(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067844
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】電動シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 9/02 20060101AFI20230509BHJP
F16D 65/28 20060101ALI20230509BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20230509BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20230509BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20230509BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20230509BHJP
F16D 125/48 20120101ALN20230509BHJP
【FI】
F04B9/02 C
F16D65/28
B60T13/138 A
F04B9/02 A
F16D121:24
F16D121:04
F16D125:40
F16D125:48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173057
(22)【出願日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2021177818
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小野田 真吾
【テーマコード(参考)】
3D048
3H075
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB54
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH18
3D048PP03
3D048RR01
3D048RR11
3H075AA02
3H075BB03
3H075CC35
3H075CC40
3H075DB03
3H075DB32
3J058BA66
3J058CC15
3J058CC33
3J058CC62
3J058DB20
3J058DB23
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】電動シリンダ装置の設計の自由度を向上できるようにすること。
【解決手段】電動シリンダ装置10は、シリンダ機構80と、電気モータ50と、直動変換機構70と、運動伝達機構60とを備えている。電気モータ50の軸線50aと直動変換機構70の軸線70aとがずれた位置に、電気モータ50と直動変換機構70とが配置されている。直動変換機構70を直動変換機構70の径方向に投影した像の外に、電気モータ50のモータハウジング51が位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータのステータ及びロータがモータハウジング内に収容され、前記ロータと一体に回転する出力軸が前記モータハウジングから外部に突出し、前記出力軸の回転運動が運動伝達機構により直動変換機構に伝達され、前記直動変換機構の回転部の回転運動が前記直動変換機構の直動部の直線運動に変換され、シリンダ内のピストンが前記直動変換機構の前記直動部の直線運動により駆動される電動シリンダ装置であって、
前記出力軸の軸線と前記回転部の軸線とがずれた位置に、前記電気モータと前記直動変換機構とが配置され、前記直動変換機構を前記直動変換機構の径方向に投影した像の外に前記モータハウジングが位置している
電動シリンダ装置。
【請求項2】
前記電気モータを前記直動変換機構に対して前記出力軸の方向に投影したとき、前記電気モータを投影した像の一部と前記直動変換機構が重なるように前記電気モータが配置されている
請求項1に記載の電動シリンダ装置。
【請求項3】
前記運動伝達機構は、
前記出力軸に設けられている駆動ギヤと、
前記回転部に連結されており、前記駆動ギヤの回転に応じて回転する第1従動ギヤと、
前記駆動ギヤ又は前記第1従動ギヤと噛み合っており、前記駆動ギヤの回転に応じて回転する第2従動ギヤと、
前記第2従動ギヤと一体に回転する回転軸と、
前記回転軸の回転角を検出する回転角検出部と、を備える
請求項1又は請求項2に記載の電動シリンダ装置。
【請求項4】
前記直動変換機構を支持する本体ケースと、
前記本体ケースと前記モータハウジングとの間に配置されており、内部に前記運動伝達機構が収容されている台座部材と、
前記本体ケースを挟んで前記台座部材の反対側に配置されている制御基板と、を備え、
前記台座部材の外側面は、前記出力軸を中心とする径方向において前記ステータよりも外側に位置しており、
前記電気モータの信号線は、前記台座部材内及び前記本体ケース内を通って前記制御基板に電気的に接続されており、
前記台座部材内では、前記出力軸を中心とする径方向において前記ステータよりも外側に前記信号線が配置されている
請求項1に記載の電動シリンダ装置。
【請求項5】
前記直動変換機構を支持する本体ケースと、
前記本体ケースと前記モータハウジングとの間に配置されており、内部に前記運動伝達機構が収容されている台座部材と、
前記出力軸の延びる方向に沿って延びる軸であって、前記台座部材の内部において前記出力軸に連結され、前記出力軸の回転に同期して回転する回転軸と、
前記回転軸の回転角を検出する回転角検出部と、を備え、
前記台座部材の外側面は、前記出力軸を中心とする径方向において前記ステータよりも外側に位置しており、
前記回転軸の第1端部は、前記台座部材の内部において前記出力軸を中心とする径方向における前記ステータよりも外側に位置しており、
前記回転軸の第2端部は前記台座部材の前記本体ケース側の外部に配置されているとともに、当該第2端部に前記回転角検出部が取り付けられている
請求項1に記載の電動シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給対象に液体を供給する電動シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホイールシリンダにブレーキ液を供給する電動シリンダ装置の一例が記載されている。この電動シリンダ装置では、電気モータの回転運動が運動伝達機構を介して直動変換機構に伝達される。直動変換機構は、入力された回転運動を直動運動に変換してピストンに伝達する。ピストンが直動すると、シリンダ内の液圧室からブレーキ液がホイールシリンダに供給される。その結果、車両に制動力が付与される。
【0003】
なお、上記の電動シリンダ装置では、電気モータが直動変換機構に同軸配置されているとともに、運動伝達機構として遊星歯車機構が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遊星歯車機構以外の機構を運動伝達機構として採用できるように、上記のような電動シリンダ装置における設計の自由度を高めたいという要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための電動シリンダ装置は、電気モータのステータ及びロータがモータハウジング内に収容され、前記ロータと一体に回転する出力軸が前記モータハウジングから外部に突出し、前記出力軸の回転運動が運動伝達機構により直動変換機構に伝達され、前記直動変換機構の回転部の回転運動が前記直動変換機構の直動部の直線運動に変換され、シリンダ内のピストンが前記直動変換機構の前記直動部の直線運動により駆動される装置である。この電動シリンダ装置では、前記出力軸の軸線と前記回転部の軸線とがずれた位置に、前記電気モータと前記直動変換機構とが配置され、前記直動変換機構を前記直動変換機構の径方向に投影した像の外に前記モータハウジングが位置している。
【0007】
上記構成によれば、出力軸の軸線と回転部の軸線とがずれた態様で、電気モータと直動変換機構とが配置されている。そのため、運動伝達機構として、遊星歯車機構以外の機構、例えば平歯ギヤやはす歯ギヤを有する機構を採用できる。また、直動変換機構を直動変換機構の径方向に投影した像の外にモータハウジングが位置している。そのため、直動変換機構の径方向で直動変換機構に隣り合う位置にモータハウジングが配置されていない。これにより、径方向で直動変換機構に隣り合う位置に様々な構造物を配置することが可能となる。
【0008】
したがって、上記構成によれば、電動シリンダ装置の設計の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電動シリンダ装置を備える車両の電動制動装置の概略を示す一部断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の電動シリンダ装置において、仮想平面上における電気モータの像と直動変換機構の像との位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の電動シリンダ装置を備える車両の電動制動装置の概略を示す一部断面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態の電動シリンダ装置を備える車両の電動制動装置の概略を示す一部断面図である。
【
図5】
図5は、電動シリンダ装置の変更例の一部を示す模式図である。
【
図6】
図6は、電動シリンダ装置の変更例の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、電動シリンダ装置の第1実施形態を
図1及び
図2に従って説明する。
図1には、本実施形態の電動シリンダ装置10を備える車両の電動制動装置100が図示されている。電動制動装置100は、ホイールシリンダ110を備えている。ホイールシリンダ110には液路120を介して電動シリンダ装置10が接続されている。すなわち、ホイールシリンダ110が、電動シリンダ装置10によるブレーキ液(液体の一例)の供給対象である。電動シリンダ装置10からホイールシリンダ110に液路120を介してブレーキ液が供給されると、ホイールシリンダ110内の液圧が高くなる。これにより、車両の車輪に制動力が付与される。
【0011】
<電動シリンダ装置の構成>
電動シリンダ装置10は、本体ケース20と基板収容ケース30と台座部材40とを備えている。本体ケース20は直方体状をなしている。本体ケース20の6つの側面のうち、図中右側の側面である第1本体側面21に基板収容ケース30が取り付けられている。台座部材40は、本体ケース20を挟んだ基板収容ケース30の反対側に配置されている。そして、本体ケース20の6つの側面のうち、図中左側の側面である第2本体側面22に台座部材40が取り付けられている。すなわち、基板収容ケース30及び台座部材40は、それらの間に本体ケース20が位置するようにそれぞれ配置されている。
【0012】
本体ケース20には、本体ケース20を貫通するシリンダ貫通孔23及び回転軸用貫通孔24が形成されている。すなわち、シリンダ貫通孔23を本体ケース20に形成したことによって、第1本体側面21には第1開口23aが形成されるとともに、第2本体側面22には第2開口23bが形成される。また、回転軸用貫通孔24を本体ケース20に形成したことによって、第1本体側面21には第1開口24aが形成されるとともに、第2本体側面22には第2開口24bが形成される。そして、第1開口24aは基板収容ケース30に閉塞される一方、第1開口23aは基板収容ケース30に閉塞されない。第2開口23b及び第2開口24bは台座部材40によってそれぞれ閉塞される。
【0013】
基板収容ケース30には、回転軸用貫通孔24内と連通する第1収容室31と、第1収容室31とは区分けされている第2収容室32とが形成されている。第2収容室32には、電動制動装置100を制御するための制御基板12が配置されている。第1収容室31には、回転角検出部としての磁石11が配置されている。そして、磁石11に向かい合う制御基板12の位置には磁石11の回転を検出する回転角センサ13が設けられている。
【0014】
台座部材40には、シリンダ貫通孔23内及び回転軸用貫通孔24内の何れにも連通する台座内収容室41が形成されている。そのため、台座内収容室41を介してシリンダ貫通孔23と回転軸用貫通孔24とが互いに連通している。
【0015】
電動シリンダ装置10は、電気モータ50、運動伝達機構60、直動変換機構70及びシリンダ機構80を備えている。
<シリンダ機構>
シリンダ機構80は本体ケース20に固定されている。具体的には、シリンダ機構80は本体ケース20のシリンダ貫通孔23に挿通されている。そして、シリンダ機構80は、第1本体側面21から本体ケース20外に突出している。
【0016】
シリンダ機構80は、本体ケース20に支持されているシリンダ81と、シリンダ81内に配置されているピストン82とを有している。シリンダ81は、円筒状をなす筒状部811と、筒状部811の一端を閉塞する底壁812とを有している。シリンダ81内には、底壁812とピストン82とによって、ブレーキ液を貯留する液圧室83が区画されている。液圧室83には、液圧室83の容積を拡大する方向である後退方向Z2にピストン82を付勢するスプリング84が設けられている。
【0017】
ピストン82は、シリンダ81内において、後退方向Z2、及び、後退方向Z2の逆方向である前進方向Z1に直動する。前進方向Z1にピストン82が直動すると、ピストン82が底壁812に接近するため、液圧室83の容積が縮小する。その結果、液圧室83のブレーキ液がホイールシリンダ110に送り出される。一方、後退方向Z2にピストン82が直動すると、ピストン82が底壁812から離間するため、液圧室83の容積が拡大する。その結果、ホイールシリンダ110内の液圧が減少し、液圧室83にブレーキ液が戻る。
【0018】
<直動変換機構>
直動変換機構70は、シリンダ81を介して本体ケース20に支持されている。直動変換機構70は、電気モータ50から伝達された回転運動を直線運動に変換してピストン82に伝達する。直動変換機構70は、例えば、ボールねじ機構又は送りねじ機構である。こうした直動変換機構70は、電気モータ50の回転に連動して回転する回転部材71と、回転部材71の回転方向に応じた方向に直動する直動部材72とを有している。本実施形態では、回転部材71としてナットが採用されており、ナットの内側に配置されているねじが直動部材72として採用されている。回転部材71が「直動変換機構の回転部」に対応し、直動部材72が「直動変換機構の直動部」に対応する。
【0019】
直動部材72は、直動変換機構70の軸線70aに沿う方向に進退移動可能である。本実施形態では、軸線70aに沿う方向のうち、一方が前進方向Z1であり、他方が後退方向Z2である。直動部材72が前進方向Z1に移動すると、直動部材72がピストン82を前進方向Z1に押すため、スプリング84の付勢力に抗してピストン82が前進方向Z1に直動する。一方、直動部材72が後退方向Z2に移動すると、直動部材72がピストン82を後退方向Z2に引き、さらにスプリング84の付勢力及び液圧室83の液圧によって助勢されて後退方向Z2にピストン82が直動する。
【0020】
<電気モータ>
電気モータ50は、モータハウジング51と、ステータ52と、ロータ53と、出力軸54とを備えている。モータハウジング51は台座部材40に固定されている。ステータ52及びロータ53は、モータハウジング51内に収容されている。出力軸54は、モータハウジング51内から外部に突出している。すなわち、出力軸54の先端部541は台座部材40の台座内収容室41内に位置している。
【0021】
なお、モータハウジング51は、直動変換機構70の軸線70aに沿う方向において、台座部材40を挟んで本体ケース20の反対側に配置されている。すなわち、モータハウジング51は、直動変換機構70よりも後退方向Z2に位置している。直動変換機構70の後退方向Z2の端(図中左端)を第1端とし、直動変換機構70の前進方向Z1の端(図中右端)を第2端とする。このとき、出力軸54の先端部541は、直動変換機構70の第1端よりも前進方向Z1であって第2端よりも後退方向Z2に位置している。
【0022】
言い換えると、直動変換機構70の径方向に延びる仮想直線S1と直交する仮想平面HBに対し、直動変換機構70及び電気モータ50を仮想直線S1の延伸方向に投影したとする。このとき、仮想平面HBでは、電気モータ50のモータハウジング51の像は直動変換機構70の像に重ならない。その一方で、仮想平面HBでは、電気モータ50の出力軸54の像は直動変換機構70の像に重なる。
【0023】
直動変換機構70の軸線70aを中心に上記仮想直線S1を360°回転させると、仮想平面HBは軸線70aを中心に360°回転する。この場合、何れの周方向位置に仮想直線S1が位置する場合であっても、モータハウジング51の像は直動変換機構70の像に重ならない。したがって、直動変換機構70を直動変換機構70の径方向に投影した像の外にモータハウジング51が配置されているといえる。
【0024】
また、
図1に示すように、電気モータ50は直動変換機構70と同軸に配置されていない。言い換えると、出力軸54の軸線である電気モータ50の軸線50aと、回転部の軸線である直動変換機構70の軸線70aとがずれた位置に、電気モータ50と直動変換機構70とが配置されている。本実施形態では、出力軸54は、直動変換機構70の軸線70aと平行であるとともに、直動変換機構70の径方向において直動変換機構70よりも外側に位置している。
【0025】
ここで、直動変換機構70の軸線70aと直交する仮想平面HAに対し、後退方向Z2を指す白抜き矢印A1に電気モータ50及び直動変換機構70を投影したとする。
図2には、仮想平面HAに投影した電気モータ50の像であるモータ像P50と、直動変換機構70の像である機構像P70とが模式的に示されている。
図2に示すように、仮想平面HAではモータ像P50の一部が機構像P70に重なる。
【0026】
なお、モータハウジング51の半径をモータ半径L50とし、直動変換機構70の半径を機構半径L70とする。仮想平面HA上における、電気モータ50の軸線50aから直動変換機構70の軸線70aまでの直線距離を軸間距離L1とする。このとき、軸間距離L1はモータ半径L50と機構半径L70との和よりも短い。
【0027】
後退方向Z2は出力軸54の延伸方向の1つであるため、後退方向Z2は出力軸54の方向であると云える。そのため、
図2には、電気モータ50を直動変換機構70に対して出力軸54の方向に投影した場合の電気モータ50の像がモータ像P50として図示されていることになる。つまり、本実施形態では、電気モータ50を投影した像の一部と直動変換機構70が重なるように電気モータ50が配置されている。
【0028】
<運動伝達機構>
図1に示すように、運動伝達機構60は、台座内収容室41内に配置されている。運動伝達機構60は、電気モータ50の回転運動を直動変換機構70に伝達する。具体的には、運動伝達機構60は、電気モータ50の回転運動を減速して直動変換機構70に伝達する。運動伝達機構60は、駆動ギヤ61と第1従動ギヤ62とを有している。本実施形態では、第1従動ギヤ62は駆動ギヤ61と噛み合っている。そのため、第1従動ギヤ62は、駆動ギヤ61の回転に応じて回転する。
【0029】
駆動ギヤ61は、電気モータ50の出力軸54の先端部541に設けられている。第1従動ギヤ62は直動変換機構70に連結されている。すなわち、第1従動ギヤ62は、直動変換機構70の回転部材71に固定されている。具体的には、第1従動ギヤ62は、回転部材71と同軸配置されており、回転部材71の径方向外側に配置されている。これにより、電気モータ50の回転運動が、駆動ギヤ61及び第1従動ギヤ62を介して直動変換機構70に伝達される。
【0030】
本実施形態では、上述したように電気モータ50の出力軸54は直動変換機構70の軸線70aと平行である。そのため、駆動ギヤ61及び第1従動ギヤ62として平歯ギヤが採用されている。
【0031】
また、運動伝達機構60は第2従動ギヤ63と回転軸64とを有している。本実施形態では、第2従動ギヤ63は駆動ギヤ61と噛み合っている。そのため、第2従動ギヤ63は駆動ギヤ61の回転に応じて回転する。
【0032】
回転軸64は第2従動ギヤ63と一体回転する。本実施形態では、回転軸64は、第2従動ギヤ63と同軸配置されている。そのため、回転軸64は、電気モータ50の出力軸54と平行である。回転軸64は、本体ケース20の回転軸用貫通孔24を挿通して第1収容室31まで延びている。回転軸64は、複数の軸受66を介して本体ケース20に回転自在な状態で支持されている。そして、回転軸64のうち、第1収容室31に位置する部分に磁石11が取り付けられている。
【0033】
なお、第1収容室31内には磁石11が設けられており、区画壁を挟んだ磁石11の反対側に回転角センサ13が配置されている。そのため、回転角センサ13は回転軸64の回転角及び回転速度を検出する。すなわち、回転角センサ13は、回転軸64の回転に応じた信号を制御基板12に出力する。
【0034】
<本実施形態における作用及び効果>
電動シリンダ装置10では、
図1に示したように電気モータ50が直動変換機構70と同軸に配置されていない。すなわち、電気モータ50の軸線50aと直動変換機構70の軸線70aとがずれた態様で、電気モータ50及び直動変換機構70が配置されている。そのため、運動伝達機構60として、遊星歯車機構以外の機構、すなわち複数の平歯ギヤを有する機構を採用できる。
【0035】
また、電気モータ50のモータハウジング51は、直動変換機構70よりも後退方向Z2に配置されている。すなわち、直動変換機構70の径方向で直動変換機構70に隣り合う位置にモータハウジング51が配置されていない。そのため、径方向で直動変換機構70に隣り合う位置に様々な構造物を配置することができる。
【0036】
したがって、本実施形態によれば、電動シリンダ装置10における設計の自由度を高くできる。
電動シリンダ装置10では、モータハウジング51は直動変換機構70よりも後退方向Z2に配置されているものの、出力軸54は、直動変換機構70の軸線70aに沿う方向における第1端と第2端との間に配置されている。これにより、軸線70aに沿う方向における電動シリンダ装置10の大型化を抑制しつつ、電動シリンダ装置10の設計の自由度を高くできる。
【0037】
電動シリンダ装置10では、電気モータ50の出力軸54は直動変換機構70の軸線70aと平行であるため、運動伝達機構60の駆動ギヤ61及び第1従動ギヤ62として平歯ギヤを採用している。そして、直動変換機構70の軸線70aに沿う方向において直動変換機構70の第1端と第2端との間に駆動ギヤ61及び第1従動ギヤ62が配置されている。これにより、軸線70aに沿う方向における電動シリンダ装置10の大型化を抑制できる。
【0038】
ここで、直動変換機構70から離れた位置に電気モータ50が配置される場合を考える。この場合、電気モータ50の出力軸54に設けられる駆動ギヤと、直動変換機構70に設けられる第1従動ギヤとの双方に噛み合う中継ギヤを運動伝達機構に設けないと、電気モータ50の回転運動を直動変換機構70に伝達できなくなるおそれがある。
【0039】
この点、電動シリンダ装置10では、
図2に示したように仮想平面HAでモータ像P50の一部が機構像P70と重なるように、電気モータ50が配置されている。すなわち、直動変換機構70の比較的近くに電気モータ50が配置されている。そのため、駆動ギヤ61に第1従動ギヤ62を噛み合わせることができるため、中継ギヤを設けなくてもよい。したがって、運動伝達機構60の部品点数の増大を抑制できる。
【0040】
回転角センサを内蔵した電気モータの場合、回転角センサを内蔵してない電気モータの場合と比較し、軸線50aに沿う方向における電気モータの寸法が大きくなる。電動シリンダ装置10では、回転角センサ13の検出値に基づいて電気モータ50の回転角及び回転速度を検出できる。そのため、電気モータ50として、モータハウジング51内に回転角センサが内蔵されたものを採用しなくてもよくなる。したがって、直動変換機構70の軸線70aに沿う方向における電動シリンダ装置10の大型化を抑制できる。
【0041】
なお、電動シリンダ装置10では、駆動ギヤ61と噛み合う第2従動ギヤ63を設けることにより、電気モータ50の動力伝達経路を2つに分岐している。そして、直動変換機構70に伝える経路とは別の経路に配置されている回転軸64の回転を回転角センサ13で検出している。このように直動変換機構70に回転運動を伝える経路とは別の経路を設けることにより、電動シリンダ装置10内における磁石11及び回転角センサ13の配置の自由度を高くできる。例えば
図1に示したように、制御基板12に設けられた回転角センサ13の近くに磁石11を配置できる。
【0042】
電動シリンダ装置10では、制御基板12の近くにはスペースに比較的余裕がある。そのため、電動シリンダ装置10では回転角センサ13として磁気センサを採用できる。その結果、回転角センサ13としてホールセンサを採用する場合と比較し、回転角や回転速度の検出精度を高くできる。
【0043】
(第2実施形態)
電動シリンダ装置の第2実施形態を
図3に従って説明する。以下の説明においては、第1実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0044】
図3は、電動シリンダ装置10Aを備える車両の電動制動装置100を図示している。電動シリンダ装置10Aは、基板収容ケース30と本体ケース20Aと台座部材40Aとモータハウジング51とを備えている。モータハウジング51は、ステータ52及びロータ53を収容するハウジング本体511と、鍔部515とを有している。ハウジング本体511は、円筒部512と、円筒部512の後退方向Z2の開口を閉塞する蓋部513とを有している。鍔部515は、円筒部512の前進方向Z1の端から、出力軸54を中心とする径方向における外側に延出している。そして、鍔部515が、台座部材40Aに締結されている。これにより、モータハウジング51が台座部材40Aに取り付けられる。
【0045】
台座部材40Aは、本体ケース20Aとモータハウジング51との間に配置されている。すなわち、台座部材40Aは、本体ケース20Aとモータハウジング51に挟まれた態様で本体ケース20Aに取り付けられている。そして、台座部材40Aの台座内収容室41に運動伝達機構60が収容されている。台座部材40Aの外側面401は、電気モータ50の出力軸54を中心とする径方向においてロータ53よりも外側に位置している。より詳しくは、台座部材40Aの外側面401は、出力軸54を中心とする径方向において、モータハウジング51の円筒部512の外周面よりも外側に位置している。
【0046】
電気モータ50は、電力ピン56を備えている。電力ピン56は、ステータ52に巻き付けられているコイルに電気的に接続されている。電力ピン56は、モータハウジング51内から前進方向Z1に突出している。すなわち、電力ピン56の先端は、台座内収容室41内に位置している。
【0047】
台座内収容室41には、中継回路基板14が設けられている。中継回路基板14は、運動伝達機構60と台座部材40Aの周壁との間に配置されている。中継回路基板14の一部分は、上記出力軸54を中心とする径方向においてハウジング本体511よりも外側に位置している。中継回路基板14のうち、上記出力軸54を中心とする径方向においてステータ52よりも外側に位置する部分を外側部分とする。このとき、外側部分には、制御基板12に電気的に接続されている信号線15が電気的に接続されている。すなわち、台座内収容室41内では、出力軸54を中心とする径方向において信号線15はステータ52よりも外側に位置している。詳しくは、信号線15は、出力軸54を中心とする径方向において、ハウジング本体511よりも外側に位置している。
【0048】
なお、中継回路基板14の端子に、電気モータ50の電力ピン56が電気的に接続されている。そして、中継回路基板14において、電力ピン56と信号線15とが電気的に接続されている。信号線15は、台座部材40A内及び本体ケース20A内を通っている。そして、信号線15の第1端は制御基板12に電気的に接続されている一方、信号線15の第2端は中継回路基板14に電気的に接続されている。そのため、制御基板12から信号線15を介して電気モータ50に電力を供給できる。
【0049】
<本実施形態における作用及び効果>
本実施形態では、上記第1実施形態と同等の作用及び効果に加え、以下の効果をさらに得ることができる。
【0050】
台座内収容室41内において、電気モータ50と制御基板12とを電気的に繋ぐ信号ラインを、出力軸54を中心とする径方向においてステータ52よりも外側に配置できる。これにより、電気モータ50として、上記径方向の寸法の大きい電気モータを採用しなくてもよい。したがって、電動シリンダ装置10Aが大型化することを抑制できる。
【0051】
(第3実施形態)
電動シリンダ装置の第3実施形態を
図4に従って説明する。以下の説明においては、第1実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0052】
図4は、電動シリンダ装置10Bを備える車両の電動制動装置100を図示している。電動シリンダ装置10Bは、基板収容ケース30Bと本体ケース20Bと台座部材40Bとモータハウジング51とを備えている。モータハウジング51は、ステータ52及びロータ53を収容するハウジング本体511と、鍔部515とを有している。鍔部515が、台座部材40Bに締結されている。
【0053】
本体ケース20Bには、本体ケース20Bを貫通するシリンダ貫通孔23及び回転軸用貫通孔24Bが形成されている。本実施形態では、回転軸用貫通孔24Bは、出力軸54を中心とする径方向において、電気モータ50のステータ52よりも外側に位置している。詳しくは、回転軸用貫通孔24Bは、出力軸54を中心とする径方向においてハウジング本体511よりも外側に位置している。
【0054】
基板収容ケース30Bには、回転軸用貫通孔24B内と連通する第1収容室31Bと、第1収容室31Bとは区分けされている第2収容室32とが形成されている。第1収容室31Bには、回転角検出部としての磁石11が配置されている。第2収容室32に制御基板12が配置されている。
【0055】
台座部材40Bは、本体ケース20Bとモータハウジング51との間に配置されている。すなわち、台座部材40Bは、本体ケース20Bとモータハウジング51とに挟まれた態様で本体ケース20Bに取り付けられている。そして、台座部材40Bの台座内収容室41に運動伝達機構60が収容されている。台座部材40Bの外側面401は、電気モータ50の出力軸54を中心とする径方向においてロータ53よりも外側に位置している。より詳しくは、台座部材40Bの外側面401は、出力軸54を中心とする径方向において、モータハウジング51の円筒部512の外周面よりも外側に位置している。
【0056】
電動シリンダ装置10Bは、台座内収容室41内に配置されている第1中継ギヤ91及び第2中継ギヤ95と、回転軸64とを備えている。
第1中継ギヤ91は出力軸54に取り付けられている。また、第1中継ギヤ91は、出力軸54と同軸に配置されている。そのため、第1中継ギヤ91は、出力軸54及び駆動ギヤ61と一体に回転する。第1中継ギヤ91は、円板部92と、円板部92に固定されているリング状のギヤ部93とを有している。円板部の中央には、出力軸54が嵌合されている貫通孔が形成されている。そして、ギヤ部93よりも内側に、運動伝達機構60が配置されている。なお、ギヤ部93は外歯歯車である。
【0057】
第2中継ギヤ95は、出力軸54を中心とする径方向においてハウジング本体511よりも外側に配置されている。そして、第2中継ギヤ95はギヤ部93と噛み合っている。そのため、出力軸54が回転すると、第1中継ギヤ91及び駆動ギヤ61と同期して第2中継ギヤ95が回転する。
【0058】
回転軸64は第2中継ギヤ95と一体に回転する。本実施形態では、回転軸64は、第2中継ギヤ95と同軸配置されている。そのため、回転軸64は、台座部材40Bの内部で電気モータ50の出力軸54に動力伝達可能な状態で連結されている。さらに、回転軸64は出力軸54と平行である。すなわち、回転軸64は、出力軸54の軸線、すなわち電気モータ50の軸線50aに沿う方向に延びている。回転軸64は、本体ケース20Bの回転軸用貫通孔24Bを挿通して第1収容室31Bまで延びている。回転軸64は、複数の軸受66を介して本体ケース20Bに回転自在な状態で支持されている。そして、回転軸64のうち、第1収容室31Bに位置する部分に磁石11が取り付けられている。すなわち、回転軸64の両端部のうち、台座内収容室41内に位置する第1端部641に第2中継ギヤ95が取り付けられており、第1収容室31B内に位置する第2端部642に磁石11が取り付けられている。第2端部642は、台座部材40Bの本体ケース20B側の外側に配置されているといえる。
【0059】
<本実施形態における作用及び効果>
本実施形態では、上記第1実施形態と同等の作用及び効果に加え、以下の効果をさらに得ることができる。
【0060】
台座内収容室41内に第1中継ギヤ91を配置することによって、電気モータ50の動力伝達経路を2つに分岐している。そして、直動変換機構70に伝える経路とは別の経路に配置されている回転軸64の回転を回転角センサ13で検出している。これにより、電気モータ50として回転角センサを内蔵した電気モータを採用しなくてもよくなる。
【0061】
(変更例)
上記複数の実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記複数の実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・第1実施形態において、
図5に示すように、第2従動ギヤ63を、駆動ギヤ61ではなく第1従動ギヤ62と噛み合わせることができるように配置してもよい。
・回転角センサを、第2従動ギヤ63の回転角及び回転速度を検出できるように配置してもよい。この場合、回転軸64を省略できる。
【0063】
・回転角センサ13は、回転角及び回転速度を検出できるのであれば、磁気センサ以外のセンサを採用してもよい。例えば、ホールセンサを回転角センサ13として採用してもよい。
【0064】
・第1実施形態及び第2実施形態において、電気モータ50として、回転角センサを内蔵したものを採用してもよい。この場合、回転角センサ13を設けなくてもよいため、運動伝達機構60は第2従動ギヤ63及び回転軸64を省略できる。
【0065】
・仮想平面HA上でモータ像P50の一部が機構像P70と重なるように電気モータ50が配置されているのであれば、軸間距離L1はモータ半径L50と機構半径L70との何れよりも短くてもよい。
【0066】
・電気モータ50が直動変換機構70と同軸に配置されていないのであれば、仮想平面HA上でモータ像P50が機構像P70と重ならないように電気モータ50を配置してもよい。この場合、直動変換機構70から比較的離れて電気モータ50が配置されることになる。そのため、運動伝達機構は、駆動ギヤ61と第1従動ギヤ62との間の動力伝達経路に、少なくとも1つの中継ギヤを配置した構成であってもよい。
【0067】
・上記実施形態では、出力軸54が直動変換機構70の軸線70aと平行となるように電気モータ50が配置されているが、これに限らない。例えば、出力軸54が直動変換機構70の軸線70aとほぼ平行であれば、出力軸54が軸線70aに対して傾斜していてもよい。
【0068】
・モータハウジング51に加えて出力軸54も直動変換機構70よりも後退方向Z2に位置するように、電気モータ50を配置してもよい。
・電動シリンダ装置は、例えば
図6に示すように出力軸54が直動変換機構70の軸線70aと直交するように、又は出力軸54が直動変換機構70の軸線70aとほぼ直交するように、電気モータ50が配置された構成であってもよい。これらのような構成の場合、直動変換機構70よりも後退方向Z2に電気モータ50を配置できる。
【0069】
・運動伝達機構60は、互いに噛み合う複数のギヤを有する構成であれば、当該複数のギヤのうち少なくとも1つは平歯ギヤでなくてもよい。駆動ギヤ61及び第1従動ギヤ62として、例えば
図6に示すようにかさ歯ギヤを採用してもよいし、はす歯ギヤを採用してもよい。
【0070】
・運動伝達機構は、電気モータ50の回転運動を直動変換機構70に伝達できるのであれば、ベルトやチェーンを用いて動力伝達を行うものであってもよい。
・シリンダ機構80はスプリング84を省略した構成でもよい。
【0071】
・本体ケース20,20A,20Bは、基板収容ケース30,30Bが取り付けられる第1本体側面21と、台座部材40,40A,40Bが取り付けられる第2本体側面22とを有するのであれば、直方体以外の他の形状であってもよい。
【0072】
・直動変換機構70を直動変換機構70の径方向に投影した像の外にモータハウジング51を配置できるのであれば、
図1に示した位置とは異なる位置にモータハウジング51が配置されてもよい。例えば、直動変換機構70よりも前進方向Z1にモータハウジング51が配置されてもよい。
【0073】
・第2実施形態及び第3実施形態において、運動伝達機構として遊星歯車機構を採用してもよい。
・電動シリンダ装置を、ホイールシリンダ110とは別のものを液体の供給対象とする装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10,10A,10B…電動シリンダ装置
11…磁石(回転角検出部の一例)
12…制御基板
14…中継回路基板
15…信号線
20,20A,20B…本体ケース
40,40A,40B…台座部材
401…外側面
50…電気モータ
50a…軸線
51…モータハウジング
511…ハウジング本体
515…鍔部
52…ステータ
53…ロータ
54…出力軸
56…電力ピン
60…運動伝達機構
61…駆動ギヤ
62…第1従動ギヤ
63…第2従動ギヤ
64…回転軸
641…第1端部
642…第2端部
70…直動変換機構
70a…軸線
71…回転部材(回転部の一例)
72…直動部材(直動部の一例)
80…シリンダ機構
81…シリンダ
82…ピストン
83…液圧室
91…第1中継ギヤ
95…第2中継ギヤ
100…電動制動装置
110…ホイールシリンダ
P50…モータ像
P70…機構像