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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067803
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】眼科組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/726 20060101AFI20230509BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K31/726
A61P27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170043
(22)【出願日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2021177969
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】能美 君人
(72)【発明者】
【氏名】高井 良宏
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA26
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
【課題】角膜を保護することのできる新たな眼科組成物を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜の保護用眼科組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜の保護用眼科組成物。
【請求項2】
重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜の障害修復用又は障害回復用眼科組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンドロイチン硫酸又はその塩は酸性ムコ多糖の一種で、エネルギー代謝を促進させること、新陳代謝や細胞呼吸を促進して目の疲れを解消させること、涙液成分を補給すること等を目的として眼科製剤に配合されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-148791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、角膜を保護することのできる新たな眼科組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、意外にも特定の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸ナトリウムが、角膜の保護作用を有することを見出した。
【0006】
本発明は、例えば、以下の各発明を提供する。
[1]
重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜の保護用眼科組成物。
[2]
重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜の障害修復用又は障害回復用眼科組成物。
[3]
重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜保護剤。
[4]
重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜の障害修復剤又は障害回復剤。
[5]
眼科組成物に重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることを含む、該眼科組成物に角膜保護作用を付与する方法。
[6]
眼科組成物に重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることを含む、該眼科組成物に角膜の障害修復作用又は障害回復作用を付与する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、角膜を保護することのできる眼科組成物を提供することができる。また、本発明によれば、角膜の障害を修復又は回復することのできる眼科組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】試験例1の結果を示すグラフである。
図2】試験例2の結果を示すグラフである。
図3】試験例3の結果を示すグラフである。
図4】試験例4においてオクルディンの遺伝子発現の結果を示すグラフである。
図5】試験例4において膜型ムチンの遺伝子発現の結果を示すグラフである。
図6】試験例5においてオクルディンについて免疫染色した結果を示す写真である。
図7】試験例5において膜型ムチンについて免疫染色した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において、特に記載のない限り、含有量の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
【0011】
本実施形態に係る眼科組成物は、重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(単に「(A)成分」とも表記する。)を含有する。
【0012】
コンドロイチン硫酸及びその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0013】
コンドロイチン硫酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
【0014】
コンドロイチン硫酸及びその塩としては、コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸のアルカリ金属塩が好ましく、コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸ナトリウムがより好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウムが更に好ましい。
【0015】
コンドロイチン硫酸及びその塩は、天然物であっても合成物であってもよいが、一般的に天然物である動物(好ましくは哺乳類、魚類、軟体動物等;より好ましくはウシ、サメ、イカ、エイ等)に由来するコンドロイチン硫酸及びその塩が好適に用いられ、サメ及び/又はエイ由来のコンドロイチン硫酸及びその塩がより好適に用いられ、サメ由来のコンドロイチン硫酸及びその塩が更に好適に用いられる。
【0016】
コンドロイチン硫酸及びその塩は、市販のものを用いることもできる。コンドロイチン硫酸及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、コンドロイチン硫酸及びその塩は、本明細書で規定する重量平均分子量が4万~7万のコンドロイチン硫酸及びその塩と本明細書で規定する範囲外の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸及びその塩とを組み合わせて使用することができる。例えば、重量平均分子量56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムと重量平均分子量25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムとを組み合わせて使用することができる。本明細書で規定する重量平均分子量が4万~7万のコンドロイチン硫酸及びその塩と本明細書で規定する範囲外の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸及びその塩とを組み合わせて使用する場合には、重量平均分子量が4万~7万のコンドロイチン硫酸及びその塩を原料として含有していればよい。
【0017】
本明細書において「重量平均分子量」は、多角度光散乱検出器(MALS検出器)と示差屈折率検出器(RI検出器)をオンライン接続したゲル浸透クロマトグラフィーを使用することによって求めることができる。具体的には、下記の条件が提示される。
<標準試料調製>
コンドロイチン硫酸又はその塩5mgに、0.1M硝酸ナトリウム水溶液10mLを加え、室温で緩やかに攪拌し、完全に溶解させたもの。
<重量平均分子量の測定条件>
装置 :ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱計
検出器 :示差屈折率検出器(Wyatt Technology製 Optilab rEX)
多角度光散乱検出器(Wyatt Technology製 DAWN HELEOS)
カラム :Shodex OHpak SB-806M HQ 2本(φ7.8mm×30cm、昭和電工製)
溶媒 :0.1M硝酸ナトリウム水溶液
流速 :0.7mL/min
カラム温度 :23℃
検出器温度 :23℃
注入量 :0.2mL
データ処理 :Wyatt Technology製データ処理システム(ASTRA)
上記の方法で算出されたコンドロイチン硫酸及びその塩の重量平均分子量は、4万~7万の範囲であれば特に制限されない。重量平均分子量の下限値としては、41000以上、42000以上、43000以上、44000以上、45000以上、46000以上、47000以上、48000以上、49000以上、及び50000以上が例示される。重量平均分子量の上限値としては、69000以下、68000以下、67000以下、66000以下、65000以下、64000以下、63000以下、62000以下、61000以下、及び60000以下が例示される。重量平均分子量の範囲としては、41000~69000、42000~68000、43000~67000、44000~66000、45000~65000、46000~64000、47000~63000、48000~62000、49000~61000、及び50000~60000が例示される。
【0018】
本実施形態に係る眼科組成物における(A)成分の含有量は特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科組成物の総量を基準として、例えば、通常0.001~5w/v%であり、0.005~5w/v%であることが好ましく、0.008~4w/v%であることがより好ましく、0.01~3w/v%であることが更に好ましく、0.05~2w/v%であることが更により好ましく、0.1~1w/v%であることが特に好ましく、0.3~1w/v%であることが最も好ましい。
【0019】
本実施形態に係る眼科組成物は、界面活性剤を更に含有してもよい。眼科組成物が界面活性剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0020】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(3)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油3)、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数をそれぞれ示す。
【0021】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば、塩酸塩等)等が挙げられる。
【0022】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α-スルホメチルエステル、α-オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
【0023】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0024】
これらの界面活性剤の中でも、非イオン性界面活性剤が好ましく、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POE・POPブロックコポリマーがより好ましい。界面活性剤は、市販のものを用いることもできる。界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本実施形態に係る眼科組成物における界面活性剤の含有量は特に限定されず、界面活性剤の種類、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。界面活性剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、界面活性剤の総含有量が、0.001~3w/v%、0.005~2w/v%、0.01~1w/v%、又は0.05~1w/v%であってもよい。
【0026】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する界面活性剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する界面活性剤の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、界面活性剤の総含有量が、0.001質量部~30質量部、0.005~20質量部、0.01~10質量部、又は0.01~1質量部であってもよい。
【0027】
本実施形態に係る眼科組成物は、更に緩衝剤を含有することが好ましい。眼科組成物が緩衝剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。緩衝剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。緩衝剤としては、例えば、無機酸由来の緩衝剤である無機緩衝剤、及び有機酸又は有機塩基由来の緩衝剤である有機緩衝剤が挙げられる。
【0028】
無機緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤等が挙げられる。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸又はその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸又はその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸又はその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤又は炭酸緩衝剤として、ホウ酸塩、リン酸塩又は炭酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等)などが例示できる。
【0029】
有機緩衝剤としては、例えば、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、トリス緩衝剤、AMPD緩衝剤等が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸又はその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。酢酸緩衝剤としては、酢酸又はその塩(酢酸アルカリ金属塩、酢酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。乳酸緩衝剤としては、乳酸又はその塩(乳酸アルカリ金属塩、乳酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。コハク酸緩衝剤としては、コハク酸又はその塩(コハク酸アルカリ金属塩等)が挙げられる。また、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤又はコハク酸緩衝剤として、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩又はコハク酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等);乳酸緩衝剤として、乳酸又はその塩(乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等);コハク酸緩衝剤としてコハク酸又はその塩(コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム等)などが例示できる。トリス緩衝剤としては、例えば、トロメタモール又はその塩(トロメタモール塩酸塩等)が挙げられる。AMPD緩衝剤としては、例えば、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール又はその塩が挙げられる。
【0030】
緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組み合わせ等)、ホウ酸及びその塩がより好ましく、ホウ酸とホウ砂の組み合わせが更に好ましい。
【0031】
緩衝剤は、市販されているものを使用してもよい。緩衝剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本実施形態に係る眼科組成物における緩衝剤の含有量は特に限定されず、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が、0.01~10w/v%、0.05~5w/v%、又は0.1~3w/v%であってもよい。
【0033】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する緩衝剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する緩衝剤の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、緩衝剤の総含有量が、0.01~100質量部、0.05~50質量部、又は0.1~30質量部であってもよい。
【0034】
本実施形態に係る眼科組成物は、ネオスチグミン及びその塩を更に含有してもよい。ネオスチグミン及びその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。ネオスチグミンの塩としては、例えば、メチル硫酸ネオスチグミンが挙げられる。ネオスチグミン及びその塩としては、メチル硫酸ネオスチグミンが好ましい。
【0035】
ネオスチグミン及びその塩は、市販されているものを使用することもできる。ネオスチグミン及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本実施形態に係る眼科組成物におけるネオスチグミン及びその塩の含有量は、眼科組成物の総量を基準として、ネオスチグミン及びその塩の総含有量が、0.0001~0.05w/v%であることが好ましく、0.0005~0.01w/v%であることがより好ましく、0.0008~0.008w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.005w/v%であることが更に好ましい。
【0037】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対するネオスチグミン及びその塩の含有比率は特に限定されず、(A)成分及びネオスチグミン及びその塩の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するネオスチグミン及びその塩の含有比率は、第1の本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ネオスチグミン及びその塩の総含有量が、0.0001~5質量部であることが好ましく、0.0001~1質量部であることがより好ましく、0.0005~0.8質量部であることが更に好ましく、0.001~0.5質量部であることが更により好ましく、0.001~0.05質量部が特に好ましく、0.005~0.025質量部であることが最も好ましい。
【0038】
本実施形態に係る眼科組成物は、ビタミンA類を更に含有してもよい。ビタミンA類は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。ビタミンA類として具体的には、レチノール、レチナール、レチノイン酸及びこれらの誘導体、並びにこれらの塩が挙げられる。
【0039】
ビタミンA類の誘導体としては、例えば、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、酪酸レチノール、プロピオン酸レチノール、オクチル酸レチノール、ラウリル酸レチノール、オレイン酸レチノール及びリノレン酸レチノール等の1価のカルボン酸とのエステルが挙げられる。
【0040】
ビタミンA類の塩としては、例えば、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]が挙げられる。
【0041】
ビタミンA類としては、レチノールの誘導体が好ましく、レチノールと1価のカルボン酸とのエステルがより好ましく、パルミチン酸レチノール及び酢酸レチノールが更に好ましく、パルミチン酸レチノールが更により好ましい。
【0042】
ビタミンA類としては、合成物を使用してもよいし、又は天然物から得られる抽出物(例えば、ビタミンA油など)を使用してもよい。ビタミンA油とは、レチノールを含有する動物の組織等から得られる脂肪油、若しくはその濃縮物、又はそれらに植物油を適宜添加したものである。ビタミンA類は、市販されているものを使用することもできる。ビタミンA類は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
本実施形態に係る眼科組成物におけるビタミンA類の含有量は、眼科組成物の総量を基準として、0.1万~10万IU/100mL、0.5万~7.5万IU/100mL、又は1万~5万IU/100mLであってもよい。
【0044】
「IU」とは、第十七改正日本薬局方ビタミンA定量法等に記載の手法により求められる国際単位を意味する。例えば、第十七改正日本薬局方の医薬品各条において、酢酸レチノールの場合、1gにつきビタミンA250万単位以上を含むこと、パルミチン酸レチノールの場合、1gにつきビタミンA150万単位以上を含むことが記載されている。
【0045】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対するビタミンA類の含有比率は特に限定されず、(A)成分及びビタミンA類の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するビタミンA類の含有比率は、第3の本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ビタミンA類の総含有量が、0.01万~100万IU/g、0.05万~75万IU/g、又は1万~50万IU/gであってもよい。
【0046】
本実施形態に係る眼科組成物は、メントールを更に含有してもよい。メントールは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0047】
メントールはd体、l体及びdl体のいずれでもよく、l-メントール、d-メントール、dl-メントールが例示される。また、メントールを含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油等が挙げられる。
【0048】
本実施形態に係る眼科組成物におけるメントールの含有量は特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。メントールの含有量は、眼科組成物の総量を基準として、0.00001~0.5w/v%、0.0001~0.1w/v%、又は0.001~0.05w/v%であってもよい。なお、メントールを含有する精油を使用する場合は、当該精油の配合割合は、配合される精油中のメントール含有量が上記配合割合を満たすように設定される。
【0049】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対するメントールの含有比率は特に限定されず、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するメントールの含有比率は、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、メントールの総含有量が、0.00001~10質量部、0.0001~1質量部、又は0.001~0.1質量部であってもよい。
【0050】
本実施形態に係る眼科組成物のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る眼科組成物のpHとしては、例えば、4.0~9.5であってよく、4.0~9.0であることが好ましく、4.5~9.0であることがより好ましく、4.5~8.5であることが更に好ましく、5.0~8.5であることが更により好ましく、5.0~8.0であることが特に好ましい。
【0051】
本実施形態に係る眼科組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は、眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され得るが、例えば、0.4~5.0とすることができ、0.6~3.0とすることが好ましく、0.8~2.2とすることがより好ましく、0.8~2.0とすることが更に好ましい。浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(凝固点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0052】
本実施形態に係る眼科組成物の粘度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば、特に限定されるものではない。本実施形態に係る眼科組成物の粘度としては、例えば、回転粘度計(TV-20型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34’×R24)で測定した20℃における粘度が1~10000mPa・sであることが好ましく、1~8000mPa・sであることがより好ましく、1~1000mPa・sであることが更に好ましく、1~100mPa・sであることが更により好ましく、1~20mPa・sであることが特に好ましく、1.5~10mPa・sであることが最も好ましい。
【0053】
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分の他に種々の薬理活性成分及び生理活性成分から選択される成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。当該成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2017年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会 監修)に記載された眼科用薬における有効成分が例示できる。眼科用薬において用いられる成分として、具体的には、例えば、次のような成分が挙げられる。
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト等。
抗ヒスタミン剤:例えば、ジフェンヒドラミン又はその塩(例えば、塩酸ジフェンヒドラミン)、イプロヘプチン又はその塩(例えば、塩酸イプロヘプチン)、クロルフェニラミン又はその塩(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン)、レボカバスチン又はその塩(例えば、塩酸レボカバスチン)、ケトチフェン又はその塩(例えば、フマル酸ケトチフェン)、ペミロラストカリウム、オロパタジン又はその塩(例えば、塩酸オロパタジン)等。
消炎剤:例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、トラネキサム酸、リゾチーム、塩化リゾチーム、インドメタシン、プラノプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ケトプロフェン、フェルビナク、ベンダザック、ピロキシカム、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、イプシロン-アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム)等。
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはトロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン、塩酸ピロカルピン等。
ビタミン類:例えば、酢酸トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等。
アミノ酸類:例えば、L-アスパラギン酸又はその塩(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カルシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(L-アスパラギン酸マグネシウムとL-アスパラギン酸カリウムとの等量混合物))、L-アルギニン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、リジン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸、トリメチルグリシン及びそれらの塩等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン及びそれらの塩等。
【0054】
本実施形態に係る眼科組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途及び製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。このような添加物として、例えば、医薬品添加物事典2016(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、プラスチベース等。
pH調節剤:例えば、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等。
香料又は清涼化剤:例えば、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、チモール、シメン、テルピネオール、ピネン、カンフェン、イソボルネオール、フェンチェン、ネロール、ミルセン、ミルセノール、酢酸リナロール、ラバンジュロール、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。
増粘剤:例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子化合物;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等のポリビニル系高分子化合物;カルボキシビニルポリマー;グアーガム;ヒドロキシプロピルグアーガム;アラビアゴム;カラヤガム;キサンタンガム;寒天;アルギン酸及びその塩(ナトリウム塩等);ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヒアルロン酸及びその塩(ナトリウム塩等)のムコ多糖類;デンプン;キチン及びその誘導体;キトサン及びその誘導体;カラギーナン;ブドウ糖等の単糖類等。
安定化剤:例えば、エデト酸、エデト酸塩類(エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、シクロデキストリン、モノエタノールアミン、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等。
防腐剤:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン類第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ポリドロニウム、塩化亜鉛、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)、アレキシジン等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
等張化剤:例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
油類:例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油;スクワラン等の動物油;流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
【0055】
本実施形態に係る眼科組成物が水を含有する場合、水の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、水の含有量が、80w/v%以上100w/v%未満であることが好ましく、85w/v%以上99.5w/v%以下であることがより好ましく、90w/v%以上99.2w/v%以下であることが更に好ましい。
【0056】
本実施形態に係る眼科組成物に使用される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。このような水として、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水及び注射用蒸留水等を挙げることができる。それらの定義は第十七改正日本薬局方に基づく。
【0057】
本実施形態に係る眼科組成物は、所望量の(A)成分、及び必要に応じて他の成分を所望の濃度となるように添加及び混和することにより調製することができる。例えば、精製水でそれらの成分を溶解又は分散させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。
【0058】
本実施形態に係る眼科組成物は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。製剤形態として、例えば、液剤、ゲル剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられる。
【0059】
本実施形態に係る眼科組成物は、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤、コンタクトレンズ装着点眼液、人工涙液を含む。)、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう。また、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤、点眼して使用する洗眼剤を含む。)、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)、コンタクトレンズパッケージ液等]として用いることができる。なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
【0060】
本実施形態に係る眼科組成物は、角膜の保護作用を有することから、角膜保護用の眼科組成物として好適に使用することができる。また、本実施形態に係る眼科組成物は、炎症(好ましくは、目の乾きや目の疲れによって生じる炎症、より好ましくは、デジタル機器の使用や加齢に伴う目の乾きや目の疲れによって生じる炎症)やコンタクトレンズの装用等により障害を受けた角膜を修復又は回復させる作用を有することから、角膜の障害修復用又は障害回復用の眼科組成物として好適に使用することができる。また、本実施形態に係る眼科組成物は、経上皮電気抵抗を上昇させ、オクルディンの発現を増強させることから、角膜のバリア機能の向上用、異物感抑制用、又は感染症若しくはアレルギーの予防用の眼科組成物としても好適に使用することができる。また、本実施形態に係る眼科組成物は、膜型ムチンの発現を増加させることから、角膜の涙液保持機能向上用、涙液安定化用、又は異物感抑制用の眼科組成物としても好適に使用することができる。また、本実施形態に係る眼科組成物は、角膜の保護作用や角膜を修復又は回復させる作用を有することから、目の疲れ、目のかすみ、目の不快感(特にコンタクトレンズ装用時の目の不快感)などの症状に対しても好適に使用することができる。また、本実施形態に係る眼科組成物は、経上皮電気抵抗を上昇させ、オクルディンの発現を増強させることから、目のかゆみ、涙目、異物感などの症状に対しても好適に使用することができ、眼病予防にも好適に使用することができる。また、本実施形態に係る眼科組成物は涙液保持機能を向上させることから、目の乾き、異物感、目の乾きによる疲れ目などの症状に対しても好適に使用することができる。
【0061】
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)であることが好ましい。本実施形態に係る眼科組成物が点眼剤である場合、その用法・用量としては、効果を奏し、副作用の少ない用法・用量であれば特に限定されないが、例えば成人(15歳以上)及び7歳以上の小児の場合、1回1~3滴、1~2滴、又は2~3滴を1日2~4回、又は5~6回点眼して用いる方法が例示され、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、1回1~2滴、1日3~4回点眼して用いる方法が好ましく、1回1~2滴、1日4回点眼して用いる方法がより好ましい。本実施形態に係る眼科組成物は、目の乾き、目の疲れ、目のかすみ、目の不快感(特にコンタクトレンズ装用時の目の不快感)などの自覚症状を有する者が、例えば点眼剤として一定の期間(好ましくは1週間以上、より好ましくは2週間以上)使用することにより、それらの自覚症状の発生回数を抑制することができる。
【0062】
本実施形態に係る眼科組成物は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0063】
本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器には、ノズルが装着されてもよい。ノズルの材質については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。ノズルの材質としては、本発明の効果をより一層高めるという観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0064】
本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器は、複数回の使用量が収容されるマルチドーズ型であってもよく、単回の使用量が収容されるユニットドーズ型であってもよい。
【0065】
本実施形態に係る眼科組成物は、内容積が4~30mLである容器に充填されてなることが好ましく、内容積が5~20mLである容器に充填されてなることがより好ましく、内容積が6~16mLである容器に充填されてなることが更に好ましく、内容積が10~15mLである容器に充填されてなることが更により好ましい。また、内容積が0.1~3mLである容器に充填されてもよく、内容積が0.2~1mLである容器に充填されてもよい。
【0066】
本実施形態に係る眼科組成物は、上述したように角膜の保護作用、及び炎症等により障害を受けた角膜を修復又は回復させる作用を有することから、本発明の一実施形態として、(1)重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜保護剤、(2)重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、角膜の障害修復剤又は障害回復剤、(3)眼科組成物に重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることを含む、該眼科組成物に角膜保護作用を付与する方法、及び(4)眼科組成物に重量平均分子量が4万~7万であるコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることを含む、該眼科組成物に角膜の障害修復作用又は障害回復作用を付与する方法が提供される。
【実施例0067】
以下、試験例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、下記試験例で使用されるコンドロイチン硫酸ナトリウムは、下記のとおりであり、重量平均分子量約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムはサメ由来である。
コンドロイチン硫酸ナトリウム
重量平均分子量約56000 :生化学工業株式会社;グレード N-K
重量平均分子量約25000 :マルハニチロ株式会社;局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム
【0068】
〔試験例1:正常な角膜上皮細胞株に対する角膜保護作用(経上皮電気抵抗)〕
角膜上皮細胞株をラミニン511E8フラグメント(0.5μg/cm)(ニッピ)でコーティングした細胞培養用インサート上でコンフルエントになるまで培養した。培養には分化培地[2% B27 Supplement(Life Technologies)、1% penicillin-streptomycin solution(Life Technologies)、20ng/mL KGF(Keratinocyte Growth Factor)(Wako)、10μM Y-27632(Wako)を含有させたDMEM/F-12(2:1(v/v))培地(Life Technologies)]を使用した。続いて、基礎培地[1% penicillin-streptomycin solutionを含有させたDMEM/F-12(2:1(v/v))培地]で一晩培養し、細胞を飢餓状態にさせた。その後、基礎培地に重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業株式会社)を濃度が0.5%となるようにそれぞれ添加し、72時間培養後、Millicell-ERS2(Millipore)によって、経上皮電気抵抗(TER)を測定した。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムを添加しなかった基礎培地を対照とした。結果を表1及び図1に示す。ここでは、経上皮電気抵抗が大きいほど角膜保護作用が強いと評価される。
【0069】
【表1】
【0070】
重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムは、経上皮電気抵抗が上昇し、角膜のバリア機能の強化作用、角膜保護作用が強いことが確認された。
【0071】
〔試験例2:炎症時の角膜上皮細胞株に対する角膜障害の回復作用(経上皮電気抵抗)〕
角膜上皮細胞株をラミニン511E8フラグメント(0.5μg/cm)でコーティングした細胞培養用インサート上でコンフルエントになるまで培養した。培養には分化培地を使用した。続いて試験例1と同様の基礎培地で一晩培養し、細胞を飢餓状態にさせた。その後、基礎培地に炎症誘発因子としてTNF(tumor necrosis factor)(PEPROTECH)を添加(10ng/mL)し、次いで重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウム又は重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムを濃度が0.5%となるようにそれぞれ添加後、48時間培養し、Millicell-ERS2によって、経上皮電気抵抗(TER)を測定した。なお、TNF及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの何れも添加しなかった培養条件を陰性対照、TNFを添加しコンドロイチン硫酸ナトリウムを添加しなかった培養条件を陽性対照とした。結果を表2及び図2に示す。ここでは、経上皮電気抵抗が大きいほど角膜障害の抑制作用が強いと評価される。
【0072】
【表2】
【0073】
重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムは、重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムと比較して経上皮電気抵抗が大きく、角膜障害の抑制効果が高いことが確認できた。このことから、重量平均分子量が4万から7万のコンドロイチン硫酸及びその塩は、炎症で障害を受けた角膜の回復にも応用できる。
【0074】
〔試験例3:正常な角膜上皮細胞株における角膜保護作用(遺伝子発現)〕
角膜上皮細胞株をラミニン511E8フラグメント(0.5μg/cm)でコーティングした細胞培養皿上でコンフルエントになるまで培養した。培養には試験例1と同様の分化培地を使用した。続いて試験例1と同様の基礎培地で一晩培養し、細胞を飢餓状態にさせた。その後、基礎培地に重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウム又は重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムを濃度が0.5%となるようにそれぞれ添加し、24時間培養後、Maxwell RSC simplyRNA Tissue Kit(プロメガ)を用いて細胞を回収し、総RNAを抽出し、内在性コントロールとして用いたGAPDHに対するオクルディン(OCLN)の遺伝子発現量の変化を測定した。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムを添加しなかった基礎培地を対照とした。
総RNAの抽出はMaxwell RSC simplyRNA Tissue Kit(Promega)を用いた。ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO)を用いて逆転写PCRを行い、cDNAを作製した。サイバーグリーン法を用いて、GAPDH、OCLN及びMUC16のmRNA発現量をQuantStudio 7 Flex(Thermo Fisher Scientific)を用いて定量的リアルタイムPCR法により評価した。定量的リアルタイムPCR後、各サンプルのCT値を、QuantStudioTM Design & Analysis Softwareの自動解析により算出した。
各サンプルにおける標的因子のΔCT値を、式(1)から算出した。
式(1):ΔCT値=(標的因子のCT値)-(GAPDHのCT値)
静置培養条件におけるサンプルのΔCT値の平均値を算出し、各サンプルのΔΔCT値を、式(2)から算出した。
式(2):ΔΔCT値=(標的因子のΔCT値)-(静置培養条件におけるサンプルのΔCT値の平均値)
各サンプルの、静置培養条件に対する相対的mRNA発現量を、式(3)から算出した。
式(3):各サンプルの相対的mRNA発現量=2-ΔΔCT値
結果を表3及び図3に示す。ここでは、オクルディンの遺伝子発現が増加するほど角膜保護作用が強いと評価される。
【0075】
【表3】
【0076】
重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムは、重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムと比較してオクルディンの遺伝子発現量が増加し、角膜のバリア機能の強化作用、角膜保護作用がより強いことが確認された。
【0077】
〔試験例4:炎症時の角膜上皮細胞株に対する角膜障害の回復作用(遺伝子発現)〕
角膜上皮細胞株をラミニン511E8フラグメント(0.5μg/cm)でコーティングした細胞培養皿上でコンフルエントになるまで培養した。培養には試験例1と同様の分化培地を使用した。続いて試験例1と同様の基礎培地で一晩培養し、細胞を飢餓状態にさせた。その後、基礎培地に炎症誘発因子としてTNFを添加(10ng/mL)し、次いで、基礎培地に重量平均分子量が約5.6万のコンドロイチン硫酸ナトリウム又は重量平均分子量が約2.5万のコンドロイチン硫酸ナトリウムを濃度が0.5%となるようにそれぞれ添加し、24時間培養後、Maxwell RSC simplyRNA Tissue Kit(プロメガ)を用いて細胞を回収した。その後RT-qPCRに供し、内在性コントロールとして用いたGAPDHに対するオクルディン(OCLN)及び膜型ムチン(MUC16)の遺伝子発現量の変化を測定した。測定条件は試験例3に準ずる。なお、TNF及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの何れも添加しなかった培養条件を陰性対照、TNFを添加しコンドロイチン硫酸ナトリウムを添加しなかった培養条件を陽性対照とした。結果を表4、図4及び図5に示す。ここでは、オクルディン及び膜型ムチンの遺伝子発現が増加するほど角膜障害の抑制作用がより強いと評価される。
【0078】
【表4】
【0079】
重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムは、重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムと比較してオクルディン及び膜型ムチンの遺伝子発現量が増加し、角膜障害の抑制作用が強いことが確認できた。このことから、重量平均分子量が4万から7万のコンドロイチン硫酸及びその塩は、炎症で障害を受けた角膜の回復にも応用できる。また、膜型ムチンの遺伝子発現量が増加したことから、重量平均分子量が4万から7万のコンドロイチン硫酸及びその塩は、角膜の涙液保持機能の向上、涙液の安定化にも応用できる。
【0080】
〔試験例5:炎症時の角膜上皮細胞株に対する角膜障害の回復作用(免疫染色)〕
角膜上皮細胞株をラミニン511E8フラグメント(0.5μg/cm)でコーティングした細胞培養皿上でコンフルエントになるまで培養した。培養には試験例1と同様の分化培地を使用した。続いて試験例1と同様の基礎培地で一晩培養し、細胞を飢餓状態にさせた。その後、基礎培地に炎症誘発因子としてTNFを添加(10ng/mL)し、次いで、基礎培地に重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウム又は重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムを濃度が0.5%となるようにそれぞれ添加し、48時間培養後、細胞を4%パラホルムアルデヒド・りん酸緩衝液(Wako)にて固定した。続いて、5%NST[5% Normal Donkey Serum(Jackson Immuno Research)、0.3% Triton X-100(Sigma)を含むTBS(Takara)]でブロッキング(室温、1時間)後に、抗オクルディン(OCLN)抗体(1:200;ab216327、abcam)及び抗膜型ムチン(MUC16)抗体(1:1000;ab1107、abcam)を用いて1次抗体反応(4℃、overnight)を行った。TBSにて5分間、2回洗浄後、Alexa Fluor 488またはAlexa Fluor 568で標識した2次抗体(1:200;Thermo Fisher Scientific)及びHoechst33342(1:100;B2261-25MG、Merck)で処理(室温、1時間)後、蛍光顕微鏡で観察した。なお、TNF及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの何れも添加しなかった培養条件を陰性対照、TNFを添加しコンドロイチン硫酸ナトリウムを添加しなかった培養条件を陽性対照とした。オクルディンについて免疫染色したものを撮影した写真を図6に、膜型ムチンについて免疫染色したものを撮影した写真を図7にそれぞれ示す。ここで、図6及び図7において、(a)は陰性対照、(b)は陽性対照、(c)は重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムを添加したもの、(d)は重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムを添加したものであり、写真において白い部分の面積が多いほどオクルディン及び膜型ムチンの発現が促進され、角膜障害の抑制作用がより強いと評価される。
【0081】
図6及び図7より、重量平均分子量が約56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムは、重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムと比較して、オクルディン及び膜型ムチンのいずれについても発現が促進されることが確認できた。このことから、重量平均分子量が4万から7万のコンドロイチン硫酸及びその塩は、炎症で障害を受けた角膜の回復にも応用できる。また、膜型ムチンの発現が促進されたことから、重量平均分子量が4万から7万のコンドロイチン硫酸及びその塩は、角膜の涙液保持機能の向上、涙液の安定化にも応用できる。
【0082】
〔製剤例〕
下記表5~11に記載の処方で、常法により点眼剤が調製される。なお、下記表5~11における各成分量の単位は、表中に明記したもの以外はw/v%である。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7