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2023-67778放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067778
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/28 20170101AFI20230509BHJP
   A61K 51/02 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
C01B32/28
A61K51/02 200
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162782
(22)【出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】110140510
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】599171866
【氏名又は名称】行政院原子能委員會核能研究所
【住所又は居所原語表記】1000 Wenhua Rd.Jiaan Village,Longtan District,Taoyuan City 32546,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】王美惠
(72)【発明者】
【氏名】林昆諒
(72)【発明者】
【氏名】簡傳益
(72)【発明者】
【氏名】于鴻文
【テーマコード(参考)】
4C085
4G146
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085JJ02
4C085KA29
4C085KB07
4C085LL20
4G146AA04
4G146AB01
4G146AD40
4G146CB01
4G146CB10
4G146CB12
4G146CB19
4G146CB20
4G146CB23
4G146CB35
(57)【要約】
【課題】本発明の方法によれば、室温で容易且つ効果的に放射性金属ガリウムをナノダイヤモンドに配位し、精製しなくても純度が99%以上の放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドを得る。
【解決手段】本発明の放射性金属を配位したナノダイヤモンドの製造方法は、(a)ナノダイヤモンドをトリエチルアミン-ジメチルメチルアミド溶液に溶解した後、チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸と混合して混合物を得る工程と、(b)前記混合物を超音波振動で少なくとも4時間反応した後、遠心分離によって上清を除去し、水を添加して再溶解した後、凍結乾燥を行うことで、p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドを得る工程と、(c)酢酸ナトリウム溶液を前記p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドに添加し、放射性金属ガリウムを添加し、室温で10~20分間反応し、精製しないままで放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドを得る工程とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ナノダイヤモンドをトリエチルアミン-ジメチルメチルアミド溶液に溶解した後、チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸(p-NCS-benzyl-NODA-GA)と混合して混合物を得る工程と、
(b)前記混合物を超音波振動で少なくとも4時間反応した後、遠心分離によって上清を除去し、水を添加して再溶解した後、凍結乾燥を行うことで、p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドを得る工程と、
(c)酢酸ナトリウム溶液を前記p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドに添加し、放射性金属ガリウムを添加し、室温で10~20分間反応し、精製しないままで放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドを得る工程と、
を有することを特徴とする、放射性金属を配位したナノダイヤモンドの製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)において、前記ナノダイヤモンド及び前記トリエチルアミン-ジメチルメチルアミド溶液は、1:2~4の体積比で混合されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(a)において、前記ナノダイヤモンド及び前記チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸(p-NCS-benzyl-NODA-GA)の重量比は、0.6~0.8:1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)において、前記混合物を超音波振動で少なくとも6時間反応する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、前記放射性金属はGa-67である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)において、前記放射性金属はGa-68である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(c)は、pH4~6で行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(c)は、pH4~5で行う請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(c)は、室温で15分間反応する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドは、水溶性ナノ粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精製工程を行う必要がないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射配位の技術分野、特にアミノ基で表面修飾されたナノダイヤモンド材料に放射性物質であるガリウムを配位する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞治療製品は、正確且つ迅速な前臨床の細胞薬物動態学の検証を欠いている。細胞薬物(Cell Drugs)として生体に入った後、細胞の配位、位置の確定、定量、効果確認、及び動態学の分析等を効果的に行う方法が研究されている。
【0003】
従来技術において、毒性がなく、細胞によって貪食されると効果的に細胞内に留まる蛍光ナノダイヤモンドが利用されている。ナノダイヤモンドが細胞薬物を介して生体に注入すると細胞内に留まるため、容易に生体内の位置を確定し、細胞の生体内分布(biodistribution)を得ることができる。また、ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)と組み合わせて細胞遺伝子治療後の配列分析を行うことができる。
【0004】
蛍光ナノダイヤモンドを利用して動物の追跡細胞の生体内分布を得ることができるが、動物を犠牲にしてその器官を取り出しから細胞数を計数する必要があり、生体イメージングを行うことができない。
【0005】
また、従来技術において、前記ナノダイヤモンドへの放射配位方法は、その工程又は使用では制限があるため、臨床の使用には適さない。例えば、I-125をナノダイヤモンドに配位する方法(Diamond & Related Materials 18(2009) 95-100.)は、強力な酸化剤であるchloramine Tを使用し、配位後に長時間の透析処理を行う必要があり、最終的に動物を犠牲にすることでナノダイヤモンドの分布を得る。なお、F-18をナノダイヤモンドに配位する方法(ACS Nano 5(7):5552-5559、 2011)は、先ず、N-Succinimidyl 4-[18F]Fluorobenzoate(18F-SFB)の製造及び精製を行って、そして、遠心分離及び分離処理等を行う必要があるため、工程が複雑である。また、従来技術において、放射性金属をナノダイヤモンドに配位する報告がない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Diamond & Related Materials 18(2009) 95-100.
【非特許文献2】ACS Nano 5(7):5552-5559、2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を鑑みて、従来技術を改善するために、新規の放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法を提供する。当該放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法は、
(a)ナノダイヤモンドをトリエチルアミン-ジメチルメチルアミド溶液に溶解した後、チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸(p-NCS-benzyl-NODA-GA)と混合して混合物を得る工程と、
(b)前記混合物を超音波振動で少なくとも4時間反応した後、遠心分離によって上清を除去し、水を添加して再溶解した後、凍結乾燥を行うことで、p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドを得る工程と、
(c)酢酸ナトリウム溶液を前記p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドに添加し、放射性金属ガリウムを添加し、室温で10~20分間反応し、精製しないままで放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドを得る工程と、を有する。
【0009】
1つの実施形態において、前記工程(a)において、ナノダイヤモンド及びトリエチルアミン-ジメチルメチルアミド溶液は、1:2~4の体積比で混合される。
【0010】
1つの実施形態において、前記ナノダイヤモンド及び前記チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸(p-NCS-benzyl-NODA-GA)の重量比は、0.6~0.8:1である。
【0011】
1つの実施形態において、工程(b)において、混合物を超音波振動で少なくとも6時間反応する。
【0012】
1つの実施形態において、工程(b)において、前記放射性金属は、ガリウム-67又はガリウム-68であり、好ましくはGa-68である。
【0013】
1つの実施形態において、工程(c)は、pH4~6、好ましくはpH4~5で行う。
【0014】
1つの実施形態において、前記工程(c)は、室温で15分間反応する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、室温で容易且つ効果的に放射性金属ガリウムをナノダイヤモンドに配位し、精製しなくても純度が99%以上の放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のp-NCS-Bn-DTPA結合型のナノダイヤモンドを示す模式図である
図2】本発明のp-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドを示す模式図である。
図3】本発明のp-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドのGa-68放射配位の化学的純度の検査結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態及び実施例を説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0018】
本明細書に記載の専門用語は、当業者が理解する意味と同じ意味を有する。なお、本明細書に記載の名詞は、単数及び複数形を含む。
【0019】
本明細書において、「約」との用語は、数値又は範囲の±10%、±5%、±1%又は±0.5%を示し、即ち、実際の数値が誤差範囲内にあることを示す。実験例を除いで、本明細書に記載の範囲、数値、及び%は、いずれも「約」で修飾されている。そのため、本明細書及び請求項に記載の数値又はパラメータは、おおよその数値であり、需要に応じて変更できる。
【0020】
前記「個体」又は「患者」は、本発明の放射性金属を配位したナノダイヤモンドを使用するオス及びメスを含む動物であり、好ましくはヒトである。
【0021】
従来技術の問題を解決するために、本発明は、放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法を提供する。留意すべきことは、アミノ基で表面修飾されたナノダイヤモンドにp-NCS-Bn-DTPAをさらに修飾することが容易ではないが、本発明の製造方法によれば、アミノ基で表面修飾されたナノダイヤモンドにp-NCS-Bn-NODA-GAをさらに修飾した後、放射性金属ガリウムを放射配位できる。本発明の製造方法は、配位率が99%以上であり、反応が僅か15分間かかり、且つ精製を行う必要がないため、産業上の利用性を有する。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、前記放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法は、
(a)ナノダイヤモンドをトリエチルアミン-ジメチルメチルアミド溶液に溶解した後、チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸(p-NCS-benzyl-NODA-GA)と混合して混合物を得る工程と、
(b)前記混合物を超音波振動で少なくとも4時間反応した後、遠心分離によって上清を除去し、水を添加して再溶解した後、凍結乾燥を行うことで、p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドを得る工程と、
(c)酢酸ナトリウム溶液を前記p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドに添加し、放射性金属ガリウムを添加し、室温で10~20分間反応し、精製しないままで放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドを得る工程と、
を有する。
【0023】
1つの実施形態において、工程(a)において、前記ナノダイヤモンド及び前記トリエチルアミン-ジメチルメチルアミド溶液は、1:2~4、例えば、1:2、1:3、1:4の体積比で混合される。
【0024】
1つの実施形態において、前記ナノダイヤモンド及び前記チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸(p-NCS-Bn-NODA-GA)の重量比は、0.6~0.8:1であり、例えば、0.6:1、0.7:1、及び0.8:1である。
【0025】
1つの実施形態において、前記混合物を超音波振動で少なくとも6時間、例えば、6、7、8、9、又は10時間反応する。好ましい実施形態において、前記混合物を超音波振動で6時間反応する。
【0026】
また、本発明で添加される放射性金属ガリウムは、ガリウム-67又はガリウム-68である。当業者は、需要に応じて適切な放射性金属を配位できる。好ましい実施形態において、前記放射性金属は、Ga-68である。
【0027】
1つの実施形態において、工程(c)において、酢酸ナトリウム溶液を添加し、pH4~6、好ましくはpH4~5、より好ましくはpH4.5で反応を行う。
【0028】
1つの実施形態において、前記工程(c)は、室温で10~20分間、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20分間、好ましくは15分間反応する。
【0029】
以下、実施例を開示しながら本発明を説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【実施例0030】
(実施例1)ナノダイヤモンド及びp-NCS-Bn-DTPAの結合
ナノダイヤモンド(5mg)をトリエチルアミン-ジメチルメチルアミド(0.3mL-3mL)に溶解し、チオシアン酸-トルエン-ジエチルトリアミン五酢酸(p-NCS-benzyl-DTPA、5mg Macrocyclics、USA. FW=649.9)を添加し、超音波振動で6時間攪拌反応する。14,000rpmで5分間遠心分離によって上清を除去する。沈澱物が0.5mLの脱イオン水に不溶であり、且つジメチルメチルアミド、メタノール、又はジメチルスルホキシドに不溶であるため、定量NMR(qNMR)によって測定できない。そのため、そのまま下記In-111で放射配位を行う。p-NCS-Bn-DTPA結合型のナノダイヤモンドを図1に示す。
【0031】
(実施例2)p-NCS-Bn-DTPA結合型のナノダイヤモンドのIn-111放射配位
実施例1で得られたp-NCS-Bn-DTPA結合型のナノダイヤモンドにそれぞれ20μLのアセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルメチルアミド、及びアセトンを添加し、その溶液1μLを取って、それに10μLのクエン酸ナトリウム(pH4)を添加する。その後、1μLのIn-111(活量が約24uCiである)を添加し、室温で15分間反応する。0.1MのEDTAで放射線薄層クロマトグラフィーで分析したところ、In-111放射配位の化学的純度は、それぞれ24%、15%、30%、19%、12%である。p-NCS-Bn-DTPA結合型のナノダイヤモンドのIn-111放射配位の化学的純度の検査方法を実施例3に示す。
【0032】
(実施例3)p-NCS-Bn-DTPA結合型のナノダイヤモンドのIn-111放射配位の化学的純度の検査方法
0.1MのEDTA溶液10mLを展開槽に添加し、それぞれRP-TLCプレートの1cm及び5cmで原点(origin)及び溶媒先端(solvent front)としてマークする。RP-TLCプレートの原点にサンプル(1μL)を滴下し、ピンセットで展開槽に入れる。展開液が溶媒先端に達したら、ピンセットで取り出して乾燥する。radio-TLCスキャナーでRP-TLCプレートをスキャンして1分間画像を収集する。結果の計算は、以下のように行う。
【0033】
A:The count area of the In-111-ナノダイヤモンド-NCS-Bn-DTPA peak(Rf=0.0~0.2)
B:The count area of all peaks
【0034】
(実施例4)ナノダイヤモンド及びp-NCS-Bn-NODA-GAの結合
ナノダイヤモンド(1.4mg)をトリエチルアミン-ジメチルメチルアミド(0.3mL-3mL)に溶解し、チオシアン酸-トルエン-トリアザシクロノナン二酢酸-グルタミン酸(p-NCS-benzyl-NODA-GA、1mg CheMatech、France. FW=521.59)を添加し、超音波振動で6時間攪拌反応する。14,000rpmで5分間遠心分離によって上清を除去し、0.5mL脱イオン水を添加した後、再び14,000rpmで5分間遠心分離を行っても沈澱物を得ないため、そのまま凍結乾燥する。ナノダイヤモンド及びp-NCS-Bn-NODA-GAを結合した生成物が水溶性であるため、内部標準としてブテン二酸を使用して定量NMR(qNMR)によってp-NCS-Bn-NODA-GAのベンゼン環のシグナルが見られる。内部標準品と比較することにより0.8mgのp-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンド生成物を得ることが分かる。その反応式は、図2に示す。
【0035】
(実施例5)p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドのGa-68放射配位
0.8mgのp-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドを取って、凍結乾燥して20μLの脱イオン水に溶解する。その溶液4μLを取って、それに166μLの1M酢酸ナトリウムを添加し、混合液のPHを約4.5に調整した後、0.5mLのGa-68(活量が約5mCiである)(最終的なpH=4.5)を添加し、室温で15分間反応することで、本発明の放射性金属を配位したナノダイヤモンド(p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドのGa-68)を得る。0.1MのEDTAで放射線薄層クロマトグラフィーで分析したところ、Ga-68放射配位の化学的純度は、99.46%である(図3)。p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドのGa-68放射配位の化学的純度の検査方を実施例6に示す。
【0036】
(実施例6)p-NCS-Bn-NODA-GA結合型のナノダイヤモンドのGa-68放射配位の化学的純度の検査方法
0.1MのEDTA溶液10mLを展開槽に添加し、それぞれRP-TLCプレートの1cm及び5cmで原点(origin)及び溶媒先端(solvent front)としてマークする。RP-TLCプレートの原点に少量のサンプル(1~2μL)を滴下し、ピンセットで展開槽に入れる。展開液が溶媒先端に達したら、ピンセットで取り出して乾燥する。radio-TLCスキャナーでRP-TLCプレートをスキャンして1分間画像を収集する。結果の計算は、以下のように行う。
【0037】
A:The count area of the Ga-68-ナノダイヤモンド-NCS-Bn-NODA-GA peak(Rf=0.0~0.2)
B:The count area of all peaks
【0038】
上記実施例1~3の結果から分かるように、アミノ基で表面修飾されたナノダイヤモンドにp-NCS-Bn-DTPAをさらに修飾することが容易ではない。また、In-111放射配位において高い配位率が得られない。それと比べて、本発明の方法である実施例4~6の結果から実証されるように、本発明の方法によれば、放射性金属核種であるガリウムを室温で15分間反応するだけで配位でき、且つ精製を行う必要がない。また、本発明のナノダイヤモンドの放射性金属核種であるガリウムの配位率が99%以上である。ガリウム-68(半減期が68分間)及びガリウム-67(半減期が67.2時間)は、互いに同位体であり、同じ化学的性質を有するため、ナノダイヤモンドに配位して細胞によって貪食されると、それぞれの短期および長期の生体イメージングの変化を観察できる。また、Ga-68の半減期が短い(68分間)ため、イメージングしてから生体内に放射能がなくなる。なお、Ga-67の半減期が長い(78.2時間)ため、細胞の生体内分布を長期に観察できる。要するに、放射性金属ガリウムを配位したナノダイヤモンドの製造方法は、将来的に臨床の細胞治療において細胞トレーサーとして利用する可能性があるため、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3