(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067853
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】剪断試験機を較正するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/24 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G01N3/24
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022173611
(22)【出願日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】202111272241.8
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエムピーティー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケン・ユー・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ズイ・ホン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ミン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】モウ・フアット・ゴー
(72)【発明者】
【氏名】キエン・キア・タン
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA11
2G061AB01
2G061BA20
2G061DA19
2G061EA01
2G061EB02
(57)【要約】
【課題】弾性ピボット機構を用いることで寿命及び信頼性を向上させた改良型の力較正装置を提供すること。
【解決手段】剪断試験機を較正するための装置は、力較正の正確性及び信頼性を向上させるため、弾性ピボット機構を利用する。装置は、固定要素と、固定要素に対して回転可能に構成された枢動要素と、固定要素と枢動要素の間に結合されてピボットを形成する弾性ピボット機構とを備える。枢動要素を回転させてウェイトを持ち上げるために剪断試験機によって枢動要素に力が加えられると、枢動要素はピボットの周りを回転可能であり、枢動要素に結合されたウェイトが持ち上げられる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断試験機を較正するための装置であって、
固定要素と、
前記固定要素に対して回転するように構成されている枢動要素と、
前記枢動要素を回転させることによってウェイトを持ち上げるための弾性ピボット機構であって、前記剪断試験機が前記枢動要素に力を加えた場合に前記枢動要素に結合されたウェイトを持ち上げるために、前記枢動要素がピボットの周りで回転可能とされる前記ピボットを形成する前記弾性ピボット機構と、
を備えている装置。
【請求項2】
前記枢動要素が、前記ピボットに対する水平方向に沿った第1の長さを規定しており、且つ、前記ピボットに対する垂直方向に沿った第2の長さを規定しており、
前記ウェイトが、前記ピボットの遠位側に位置する、前記第1の長さの端部に結合されており、
前記剪断試験機が、前記枢動要素を回転させ前記ウェイトを持ち上げるために、前記ピボットの遠位側に位置する、前記第2の長さの端部に略水平方向の力を加えるように動作する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弾性ピボット機構が、交差バネピボット機構を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記交差バネピボット機構が、開口部を具備する第1の板バネと、前記第1の板バネの前記開口部を通過する大きさとされる第2の板バネとによって形成されており、
前記第1の板バネと前記第2の板バネが、互いに対して所定の角度で配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の板バネと前記第2の板バネとがそれぞれ、前記固定要素に固定された第1の縁部と、前記枢動要素に固定された第2の縁部とを有しており、これにより前記第1の板バネと前記第2の板バネがそれぞれ、前記固定要素と前記枢動要素との両方に偏向可能に接触する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の板バネと前記第2の板バネとが、互いに対して直角に取り付けられている、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記固定要素が、前記固定要素と前記枢動要素との間の境界に沿って互いに反対側に位置する第1の側と第2の側とを有しており、
前記弾性ピボット機構が、前記固定要素の前記第1の側に取り付けられた第1の対の板バネと、前記固定要素の前記第2の側に取り付けられた第2の対の板バネとを備えており、
前記板バネそれぞれが、前記固定要素と前記枢動要素との両方に偏向可能に接触する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の対の板バネの板バネそれぞれが、互いに対して直角に取り付けられており、
前記第2の対の板バネの板バネそれぞれが、互いに対して直角に取り付けられている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、前記ウェイトを前記枢動要素に着脱可能に結合するように構成されている結合装置を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記結合装置が、前記ウェイトを吊り下げるように構成されているフックを備えている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記剪断試験機が、剪断試験棒と、前記剪断試験棒に結合された力センサとを備えており、
前記力センサが、前記枢動要素を回転させて前記ウェイトを持ち上げるために、前記剪断試験棒が前記枢動要素に作用させた力を測定するように動作する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、前記力センサに機能的に接続されたプロセッサを備えており、
前記プロセッサが、前記剪断試験棒が作用させた力によって前記ウェイトが休止位置から持ち上げられた後に、前記力センサによって測定された比較的安定した力を決定するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記剪断試験棒の先端が、テーパ状に形成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
剪断試験機を較正するための方法であって、
固定要素と、前記固定要素に対して回転するように構成されている枢動要素と、前記枢動要素がピボットの周りで回転可能とされる前記ピボットを形成するために、前記固定要素と前記枢動要素との間に結合された弾性ピボット機構と、を備えている較正装置を準備するステップと、
前記枢動要素に結合されたウェイトを持ち上げるために、前記枢動要素が前記ピボットの周りで回転されるように、前記剪断試験機によって前記枢動要素に力を作用させるステップと、
を備えている方法。
【請求項15】
前記枢動要素が、前記ピボットに対する水平方向に沿った第1の長さを規定しており、且つ、前記ピボットに対する垂直方向に沿った第2の長さを規定しており、
前記方法が、前記ピボットの遠位側に位置する、前記第1の長さの端部に前記ウェイトを結合するステップを備えており、
前記枢動要素に力を作用させる前記ステップが、前記枢動要素を回転させて前記ウェイトを持ち上げるために、前記剪断試験機によって、前記ピボットの遠位側に位置する、前記第2の長さの端部に略水平方向の力を作用させることを備えている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記弾性ピボット機構が、交差バネピボット機構を備えている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記交差バネピボット機構が、開口部を具備する第1の板バネと、前記第1の板バネの前記開口部を通過する大きさとされる第2の板バネとによって形成されており、
前記第1の板バネと前記第2の板バネが、互いに対して所定の角度で配置されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記固定要素が、前記固定要素と前記枢動要素との間の境界に沿って互いに反対側に位置する第1の側と第2の側を有しており、
前記弾性ピボット機構が、前記固定要素の前記第1の側に取り付けられた第1の対の板バネと、前記固定要素の前記第2の側に取り付けられた第2の対の板バネとを備えており、
前記板バネそれぞれが、前記固定要素と前記枢動要素との両方に偏向可能に接触する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記剪断試験機が、剪断試験棒と、前記剪断試験棒に結合された力センサとを備えており、
前記方法が、
前記枢動要素に力を作用させるために前記剪断試験棒を移動させるステップと、
前記枢動要素を回転させて前記ウェイトを持ち上げるために、前記力センサによって、前記剪断試験棒が前記枢動要素に作用させた力を測定するステップと、
を備えている、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記剪断試験棒が作用させた力によって前記ウェイトが休止位置から持ち上げられた後に、プロセッサ又は演算システムによって、前記力センサによって測定された比較的安定した力を決定するステップを備えている、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、電子デバイスに形成されたワイヤボンドや、ダイと基板の間に形成されたダイボンドのように電子デバイスに形成された相互接続のボンドに対して行われる剪断試験に関し、より詳細には、その結合部のための剪断試験機の較正に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の組立てやパッケージングでは、相互接続のボンドの接合強度やダイと基板の間の接着度合を決定するために剪断試験が行われることがある。電子デバイスではこうした相互接続のボンドの機械的強度について試験を行ってこれらの接合の質を正確に評価し、接合強度が十分かどうか、及び/又は接合パラメータの変更が必要かどうかを決定することが重要である。
【0003】
剪断試験機を用いて接合強度を正確に測定するためには、剪断試験機の較正を定期的に行って、試験の結果、何らかの変化や所定の許容差からの逸脱が明らかになったときには、剪断試験機に対して補正及び/又は是正措置を講じることができるようにする必要がある。従来技術の剪断試験機用の力較正器具では、較正を行うために固定要素と枢動要素の間のピボットを形成するのにベアリングピボットを使用するのが典型的である。そのような力較正の際には、機械的な軸受における軸受摩擦によって軸受の損耗や割れを生じることがあり、それによって軸受の寿命の短縮や力較正の信頼性の低下を招くことになる。さらに、従来型の力較正器具を用いて決定された較正結果は正確でない可能性がある。それは、軸受摩擦は一定でなく、較正プロセスの中で異なるウェイトが使用されることによって変わってくる可能性があるためである。また、軸受の構成要素は、鉄が含まれる場合、時間の経過とともに錆や腐食を生じる可能性がある。摩擦や発錆を減らすために潤滑剤を使用することはできるが、その場合には保守の労力や費用がかさむことになる。
【0004】
そのため、従来型の力較正器具が抱える上述の欠点の少なくとも一部を回避することができる剪断試験機のための新しい力較正器具を設計するのは利益のあることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的の1つは、弾性ピボット機構を用いることで力較正装置の寿命及び信頼性を向上させた改良型の力較正装置の提供を目指すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、剪断試験機を較正するための装置が用意される。装置は、固定要素と、その固定要素に対して回転可能に構成された枢動要素と、固定要素と枢動要素の間に結合された弾性ピボット機構であって、枢動要素を回転させて枢動要素に結合されたウェイトを持ち上げるために剪断試験機によって枢動要素に力が加えられると、枢動要素がそのピボットの周りで回転可能であり、ウェイトが持ち上げられるようにされたピボットを形成する弾性ピボット機構とを備える。
【0007】
剪断試験機を較正するための装置では、従来技術の力較正器具で使用されているベアリングピボットに代えて弾性ピボット機構が使用される。そのため、弾性ピボット機構と力較正器具のそれ以外の構成要素との間に摩擦を生じることがない。従って、従来技術の力較正器具における軸受摩擦によって生じる問題はそれによって回避することができる。力較正器具の寿命及び信頼性は著しく向上し、経時的に使用しても較正結果はより正確なものとなる。さらに、摩擦や発錆を減らすための潤滑剤の必要はなく、従って保守の労力や費用も減らすことができる。
【0008】
幾つかの実施形態では、枢動要素は、ピボットに対して水平方向に沿って第1の長さを規定し、ピボットに対して垂直方向に沿って第2の長さを規定することができ、ウェイトは第1の長さのピボットから遠位側の端部に結合され、剪断試験機は第2の長さのピボットから遠位側の端部にほぼ水平の力を加えるように動作して枢動要素を回転させ、ウェイトを持ち上げる。
【0009】
1つの実施形態では、弾性ピボット機構は交差バネピボット機構を備える。交差バネピボット機構は、開口部を有する第1の板バネと、第1の板バネの開口部を通る大きさの第2の板バネとによって形成され得、第1の板バネと第2の板バネは互いに対して所定の角度で配置されている。第1の板バネと第2の板バネは、固定要素に固定された第1の縁部と、枢動要素に固定された第2の縁部とをそれぞれが有しており、それによって第1の板バネと第2の板バネはそれぞれ固定要素と枢動要素の双方に偏向可能に接触する。好ましくは、第1の板バネと第2の板バネは互いに対して直交して取り付けられる。
【0010】
別の実施形態では、弾性ピボット機構は、第1の対の板バネと第2の対の板バネとを備える。固定要素は、固定要素と枢動要素の間の境界に沿って互いに反対側に位置する第1の側と第2の側を有する。第1の対の板バネは固定要素の第1の側に取り付けられ、第2の対の板バネは固定要素の第2の側に取り付けられる。板バネの各々は、固定要素と枢動要素の双方に偏向可能に接触する。好ましくは、第1の対の板バネのそれぞれの板バネは互いに対して直交して取り付けられ、第2の対の板バネのそれぞれの板バネは互いに対して直交して取り付けられる。
【0011】
幾つかの実施形態では、装置は、枢動要素に対してウェイトを着脱可能に結合するように構成された結合装置をさらに備えることができる。1つの実施形態では、結合装置は、ウェイトをそこに吊り下げるように構成されたフックを備えることができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、剪断試験機は、剪断試験棒と、その剪断試験棒に結合された力センサとを備えることができる。力センサは、枢動要素を回転させてウェイトを持ち上げるために剪断試験棒によって枢動要素に加えられた力を測定するように動作する。1つの実施形態では、剪断試験棒はテーパ形の先端を有することができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、装置は力センサに動作的に接続されたプロセッサをさらに備えることができる。プロセッサは、剪断試験棒によって加えられた力によってウェイトが休止位置から持ち上げられた後に力センサで測定された比較的安定した力を決定するように構成される。
【0014】
本発明の第2の態様では、剪断試験機を較正するための方法が提供される。その方法は、固定要素と、その固定要素に対して回転可能に構成された枢動要素と、固定要素と枢動要素の間に結合された弾性ピボット機構であって、枢動要素が周りで回転可能であるようにピボットを形成する弾性ピボット機構とを備える較正装置を用意するステップ、及び枢動要素をピボットの周りで回転させて枢動要素に結合されたウェイトを持ち上げるように剪断試験機によって枢動要素に力を加えるステップを含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、枢動要素は、ピボットに対して水平方向に沿って第1の長さを規定し、ピボットに対して垂直方向に沿って第2の長さを規定する。そこで、方法は、第1の長さのピボットから遠位側の端部にウェイトを結合するステップをさらに含み、枢動要素に力を加えるステップは、第2の長さのピボットから遠位側の端部にほぼ水平な力を剪断試験機によって加えて、枢動要素を回転させ、ウェイトを持ち上げるステップを含む。
【0016】
1つの実施形態では、弾性ピボット機構は交差バネピボット機構を備える。交差バネピボット機構は、開口部を有する第1の板バネと、第1の板バネの開口部を通る大きさの第2の板バネとによって形成され得、第1の板バネと第2の板バネは互いに対して所定の角度で配置されている。好ましくは、第1の板バネと第2の板バネは互いに対して直交して取り付けられる。
【0017】
別の実施形態では、弾性ピボット機構は、第1の対の板バネと第2の対の板バネとを備える。固定要素は、固定要素と枢動要素の間の境界に沿って互いに反対側に位置する第1の側と第2の側を有する。第1の対の板バネは固定要素の第1の側に取り付けられ、第2の対の板バネは固定要素の第2の側に取り付けられる。板バネの各々は、固定要素と枢動要素の双方に偏向可能に接触する。好ましくは、第1の対の板バネのそれぞれの板バネは互いに対して直交して取り付けられ、第2の対の板バネのそれぞれの板バネは互いに対して直交して取り付けられる。
【0018】
幾つかの実施形態では、剪断試験機は、剪断試験棒と、その剪断試験棒に結合された力センサとを備えることができる。方法は、枢動要素に力を加えるために剪断試験棒を移動させるステップと、枢動要素を回転させてウェイトを持ち上げるために剪断試験棒によって枢動要素に加えられた力を力センサで測定するステップとをさらに含む。
【0019】
幾つかの実施形態では、方法は、剪断試験棒によって枢動要素に加えられた力によってウェイトが休止位置から持ち上げられた後に力センサで測定された比較的安定した力をプロセッサ又はコンピュータシステムによって決定するステップをさらに含むことができる。
【0020】
以上のような特徴やその他の特徴、態様及び利点については、明細書、請求項及び添付の図面と照らし合わせることでよりよく理解されるはずである。
【0021】
本発明の実施形態については、添付の図面を参照して、一例としてのみ以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の幾つかの実施形態による剪断試験機を較正するための装置の断面図である。
【
図1B】
図1Aに示した装置の断面図であって、装置の固定要素と枢動要素が分離された状態にある図である。
【
図2A】本発明の第1の実施形態による弾性ピボット機構を示した正面図である。
【
図2B】本発明の第1の実施形態による弾性ピボット機構を示した等角図である。
【
図2C】本発明の第1の実施形態による剪断試験機を較正するための装置の斜視図である。
【
図3A】本発明の第2の実施形態による2つの対の板バネを備える弾性ピボット機構の図である。
【
図3B】本発明の第2の実施形態による剪断試験機を較正するための装置の斜視図である。
【
図3C】本発明の第2の実施形態による剪断試験機を較正するための装置の正面図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態による、剪断試験機の較正に使用されているときの剪断試験機を較正するための装置の断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態による剪断試験機を較正するための装置を用いた剪断試験機の較正結果を示した折れ線グラフである。
【
図6】本発明の1つの実施形態による剪断試験機を較正するための方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
各図面の間で同様の部品に対しては同様の符号が与えられている。
【0024】
図1Aは、本発明の幾つかの実施形態による剪断試験機を較正するための装置100の断面図である。
図1Aに示すように、装置100は固定要素111と、枢動要素112と、弾性ピボット機構113とを備える。枢動要素112は固定要素111に対して回転可能に構成されている。
図1Bは、装置の固定要素111と枢動要素112が分離された状態にある装置100の断面図である。弾性ピボット機構113は、固定要素111と枢動要素112の間に結合され、枢動要素112を回転させて枢動要素112に結合されたウェイトを持ち上げるために剪断試験機によって枢動要素112に水平方向の力が加えられると、枢動要素112がピボットの周りで回転可能でありウェイトが持ち上げられるようにされたピボットを形成する。
【0025】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、本発明の第1の実施形態による弾性ピボット機構113の正面図及び等角図を示している。
図2Cは、本発明の第1の実施形態による装置100の斜視図である。この実施形態では、弾性ピボット機構113は、開口部を有する第1の板バネ113aと、第1の板バネ113aの開口部を通る大きさの第2の板バネ113bとによって形成された交差バネピボット機構を備えている。第1の板バネ113aと第2の板バネ113bが固定要素111と枢動要素112の間に設置されるとき、第1の板バネ113aと第2の板バネ113bは、
図2Cに示すように、互いに対して直交して取り付けられる。
【0026】
この実施形態では、第1の板バネ113aは、4組のボルトとナットを含む第1の結合手段によって固定要素111と枢動要素112の間に結合され、第2の板バネ113bは、2組のボルトとナットを含む第2の結合手段によって固定要素111と枢動要素112の間に結合される。
図2A~
図2Cを参照すると、第1の板バネ113aは、固定要素111に固定された第1の縁部113a-1と、枢動要素112に固定された第2の縁部113a-2とを有しており、それによって第1の板バネ113aは固定要素111と枢動要素112の双方に偏向可能に接触する。同様に、第2の板バネ113bは、固定要素111に固定された第1の縁部113b-1と、枢動要素112に固定された第2の縁部113b-2とを有しており、それによって第2の板バネ113bは固定要素111と枢動要素112の双方に偏向可能に接触する。この実施形態における第1の結合手段及び/又は第2の結合手段は説明のためにのみ提供されているものであることに留意されたい。他の実施形態では、第1の板バネ113a及び第2の板バネ113bは異なる結合手段を用いて固定要素111と枢動要素112の間に設置することができる。
【0027】
この実施形態における交差バネピボット機構の構成要素及び構造は例示としてのみ提供されたものであることを理解されたい。交差バネピボット機構は異なる構造及び構成要素を有することが可能であり、例えば、交差バネピボット機構は、2つの板バネが単体で、互いに対して直交して構成された一体として形成された構成要素であることができる。
【0028】
本発明の第2の実施形態では、弾性ピボット機構113は、第1の対の板バネ113Aと第2の対の板バネ113Bとを備えている。
図3Aは、本発明の第2の実施形態による2つの対の板バネ113A及び113Bを示している。それぞれの対の板バネは、固定要素111と枢動要素112の間に互いに対して直交して設置された2つの板バネを含む。
図3Aに示すように、第1の対の板バネ113Aは第1の板バネ113A-1と第2の板バネ113A-2を含み、第2の対の板バネ113Bは第1の板バネ113B-1と第2の板バネ113B-2を含む。
図3B及び
図3Cは、本発明の第2の実施形態による装置100のそれぞれ斜視図と正面図を示している。
図3B及び
図3Cに示すように、固定要素111は互いに反対側の第1の側111aと第2の側111bを、固定要素111と枢動要素112の間の境界に沿った位置に有する。第1の対の板バネ113Aは固定要素111の第1の側111aに取り付けられ、第2の対の板バネ113Bは固定要素111の第2の側111bに取り付けられる。各々の板バネは、固定要素111と枢動要素112の双方に偏向可能に接触する。2つの板バネ113A-1及び113A-2は互いに対して直交して取り付けられ、2つの板バネ113B-1及び113B-2は互いに対して直交して取り付けられる。
【0029】
図4は、本発明の1つの実施形態に従って剪断試験機115の較正に使用されているときの装置100の断面図である。使用時には、所定の重量値、例えば定重量又は死荷重のウェイト114が結合装置によって枢動要素112に結合される。この実施形態では、結合装置は、ウェイト114をそこに吊り下げるように構成されたフック116を備える。本発明の他の実施形態では、ウェイト114によって枢動要素112に既知の垂直方向の力F1が加えられる限りにおいて、ウェイト114は任意の手段を用いることによって枢動要素112に結合されもよいことに留意されたい。例えば、ウェイト114は、枢動要素112の底部/頂部表面に任意の追加的な結合装置を伴って、又は伴うことなく直接取り付けることができる。
【0030】
剪断試験機115は、剪断試験棒115aと、剪断試験棒115aに結合された力センサ115bとを含む。剪断試験機115は、剪断試験棒115aが枢動要素112と接触することによって枢動要素112に対して力を及ぼし、枢動要素112を回転させ、ウェイト114を持ち上げるように移動する。力センサ115bは、ウェイト114を持ち上げるために剪断試験棒115aが枢動要素112を回転させているときに枢動要素112によって剪断試験棒115aに対して加えられる反力を測定するように動作する。剪断試験棒115aは、剪断試験棒115aと相互接続のボンドが形成される又は位置する表面との間の接触が最小限となるようにテーパ形の先端を有することができる。
【0031】
この実施形態では、
図4に示すように、枢動要素112はピボットに対して水平方向に沿って第1の長さL1を規定し、ピボットに対して垂直方向に沿って第2の長さL2を規定する。ウェイト114は、第1の長さL1のピボットから遠位側の端部に結合され、剪断試験機115は第2の長さのピボットから遠位側の端部にほぼ水平の力F2を加えるように動作して枢動要素112を回転させ、ウェイト114を持ち上げる。この実施形態では、第1の長さL1のピボットから遠位側の端部は枢動要素112のアームの一方の端部Pに位置している。しかし、別の実施形態では、第1の長さL1のピボットから遠位側の端部の位置はそれとは異なるものであってよく、例えば端部Pでない地点に位置することができる。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態では、装置100は、力センサ115bに動作的に接続されたプロセッサ又は何らかの演算システムであって、剪断試験棒115aによって枢動要素112に加えられた力によってウェイト114がその休止位置から持ち上げられた後に力センサ115bを用いることによって測定された比較的安定した力を決定するように構成されるプロセッサ又は何らかの演算システムをさらに含むことができる。
【0033】
図5は、本発明の第1の実施形態による装置100を用いた剪断試験機115の較正結果を示した折れ線グラフである。
図5に示されるように、力センサによって測定される反力は、枢動要素112が回転し始めてウェイト114が持ち上がるまで、剪断試験棒115aによって枢動要素112の方へ水平方向に沿って移動する距離とともに顕著に増大している。剪断試験棒115aが水平方向に沿ってさらに移動しても力センサ115bによって測定される力が比較的一定のままである、すなわち力センサ115bによって測定される力に顕著な増大がないとプロセッサが決定すると、その比較的安定した力Cの値が剪断試験機115の較正の較正結果とされる。力センサ115bによって測定された力は、ウェイト114が持ち上げられた後に明確に増大するものではないにしても、それが較正中に真に一定の値とはならないことに留意すべきである。なぜなら、剪断試験棒115aが水平方向に沿って一定の速度で移動するようにするため、枢動要素112に加えられる力は、弾性ピボット機構113の板バネのさらなる変形によりピボットのバネ力が増大するのに伴い、剪断試験棒115aのさらなる移動とともになおゆっくりと増大するためである。弾性ピボット機構113のさらなる変形による測定された力のこのような増大は明確なものではない。これは、弾性ピボット機構113のバネ定数が、0.017g/μmなどというごく小さな値であるためである。
【0034】
剪断試験機115を正確に較正するため、様々な値の複数のウェイトを用いて剪断試験機115の較正を行うことができる。
【0035】
図6は、本発明の1つの実施形態による装置100を用いた剪断試験機を較正するための方法600を示したフローチャートである。
【0036】
ステップ601では、固定要素111と、固定要素111に対して回転可能に構成された枢動要素112と、固定要素111と枢動要素112の間に結合された弾性ピボット機構113とを備える較正装置100を用意する。
【0037】
ステップ602では、所定の値を有するウェイト114を枢動要素112に結合する。
【0038】
ステップ603では、剪断試験機115は枢動要素112に対して移動し、剪断試験機115の剪断試験棒115aが枢動要素112と接触し、枢動要素112を回転させ、ウェイト114を持ち上げるための力が加えられるようにする。
【0039】
この実施形態では、剪断試験機115は、剪断試験棒115aが所定の高さに配置されるまで、まずは下方に移動することができ、その後、剪断試験機115は、剪断試験棒115aが所定の位置、例えば枢動要素112によって定義される第2の長さL2のピボットから遠位側の端部などの位置で枢動要素112と接触するまで一定の速さで水平方向に沿って移動する。剪断試験棒115aが枢動要素112と接触すると、ほぼ水平な力が枢動要素112に加わり、枢動要素112を回転させ、ウェイト14を持ち上げる。
【0040】
ステップ604では、剪断試験機115に動作的に接続されたプロセッサ又は演算システムが、剪断試験棒115aによって枢動要素112に対して加えられた力によってウェイト114が持ち上げられた後に剪断試験機115の力センサ115bによって測定される比較的安定した力を決定する。
【0041】
具体的には、剪断試験棒115aが水平方向に沿って移動する間、プロセッサ又は演算システムは、剪断試験棒115aによって移動する距離が水平方向に沿って増していくにつれ、力センサ115bによって測定される力を記録することができる。比較的安定した力の値はその記録された力に基づいて決定される。
【0042】
剪断試験機115を正確に較正するため、様々な重量値の複数のウェイトを用いてステップ602からステップ604までのステップを行うことができる。
【0043】
上の説明からわかるように、説明した本発明の実施形態で提供される剪断試験機を較正するための装置及び方法は、固定要素と枢動要素の間にピボットを形成するために弾性ピボット機構を用いており、剪断試験機によって枢動要素に力が加えられたときに、枢動要素がピボットの周りで回転してウェイトを持ち上げるようにする。ベアリングピボットによって形成された従来技術の力較正器具と比較すると、固定要素と枢動要素の間に設けられた弾性ピボット機構では摩擦が生じないので、様々な機械的な軸受における軸受摩擦によって生じる問題を回避することができる。とりわけ、摩擦や発錆を減らすための潤滑剤が不要であり、力較正装置の保守の労力や費用も減るため、力較正装置の寿命及び信頼性は著しく向上する。さらに、軸受摩擦に起因する不正確さが回避されるため、より正確な較正結果を、特に長期にわたる利用において得られるであろう。
【0044】
下のTable 1(表1)は、本発明の第1の実施形態による装置100を用いて得られた較正結果を示している。較正プロセスの実行には異なる値のウェイトが使用されている。Table 1(表1)に示した結果からは、測定結果を見る限り、装置100によって得られる力の比率は比較的一定であることがわかる。
【0045】
【0046】
本発明について幾つかの実施形態を参照しながらかなり詳細に説明してきたが、それ以外の実施形態も可能である。そのため、添付の請求項の趣旨及び範囲は本明細書に含まれる実施形態の説明だけに限定されるべきものではない。
【符号の説明】
【0047】
100 装置
111 固定要素
111a 第1の側
111b 第2の側
112 枢動要素
113 弾性ピボット機構
113a 第1の板バネ
113b 第2の板バネ
113A 第1の対の板バネ
113A-1 第1の板バネ
113A-2 第2の板バネ
113B 第2の対の板バネ
113B-1 第1の板バネ
113B-2 第2の板バネ
113a-1 第1の縁部
113a-2 第2の縁部
113b-1 第1の縁部
113b-2 第2の縁部
114 ウェイト
115 剪断試験機
115a 剪断試験棒
115b 力センサ
116 フック
600 方法
C 比較的安定した力
F1 垂直方向の力
F2 水平方向の力
L1 第1の長さ
L2 第2の長さ
P 端部
【外国語明細書】