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特開2023-67790短絡保護を具備する半導体パワー装置及び半導体パワー装置を製造するプロセス
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  • 特開-短絡保護を具備する半導体パワー装置及び半導体パワー装置を製造するプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067790
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】短絡保護を具備する半導体パワー装置及び半導体パワー装置を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230509BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167881
(22)【出願日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】102021000027842
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ カッシーノ
(72)【発明者】
【氏名】アルフィオ ガルネーラ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジウセッペ サッジーオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】短絡保護を具備する半導体パワー装置、及び半導体パワー装置を製造するプロセスを提供する。
【解決手段】半導体パワー装置が最大公称電圧を有しており、且つ、第1導電端子及び第2導電端子、シリコンカーバイドを含有しており第1導電型を有している半導体ボディ2、第2導電型を有しており半導体ボディ内に収容されておりボディ距離LBだけ互いに離隔されているボディウエル7、ボディウエル7内に収容されているソース領域8及び半導体ボディ2の第1面2aと第2面2bとの間でボディウエル7から或る距離において半導体ボディ2内に形成されており、第2導電型を有しているフローティングポケット20を包含している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大公称電圧を有する半導体パワー装置において、
第1導電端子(1a)及び第2導電端子(1b)、
シリコンカーバイドを含んでおり且つ第1導電型を有している半導体ボディ(2,102)、
第2導電型を有しており、該半導体ボディ内に収容されており、ボディ距離(LB)だけ互いに離隔されているボディウエル(7,107)、
該ボディウエル(7)内に収容されているソース領域、及び
第2導電型を有しており、該半導体ボディ(2,102)の第1面(2a,102a)と第2面(2b、102b)との間で該ボディウエル(7,10-7)から或る距離において該半導体ボディ(2,102)内に形成されているフローティングポケット(20,120)、
を有しており、少なくとも該第1導電端子(1a)と該第2導電端子(1b)との間の導通電圧(VDS)の値が最大公称電圧未満であるスレッシュホールド電圧よりも一層高い値に対して、該フローティングポケット(20,120)周りの電界の最大強度が該ボディウエル(7,107)周りの電界の最大強度よりも一層大きいように、該ボディウエル(7,107)と相対的に該フローティングポケット(20,120)が形状画定され且つ配置されている半導体パワー装置。
【請求項2】
該半導体ボディ(2,102)が、第1導電型と第1ドーピングレベル(N1)とを有している第1エピタキシャル層(4,104)、及び第1導電型と該第1ドーピングレベル(N1)よりも一層高い第2ドーピングレベル(N2)とを有している第2エピタキシャル層(5,105)を有しており、
該ボディウエル(7,107)は該第2エピタキシャル層(5,105)内に収容されており、
該フローティングポケット(20,120)が該第1エピタキシャル層(4,104)内に収容されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該フローティングポケット(20,120)が、該第1エピタキシャル層(4,104)の上側にあるエピタキシャル層との該第1エピタキシャル層(4,104)の界面に収容されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
該第1エピタキシャル層(4)の上側にある該エピタキシャル層が該第2エピタキシャル層(5)である請求項3に記載の装置。
【請求項5】
該半導体ボディ(2)の第1面(2a)に対して及び第2面(2b)に対して垂直な方向においてフローティングポケット(20)と対応するボディウエル(7)との間の保護対ボディ距離(LPB)が0.5μm未満である請求項4に記載の装置。
【請求項6】
該半導体ボディ(102)が、該第1エピタキシャル層(104)と該第2エピタキシャル層(105)との間に配置されており且つ該第1ドーピングレベル(N1)と該第2ドーピングレベル(N2)との間の中間のドーピングレベルを有している中間エピタキシャル層(140)を有しており、且つ該第1エピタキシャル層(104)の上側にある該エピタキシャル層が該中間エピタキシャル層(140)である請求項3に記載の装置。
【請求項7】
該第2導電型を有しており、該第2エピタキシャル層(105)との界面において該中間エピタキシャル層(140)内に形成されている中間フローティングポケット(145)を有している請求項6に記載の装置。
【請求項8】
該フローティングポケット(12)と該中間フローティングポケット(145)との間及び該中間フローティングポケット(145)と該ボディウエル(107)との間において該半導体ボディ(102)の該第1面(102a)及び該第2面(102b)に対して垂直な方向における距離が0.5μm未満である請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
該半導体ボディ(2,102)が、該第1ドーピングレベル(N1)及び第第2ドーピングレベル(N2)よりも一層高い第3ネイティブドーピングレベル(N3)を有している表面富化層(6,106)を有しており、且つ該第1エピタキシャル層(104)が第1厚さ(T1)を有しており、該第2エピタキシャル層(105)が第2厚さ(T2)を有しており、且つ該富化層(6,106)が該第1厚さ(T1)及び該第2厚さ(T2)よりも一層小さな第3厚さ(T3)を有している、請求項2乃至8の内のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
該ボディウエル(7,107)がボディ距離(LB)だけ互いに離隔されており、且つ該フローティングポケット(20,120)が対応するボディウエル(7,107)の下側に配置されており、該ボディ距離(LB)よりも一層大きな保護距離(LP)、例えば0.5μmと1.5μmとの間の量、だけ互いに離隔されている先行する請求項の内でいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
該ボディ距離(LB)が1μm未満であり、例えば0.6μm、である先行する請求項の内でいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
該第2エピタキシャル層(5,105)が電流広がり層を画定しており、該電流広がり層は、該ボディウエル(7,107)よりも該半導体ボディ(2,102)の該第1面(2a,102a)から一層大きな深さへ延在している先行する請求項の内のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
該フローティングポケット(20,120)が第2導電型と1018原子数/cm程度のドーピングレベルとを有している先行する請求項の内のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
半導体パワー装置を製造する方法において、
シリコンカーバイドを含んでおり且つ第1導電型(N)を有している半導体ボディ(2,102)を形成し、
該半導体ボディ内に収容されており且つボディ距離(LB)だけ互いに離隔されているボディウエル(7,107)を形成し、
第1導電型(N)を有しており且つ該ボディウエル(7)内に収容されているソース領域(8)を形成し、
該半導体ボディ(2,102)の第1面(2a,102a)と第2面(2b、102b)との間で該ボディウエル(7,107)から或る距離において該第2導電型を有するフローティングポケット(20,120)を該半導体ボディ(2,102)内に形成し、
第1導電端子(1a)及び第2導電端子(1b)を形成する、
ことを包含しており、少なくとも該第1導電端子(1a)と該第2導電端子(1b)との間の導通電圧(VDS)の値が最大公称電圧未満のスレッシュホールド電圧よりも一層大きい場合に該フローティングポケット(20,120)周りの電界の最大強度が該ボディウエル(7,107)の周りの電界の最大強度よりも一層大きいように該フローティングポケット(20,120)が該ボディウエル(7,107)と相対的に形状画定され且つ配置される方法。
【請求項15】
該半導体ボディ(2,102)を形成する場合に、該第1導電型及び第1ドーピングレベル(N1)を有している第1エピタキシャル層(4,104)及び該第1導電型及び該第1ドーピングレベル(N1)よりも一層高い第2ドーピングレベル(N2)を有している第2エピタキシャル層(5,105)を形成することを包含しており、該フローティングポケット(20,120)を該第1エピタキシャル層(4,104)内に形成し且つ該ボディウエル(7,107)を該第2エピタキシャル層(5,105)内に形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
フローティングポケット(20)を形成する場合に、該第1エピタキシャル層(4)上に第1注入マスク(51)を形成し且つ該第1注入マスク(51)を使用して該第2導電型のドーパント種の第1注入、例えば第1マルチ注入、を実施することを包含しており、及びボディウエル(7)を形成する場合に、第2注入マスク(56)を形成し且つ該第2注入マスク(56)を使用して該第2導電型のドーパント種の第2注入、例えば第2マルチ注入、を実施することを包含している、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡保護を具備する半導体パワー装置、及び半導体パワー装置を製造するプロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体パワー装置において、高い性能を得るために寸法を減少させることの傾向は、主に或るパラメータを関与する種々の危険条件に露呈させる場合があることが知られている。従来のシリコンパワー装置のみならず、シリコンカーバイド等の特別の物質に基づくパワー装置にとっての顕著な問題は、短絡耐量時間を介してしばしば定義される短絡強度に関するものである。装置内の電流密度は、特にボディウエルとドリフト領域との間の接合等の構造の周りにおいて、極めて高い値に達する場合がある。過剰に高い電流密度は、強烈な局所加熱及び更には不可逆的な損傷の原因となる場合がある。例えば、加熱は、電子-正孔対の無制御の発生現象(熱的暴走)をトリガーする場合があり、そのことは、ドレイン領域とソース領域との間の短絡条件となり且つ装置をスイッチオフさせることによっても停止されない場合がある。短絡耐量時間は、熱的短絡が発生する前に与えられた電流条件においてどれほど装置が機能することが可能であるかを表す。短絡耐量時間が長ければ長いほど、損傷を被ること無しに一層長く装置が機能することが可能である。
【0003】
その問題は、主に、電流密度とパワーの局所的散逸とに関連しているので、性能条件が減少されない限り、装置の寸法の減少(縮小)が負の影響を有する場合があることは明らかである。寸法の減少は、シリコンカーバイドがその他の半導体物質のものよりも一層高い熱伝導度を有しており、その結果熱を一層効率的に散逸させることが可能であるが、そのようなシリコンカーバイドの装置においても短絡のトリガーに起因する限界に遭遇する。
【0004】
潜在的に危険な条件を防止又は封じ込めるために種々の回路解決手段が提案されている。しかしながら、その実効性に拘わらずに、それらの解決手段の全てはコスト及び専有面積を著しく増加させることとなる。
【0005】
単にオン状態ドレイン対ソース抵抗(通常RDSONで示される)を減少させることに向けられた構造的解決手段は利点が制限されることとなり、いずれにしても、短絡耐量時間を十分な態様で増加させるのに十分なものではない。
【0006】
その結果、概して、一層高いレベルの性能を得るためにパワー装置の寸法を減少させることの傾向は、過剰に高い電流密度に起因する問題によって妨げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的とするところは、上述した問題を解消するか又は少なくとも緩和させることが可能な半導体パワー装置、及びそのような半導体パワー装置を製造するプロセス、即ち方法、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、特許請求の範囲1及び14に夫々定義される如き半導体パワー装置及び半導体パワー装置を製造する方法が提供される。
【0009】
本発明をより良く理解するために、本発明の幾つかの実施例を添付の図面を参照して純粋に非制限的な例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1実施例に基づく半導体パワー装置の断面図。
図1A図1のパワー装置の電気的等価回路図。
図2】既知のパワー装置における電界強度分布を示したグラフ図。
図3図1のパワー装置における電界強度分布を示したグラフ図。
図4】既知のパワー装置及び図1のパワー装置における短絡耐量時間を示したグラフ図。
図5】既知のパワー装置における電位分布を示したグラフ図。
図6図1のパワー装置における電位分布を示したグラフ図。
図7】本発明の別の実施例に基づく半導体パワー装置の断面図。
図8】本発明の更なる実施例に基づく半導体パワー装置の断面図。
図9】本発明の1実施例に基づく半導体パワー装置を製造するプロセスにおいての或るステップにおける半導体ウエハの断面図。
図10】本発明の1実施例に基づく半導体パワー装置を製造するプロセスにおいての或るステップにおける半導体ウエハの断面図。
図11】本発明の1実施例に基づく半導体パワー装置を製造するプロセスにおいての或るステップにおける半導体ウエハの断面図。
図12】本発明の1実施例に基づく半導体パワー装置を製造するプロセスにおいての或るステップにおける半導体ウエハの断面図。
図13】本発明の1実施例に基づく半導体パワー装置を製造するプロセスにおいての或るステップにおける半導体ウエハの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び1Aを参照すると、本発明の1実施例に基づく半導体パワー装置が、概略、参照数字1で示されており、それは、ドレイン端子1aと、ソース端子1bと、ゲート端子1cと、シリコンカーバイドからなる半導体ボディ2とを有している。半導体ボディ2は、基板3と、該基板3上に形成されており且つ第1厚さT1を有している第1エピタキシャル層4と、該第1エピタキシャル層4上に形成されており且つ該第1厚さT1よりも一層小さな第2厚さT2を有している第2エピタキシャル層5とを有している。例えば、第1厚さT1は10-30μmの範囲内であり、且つ第2厚さT2は0.8-2μmの範囲内である。第1エピタキシャル層4及び第2エピタキシャル層5は、両方共、第1導電型、例えばN型、を有している。第1エピタキシャル層4は、第1ドーピングレベルN1を有しており、それは、該第2エピタキシャル層の第2ドーピングレベルN2よりも一層低い。例えば、第1ドーピングレベルN1は1016原子数/cmの程度であり、一方第2ドーピングレベルN2は1017原子数/cmの程度である。1実施例において、半導体ボディ2は、更に、富化層6を有しており、それは、第1厚さT1及び第2厚さT2よりも一層小さな第3厚さT3(例えば、0.1μm)と、第1導電型(N)と、第1ドーピングレベルN1及び第2ドーピングレベルN2よりも一層高い第3ドーピングレベルN3とを有している。富化層6は、更なるエピタキシャル層とするか、又は注入により得ることが可能である。基板3はN+型のものであり且つ例えば1018原子数/cm程度のドーピングレベルを有している。
【0012】
ここではP型である第2導電型を有しているボディウエル7が第2エピタキシャル層5内に形成されており且つ第1導電型、特にN+型を有している夫々のソース領域8を収容している。第2エピタキシャル層5は電流広がり層(Current Spread Layer)を画定しており、それは、ボディウエル7と比較して、半導体ボディ2の第1面2aから一層大きな深さへ延在しており、且つボディウエル7は該電流広がり層内に埋め込まれている。換言すると、該電流広がり層の深さに対応する第2エピタキシャル層5の第2厚さT2は、第1面2aからのボディウエル7の深さよりも一層大きい。
【0013】
ボディウエル7は、1μm未満、例えば0.6μmのボディ距離LBによって互いに分離されている。ボディウエル7及びそれらの間にある第2エピタキシャル層5の部分が寄生JFET領域を形成している。ゲート誘電体層10が、ソース領域8の間で第2エピタキシャル層5(又は、存在する場合には、富化層6)にわたって半導体ボディ2の第1面2a上を延在しており、且つその上にゲート領域12が設けられている。ソースコンタクト13がソース領域8及びゲート領域12にわたって延在している。金属間誘電体層15がゲート領域12をソースコンタクト13から絶縁している。ドレインコンタクト17が第1面2aと反対側の半導体ボディ2の第2面2b上に形成されている。
【0014】
上側に存在するエピタキシャル層、即ち第2エピタキシャル層5,との界面において、第1エピタキシャル層4が、1018原子数/cm程度のドーピングレベルと第2導電型、例えばP+型、とを有しているフローティング保護ポケット20を収容している。更に、フローティングポケット20は、少なくともスレッシュホールド電圧よりも一層高いドレイン対ソース電圧VDSの値に対して、フローティングポケット20周りの電界の最大強度がボディウエル7周りの電界の最大強度よりも一層大きいように、半導体ボディ2内の構造と相対的に形状及び配置が画定されている。該スレッシュホールド電圧は、最大公称電圧の例えば25%又は50%又は65%に等しい最大公称電圧よりも一層小さい。フローティングポケット20は、対応するボディウエル7の下側に配置されており且つボディ距離LBよりも一層大きな保護距離LPだけ互いに離隔されており、例えば、保護距離LPとボディ距離LBとの間の差は0.5μmと1.5μmとの間である。半導体ボディ2の面2a及び2bに対して垂直な方向におけるフローティングポケット20と対応するボディウエル7との間の保護対ボディ距離LPBは、0.5μm未満である。実際に、半導体ボディ2の第1面2aからのボディウエル7の深さは、第2エピタキシャル層5の第2厚さT2よりも、高々、0.5μm一層小さい。
【0015】
パワー装置1は、ゲート対ソース電圧が18Vで、最大公称電圧(最大ドレイン対ソース電圧VDS)が1kVを越えており、例えば1.2kV又は3.3kV、且つ数百アンペア又はそれより一層高い電流で、動作すべく構成することが可能である。フローティングポケット20は、上に定義した如く、最も臨界的な領域であるボディウエル7と第2エピタキシャル層5との間の接合周りの電界の強度を減少させることを可能とし、尚、該接合においては、特に高い電流密度との組み合わせが不所望であり、又寄生JEFT領域の寸法にも起因する。該電界の状態は、従来のパワー装置40(図2及び5)に対して及び図1のパワー装置1(図3及び6)に対して、夫々、図2及び3においては直接的に且つ図5及び6においては電位線を介して示されている。理解されるように、従来のパワー装置においては、電位線はボディウエル周りにおいて特に込み合っており且つ電界の値は高い。一方、パワー装置1においては、スレッシュホールド電圧より高く且つ導通状態において、電位線は、全寄生JFET領域において、込み具合は少なくなっており、且つフローティングポケット20周りにおいて一層込み合っている。実際には、電界の一層高い値は第1エピタキシャル層4において一層深くなっているが、電流密度は著しく減少されている。何故ならば、フローティング領域20間の領域が寄生JFET領域よりも一層幅広となっているからである。この様に、過剰な局所的加熱に起因して非制御態様で短絡を発生させる現象をトリガーさせるのに必要な時間、即ち短絡耐量時間、が、図4のグラフに示したように、効果的に増加されている。図4において、点線は従来のパワー装置に対するものであり、一方実線は本発明に基づくパワー装置1に対するものである。
【0016】
ボディウエル7周りの臨界的領域における電界の減少及び対応する短絡耐量時間の増加の影響は、フローティングポケット20とボディウエル7との間の保護対ボディ距離LPBによっても恩恵となる。保護対ボディ距離LPBは、実際に、少なくともドレイン対ソース電圧VDSの値がスレッシュホールド電圧よりも一層高い場合に、電位線はボディウエル7の周りを取り囲む傾向とはならずに、その代わりに、フローティングポケット20とボディウエル7との間に構成されている第2エピタキシャル層5の部分内に浸透することが無いか又はほんの僅かに浸透して、フローティングポケット20へ伸びる傾向となる。一層大きな距離は、該電位線の伸び及び該臨界的領域、特に寄生JFET領域においての電界の対応する減少を可能とさせるものではない。
【0017】
更なる利点は、ブレークダウン電圧又はオン状態ドレイン対ソース抵抗、RDSON
のいずれをも著しく変更すること無しに、短絡耐量時間の改良を行うことが可能であるという事実に示される。又、10-20%程度の第2エピタキシャル層5によって画定される該電流広がり層の厚さにおける増加がブレークダウン電圧に影響を与えることは無く、それは、従来のパワー装置においては、減少することとなる。
【0018】
図7を参照すると、1実施例において、半導体パワー装置100が、実質的には前述したように、第1エピタキシャル層104、及びボディウエル107とソース領域108とが形成されている第2エピタキシャル層105を包含しているシリコンカーバイドからなる半導体ボディ102を有している。富化層106を半導体ボディ102の表面上に設けることが可能である。図1の実施例におけるように、半導体ボディ102の第1面102a上には、ゲート誘電体層110、ゲート領域112,ソースコンタクト113,及び金属間誘電体層115が形成されている。ドレインコンタクト117が、第1面112a
と反対側の半導体ボディ102の第2面102b上に形成されている。
【0019】
半導体ボディ102は、更に、中間エピタキシャル層140を有しており、それは、第1エピタキシャル層104と第2エピタキシャル層105との間に配置されており且つ第1エピタキシャル層105の厚さT2と実質的に同一の厚さTINT(例えば、0.8-2μmの範囲内)を有している。
【0020】
ドーピングレベルは、第2エピタキシャル層105(最も高く、富化層が存在しない場合には、例えば1017原子数/cm)から中間エピタキシャル層140(これは、
その位置のみならずドーピングにおいても中間であり、例えば4×1016原子数/cm)へ、及び、第1エピタキシャル層104(最も低く、例えば1016原子数/cm)へ減少している。富化層106が存在する場合には、そのドーピングレベルは最も高く、例えば3×1017原子数/cmである。
【0021】
上側にあるエピタキシャル層、この場合には中間エピタキシャル層140、との界面において、第1エピタキシャル層104は、ディープフローティング保護ポケット120を収容しており、それは、1018原子数/cm程度のドーピングレベルでの例えばP+型の第2導電型を有している。
【0022】
第2エピタキシャル層105との界面において、中間エピタキシャル層140は、実質的にはディープフローティングポケット120と同じである中間フローティングポケット145を収容している。
【0023】
ディープフローティングポケット120及び中間フローティングポケット145は、少なくともドレイン対ソース電圧VDSの値が最大公称電圧であるスレッシュホールド電圧よりも一層高い値に対して、ディープフローティングポケット120周りの電界の最大強度がボディウエル107周りの電界の最大強度よりも一層大きいように、半導体ボディ102内の構造と相対的に形状画定され且つ配置されている。特に、ディープフローティングポケット120と中間フローティングポケット145との間及び中間フローティングポケット145とボディウエル107との間の半導体ボディ102の面102a、102bに対して垂直な方向における距離は、0.5μm未満であり例えば0.3μmである。これらの距離は必ずしも互いに同じでは無い。
【0024】
多数のレベルにおける保護ウエルの存在は、第1面102aからの一層大きな距離においての半導体ボディ102の内部への電界の高い値の転換の効果の増幅を可能とさせる。
【0025】
保護ウエルのレベル数は2に制限されるものではない。その他の実施例においては、例えば図8の半導体パワー装置200におけるように、ここでは参照番号220で示されているディープ保護ウエルに加えて、設計上の優先性に基づいて、例えば保護ウエル245,246の2個の中間レベル、又はそれ以上を設けることが可能である。各レベルの中間フローティングポケットが夫々の中間エピタキシャル層240,241内に形成される。
【0026】
図1のパワー装置1は、図9-13を参照して説明する以下のプロセス即ち方法に従って製造することが可能である。最初に、第1エピタキシャル層4を所望の厚さに形成する。次いで、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)の第1マスク層50を付着させ且つ平坦化させる。
【0027】
次いで、第1マスク層50をパターン形成(図10)して第1注入マスク51を形成し、それは、次いで、所望の深さへの第1注入Pによってフローティングポケット20を形成するために使用する。第1注入Pは、1実施例においては、多数のステップからなるマルチ注入であって、それは注入深さの及びフローティングポケット20の形状の精密な制御を可能とさせる。注入されるドーパント種は、アルミニウムとすることが可能であり、且つその注入は以下の表1に示されるように、5個のステップで実施することが可能である。
【0028】
【表1】
【0029】
第1注入マスク1を除去した後に、第2エピタキシャル層5をこれも所望の厚さに成長させる(図11)。必要である場合には、更なるエピタキシャル成長を介してか又はドーパント種の表面注入によって、富化層6を形成する。
【0030】
第2マスク層55を付着させ且つ平坦化させ、次いで、パターン形成して第2注入マスク56(図12)を形成し、それは、所望の深さへの第2注入Pによってボディウエル7を形成するために使用される。この第2注入もマルチ注入とすることが可能である。
【0031】
第2注入マスク56を除去し、且つマスク層(不図示)から第3注入マスク58を形成し、それによってソース領域8を形成する。
【0032】
第3注入マスク58を除去し、且つゲート誘電体層10と、ゲート領域12と、中間誘電体層15と、ソースコンタクト13とを形成し、且つ最後にドレイン端子1aと、ソース端子1bと、ゲート端子1cとを形成することによってパワー装置1が完成される(図1A)。
【0033】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施の態様に制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変形が可能であることは勿論である。
図1
図1A
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13