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特開2023-67823シクロオレフィン重合体とα-オレフィン重合体とを含有する二軸配向薄膜、その製造法及び蓄電池への使用法
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  • 特開-シクロオレフィン重合体とα-オレフィン重合体とを含有する二軸配向薄膜、その製造法及び蓄電池への使用法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067823
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】シクロオレフィン重合体とα-オレフィン重合体とを含有する二軸配向薄膜、その製造法及び蓄電池への使用法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230509BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20230509BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20230509BHJP
   B29C 55/16 20060101ALI20230509BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20230509BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20230509BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20230509BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230509BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20230509BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230509BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B29C55/12
B29C55/14
B29C55/16
H01G4/32 511L
H01G4/32 511K
H01B17/56 A
H01B3/30 Q
B32B27/32 E
B29K23:00
B29L7:00
B29L9:00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022171901
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10 2021 128 332.9
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・ワグナー
(72)【発明者】
【氏名】ローランド・ルンド
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F210
5E082
5G305
5G333
【Fターム(参考)】
4F071AA14
4F071AA15
4F071AA20
4F071AA84
4F071AA86
4F071AA88
4F071AF27Y
4F071AF61Y
4F071AH12
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AB01B
4F100AB01C
4F100AK02A
4F100AK03A
4F100AK07A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD07A
4F100EH17
4F100EJ38A
4F100EJ42
4F100EJ94
4F100GB41
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4F100JA11A
4F100JG05
4F100JK14A
4F210AA12
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH33
4F210AR12
4F210AR13
4F210AR20
4F210QA02
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4F210QC07
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
4F210QW05
4F210QW12
4F210QW36
5E082EE07
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG34
5E082FG58
5E082PP04
5E082PP09
5G305AA01
5G305AB08
5G305BA18
5G305BA19
5G305CA01
5G305CA51
5G305DA13
5G333AA03
5G333AB05
5G333DA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な電気的特性と低高温収縮率とを有する、シクロオレフィン重合体を含む薄膜を提供する。
【解決手段】a)温度範囲120℃~180℃のガラス転移温度を有する少なくとも2種のシクロオレフィン重合体1重量%~25重量%と、b)温度範囲150℃~170℃の結晶融点を有する少なくとも1種の半結晶性α-オレフィン重合体75~99重量%とを含有する二軸配向薄膜において、二軸配向薄膜は、少なくとも第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体とを含み、第2のシクロオレフィン重合体は、第1のシクロオレフィン重合体より高いガラス転移温度を有し、薄膜に含まれる全シクロオレフィン重合体のガラス転移温度の加重算術平均は、薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体の結晶融点の加重算術平均以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2種のシクロオレフィン重合体と、
b)少なくとも1種の半結晶性α-オレフィン重合体と、
を含む二軸配向薄膜において、
薄膜の全シクロオレフィン重合体の合計含量範囲は、1重量%~25重量%であり、薄膜に含まれる全シクロオレフィン重合体は、範囲120℃~180℃のガラス転移温度を有し、薄膜は、少なくとも第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体とを含み、第2のシクロオレフィン重合体は、第1のシクロオレフィン重合体より高いガラス転移温度を有し、
薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体の合計含量範囲は、75重量%~99重量%であり、薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体は、温度範囲150℃~170℃の結晶融点を有し、かつ、
薄膜に含まれる全シクロオレフィン重合体のガラス転移温度の加重算術平均は、薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体の結晶融点の加重算術平均以下であり、薄膜の総質量に対する値で全量が表記されることを特徴とする二軸配向薄膜。
【請求項2】
薄膜は、半結晶性α-オレフィン重合体を1種のみ含みかつ薄膜に含まれる全シクロオレフィン重合体のガラス転移温度の加重算術平均は、半結晶性α-オレフィン重合体の結晶融点以下である請求項1に記載の二軸配向薄膜。
【請求項3】
薄膜は、ポリプロピレンである半結晶性α-オレフィン重合体を1種のみ含む請求項1又は2に記載の二軸配向薄膜。
【請求項4】
全シクロオレフィン重合体は、単量体としてノルボルネンとエチレンとを含む共重合体である請求項1~3の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項5】
薄膜に含まれる全シクロオレフィン重合体の合計含量範囲は、10重量%~25重量%であり、かつ薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体の合計含量範囲は、75重量%~90重量%である請求項1~4の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項6】
第2のシクロオレフィン重合体のガラス転移温度は、第1のシクロオレフィン重合体のガラス転移温度より少なくとも3℃高い請求項1~5の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項7】
薄膜は、ポリプロピレンである半結晶性α-オレフィン重合体を1種のみ含み、薄膜は、第1のシクロオレフィン重合体及び第2のシクロオレフィン重合体以外の別のシクロオレフィン重合体を含まずかつ第1のシクロオレフィン重合体も第2のシクロオレフィン重合体も、単量体としてノルボルネンとエチレンとを含む請求項1~6の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項8】
薄膜は、第1のシクロオレフィン重合体及び第2のシクロオレフィン重合体を夫々5重量%~15重量%含量範囲で含有する請求項1~7の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の薄膜からなる少なくとも1層を備える多層薄膜。
【請求項10】
薄膜は、国際標準化機構規格11501に従い、5分後に130℃で測定するとき、最大5%、好ましくは最大2%の縦方向熱収縮率及び最大0.5%、好ましくは最大0.05%の横方向熱収縮率を有する請求項1~9の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項11】
欧州規格、国際標準化機構規格4287により測定する薄膜の縦方向表面粗度と横方向表面粗度Raは、0.02μm~0.2μm、好ましくは0.06μm~0.09μmの範囲である請求項1~10の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項12】
薄膜の厚さは、2μm~10μmの範囲、好ましくは2~5μmの範囲である請求項1~11の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項13】
薄膜は、金属化された片面又は両面を有する請求項1~12の何れか1項に記載の二軸配向薄膜。
【請求項14】
蓄電池を製造する誘電体に使用する請求項1~13の何れか1項に記載の薄膜使用法。
【請求項15】
請求項1~13の何れか1項に記載の薄膜を備えることを特徴とする蓄電池。
【請求項16】
請求項1~13の何れか1項に記載の薄膜製造法において、
少なくとも2種のシクロオレフィン重合体と少なくとも1種の半結晶性α-オレフィン重合体とを含有する薄膜を特に押出成形により生成する工程と、
押出した薄膜を縦方向と横方向に延伸して、二軸延伸薄膜を形成する工程と、
形成された二軸延伸薄膜を巻回する工程とを含むことを特徴とする薄膜製造法。
【請求項17】
二軸延伸薄膜の面積延伸比は、少なくとも40である請求項16に記載の薄膜製造法。
【請求項18】
縦方向と横方向に同時に延伸を行い又はまず縦方向に延伸し、縦方向に延伸した薄膜を次に横方向に延伸する請求項16又は17に記載の薄膜製造法。
【請求項19】
二軸延伸薄膜に熱処理を施す工程と、
弛緩工程を通じて、所定の面積延伸比に二軸延伸薄膜を収縮する工程と、
の一方又は両工程を含む請求項16~18の何れか1項に記載の薄膜製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冒頭
本発明は、a)温度範囲120℃~180℃のガラス転移温度を有する少なくとも2種のシクロオレフィン重合体1~25重量%と、b)温度範囲150℃~170℃の結晶融点を有する少なくとも1種の半結晶性α-オレフィン重合体75~99重量%とを含有する二軸配向薄膜に関連し、二軸配向薄膜は、少なくとも第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体とを含有し、第2のシクロオレフィン重合体は、第1のシクロオレフィン重合体よりも高いガラス転移温度を有し、二軸配向薄膜の全シクロオレフィン重合体の複数のガラス転移温度の加重算術平均値は、二軸配向薄膜の全半結晶性α-オレフィン重合体の結晶融点の加重算術平均値以下の特徴がある。
【背景技術】
【0002】
絶縁体及び誘電体として電機工業に使用される薄膜形態の熱可塑性樹脂には、特に、重要な役割がある。α-ポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP)が最も使用に普及している。蓄電池(コンデンサ、キャパシタ)の誘電体として使用される二軸配向ポリプロピレン薄膜は、下記特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載される。ポリエチレン薄膜は、通常誘電体での使用に優れかつ適するが、高温収縮量の大きい特性のポリエチレン薄膜は、高温での使用に不適切である。二軸配向ポリプロピレン薄膜は、主に薄膜蓄電池に適用される。これは、特にポリプロピレンの送電損失係数と耐電圧特性とによる。しかし、温度安定性には制限がある(適用範囲85℃~105℃)。105℃を超える温度下では、電圧を軽減して、最大許容電圧を低減しなければならない。115℃を超える温度下での使用は、極度の制限を受け又は使用できない。
【0003】
通常のポリオレフィンに比べて、シクロオレフィン重合体(COC)は、明らかに良好な耐熱変形性を有する。蓄電池薄膜として使用されるシクロオレフィン重合体は、公知である。高ガラス転移温度と脆性のため、シクロオレフィン重合体の二軸延伸は、困難か又は不可能である。シクロオレフィン重合体の蓄電池への使用法は、特許文献4、特許文献5及び特許文献6に開示される。シクロオレフィン重合体薄膜は、前記目的で特別に製造する装置でのみ製造されるが、高延伸比が得られないため、蓄電池に好適に使用する薄膜の製造には不適切である。
【0004】
ポリプロピレンとシクロオレフィン重合体との複合樹脂を使用して、シクロオレフィン重合体の耐熱性を蓄電池に利用できる。ポリプロピレンとシクロオレフィン重合体との複合樹脂は、特許文献7、特許文献8及び特許文献9に開示される。特許文献10と特許文献11には、薄膜蓄電池に採用する特殊な薄膜が記載される。
【0005】
ガラス転移温度120℃~170℃を有するシクロオレフィン重合体10重量%~45重量%と、結晶融点範囲150℃~170℃を有する半結晶性α-オレフィン重合体(通常ポリプロピレン)とを含み、シクロオレフィン重合体は、α-オレフィン重合体の結晶融点以下のガラス転移温度を有する薄膜が特許文献10に記載される。製造される薄膜は、適度な表面粗度と低熱収縮率とを有する。特許文献10のシクロオレフィン重合体の特性は、シクロオレフィン重合体が高含有量範囲では、より強く表れ、即ちシクロオレフィン重合体を高含量で配合するとき、薄膜は、良好な熱特性(低収縮率を含む)を示すが、脆弱化して、加工性に劣り、特に、極薄薄膜の製造時に、可能な最大延伸率が低下し、高延伸率で薄膜を製造できない難点がある。高含有量のシクロオレフィン重合体で、高延伸率を選択すると、薄膜が脆弱化して、必要な長さの薄膜を製造できない欠陥がある。図3は、この問題を示す。他の条件が同一であれば、特に、縦方向延伸率を減少して、高含有量のシクロオレフィン重合体を従来の搬送工程で処理して、薄膜を製造する必要がある。図3の記入点は、シクロオレフィン重合体を図示の含量で使用するとき、薄膜を連続的に製造できる縦方向最高延伸率を示す。最新の搬送装置では、通常長さ30,000m以下の薄膜が製造される。薄膜に亀裂が発生し易いと、所定長さの薄膜を製造できないため、薄膜の経済的製造法と、経済的使用法が抑制される。
【0006】
高ガラス転移温度のシクロオレフィン重合体を薄膜原料に採用するときも、同様の問題が発生する。ガラス転移温度が高いシクロオレフィン重合体を使用すると、シクロオレフィン重合体/ポリプロピレン混合物の脆弱性が実質的に増大するため、工程媒介変数を適合させても、限定条件でのみ薄膜を安定して製造できるか又は製造不可能である。例えば、薄膜製造時に、延伸時に亀裂が増加して、薄膜の搬送安定性が全体的に損なわれるため、安定した製造は、不可能になる。更に、必要な30,000m以下の全長薄膜は、製造できない。
【0007】
特許文献10は、温度120℃~125℃を採用する蓄電池の薄膜を十分な延伸率で製造する製法を示すが、種々の用途、特に、自動車製造用の蓄電池には、高温強度と極薄薄膜が必要である。エンジンルーム又は電池設置場所に近い高温環境下で電子回路を使用する自動車を製造することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2015/091829A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第5,724,222A号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2481767A2号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0992531A1号明細書
【特許文献5】国際公開第00/63013A2号明細書
【特許文献6】カナダ特許第2115196C号明細書
【特許文献7】特開平05-262989号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第102010034643A1号明細書
【特許文献9】独国特許第19536043号明細書
【特許文献10】国際公開第2018/197034A1号明細書
【特許文献11】独国特許出願公開第102017118202A1号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第10242730A1号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第102011109385A1号明細書
【特許文献14】国際公開第2014/094803A1号明細書
【特許文献15】国際公開第2015/007367A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、良好な電気的特性と、低高温収縮率とを有する薄膜を提供することにある。高熱安定性を備える薄膜が望ましい。従来の二軸配向薄膜製造装置で所望の特性を有する薄膜を製造できることが好ましい。高速の薄膜製造装置で長尺状に薄膜を加工できることが重要である。高延伸率で薄膜を製造できればより有利である。極薄薄膜の製造も試行されている。例えば、本発明の最終目標は、経済的かつ有効に蓄電池用薄膜を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施対象は、
a)少なくとも2種のシクロオレフィン重合体と、
b)少なくとも1種の半結晶性α-オレフィン重合体とを含む二軸配向薄膜において、
薄膜の全シクロオレフィン重合体の合計含量範囲は、1重量%~25重量%を有し、薄膜の全シクロオレフィン重合体は、120℃~180℃のガラス転移温度範囲を有し、薄膜は、少なくとも第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体とを含み、第2のシクロオレフィン重合体は、第1のシクロオレフィン重合体より高いガラス転移温度を有し、薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体の合計含量範囲は、75重量%~99重量%であり、薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体は、温度範囲150℃~170℃の結晶融点を有し、薄膜に含まれる全シクロオレフィン重合体のガラス転移温度の加重算術平均は、薄膜に含まれる全半結晶性α-オレフィン重合体の結晶融点の加重算術平均以下であり、記載する全量は、薄膜総質量に対する値である。別途記載しない限り、本明細書に記載する全重量%含量は、夫々薄膜の全質量に対する値である。
【0011】
本明細書に記載する用語「配向する」、「延伸する」及び「伸張する」の概念は、同一の意味を有する。また、用語「延伸」、「伸張」及び「伸縮」等の対応する概念も、同様の点が該当する。
【0012】
本発明の薄膜は、従来の薄膜では得られない製造時の良好な加工性、高温耐性及び良好な電気特性を含む驚くべき組合せ特性を備える。高ガラス転移温度のシクロオレフィン重合体を添加すると、従来では加工性が低下したが、本発明では、異なるガラス転移温度を有するシクロオレフィン重合体の混合物を使用しても、加工性が低下しない事実は、驚愕すべきである。
【0013】
面積延伸比約50で本発明の薄膜を製造できる事実は、良好な加工性を立証することを意味する。表面延伸比は、縦方向延伸率と横方向延伸率との積である。高表面延伸比により、例えば、5μm未満の極薄薄膜を製造できる。小体積(設置空間)で大容量の蓄電池を実現するには、極薄薄膜が必要である。同時に、延伸後又は巻上げ時に、薄膜速度280m/分で、複数の薄膜を製造できる(薄膜製造時の通常薄膜速度は、250m/分である)ので、本発明の薄膜を経済的に製造できる。
【0014】
同時に、従来の薄膜より優れる温度特性135℃以下で蓄電池の誘電体として本発明の薄膜を利用できる。本発明の薄膜は、従来の薄膜に対し明らかに優れる温度電気特性を示す。特に自動車分野では、薄膜蓄電池は、温度面と電圧面で高い市場要求に対応する必要がある。要求される使用温度は、125℃以上、特に135℃以上である。本発明は、要求に合致する二軸延伸薄膜を提供する。従って、本発明は、α-ポリオレフィンとシクロオレフィン重合体とを含有する薄膜を開発し、広範囲な新規応用範囲を開拓する。得られる薄膜は、特に高温で横方向(TD)低収縮値を示す。従って、特許文献10の薄膜に比べて、高温で価格効率の良い極薄薄膜を製造する製造法を採用可能になった。また、本発明の薄膜は、良好な電気的特性と好適な表面粗度を有する。
【0015】
2種のシクロオレフィン重合体を組み合わせて、複数のシクロオレフィン重合体の総量を低減して、良好な耐温度性を維持しつつ、搬送装置の加工性能を向上する本発明の他の効果が認められる。他の効果は、特に逐次延伸の達成可能な延伸率には好影響を与える。また、少量のシクロオレフィン重合体を採用すると、製造価格を節減できる。電気的特性への悪影響はない。
【0016】
本発明の薄膜は、高含量のポリプロピレンのため、製造時に薄膜を良好に加工でき、特に良好に延伸工程を実施できる。ガラス転移温度の異なる2種のシクロオレフィン重合体を使用すると、加工性を劣化せずに、驚くべき好都合の高温特性が得られる。
【0017】
本発明の実施に採用する半結晶性α-オレフィン重合体は、C3~C8ポリオレフィン重合体が好ましい。側鎖は、直鎖状又は分岐状でもよい。これは、通常ポリプロピレンである。ポリプロピレンは、本発明の薄膜に良好な加工性と良好な電気的特性とを付与する。これは、通常特にプロピレンの同種(ホモ)重合体である。尤も、ポリプロピレンは、共単量体として1種以上のC4~C8ポリオレフィンを10重量%以下、好適には5重量%以下含んでよい。1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択されるC4~C8ポリオレフィンが好ましい。
【0018】
半結晶ポリオレフィンは、直鎖状又は分岐状でもよく、ランダム共重合体又はブロック共重合体でもよい。更に、アイソタクチック重合体、シンジオタクチック重合体又はアタクチック重合体でもよい。アイソタクチックポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンの結晶化度は、通常35%~80%の範囲であり、好適な範囲は、60%~80%である。結晶化度は、国際標準化機構規格11357の規定により、昇温速度10K/分で示差走査熱量測定(DSC)により測定される。特に好適な結晶化度範囲は、60%~80%のアイソタクチックプロピレンである。通常密度範囲0.895g/cm3~0.920g/cm3を有するポリプロピレンが採用される。国際標準化機構規格1183の規定により密度が測定される。
【0019】
結晶融点範囲は、160℃~165℃が好ましい。共重合体を使用して、結晶融点を変化する方法は、当業者に公知である。国際標準化機構規格11357により、昇温速度10K/分の示差走査熱量測定法(DSC)により結晶融点を測定した。採用する半結晶性α-オレフィン重合体は、温度230℃の荷重2.16Kg下で測定するとき、溶融樹脂流動性(Melt-Flow-Rate、Tg)範囲は、1~4g/10分が好ましい。別途記載しない限り、本明細書の全溶融樹脂流動性指数(メルトフローインデックス)を国際標準化機構規格1133により測定した。
【0020】
特に純粋な材料で薄膜を形成して、有利な電気特性を薄膜に付与することが好ましい。その目的で、高純度品質のα-ポリオレフィン重合体を選択することが好ましい。蓄電池誘電体に微量の金属が内在すると、蓄電池の電気特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、本発明の薄膜は、少ない金属含有量が特に好ましい。本発明の薄膜の鉄、コバルト、ニッケル、チタン、モリブデン、バナジウム、クロム、銅及びアルミニウムの総含有量は、0.25ppm未満が好ましい。
【0021】
特に好適な重合体型は、ボレアリス(Borealis)社市販の2種重合体「Borclean(登録商標)HC300BF」、「Borclean(登録商標) HC312BF」、シンガポール在のザ・ポリオレフィン社(The Polyolefin Company(TPC))のポリオレフィン及び「プライム重合体(Prime Polymer)」である。
【0022】
本発明で採用するシクロオレフィン重合体は、開環重合反応又は特に環保持重合反応により製造される同種重合体でも共重合体でもよい。前記重合体は、ノルボルネン等の環状オレフィンと、α-オレフィン又はエチレン等の非環状オレフィンとの環保持共重合反応により製造され、エチレンが好ましい。本発明に使用するシクロオレフィン重合体情報は、例えば、特許文献10とその引用文献に開示される。また、重合後に残留する二重結合に水素を添加するシクロオレフィン重合体を採用してもよい。
【0023】
化1の少なくとも1種のオレフィンと、化2の少なくとも1種のα-オレフィンとの環保持共重合反応により製造されるシクロオレフィン重合体が好ましい。
【0024】
【化1】
但し、
nは、0又は1、
mは、o又は正の整数、好ましくは0又は1、
、R、R、R、R及びRは、夫々互いに依存せず、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基からなる群から選択され、
17、R18、R19及びR20は、夫々互いに依存せず、水素及びアルキル基からなる群から選択され、
17及びR19は、飽和又は不飽和の環状又は環系を一体に形成できる。
【0025】
【化2】
但し、R21及びR22は、互いに依存せず、水素及びアルキル基からなる群から選択される。
【0026】
nは、0、mは、0又は1、R21は、水素及びR22は、水素とC1~C8アルキル基とからなる群から選択されるシクロオレフィン重合体が好ましい。R、R、R~R及びR15~R20も水素重合体が好ましい。ノルボルネンとエチレンとからなる共重合体と、テトラシクロドデセンとエチレンとからなる共重合体が特に好ましい。
【0027】
本発明の薄膜では、含有する全シクロオレフィン重合体は、単量体としてノルボルネンとエチレンとを含有する共重合体が最も好ましい。メタロセン触媒の存在下で行われる重合反応が好ましい。
【0028】
本発明の薄膜のシクロオレフィン重合体の製造に採用される単量体は、モル比95:5~5:95で、化1及び化2のものが好ましい。単量体は、プロピレン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン及びスチレンからなる群から選択される1種以上の共単量体を、単量体総量に対して10モル%まで含有できる。
【0029】
好適なシクロオレフィン重合体は、特許文献12で公知である。トパス・アドバンスト・ポリマーズ(Topas Advanced Polymers)有限会社(ドイツ、フランクフルト・アム・マイン在)のTopas(登録商標)6013、Topas(登録商標)6015、Topas(登録商標)6017及びTopas(登録商標)5013、三井化学株式会社製重合体名称「APEL COC」並びにJSR株式会社製重合体名称「ARTON COC」が特に好適である。Topas(登録商標)6013 M07/S04、Topas(登録商標)6015 S04及びTopas(登録商標)6017 S04が最も好ましい。シクロペンタジエン又はノルボルネンの開環重合反応で製造する重合体も適合する。
【0030】
シクロオレフィン重合体のガラス転移温度範囲は、120℃~170℃、特に好適には130℃~170℃、最適温度範囲は140℃~160℃である。ガラス転移温度は、国際標準化機構規格11357により、昇温速度10K/分で示差走査熱量測定法により測定される。
【0031】
シクロオレフィン重合体は、温度230℃、荷重2.16Kg下で測定した溶融樹脂流動性指数範囲は、0.3~4g/10分が好ましい。
【0032】
蓄電池に採用する本発明の薄膜には、小さい表面粗度が必須であるが、表面粗度が低過ぎると、搬送装置に配置される薄膜への加工性が悪化する。採用する重合体の溶融樹脂流動性指数を互いに調整して、高過ぎない適度の表面粗度を付与することが有利である。シクロオレフィン重合体の溶融樹脂流動性指数と半結晶性α-オレフィン重合体の溶融樹脂流動性指数との比率範囲は、1:2~2:1が好ましい。
【0033】
第2のシクロオレフィン重合体は、少なくともガラス転移温度が高い点で第1のシクロオレフィン重合体と異なる。第2のシクロオレフィン重合体のガラス転移温度は、第1のシクロオレフィン重合体のガラス転移温度より少なくとも3℃高く、特に少なくとも5℃高く。特に少なくとも10℃高いことがより好ましい。
【0034】
複数の半結晶性α-オレフィン重合体を使用して、薄膜特性を最適化できるが、この点は、本発明の効果を得るには必須ではない。尤も、複数の半結晶性α-オレフィン重合体を使用すると、薄膜の製造工程は、多少複雑になる。従って、本発明の薄膜は、半結晶性α-オレフィン重合体を1種のみ含有し、薄膜が含有する全シクロオレフィン重合体のガラス転移温度の加重平均が、半結晶性α-オレフィン重合体の結晶融点以下が好ましい。本発明の薄膜は、半結晶性α-オレフィン重合体のポリプロピレンを1種のみ含有することが特に好ましい。
【0035】
本発明の薄膜は、少なくとも2種のシクロオレフィン重合体を含有する必要があり、2種以上のシクロオレフィン重合体、例えば、3種又は4種のシクロオレフィン重合体を含有できる。前記シクロオレフィン重合体のうち、少なくとも2種は、互いに異なるガラス転移温度を持つ必要がある。また、互いに異なるガラス転移温度を有するシクロオレフィン重合体を2種以上、例えば3種又は4種含有してもよいが、通常、本発明の薄膜は、第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体以外には、半結晶性α-オレフィン重合体を1種のみ含有し、更に複数のシクロオレフィン重合体を含有しない。
【0036】
本発明の薄膜は、ポリプロピレンである半結晶性α-オレフィン重合体を1種のみ含み、薄膜は、第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体以外に、更に複数のシクロオレフィン重合体を含有せずかつ第1のシクロオレフィン重合体も第2のシクロオレフィン重合体も、単量体としてノルボルネンとエチレンとを含有することが好ましい。この種の薄膜は、蓄電池への採用に特に適する。
【0037】
本発明の薄膜の二軸配向は、シクロオレフィン重合体含量及びシクロオレフィン重合体のガラス転移温度により実質的に影響される。薄膜の全シクロオレフィン重合体の合計含量は、10重量%~25重量%の範囲でありかつ薄膜の全半結晶性α-オレフィン重合体の合計含量範囲は、75重量%~90重量%の場合に、本発明の薄膜は、蓄電池への使用に特に適する。薄膜の全シクロオレフィン重合体の合計含量は、10重量%~20重量%の範囲であり、薄膜の全半結晶性α-オレフィン重合体の合計含量は、80重量%~90重量%の範囲である薄膜が特に好ましい。薄膜の全シクロオレフィン重合体の合計含量は、15重量%~20重量%の範囲でありかつ薄膜の全半結晶性α-オレフィン重合体の合計含量は、80重量%~85重量%の範囲の薄膜が最適である。第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体は、夫々少なくとも含有量3重量%が更に好ましく、特に含有量少なくとも5重量%が好ましい。
【0038】
本発明の薄膜は、第1のシクロオレフィン重合体と第2のシクロオレフィン重合体を、夫々通常範囲3重量%~22重量%、好ましくは範囲3重量%~17重量%、特に好適には範囲5重量%~15重量%の含量で含有する。前記量のシクロオレフィン重合体を採用するとき、複数使用のシクロオレフィン重合体により生じる複数の効果が特に顕著になる。
【0039】
前記重合体の他に、通常の助剤と添加剤を薄膜に配合できる。助剤と添加剤は、通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下の量で添加される。助剤と添加剤は、充填剤、顔料、染料、油脂、蝋剤、可塑剤、紫外線安定剤、艶消剤、保存料、殺生物剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤及び補強剤からなる群から選択できる。尤も、前記重合体以外の別の成分を含有しない薄膜が好ましい。(前記重合体を除く)固体薬剤、特に薄膜間接着防止剤(アンチブロッキング剤)及び充填剤の無添加薄膜が特に好ましい。固体成分は、電気特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0040】
本発明の薄膜の好ましい縦方向熱収縮率は、最大5%、特に好適には最大3%、最適には最大2%である。また、本発明の薄膜は、好ましい横方向(TD)熱収縮率は、最大0.5%、特に好適には最大0.1%、最適には最大0.05%である。蓄電池の破損原因となる横方向熱収縮率は、蓄電池への応用に極めて重要である。特に、薄膜は、両方向熱収縮率値を同時に持つべきである。従って、本発明の薄膜は、特に好ましい縦方向熱収縮率が最大で5%、横方向熱収縮率が最大で0.5%である。本発明の薄膜の縦方向熱収縮率は、最大で2%でありかつ横方向熱収縮率が最大で0.05%が最適である。何れの場合も、夫々ドイツ工業規格-国際標準化機構規格11501により、温度130℃、5分間での熱収縮率を測定するが、温度140℃での横方向熱収縮値を有する本発明の薄膜が最適である。
【0041】
電気特性に重要な薄膜の粗度は、小さい方が好ましいが、薄膜間接着防止剤を通常含有しない本発明の薄膜では、少なくともある程度の表面粗度を付与して、薄膜の加工性を確保しなければならない。過度に平滑な薄膜は、搬送ローラ上で滑るため、産業用工場では、実地に加工できない。表面粗度Raは、0.02~0.2μm、好適には0.04~0.12μm範囲の薄膜が好ましい。本発明の薄膜の理想的な表面粗度Raは、0.06~0.09範囲である。表面粗度Raは、ドイツ欧州工業規格国際標準化機構規格4287に規定される。図1に示す本発明の薄膜は、両面上に均質な線維状の表面構造を有する。薄膜の表面粗度Raを測定するとき、薄膜表面の特定の長さに沿って測定器検出部を案内して、表面の凹凸が測定される。本発明の薄膜の表面隆起は、異方性が有るため、薄膜の縦(搬送)方向測定値と、直角な横方向測定値では、異なる表面粗度が得られることがある。両方向測定値が前記範囲内が好ましい。
【0042】
冷却ロールの温度と、延伸予熱温度とを適切に選択して、薄膜の表面粗度を設定することは、当業者に公知である。同時延伸を行うとき、冷却ロールの温度と同時延伸用加熱炉(例えば、同時二軸延伸装置)の予熱温度とが互いに調整される。逐次延伸を行うとき、冷却ロール温度と、縦延伸装置(MDO)の予熱温度と、延伸ローラ温度とが互いに調整される。
【0043】
本発明の薄膜は、範囲2μm~10μmの好ましい厚さを有する。本発明の薄膜の特に好ましい厚さは、範囲2μm~5μmである。薄膜厚は、ドイツ工業規格(DIN)規定53370により測定される。この厚さ範囲の薄膜は、誘電体への応用に最適である。
【0044】
本発明の薄膜の幅は、通常範囲0.1m~10mで、大概範囲5m~7mである。
【0045】
本発明の二軸配向薄膜は、好ましくは、
a)少なくとも第1のシクロオレフィン重合体と、第2のシクロオレフィン重合体とを含有し、第1及び第2のシクロオレフィン重合体は、夫々全シクロオレフィン重合体に対し、単量体としてノルボルネン5~95重量%と、エチレン5~95重量%とを含有し、かつ
b)少なくとも1種の半結晶性ポリプロピレンを含有し、
薄膜の全シクロオレフィン重合体の合計含量は、10重量%~25重量%範囲であり、薄膜に含まれる全シクロオレフィン重合体は、120℃~180℃範囲のガラス転移温度を有し、第2のシクロオレフィン重合体は、第1のシクロオレフィン重合体より少なくとも3℃高いガラス転移温度を有し、第1のシクロオレフィン重合体及び第2のシクロオレフィン重合体は、夫々5重量%~15重量%範囲の含量で薄膜に含有され、薄膜の全半結晶性ポリプロピレンの合計含量は、75重量%~90重量%範囲であり、薄膜の全半結晶性α-オレフィン重合体は、150℃~170℃範囲の結晶融点を有し、薄膜に含まれる全半結晶性ポリプロピレンのガラス転移温度の加重算術平均は、薄膜に含まれる全半結晶性ポリプロピレンの結晶融点の加重算術平均以下であり、薄膜は、2μm~10μm範囲の厚さを有し、特に明記しない限り、全量の記載は、薄膜の総質量に対する値である。
【0046】
本発明の薄膜は、1層以上の層を有するため、単層膜薄膜又は多層膜薄膜を構成する。多層膜薄膜の少なくとも1層は、本発明の薄膜の前記組成を有する。また、多層膜薄膜の複数層を本発明の薄膜で構成できる。
【0047】
従って、本発明の他の実施の形態は、本明細書に記載する本発明の薄膜からなる少なくとも1つの層を備える多層薄膜である。多層薄膜は、ポリプロピレン製の1種以上の半結晶性α-オレフィン重合体を含有する片面又は両面に外層を有する単一の層として本発明の薄膜を有する好適な実施の形態も提案する。多層薄膜は、単層薄膜と同一の特性、特に収縮率及び表面粗度について同一の特性を備えることが好ましい。少なくとも1つのポリプロピレン外層と、少なくとも1つの層とを備え、本発明の薄膜の組成を有する共押出しされた多層薄膜の利点は、表面特性を設定できる点、しかも、ポリプロピレン・蓄電池・薄膜に一般的な公知の技術を用いて、例えば、所期の結晶化制御と球晶形成により、表面特性を設定できる点、更に本発明の薄膜の少なくとも1つの層の存在により、高温時の多層薄膜の機械特性と電気特性を改善できる点にある。
【0048】
半結晶性α-オレフィン重合体を含有する単一の中間層と、2つの外層(夫々本発明の薄膜で形成される)とを有する多層膜薄膜が特に好ましい。この場合、本明細書に記載する半結晶ポリプロピレンのみを含有する中間層が特に好ましい。これは、ポリプロピレン100%の中間層により誘電特性が実質的に影響して、薄膜は、非常に良好な誘電特性の中間層と、改善された温度安定性の両外層とを有するためである。中間層と両外層以外には、別の層を設けない薄膜が最も好ましいが、下記の通り、薄膜に追加して鍍金部又は金属化部を設けることができる。
【0049】
本発明の薄膜の別の実施の形態は、少なくとも一方の外層をある材料で被覆する薄膜の被覆薄膜である。本明細書では、用語「被覆」は、薄膜の押出し時には生成されない被覆と理解すべきである。用語「被覆」は、薄膜製造後に個別の方法で、完成した薄膜に塗布される被覆である。好適な実施の形態では、本発明の薄膜は、少なくとも片面上に導電層が被覆されるので、本発明の発展的実施の形態では、薄膜の片面又は両面に鍍金層又は金属化層が形成される。
【0050】
薄膜蓄電池に使用するには、鍍金又は金属化が必要であるから、鍍金層又は金属層で被覆する片面を有する薄膜が最も好ましい。この目的で、延伸後に薄膜表面をコロナ処理で活性化した後、金属層を塗布することができる。金属化された両外面を有する薄膜も、本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
本発明の他の実施対象は、本明細書に記載する薄膜を備える蓄電池である。本発明の蓄電池は、ドイツ欧州工業規格(DIN EN)60243-2基準の測定法により、温度23℃下直流電圧で測定する破壊電圧は、薄膜厚3.8μmで500V/μm以上、薄膜厚2.7μmで400V/μm以上である。また、温度25℃、周波数範囲1kHz~1GHzで測定するとき、1~2x10-4以下の誘電損失係数を有する本発明の薄膜と蓄電池が好ましい。損失係数は、ドイツ欧州工業規格60674-2(VDE)基準により決定される。誘電率範囲2~2.5を有する薄膜を備える蓄電池が、好ましい。誘電率もドイツ欧州工業規格60674-2(VDE)基準により決定される。
【0052】
本発明の他の実施対象は、下記工程を含む本発明の薄膜製造法である。
少なくとも2種のシクロオレフィン重合体と、少なくとも1種の半結晶性α-オレフィン重合体とを含む薄膜を特に押出成形で生成する工程と、
生成した薄膜を縦方向と横方向とに延伸して二軸延伸薄膜を形成する工程と、
形成される二軸延伸薄膜を巻回する工程。
【0053】
薄膜の前記特徴と利点を方法にも同様に適用でき、その逆にも適用できる。
【0054】
二軸延伸薄膜、特に巻回する薄膜の面積延伸比は、少なくとも40が好ましい。
【0055】
縦方向と横方向とに同時に薄膜を延伸し又は先に縦方向に延伸し、次に横方向に延伸してもよい。
【0056】
延伸後かつ巻回前に、1つ以上の下記工程を実施して、薄膜特性を改善できる:
・二軸延伸薄膜の熱処理工程、
・合目的的に二面積延伸比を低下する軸延伸薄膜の弛緩工程。
【0057】
例えば、弛緩後でも面積延伸比は、少なくとも40である。
【0058】
本発明の方法をより詳細に以下説明する。
【0059】
(1)組成と用量
【0060】
本発明の薄膜を製造する原料は、半結晶α-オレフィン重合体とシクロオレフィン重合体とを含有する化合物を一可能性として準備する。組成に適合する半結晶α-オレフィン重合体とシクロオレフィン重合体とを押出機に供給する直前に一体に混合・混錬して、回分投与に適用する。顆粒樹脂又は粉状樹脂を原料に採用する。
【0061】
複数層を形成する薄膜の各層に対し独自の原料を準備する。所望厚さの各層に応じて、各層原料を個別に準備する。
【0062】
本発明の薄膜製造法の実施に使用するα-オレフィン重合体とシクロオレフィン重合体には、本発明の薄膜の前記構成が該当する。
【0063】
(2)押出工程
【0064】
単数又は複数の原料を押出機に供給し、押出機内で原料を混合・混錬して溶解する。1層のみの薄膜を製造するとき、1台のみの押出機が必要である。
【0065】
複数層を有する薄膜の製造時には、各層独自の押出機を通常使用するが、同一組成の複数層を製造するとき、同一の樹脂顆粒から複数層を製造してもよい。その後、複数層の2層以上の材料を、同一の押出機から押出す。同一組成を有する全複数層を単一の押出機から押出せる。任意様式の各押出機を採用できる。
【0066】
単軸押出機、カスケード押出機及び二軸押出機からなる群から単一又は複数の押出機を選択することが好ましい。
【0067】
例えば、ブッス混錬機又は遊星歯車ロール押出機等他の混合機及び精製機を使用できる。好適な温度範囲230℃~280℃、特に好適には温度範囲240℃~270℃で動作する押出機が好ましい。
【0068】
(3) ノズルと冷却ロール
【0069】
幅広開口金型から排出される溶融物は、冷却ロール上に配置される。多層膜用ノズルを使用して、複数層を有する薄膜を製造することが好ましい。
【0070】
薄膜に押圧力を付与する冷却ロールに薄膜を接触させて、載置性を改善する押圧装置(ピンニング装置)を用いて、冷却ロール上に薄膜を適切に配置することが、好ましい。好適な押圧装置は、冷却ロール方向に押圧力を薄膜に加える方向性を持つ空気流を生ずるエアナイフである。
【0071】
ピンニング装置は、冷却ロールに対し薄膜を均一に接触させて、円滑で平坦な流延薄膜の形成に役立つ。
【0072】
冷却ロールの好適な温度範囲は、80℃~100℃、より好適には85℃~95℃、最適範囲は、90℃~95℃である。極薄薄膜の製造時には、前記温度範囲のより高い温度を選択して、所望の粗度が設定される。実施の形態で製造する薄膜厚3.8μmでは、適切な温度範囲は、90℃~95℃、最適温度は、93℃である。
【0073】
(4) 延伸工程
【0074】
加熱された流延薄膜は、次に、縦(機械)方向(MD)と、横方向(TD)とに延伸される。
【0075】
本発明の薄膜製造法では、縦方向延伸比範囲は、例えば、3.0~7.0、好ましくは、5.0~7.0である。
【0076】
本発明の薄膜製造法の横方向延伸比範囲は、7.0~13.0、好ましくは8.0~11.0である。
【0077】
縦方向と横方向の2軸配向又は延伸を時間別に連続して行う逐次延伸又は縦方向と横方向とに同時に薄膜を延伸する同時延伸とが実施される。
【0078】
(4.1) 逐次延伸工程
【0079】
薄膜の逐次延伸を下記態様で行うことが好ましい。
【0080】
a)縦方向延伸工程
【0081】
例えば、加熱された流延薄膜は、まず、縦方向に延伸される。この目的で、流延薄膜は、縦延伸装置(MDOとも言う)に供給され、十分に加熱された後に、機械方向に延伸される。薄膜は、例えば、縦延伸装置の回転速度の異なるロール対間で延伸される。
【0082】
この種の縦延伸装置は、例えば、特許文献13に開示される。
【0083】
b)横方向延伸工程
【0084】
縦方向延伸の終了後に、横方向延伸工程を行うことが好ましい。横方向延伸工程への移行時に、縦方向に延伸された薄膜は、横延伸装置10(TDO)に供給される。
【0085】
図1に略示する横延伸装置10は、通常、加熱炉14と、薄膜を搬送する軌道となる2本の搬送レール16とを有する。
【0086】
2本の搬送レール16は、延伸装置10の対称軸Sに対して鏡面対称にかつ少なくとも部分的に加熱炉14内に配置される。延伸装置10に薄膜材料12を供給する導入領域18と延伸装置10から薄膜材料12が搬出される退出領域20では、搬送レール16は、夫々加熱炉14の外側に延長される。
【0087】
導入領域18と退出領域20を除き、横延伸装置10は、少なくとも3個の異なる領域22,24,26を有する。
【0088】
互いに境界を接する領域22,24,26は、横延伸装置10の縦方向又は通常の引出方向Rに沿い、導入領域18に続き、第1の領域22、第2の領域24及び第3の領域26が順番に配置され、最後に退出領域20が設けられる。
【0089】
導入領域18と境界を接する横延伸装置10の第1の領域22(予熱領域)の一対の搬送レール16は、互いに第1の距離だけ離間する。
【0090】
第2の領域24(延伸領域)では、両搬送レール16間の距離が増加し、最終的に第3の領域26(熱処理領域)の開始位置では、第2の距離に到達する。
【0091】
一対の搬送レール16の各々には、多数の把持装置28は、それ自体公知の方法で搬送レール16に沿って案内される。適切な駆動手段により搬送レール16に沿って把持装置28は、移動される。
【0092】
横延伸装置10は、例えば、特許文献14に開示される。
【0093】
延伸装置10の導入領域18と第1の領域22で既に縦方向に延伸された薄膜を引出方向Rに搬送して、横延伸装置10の第2の領域24に供給して、横方向に薄膜を延伸させる。例えば、引出方向の両側に設けられる搬送レール16の複数の把持装置28により、薄膜の縦方向側縁を把持して、把持装置28を介して薄膜を幅方向に引張して、薄膜の横方向延伸が行われる。把持装置28により薄膜の縦方向側縁を把持する過程を、「クリップ留め」とも言う。複数の把持装置28は、薄膜の縦方向側縁を把持して、横延伸装置10の加熱炉14内に導入しかつ加熱炉14を通り薄膜を移動する。
【0094】
導入領域18での薄膜12の幅Eは、引出方向Rに対し直角な両搬送レール16間の第1の距離にほぼ相当する。
【0095】
その後、薄膜12は、加熱されつつ第1の領域22に通り案内される。
【0096】
両搬送レール16間の距離が連続的に増加する次の第2の領域24、延伸領域では、薄膜12は、薄くかつ広く横方向に延伸されて、第2の領域24の終端では、薄膜12は、第2の幅を有する。
【0097】
横延伸後に、薄膜12は、第3の領域26内で加熱により弛緩され、その後、薄膜12は、退出領域20で把持装置28から分離され、第2の幅で横延伸装置10を離れる。
【0098】
(4.2) 同時延伸工程
【0099】
例えば、パンタグラフ法、スピンドル法、LISIM(登録商標)リニアモータ二軸薄膜延伸法又はMESIM(登録商標)同時二軸薄膜延伸法により、同時延伸を行うことが好ましい。この場合、薄膜速度は、250m/分以下である。
【0100】
種々の複数の領域と加熱炉内の搬送レールの基本的配置について、同時延伸装置の構造は、横延伸装置の前記構造に相当する。横延伸装置と同時延伸装置との相違点は、複数の領域の長さ及び/又は領域の温度である。例えば、リニアモータにより、両搬送レールに沿って同時延伸装置の把持装置を個別に加速して、搬送装置により薄膜を縦方向に延伸する点で異なる。この種の同時延伸装置は、例えば、特許文献15段落[0045]~[0055]に記載される。
【0101】
同時延伸時には、未延伸の流延薄膜は、同時延伸装置の導入領域に供給されて、前記の通り、複数の把持装置により把持(クリップ留め)される。
【0102】
その後、薄膜は、第1の領域22に供給されて加熱される。
【0103】
次に、薄膜は、延伸領域の第2の領域24に供給されて、縦方向と横方向とに同時に延伸される。
【0104】
横延伸装置での説明と同様に、延伸領域では、両搬送レール間の距離を拡張することにより、薄膜は、横方向に延伸されて、薄膜の幅が拡大される。
【0105】
横延伸装置とは異なり、延伸領域24では、複数の把持装置28は、導入領域の駆動速度より速い速度(延伸速度とも言う)に加速されるので、薄膜は、縦方向にも延伸される。
【0106】
換言すると、延伸領域での対向する両把持装置間の距離は、縦方向にも横方向にも増大するので、薄膜は、縦方向と横方向とに同時に延伸される。対向する両把持装置間の縦方向距離と横方向距離は、所望の延伸比に比例して増加する。
【0107】
続いて、横延伸装置で説明したように、二軸延伸された薄膜は、加熱されて熱処理と又は弛緩が行われながら、第3の領域26を通過する。この場合に、対向する両把持装置間の横方向距離を減少できる。また、対向する両把持装置の速度も、延伸領域に比べて低下できる。
【0108】
退出領域では、薄膜は、適切な手段により把持装置(クリップ)から外されて、同時延伸装置から解放される。
【0109】
(5) 熱処理工程
【0110】
延伸後に、熱処理(安定化処理又はアニール処理)を薄膜に施すことが好ましい。熱処理では、薄膜は、特定時間の間、高温に保持される。横延伸装置又は同時延伸装置での延伸直後の第3の領域26で熱処理を行うことが好ましい。
【0111】
第3の領域26の熱処理間に、延伸で発生した薄膜の内部応力が緩和され又は除去されるので、薄膜全面に渡り複数の物理的特性が調和され一致される。
【0112】
(6) 弛緩
【0113】
熱処理中に薄膜を弛緩させて、薄膜の内部応力を除去又は緩和し、所望の延伸率低減を達成することが好ましい。
【0114】
例えば、逐次延伸では、第3の領域26で対向する両搬送レール間の距離を狭めて、横方向にのみ薄膜を弛緩させる。
【0115】
同時延伸工程では、薄膜は、縦方向にも横方向にも弛緩される。例えば、対向する両把持装置の横方向距離を減少しかつ延伸領域での搬送速度より、把持装置の速度を所望の弛緩程度に低下させる。
【0116】
本発明の薄膜製造法での弛緩程度は、2%~15%範囲、好ましくは7%~12%範囲が更に有利である。同時延伸では、弛緩程度を両方向に適用することが好ましい。弛緩により、薄膜の収縮が低減される。
【0117】
(7) 巻回工程
【0118】
二軸延伸(延伸)した薄膜は、巻取機に巻き上げられる。
【0119】
複数の把持装置で把持される薄膜の側縁を、予め縦方向に切除して、薄膜が巻取機に巻回される。
【0120】
所望又は必須の場合に、最終的な巻回前に薄膜の表面処理が行われる。
【0121】
最後に、巻取機に薄膜が巻上げられる。
【0122】
(8) 追加処理
【0123】
本発明により製造される二軸配向薄膜を、追加作業工程で更に処理できる。
【0124】
例えば、追加処理前に、薄膜を切断・巻回してもよい。
【0125】
他の可能な処理工程では、特に、金属化、薄層化、被覆(透過防止被覆、保護被覆)、印刷、表面処理、レーザー加工、ラッカー塗り等がある。薄膜を金属化することが好ましい。
【0126】
本発明の更なる実施対象は、薄膜の使用法であり、特に、本明細書に記載する蓄電池の製造用誘電体として、薄膜、特に金属化薄膜の使用法である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
図1】横延伸装置の略示平面図
図2】製造時に冷却ロール面に接触する本発明の薄膜の表面を示す左側顕微鏡写真と、薄膜の裏面を示す右側顕微鏡写真
図3】異なる含有量のシクロオレフィン重合体のみを含む薄膜厚3.8μm薄膜を、逐次延伸と同時延伸した可能な縦方向最大延伸率(MDx)グラフ
【0128】
略語一覧
BO 二軸配向; BOPP 二軸配向ポリプロピレン; COC シクロオレフィン重合体、特にシクロオレフィン共重合体; MD 縦方向、走行方向、機械方向; PP ポリプロピレン; TD 横方向 機械方向の横断方向; Tg ガラス転移温度
【発明を実施するための形態】
【実施例0129】
測定法:
薄膜厚さ: ドイツ工業規格53370
層厚さ: ドイツ欧州工業規格-国際標準化機構規格3146
結晶融点、ガラス転移温度及び結晶化度: 国際標準化機構規格11357-1、-2、-3(DSC、加熱速度10K/分)
溶融樹脂流動性指数: 国際標準化機構規格1133
熱収縮率: ドイツ工業規格-国際標準化機構規格11501
表面粗度: ドイツ欧州工業規格-国際標準化機構規格4287
破壊電圧: ドイツ欧州工業規格60243-2
損失係数及び誘電率: ドイツ欧州工業規格60674-2(VDE)
【0130】
材料
ポリプロピレン: Borclean(登録商標)HC300BF(結晶融点164℃
溶融樹脂流動性指数(230℃/2.16Kg): 3.3g/10分)
蓄電池用誘電体薄膜用金属化可能ポリプロピレン
超高純度、灰含有量20ppm未満、
金属含有量: チタン3ppm未満、アルミニウム3ppm未満、塩化物3ppm未満
シクロポリオレフィン重合体1(COC1): トパス(Topas)COC 6013 M07
ノルボルネンとエチレンとの共重合体
ガラス転移温度 142℃
溶融樹脂流動性指数(260℃、2.16Kg) 13.26g/10分
シクロポリオレフィン重合体2(COC2): トパス(Topas)COC 6015 S04
ノルボルネンとエチレンとの共重合体
ガラス転移温度 158°C
溶融樹脂流動性指数(260℃、2.16Kg) 4.08g/10分
【0131】
本発明の薄膜製造法。
顆粒形態のポリプロピレン、シクロオレフィン重合体1とシクロオレフィン重合体2を、温度250℃~260℃に保持する二軸押出機内で溶融し(1回分量投入)、開口金型を用いて、冷却ロール上に配置した。通常の高圧エアナイフにより、冷却ロール上に薄膜を押圧した。冷却ロールの表面温度を90℃~95℃範囲に維持した。冷浴は使用しなかった。
【0132】
複数の薄膜を同時延伸装置に供給した(実施例1、3、4及び5のみ)。複数の加熱領域に分割される同時延伸装置の各加熱領域で、表1に示す温度に薄膜を加熱した。上方と下方から均等に各薄膜を加熱した。第1の領域22、第2の領域24及び第3の領域26は、下表の異なる複数の加熱領域に分割される。
【0133】
延伸時温度範囲(同時二軸延伸法)
【表1】
【0134】
実施例1、4及び5の薄膜は、縦方向係数6.1と横方向係数9.9で同時延伸を行った。縦方向と横方向の弛緩(緩和)量は、10%で行った。有効縦方向延伸率は、5.5、有効横方向延伸率は、9であり、面積延伸比は、50である。実施例3で使用した縦方向延伸率は、5であった。
【0135】
実施例2では、逐次延伸を適用した。まず縦延伸装置(MDO)に薄膜を供給した。異なる速度の複数の加熱ローラにより、縦延伸装置に薄膜を導入して、薄膜を縦方向に延伸した。複数のローラは、表2に示す温度を有する。
【0136】
縦延伸装置
【表2】
【0137】
次に、縦方向に延伸した薄膜を、横延伸装置(TDO)に供給して、横方向に延伸した。予熱領域(第1の領域22)で薄膜を再予熱し、延伸領域(第2の領域24)で延伸し、第3の領域26で熱(アニール)処理して、横方向に10%弛緩(収縮)させた。表3に示す各領域温度で薄膜を加熱した。複数の薄膜の上部と下部とを均等に加熱した。
【0138】
横延伸装置
【表3】
【0139】
安定しかつ確実に薄膜を製造して、薄膜の亀裂を回避しなければならない。この目的で、実施例2及び3では、縦方向の延伸倍率を低減して、表面延伸比の減少が必須であった。実施例2に使用する縦方向延伸率は、3.7であった。
【0140】
本発明の薄膜を2枚作成し、比較試験を3回行った薄膜データを下表4に示す。
【0141】
組成と特性
【表4】
*比較実験
**シクロポリオレフィン重合体1と2のガラス転移温度Tgの加重算術平均値
***sim=同時、seq=逐次
【0142】
実施例1及び実施例3では、特許文献10により、シクロオレフィン重合体を1種のみ採用し、重合体混合物の重合体量を増加して、耐温度性を向上した。その結果、同時延伸時に、シクロオレフィン重合体含量を5重量%増やすと、面積延伸比を下げて、安定して製造(十分な走行安定性を確保する)する必要のあることが判明した。この方法でのみ、薄膜の亀裂を回避しつつ、帯状の薄膜材料を生成できる。特に、機械方向の伸びを低下する必要がある。特許文献10に示されるように、延伸率を低下する代わりに、薄膜の厚さを増加して、製造中の薄膜の亀裂発生を防止できる。しかし、蓄電池用薄膜では、薄膜厚が大きいと、同一容量の蓄電池は、体積が増大する欠点が生ずる。例えば、自動車工学等の多くの応用例で、設置空間が極端に制限されるため、体積が増大する欠点を生ずる。本発明の実施例4及び5では、同一薄膜厚であれば、面積延伸比の減少は必須ではない。また、実施例5では、破壊電圧が約10%向上する。
【0143】
表4に示す本発明の実施例での温度140℃横方向収縮率値も、本発明の範囲外の実施例に対し若干の向上が認められる。
【0144】
蓄電池薄膜用に通常の金属化(直流回路応用の面鍍金)を薄膜に施し、金属化した各薄膜から蓄電池を製造して、薄膜の電気特性に対する本発明の効果を調査した。温度125℃~135℃の温蔵庫で3000時間、種々の試験電圧に蓄電池を暴露した。その結果、表5に示す種々の電界強度が得られた。電界強度は、電圧[V]と薄膜厚[μm](本実施の形態では3.8μm)の商である。電気短絡が認められた蓄電池を故障に数えた。規定時間(1000時間、2000時間、3000時間)で、容量ずれ(dC/C)と蓄電池損失係数の変化とを調べた。また、得られるデータが初期値から大幅に乖離する場合の蓄電池も故障に数えた。表5に試験結果を示す。実施例1~3は、比較試験である。
【0145】
電気特性
【表5】
*電界強度
OK=3000時間後でも、全蓄電池は未だ限界値内であった。
故障=短絡故障又は高容量ずれ若しくは高損失係数による故障。
-=無測定。
【0146】
表5から明らかなように、本発明の薄膜の高温電気特性は、明らかに優れている。温度125℃、電界強度200V/μm及び250V/μmでの試験では、実施例4と5での本発明の薄膜は、無故障状態で完全に合格する。比較実験1~3の薄膜は、250V/μmで全て故障し、200V/μmでは、比較実験1の薄膜のみ試験に合格した。比較実験3の薄膜は、200V/μmでは状態が測定されず、125℃及び250V/μmでは短絡により使用不能となった。
【0147】
135℃の比較試験の薄膜は、実施した全試験に不合格である。実施例5の薄膜は、全電界強度試験に合格し、実施例4の薄膜は、電界強度140V/μmにも合格した。これらの薄膜は、200V/μmで初めて過度容量ずれによる故障が生じたに過ぎない。従って、本発明の薄膜は、高温に対する電気特性が明らかに優れており、従来の蓄電池とは異なり、自動車産業での高温応用分野に本発明の薄膜を採用できる。
図1
図2
図3
【外国語明細書】