(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067907
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】経路生成システム及び経路生成方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/00 20060101AFI20230509BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230509BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G05D1/00 B
G05D1/02 N
A01B69/00 303M
A01B69/00 303Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029059
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2019047446の分割
【原出願日】2019-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】木村 暢宏
(57)【要約】
【課題】作業機の種類や幅等の各種の入力作業を必要とせずに、ユーザ等が意図する所望の目標走行経路を生成すること。
【解決手段】経路生成システムは、選択処理部と、生成処理部と、を備える。選択処理部は、ユーザの操作に応じて設定される複数の基準方位からいずれかの基準方位を選択する。生成処理部は、選択された基準方位に基づいて作業車両を自動走行させるための目標走行経路Pを生成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの操作に応じて設定される複数の基準方位からいずれかの基準方位を選択する選択処理部と、
選択された前記基準方位に基づいて作業車両を自動走行させるための目標走行経路を生成する生成処理部と、を備える、
経路生成システム。
【請求項2】
前記複数の基準方位の各々は、ユーザの操作に応じて設定される第1基準点及び第2基準点に基づいて設定される、
請求項1に記載の経路生成システム。
【請求項3】
前記選択処理部は、前記複数の基準方位からいずれかの基準方位を所定の条件に従って選択する、
請求項1又は2に記載の経路生成システム。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記作業車両の現在方位と前記基準方位との関係に関する条件を含む、
請求項3に記載の経路生成システム。
【請求項5】
ユーザの操作に応じて設定される複数の基準方位からいずれかの基準方位を選択することと、
選択された前記基準方位に基づいて作業車両を自動走行させるための目標走行経路を生成することと、を有する、
経路生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる目標走行経路を生成する経路生成システム及び経路生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の経路生成システムは、衛星測位システムを用いて作業車両の現在位置を取得し、経路生成システムにて生成した目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行システムに用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のシステムでは、パーソナルコンピュータ等の遠隔操作端末に対して、作業車両に装着する作業機の種類や幅等の各種の情報を入力しており、その入力情報に基づいて、目標走行経路を生成している。目標走行経路としては、例えば、平行に並ぶ複数の直線経路と、隣接する直線経路同士を連結する複数の連結経路とが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、目標走行経路を生成するために、作業機の種類や幅等の各種の情報の入力作業が必要となっている。よって、自動走行により作業を開始する際に、各種の情報の入力作業を行わなければならず、作業をスムーズに開始することができず、作業効率の低下を招いてしまう。
【0006】
また、ユーザ等が作業車両を運転操作して作業車両を実際に走行させたときの移動軌跡等に基づいて基準経路を生成して、その基準経路に応じた目標走行経路を生成することも行われている。この場合には、例えば、基準経路に平行に並ぶ複数の平行経路を生成し、隣接する基準経路と平行経路又は隣接する平行経路同士を連結する複数の連結経路を生成することで、基準経路、平行経路及び連結経路を含む目標走行経路を生成している。
【0007】
しかしながら、この場合でも、隣接する平行経路の間隔を設定するに当たり、作業機の種類や幅等の情報が必要となるので、これらの情報をユーザ等が入力しなければならない。また、これらの情報を入力しても、隣接する平行経路の間隔をユーザ等が意図している所望の間隔に設定できない可能性もある。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業機の種類や幅等の各種の入力作業を必要とせずに、ユーザ等が意図する所望の目標走行経路を生成することができる経路生成システム及び経路生成方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る経路生成システムは、選択処理部と、生成処理部と、を備える。前記選択処理部は、ユーザの操作に応じて設定される複数の基準方位からいずれかの基準方位を選択する。前記生成処理部は、選択された前記基準方位に基づいて作業車両を自動走行させるための目標走行経路を生成する。
【0010】
本発明の一態様に係る経路生成方法は、ユーザの操作に応じて設定される複数の基準方位からいずれかの基準方位を選択することと、選択された前記基準方位に基づいて作業車両を自動走行させるための目標走行経路を生成することと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
【
図3】目標走行経路を生成する際の作業領域を示す図
【
図4】目標走行経路を生成する際の作業領域を示す図
【
図5】目標走行経路を生成する際の作業領域を示す図
【
図6】目標走行経路を生成した状態の作業領域を示す図
【
図7】自動走行を行う場合の動作の流れを示すフローチャート
【
図10】自動走行を行う場合の動作の流れを示すフローチャート
【
図11】第2実施形態における自動走行システムの概略構成を示すブロック図
【
図12】第2実施形態における目標走行経路を生成した状態の作業領域を示す図
【
図14】第3実施形態における目標走行経路を生成した状態の作業領域を示す図
【
図15】第3実施形態における目標走行経路を生成する際の作業領域を示す図
【
図16】第3実施形態における目標走行経路を生成する際の作業領域を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る経路生成システムを適用した自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
この自動走行システムは、
図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両に適用することができる。
【0013】
この自動走行システムは、
図1及び
図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能なタッチパネル式の表示部51(例えば、液晶パネル)等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
【0014】
トラクタ1は、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪5、及び、駆動可能な左右の後輪6を有する走行機体7が備えられている。走行機体7の前方側には、ボンネット8が配置され、ボンネット8内には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)9が備えられている。走行機体7のボンネット8よりも後方側には、搭乗式の運転部を形成するキャビン10が備えられている。
【0015】
走行機体7の後部には、3点リンク機構11を介して、作業装置12の一例であるロータリ耕耘装置を昇降可能かつローリング可能に連結することができる。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置に代えて、モア、プラウ、播種装置、散布装置等の各種の作業装置12を連結することができる。
【0016】
トラクタ1には、
図2に示すように、エンジン9からの動力を変速する電子制御式の変速装置13、左右の前輪5を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構14、左右の後輪6を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構15、ロータリ耕耘装置等の作業装置12への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構16、ロータリ耕耘装置等の作業装置12を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構17、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット18、トラクタ1の車速を検出する車速センサ19、前輪5の操舵角を検出する舵角センサ20、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット21等が備えられている。
【0017】
なお、エンジン9には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置13には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、又は、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構14には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構14等を採用してもよい。
【0018】
キャビン10の内部には、
図1に示すように、パワーステアリング機構14(
図2参照)を介した左右の前輪5の手動操舵を可能にするステアリングホイール38、搭乗者用の運転席39、タッチパネル式の表示部、及び、各種の操作具等が備えられている。
【0019】
図2に示すように、車載電子制御ユニット18は、変速装置13の作動を制御する変速制御部181、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部182、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を制御する作業装置制御部183、自動走行時に左右の前輪5の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構14に出力する操舵角設定部184、及び、生成された自動走行用の目標走行経路P(例えば、
図6参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部185等を有している。
【0020】
図2に示すように、測位ユニット21には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、
図1及び
図2に示すように、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局4が設置されている。
【0021】
トラクタ1と基準局4との夫々には、
図2に示すように、測位衛星71(
図1参照)から送信された電波を受信する測位アンテナ24,61、及び、トラクタ1と基準局4との間における測位情報(補正情報)を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール25,62等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側の測位アンテナ24が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側の測位アンテナ61が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報(トラクタ1の現在位置を測定するための補正情報)とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット21は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0022】
トラクタ1に備えられる測位アンテナ24、通信モジュール25、及び、慣性計測装置23は、
図1に示すように、アンテナユニット80に収納されている。アンテナユニット80は、キャビン10の前面側の上部位置に配置されている。
【0023】
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示部51等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット52、及び、トラクタ側の通信モジュール25との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール53等が備えられている。端末電子制御ユニット52は、トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路P(例えば、
図6参照)を生成する走行経路生成部54、及び、ユーザが入力した各種の入力情報や走行経路生成部54が生成した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部55等を有している。
【0024】
走行経路生成部54による目標走行経路Pの生成の仕方については後述する。走行経路生成部54にて生成された目標走行経路Pは、表示部51に表示可能であり、経路情報として端末記憶部55に記憶されている。経路情報には、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度等が含まれている。
【0025】
このようにして、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路情報を転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得することができる。車載電子制御ユニット18は、取得した経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
【0026】
トラクタ1の自動走行を行う場合には、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始を指示している。車載電子制御ユニット18は、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う。車載電子制御ユニット18が、衛星測位システムを用いて測位ユニット21により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部として構成されている。
【0027】
自動走行制御には、変速装置13の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構15の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪5を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を自動制御する作業用自動制御、等が含まれている。
【0028】
自動変速制御においては、変速制御部181が、目標走行速度を含む目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力と車速センサ19の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1の車速として得られるように変速装置13の作動を自動制御する。
【0029】
自動制動制御においては、制動制御部182が、目標走行経路Pと測位ユニット21の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路情報に含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪6を適正に制動するようにブレーキ操作機構15の作動を自動制御する。
【0030】
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部184が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて左右の前輪5の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構14に出力する。パワーステアリング機構14が、目標操舵角と舵角センサ20の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪5の操舵角として得られるように左右の前輪5を自動操舵する。
【0031】
作業用自動制御においては、作業装置制御部183が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて、トラクタ1が目標走行経路Pの作業開始地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業(例えば耕耘作業)が開始され、かつ、トラクタ1が目標走行経路Pの作業終了地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動を自動制御する。
【0032】
このようにして、トラクタ1においては、変速装置13、パワーステアリング機構14、ブレーキ操作機構15、クラッチ操作機構16、昇降駆動機構17、車載電子制御ユニット18、車速センサ19、舵角センサ20、測位ユニット21、及び、通信モジュール25、等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0033】
この実施形態では、キャビン10にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン10にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
【0034】
キャビン10にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット18にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることができる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることができる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、運転席39の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の表示部51に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット18による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール38を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0035】
トラクタ1には、
図1及び
図2に示すように、トラクタ1(走行機体7)の周囲における障害物を検知して、障害物との衝突を回避するための障害物検知システム100が備えられている。障害物検知システム100は、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定可能な複数のライダーセンサ101,102と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーユニット103,104と、障害物検知部110と、衝突回避制御部111とが備えられている。
【0036】
ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104にて測定する測定対象物は、物体や人等としている。ライダーセンサ101,102は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前ライダーセンサ101と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後ライダーセンサ102とが備えられている。ソナーユニット103,104は、トラクタ1の右側を測定対象とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1の左側を測定対象とする左側のソナーユニット104とが備えられている。
【0037】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づいて、所定距離内の物体や人等の測定対象物を障害物として検知する障害物検知処理を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、障害物検知部110にて障害物を検知すると、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させる衝突回避制御を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させるだけでなく、報知ブザーや報知ランプ等の報知装置26を作動させて、障害物が存在することを報知している。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、通信モジュール25,53を用いて、トラクタ1から携帯通信端末3に通信して表示部51に障害物の存在を表示させることで、障害物が存在することを報知可能としている。
【0038】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づく障害物検知処理をリアルタイムで繰り返し行い、物体や人等の障害物を適切に検知している。衝突回避制御部111は、リアルタイムで検知される障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を行うようにしている。
【0039】
障害物検知部110及び衝突回避制御部111は、車載電子制御ユニット18に備えられている。車載電子制御ユニット18は、コモンレールシステムに含まれたエンジン用の電子制御ユニット、ライダーセンサ101,102、及び、ソナーユニット103,104等にCAN(Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。
【0040】
以下、走行経路生成部54による目標走行経路Pの生成の仕方について説明する。
ユーザ等が運転操作して作業領域R内でトラクタ1を走行させて実際に作業を行うことで、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成している。
【0041】
図3~
図5に示すように、作業領域Rにおいて、ユーザ等の手動運転によりトラクタ1を走行させることで、地点A(第1基準点に相当する)、地点B(第2基準点に相当する)、地点C(第3基準点に相当する)の夫々を登録している。地点A~Cを登録するために、
図2に示すように、地点A~地点Cを設定する基準点設定部56と、人為操作式の基準点設定用操作部57と、トラクタ1の挙動状態を検知する挙動状態検知部27とが備えられている。基準点設定部56及び基準点設定用操作部57は、携帯通信端末3に備えられ、挙動状態検知部27は、トラクタ1に備えられている。
【0042】
まず、
図3及び
図4に示すように、トラクタ1を地点Aから地点Bまで作業装置12にて作業を行いながら走行させる。このとき、基準点設定部56は、基準点設定用操作部57の操作に基づいて、作業の開始地点を地点Aとし、作業の終了地点を地点Bとして設定している。図示は省略するが、基準点設定用操作部57は、例えば、携帯通信端末3の表示部51に表示され、地点A用の操作部と地点B用の操作部と地点C用の操作部とが備えられている。自動走行を行う場合には、運転席39の近傍に配置された端末保持部等に携帯通信端末3を設置しているので、基準点設定用操作部57がトラクタ1(作業車両)に備えられた操作具となっている。
【0043】
基準点設定用操作部57は、携帯通信端末3の表示部51に表示されるものに限らず、各種の操作部を適用することができる。例えば、トラクタ1の表示部に表示されるものとしたり、トラクタ1の運転席39の近傍に配置される操作スイッチや操作ボタンとすることもできる。また、後述するが、
図13に示すリモートコントローラ200を基準点設定用操作部57とすることもでき、トラクタ1に搭乗するユーザ等が基準点設定用操作部57(リモートコントローラ200)を携帯することもできる。
【0044】
作業の開始地点にトラクタ1が位置するときに、基準点設定用操作部57の地点A用の操作部をユーザ等が操作すると、基準点設定部56は、その操作時点における測位ユニット21の位置情報(トラクタ1の位置情報)を取得して、作業領域Rに地点A(緯度・経度から定まる地点)を設定している。また、作業の終了地点にトラクタ1が到達して、基準点設定用操作部57の地点B用の操作部をユーザ等が操作すると、基準点設定部56は、その操作時点における測位ユニット21の位置情報(トラクタ1の位置情報)に基づいて、作業領域Rに地点B(緯度・経度から定まる地点)を設定している。
【0045】
次に、
図4及び
図5に示すように、トラクタ1を作業装置12による作業を行わずに地点Bから地点Cまで旋回走行させて、地点Cにて作業装置12による作業を開始させる。このときも、基準点設定部56は、基準点設定用操作部57の操作に基づいて、次の作業開始地点を地点Cとして設定している。次の作業開始地点にトラクタ1が到達して、基準点設定用操作部57の地点C用の操作部をユーザ等が操作すると、基準点設定部56は、その操作時点における測位ユニット21の位置情報(トラクタ1の位置情報)に基づいて、作業領域Rに地点C(緯度・経度から定まる地点)を設定している。
【0046】
このように、基準点設定部56は、基準点設定用操作部57の操作タイミングに応じて、測位ユニット21にてトラクタ1の位置情報を取得して、作業領域Rにおいて、地点A、地点B、及び、地点Cの夫々を設定している。基準点設定部56は、地点A~地点Cの設定情報を車載記憶部185に記憶させている。
【0047】
基準点設定部56は、基準点設定用操作部57の操作を行わなくても、挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、測位ユニット21にてトラクタ1の位置情報を取得して、作業領域Rにおいて、地点A、地点B、及び、地点Cの夫々を自動的に設定することもできる。
【0048】
トラクタ1が作業装置12による作業を開始する場合には、昇降駆動機構17にて作業装置12を作業高さに昇降させて、クラッチ操作機構16にて作業クラッチをON操作している。また、トラクタ1が作業装置12による作業を終了する場合には、昇降駆動機構17にて作業装置12を作業高さとは異なる非作業高さに昇降させて、クラッチ操作機構16にて作業クラッチをOFF操作している。これにより、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動状態の変化を検知することで、トラクタ1が作業装置12による作業を開始した作業開始時点、及び、トラクタ1が作業装置12による作業を終了した作業終了時点を把握することができる。
【0049】
挙動状態検知部27は、例えば、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動状態等、トラクタ1における各種の挙動を検知している。基準点設定部56は、挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、挙動の変化を監視しており、作業開始に対応する挙動の変化(クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動状態の変化)があることで、作業開始時点を特定し、作業終了に対応する挙動の変化があることで、作業終了時点を特定している。
【0050】
まず、基準点設定部56は、挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、作業開始時点を特定すると、その特定時点における測位ユニット21の位置情報(トラクタ1の位置情報)に基づいて、作業領域Rに地点Aを設定している。次に、基準点設定部56は、挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、作業終了時点を特定すると、その特定時点における測位ユニット21の位置情報に基づいて、作業領域Rに地点Bを設定している。次に、基準点設定部56は、挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、作業開始時点を特定すると、その特定時点における測位ユニット21の位置情報に基づいて、作業領域Rに地点Cを設定している。
【0051】
上述の如く、基準点設定部56が、基準点設定用操作部57の操作又は挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、作業領域Rにおいて地点A~地点Cを設定すると、走行経路生成部54は、地点A~地点Cに基づいて、目標走行経路Pを生成している。
【0052】
走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成するに当たり、作業領域情報取得部58(
図2参照)にて地点A~地点Cが属する作業領域Rに関する作業領域情報を取得している。作業領域情報は、例えば、作業領域Rを特定するための識別情報、作業領域Rの位置情報、及び、作業領域Rの形状情報を含むものである。外部の管理装置(データベース)には、複数の作業領域Rの夫々における作業領域情報が管理されている。管理装置は、例えば、データベース等に格納されている地図情報等から作業領域情報を取得したり、作業領域の形状等を計測したときの計測情報等から作業領域情報を取得したり、各種の手法を用いて、複数の作業領域Rの夫々における作業領域情報を取得して管理している。
【0053】
作業領域情報取得部58は、地点A~地点Cの夫々における位置情報を通信装置等を介して管理装置に通信し、管理装置は、地点A~地点Cの夫々における位置情報に基づいて、複数の作業領域Rのうちから、地点A~地点Cに属する作業領域Rを特定している。管理装置は、特定した作業領域Rに関する作業領域情報を通信装置等を介して作業領域情報取得部58に通信している。このようにして、作業領域情報取得部58は、地点A~地点Cが属する作業領域Rに関する作業領域情報を取得している。
【0054】
ちなみに、作業領域情報取得部58にて通信する地点A~地点Cの夫々における位置情報が属する作業領域Rが存在しない場合には、管理装置が、地点A~地点Cの登録エラーを作業領域情報取得部58に通信している。これにより、作業領域情報取得部58は、表示部51等に地点A~地点Cの登録エラーであることを表示させ、ユーザ等に登録エラーを報知している。この登録エラーの場合には、再度、地点A~地点Cの登録を行うことになる。
【0055】
走行経路生成部54は、
図6に示すように、作業領域情報取得部58にて取得した作業領域情報にて特定される作業領域R内に、目標走行経路Pとして、地点A及び地点Bに基づく第1基準線P1に平行な複数の平行経路P2を含む経路を生成し、第1基準線P1と平行経路P2との間及び平行経路P2同士の間の間隔を地点Bと地点Cとの間の距離に基づいて設定している。走行経路生成部54は、地点Aと地点Bとを結ぶ直線を第1基準線P1として生成している。この第1基準線P1を、トラクタ1を自動走行させる第1基準経路として車載記憶部185に記憶させておくこともできる。走行経路生成部54は、第1基準線P1と同じ又は略同じ長さの経路を、地点Bと地点Cとを結ぶ直線に沿う方向に地点Bと地点Cとの間に相当する距離だけ間隔を隔てて平行に複数並設させることで、作業領域Rの全体に亘る状態でゴール地点Gに至るまでの複数の平行経路P2を生成している。複数の平行経路P2は、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業を行う経路となっている。
【0056】
走行経路生成部54は、
図6に示すように、平行経路P2に加えて、連結経路P3を生成している。走行経路生成部54は、隣接する平行経路P2同士を連結する複数の連結経路P3を生成している。連結経路P3は、作業を行わずに、トラクタ1の走行方向を転換させるための経路となっている。
【0057】
このように、走行経路生成部54が、複数の平行経路P2、複数の連結経路P3を生成することで、トラクタ1が、複数の平行経路P2を往復走行しながら、所定の作業を行う目標走行経路Pを生成することができる。よって、ユーザ等が作業装置12の種類や幅等の各種の情報を入力する入力作業を行っていなくても、地点A~地点Cを登録するだけで、目標走行経路Pを生成することができる。しかも、地点A~地点Cの夫々は、ユーザ等の手動運転による実際の作業に応じた地点とすることができ、平行経路P2の経路長さや隣接する平行経路P2同士の間隔等、ユーザ等が意図する所望の目標走行経路Pを生成することができる。
【0058】
走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路情報を転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得している。これにより、車載電子制御ユニット18は、取得した経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。例えば、トラクタ1の自動走行中には、目標走行経路Pの走行方向に直交する方向でのトラクタ1の現在位置と目標走行経路Pとの偏差(横方向偏差)を、携帯通信端末3の表示部51やトラクタ1の表示部に表示させている。よって、トラクタ1の自動走行中には、ユーザ等が目標走行経路Pに対してトラクタ1の位置がどれくらいずれているかを把握できるようにしている。
【0059】
自動走行を行う場合の動作の流れについて、
図7のフローチャートに基づいて説明する。
まず、
図3~
図5に示すように、ユーザ等の手動運転にて作業領域R内でトラクタ1を走行させて実際に作業を行い、基準点設定部56による地点A~地点Cの登録(設定)を行う(ステップ#1、ステップ#2)。作業領域情報取得部58が、地点A~地点Cの登録情報(位置情報)に基づいて、地点A~地点Cが属する作業領域Rの作業領域情報を取得し、走行経路生成部54が、
図6に示すように、複数の平行経路P2、及び、複数の連結経路P3を含む目標走行経路Pを生成している(ステップ#3、ステップ#4)。
【0060】
各種の自動走行開始条件が満たされ、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始が指示されると、車載電子制御ユニット18が、
図6に示すように、衛星測位システムを用いて測位ユニット21により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、作業領域R内の目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う(ステップ#5のYesの場合、ステップ#6)。
【0061】
自動走行制御では、車載電子制御ユニット18が、複数の平行経路P2の始端位置P2aにて作業装置12による作業を開始し、複数の平行経路P2の終端位置P2bにて作業装置12による作業を終了する形態で、複数の平行経路P2の夫々に沿ってトラクタ1を自動直線走行させている。連結経路P3については、車載電子制御ユニット18が、作業装置12による作業を行わない形態で、複数の連結経路P3の夫々に沿ってトラクタ1を自動旋回走行させている。車載電子制御ユニット18は、平行経路P2から連結経路P3に引き続いて自動走行させ、且つ、連結経路P3から平行経路P2に引き続いて自動走行させる形態で、ゴール地点Gまでトラクタ1を自動走行させている。
【0062】
上述の如く、車載電子制御ユニット18は、連結経路P3についてもトラクタ1を自動走行させているが、連結経路P3については、ユーザ等の手動操作によりトラクタ1を手動運転させるようにしてもよい。この場合には、平行経路P2の終端位置P2bにて自動運転から手動運転に切り替えられ、トラクタ1の走行方向の方位と平行経路P2の延設方向の方位とが所定範囲内となる等の各種の自動走行開始条件が成立して、自動走行の開始が指示されると、手動運転から自動運転に切り替えられ、次の平行経路P2に沿ってトラクタ1が自動走行される。手動運転を行う場合には、携帯通信端末3の表示部51やトラクタ1の表示部に、トラクタ1の現在位置と平行経路Pとを重畳表示させることで、手動運転されるトラクタ1を平行経路P2に向けて案内することができる。このように、連結経路P3に対してトラクタ1を手動運転させる場合には、走行経路生成部54が、連結経路P3を生成せずに、平行経路P2のみ生成することもできる。
【0063】
作業領域Rでの作業が終了して、設定情報消去条件が満たされると、車載電子制御ユニット18が、車載記憶部185に記憶されている地点A~地点Cの設定情報を消去している。これにより、次の作業領域Rにおける地点A~地点Cを登録できるようにしている。設定情報消去条件は、例えば、トラクタ1が作業領域R外に移動したことや、自動走行の終了から設定時間が経過したこと等、各種の条件を設定することができる。
【0064】
自動走行中には、作業領域R外へのトラクタ1の飛び出しを防止するために、トラクタ1が作業領域Rの端部等に接近した接近状態をユーザ等に報知している。
図2に示すように、地点A、地点B、作業領域情報取得部58が取得した作業領域情報に基づいて、作業領域Rの端部に対する接近状態であることを報知する端部報知を行う報知位置を特定する報知位置特定部59と、トラクタ1が自動走行を行う場合に、トラクタ1の現在位置が報知位置に到達すると、端部報知を行う端部報知制御部186とが備えられている。
【0065】
報知位置特定部59は、携帯通信端末3に備えられており、
図6に示すように、地点A及び地点Bの位置情報に基づいて、複数の平行経路P2の夫々における終端位置P2bを報知位置として特定している。例えば、報知位置特定部59は、平行経路P2上において、地点A及び地点Bと同じ位置を報知位置として特定することができる。報知位置特定部59は、終端位置P2bに加えて又は代えて、作業領域情報(特に、作業領域Rの端部の位置情報)に基づいて、作業領域Rの端部に対して設定距離まで接近した位置を報知位置として特定することもできる。報知位置特定部59は、平行経路P2の終端位置P2b、及び、作業領域Rの端部に対して設定距離まで接近した位置を報知位置として特定可能であるが、どちらの位置を報知位置として特定するか、又は、両方の位置を報知位置として特定するかをユーザ等が選択することができる。
【0066】
このように、報知位置特定部59が報知位置を特定しているので、トラクタ1を自動走行させる自動走行制御において、端部報知制御部186が、衛星測位システムを用いて測位ユニット21により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、トラクタ1の現在位置が報知位置(例えば、終端位置P2b)に到達していると判定すると、報知装置26を作動させて端部報知を行い、作業領域Rの端部等に接近した接近状態をユーザ等に報知している。端部報知では、例えば、接近状態であるとの音声、警報ランプの点灯、警報ブザーの作動等の報知装置26による各種の報知を行うことができる。また、端部報知では、トラクタ1の報知装置26を作動させるだけでなく、携帯通信端末3の表示部51に接近状態であることを表示させる等、携帯通信端末3においても接近状態を報知することができる。
【0067】
端部報知制御部186が端部報知を行うのに伴って、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1を走行停止させることもできる。このように、トラクタ1を走行停止させることで、作業領域R外へのトラクタ1の飛び出しを適切に防止することができる。
【0068】
基準点設定部56は、
図8に示すように、地点A~地点Cに加えて、地点D(第4基準点に相当する)を設定可能に構成されている。地点Dは、第1基準線P1と異なる第2基準線P4を生成するためのものであり、基準点設定部56は、地点A~地点Cと同様に、基準点設定用操作部57の操作又は挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、測位ユニット21にてトラクタ1の位置情報を取得し、その取得した位置情報を地点Dの位置情報として、作業領域Rにおいて地点Dを設定している。
【0069】
挙動状態検知部27の検知情報に基づいて地点Dを設定する場合には、地点Dにて自動走行を終了することで、トラクタ1の走行方向が平行経路P2とは異なる方向に変更されたり、トラクタ1の自動走行が終了して走行停止されるので、挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、トラクタ1の走行方向が平行経路P2とは異なる方向に変更されたことや、トラクタ1の自動走行が終了して走行停止されたことを特定することで、自動走行終了時点を特定することができる。
【0070】
走行経路生成部54は、基準点設定部56にて地点Dを設定すると、地点Dと地点A又は地点Bとを結ぶ第2基準線P4を生成している。地点Dと地点Aとを結ぶ直線、及び、地点Dと地点Bとを結ぶ直線のうち、第1基準線P1に対して交差する角度が90度に近い側を第2基準線P4としている。
図8に示すものでは、例えば、地点Dと地点Aとを結んだ直線が第1基準線P1に直交するので、地点Dと地点Aとを結ぶ第2基準線P4を生成している。第2基準線P4は、地点Dと地点A又は地点Bを結ぶものであればよく、第1基準線P1に対して直交するものに限らず、第1基準線P1に対して傾斜して交差するものでもよい。
【0071】
走行経路生成部54は、
図9に示すように、所定条件の成立に伴って第1基準線P1及び第2基準線P4の何れかの基準線を選択し、目標走行経路Pとして、第1基準線P1、複数の平行経路P2、複数の連結経路P3に加えて、トラクタ1の現在位置から選択した基準線P1,P4に平行な追加経路P5、P6を含む経路を生成している。例えば、追加経路P5、P6は、第1基準線P1及び複数の平行経路P2が生成された作業領域Rの中央領域の周囲における周囲領域において、トラクタ1を自動走行させるために生成することができる。
【0072】
図9に示すものでは、追加経路P5、P6について(1)~(8)の作業順序を図示しているので、作業順序に沿って説明を加える。
(1)地点Dに到達した後、トラクタ1が手動運転されて、
図9中下方側に移動してトラクタ1の走行方向の方位と第2基準線P4の延設方向の方位とが所定範囲内になると、所定の条件が成立する。これにより、走行経路生成部54は、第2基準線P4を選択して、第2基準線P4に平行な作業順序(1)の追加経路P6を生成し、車載電子制御ユニット18は、作業順序(1)の追加経路P6に沿ってトラクタ1を自動走行させる。
【0073】
ここで、追加経路P6の生成の仕方について説明を加える。ちなみに、追加経路P5、P6の生成の仕方は、同様であるので、(2)~(8)では、説明は省略する。走行経路生成部54は、所定条件が成立したときのトラクタ1の位置を基準として追加経路P6の始端位置を設定し、追加経路P6の終端位置P6aが選択した平行な第2基準線P4の端部位置(地点A又は地点D)と同じ又は略同じとなるように、追加経路P6を生成している。
【0074】
例えば、
図9では、左右方向で地点Dと同じ位置にトラクタ1が移動しているときに、トラクタ1の走行方向の方位と第2基準線P4の延設方向の方位とが所定範囲内になっている。これにより、そのときのトラクタ1の位置を基準として追加経路P6の始端位置が設定され、追加経路P6の終端位置P6aは、トラクタ1が位置する側と反対側の第2基準線P4の端部位置(地点A)に設定される。よって、第2基準線P4と同じ長さの追加経路P6が生成されることになる。
【0075】
それに対して、
図9において、地点Dよりも右側にトラクタ1が移動しているときに、トラクタ1の走行方向の方位と第2基準線P4の延設方向の方位とが所定範囲内になると、そのときのトラクタ1の位置を基準として追加経路P6の始端位置が設定される。よって、第2基準線P4よりも長さの長い追加経路P6が生成されることになる。逆に、
図9において、地点Dよりも左側にトラクタ1が移動しているときに、トラクタ1の走行方向の方位と第2基準線P4の延設方向の方位とが所定範囲内になると、そのときのトラクタ1の位置を基準として追加経路P6の始端位置を設定するので、第2基準線P4よりも長さの短い追加経路P6が生成されることになる。
【0076】
(2)作業順序(1)における追加経路P6の自動走行が終了した後、トラクタ1が手動運転されて、
図9中下方側に移動してトラクタ1の走行方向の方位と第2基準線P4の延設方向の方位とが所定範囲内になると、所定の条件が成立する。これにより、走行経路生成部54は、第2基準線P4を選択して、第2基準線P4に平行な作業順序(2)の追加経路P6を生成し、車載電子制御ユニット18は、作業順序(2)の追加経路P6に沿ってトラクタ1を自動走行させる。
【0077】
(3)作業順序(2)における追加経路P6の自動走行が終了した後、トラクタ1が手動運転されて、
図9中上方側に移動してトラクタ1の走行方向の方位と第1基準線P1の延設方向の方位とが所定範囲内になると、所定の条件が成立する。これにより、走行経路生成部54は、第1基準線P1を選択して、第1基準線P1に平行な作業順序(3)の追加経路P5を生成する。よって、車載電子制御ユニット18は、作業順序(3)の追加経路P5に沿ってトラクタ1を自動走行させる。
【0078】
(4)~(8)については、選択する基準線が異なるだけで、(2)及び(3)等と同様の動作を行うので、説明は省略する。
【0079】
図9に示す追加経路P5、P6にて自動走行を行う場合の動作の流れについて、
図10のフローチャートに基づいて説明する。ちなみに、追加経路P5、P6の自動走行は、
図7のフローチャートにて示したように、複数の平行経路P2、複数の連結経路P3にて地点Dまでの自動走行に引き続いて行われる。
【0080】
図9に示すように、トラクタ1が地点Dに到達して作業装置12による作業を終了すると、基準点設定部56による地点Dの登録(設定)を行う(ステップ#11)。走行経路生成部54は、地点Dの登録情報(位置情報)に基づいて、第2基準線P4を生成している(ステップ#12)。
【0081】
地点Dに到達した後、ユーザ等の手動操作によりトラクタ1が手動運転されることになるが、この手動運転中に、走行経路生成部54が、所定の条件が成立するか否かを判定している(ステップ#13、ステップ#14)。所定の条件は、トラクタ1の走行方向の方位と基準線の延設方向の方位(第1基準線P1の延設方向の方位又は第2基準線P4の延設歩行の方位)とが所定範囲内となる条件に設定されている。ちなみに、トラクタ1の走行方向の方位については、測位ユニット21の測定情報から取得することができ、基準線の延設方向の方位については、第1基準線P1及び第2基準線P4の位置情報から取得することができる。
【0082】
所定の条件が成立すると、走行経路生成部54は、第1基準線P1と第2基準線P4とのどちらの基準線との間で所定の条件が成立したかに応じて、第1基準線P1と第2基準線P4のいずれかの基準線を選択している(ステップ#15)。走行経路生成部54は、トラクタ1の現在位置から選択した基準線に平行な追加経路P5、P6を生成している(ステップ#16)。ちなみに、第1基準線P1と第2基準線P4の両方について所定の条件が成立する場合には、トラクタ1の走行方向の方位と基準線の延設方向の方位との偏差が小さい方の基準線を選択することになる。
【0083】
走行経路生成部54が追加経路P5、P6を生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1に追加経路P5、P6に関する経路情報を転送することで、車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得している。これにより、各種の自動走行開始条件が満たされ、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始が指示されると、車載電子制御ユニット18は、取得した経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、追加経路P5、P6に沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う(ステップ#17)。
【0084】
このときの自動走行制御では、車載電子制御ユニット18が、作業装置12による作業を開始し、追加経路P5、P6の終端位置P5a、P6aにて作業装置12による作業を終了する形態で、追加経路P5、P6に沿ってトラクタ1を自動直線走行させている。作業装置12による作業を開始する際には、トラクタ1が手動運転されているので、ユーザ等の手動操作により作業装置12による作業を開始することもできる。
【0085】
このように、所定の条件が成立するまでトラクタ1を手動運転させて、所定の条件が成立して、追加経路P5、P6が生成されると、その追加経路P5、P6に沿ってトラクタ1を自動走行させており(ステップ#13~ステップ#17)、これらの動作を作業領域Rでの作業が終了されるまで、繰り返し行われる(ステップ#18のNoの場合)。車載電子制御ユニット18は、トラクタ1が作業領域R外に移動される等の作業終了条件が成立すると、作業領域Rでの作業が終了したと判定している。
【0086】
追加経路P5、P6を自動走行する場合でも、上述の場合と同様に、作業領域R外へのトラクタ1の飛び出しを防止するために、トラクタ1が作業領域Rの端部等に接近した接近状態をユーザ等に報知している。報知位置特定部59は、
図9に示すように、追加経路P5、P6の位置情報に基づいて、追加経路P5、P6における終端位置P5a、P6aを報知位置として特定している。例えば、追加経路P5を生成している場合には、報知位置特定部59が、追加経路P5上において、地点A又は地点Bと同じ位置となる終端位置P5aを報知位置として特定し、追加経路P6を生成している場合には、報知位置特定部59が、追加経路P6上において、地点A又は地点Dと同じ位置となる終端位置P6aを報知位置として特定している。報知位置特定部59は、追加経路P5、P6における終端位置P5a、P6aに加えて又は代えて、作業領域情報(特に、作業領域Rの端部の位置情報)に基づいて、作業領域Rの端部に対して設定距離まで接近した位置を報知位置として特定することもできる。
【0087】
報知位置特定部59が報知位置を特定しているので、追加経路P5、P6に沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御において、端部報知制御部186が、トラクタ1の現在位置が報知位置(例えば、終端位置P5a、P6a)に到達していると判定すると、報知装置26を作動させて端部報知を行い、作業領域Rの端部等に接近した接近状態をユーザ等に報知している。追加経路P5、P6における終端位置P5a、P6aを報知位置とする場合には、報知装置26の作動により、ユーザ等が追加経路P5、P6での自動走行が終了することを認識することができるので、自動走行から手動運転への切換をスムーズに行うことができる。更に、作業領域Rの端部に対して設定距離まで接近した位置を報知位置とする場合には、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1が追加経路P5、P6の終端位置P5a、P6aに到達してもトラクタ1の自動走行を終了せずに、トラクタ1が報知位置に到達するまでトラクタ1の自動走行を継続することもできる。
【0088】
図9に示すように、地点A~地点Cを登録することで、作業領域Rの中央領域に対してトラクタ1の自動走行により作業を行うことができるだけでなく、更に、地点Dを登録することで、中央領域の周囲における周囲領域に対してもトラクタ1の自動走行により作業を行うことができ、作業領域Rの作業を効率よく行うことができる。
図9において、作業領域Rの四隅領域については、例えば、追加経路P5、P6での自動走行に引き続いて、ユーザ等の手動操作によるトラクタ1の手動運転によって作業を行うことができる。
【0089】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、第1実施形態の別実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同符号を記す等により説明は省略する。
【0090】
この第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、携帯通信端末3が備えられておらず、
図11に示すように、走行経路生成部54、基準点設定部56、報知位置特定部59等が、車載電子制御ユニット18に備えられている。基準点設定用操作部57として、
図11及び
図13に示すように、ユーザ等が携帯自在なリモートコントローラ200が備えられている。リモートコントローラ200は、トラクタ1の車載電子制御ユニット18との間で通信モジュール25、206等を介して各種の情報を通信自在に構成されている。リモートコントローラ200には、
図13に示すように、地点Aを登録するための地点A用の操作部201と、地点Bを登録するための地点B用の操作部202と、地点Cを登録するための地点C用の操作部203と、自動走行を指令するための円形状のAUTO用の操作部204とが備えられている。円形状のAUTO用の操作部204の周囲には、複数のLED等の発光部を有するリング状の表示部205が備えられ、表示部205は、複数の発光部の点灯状態を異ならせることで、複数の表示形態に切換自在に構成されている。
【0091】
第2実施形態における走行経路生成部54による目標走行経路Pの生成の仕方について説明する。
第1実施形態と同様に、ユーザ等が運転操作して作業領域R内でトラクタ1を走行させて実際に作業を行うことで、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成している。
【0092】
図3~
図5に示すように、作業領域Rにおいて、ユーザ等の手動運転によりトラクタ1を走行させることで、基準点設定部56は、リモートコントローラ200の操作(
図13参照)に基づいて、地点A、地点B、地点Cの夫々を登録している。例えば、基準点設定部56は、リモートコントローラ200の地点A用の操作部201が操作されると、その操作時点における測位ユニット21の位置情報(トラクタ1の位置情報)を取得して、作業領域Rに地点A(緯度・経度から定まる地点)を設定している。また、地点B、地点Cについても、同様に、基準点設定部56は、リモートコントローラ200の地点B用の操作部202の操作、及び、リモートコントローラ200の地点C用の操作部203の操作に基づいて、地点B及び地点C(緯度・経度から定まる地点)を設定している。ちなみに、基準点設定部56は、第1実施形態と同様に、挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、測位ユニット21にてトラクタ1の位置情報を取得して、作業領域Rにおいて、地点A、地点B、及び、地点Cの夫々を自動的に設定することもできる。
【0093】
基準点設定部56が、リモートコントローラ200の操作又は挙動状態検知部27の検知情報に基づいて、作業領域Rにおいて地点A~地点Cを設定すると、走行経路生成部54は、地点A~地点Cに基づいて、目標走行経路Pを生成している。
【0094】
第1実施形態では、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成するに当たり、作業領域情報取得部58にて地点A~地点Cが属する作業領域Rに関する作業領域情報を取得しているが、第2実施形態では、作業領域情報取得部58が備えられておらず、作業領域情報を取得することなく、
図12に示すように、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成している。
【0095】
走行経路生成部54は、
図12に示すように、目標走行経路Pとして、地点A及び地点Bに基づく第1基準線P1に平行な複数の平行経路P2を含む経路を生成し、第1基準線P1と平行経路P2との間及び平行経路P2同士の間の間隔を地点Bと地点Cとの間の距離に基づいて設定している。走行経路生成部54は、地点Aと地点Bとを結ぶ直線を第1基準線P1として生成している。走行経路生成部54は、第1基準線P1と同じ又は略同じ長さの経路を、地点Bと地点Cとを結ぶ直線に沿う方向に地点Bと地点Cとの間に相当する距離だけ間隔を隔てて平行に複数並設させることで、設定本数の平行経路P2を生成している。平行経路P2は、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業を行う経路となっている。
【0096】
第2実施形態では、作業領域情報を取得していないので、走行経路生成部54は、作業領域Rの位置や形状にかかわらず、設定本数(例えば、
図12では10本)の平行経路P2を生成している。そして、走行経路生成部54は、平行経路P2に加えて、連結経路P3を生成している。走行経路生成部54は、隣接する平行経路P2同士を連結する複数の連結経路P3を生成している。連結経路P3は、作業を行わずに、トラクタ1の走行方向を転換させるための経路となっている。
【0097】
このように、走行経路生成部54が、複数の平行経路P2、複数の連結経路P3を生成することで、トラクタ1が、複数の平行経路P2を往復走行しながら、所定の作業を行う目標走行経路Pを生成することができる。よって、ユーザ等が作業装置12の種類や幅等の各種の情報を入力する入力作業を行っていなくても、地点A~地点Cを登録するだけで、目標走行経路Pを生成することができる。しかも、地点A~地点Cの夫々は、ユーザ等の手動運転による実際の作業に応じた地点とすることができ、平行経路P2の経路長さや隣接する平行経路P2同士の間隔等、ユーザ等が意図する所望の目標走行経路Pを生成することができる。
【0098】
自動走行を行う場合には、各種の自動走行開始条件が満たされた状態でリモートコントローラ200のAUTO用の操作部204が操作されることで、車載電子制御ユニット18が、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う。このときの自動走行制御では、車載電子制御ユニット18が、平行経路P2の始端位置P2aにて作業装置12による作業を開始し、平行経路P2の終端位置P2bにて作業装置12による作業を終了してトラクタ1を走行停止させる形態で、複数の平行経路P2の夫々に沿ってトラクタ1を自動直線走行させている。平行経路P2の終端位置P2bにてトラクタ1が走行停止した後、リモートコントローラ200のAUTO用の操作部204が操作されると、車載電子制御ユニット18は、作業装置12による作業を行わない形態で、複数の連結経路P3の夫々に沿ってトラクタ1を自動旋回走行させている。
【0099】
このように、自動走行制御では、平行経路P2の終端位置P2bにてトラクタ1が走行停止されるので、再度、リモートコントローラ200のAUTO用の操作部204が操作されなければ、連結経路P3での自動走行が行われない。よって、作業領域Rの端部に接近して作業領域R側に飛び出す可能性がある場合には、ユーザ等がリモートコントローラ200のAUTO用の操作部204の操作を行わず、作業領域R外への飛び出しを防止することができる。これにより、
図12に示すように、作業領域R外にも目標走行経路Pを生成しても、作業領域R外にトラクタ1が飛び出すことなく、自動走行を行うことができる。
【0100】
上述の如く、車載電子制御ユニット18は、連結経路P3についてもトラクタ1を自動走行させているが、連結経路P3については、ユーザ等の手動操作によりトラクタ1を手動運転させるようにしてもよい。この場合には、平行経路P2の終端位置P2bにて自動運転から手動運転に切り替えられ、トラクタ1の走行方向の方位と平行経路P2の延設方向の方位とが所定範囲内となる等の各種の自動走行開始条件が成立して、自動走行の開始が指示されると、手動運転から自動運転に切り替えられ、平行経路P2に沿ってトラクタ1が自動走行される。手動運転を行う場合には、携帯通信端末3の表示部51やトラクタ1の表示部に、トラクタ1の現在位置と平行経路Pとを重畳表示させることで、手動運転されるトラクタ1を平行経路P2に向けて案内することができる。
【0101】
第2実施形態においても、自動走行する場合には、第1実施形態と同様に、作業領域R外へのトラクタ1の飛び出しを防止するために、トラクタ1が作業領域Rの端部等に接近した接近状態をユーザ等に報知している。報知位置特定部59は、
図12に示すように、地点A及び地点Bの位置情報に基づいて、平行経路P2における終端位置P2bを報知位置として特定している。報知位置特定部59が報知位置を特定しているので、平行経路P2に沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御において、端部報知制御部186が、トラクタ1の現在位置が報知位置(例えば、終端位置P2b)に到達していると判定すると、報知装置26を作動させて端部報知を行い、作業領域Rの端部等に接近した接近状態をユーザ等に報知している。この場合に、リモートコントローラ200の表示部205においても接近状態であることを表示させることができる。
【0102】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、第1実施形態において作業領域Rの形状が異なる場合を示すものであり、作業領域Rの形状を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同符号を記す等により説明は省略する。
【0103】
第1実施形態では、
図3等に示すように、作業領域Rが矩形状である場合を示しているが、この第3実施形態では、例えば、
図14に示すように、作業領域Rの形状が、図中左側が幅狭の一辺とし、図中右側が幅広の一辺とする横向きの台形状となっている。この場合には、地点Cを地点Bよりも作業領域Rの端部R1(図中、上端部)に接近する側に登録することができる。このように地点Cを登録しても、作業領域Rの端部R1が右側ほど上方側に位置する傾斜状となっているので、作業領域Rの端部R1と地点Bとが対向する距離と作業領域Rの端部R1と地点Cとが対向する距離とを同じ距離とすることができる。
【0104】
走行経路生成部54は、作業領域情報取得部58にて取得する作業領域情報から作業領域Rの形状を把握することができ、作業領域Rの形状を把握した上で目標走行経路Pを生成している。このとき、第1基準線P1に対して平行な複数の平行経路P2を生成する際に、第1基準線P1から離れる位置に生成する平行経路P2ほど設定長さ2Kだけ長い平行経路P2とする形態で、複数の平行経路P2を生成している。平行経路P2の設定長さ2Kは、例えば、第1基準線P1に沿う方向における地点Bと地点Cとの距離Kに基づいて設定することができ、第1基準線P1に沿う方向における地点Bと地点Cとの距離Kの2倍を設定長さ(2K)とすることができる。例えば、第1基準線P1に隣接する1本目の平行経路P2は、第1基準線P1よりも設定長さ2Kだけ長い経路とし、次の2本目の平行経路P2は、第1基準線P1よりも2倍の設定長さ(4K)だけ長い経路とすることができる。このように、平行経路P2を生成することで、平行経路P2の一端部(図中、上端部)同士を結んだ直線は、傾斜状の作業領域Rの端部R1と平行となるとともに、平行経路P2の他端部(図中、下端部)同士を結んだ直線は、傾斜状の作業領域Rの端部R2と平行となる。よって、作業領域Rの形状に応じた平行経路P2を生成することができる。
【0105】
また、
図15に示すように、作業領域Rの形状が、幅広領域R3と一対の幅狭領域R4、R5とを有する横向きU字状となっている場合もある。この場合には、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成するに当たり、候補となる複数種の目標走行経路Pを仮生成し、どの目標走行経路Pを生成するかをユーザ等が選択可能とすることができる。例えば、
図15に示すように、第1候補を実線にて示す目標走行経路Pとし、第2候補を実線及び点線にて示す目標走行経路Pとし、第3候補を実線及び一点鎖線にて示す目標走行経路Pとし、
図16に示すように、第4候補を実線にて示す目標走行経路Pとすることができる。第1候補は、
図15の実線にて示すように、作業領域Rのうち、幅広領域R3のみに目標走行経路Pを仮生成したものである。第2候補は、
図15の実線及び点線にて示すように、作業領域Rのうち、幅広領域R3及び一方側(上方側)の幅狭領域R4のみに目標走行経路Pを仮生成したものである。幅狭領域R4に対しては、幅広領域R3の平行経路P2よりも長さが短く、幅狭領域R4の幅(図中、上下幅)に応じた長さの平行経路P7が生成されている。第3候補は、
図15の実線及び一点鎖線にて示すように、作業領域Rのうち、幅広領域R3及び他方側(下方側)の幅狭領域R5のみに目標走行経路Pを仮生成したものである。幅狭領域R5に対しては、幅広領域R3の平行経路P2よりも長さが短く、幅狭領域R5の幅(図中、上下幅)に応じた長さの平行経路P8が生成されている。第4候補は、
図16の実線にて示すように、幅広領域R3及び一対の幅狭領域R4、R5の作業領域Rの全体に亘って目標走行経路Pを仮生成したものである。この第4候補では、上方側の幅狭領域R4と下方側の幅狭領域R5を結ぶ連結経路P9が生成されている。
【0106】
ユーザ等が複数の候補から1つの目標走行経路Pを選択する場合には、例えば、第1~第4候補の目標走行経路Pを識別可能な状態で携帯通信端末3の表示部51に表示させることができ、ユーザ等が表示部51を操作することで、1つの目標走行経路Pを選択可能としている。走行経路生成部54は、ユーザ等により1つの目標走行経路Pが選択されると、その選択された目標走行経路Pを自動走行を行う経路として生成している。
【0107】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0108】
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン9と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン9に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪6に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪6が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【0109】
(2)上記第1実施形態では、走行経路生成部54、基準点設定部56、作業領域情報取得部58、報知位置特定部59等が携帯通信端末3に備えられているが、例えば、走行経路生成部54、基準点設定部56、作業領域情報取得部58、報知位置特定部59等をトラクタ1に備えたり、外部の管理装置に備えることもでき、配置箇所は適宜変更することができる。
【0110】
<発明の付記>
本発明の第1特徴構成は、作業車両を自動走行させるための目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
前記作業車両を走行させたときの前記作業車両の位置情報に基づいて、第1基準線生成用の第1基準点及び第2基準点と、間隔設定用の第3基準点を設定する基準点設定部とが備えられ、
前記走行経路生成部は、前記目標走行経路として、前記第1基準点及び前記第2基準点に基づく第1基準線に平行な複数の平行経路を含む経路を生成し、第1基準線と平行経路との間の間隔及び平行経路同士の間の間隔を前記第2基準点と前記第3基準点との間の距離に基づいて設定している点にある。
【0111】
本構成によれば、ユーザ等が作業車両を走行させたときに、基準点設定部により第1~第3基準点を設定することができる。走行経路生成部は、第1基準点及び第2基準点に基づく第1基準線に平行な複数の平行経路を生成するだけでなく、第1基準線と平行経路との間の間隔及び平行経路同士の間の間隔を第2基準点と第3基準点との間の距離に基づいて設定している。これにより、ユーザ等が作業装置の種類や幅等の各種の情報を入力する入力作業を行っていなくても、第1~第3基準点を設定するだけで、目標走行経路を生成することができる。しかも、第1~第3基準点は、ユーザ等が作業車両を走行させたときに設定することができるので、平行経路の経路長さや隣接する平行経路同士の間隔等、ユーザ等が意図する所望の目標走行経路を生成することができる。
【0112】
本発明の第2特徴構成は、前記基準点設定部は、前記作業車両に備えられた操作具の操作に基づいて、前記第1基準点、前記第2基準点、及び、前記第3基準点を設定している点にある。
【0113】
本構成によれば、ユーザ等が操作具を操作することで、その操作に応じて、基準点設定部が、第1~第3基準点を設定することができる。これにより、ユーザ等が意図する地点にて操作具を操作するだけで、ユーザ等が意図する所望の目標走行経路を適切に生成することができ、使い勝手の良いものとなる。
【0114】
本発明の第3特徴構成は、前記基準点設定部は、前記作業車両の挙動状態に基づいて、前記第1基準点、前記第2基準点、及び、前記第3基準点を設定している点にある。
【0115】
本構成によれば、基準点設定部は、作業車両の挙動状態に応じて、第1~第3基準点を自動的に設定することができるので、ユーザ等の操作を必要とせず、ユーザ等の作業負担を軽減しながら、目標走行経路を適切に生成することができる。
【0116】
本発明の第4特徴構成は、前記第1基準点、前記第2基準点、及び、前記第3基準点が属する作業領域に関する作業領域情報を取得する作業領域情報取得部が備えられ、
前記走行経路生成部は、前記作業領域情報取得部にて取得した作業領域情報にて特定される作業領域内に前記目標走行経路を生成している点にある。
【0117】
本構成によれば、走行経路生成部は、第1~第3基準点だけでなく、作業領域情報取得部が取得した第1~第3基準点が属する作業領域に関する作業領域情報を加味した上で、その作業領域内に目標走行経路を生成するので、作業領域から逸脱することのない適切な目標走行経路を生成することができる。しかも、作業領域情報についても、ユーザ等が登録する作業を行わなくても、作業領域情報取得部にて取得することができるので、ユーザ等の作業負担の軽減を図ることもできる。
【0118】
本発明の第5特徴構成は、前記第1基準点、前記第2基準点、前記作業領域情報に基づいて、作業領域の端部に対する接近状態であることを報知する端部報知を行う報知位置を特定する報知位置特定部と、
前記作業車両が自動走行を行う場合に、前記作業車両の現在位置が前記報知位置に到達すると、前記端部報知を行う端部報知制御部とが備えられている点にある。
【0119】
本構成によれば、報知位置特定部は、第1基準点及び第2基準点だけでなく、作業領域情報に基づいて、端部報知を行う報知位置を特定するので、作業領域の形状等の作業領域の状況に応じた報知位置を特定することができる。これにより、作業車両が自動走行を行う場合に、端部報知制御部が、適切な報知位置にて端部報知を行うことができるので、接近状態であることをユーザ等に適切なタイミングにて報知することができる。よって、作業領域外に作業車両が飛び出してしまう等の不都合の発生を未然に防止することができる。
【0120】
本発明の第6特徴構成は、前記基準点設定部は、前記作業車両を走行させたときの前記作業車両の位置情報に基づいて、前記第1基準線とは異なる第2基準線生成用の第4基準点を設定可能に構成され、
前記走行経路生成部は、所定条件の成立に伴って前記第1基準線及び前記第2基準線の何れかの基準線を選択し、前記目標走行経路として、前記作業車両の現在位置から選択した基準線に平行な追加経路を含む経路を生成している点にある。
【0121】
本構成によれば、基準点設定部にて第4基準点を設定することで、走行経路生成部は、第1基準線だけでなく、第2基準線を選択することができ、第1基準線又は第2基準線に応じた追加経路を生成することができる。これにより、作業領域の状況等、各種の状況に応じて、第1基準線に応じた追加経路を生成したり、第2基準線に応じた追加経路を生成することができるので、各種の状況に対応しながらも、作業機の種類や幅等の各種の入力作業を必要とせずに、作業車両の自動走行を行うことができる。
【符号の説明】
【0122】
1 トラクタ(作業車両)
54 走行経路生成部
56 基準点設定部
58 作業領域情報取得部
59 報知位置特定部
186 端部報知制御部
P 目標走行経路
P1 第1基準線
P2 平行経路
P4 第2基準線
P5 追加経路
P6 追加経路
R 作業領域