(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067865
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】付加製造用ステンレス鋼粉末
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230509BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20230509BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230509BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20230509BHJP
C22C 38/50 20060101ALI20230509BHJP
B22F 12/17 20210101ALI20230509BHJP
B22F 10/64 20210101ALI20230509BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230509BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230509BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230509BHJP
B22F 10/28 20210101ALN20230509BHJP
B22F 10/25 20210101ALN20230509BHJP
B22F 1/05 20220101ALN20230509BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
B22F10/38
B22F1/00 T
B22F9/08 A
C22C38/50
B22F12/17
B22F10/64
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y80/00
B22F10/28
B22F10/25
B22F1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022175399
(22)【出願日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】63/274,141
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515057827
【氏名又は名称】クエステック イノベーションズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】アビナブ サブー
(72)【発明者】
【氏名】リカルド コマイ
(72)【発明者】
【氏名】ダナ フランケル
(72)【発明者】
【氏名】マリー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ オルソン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB04
4K017BB06
4K017BB10
4K017CA07
4K017FA15
4K018AA33
4K018BA17
4K018BB04
4K018BB10
4K018DA31
4K018FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】付加製造用ステンレス鋼粉末、付加製造における前記粉末の使用方法を提供する。
【解決手段】例示的合金は、質量%で、13.25%~14.75%のクロム、4.5%~5.5%のニッケル;0.11%~0.17%の炭素、0.01%~0.31%のチタン、及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。例示的方法は、アトマイズ合金粉末を用いて付加製造を実施して、製造物品を生成するステップを含み、アトマイズ合金粉末は、質量%で、13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.11%~0.17%の炭素;0.01%~0.31%のチタン;及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金であって、質量%で:
13.25%~14.75%のクロム;
4.5%~5.5%のニッケル;
0.11%~0.17%の炭素;
0.01%~0.31%のチタン;及び
残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物
を含む、合金。
【請求項2】
質量で:
0.01%以下の銅;
0.01%以下のマンガン;
0.02%以下の窒素;
0.04%以下の酸素;
0.01%以下のニオブ;及び
0.01%以下のケイ素
を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
質量で:
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.14%~0.16%の炭素;
0.12%~0.18%のチタン;
0.01%~0.21%のバナジウム;
0.4%~0.6%のタングステン;及び
0.4%~0.6%のモリブデン
を含む、請求項2に記載の合金。
【請求項4】
質量で:
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.11%~0.15%の炭素;及び
0.02%~0.14%のチタン;
を含む、請求項2に記載の合金。
【請求項5】
前記合金は、付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、
20%未満のδ-フェライト、及び30%未満のγ-オーステナイトであるミクロ構造と;
44~50HRCの硬度値と;
x-y試験片について、15%~約21%の伸びと;
x-y試験片について、約1000MPaの降伏強さと、
を有する、請求項3に記載の合金。
【請求項6】
前記合金は、付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、
1%未満のδ-フェライト、1%未満のγ-オーステナイト、及び約99%のマルテンサイトであるミクロ構造と;
x-y試験片について、10%~14%の伸びと;
x-y試験片について、1125MPa~1135MPaの降伏強さと、
を有する、請求項4に記載の合金。
【請求項7】
前記合金は、付加製造工程を施された後、及び/又はエージングの後、Fe2.4C粒子を含むミクロ構造を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項8】
クロムのニッケルに対する比が、質量で、2.7~2.9である、請求項1に記載の合金。
【請求項9】
付加製造に使用可能なアトマイズ合金粉末であって、
質量%で:
13.25%~14.75%のクロム;
4.5%~5.5%のニッケル;
0.11%~0.17%の炭素;
0.01%~0.31%のチタン;
0.01%以下の銅;
0.01%以下のマンガン;
0.02%以下の窒素;
0.04%以下の酸素;及び
残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物
を含む、合金粒子
を含む、アトマイズ合金粉末。
【請求項10】
前記合金粒子は、質量%で、
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.12%~0.14%の炭素;及び
0.06%~0.10%のチタン;
0.01%以下のニオブ;及び
0.01%以下のケイ素
を含む、請求項9に記載のアトマイズ合金粉末。
【請求項11】
前記合金粒子は、質量%で、
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.13%~0.17%の炭素;
0.13%~0.17%のチタン;
0.4%~0.6%のモリブデン;
0.05%~0.15%のバナジウム;
0.4%~0.6%のタングステン;
0.01%以下のニオブ;及び
0.01%以下のケイ素
を含む、請求項9に記載のアトマイズ合金粉末。
【請求項12】
付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、前記アトマイズ合金粉末は、
30%未満のδ-フェライト及びγ-オーステナイトであるミクロ構造と、x-y試験片について、15%~約21%の伸びと;
44~50HRCの硬度値と;
を有する、請求項11に記載のアトマイズ合金粉末。
【請求項13】
付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、前記アトマイズ合金粉末は、x-y試験片について、約1000MPa~約1140MPaの降伏強さを有する、請求項9に記載のアトマイズ合金粉末。
【請求項14】
付加製造におけるアトマイズ合金粉末の使用方法であって、
合金化された粒子を含む前記アトマイズ合金粉末を受け取るステップであって、前記合金化された粒子は、質量%で:
13.25%~14.75%のクロム;
4.5%~5.5%のニッケル;
0.13%~0.17%の炭素;
0.01%~0.31%のチタン;
0.01%以下のニオブ;
0.01%以下のケイ素;
0.01%以下の銅;
0.01%以下のマンガン;
0.02%以下の窒素;及び
0.04%以下の酸素;及び
残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物
を含む、ステップと、
前記アトマイズ合金粉末を用いた付加製造を実施して、製造物品を生成するステップであって、前記付加製造は、アルゴン(Ar)雰囲気下で実施される、ステップと、
製造物品を取り出すステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記合金化された粒子は、質量%で、
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.14%~0.16%の炭素;
0.12%~0.18%のチタン;
0.01%~0.21%のバナジウム;
0.4%~0.6%のタングステン;及び
0.4%~0.6%のモリブデン;
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記合金化された粒子は、質量%で、
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.11%~0.15%の炭素;及び
0.02%~0.14%のチタン;
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記完成した製造物品は:
30%未満がδ-フェライト及びγ-オーステナイトであるミクロ構造と;
44~50HRCの硬度値と;
x-y試験片について、15%~約21%の伸びと;
を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ビルドプレートを温度175℃~200℃の温度に予熱するステップを更に含み;
前記完成した製造物品は:
1%未満のδ-フェライト、1%未満のγ-オーステナイト、及び約99%がマルテンサイトであるミクロ構造と;
x-y試験片について、10%~14%の伸びと;
x-y試験片について、1125MPa~1135MPaの降伏強さと、
を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記合金化された粒子は、クロムのニッケルに対する比が、質量で、2.7~2.9である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記完成した製造物品は:
185~235の室温靭性(KIC);及び
0mV SCE超の孔食電位
を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月1日に出願された米国特許仮出願第63/274,141号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
政府の権益
本発明は、アメリカ合衆国国防総省(U.S.Department of Defense)によって与えられた、契約書第N68335-18-C-0020号に基づき、政府の支援によってなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
技術分野
本開示は、ステンレス鋼合金粉末を製造するための材料、方法及び技術に関する。より具体的には、例示的なステンレス鋼合金粉末は、付加製造の実施に好適である。
【背景技術】
【0002】
付加製造(AM)は、伝統的な鋳型及び成形ダイの使用ではなく、コンピュータ-支援設計(CAD)情報の制御の下に、交互積層法で部材を製造する方法である。粉末床レーザー融解法(LPBF)としても知られる選択的レーザー溶融法(Selective Laser Melting)(SLM)等の付加製造技術は、近年大幅に成熟してきた。
付加製造は、金型又は機械加工を用いずに非常に複雑な幾何形状のネットシェイプ製作を可能にすることによって、材料使用量、エネルギー消費、部材のコスト、及び製造時間の削減の可能性を与える。付加製造は、迅速な部材の製造、入手困難な部品の一度限りの製造、及び従来手段による製造が困難な部品(機械加工又は鋳造ができない複雑な幾何形状等)の製造を可能にする。結果として、付加製造は、特注部品又は交換部品を入手するエンドユーザーだけでなく、OEM業者(相手先ブランド名製造業者)にも、部品製造における融通性をもたらし得る。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示及び企図される材料、方法及び技術は、付加製造用途に特に適応された合金鋼に関する。場合によっては、合金鋼は、クロム、ニッケル、炭素、チタン、及び残部の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。場合によっては、合金鋼は、クロム、ニッケル、炭素、チタン、バナジウム、タングステン、モリブデン、及び残部の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
【0004】
一態様において、合金が開示される。例示の合金は、質量%で:13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.11%~0.17%の炭素;0.01%~0.31%のチタン;0.01%以下の銅;0.01%以下のマンガン;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素;及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
別の態様において、付加製造に使用可能なアトマイズ合金粉末が開示される。例示のアトマイズ合金粉末は、質量%で:13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.11%~0.17%の炭素;0.01%~0.31%のチタン;0.01%以下の銅;0.01%以下のマンガン;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素;及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
別の態様において、付加製造においてアトマイズ合金粉末を使用する方法が開示される。例示の方法は、合金化された粒子を含むアトマイズ合金粉末を受け取るステップと、アトマイズ合金粉末を用いた付加製造を実施して製造物品を生成するステップであって、付加製造はアルゴン(Ar)雰囲気下で実施される、ステップと;製造物品を取り出すステップと、を含んでもよい。例示の合金化された粒子は、質量%で:13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.11%~0.17%の炭素;0.01%~0.31%のチタン;0.01%以下の銅;0.01%以下のマンガン;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素;及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
一態様において、合金が開示される。例示の合金は、質量%で:13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.11%~0.15%の炭素;0.02%~0.14%のチタン;0.01%以下の銅;0.01%以下のマンガン;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素;及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
別の態様において、付加製造された物品が開示される。例示の付加製造物品は、合金化された粒子を含むアトマイズ合金粉末を受け取るステップと、アトマイズ合金粉末を用いた付加製造を実施して付加製造物品を生成するステップであって、付加製造は、アルゴン(Ar)雰囲気下で実施される、ステップと;付加製造物品を取り出すステップと、を含む方法を用いて作製されてもよい。例示の合金化された粒子及び/又は付加製造物品は、質量%で:13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.13%~0.17%の炭素;0.01%~0.31%のチタン;0.01%~0.21%のバナジウム;0.4%~0.6%のタングステン;0.4%~0.6%のモリブデン;0.01%以下の銅;0.01%以下のマンガン;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素;及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
【0005】
本開示によるいくつかの利益を得るために、ステンレス鋼合金粉末に関する材料、技術又は方法が、本明細書で特徴付けられる詳細の全てを含むことは特に要求されない。従って、本明細書で特徴付けられる特定の実施例は、記載された技術の例示的応用であることが意図され、別の方法が可能である。
【0006】
本特許又は出願のファイルは、色付きで製作された少なくとも一つの図面を含む。色付き図面(1又は複数)を含む本件特許又は特許出願公開の複写は、請求及び必要な手数料の支払いに応じて、当局より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】ビルドプレートに平行に撮影した(x-y試験片)、as-built(造形まま)状態の実験合金例1の光学顕微鏡写真である。
【
図1B】ビルドプレートに垂直に撮影した(z試験片)、
図1Aに示す実験合金例1の光学顕微鏡写真である。
【
図2】
図1A及び
図1Bに示す実験合金例1の電子線後方散乱回折法(EBSD)画像である。
【
図3】実験合金例2の電子線後方散乱回折法(EBSD)画像である。
【
図4】市販の合金と、
図1A、
図1B、及び
図2に示す実験合金例1との疲労性能を比較したグラフである。
【
図5】市販の合金と、
図1A、
図1B、及び
図2に示す実験合金例1との腐食性能を比較したグラフである。
【
図6】市販の合金と、
図1A、
図1B、及び
図2に示す実験合金例1との室温靭性(ambient toughness)及び応力腐食割れ(SCC)抵抗性を比較したグラフである。
【
図7】
図6に示す実験合金例1の光学顕微鏡写真である。
【
図8】
図6に示す実験供給業者C(Ar)の光学顕微鏡写真である。
【
図9】
図6に示す実験鍛錬用17-4(H1026)の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示及び企図される材料、方法及び技術は、ステンレス鋼合金に関する。本明細書で開示及び企図される合金は、付加製造用途に良く適している。例えば、付加製造に使用可能なアトマイズ合金粉末は、本明細書で開示及び企図される種々の合金を含む合金粒子を含み得る。
一般に例示的合金粉末は、as-built状態において好適な特性及び特徴を提供するように設計されてもよい。例示的合金は、典型的には銅を含まない組成を有する。例示的合金は、as-built状態で、並びに/又は応力緩和及び/若しくはStageI焼戻しの後に、主にマルテンサイトであるミクロ構造を有し得る。場合によっては、例示的合金は、17-4合金組成物よりも大量のニッケルを含み得る。特定の理論に束縛されるものではないが、ニッケル含量を増やすことで、得られる製造物品の靭性を改良でき、且つ/又はポアなどの欠陥に対応できると理論付けされる。場合によっては、例示的合金は、「自己焼戻し」を介して強度を付与できるε-カーバイドを利用する。場合によっては、例示的合金は、モリブデン及びタングステンも含んでもよく、これは固溶液強化及び/又は粒間応力腐食割れへの耐性を付与できる。
I.例示の合金鋼
例示の合金鋼を、成分及び量の例、相及びミクロ構造の特徴、並びに物理的特性に関して、以下に記載する。他の箇所で論じるように、例示的合金鋼は、粉末ベースの付加製造の実施に特に好適である。種々の実施において、例示的合金は、重大な熱処理なしで、印刷及びその後の操作に耐えるのに十分な靭性を有することができる。種々の実施において、例示的合金は、マトリックスの強靭化により、ポア及び表面むらに対する耐性を有することができる。種々の実施において、例示的合金は、高クロム含量で十分な耐孔食性を有し得る。
【0009】
A.例示の成分及び量
本明細書で開示及び企図される例示的合金鋼は、様々な成分を様々な量で含む。例えば、例示の合金鋼は、鉄と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、及びチタン(Ti)のうちの1つ以上と、を含み得る。場合によっては、例示の合金鋼は、バナジウム(V)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)を追加的に含み得る。場合によっては、例示の合金鋼は、ケイ素(Si)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、窒素(N)、酸素(O)、リン(P)、及び硫黄(S)などの1つ以上の偶発元素及び不純物を追加的に含むことができる。
【0010】
例示的合金鋼は、銅を含まないか、又は0.01質量%未満の銅を含む。銅は、典型的には、純銅沈殿物のナノ分散体を形成することから、17-4PH合金において強化剤である。しかし、これらの沈殿物は、十分な焼戻しを用いた場合のみ核形成できる。本例示的合金は、マルテンサイトの応力緩和及び焼戻しのための基本的熱処理のみが施されるように設計されていることから、銅は、強度に対する大きな因子ではなく、従って、微量で使用されるか、又は全く使用されない。
例示的合金鋼は、17-4PH合金と比較して、高い炭素含有量を有してもよい。高い炭素含量は、ε-カーバイド(Fe2.4C)粒子の硬化を促進し、StageI焼戻し(例えば、200℃で最大1時間)において材料を強靭化することができ、これは「自己焼戻し」工程を介して達成されてもよく、当該工程はビルド中の残留加熱であってもよい。
場合によっては、例示的合金鋼は、少量のモリブデン及び/又はタングステンを含んでもよく、これは、耐腐食性及び粒界破壊に抵抗するための粒界結合力を改良し得る。場合によっては、例示的合金鋼は、0.01質量%未満のモリブデン及び/又は0.01質量%未満のタングステン及び/又は0.01質量%未満のバナジウムを含む。
【0011】
例示の合金鋼は、クロムを含み得る。例えば、例示の合金鋼は、質量で、13.25%~14.75%のクロム(Cr)を含み得る。種々の実施において、例示の合金鋼は、質量で、13.25%~15%のCr;13.25%~14.75%のCr;13.5%~14.5%のCr;13.25%~13.75%のCr;13.75%~14.25%のCr;14.25%~14.75%のCr;13.3%~13.5%のCr;13.5%~13.7%のCr;13.7%~13.9%のCr;13.9%~14.1%のCr;14.1%~14.3%のCr;14.3%~14.5%のCr;又は14.5%~14.7%のCrを含み得る。種々の実施において、例示の合金鋼は、質量で、少なくとも13.25%のCr;少なくとも13.5%のCr;少なくとも13.75%のCr;少なくとも14.0%のCr;少なくとも14.25%のCr;又は少なくとも14.5%のCrを含み得る。種々の実施において、例示の合金鋼は、質量で、14.75%以下のCr;14.5%以下のCr;14.25%以下のCr;14.0%以下のCr;13.75%以下のCr;又は13.5%以下のCrを含み得る。
【0012】
例示の合金鋼は、ニッケルを含み得る。例えば、例示的合金鋼は、質量で、4.5%~5.5%のニッケル(Ni)も含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、4.5%~5.3%のNi;4.7%~5.5%のNi;4.5%~5.1%のNi;4.7%~5.3%のNi;4.9%~5.5%のNi;4.7%~5.1%のNi;4.9%~5.3%のNi;5.1%~5.5%のNi;4.5%~4.7%のNi;4.7%~4.9%のNi;4.9%~5.1%のNi;5.1%~5.3%のNi;又は5.3%~5.5%のNiを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、少なくとも4.5%のNi;少なくとも4.75%のNi;少なくとも5.0%のNi;又は少なくとも5.25%のNiを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、5.5%以下のNi;5.25%以下のNi;5.0%以下のNi;又は4.75%以下のNiを含み得る。
【0013】
例示の合金鋼は、炭素を含み得る。例えば、例示的合金鋼は、質量で、0.11%~0.17%の炭素(C)を含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、0.13%~0.17%のC;0.13%~0.16%のC;0.14%~0.17%のC;0.13%~0.15%のC;0.15%~0.17%のC;0.11%~0.15%のC;又は0.14%~0.16%のCを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、少なくとも0.11%のC;少なくとも0.13%のC;又は少なくとも0.15%のCを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、0.17%以下のC;0.15%以下のC;又は0.13%以下のCを含み得る。
【0014】
例示の合金鋼は、チタンを含み得る。例えば、例示的合金鋼は、質量で、0.01%~0.31%のチタン(Ti)を含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、0.01%~0.28%のTi;0.04%~0.31%のTi;0.01%~0.15%のTi;0.02%~0.14%のTi;0.15%~0.31%のTi;0.01%~0.1%のTi;0.1%~0.2%のTi;0.2%~0.31%のTi;0.07%~0.18%のTi;0.13%~0.22%のTi;0.18%~0.26%のTi;0.01%~0.06%のTi;0.06%~0.11%のTi;0.11%~0.16%のTi;0.16%~0.21%のTi;0.21%~0.26%のTi;又は0.26%~0.31%のTiを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、少なくとも0.01%のTi;少なくとも0.02%のTi;少なくとも0.10%のTi;少なくとも0.15%のTi;少なくとも0.20%のTi;又は少なくとも0.25%のTiを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、0.31%以下のTi;0.25%以下のTi;0.20%以下のTi;0.15%以下のTi;0.10%以下のTi;又は0.05%以下のTiを含み得る。
【0015】
場合によっては、例示の合金鋼は、バナジウムを含み得る。例えば、例示的合金鋼は、存在する場合、質量で、0.01%~0.21%のバナジウム(V)を含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、0.01%~0.18%のV;0.04%~0.21%のV;0.01%~0.11%のV;0.11%~0.21%のV;0.01%~0.07%のV;0.07%~0.14%のV;0.14%~0.21%のV;0.06%~0.10%のV;0.10%~0.14%のV;0.14%~0.18%のV;0.01%~0.04%のV;0.04%~0.07%のV;0.07%~0.10%のV;0.10%~0.13%のV;0.13%~0.16%のV;又は0.16%~0.19%のVを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、少なくとも0.01%のV;少なくとも0.05%のV;少なくとも0.10%のV;又は少なくとも0.15%のVを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、0.21%以下のV;0.15%以下のV;0.10%以下のV;又は0.05%以下のVを含み得る。
【0016】
場合によっては、例示の合金鋼は、タングステンを含み得る。例えば、例示的合金鋼は、存在する場合、質量で、0.4%~0.6%のタングステン(W)を含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、0.4%~0.5%のW;0.5%~0.6%のW;0.4%~0.45%のW;0.45%~0.5%のW;0.5%~0.55%のW;0.55%~0.6%のW;0.42%~0.46%のW;0.48%~0.52%のW;0.52%~0.56%のW;0.40%~0.43%のW;0.43%~0.46%のW;0.46%~0.49%のW;0.49%~0.52%のW;0.52%~0.55%のW;0.55%~0.58%のW;又は0.58%~0.6%のWを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、少なくとも0.4%のW;少なくとも0.45%のW;少なくとも0.5%のW;又は少なくとも0.55%のWを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、0.6%以下のW;0.55%以下のW;0.5%以下のW;又は0.45%以下のWを含み得る。
【0017】
場合によっては、例示の合金鋼は、モリブデンを含み得る。例えば、例示的合金鋼は、存在する場合、質量で、0.4%~0.6%のモリブデン(Mo)を含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、質量で、0.4%~0.5%のMo;0.5%~0.6%のMo;0.4%~0.45%のMo;0.45%~0.5%のMo;0.5%~0.55%のMo;0.55%~0.6%のMo;0.42%~0.46%のMo;0.48%~0.52%のMo;0.52%~0.56%のMo;0.40%~0.43%のMo;0.43%~0.46%のMo;0.46%~0.49%のMo;0.49%~0.52%のMo;0.52%~0.55%のMo;0.55%~0.58%のMo;又は0.58%~0.6%のMoを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、少なくとも0.4%のMo;少なくとも0.45%のMo;少なくとも0.5%のMo;又は少なくとも0.55%のMoを含み得る。種々の実施において、例示的合金鋼は、0.6%以下のMo;0.55%以下のMo;0.5%以下のMo;又は0.45%以下のMoを含み得る。
【0018】
場合によっては、例示の合金鋼は、1つ以上の偶発元素及び/又は不純物を含み得る。開示される合金鋼中の偶発元素及び不純物としては、原材料に付着しているケイ素、タンタル、銅、マンガン、ニオブ、窒素、酸素、リン、及び硫黄元素、又はこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。偶発元素及び不純物は、本明細書に開示される合金中に、合計で0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下で存在し得る。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.01%以下のケイ素;0.001%以下のケイ素;又は0.0001%以下のケイ素を含んでもよい。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.01%以下のタンタル;0.001%以下のタンタル;又は0.0001%以下のタンタルを含み得る。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.01%以下の銅;0.001%以下の銅;又は0.0001%以下の銅を含み得る。
場合によっては、例示の合金は、質量で、0.1%以下のマンガン;0.01%以下のマンガン;又は0.001%以下のマンガンを含み得る。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.01%以下のニオブ;0.005%以下のニオブ;又は0.001%以下のニオブを含み得る。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.02%以下の窒素、0.01%以下の窒素、0.005%以下の窒素;又は0.001%以下の窒素を含み得る。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.04%以下の酸素、0.02%以下の酸素;0.01%以下の酸素;0.005%以下の酸素;又は0.001%以下の酸素を含み得る。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.01%以下のリン;0.005%以下のリン、又は0.001%以下のリンを含み得る。
場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、0.01%以下の硫黄;0.005%以下の硫黄、又は0.001%以下の硫黄を含み得る。
本明細書に記載される合金は、上記の構成成分のみからなってもよく、本質的にこのような構成成分からなってもよく、又は他の実施形態においては、追加の構成成分を含んでもよいことは理解される。
【0019】
例示の合金鋼は、クロムのニッケルに対する比が、質量で、2.4~3.3であってもよい。種々の例において、例示の合金鋼は、クロムのニッケルに対する比が、質量で、2.4~2.9;2.6~3.3;2.7~2.9;2.75~2.85;又は2.8~2.9であってもよい。種々の例において、例示の合金鋼は、クロムのニッケルに対する比が、質量で、2.4以上;2.6以上;2.8以上;3.0以上又は3.2以上であってもよい。種々の例において、例示の合金鋼は、クロムのニッケルに対する比が、質量で、3.3以下;3.1以下;2.9以下;2.7以下;又は2.5以下であってもよい。
【0020】
例示の合金鋼は、上記の成分を様々な量の組合せで含み得る。例えば、例示の合金鋼は、質量で、13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.13%~0.17%の炭素;0.01%~0.31%のチタン;0.01%~0.21%のバナジウム;0.4%~0.6%のタングステン;0.4%~0.6%のモリブデン;0.01%以下の銅;0.01%以下のマンガン;0.01%以下のニオブ;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素、及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、13.75%~14.25%のクロム;4.75%~5.25%のニッケル;0.14~0.16%の炭素;0.10%~0.20%のチタン;0.07%~0.14%のバナジウム;0.45%~0.55%のタングステン;及び0.45%~0.55%のモリブデン;0.01%以下のマンガン;0.01%以下のニオブ;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素、及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。場合によっては、例示の合金鋼は、質量で、13.25%~14.75%のクロム;4.5%~5.5%のニッケル;0.11%~0.15%の炭素;0.02%~0.14%のチタン;0.01%以下の銅;0.01%以下のマンガン;0.02%以下の窒素;0.04%以下の酸素;及び残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含み得る。その他の量が企図される。
【0021】
B.例示の相及びナノ構造特性
例示的合金は、付加製造工程を施された後(「as-built」とも呼ばれる)、及びStageI焼戻しの後、粉末形態で様々な相及びミクロ構造特性を有することができる。
StageI焼戻しは、印刷された物品を、加熱環境に所与の時間にわたって置くことを含み得る。例えば、StageI焼戻しは、100℃~250℃で30分~4時間実施されてもよい。例として、StageI焼戻しは、200℃で1時間実施されてもよい。
場合によっては、付加製造工程を施された後、例示的合金は、主にマルテンサイト系の構造を有し得る。例示的合金は、微量のδ-フェライト及びγ-オーステナイトも含むことができる。
例示的合金は、付加製造工程を施された後、60%超(相分率)がマルテンサイト;65%超がマルテンサイト;70%超がマルテンサイト;95%超がマルテンサイト;98%超がマルテンサイト;又は約99%超がマルテンサイトであるミクロ構造を有し得る。種々の例において、例示的合金は、付加製造工程を施された後、60%~72%がマルテンサイト;60%~66%がマルテンサイト;又は66%~72%がマルテンサイトであるミクロ構造を有し得る。
例示的合金は、付加製造工程を施された後、20%未満(相分率)がδ-フェライト;18%未満がδ-フェライト;16%未満がδ-フェライト;14%未満がδ-フェライト;12%未満がδ-フェライト;又は1%未満がδ-フェライトであるミクロ構造を有し得る。
例示的合金は、付加製造工程を施された後、30%未満(相分率)がγ-オーステナイト;25%未満がγ-オーステナイト;20%未満がγ-オーステナイト;18%未満がγ-オーステナイト;又は1%未満がγ-オーステナイトであるミクロ構造を有し得る。
例示の合金は、付加製造工程を施された後、40%未満(相分率)がδ-フェライト及びγ-オーステナイト;30%未満がδ-フェライト及びγ-オーステナイト;20%未満がδ-フェライト及びγ-オーステナイト;5%未満がδ-フェライト及びγ-オーステナイト;又は2%未満がδ-フェライト及びγ-オーステナイトであるミクロ構造を有し得る。
例示的合金は、付加製造工程を施された後、及び/又はStageI焼戻し(200℃で1時間実施されてもよい)の後、Fe2.4C粒子(ε-カーバイドとも呼ばれる)を含むミクロ構造を有し得る。
【0022】
C.例示の機械的特性
例示的合金は、付加製造工程を施された後(「as-built」とも呼ばれる)、及びStageI焼戻しの後、粉末形態で様々な機械的特性を有することができる。以下の種々の機械的特性は、x-y試験片(引張試験片の長軸がビルドプレートに平行であった)、及びz試験片(引張試験片の長軸がビルドプレートに垂直であった)に関して記載されており、張力をかけて試験した。
例示の合金は、as-built形態で様々な降伏強さ特性を有することができ、as-built形態とは、付加製造工程を施された後、いかなるエージング又は溶体化熱処理も実施していないことを意味する。
【0023】
例えば、as-built形態の例示的合金は、z試験片について、1030MPa~1470MPaの0.2%弾性オフセット降伏強さを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示の合金は、z試験片について、1030MPa~1045MPa;1033MPa~1041MPa;1400MPa~1470MPa;1400MPa~1435MPa;1435MPa~1470MPa;1440MPa~1460MPa;又は1445MPa~1465MPaの降伏強さを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、z試験片について、少なくとも1030MPa;少なくとも1037MPa;少なくとも1400MPa;少なくとも1430MPa;少なくとも1445MPa;少なくとも1455MPa;又は少なくとも1460MPaの降伏強さを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、z試験片について、1460MPa以下;1455MPa以下;1445MPa以下;1435MPa以下;1420Mpa以下;又は1400MPa以下の降伏強さを有し得る。
as-built形態の例示的合金は、x-y試験片について、約950MPa~約1140MPaの0.2%弾性オフセット降伏強さを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示の合金は、x-y試験片について、950MPa~1000MPa;1000MPa~1050MPa;960MPa~1040MPa;1120MPa~1140MPa;1125MPa~1135MPa;又は1130MPa~1134MPaの降伏強さを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、x-y試験片について、少なくとも950MPa;少なくとも970MPa;少なくとも990MPa;少なくとも1010MPa;少なくとも1030MPa;少なくとも1045MPa;少なくとも1125Mpa;又は少なくとも1130MPa降伏強さを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示の合金は、x-y試験片について、1135MPa以下;1133MPa以下;1040MPa以下;1020MPa以下;1000MPa以下;980MPa以下;又は960MPa以下の降伏強さを有し得る。
as-built形態の例示的合金は、x-y試験片について、11%~21%の伸びを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、x-y試験片について、11%~21%;11%~15%;15%~18%;18%~21%;15%~17%;17%~19%;又は19%~21%の伸びを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、x-y試験片について、少なくとも11%;少なくとも15%;少なくとも17%;少なくとも19%;又は少なくとも20%の伸びを有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、x-y試験片について、20%以下;18%以下;16%以下;又は12%以下の伸びを有し得る。
as-built形態の例示的合金は、44HRC~50HRCの硬度値を有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、44HRC~47HRC;47HRC~50HRC;44HRC~46HRC;46HRC~48HRC;又は48HRC~50HRCの硬度を有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、少なくとも44HRC;少なくとも46HRC;又は少なくとも48HRCの硬度を有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、49HRC以下;47HRC以下;又は45HRC以下の硬度を有し得る。
as-built形態の例示的合金は、185~235の室温靭性(KIC)を有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、185~235;185~195;225~235;190~230;190~210;又は210~230の室温靭性(KIC)を有し得る。種々の実施において、as-built形態の例示的合金は、少なくとも185;少なくとも190;少なくとも195;少なくとも200;少なくとも205;少なくとも210;少なくとも215;少なくとも220;少なくとも225;又は少なくとも230の室温靭性(KIC)を有し得る。種々の例において、例示的合金鋼は、235以下;230以下;225以下;220以下;215以下;210以下;205以下;200以下;195以下;又は190以下の室温靭性(KIC)を有し得る。
as-built形態の例示的合金は0mV SCEを超える孔食電位を有し得る。種々の例において、as-built形態の例示的合金は、0mV SCE以上;5m VSCE以上;10mV SCE以上;15mV SCE以上;20mV SCE以上;25mV SCE以上;又は30mV SCE以上の孔食電位を有し得る。
【0024】
II.合金粉末の例示の調製方法
本明細書で開示及び企図される例示の合金鋼は、対象とする付加製造システムに適した様々な供給原料形態に二次加工されてもよい。例えば、本明細書で開示及び企図される例示の合金鋼を、不活性ガス噴霧等の利用可能なアトマイズ技術を使用して、アトマイズ合金粉末に二次加工してもよい。得られるアトマイズ合金粉末は、粉末床融解又は指向性エネルギー堆積システムに使用できる。
アトマイズ合金粉末の例示の製造方法は、元素金属供給原料又は所望の化学品が製造されるように予め合金化した供給原料を溶融するステップを含む。上に開示した元素のいくつかの組合せでは、所望の化学品の温度が溶融物中に固体材料部分がない温度以上に達すると、アトマイズ工程が起こるはずである。
例示のアトマイズ合金粉末は、特定の用途及び/又は製造システムに合わせたサイズの粒子を有し得る。いくつかの実施では、例示のアトマイズ合金粉末は、15μm~45μmの直径を有する粒子を含む。
【0025】
III.例示の製造方法
本明細書で開示及び企図される例示の合金鋼は、付加製造システムにおいて使用できる。付加製造法は、コンピュータ制御されたエネルギー源(例えば、レーザー、電子ビーム、溶接トーチ等)を用いて金属を選択的に融解することにより、部品を層状に造形する方法である。付加製造は、ASTM F2792-12a「Standard Terminology for Additively Manufacturing Technologies」にも定義されている。
例示の付加層製造方法には、以下の方法が含まれる:レーザーを使用して、正確に制御された位置において粉末媒体を焼結する、直接金属レーザー焼結法(DMLS);ワイヤー状供給原料をレーザーによって溶融した後、正確な位置に堆積し、固化させて製品を造形する、レーザーワイヤー堆積法;電子ビーム溶解法;レーザー加工ネットシェイピング;及び直接金属堆積法。一般的に、付加製造技術は、幾何学的制約のない自由形状造形における融通性、迅速な材料加工時間、及び革新的な接合技術を与える。好適な付加製造システムとしては、EOS GmbH(Robert-Stirling-Ring 1,82152 Krailling/Munich(ドイツ))から入手可能な、EOSINT M280直接金属レーザー焼結(DMLS)付加製造システムが挙げられる。
いくつかの実施では、直接金属レーザー焼結法(DMLS)を使用して、開示及び企図された例示の合金鋼を含む物品が製造される。例示の工程の間に、アトマイズ合金粉末を床状に拡げてもよく、レーザーを使用して該床の領域を選択的に溶融及び融解する。製造物品は、複数の粉末層を連続的に展開及び融解することにより、交互積層様式で造形できる。
一部の実施では、例示的方法は、付加製造システムのビルドプレートを予熱するステップを含んでもよい。場合によっては、ビルドプレートを、約40℃に予熱してもよい。場合によっては、ビルドプレートを、約175℃~約200℃;180℃~190℃;190℃~200℃;180℃~185℃;185℃~190℃;190℃~195℃;195℃~200℃;178℃~182℃;179℃~181℃;180℃~182℃;又は約180℃に予熱してもよい。種々の例において、ビルドプレートを、175℃以上;180℃以上;185℃以上;190℃以上;又は195℃以上に予熱してもよい。種々の例において、ビルドプレートを、200℃以下;195℃以下;190℃以下;185℃以下;又は180℃以下に予熱してもよい。
場合によっては、物品は、付加製造後に使用できる状態となり得る。場合によっては、ビルド工程の後で、様々な後処理操作を実施してもよい。例えば、as-built製造物品に、応力緩和のための基本的熱処理を施してもよい。例として、as-built製造物品に、StageI焼戻しを施してもよく、これは、物品を200℃の環境に最大1時間置くことを含む。例として、as-built製造物品を、300℃~700℃の環境中に1時間~4時間置いてもよい。
典型的には、溶体化熱処理及びエージングは、析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼グレード(「PH鋼グレード」)に一般的に使用され、上記グレードの例として17-4PH及び15-5PHが挙げられる。種々の本開示例の合金は、典型的には、溶体化熱処理及びエージングを受けず、これは時間及びコストの節約をもたらし得る。
付加製造におけるアトマイズ合金粉末の使用方法の例は、種々の操作を含み得る。例えば、例示の方法は、合金化された粒子を含むアトマイズ合金粉末を受け取るステップを含み得る。合金化された粒子は、上に詳述した量の成分を含み得る。該方法は、アトマイズ合金粉末を用いて付加製造を実施して、製造物品を作製するステップも含むことができる。場合によっては、付加製造は、アルゴン(Ar)雰囲気下で実施されてもよい。その後、製造物品を付加製造システムから取り出してもよい。場合によっては、上記のように、製造物品に、熱処理及び焼戻しなどの1つ以上の後処理操作を施してもよい。
【0026】
IV.実験例
種々の実験合金例を作製した。結果を以下に論じる。場合によっては、実験合金例を、市販の合金と比較して評価した。
【0027】
実験例として、Arアトマイズ粉末ヒート(powder heat)100kgを得た(合金例1)。規定の目標組成の範囲及び粉末の化学的性質の測定結果を、合金例1及び合金例2について下の表1に示す。
【表1】
【0028】
次の様々な市販の合金を試験した:アルゴン雰囲気下でアトマイズされた供給業者A(供給業者A(Ar))、アルゴン雰囲気下でアトマイズされた供給業者B(供給業者B(Ar))、アルゴン雰囲気下でアトマイズされた供給業者C合金50%と、窒素雰囲気下でアトマイズされた供給業者C合金50%とのブレンドである供給業者C(供給業者C(Ar/N
2))、及び窒素雰囲気下でアトマイズされた供給業者C(供給業者C N
2)。各々の元素組成を以下の表2に示す。
【表2】
【0029】
合金例1の粉末を、種々の流動挙動及び粒径分布に供し、市販の粉末と比較した。結果を下の表3に示す。
【表3】
【0030】
合金例粉末から得た冶金試験片を、光学電子顕微鏡、X線回折及び電子線後方散乱回折(EBSD)によって特性評価した。合金例1については、実験用クーポンを、EOS M290装置(EOS North America(Novi,Michigan)から入手)で、40℃に予熱したビルドプレート上に作製した。ビルド工程は、走査回転角度67°での二方向ビーム走査を含んだ。全てのクーポンは、同じビルドパラメータ(レーザー出力195W、走査速度750mm/s、ハッチ間隔0.1mm、積層暑さ40μm)を使用して作製した。
合金例2については、実験用クーポンを、EOS M290装置(EOS North America(Novi,Michigan)から入手)で、180℃に予熱したビルドプレート上に作製した。ビルド工程は、走査回転角度67°での二方向ビーム走査を含んだ。全てのクーポンは、同じビルドパラメータ(レーザー出力195W、走査速度750mm/s、ハッチ間隔0.1mm、積層暑さ40μm)を使用して作製した。
【0031】
as-builtで光学顕微鏡写真を撮影した。写真を
図1A(x-y試験片、ビルドプレートに平行)、
図1B(z試験片、ビルドプレートに垂直)に示す。
図1A及び
図1Bに示すように、合金例1は、主にマルテンサイト系ミクロ構造を有する。
Vunnam,Swathi,Abhinav Saboo,Chantal Sudbrack,and Thomas L.Starr.「Effect of powder chemical composition on the as-built microstructure of 17-4 PH stainless steel processed by selective laser melting.」Additive Manufacturing30(2019):100876に概説されている方法を使用して、EBSD画像品質マップを用いてフェライト相(黄)、マルテンサイト相(青)及びオーステナイト相(赤)を識別及び定量した。
図2は、合金例1の相分析に使用したEBSD画像を示す。
図3は、合金例2の相分析に使用したEBSD画像を示す。
図3に示すように、合金例2のフェライトは目に見えず(1%未満)、オーステナイト(赤)は目に見えず、99%はマルテンサイトである。
【0032】
下の表4にas-built合金例1及びas-built合金例2の全相分率を示す。
【表4】
【0033】
合金例1及び合金例2の引張及び硬度試験も実施した。結果を下の表5及び表6に示す。Arアトマイズ処理粉末から作製したクーポンに、次の2つの熱処理を施した:(1)溶体化及びH900(ここで、「H900」は、482℃(900°F)で1時間の熱処理である)、及び(2)溶体化なしで直接H900硬化。市販の粉末のみを熱処理した-合金例1及び合金例2の試料にはいかなる後処理も施さなかった。
【0034】
ワイヤーEDM平坦「ダンベル形」(dog bone)試験片を、as-built及び熱処理クーポンから切り出した。市販の鍛錬用17-4PHの棒材を、ベースラインとして使用するために購入した。この鍛錬材は、受領した状態で、既に溶体化されていた(状態A)。引張試験片の長軸は、ビルドプレートに水平(XY)又はビルドプレートに垂直(Z)のいずれかであり、張力をかけて試験した。粉末と熱処理との各組合せについて、3つの試験を実施した。硬度は、Wilson Instruments Rockwell 500硬度計を用いて測定した。
【0035】
表5及び表6に示すように、合金例1及び合金例2のas-built特性はいずれも、市販の17-4PH粉末のas-built特性を超えている。表5及び表6に示すように、合金例1及び合金例2のas-built特性はいずれも、エージングした(h900)市販の粉末の極限引張強さと等しい。
【表5】
【表6】
【0036】
供給業者C(Ar)(2)(15.6質量%のCr、4.03質量%のNi、0質量%のMo、0.33質量%のNb+Ta、0.01質量%のC、0.01質量%のN、3.89質量%のCu、0.24質量%のMn、及び0.29質量%のSi、残部のFe)の疲労性能を、合金例1と比較した。ASTM E466-15(2015)を使用して疲労性能を試験した。試験条件はR=-1(完全可逆的引張-圧縮状態で試験)及び10Hzであった。as-built合金の結果を
図4に示す。この結果は、合金例1が、供給業者C(Ar)(2)合金と比べて、全ての応力振幅において優れた疲労特性を示し、10
7サイクルにおいて、より高い疲労限度を示すことを表す。
【0037】
腐食試験は、3.5%NaCl溶液及び0.5mV/sの走査速度を用いて行う動電位走査を用いて実施した。5回の走査を平均した結果を、
図5及び表7(下)に、上の表2に記載した種々の粉末と共に示す。
図5の結果は、合金例1が、試験した市販合金と比較して、相対的に高い孔食電位を有することを示す。
【表7】
【0038】
環境的に誘発される水素応力割れの開始に対する下限応力拡大係数も、合金例1、合金例2及び種々の市販粉末について試験した。試験は、ASTM F1624-12(2018)を使用して、-1.1V及び-0.3V(開回路電位(OCP)付近)の印加電位で実施した。結果を下の表8に示す。表8に示すように、合金例1及び合金例2は両方とも、市販の17-4PHと比べて非常に強い室温靭性(又はK
IC)を有し、腐食環境下では、ほぼ同じKISCC値を有する。
【表8】
【0039】
図6は、市販の合金と実験合金例1との室温靭性及び応力腐食割れ(SCC)抵抗性を比較したグラフを示す。K
IC(室温靭性)試験は、ASTM E399-22に従って実施した。KISCC試験は、ASTM F1624-12(2018)に従って実施した。
図7は、
図6に示す実験合金例1の光学顕微鏡写真であり、この顕微鏡写真から擬へき開が見える。
図8は、
図6に示す供給業者C(Ar)の光学顕微鏡写真であり、顕微鏡写真から粒内へき開が見える。
図9は、
図6に示す実験鍛錬用17-4(H1026)の光学顕微鏡写真であり、顕微鏡写真から粒界へき開が見える。
図7、
図8、及び
図9における亀裂面は、ビルド方向(z方向)に水平である。
図6、
図7、
図8、及び
図9に示すように、合金例1は、供給業者C(Ar)及び鍛錬用17-4(H1025)の両方に匹敵する強度レベルを維持しながら、改良された靭性を有する。合金例1は、同程度のK
ISCC値と、好ましい(擬へき開)破壊モードとを有する。合金例1は、粒界脆化に対する抵抗性の増強も示す。
【0040】
本明細書における数値範囲の記述に関して、該数値範囲の間に介在する各数値は、同一の正確度で企図されている。例えば、6~9という範囲に対して、数値7及び8が、6及び9に加えて企図されており、また6.0~7.0という範囲に対して、値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0が企図されている。別の実施例では、圧力範囲が大気圧と別の圧力との間として記載されるとき、大気圧である圧力は明示的に企図される。
上記の詳細な説明及び付随する実施例は、単に例示的なものであり、本開示の範囲の制限とみなされるべきではないことは理解される。開示された実施形態に対する様々な変更及び修正は、当業者にとっては明らかであろう。このような変更及び修正は、化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成、処方、又は使用方法に関連するものを含むがこれらに限定されることなく、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく実施されてもよい。
【0041】
完全性のために、本技術に係る様々な態様を、以下の番号付けした実施形態に提示する。
実施形態1.
質量%で:
13.25%~14.75%のクロム;
4.5%~5.5%のニッケル;
0.11%~0.17%の炭素;
0.01%~0.31%のチタン;及び
残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物
を含む合金。
実施形態2.
質量%で:
0.01%以下の銅;
0.01%以下のマンガン;
0.02%以下の窒素;
0.04%以下の酸素;
0.01%以下のニオブ;及び
0.01%以下のケイ素
を含む、実施形態1に記載の合金。
実施形態3.
質量%で:
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.14%~0.16%の炭素;
0.12%~0.18%のチタン;
0.01%~0.21%のバナジウム;
0.4%~0.6%のタングステン;及び
0.4%~0.6%のモリブデン
を含む、実施形態2に記載の合金。
実施形態4.
質量%で:
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.11%~0.15%の炭素;及び
0.02%~0.14%のチタン
を含む、実施形態2に記載の合金。
実施形態5.
付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、
20%未満のδ-フェライト及び30%未満のγ-オーステナイトであるミクロ構造と;
44~50HRCの硬度値と;
x-y試験片について、15%~約21%の伸びと;
x-y試験片について、約1000MPaの降伏強さと、
を有する、実施形態3に記載の合金。
実施形態6.
付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、
1%未満のδ-フェライト、1%未満のγ-オーステナイト、及び約99%のマルテンサイトであるミクロ構造と;
x-y試験片について、10%~14%の伸びと;
x-y試験片について、1125MPa~1135MPaの降伏強さと、
を有する、実施形態4に記載の合金。
実施形態7.
付加製造工程を施された後、及び/又はエージングの後、Fe2.4C粒子を含むミクロ構造を有する、実施形態1~6のいずれか一項に記載の合金。
実施形態8.
クロムのニッケルに対する比が、質量で、2.7~2.9である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の合金。
実施形態9.
付加製造に使用可能なアトマイズ合金粉末であって、
質量%で:
13.25%~14.75%のクロム;
4.5%~5.5%のニッケル;
0.11%~0.17%の炭素;
0.01%~0.31%のチタン;
0.01%以下の銅;
0.01%以下のマンガン;
0.02%以下の窒素;
0.04%以下の酸素;及び
残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物
を含む、合金粒子
を含む、アトマイズ合金粉末。
実施形態10.
合金粒子は、質量%で、
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.12%~0.14%の炭素;及び
0.06%~0.10%のチタン;
0.01%以下のニオブ;及び
0.01%以下のケイ素
を含む、実施形態9に記載のアトマイズ合金粉末。
実施形態11.
合金粒子は、質量%で、
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.13%~0.17%の炭素;
0.13%~0.17%のチタン;
0.4%~0.6%のモリブデン;
0.05%~0.15%のバナジウム;
0.4%~0.6%のタングステン;
0.01%以下のニオブ;及び
0.01%以下のケイ素
を含む、実施形態9に記載のアトマイズ合金粉末。
実施形態12.
付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、
30%未満のδ-フェライト及びγ-オーステナイトであるミクロ構造と、x-y試験片について、15%~約21%の伸びと;
44~50HRCの硬度値と;
を有する、実施形態12に記載のアトマイズ合金粉末。
実施形態13.
付加製造工程を施された後、エージング又は溶体化熱処理を施されずに、x-y試験片について、約1000MPa~約1140MPaの降伏強さを有する、実施形態9~12のいずれか一項に記載のアトマイズ合金粉末。
実施形態14.
付加製造におけるアトマイズ合金粉末の使用方法であって、
合金化された粒子を含むアトマイズ合金粉末を受け取るステップであって、上記合金化された粒子は、質量%で:
13.25%~14.75%のクロム;
4.5%~5.5%のニッケル;
0.13%~0.17%の炭素;
0.01%~0.31%のチタン;
0.01%以下のニオブ;
0.01%以下のケイ素;
0.01%以下の銅;
0.01%以下のマンガン;
0.02%以下の窒素;及び
0.04%以下の酸素;及び
残部質量%の鉄並びに偶発元素及び不純物を含む、ステップと、
上記アトマイズ合金粉末を用いた付加製造を実施して、製造物品を生成するステップであって、上記付加製造は、アルゴン(Ar)雰囲気下で実施される、ステップと、
製造物品を取り出すステップと、
を含む、方法。
実施形態15.
合金化された粒子は、質量%で:
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.14%~0.16%の炭素;
0.12%~0.18%のチタン;
0.01%~0.21%のバナジウム;
0.4%~0.6%のタングステン;及び
0.4%~0.6%のモリブデン;
を含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態16.
合金化された粒子は、質量%で:
13.75%~14.25%のクロム;
4.75%~5.25%のニッケル;
0.11%~0.15%の炭素;及び
0.02%~0.14%のチタン;
を含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態17.
完成した製造物品は:
30%未満のδ-フェライト及びγ-オーステナイトであるミクロ構造と;
44~50HRCの硬度値と;
x-y試験片について、15%~約21%の伸びと;
を有する、実施形態16に記載の方法。
実施形態18.
ビルドプレートを温度175℃~200℃の温度に予熱するステップを更に含み;
完成した製造物品は:
1%未満のδ-フェライト、1%未満のγ-オーステナイト、及び約99%のマルテンサイトであるミクロ構造と;
x-y試験片について、10%~14%の伸びと;
x-y試験片について、1125MPa~1135MPaの降伏強さと、
を有する、実施形態17に記載の方法。
実施形態19.
合金化された粒子は、クロムのニッケルに対する比が、質量で、2.7~2.9である、実施形態14~18のいずれか一項に記載の方法。
実施形態20.
完成した製造物品は:
185~235の室温靭性(KIC);及び
0mV SCE超の孔食電位
を有する、実施形態14~19のいずれか一項に記載の方法。
実施形態21.
実施形態14~20のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された製造物品。
【外国語明細書】