43,44,45,46とを含んでいる。
【0031】
撹拌時又は脱泡時に減圧しながら容器アダプタを揺動させる場合、図5に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。この装置1の実施形態において、容器アダプタ10は、容器8とピストン11とを互いに連結する連結機構を有している。具体的には、ピストン11と容器アダプタ10の最内層10bとが互いに連結されている。容器アダプタ10の最内層10bの底面の中央部がピストン11側に突出しており、この突出部分において最内層10bとピストン11の拡張部11bとが複数本のボルト31により連結されている。更に、ボルト31を覆うように、円環状のシール部材33を含むカバー32が配設され、最内層10bの底面が平坦になるように形成されている。連結機構は、容器アダプタ10の最内層10bとボルト31とカバー32とシール部材33とを含むものである。また、容器アダプタ10の中間層10cには、中間層10cを貫通するように通気口10yが設けられている。この通気口10yの直径は、最内層10bの底面の突出部分の直径よりも大きく、通気口10yを介して通気可能である。なお、ピストン11は、図3(A),(B)に例示する内部構造を有している。
【0032】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11とピストン11の起伏面11xと弾性部材13とベアリング14と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10x,10yと通気路43,44とを含んでいる。
【0033】
撹拌時に加圧しながら容器アダプタを揺動させる場合、図6に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。この装置1の実施形態において、容器アダプタ10は、容器8とピストン11とを互いに連結する連結機構を有している。具体的には、ピストン11と容器アダプタ10の最内層10bとが互いに連結されている。容器アダプタ10の最内層10bの底面の中央部がピストン11側に突出しており、この突出した部分において最内層10bとピストン11の拡張部11bとが複数本のボルト31により連結されている。更に、ボルト31を覆うように、円環状のシール部材33を含むカバー32が配設され、最内層10bの底面が平坦になるように形成されている。連結機構は、容器アダプタ10の最内層10bとボルト31とカバー32とシール部材33とを含むものである。また、容器アダプタ10の中間層10cの底面には、径方向の縁部から中央部に向かって延びる通気路45が設けられている。この通気路45の一方側の端部は通気路43の近傍に開口している。更に、容器アダプタ10の中間層10cを厚さ方向に貫通するように通気路46が設けられている。この通気路46は、通気路44に隣接して配置されている。なお、ピストン11は、図3(A),(B)に例示する内部構造を有している。
【0034】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11とピストン11の起伏面11xと弾性部材13とベアリング14と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10xと通気路43,44,45,46とを含んでいる。
【0035】
(第2の揺動機構を備える実施形態)
図7~11に例示する容器アダプタ10を備える装置1は、図1~6に例示する容器アダプタ10を備える装置1と、主にピストン11の構造が異なっている。なお、図7~11において、図1~6と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0036】
撹拌時又は脱泡時に減圧する場合、図7に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。最内層10bの底部と中間層10cの底部との間には嵩上げ部10fが挿入されている。
【0037】
図8(A),(B)に例示するように、ピストン11の軸部11aの外周面には、他方側(支持体4側)の端部に所定の深さを有する溝部21xが形成されている。図8(A),(B)において、溝部21xは、軸部11aの全周にわたって他方側(支持体4側)の端部からの距離hを徐々に変化させながら連続的に形成されている。この距離hの最大値と最小値との差は、ピストン11の自転軸Y方向の揺動ストローク量に相当する。図8(A),(B)では、ピストン11の1/2周(180°)の回転でピストン11が下死点から上死点に変位するように溝部21xが形成されている。この溝部21xにおいて、距離hが最小となる部位は端点21yであり、距離hが最大となる部位は端点21zである。
【0038】
溝部21xにはピン22が嵌合している。このピン22は、自転軸Yに対して直交する方向に延びている。ピン22は、カバー部52を貫通する孔に挿通され、カバー部52に対して固定されており、ピン22の先端部が溝部21xと嵌合するように配置されている。このようなピン22として、ピン22の先端部と溝部21xの壁面との摩擦を低減してピストン11の回転をより滑らかにするために、ボールベアリングを含むベアリングピンを用いることができる。
【0039】
このように第2の揺動機構として、ピストン11の外周面に形成された溝部21xと、この溝部21xに嵌合するピン22とを有することで、ピストン11は回転に応じて上下移動する。より具体的には、ピストン11が回転してピン22との当接位置が端点21yから端点21zに移動するにつれてピストン11が下方に移動し、端点21zから端点21yに移動するにつれてピストン11が上方に移動する。つまり、ピストン11は1回転するごとに上下に1往復する。
【0040】
なお、溝部21xの形状は、上述した形状に限定されるものではなく、例えば、ピストン11の1/4周(90°)の回転でピストン11が下死点から上死点に変位するように溝部21xを形成してもよい。この場合には、ピストン11の周上において端点21y,21zが交互に2箇所ずつ形成されることになり、ピストン11は1回転するごとに上下に2往復する。
【0041】
容器アダプタ10は、容積室12と容器アダプタ10の内部とを連通させる流路の中途位置に第1逆止弁41を有すると共に、容積室12と容器アダプタ10の外部とを連通させる流路の中途位置に第2逆止弁42を有している。第1逆止弁41は容積室12への流入のみを許容し、第2逆止弁42は容積室12からの流出のみを許容する。これら第1逆止弁41及び第2逆止弁42として、例えば、ダックビルバルブを用いることができる。このダックビルバルブは、フランジ(基部)から延びる突出部が先端に向かうにつれて先細り、先端部にスリットを有することで、一方向のみに流れを抑制することができる。ダックビルバルブは遠心力の影響を受けにくいため、ダックビルバルブを用いた場合には公転による遠心力の変化に際して空気が逆流しにくい。また、ピストン11の拡張部11bの厚さ方向に貫通するように通気路43が設けられ、通気路43の一方側の端部は第1逆止弁41により封止されている。また、容積室12と容器アダプタ10の中間層10cとの間に通気路44が設けられ、通気路44の一方側の端部は第2逆止弁42により封止されている。更に、容器アダプタ10の側面には通気口10xが設けられ、容器アダプタ10の底面の中央部において中間層10cを厚さ方向に貫通するように通気口10yが設けられている。
【0042】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11と溝部21xとピン22と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10x,10yと通気路43,44とシール部材17とを含んでいる。
【0043】
撹拌時に加圧する場合、図9に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。最内層10bの底部と中間層10cの底部との間には、嵩上げ部10fが挿入されている。この装置1の実施形態において、容器アダプタ10の中間層10cの底面には、径方向の縁部から中央部に向かって延びる通気路45が設けられている。この通気路45の一方側の端部は通気路43の近傍に開口している。また、容器アダプタ10の中間層10cを厚さ方向に貫通するように通気路46が設けられている。この通気路46は、通気路44に隣接して配置されている。なお、ピストン11は、図8(A),(B)に例示する内部構造を有している。
【0044】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11と溝部21xとピン22と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10xと通気路43,44,45,46とシール部材17とを含んでいる。
【0045】
撹拌時又は脱泡時に減圧しながら容器アダプタを揺動させる場合、図10に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。この装置1の実施形態において、容器アダプタ10は、容器8とピストン11とを互いに連結する連結機構を有している。具体的には、ピストン11と容器アダプタ10の最内層10bとが互いに連結されている。容器アダプタ10の最内層10bの底面の中央部がピストン11側に突出しており、この突出部分において最内層10bとピストン11の拡張部11bとが複数本のボルト31により連結されている。更に、ボルト31を覆うように、円環状のシール部材33を含むカバー32が配設され、最内層10bの底面が平坦になるように形成されている。連結機構は、容器アダプタ10の最内層10bとボルト31とカバー32とシール部材33とを含むものである。また、容器アダプタ10の中間層10cには、中間層10cを貫通するように通気口10yが設けられている。この通気口10yの直径は、最内層10bの底面の突出部分の直径よりも大きく、通気口10yを介して通気可能である。なお、ピストン11は、図8(A),(B)に例示する内部構造を有している。
【0046】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11と溝部21xとピン22と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10x,10yと通気路43,44とシール部材17とを含んでいる。
【0047】
撹拌時に加圧しながら容器アダプタを揺動させる場合、図11に例示する容器アダプタ10を備えた装置1が用いられる。この装置1の実施形態において、容器アダプタ10は、容器8とピストン11とを互いに連結する連結機構を有している。具体的には、ピストン11と容器アダプタ10の最内層10bとが互いに連結されている。容器アダプタ10の最内層10bの底面の中央部がピストン11側に突出しており、この突出した部分において最内層10bとピストン11の拡張部11bとが複数本のボルト31により連結されている。更に、ボルト31を覆うように、円環状のシール部材33を含むカバー32が配設され、最内層10bの底面が平坦になるように形成されている。連結機構は、容器アダプタ10の最内層10bとボルト31とカバー32とシール部材33とを含むものである。また、容器アダプタ10の中間層10cの底面には、径方向の縁部から中央部に向かって延びる通気路45が設けられている。この通気路45の一方側の端部は通気路43の近傍に開口している。更に、容器アダプタ10の中間層10cを厚さ方向に貫通するように通気路46が設けられている。この通気路46は、通気路44に隣接して配置されている。なお、ピストン11は、図8(A),(B)に例示する内部構造を有している。
【0048】
上述した装置1において、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる変圧機構は、容積室12の体積変化に寄与するピストン11と溝部21xとピン22と、容積室12を密閉するための第1逆止弁41と第2逆止弁42とシール部材16と、容積室12への空気の流路を確保するための通気口10xと通気路43,44,45,46とを含んでいる。
【0049】
次に、被混練物を撹拌及び脱泡する際の装置1の動作について説明する。図2又は図7に例示した容器アダプタ10を備えた装置1を用いた場合、予め容器アダプタ10内に、被混練物を投入した容器8を収容しておく。そして、駆動モータ6を駆動し、駆動モータ6の回転がロータ5に伝達され、ロータ5が回転(公転)する。それと同時に、駆動モータ7を駆動し、駆動モータ7の回転が容器アダプタ10に伝達され、容器アダプタ10が回転(自転)する。
【0050】
この容器アダプタ10の回転に応じて、ピストン11が自転軸Y方向に所定区間で揺動(往復運動)する。その際、ピストン11が上方に移動することで容積室12の容積が増加し、ピストン11が下方に移動することで容積室12の容積が減少する。ここで、ピストン11が上方に移動するにつれて、容積室12の圧力が低下していき、容器8の内部の空気が吸引され、その吸引された空気は第1逆止弁41を通って容積室12に流入する。そして、ピストン11が下方に移動するにつれて、容積室12の圧力が増大していき、容積室12の一部の空気は第2逆止弁42を通って容器アダプタ10の外部に排出される。この一連の動作が繰り返されることにより、空気が容器アダプタ10の内部から外部に徐々に排出され、容器8の内部の圧力が低下して真空状態に近づいていく。このようにピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用し、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させて、容器アダプタ10の内部から外部に空気を排出することができる。
【0051】
上述したピストン11の揺動によって生じる空気の流路は、図12(A)に例示するように、容積室12と容器アダプタ10の内部とを連通させる第1流路R1(図の一点鎖線の矢印)と、容積室12と容器アダプタ10の外部とを連通させる第2流路R2(図の実線の矢印)である。容積室12への流入のみを許容する第1逆止弁41を備えた第1流路R1と、容積室12からの流出のみを許容する第2逆止弁42を備えた第2流路R2により、容器アダプタ10における空気の流れは全体として一方向に限定されている。
【0052】
図4又は図9に例示した容器アダプタ10を備えた装置1を用いた場合、容器アダプタ10の回転に応じて、ピストン11が自転軸Y方向に所定区間で揺動(往復運動)する。その際、ピストン11が上方に移動するにつれて、容積室12の圧力が低下していき、容器アダプタ10の外部から空気が吸引され、その吸引された空気は第1逆止弁41を通って容積室12に流入する。そして、ピストン11が下方に移動するにつれて、容積室12の圧力が増大していき、容積室12の一部の空気は第2逆止弁42を通って容器アダプタ10の内部に排出される。この一連の動作が繰り返されることにより、空気が容器アダプタ10の外部から内部に徐々に取り込まれ、容器8の内部の圧力が高まっていく。このようにピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用し、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させて、容器アダプタ10の外部から内部に空気を導入することができる。
【0053】
上述したピストン11の揺動によって生じる空気の流路は、図12(B)に例示するように、容積室12と容器アダプタ10の内部とを連通させる第1流路R1(図の一点鎖線の矢印)と、容積室12と容器アダプタ10の外部とを連通させる第2流路R2(図の実線の矢印)である。容積室12への流入のみを許容する第1逆止弁41を備えた第2流路R2と、容積室12からの流出のみを許容する第2逆止弁42を備えた第1流路R1により、容器アダプタ10における空気の流れは全体として一方向に限定されている。
【0054】
図5又は図10に例示した容器アダプタ10を備えた装置1を用いた場合、容器アダプタ10の回転に応じて、ピストン11が自転軸Y方向に所定区間で揺動(往復運動)し、連結された最内層10bも揺動する。その際、ピストン11が上方に移動するにつれて、容積室12の圧力が低下していき、容器8の内部の空気が吸引され、その吸引された空気は第1逆止弁41を通って容積室12に流入する。そして、ピストン11が下方に移動するにつれて、容積室12の圧力が増大していき、容積室12の一部の空気は第2逆止弁42を通って容器アダプタ10の外部に排出される。この一連の動作が繰り返されることにより、空気が容器アダプタ10の内部から外部に徐々に排出され、容器8の内部の圧力が低下して真空状態に近づいていく。このようにピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用し、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させて、容器アダプタ10の内部から外部に空気を排出することができる。
【0055】
上述したピストン11の揺動によって生じる空気の流路は、図12(C)に例示するように、容積室12と容器アダプタ10の内部とを連通させる第1流路R1(図の一点鎖線の矢印)と、容積室12と容器アダプタ10の外部とを連通させる第2流路R2(図の実線の矢印)である。容積室12への流入のみを許容する第1逆止弁41を備えた第1流路R1と、容積室12からの流出のみを許容する第2逆止弁42を備えた第2流路R2により、容器アダプタ10における空気の流れは全体として一方向に限定される。
【0056】
図6又は図11に例示した容器アダプタ10を備えた装置1を用いた場合、容器アダプタ10の回転に応じて、ピストン11が自転軸Y方向に所定区間で揺動(往復運動)し、連結された最内層10bもする。その際、ピストン11が上方に移動するにつれて、容積室12の圧力が低下していき、容器アダプタ10の外部から空気が吸引され、その吸引された空気は第1逆止弁41を通って容積室12に流入する。そして、ピストン11が下方に移動するにつれて、容積室12の圧力が増大していき、容積室12の一部の空気は第2逆止弁42を通って容器アダプタ10の内部に排出される。この一連の動作が繰り返されることにより、空気が容器アダプタ10の外部から内部に徐々に取り込まれ、容器8の内部の圧力が高まっていく。このようにピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用し、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させて、容器アダプタ10の外部から内部に空気を導入することができる。
【0057】
上述したピストン11の揺動によって生じる空気の流路は、図12(D)に例示するように、容積室12と容器アダプタ10の内部とを連通させる第1流路R1(図の一点鎖線の矢印)と、容積室12と容器アダプタ10の外部とを連通させる第2流路R2(図の実線の矢印)である。容積室12への流入のみを許容する第1逆止弁41を備えた第2流路R2と、容積室12からの流出のみを許容する第2逆止弁42を備えた第1流路R1により、容器アダプタ10における空気の流れは全体として一方向に限定される。
【0058】
上述した撹拌脱泡機では、容器アダプタ10の回転に応じて、ピストン11は自転軸Yを中心に回転しながら自転軸Y方向に所定区間で揺動(往復運動)し、変圧機構がピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用して容器アダプタ10の内部の圧力を変化させる。例えば、容積室12の体積変化を利用して容器アダプタ10の内部から外部に空気を排出することにより、容器アダプタ10の内部を減圧して真空状態にすることができる。また、容積室12の体積変化を利用して容器アダプタ10の外部から内部に空気を送り込むことにより、容器アダプタ10の内部を加圧することができる。これにより、被混練物を撹拌又は脱泡する際の圧力条件を最適化し、被混練物を効率的に撹拌又は脱泡することができる。
【0059】
このように容器アダプタ10の構成を適宜選択することにより、被混練物に適した撹拌や脱泡を行うことができる。例えば、図2又は図7に例示した容器アダプタ10を用いることで、容器8内を真空状態にしながら被混練物の脱泡を行うことで脱泡能力を向上できる。また、図4又は図9に例示した容器アダプタ10を用いることで、容器8内を加圧しながら被混練物の撹拌を行うことで撹拌能力を向上できる。更に、図5又は図10に例示した容器アダプタ10を用いることで、容器8内を真空状態にしつつ揺動させながら撹拌や脱泡を行うことができる。また、図6又は図11に例示した容器アダプタ10を用いることで、容器8内を加圧状態にしつつ揺動させながら撹拌や脱泡を行うことができる。このように本発明では、容器アダプタ10を含む装置の一部を交換するだけで容器8内を真空状態又は加圧状態にできる機構を付加できるので、従来の装置を大幅に改変することなく導入できる点で、非常に有益である。
【0060】
従来の撹拌脱泡機では、被混練物の脱泡を真空状態で行うのに、例えば、真空ポンプを搭載して容器内を真空状態にすることや、回転機構全体をチャンバーで囲ってチャンバー内を真空状態にすること、ロータリージョイント等を用いて容器内を真空状態にすること等が行われていたが、これらの場合には設置スペースが必要になるので、装置全体が大型化する傾向がある。これに対して、本発明では、容器アダプタ周辺の機構を変更するのみで済むので、省スペースであって低コストで実現することができる。
【0061】
上記撹拌脱泡機において、揺動機構は、ピストン11を支持体4側に向かって付勢する弾性部材13と、ピストン11の支持体4側の端部に形成された起伏面11xと、この起伏面11xと当接するように配設されたベアリング13からなることが好ましい。或いは、揺動機構は、ピストンの外周面に形成された溝部21xと、この溝部に嵌合するピン22からなることが好ましい。いずかの構造を有する揺動機構を用いることで、変圧機構が、円滑に、ピストン11の揺動に伴う容積室12の体積変化を利用し、容器アダプタ10の内部の圧力を変化させることができる。
【0062】
更に、ピストン11の自転軸Y方向の揺動の有無を切り替える揺動切替機構20を有することで、ピストン11の揺動を任意に停止させた状態で、被混練物の撹拌又は脱泡を行うことができる。被混練物の種類に応じて、ピストン11を揺動させない方が撹拌又は脱泡に適している場合などに用いる。
【0063】
また、容器アダプタ10がピストン11と容器8とを互いに連結する連結機構を有することで、ピストン11と容器8が一体的に揺動し、より効率的に被混練物を脱泡又は撹拌することができる。
【0064】
上述した実施形態では、容器アダプタ10のアダプタ本体が3層からなる例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、アダプタ本体を1層又は2層で構成し、アダプタ本体の内部に空気の流路を適宜設けるようにしてもよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、容器アダプタ10において、蓋部10eを取り付けた状態で撹拌又は脱泡を行ったが、蓋部10eを取り外した状態で撹拌又は脱泡を行うことも可能である。即ち、容器アダプタ10は密閉されないため、容器8内は真空状態又は加圧状態にならない。この場合の容器アダプタ10は、図5図6図10又は図11に示した容器アダプタ10と構造的には上部に蓋部10eが取り付けられていない点で異なる。このように蓋部10eが取り付けられていない場合には、容器アダプタ10に内蔵されたピストン11が容器アダプタ10と共に自転軸Yを中心に回転し、かつ自転軸Y方向に揺動する。即ち、ピストン11に連結された容器アダプタ10の最内層10bが自転軸Y方向に揺動するので、容器8が揺動運動する。このような撹拌脱泡機では、容器アダプタ10の回転に応じて、ピストン11は自転軸Yを中心に回転しながら自転軸Y方向に所定区間で揺動(往復運動)するので、従来の公転運動及び自転運動に揺動運動を付加することができ、被混練物を効率的に撹拌又は脱泡することができる。つまり、容器8内を真空状態又は加圧状態にせずに、揺動運動を付加するだけでも従来の機構に対して撹拌又は脱泡の効果が期待できる。
【0066】
なお、蓋部10eが取り付けられていない場合、ピストン11が自転軸Y方向に揺動すれば良いので、必要に応じて、容器8内の減圧や加圧に寄与する部材(例えば、逆止弁やバルブ、シール部材など)の設置や空気の流路の形成を省略することもできる。また、その場合、ピストン11は、図3(A),(B)又は図8(A),(B)に例示した形状に限定されるものではなく、例えば、単一の円柱状を有していても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 撹拌脱泡機
2 架台フレーム
3 蓋部
4 支持体
5 ロータ
6,7 駆動モータ
8 容器
10 容器アダプタ
11 ピストン
11x 起伏面
12 容積室
13 弾性部材
14 ベアリング
20 揺動切替機構
21x 溝部
22 ピン
41 第1逆止弁
42 第2逆止弁
R1 第1流路
R2 第2流路
X 公転軸
Y 自転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12