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特開2023-67835紡糸液、カンナビオールを含むアルギナート繊維、その製造方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067835
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】紡糸液、カンナビオールを含むアルギナート繊維、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/04 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
D01F9/04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172593
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】110140458
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521311643
【氏名又は名称】沛爾生技醫藥股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 成龍
(72)【発明者】
【氏名】簡 文斌
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035AA06
4L035BB03
4L035BB16
4L035BB66
4L035EE11
4L035EE20
4L035KK05
(57)【要約】
【課題】カンナビジオール粉末およびアルギナート溶液を含む紡糸液を提供すること、及びカンナビジオールを含むアルギナート繊維、その製造方法及びその使用をさらに提供すること。
【解決手段】紡糸液中のカンナビジオール粉末は、アルギナート溶液中に均一に分散させることができるので、本発明の紡糸液を湿式紡糸に適用して、カンナビジオールを含むアルギナート繊維を形成することができる。カンナビジオールを含むアルギナート繊維は、抗酸化、抗細菌、抗炎症、および抗アレルギー能力を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオール粉末およびアルギナート溶液を含む紡糸液。
【請求項2】
前記アルギナート溶液の濃度は、1重量%~10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の紡糸液。
【請求項3】
前記アルギナート溶液と前記カンナビジオール粉末との重量比が、75~99.99:0.01~25である、請求項1に記載の紡糸液。
【請求項4】
前記カンナビジオール粉末の平均粒径が、300nm以上600nm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の紡糸液。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の紡糸液を湿式紡糸して、カンナビジオールを含むアルギナート繊維を形成する工程(A)を含む、カンナビジオールを含むアルギナート繊維の製造方法。
【請求項6】
工程(A)が、紡糸口金を通して紡糸液を凝固溶液に導入して、カンナビジオールを含むアルギナート繊維を形成する工程(A')であり、凝固溶液が塩化カルシウムおよび水を含み、塩化カルシウムおよび水の重量比が1~10:90~99である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(A)が、紡糸口金を通して紡糸液を凝固溶液に導入して、カンナビジオールを含むアルギナート繊維を形成する工程(A')であり、凝固溶液が、塩化カルシウム、水、およびアルコールを含み、塩化カルシウム、水、およびアルコールの重量比が1~10:40~50:40~50である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(A)が、前記紡糸液を濾過用篩に通して濾過紡糸液を得る工程(A1)と、前記濾過紡糸液を紡糸口金に通して凝固溶液に導入して、カンナビジオールを含むアルギナート繊維を形成するステップ(A2)とを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、さらに
水洗し、アルコール洗浄し、及びカンナビジオールを含むアルギナート繊維を25℃~120℃の温度で乾燥して、カンナビジオールを含む乾燥アルギナート繊維を得る工程(B)を含む方法。
【請求項10】
カンナビジオールを含むアルギナート繊維であって、カンナビジオールおよびアルギナートを含み、カンナビジオールがカンナビジオールを含むアルギナート繊維中に分散している、アルギナート繊維。
【請求項11】
カンナビジオールを含むアルギナート繊維中のアルギナートとカンナビジオールとの重量比が75~99.99: 0.01~25である、請求項10に記載のカンナビジオールを含むアルギナート繊維。
【請求項12】
抗酸化用途のための、請求項10または11に記載のカンナビジオールを含むアルギナート繊維。
【請求項13】
請求項10または11に記載のカンナビジオールを含むアルギナート紡績糸を含む糸。
【請求項14】
請求項13に記載の紡績糸を含む織物。
【請求項15】
抗酸化用途のための請求項14に記載の織物。
【請求項16】
抗菌用途のための請求項14に記載の織物。
【請求項17】
抗炎症用途のための請求項14に記載の織物。
【請求項18】
抗アレルギー用途のための、請求項14に記載の織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸液に関し、特にカンナビジオール粉末を含む紡糸液に関する。また、本発明は、繊維、特にカンナビジオール(CBD)を含む繊維、その製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料品や家庭用アクセサリーに対する消費者の現在の要求は、消費パターンやライフスタイルの変化に伴って、美観のみを追求することから、美観と機能性の両方を追求することへと変化している。機能性織物の一般的な機能には、抗菌活性、抗ダニ活性、抗紫外線活性、汗ウィッキング性、温度管理、激しいスポーツ中の抵抗低減および疼痛緩和などが含まれる。
【0003】
CBDは、慢性疼痛、不安および不眠症を治療するために使用することができ、機能性織物の製造のために繊維に添加することが潜在的に求められる物質である。しかしながら、CBDは脂溶性であり、その水溶性はわずか6.3×10-5mg/mLである(Benedette Cuffari, 2020, Improving the Water Solubility of CBD for Cancer)。したがって、日常生活における抗不安または不眠症を治療するなどのCBDの機能性を利用するために、衣類、タオル、シート、デュペカバーおよびマスクなどの一般的な繊維製品を製造するためにCBDを有する繊維を製造しようとしても、湿式紡糸に使用される水性溶媒中に対するCBDの溶解度が低いため製造は困難である。
なお本発明に関連する技術として次の特許文献1記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0259985号
【発明の概要】
【0005】
現在の技術は、水性溶媒を用いた湿式紡糸によってCBDを含む繊維を効果的に製造することができないという事実に鑑みて、本発明は、水性溶媒中にCBDを均一に分散させ、湿式紡糸に使用することができる紡糸液を提供する。これにより、CBDを含む繊維、糸または織物を製造することができ、日常生活に応用することができる。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、CBD粉末およびアルギナート(アルギネート)溶液を含む紡糸液を提供する。
【0007】
紡糸液は、アルギナート溶液を含む。その結果、アルギナートの高分子量長鎖は、立体障害を誘導することができ、CBD粉末の粒子がアルギナート溶液中に均一に分散することを可能にし、CBD粉末が凝集および沈殿するのを防ぐことができる。これにより、CBDの水性溶媒への溶解性が低いために、湿式紡糸に対しCBDを適用することが困難であるという課題が克服される。
【0008】
本発明によれば、アルギナート溶液は、アルギン酸塩溶液である。
【0009】
好ましくは、アルギナート溶液の濃度は、1重量%~10重量%である。アルギナート溶液のこの濃度範囲は、繊維形成に良好であり、製造された繊維は、良好な物理的特性およびより良好な紡糸性を有する。より好ましくは、アルギナート溶液の濃度は、1.5重量%~7.5重量%である。より好ましくは、アルギナート溶液の濃度は、2重量%~5重量%である。
【0010】
好ましくは、アルギナート溶液とCBD粉末との重量比は、75~99.99:0.01~25である。この重量比の範囲内において、CBD粉末は、製造された繊維がより良好な紡糸性を有することを可能にする。より好ましくは、アルギナート溶液とCBD粉末との重量比は、80~99.9:0.1~20である。より好ましくは、アルギナート溶液とCBD粉末との重量比は、99.9:0.1~4.5:1である。例えば、アルギナート溶液とCBD粉末との重量比は、5:1である。より好ましくは、アルギナート溶液とCBD粉末との重量比は、99.9:0.1~50:1である。より好ましくは、アルギナート溶液とCBD粉末との重量比は、99.9:0.1~20:1である。より好ましくは、アルギナート溶液とCBD粉末との重量比は、99.9:0.1~95:5である。
【0011】
好ましくは、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、99.9:0.1~0.3:1である。例えば、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、250:1~180:1である。より好ましくは、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、99.9:0.1~0.5:1である。より好ましくは、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、99.9:0. 1~0. 8: 1である。より好ましくは、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、99.9: 0. 1~4. 5: 1である。より好ましくは、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、99.9: 0. 1~50:1である。より好ましくは、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、99.9: 0. 1~20:1である。より好ましくは、CBDを含む紡糸液中のアルギナートとCBD粉末との重量比は、99.9:0.1~95:5である。
【0012】
好ましくは、CBD粉末の平均粒径は、300ナノメートル(nm)~600nmである。より好ましくは、CBD粉末の平均粒径は、350nm~590nmである。より好ましくは、CBD粉末の平均粒径は、380nm~580nmである。この粒径範囲のCBD粉末の粒子は、CBD粉末がアルギナート溶液中により均一に分散することを可能にし、これは湿式紡糸による繊維の製造に有益である。一実施形態では、CBD粉末の平均粒径は456nmである。他の実施形態では、CBD粉末の平均粒径は392nmである。別の実施形態では、CBD粉末の平均粒径は578.6nmである。
【0013】
好ましくは、アルギナートは、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、またはアルギン酸亜鉛であり得る。より好ましくは、アルギナートはアルギン酸ナトリウムである。具体的には、アルギナートは、D-マンヌロン酸とL-グルロン酸とを架橋することによって形成される多糖塩であり、D-マンヌロン酸とL-グルロン酸との量比は、1:2~2:1である。好ましくは、D-マンヌロン酸とL-グルロン酸の量比は1:1である。
【0014】
本発明はさらに、前記紡糸液を用いた湿式紡糸により、CBDを含むアルギナート繊維を形成する工程(A)を含む、CBDを含むアルギナート繊維の製造方法を提供する。
【0015】
好ましくは、前記工程(A)は、CBDを含むアルギナート繊維を形成するために紡糸口金を通して凝固液に紡糸液を導入する工程(A')である。凝固溶液は、塩化カルシウムおよび水を含み、塩化カルシウムおよび水の重量比は、1~10:90~99である。より好ましくは、塩化カルシウムと水との重量比は、3~7:93~97である。
【0016】
好ましくは、凝固溶液は、アルコールをさらに含み、塩化カルシウム、水及びアルコールの重量比は、1~10:40~50:40~50である。より好ましくは、塩化カルシウム、水およびアルコールの重量比は、3~7:45~48:45~48である。より好ましくは、アルコールは、エタノールまたはプロピレングリコールなどの低級アルコールである。
【0017】
より好ましくは、凝固溶液の温度は、0℃~40℃である。より好ましくは、凝固溶液の温度は25℃である。
【0018】
好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維を製造する方法の工程(A)は、紡糸液を濾過用篩に通して濾過紡糸液を得る工程(A1)、および濾過紡糸液を紡糸口金に通して凝固溶液に導入してCBDを含むアルギナート繊維を形成する工程(A2)を含む。
【0019】
好ましくは、紡糸口金は、2000個~5000個の孔を有し、各孔の直径は、0.05ミリメートル(mm)~2mmである。
【0020】
好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の製造方法は、CBDを含むアルギナート繊維を水洗及びアルコール洗浄し、25℃~120℃の温度で乾燥して、CBDを含む乾燥アルギナート繊維を得る工程(B)をさらに含む。一実施形態において、アルコールはメタノールである。別の実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0021】
好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の製造方法は、CBD粉末をエタノールに溶解してCBDアルコール溶液を得て、CBDアルコール溶液を保護剤溶液に添加してCBD分散液を得、CBD分散液をアルギナート溶液に添加して紡糸液を得る工程(A0)をさらに含む。好ましくは、アルコールはエタノールまたはプロピレングリコールである。保護剤溶液は、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、キトサン、リン脂質、シクロデキストランおよびそれらの組み合わせのいずれかを含む。一実施形態では、保護剤溶液は、1重量%のアルギン酸ナトリウム溶液である。
【0022】
好ましくは、工程(A0)におけるCBDアルコール溶液を保護剤溶液に添加し、保護剤溶液を10000rpm~15000rpmの回転速度で撹拌する。
【0023】
好ましくは、工程(A0)におけるCBD分散物のCBD粉末は、0.4以下の多分散指数(PDI)を有する。より好ましくは、CBD粉末のPDIは0.05~0.3である。より好ましくは、CBD粉末のPDIは0.1~0.25である。一実施形態では、CBD粉末のPDIは0.197である。別の実施形態では、CBD粉末のPDIは0.159である。
【0024】
本発明はさらに、CBDおよびアルギナートを含むアルギナート繊維を提供し、CBDは、CBDを含むアルギナート繊維中に分散される。
【0025】
好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、75~99.99:0.01~25である。好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、99.9:0.1~0.3:1である。例えば、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、250:1~180:1である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、80~99.9:0.1~20である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、99.9:0.1~0.5:1である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、99.9:0.1~0.8:1である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、99.9:0.1~4.5:1である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、99.9:0.1~50:1である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、99.9:0.1~20:1である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維中のアルギナートとCBDとの重量比は、99.9:0.1~95:5である。
【0026】
好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の繊度は、3dtex~5dtexである。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の繊度は、3.5dtex~4.8dtexである。
【0027】
好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の強度は、1テックス当たり5センチニュートン(cN/tex)~15cN/texである。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の強度は、7cN/tex~14cN/texである。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の強度は、10cN/tex~14cN/texである。
【0028】
好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の伸びは、7%~20%である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート繊維の伸びは、17.5%~19.9%である。
【0029】
本発明はさらに、CBDを含むアルギナート繊維を含む紡績糸(ヤーン)を提供する。例えば、CBDを含むアルギナート繊維は、CBDを含むアルギナート紡績糸を得るために、撚り機によって、レーヨン繊維などの別のタイプの繊維と撚り合わせることができる。
【0030】
好ましくは、CBDを含むアルギナート糸の番手(ヤーンカウント)は15~25である。より好ましくは、CBDを含むアルギナート紡績糸は、17~22番手である。
【0031】
好ましくは、前記紡績糸の破断強度は、300グラム力(gf)~600gfである。より好ましくは、上記紡績糸の破断強度は、400gf~580gfである。
【0032】
好ましくは、前記紡績糸の伸びは5%~10%である。より好ましくは、前記紡績糸の伸びは6%~8%である。
【0033】
本発明はさらに、限定されるものではないが、ガーターおよびソックスなどの、前述の紡績糸を含む織物を提供する。
【0034】
本発明はさらに、抗酸化用途に使用される、CBDを含むアルギナート繊維の使用を提供する。
【0035】
本発明はさらに、抗酸化用途のためのCBDを含むアルギナート織物の使用を提供する。
【0036】
本発明はさらに、抗菌用途のためのCBDを含むアルギナート織物の使用を提供する。一実施形態では、繊維は、黄色ブドウ球菌に対して適用することができる。
【0037】
本発明はさらに、抗炎症用途のためのCBDを含むアルギナート織物の使用を提供する。
【0038】
本発明はさらに、抗アレルギー用途のためのCBDを含むアルギナート織物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、アルギナート溶液により水不溶性CBDを分散させて紡糸液を形成することが可能となり、これを湿式紡糸に使用することでCBDを含むアルギナート繊維を製造することができるという効果がある。この繊維は、優れた物理的特性および優れたフリーラジカル捕捉活性を有し、さらに、ガーターなどの紡績糸または織物を製造するために使用することができる。製造された織物は、抗酸化、抗菌、抗炎症及び抗アレルギー活性を有する。さらに、洗浄試験は、製造された織物が、一定量のCBDを持続して有し、20回の洗浄後に抗酸化、抗細菌、抗炎症および抗アレルギー能力を持続的に有することを示す。したがって、CBDを含むアルギナート織物は、優れた洗浄性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】湿式紡糸装置の概略図
図2】CBDを含むアルギナート繊維の概略図
図3】リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で抽出した後の、実施例1BのCBDを含むアルギン酸糸のCBD残量を示す図。
図4】洗浄後または洗浄なしの実施例1CのCBDを含むアルギナート織物のCBD残存パーセンテージを示す図。
図5】洗浄後または洗浄なしの実施例1CのCBDを含むアルギナート織物のフリーラジカル捕捉率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<調製例1: CBD分散液>
CBD粉末をエタノール水溶液に溶解し、CBDアルコール溶液を得た。前記CBDアルコール溶液中のエタノール:水: CBD粉末の重量比は、50:50:7.5である。CBDアルコール溶液を1重量%アルギン酸ナトリウムの保護剤に添加し、保護剤を10000rpm~15000rpmの回転速度で攪拌してCBD分散液を得た。
【0042】
得られたCBD分散液を、遠赤外線を用いて140℃で30分間(min)、熱重量分析計(Kett FD-610)によって分析した。その結果、CBD分散液中のCBD量は7.5重量%であった。さらに、CBD分散液中のCBD粉末の粒径および粒径分布を、動的光散乱(DLS)を介してサイズアナライザー(Malvern nano ZS90)を用いて測定した。結果は、z平均サイズが456nmであり、これはCBD粉末の粒子の水和半径を表し、多分散性指数(PDI)が0.197であることを示した。
【0043】
<実施例1:紡糸液>
まず、5重量%アルギナート溶液を200rpm~400rpmの回転速度で4時間撹拌した。アルギナートは、アルギン酸ナトリウム、D-マンヌロン酸とL-グルロン酸を架橋して形成された多糖塩であり、D-マンヌロン酸とL-グルロン酸の量比は1:1であった。調製例1のCBD分散液を、撹拌したアルギナート溶液中にゆっくりと加え、続いて、200rpm~400rpmの回転速度で1時間撹拌した。均一な混合が達成された後、紡糸液を得た。紡糸液中の水:アルギナート:CBD粉末の重量比は95:5:0.25、すなわち、アルギナート: CBD粉末の重量比は20:1であった。
【0044】
実施例1の紡糸液の粘度を測定した。その結果、粘度は、1rpmの回転速度で39000センチポアズ(cps)であった。加えて、前述の紡糸液を400メッシュステンレス鋼篩を通して濾過した。400メッシュ篩上の孔の直径は約38マイクロメートル(μm)であった。肉眼で観察したところ、篩上には粉末は残っていなかった。したがって、CBD粉末の粒子は、大きな凝集体を形成することなく、本実施例の紡糸液中に均一に分散された。
【0045】
<実施例2:紡糸液>
実施例1と同様に、実施例2の紡糸液を製造した。但し、調製例1のCBD分散液をアルギナート溶液に添加した後に得られた紡糸液中の水:アルギナート: CBD粉末の重量比を95:5:1にしたこと、及びアルギナートがアルギン酸ナトリウムであることが異なる。本実施例の紡糸液の粘度は、1rpmの回転速度で45000cpsであった。さらに、本実施例の紡糸液を、400メッシュステンレス鋼篩を通して濾過した。400メッシュ篩上の孔の直径は約38μmであった。肉眼で観察したところ、篩上に粉末は残っていなかった。したがって、CBD粉末の粒子は、大きな凝集体を形成することなく、本実施例の紡糸液中に均一に分散された。
【0046】
<実施例3:紡糸液>
実施例1と同様に、実施例3の紡糸液を製造した。但し、調製例1のCBD分散液をアルギナート溶液に添加した後に得られた紡糸液中の水:アルギナート:CBD粉末の重量比が95:5:0.025であり、アルギナートがアルギン酸ナトリウムであることが異なる。また、本実施例の紡糸液の粘度は、1rpmの回転速度で38000cpsであった。さらに、本実施例の紡糸液を、400メッシュステンレス鋼篩を通して濾過した。400メッシュ篩上の孔の直径は約38μmであった。肉眼で観察したところ、篩上には粉末は残っていなかった。したがって、CBD粉末の粒子は、大きな凝集体を形成することなく、本実施例の紡糸液中に均一に分散された。
【0047】
<実施例4~7:紡糸液>
実施例1と同様に実施例4~7の紡糸液を製造した。但し、調製例1のCBD分散液をアルギナート溶液に添加した後に得られた紡糸液中の水:アルギナート: CBD粉末の重量比を異ならせた。実施例4~7の紡糸液の水:アルギナート: CBD粉末の重量比を下記表1に示した。このようにして得られた紡糸液は、連続紡糸における紡糸液の安定性を分析するための、以下の実験のための試験片として使用した。
【0048】
<実験1:連続紡糸における紡糸液の安定性>
実施例4~7の紡糸液をそれぞれ湿式紡糸して、上記紡糸液を糸切れなく1時間連続紡糸できるか否かを試験し、安定性を解析した。すなわち、連続紡糸を1時間行うことができれば、1成功バッチとした。これらのうち、実施例6については、試験を6回繰り返した。結果を以下の表1に示した。表1の成功バッチ合計数は、何時間糸切れなく連続防止できるかを示す。
【表1】
【0049】
上記の結果によれば、実施例4~6の紡糸液は、湿式紡糸工程を連続的に行えることがわかる。すなわち、連続紡糸を1~3時間持続することができる。実施例7では、CBD含有量が多すぎたため、30分以内で紡糸口金が固着した。予め400メッシュのステンレス製篩に紡糸液を通しても、結果は同様で、長時間の連続紡糸の効果を得ることは難しかった。
【0050】
<実施例1Aおよび2A:CBDを含むアルギナート繊維>
実施例1および2の紡糸液を湿式紡糸して、それぞれ実施例1Aおよび実施例2Aのアルギナート繊維を形成した。具体的には、図1に示すように、紡糸液10を脱泡した後、供給バレル11に注ぎ込んだ。次いで、脱泡紡糸液を紡糸口金12に通し、供給バレル11から、凝固溶液13を含む凝固浴14Aに導入した。紡糸口金12は3000個の孔(図示せず)を有し、各孔の直径は0.1mmであった。凝固溶液13は、塩化カルシウムと水からなり、塩化カルシウムと水の重量比は5:95であった。凝固液の温度は25℃に保った。次いで、カルシウムイオンとアルギナートとを結合させ凝固させることにより、CBDを含むアルギナート繊維15を形成した。図2に見られるように、CBD150は、CBDを含むアルギナート繊維15中に均一に分散された。
【0051】
実施例1Aおよび2AのCBDを含む繊維15は、水洗浄のための水16を含む水洗浄タンク14Bをさらに通過させ、次いで、アルコール洗浄のためのアルコール17を含むアルコール洗浄タンク14Cをさらに通過することができた。ここで、アルコール17はエタノールであり、続いて、接着された繊維を空気によって分離し、次いで、加熱ローラー18によって100℃の設定温度で乾燥した。CBDを含む乾燥アルギナート繊維15'を整列させて整えた後、収集器19上に束として収集した。
【0052】
<実施例1A':CBDを含むアルギン酸繊維>
実施例1Aと同様に、実施例1A'のCBDを含むアルギナート繊維を製造した。但し、実施例1A'の溶液紡糸液(実施例1)を紡糸口金に通し、塩化カルシウム、水、エタノールの重量比が5:47.5:47.5である、塩化カルシウム、水、エタノールからなる凝固液に導入した点が異なる。
【0053】
<実施例3A':CBDを含むアルギン酸繊維>
実施例1Aと同様に、実施例3A'のCBDを含むアルギナート繊維を製造した。但し、実施例3A'のCBDを含むアルギナート繊維は、実施例3の紡糸液を用いて湿式紡糸によって製造されたことが異なる。さらに、CBDを含む製造されたアルギナート繊維を、ローラーによって25℃の温度で乾燥させた。
【0054】
<実験2:繊維の物理的性質試験>
実施例1A、2A、1A'および3A'を、試験試料として使用し、CBDを含むアルギナート繊維の繊度、強度および伸びを、ASTM 2255の方法に従って試験した。結果を以下のように表2に示す。
【表2】
【0055】
上記の表から、実施例1A、2A、1A'および3A'のCBDを含むアルギナート繊維は、適切な強度および低い変形可能性を有していた。従って、日常生活のための織物を製造するのに適していることが分かる。中でも、実施例1A、1A'および3A'は、より良好な強度を有し、これは糸紡績に適していた。特に、実施例1A'および3A'の伸びは17.5%に達した。これは、綿などの一般的な衣類繊維により近い。
【0056】
<実験3:繊維中のCBD量>
実施例1A、2A、1A'および3A'を以下の実験のための試験試料として使用した。CBDを含むアルギナート繊維0.1グラム(g)をそれぞれ1mLのCBD抽出溶媒1によって4時間超音波抽出し、次いで、分光光度計によって286nmで吸光度を測定し、CBDを含むアルギン酸繊維中のCBD量を検量線に基づいて計算した。抽出溶媒1は、80重量部のプロピレングリコールおよび20重量部の10重量%生理食塩水(塩化ナトリウム)からなっていた。定量試験の結果、実施例1A、2Aおよび3A'は、それぞれ3.1重量%、8.8重量%および0.1重量%のCBDを含むことが示された。
【0057】
さらに、プロピレングリコール80重量部及び2重量%食塩水20重量部からなる抽出溶媒2を用いて、実施例1A及び1A'の定量試験を行った。その結果、実施例1Aおよび1A'は、それぞれ3.1重量%および2.9重量%のCBDを含むことが示された。
【0058】
2つの抽出溶媒による実施例1の分析結果は同じであったので、抽出溶媒中の生理食塩水溶液の濃度は、抽出結果に影響を及ぼさなかったことがわかる。さらに、実施例1Aおよび1A'の分析結果から、2つの異なる凝固溶液からそれぞれ生成された2つのCBDを含むアルギナート繊維中のCBD量が同様であることが分かった。つまり、凝固溶液がエタノールを含むか否かは、CBDを含むアルギナート繊維中のCBD量に有意な影響を及ぼさなかった。実施例2Aと比較して、実施例1AのCBD分析結果は、繊維調製時に添加したCBD量に近いことが分かったので、実施例1Aを用いて以下の試験を行った。
【0059】
<実験4:繊維の抗酸化能力>
実施例1Aを以下の実験のための試験試料として使用した。CBDを含むアルギナート繊維0.1gを、1mLのCBD抽出溶媒1(80重量部のプロピレングリコールおよび20重量部の10重量%生理食塩水溶液からなる)によって2時間超音波抽出して、実施例1Aの試料溶液を得た。さらに、0.07mg/mLのCBD溶液(7mg/mLのCBD溶液の100倍希釈、前述の溶媒に溶解されたCBD)を比較試料溶液として使用した。このCBD濃度(0.07mg/mL)は、商業用布地で使用されるCBDマイクロカプセルの含有量に等しい。上記抽出溶媒を対照試料溶液とした。
【0060】
実施例1Aの試料溶液、比較試料溶液および対照試料溶液をそれぞれ5μLおよび10μLずつ、抗酸化能試験用の96ウェルプレートのウェルに別々に加えた。DPPHアッセイキット(Biovision, K2078)の取扱説明書に従って、フリーラジカルスカベンジングアッセイを行い、取扱説明書に従ってフリーラジカルスカベンジングアッセイの反応時間を調整した。アッセイ緩衝液95μLおよび作業緩衝液100μLを各ウェルに添加し、全ての試料溶液とそれぞれ混合し、室温で1時間反応させた。次に、全試料溶液の517nmにおける吸光度を分光光度計で測定し、標準品Troloxにより設定された標準曲線に基づき、取扱説明書に従い、次式によりフリーラジカル捕捉率を算出した。
【0061】
フリーラジカル捕捉率=[(Ac-As)/Ac]×100
Ac: Trolox 0モルの吸光度-アッセイ緩衝液の吸光度
As: 試料溶液の吸光度-対照群の吸光度
結果を以下の表3に示した。
【表3】
【0062】
このように、実施例1AのCBDを含むアルギナート繊維は、現にフリーラジカルを捕捉しており、抗酸化能力を有していた。本実施例のCBDを含むアルギン酸繊維は、疑似的な汗であるナトリウムイオンを含む抽出溶媒で抽出した後にCBDを溶出することによって抗酸化能を持つ。したがって、本実施例のCBDを含むアルギナート繊維からなる繊維は、人体の汗によってCBDを溶出して抗酸化能を発揮させることができる。
【0063】
<実施例1BのCBDを含むアルギナート紡績糸>
実施例1AのCBDを含むアルギナート繊維を、38mmの長さを有する繊維セグメントに切断し、レーヨン繊維と混合して、実施例1AのCBDを含む20重量%のアルギナート繊維および80重量%のレーヨン繊維を含む混合繊維を得た。混合繊維混合物を開繊し、梳綿(カーディング)し、引き出して、空気紡糸によって撚りレベル300の紡績糸を得た。
【0064】
<実験5:紡績糸の物性試験>
実施例1Bを、以下の実験のための試験試料として使用した。CBDを含むアルギナート繊維の糸番手、破断強度および伸びを、ASTM 2256の方法に従って試験した。結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0065】
表4から、実施例1BのCBDを含むアルギナート紡績糸は、適切な破断強度および低い変形可能性を有し、それによって、日常生活のための織物を製造するのに適していることが分かる。
【0066】
<実験6:疑似汗としてPBSを用いた場合の紡績糸のCBD放出試験>
実施例1Bを以下の試験のための試験試料として使用した。CBDを含むアルギナート紡績糸0.1g~0.2gを、1重量比に対し、10容積倍のPBS溶液 (NaCl:8g/L、KCl:0.2g/L、Na2HPO4:1.44g/L、KH2PO4:2.4g/L)に添加して混合物を得、混合物を37℃で1時間超音波撹拌し、24時間静置した後、dd水(重水素低減水)で3回洗浄して残留PBSを除去した。洗浄したアルギナート紡績糸を50℃で2時間乾燥した後、実験3(抽出溶媒1を用いた)に従って、分光光度計により286nmにおける吸光度を測定し、CBDを含むアルギナート紡績糸の残存CBD量を検量線に基づいて算出した。CBDを含むアルギナート紡績糸中の残存CBD量を、糸中の元のCBD量(0時間)で割って、CBD残存パーセンテージを得た。
【0067】
CBDを含むアルギナート糸のCBD残存パーセンテージの結果を図3に示した。ナトリウムイオンを含むPBSによる24時間の抽出後にも、実施例1BのCBDを含むアルギナート紡績糸は、依然として50%以上のCBDを有していた。したがって、CBDを含むアルギナート紡績糸は、汗と接触することによってCBDを放出するものの、一定のCBD量が紡績糸中に残ることは明らかである。
【0068】
<実施例1CのCBDを含むアルギナート織物>
実施例1BのCBDを含むアルギナート紡績糸を編んで、ストッキングマシンによって150cmの長さを有する平編みガーターを製造し、これを実施例1Cとして使用した。
【0069】
<実験7:疑似汗としてPBSを用いた繊維のCBD放出試験>
実施例1Cを、以下の実験のための試験試料として使用した。
CBDを含むアルギナート織物0.1g~0.2gを、1重量比に対し、10容積倍の水またはPBSに加えて混合物を得、混合物を37℃で1時間超音波撹拌し、24時間静置した後、3回dd水洗浄して、残りのPBSを除去した。洗浄したアルギナート織物を50℃で2時間乾燥した後、実験3(抽出溶媒1を用いた)と同様に、分光光度計により286nmでの吸光度を測定し、CBDを含むアルギナート織物中の残存CBD量を検量線に基づいて算出した。CBDを含むアルギナート織物中の残存CBD量を織物中の元のCBD量で割って(0時間)、CBD残存量(パーセンテージ)を得た。
【0070】
CBDを含むアルギナート織物のCBD残存量(パーセンテージ)の結果を図4に示した。実施例1CのCBDを含むアルギナート織物は、水による24時間の抽出後にも依然として84.4%のCBDを有していた。また実施例1CのCBDを含むアルギナート織物は、ナトリウムイオンを含むPBSによる24時間抽出後でも依然として67%のCBDを有していた。したがって、CBDを含むアルギナート織物は、CBDを放出するだけでなく、糸中の特定のCBD量を維持することが明らかである。
【0071】
<実験8:洗浄後の繊維中のCBD量>
実施例1Cを以下の実験のための試験試料として使用した。CBDを含むアルギナート織物1.8キログラム(kg)を洗濯機に入れ(重量の不足を補うためにブランク布を使用する)、織物およびブランク布を、AATCC135の標準方法に従って洗濯した。この方法では、水位は中程度、水温は低温で、規則的洗濯プログラムとした。各洗浄サイクルで4ポンド(ポンド)の水を使用した。20サイクルを、20mL洗剤(Attack EX、KAO)を使用するか、または水による洗浄(洗剤なし)のいずれかで処理した。洗浄後、洗浄後の布地をCBD抽出溶媒で4時間超音波抽出した後、分光光度計で286nmの吸光度を測定し、検量線に基づいて洗浄1、2、3、4、5、10、15、20サイクル後の実施例1CのCBDを含むアルギナート織物中のCBD量を算出した。計算は以下のように行った。
洗浄後CBDパーセント=[洗浄後CBD量(重量%)/洗浄前CBD量(重量%)]x100%
【0072】
結果を以下の表5に示した。
【表5】
【0073】
この結果から、実施例1CのCBDを含むアルギナート織物のCBD量(パーセンテージ)は、一般に、洗剤による洗浄後の洗浄サイクルの数と共に減少し、1/4のCBD量が最初の3回の洗浄サイクル内に留まり得ることが示された。その後、CBDは、4thから20thの洗浄サイクルの間にわずかに減少し、CBDの割合は、約17%~19%のままであった。一方、水による洗浄では、実施例1CのCBDを含むアルギナート織物のCBD量(パーセンテージ)は、水による洗浄15サイクルまで50%超のまま、CBD量(パーセンテージ)は、水による洗浄20サイクルまで1/3超のままであった。したがって、本実施例のCBDを含むアルギナート織物は、洗剤を用いて又は用いずに洗浄した後に、特定のCBD量を維持することができることがわかった。これは、本実施例のCBDを含むアルギナート織物が良好な洗浄性を有することを証明するものである。
【0074】
<実験9:水洗後の繊維の抗酸化能力>
実験8に記載したように水で20サイクル洗浄した後の実施例1Cと、全く洗浄処理をしなかった実施例1Cとを、以下の実験のための試験例として使用した。水洗浄群(実験8に記載のように20サイクルの水による洗浄後のCBDを含むアルギナート織物0.1g)、非水洗浄群(洗浄処理を施していないCBDを含むアルギナート織物0.1g)およびブランク群(CBDを含まないアルギナート織物0.1g)の試験試料を、本実験の1mLの抽出溶剤(DMSO/H2O/NaCl=80/15/5重量%)によって2時間超音波抽出した。CBDを3%含むアルギナート繊維を本発明の抽出溶媒に溶解して得られた5μL溶液をCBD群用試料溶液とし、本発明の抽出溶媒を対照群用試料溶液とした。各試料溶液5μLを96ウェルプレートのウェルに別々に添加した。それぞれの群をプレート上で2回繰り返した。DPPHアッセイキット(Biovision, K2078)の取扱説明書に従ってフリーラジカルスカベンジングアッセイを行った。フリーラジカルスカベンジングアッセイの反応時間を取扱説明書に従って調整した。各ウェルにアッセイ緩衝液95μLおよび作業緩衝液100μLを添加し、全ての試料溶液のそれぞれと混合し、室温で1時間反応させた。次に、全ての試料溶液の517nmにおける吸光度を分光光度計で測定し、標準品Troloxにより設定された標準曲線に基づき、取扱説明書に従い、次式によりフリーラジカル捕捉率を算出した。
フリーラジカル捕捉率= [(Ac-As)/ Ac]×100
Ac: Trolox:0モルの吸光度-アッセイ緩衝液の吸光度
As:試料溶液の吸光度-対照群の吸光度
【0075】
結果を図5に示す。結果は、実施例1CのCBDを含むアルギナート織物が、現にフリーラジカルを捕捉し、これにより抗酸化能を有することを示した。また、ナトリウムイオンを含む疑似汗の抽出溶媒による抽出後、織物は、含有するCBDを溶出し、抗酸化能を示した。実施例1CのCBDを含むアルギナート織物は、20サイクルの水による洗浄後に、水による洗浄に供されていない実施例1Cと比較して、1/4のフリーラジカル捕捉能を有していた。これは、ブランク群の2倍のフリーラジカル捕捉能に等しい。したがって、本発明のCBDを含むアルギナート織物は、相当の抗酸化性および洗浄性を有する。
【0076】
<実験10:繊維の抗菌能>
実験8に記載した水による洗浄20サイクル後の実施例1Cと、まったく洗浄プロセスを受けていない実施例を試験例として使用し、それぞれ水洗浄群および非水洗浄群と名付けた。さらに、ブランク群を実験手順のための対照群として使用した。「JIS L1902:2015 繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」に従い、試験試料の抗Staphylococcus aureus (BCRC 10451)能を試験した。ブランク群のデータもJIS L1902:2015に従い提供した。結果を以下の表6に示した。
【表6】
【0077】
試験結果の記号(式)は以下のとおりである。
F(対照群の増殖量)=対数Ct-対数C0、F>2.0の場合、テストは有効。
G(検体群の増殖量)=対数Tt-対数T0
A(抗菌活性値)=(log Ct - log C0)-(log Tt - log T0)=F-G
C0':ブランク群の接種直後に溶出したCFU
Ct':ブランク群の24時間インキュベーション後のCFU
C0:対照群の接種直後に溶出したCFU
Ct:対照群の24時間インキュベーション後のCFU
T0:試料群の接種直後に溶出したCFU
Tt:試料群の24時間インキュベーション後のCFU
注:A(抗菌活性値)>2.0の場合、試料は試験菌株に対して抗菌性を有する。
【0078】
ブランク群の成長値は2.2、試料群の成長値は-3.1であった。水洗浄群および非洗浄群の両方とも、5.3を超える抗菌活性値を有していた。したがって、実施例1CのCBDを含むアルギナート織物は、抗菌活性を有し、水洗によって影響されない。結果として、実施例1CのCBDを含むアルギナート織物は、良好な洗浄性を有することがわかる。
【0079】
<実験11:繊維の抗炎症性および抗アレルギー性>
実験8記載のように水で20サイクル洗浄した実施例1Cと、全く洗浄プロセスを施さなかった実施例1Cとを、以下の実験のための試験例として使用した。水洗浄群(実験8に記載のように20サイクルの水による洗浄後にCBDを含むアルギナート織物0.1g)、非水洗浄群(洗浄プロセスをしなかったCBDを含むアルギナート織物0.1g)およびブランク群(CBDを含まないアルギナート織物0.1g)の試験試料を、本実験の1mLの抽出溶剤(DMSO/H2O/NaCl=80/15/5重量%)によって2時間超音波抽出した。3% CBDを含むアルギナート繊維を本実験の抽出溶媒に溶解して得られた溶液5μLをCBD群の試料溶液とした。マウスマクロファージ細胞(RAW 264.7、Bioresource Collection and Research Centerから入手)を、100,000細胞/ウェルの密度で3つの24ウェルプレートのウェルに播種した。24時間のインキュベーション後、細胞炎症を誘導するために、各ウェルにリポ多糖(LPS)を1μg/mLの濃度になるように60分間添加した。次いで、各ウェルに各群の試料溶液20μLを加えた。一方、試料溶液も溶媒も含まない非付加群を用意した。24時間のインキュベーション後、培養細胞の上清を回収し、-80℃で凍結し、一酸化窒素比色定量キット(BioVision, #K262-200)の取扱説明書に従い、但し、吸光度の読み取り値は520nmに調整して、上清の520nmにおける吸光度を測定し、硝酸塩の検量線に基づいて、硝酸塩量を算出した。
{[(試料吸光度-対照吸光度)-標準曲線の切片]/標準曲線の傾き}/(試料体積)
【0080】
変換された硝酸塩濃度は、一酸化窒素の濃度を反映している。なお対照群は、各群の上清およびキット中のアッセイ酵素を含まないアッセイ緩衝液からなり、取扱説明書に従って処方した。
結果を以下の表7に示した。
【表7】
【0081】
表7から、水洗浄群および非洗浄群の実施例1CのCBDを含むアルギナート織物は、CBD群と同じ一酸化窒素還元能を有していたことが分かる。すなわち、両方の群は、LPSによって産生される一酸化窒素を有意に減少させるものであり、実施例1CのCBDを含むアルギナート織物を、抗炎症および抗アレルギー用途に使用することができる。したがって、実施例1CのCBDを含む織物の抗炎症性および抗アレルギー性は、洗浄によってほとんど影響を受けず、実施例1CのCBDを含む織物は、良好な洗浄性を有する。
【0082】
要約すると、本発明のCBDを含むアルギナート繊維は、十分な強度および低い変形可能性を有し、汗シミュレーション実験においてCBDを放出し、実際にフリーラジカルを捕捉し、抗酸化能、抗細菌能、抗炎症能、および抗アレルギー能を有している。本発明のCBDを含有するアルギナート繊維により製造された織物は、適度な破断強度と変形可能性が低く、実際に抗酸化能、抗菌能、抗炎症能、抗アレルギー能、洗浄能を有する。
【符号の説明】
【0083】
10:紡糸液、15:CBDを含むアルギナート繊維、150:CBD

図1
図2
図3
図4
図5