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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067922
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20230509BHJP
   G01S 17/95 20060101ALI20230509BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20230509BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G01S17/95
G01S17/931
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030746
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2021108457の分割
【原出願日】2016-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】梁川 直治
(57)【要約】
【課題】光の反射を利用した距離測定装置において、天候に由来するノイズを低減し、測定精度を向上させる。
【解決手段】出力部110は、それぞれピーク波長が異なる複数の光を出力する。取得部120は、複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得する。処理部130は、複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する。距離算出部150は、距離測定装置10と光が照射される対象物体との距離を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天候に由来する成分を特定する装置であって、
それぞれピーク波長が異なる複数の光を出力する出力部と、
前記複数の光のそれぞれについて、前記出力部から光が出射されてから反射光が検出されるまでの時間と反射光の強度との関係を示す強度波形である反射パターンを取得する取得部と、
前記複数の反射パターンに基づいて、前記複数の反射パターンのうちの少なくとも一の前記反射パターンに含まれる前記天候に由来する成分を特定する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記複数の反射パターンにおいて反射光の強度のピークの時点が一致する一致ピークを抽出する一致ピーク抽出部と、
前記一致ピークの数を判定する一致ピーク数判定部と、
前記一致ピーク数判定部の判定結果に基づいて前記天候に由来する成分を特定する特定部とを備える装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記一致ピーク抽出部は、前記複数の反射パターンにおける前記反射光の強度のピークの時点を比較して前記一致ピークを抽出する装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、
前記特定部は、前記一致ピーク数判定部の判定結果において前記一致ピークの数が1であるとき、前記ピークの時点が一致したピーク以外のピークを前記天候に由来する成分として特定する装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置において、
前記特定部は、前記一致ピーク数判定部の判定結果において前記一致ピークの数が2以上であるとき、前記ピークの時点が一致したピークのうち前記光の前記ピーク波長が長いほどピーク強度が大きくなっているピークを前記天候に由来する成分として特定する装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の装置において、
前記処理部は、前記複数の反射パターンが取得される時点の天候を示す天候情報を用いて前記天候に由来する成分を特定する装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置において、
前記一致ピーク数判定部は、前記一致ピークの数が1であるか、2以上であるかを判定する装置。
【請求項7】
天候に由来する成分を特定する方法であって、
それぞれピーク波長が異なる複数の光を出力し、
前記複数の光のそれぞれについて、光が出射されてから反射光が検出されるまでの時間と反射光の強度との関係を示す強度波形である反射パターンを取得し、
前記複数の反射パターンに基づいて、前記複数の反射パターンのうちの少なくとも一の前記反射パターンに含まれる前記天候に由来する成分を特定し、
前記天候に由来する成分の特定において、
前記複数の反射パターンにおいて反射光の強度のピークの時点が一致する一致ピークを抽出し、
前記一致ピークの数を判定し、
前記一致ピークの前記数の判定結果に基づいて前記天候に由来する成分を特定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置および距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転等に用いることができる非接触距離測定装置の開発が行われている。非接触距離測定装置では、出射した光が物体に反射されて戻るまでの時間を測定して、周囲の物体との距離を測定する。ここで、天候に依存して反射光にノイズが生じることがある。
【0003】
たとえば特許文献1には、距離が既知の物体に対してレーザビームを照射し、反射光の受光波形データに基づいて天気を判別する装置が記載されている。
【0004】
また、たとえば特許文献2には、水による吸収量が多い波長域の近赤外光と水による吸収量が少ない波長域の近赤外光を投光して、各近赤外光の強度の変動値に基づき雪、霙、雨のいずれかを判別する技術が記載されている。特許文献2の技術では具体的には、閾値以上の変動値を有効値とし、各波長の有効値を比較演算して判別値とし、判別値を基準値と比較して判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-52465号公報
【特許文献2】特開2013-122413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および2の技術では、反射強度波形のうち天候に由来するノイズを低減することはできなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、光の反射を利用した距離測定装置において、天候に由来するノイズを低減し、測定精度を向上させることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、
それぞれピーク波長が異なる複数の光を出力する出力部と、
前記複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得する取得部と、
前記複数の反射パターンに基づいて、前記複数の反射パターンのうちの少なくとも一の前記反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する処理部と、
を備える距離測定装置である。
【0009】
第2の発明は、
それぞれピーク波長が異なる複数の光を出力し、
前記複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得し、
前記複数の反射パターンに基づいて、前記複数の反射パターンのうちの少なくとも一の前記反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する距離測定方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る距離測定装置の機能構成を例示するブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る距離測定装置の構成および使用環境を例示する図である。
図3】反射パターンの例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る処理部の機能構成を例示するブロック図である。
図5】第1の実施形態に係る距離測定方法のフローチャートである。
図6】第1の実施形態において処理部が行う処理内容を例示するフローチャートである。
図7】複数の反射パターンの第1の例を示す図である。
図8】複数の反射パターンの第2の例を示す図である。
図9】第1の実施形態において処理部が行う処理内容の変形例を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態に係る距離測定装置の機能構成を例示するブロック図である。
図11】第2の実施形態に係る処理部の機能構成を例示するブロック図である。
図12】第2の実施形態に係る距離測定方法のフローチャートである。
図13】第3の実施形態に係る処理部の機能構成を例示するブロック図である。
図14】第3の実施形態に係る天候に由来する成分を特定する工程の内容を示すフローチャートである。
図15】第4の実施形態に係る距離測定装置の構成を例示するブロック図である。
図16】第4の実施形態に係る距離測定装置の使用環境を示す図である。
図17】サーバの機能構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
以下に示す説明において、距離測定装置10の出力部110、取得部120、処理部130、距離算出部150、記憶部140、一致ピーク抽出部132、一致ピーク数判定部134、特定部136、天候情報取得部160、天候判定部138、通信部170、通信部610、選択部620、記憶部630は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。距離測定装置10の取得部120、処理部130、距離算出部150、記憶部140、一致ピーク抽出部132、一致ピーク数判定部134、特定部136、天候情報取得部160、天候判定部138、通信部170、通信部610、選択部620、記憶部630は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る距離測定装置10の機能構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る距離測定装置10は、出力部110、取得部120、および処理部130を備える。出力部110は、それぞれピーク波長が異なる複数の光を出力する。取得部120は、複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得する。処理部130は、複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する。
【0014】
また、本実施形態に係る距離測定装置10は、距離測定装置10と光が照射される対象物体との距離を算出する距離算出部150をさらに備える。距離算出部150は少なくとも一の反射パターンから天候に由来する成分を差し引くことにより補正反射パターンを生成し、補正反射パターンに基づいて距離を算出する。さらに、本図の例において距離測定装置10は記憶部140を備える。
【0015】
図2は、本実施形態に係る距離測定装置10の構成および使用環境を例示する図である。図1および図2を用いて、距離測定装置10の各構成要素を以下に詳しく説明する。図2において、複数の光を実線矢印および破線矢印で示している。以下では実線矢印で示した光を第1の光と呼び、破線矢印で示した光を第2の光と呼ぶ。
【0016】
距離測定装置10は、距離測定装置10から対象物体20までの距離を測定する装置である。距離測定装置10の出力部110(たとえばレーザ光源810)から出射された複数の光は対象物体20で反射されて距離測定装置10に向かって戻る。そして、反射光が第1受光素子850aおよび第2受光素子850bに入射し、反射光の強度が検出される。ここで、距離測定装置10では出力部110から光が出射されてから反射光が検出されるまでの時間が測定される。そして、取得部120は、その時間と反射光強度の関係を示す情報を、反射パターンを示す情報として取得する。反射パターンには対象物体20で反射された反射光に由来するピークが現れる。そして、出力部110から光が出射されてからその反射光が第1受光素子850aおよび第2受光素子850bに入射するまでの時間に、光の速度を乗ずることにより、距離測定装置10から対象物体20までの往復距離が算出される。反射パターンにおけるピーク位置は、レーザ光源810から光が出射されてからその反射光が第1受光素子850aおよび第2受光素子850bに入射するまでの時間に対応し、すなわち距離測定装置10から光を反射させた物体までの距離に対応する。距離測定装置10はたとえばLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)装置である。
【0017】
出力部110は、たとえばレーザ光源810である。また、出力部110が出力する光はパルス光である。出力部110は、それぞれピーク波長が異なる複数の光を出力する。第1の光のピーク波長は第1波長であり、第2の光のピーク波長は第2波長である。ここでピーク波長とは、各光のスペクトルのうち、最大の強度ピークを示す波長である。第1波長と第2波長とは互いに異なる波長である。第1波長の光はたとえば可視光であり、第1波長はたとえば380nm以上800nm以下である。また、第2波長の光はたとえば近赤外光であり、第2波長はたとえば800nm以上2500nm以下である。ただし、第1波長の光は近赤外光であってもよい。具体的には、第1の光の光源として波長780nmの光を発する半導体レーザ等が挙げられる。また、第2の光の光源として波長820nmの半導体レーザ等が挙げられる。複数の光のピーク波長は互いにたとえば50nm以上離れている。
【0018】
また、第1の光の光源として波長780nmまたは820nmの光を発する半導体レーザを用い、第2の光の光源として波長980nmの半導体レーザを用いても良い。「太陽電池の発電量に及ぼす雪面反射の影響」(The bulletin of Laboratory for Energy, Environment and Systems, Hachinohe Institute of Technology 10, 29-34,2012年3月30日)に示された雪の分光反射特性に照らせば、第1波長及び第2波長をこのような波長とすることで、さらに高精度でノイズ低減ができる。一方、光の散乱は、粒子の粒径と波長との関係でその大きさが異なるため、除去したいノイズの原因となる粒子の大きさが分かっている場合には、その粒径をまたいだ前後の波長を第1波長および第2波長とすることが好ましい。
【0019】
また、第1の光と第2の光の光軸はほぼ一致している。ただし本図において便宜上、実線矢印と破線矢印の光軸は互いにずらして示している。出力部110としては、図2の例の様に、二波長出力レーザダイオード等、ピーク波長が異なる複数の光を出力できるようパッケージされた光源を用いることができる。なお、本図の例に限定されず、出力部110は一つの光を出力する光源を複数用いて構成されても良い。この場合、ダイクロイックミラー、偏光プリズム、またはハーフミラー等を用いて複数の光の光軸を合わせ、距離測定装置10の外に出力することができる。
【0020】
レーザ光源810からは、ピーク波長が異なる複数のパルス光が同時に出力される。レーザ光源810の出力のタイミングはコントローラ812により制御される。コントローラ812は、情報処理装置870からの入力信号に基づいてレーザ光源810を制御する。情報処理装置870はたとえばCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェース等を備えるコンピュータである。
【0021】
レーザ光源810から出力された光はコリメーターレンズ814およびハーフミラー830を介して距離測定装置10の外部へ出力される。そして対象物体20で反射され、距離測定装置10に戻る。距離測定装置10からの複数の光の出力のタイミング、方向および位置はほぼ同じである。距離測定装置10に戻った光は少なくとも一部がハーフミラー830、検出側レンズ852を介して第1受光素子850aおよび第2受光素子850bに導かれる。第1受光素子850aおよび第2受光素子850bはたとえばフォトダイオードである。第1受光素子850aおよび第2受光素子850bは互いに同じ素子であってもよいし、たとえば第1の光および第2の光をそれぞれ有効に検出できるように検出可能な波長帯が異なっていてもよい。
【0022】
なお、ハーフミラー830の代わりに偏光ビームスプリッタを用いてもよい。図2の例において、取得部120は少なくとも第1受光素子850a、第2受光素子850b、検出回路853および情報処理装置870によって実現される。第1受光素子850aと検出側レンズ852の間には第1フィルタ851aが設けられ、第2受光素子850bと検出側レンズ852の間には第2フィルタ851bが設けられている。第1フィルタ851aは第1波長の光を透過させて他の波長の光の透過を抑制する光フィルタであり、第2フィルタ851bは第2波長の光を透過させて他の波長の光の透過を抑制する光フィルタである。たとえば、第1フィルタ851aの第1波長の光に対する透過率は90%以上であり、第2波長の光に対する透過率は50%以下である。また、第2フィルタ851bの第2波長の光に対する透過率は90%以上であり、第1波長の光に対する透過率は50%以下である。
【0023】
第1フィルタ851aおよび第2フィルタ851bの両方に第1の光および第2の光が入射し得る。しかし、第1フィルタ851aを介することにより第1受光素子850aには第1の光が優先的に入射し、第2フィルタ851bを介することにより第2受光素子850bには第2の光が優先的に入射する。したがって、第1受光素子850aおよび第2受光素子850bにより、第1の光の反射光と、第2の光の反射光とを個別に検出することができる。
【0024】
なお、距離測定装置10の構成は、第1の光の反射光と第2の光の反射光とを個別に検出できればよく、図2の例に限定されない。たとえば、第1フィルタ851aおよび第2フィルタ851bを用いる代わりにダイクロイックミラーを用いてピーク波長の異なる複数の光を分離し、それぞれ受光素子で検出してもよい。また、図2では第1フィルタ851aおよび第2フィルタ851bが隣接して設けられている例を示したが、この例に限定されない。たとえば、第1の光および第2の光が混合した状態の光をハーフミラーで複数の光路に分離したのち、それぞれ透過波長の異なる光フィルタおよび受光素子に入射させてもよい。
【0025】
また、距離測定装置10の光学系は光ディスクのピックアップと同様な構成としても良い。すなわち、偏光プリズムを通したp偏光の光を1/4λ板を介して距離測定装置10の外部へ出射させる。そして対象物体20等で反射した反射光を1/4λ板に通すことでs偏光とし、偏光プリズムで反射させることで理論上100%の光量を検出することができる。二波長に対しては、適した波長板になるように適宜計算設計することができる。
【0026】
いずれの光学系を用いる場合にも光源から対象物体、対象物体から受光素子までの距離を二つの波長で等しく設計することが重要である。
【0027】
第1受光素子850aおよび第2受光素子850bに光が入射すると、入射した光の強度に応じた電気信号が検出回路853で生成され、情報処理装置870に入力される。そして、情報処理装置870において、受光強度と時間が関連づけられる。こうして、取得部120により複数の光のそれぞれについての反射パターンが取得される。ここで反射パターンは、その反射光の強度波形を示す。なお強度波形は、出力部110から光が出射されてから反射光が検出されるまでの時間と反射光の強度の関係を示す。
【0028】
また、たとえば第1受光素子850aおよび第2受光素子850bと検出側レンズ852の間には対象物体20に反射された光が入射すると見込まれる時間にのみ検出を行うよう、ゲート手段が設けられていてもよい。そうすることにより、外光や対象物体20以外の物体からの反射光に由来するノイズを低減することができる。
【0029】
ここで、距離測定装置10による屋外での距離測定において、雨や霧、雪などにより距離測定装置10と対象物体20の間に粒子22が浮遊していると、ノイズの原因となる。すなわち、出力部110から出力された光が対象物体20に到達する前に粒子22にあたり、反射または散乱される。そして、粒子22で反射された反射光もまた、第1受光素子850aおよび第2受光素子850bに入射し、反射パターンに反映される。そうすると、反射パターンには対象物体20に由来する対象ピーク以外のノイズピークが現れ、それらの判別は難しい。
【0030】
図3は、反射パターンの例を示す図である。本図の例では、反射パターンにはノイズに由来するノイズピーク41と、対象物体20に由来する対象ピーク42が含まれている。しかし、実際には、反射パターンにおいて、どれがノイズピーク41でありどれが対象ピーク42であるかは不明である。また、天候が反射パターンに及ぼす影響は天候によって異なり、ノイズピーク41および対象ピーク42の形状はそれぞれ、天候に応じて異なりうる。
【0031】
本実施形態に係る距離測定装置10では後述するように、処理部130が、ピーク波長が異なる複数の光を用いて得られた、複数の反射パターンに現れたピークを比較する。そして、天候に由来する成分を特定する。そうすることにより、反射パターンからノイズピーク41を低減し、距離測定の精度を向上させることができる。
【0032】
処理部130は、情報処理装置870により実現される。処理部130は、取得部120により取得された複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する。
【0033】
図4は第1の実施形態に係る処理部130の機能構成を例示するブロック図である。本実施形態において、処理部130は、一致ピーク抽出部132、一致ピーク数判定部134および特定部136を備える。一致ピーク抽出部132は複数の反射パターンにおいて位置が一致する一致ピークを抽出する。一致ピーク数判定部134は一致ピーク抽出部132で抽出された一致ピークの数を判定する。特定部136は一致ピーク数判定部134の判定結果に基づいて天候に由来する成分を特定する。
【0034】
図1および図2に戻り、距離算出部150は情報処理装置870により実現される。距離算出部150は少なくとも一の反射パターンから、処理部130で特定された天候に由来する成分を差し引くことにより、補正反射パターンを生成する。そして、補正反射パターンに基づいて距離を算出する。処理部130および距離算出部150の処理内容については詳しく後述する。
【0035】
図5は第1の実施形態に係る距離測定方法のフローチャートである。本距離測定方法は、距離測定装置10により実現され得る。本距離測定方法では、それぞれピーク波長が異なる複数の光が出力され(ステップS10)、複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンが取得され(ステップS20)、複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分が特定される(ステップS30)。
【0036】
また、本実施形態に係る距離測定方法では、天候に由来する成分が低減された補正反射パターンが生成され(ステップS40)、補正反射パターンを用いて距離測定装置10と対象物体20との距離が算出される(ステップS50)。以下に詳しく説明する。
【0037】
まずステップS10では、上記した通り出力部110が複数の光を出力する。そして、ステップS20では、上記した通り取得部120が複数の光のそれぞれについて反射パターンを取得する。
【0038】
次いで、ステップS30では、たとえば以下に説明する通り、処理部130が反射パターンのうち天候に由来する成分を特定する。
【0039】
図6は、本実施形態において処理部130が行う処理内容を例示するフローチャートである。処理部130の一致ピーク抽出部132は、複数の反射パターンにおいて位置が一致する一致ピークを抽出する(ステップS310)。具体的にはまず、各反射パターンにおいて、時間に対する反射光強度の微分値が正から負に転ずる時点を、ピーク位置として抽出する。ここで抽出するピーク位置は各反射パターンにおいて一つであってもよし、二つ以上であってもよい。そして、複数の反射ピークにおけるピーク位置を比較して、位置が一致する一致ピークを抽出する。なお、ピークの位置が一致するとは、完全に一致する場合のみならず、計測上の誤差の範囲で位置が異なる場合を含む。
【0040】
ここで、一致ピークがなかった場合、たとえば再度出力部110が光を出力し、複数の反射パターンを取得する。
【0041】
次いで一致ピーク数判定部134は一致ピーク抽出部132で抽出された一致ピークの数を判定する(ステップS320)。たとえば一致ピーク数判定部134は、一致ピークの数が1であるか、2以上であるかを判定する。
【0042】
そして特定部136は一致ピーク数判定部134の判定結果に基づいて天候に由来する成分を特定する。具体的にはたとえば以下の様に特定部136は天候に由来する成分を特定できる。
【0043】
処理部130の特定部136は、一致ピークの数が1であるとき(ステップS320のY)、少なくとも一つの反射パターンにおいて、一致ピーク抽出部132が抽出したピークのうち一致ピーク以外のピークを天候に由来する成分として特定する(ステップS330)。ここで、一致ピークの数が1であるときとは、反射パターンに現れたピークの位置が、複数の反射パターン間で一の位置でのみ互いに一致するときであるといえ、すなわち、ピークが一致する位置が一つのみのときであるといえる。
【0044】
図7は、複数の反射パターンの第1の例を示す図である。本図のうち上の図は第1の光の反射パターンであり、下の図は第2の光の反射パターンである。いずれの反射パターンにおいても原点は光の出力時である。本図の例において、一致ピークの数は1である。この場合、上下二つの図における反射パターンの反射ピークで、位置が一致していないピークを天候に由来するノイズピーク41であるとみなすことができる。たとえば、光の波長の違いによって粒子22に光が拡散される確率が異なったり、わずかな光路の不一致により複数の光の内いずれかのみが粒子22に反射されたりすることが起こり得る。その結果粒子22で反射された光のピーク位置は、複数の反射パターンで位置が一致しない場合があるからである。一方で、十分に大きな対象物体20からのピークは位置が一致すると考えられる。よって、特定部136は、位置が一致したピーク以外のピークを天候に由来する成分として特定することができる。天候に由来する成分として特定されるピークは、各反射パターンにおいて一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。
【0045】
反射パターンにおいて、各ピークはたとえばピークが現れている時間帯によって特定される。または、各ピークは、以下に説明するピークデータにより特定されても良い。各ピークがピークデータにより特定される場合、反射パターンを示す情報は複数のピークデータを含んで構成される。各ピークデータは、時間に対する光の強度の一つのピークを示すデータであり、たとえばグラフやテーブル、数式等であり得る。または、各ピークデータはピーク位置とピーク強度および半値幅の組み合わせであってもよい。そして反射パターンは、複数のピークデータが示すピークの重ね合わせで表される。取得された反射パターン(強度波形)に対し、所定の関数でフィッティングを行うことで、ピークを分離し、複数のピークデータを生成できる。
【0046】
一方、処理部130の特定部136は、一致ピークの数が1でないとき(ステップS320のN)、すなわち、反射パターンに現れたピークの位置が、複数の反射パターン間で二以上の位置で互いに一致するとき、一致ピークのうち光のピーク波長が長いほどレベルが大きくなっているピークを天候に由来する成分として特定する(ステップS340)。
【0047】
図8は、複数の反射パターンの第2の例を示す図である。本図のうち上の図は第1の光の反射パターンであり、下の図は第2の光の反射パターンである。いずれの反射パターンにおいても原点は光の出力時である。本図の例において、第1の光のピーク波長は、第2の光のピーク波長よりも短いものとする。本図の例において、一致ピークの数は2である。この場合、光の波長が長いほどピーク強度(レベル)が大きくなっている一致ピークを天候に由来するノイズピーク41であるとみなすことができる。
【0048】
たとえば、光の波長が長いほど、粒子22による後方散乱の強度が小さくなる。その結果、粒子22で反射された光のピーク強度は、光の波長が長いほど大きくなると考えられる。一方、対象物体20での光の反射率は光の波長に影響を受けにくいと考えられる。特に対象物体20の反射面が白い場合には波長の違いによる反射率の違いは小さくなる。このような例としては距離測定装置10が車両等の移動体に搭載され、他の移動体である前方の車両の白いナンバープレートからの反射光を検出する場合が挙げられる。
【0049】
ここで、複数の反射パターン間のピーク強度の比較は、反射パターン毎に規格化したピーク強度を用いて行う。たとえば、反射パターン内の全ての一致ピークのピーク強度の和をI、対象とするピークのピーク強度をIとしたとき、I/Iで求められる値を規格化したピーク強度とする。また、一致ピークのピーク強度の比較は、ピーク位置が互いに一致しているピーク同士で行う。
【0050】
なお、粒子22の粒径が第1の光及び第2の光の波長よりも小さい場合には、光の波長が長いほど、粒子22による散乱の強度が小さくなる場合がありうる。予めそのような天候や環境が予測される場合には、ユーザの切り替え操作等により、ステップS340において光の波長が長いほどレベルが小さくなっているピークを天候に由来する成分として特定されるようにしてもよい。
【0051】
なお、一致ピークの数が1でないとき(ステップS320のN)、特定部136はステップS330と同様に、一致ピーク以外のピークをさらに天候に由来する成分として特定してもよい。
【0052】
図9は、本実施形態において処理部130が行う処理内容の変形例を示すフローチャートである。本図に示すように特定部136は、一致ピークが抽出された後、一致ピークの数が判定される前に一致ピーク以外のピークを天候に由来する成分として特定してもよい(ステップS330)。その場合、ステップS330の後に一致ピーク数判定部134が一致ピークの数を判定する(ステップS320)。そして、一致ピークの数が1であるとき(ステップS320のY)、特定部136は、ステップS330で特定されたピークのみを天候に由来する成分として特定する。そして、一致ピークの数が1でないとき(ステップS320のN)、特定部136は、光の波長が長いほどレベルが大きくなっているピークを天候に由来する成分としてさらに特定する(ステップS340)。
【0053】
以上の様にして処理部130は天候に由来する成分を特定する。処理部130は少なくとも一つの反射パターン(たとえば第1の光の反射パターン)における天候に由来する成分を示す情報として、天候に由来するピークの、反射パターン中における時間帯または上記したピークデータを出力する。
【0054】
図5に戻り、次いで距離算出部150は処理部130で特定された天候に由来する成分を少なくとも一つの反射パターンから差し引くことにより補正反射パターンを生成する(ステップS40)。具体的には距離算出部150は処理部130から天候に由来する成分を示す情報を取得する。そして、天候に由来する成分が特定された反射パターン(たとえば第1の光の反射パターン)から天候に由来する成分を示す情報が示すピークを差し引く。たとえば距離算出部150は反射パターンのうち、天候に由来するピークが位置する時間帯の強度をゼロとすることにより補正反射パターンを生成してもよい。また、天候に由来する成分を示す情報がピークデータである場合には、距離算出部150は反射パターンからそのピーク分を減算して補正反射パターンを生成してもよい。
【0055】
また、ステップS340で特定されたピークのように、一致ピークが天候に由来するピークとして特定されている場合、距離算出部150は以下の様に補正反射パターンを生成できる。以下では図8の様に、第1の光の反射パターンにおけるノイズピーク41(天候に由来する成分)が、第2の光の反射パターンの同位置のピークよりも小さい場合について説明する。この場合、第2の光の反射パターンの全体の強度に所定の倍率αを乗じる。そして、第1の光の反射パターンから、αを乗じた第2の反射パターンを差し引く。そうすることにより、第1の光の反射パターンからノイズピーク41を低減した補正反射パターンを生成することができる。
【0056】
ここで、倍率αを示す情報はたとえば、第1の光と第2の光におけるノイズピーク41の強度比を事前の試験等により導出し、記憶部140に保持させておき、距離算出部150がそれを読み出して用いることができる。または、互いに位置が一致する第1の光のノイズピーク41のピーク強度Iと第2の光のノイズピーク41のピーク強度Iとを用いて、α=I/Iの関係から距離算出部150がその都度導出してもよい。ここで、各反射パターンにおいて位置が一致するノイズピーク41が複数ある場合には、各ノイズピーク41についてI/Iを算出し、その平均値をαとして用いることができる。
【0057】
なお、上記において、第1の光の反射パターンから、αを乗じた第2の反射パターンを差し引く際、第1の反射パターンにおけるノイズピーク41の生じている時間帯のみを対象に減算を行っても良い。
【0058】
次いで、距離算出部150は補正反射パターンを用いて距離測定装置10と対象物体20との距離を算出する(ステップS50)。すなわち、補正反射パターンにおける最大のピークを対象物体20からの反射ピークであるとみなし、そのピーク位置に基づいて光が出射されてから反射ピークが検出されるまでの時間を求める。そして、求めた時間に光の速度を乗ずることにより、距離測定装置10から対象物体20までの往復距離が算出される。
【0059】
なお、出力部110が複数の光を複数回出力し、取得部120がその都度反射パターンを取得し、距離算出部150が複数の補正反射パターンを生成してもよい。そして、複数の補正反射パターンを積算して距離を算出してもよい。そうすることにより、さらに高精度な距離測定が可能となる。
【0060】
以上、本実施形態によれば、出力部110がそれぞれピーク波長が異なる複数の光を出力し、取得部120が複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得し、処理部130が複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する。したがって、天候に由来するノイズを低減し、測定精度を向上させることができる。
【0061】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る距離測定装置10の機能構成を例示するブロック図であり、図11は、第2の実施形態に係る処理部130の機能構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る距離測定装置10は、処理部130が、複数の反射パターンが取得される時点の天候を示す天候情報を用いて天候に由来する成分を特定する点を除いて第1の実施形態に係る距離測定装置10と同様である。
【0062】
本実施形態に係る距離測定装置10は、天候情報取得部160をさらに備える。天候情報取得部160は、取得部120が反射パターンを取得する時点の、距離測定装置10が対象物体20を測定する場所の、天候を示す天候情報を取得する。天候情報は、晴れ、雨、霧、雪、曇り等の天候を示す情報を含む。また、天候情報は、光化学スモッグや大気中の微細粒子の浮遊濃度を示す情報を含んでも良い。天候情報取得部160は、たとえば通信網を介して天候を示す情報を取得できる。具体的には、気象情報提供サービスのサーバにアクセスして天候情報を取得できる。また、天候情報取得部160は距離測定装置10の近傍に配置された温度センサから取得した温度を示す情報や、照度センサから取得された照度を示す情報に基づき天候を判別し、天候情報を取得してもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る処理部130は、天候判定部138を備える。例えば天候が晴れや曇りである場合には、天候に由来するノイズピークが生じにくいと考えられる。そこで、そのような天候の場合には、天候に由来する成分の特定や、補正反射パターンの生成を省略することができ、情報処理装置870の処理負荷を軽減することができる。
【0064】
図12は本実施形態に係る距離測定方法のフローチャートである。本距離測定方法において、ステップS10およびステップS20の内容は第1の実施形態に係る方法と同じである。本実施形態に係る距離測定方法では、ステップS20の後、天候情報取得部160が天候情報を取得する(ステップS22)。
【0065】
次いで処理部130の天候判定部138は、取得した天候情報が示す天候が、予め定められた基準を満たすか否かを判定する。なお、基準を示す情報は予め記憶部140に記憶されており、天候判定部138がそれを読み出して判定に用いることができる。基準は、晴れ、曇り等の特定の天気であっても良いし、光化学スモッグの程度や大気中の微細粒子の浮遊濃度に対する基準値等であっても良いし、それらの組み合わせであっても良い。
【0066】
本図の例では天候判定部138は、天候が晴れ又は曇りであるか否かを判定する(ステップS24)。そして天候情報が晴れまたは曇りを示す場合(ステップS24のY)、処理部130は天候に由来する成分を特定しない。そして距離算出部150は、補正反射パターンを生成せずに、取得した複数の反射パターンのうち少なくともいずれかを用いて、第1の実施形態のステップS50と同様に距離を算出する。
【0067】
天候情報が晴れまたは曇りを示さない場合(ステップS24のN)、処理部130は次いで天候に由来する成分を特定する(ステップS30)。そして距離算出部150は補正反射パターンを生成し(ステップS40)、距離を算出する(ステップS50)。本実施形態のステップS30~ステップS50は第1の実施形態と同様に行える。
【0068】
なお、天候判定部138は光化学スモッグや大気中の微細粒子の浮遊濃度が基準値を超えるか否かをさらに判定し、天候情報が晴れまたは曇りを示す場合であっても天候情報が示す光化学スモッグや大気中の微細粒子の浮遊濃度が基準値を超える場合に、上記の天候情報が晴れまたは曇りを示さない場合(ステップS24のN)と同様の処理を行うようにしても良い。雨や霧の場合と同様にノイズピークが現れる可能性があるからである。
【0069】
以上、本実施形態においても、出力部110がそれぞれピーク波長が異なる複数の光を出力し、取得部120が複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得し、処理部130が複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する。したがって、天候に由来するノイズを低減し、測定精度を向上させることができる。
【0070】
加えて、本実施形態によれば、処理部130が、複数の反射パターンが取得される時点の天候を示す天候情報を用いて天候に由来する成分を特定する。したがって、天候に由来するノイズの増大が予想される場合にのみその特定を行うことができ、情報処理の負荷を低減することができる。
【0071】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態に係る処理部130の機能構成を例示するブロック図である。また、図14は、第3の実施形態に係る天候に由来する成分を特定する工程(ステップS30)の内容を例示するフローチャートである。本実施形態に係る距離測定装置10は、処理部130の構成および天候に由来する成分を特定する工程(ステップS30)での処理内容を除いて第2の実施形態に係る距離測定装置10と同様である。
【0072】
たとえば天候が霧や雨の場合には、ノイズピークが一致ピークとして生じる可能性が高いと考えられる。さらに、天候が雪の場合には粒子の直径が大きく、浮遊する粒子の間隔も大きいことから複数の光においてノイズピークの位置がずれる可能性が高いと考えられる。よって、天候情報を用いることで、一致ピークの数の判定を行うことなく、その天候に適した処理を行い、天候に由来する成分を特定することができる。
【0073】
本実施形態に係る距離測定方法は、図12と同様のフローチャートを用いて説明できる。本実施形態の距離測定方法では、ステップS30以外を第2の実施形態と同様に行う。
【0074】
本実施形態に係る距離測定装置10では、ステップS30を以下の様に行う。まず、一致ピーク抽出部132が第1の実施形態と同様の一致ピークを抽出する(ステップS310)。次いで天候判定部138が、天候情報が示す天候が予め定められた基準を満たすか否かを判定する。なお、基準を示す情報は予め記憶部140に記憶されており、天候判定部138がそれを読み出して判定に用いることができる。基準は、雨、霧等の特定の天気であっても良いし、光化学スモッグの程度や大気中の微細粒子の浮遊濃度に対する基準値等であっても良いし、それらの組み合わせであっても良い。本図の例では天候判定部138が、天候情報が示す天候が霧又は雨であるか否かを判定する(ステップS350)。
【0075】
天候が霧又は雨である場合(ステップS350のY)、特定部136は、第1の実施形態と同様にして波長が長いほどレベルが大きくなっている一致ピークを天候に由来する成分として特定する(ステップS340)。
【0076】
一方、天候が霧又は雨ではない場合(ステップS350のN)、特定部136は、第1の実施形態と同様にして一致ピーク以外のピークを天候に由来する成分として特定する(ステップS330)。また、天候判定部138は光化学スモッグや大気中の微細粒子の浮遊濃度が基準値を超えるか否かをさらに判定し、天候が霧又は雨ではない場合であっても天候情報が示す光化学スモッグや大気中の微細粒子の浮遊濃度が基準値を超える場合に、上記の天候情報が霧又は雨を示す場合(ステップS350のY)と同様の処理を行うようにしても良い。
【0077】
なお、天候が霧又は雨の場合(ステップS350のY)、特定部136はステップS330と同様に、一致ピーク以外のピークをさらに天候に由来する成分として特定してもよい。
【0078】
また、ステップS30の内容の変形例として、特定部136は、一致ピークが抽出された後、まず一致ピーク以外のピークを天候に由来する成分として特定し、その後に天候判定部138が天候を判定してもよい。そして、天候が霧又は雨ではない場合、特定部136は、上記で既に特定されたピークのみを天候に由来する成分とする。そして、天候が霧又は雨である場合、特定部136は、光の波長が長いほどレベルが大きくなっているピークを天候に由来する成分としてさらに特定する。
【0079】
また、本実施形態において、ステップS350では、天候判定部138が、天候が霧または雨であるか否かを判定する代わりに、天候が雪であるか否かを判定しても良い。その場合、天候が雪である場合に、上記の霧または雨ではない場合(ステップS350のN)と同様の処理を行い、天候が雪でない場合に、上記の霧または雨である場合(ステップS350のY)と同様の処理を行う。
【0080】
以上、本実施形態においても、出力部110がそれぞれピーク波長が異なる複数の光を出力し、取得部120が複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得し、処理部130が複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する。したがって、天候に由来するノイズを低減し、測定精度を向上させることができる。
【0081】
加えて、本実施形態によれば、天候が霧又は雨ではないとき、処理部130は少なくとも一つの反射パターンにおいて、一致ピーク抽出部132が抽出したピークのうち一致ピーク以外のピークを天候に由来する成分として特定する。一方、天候が霧又は雨であるとき、処理部130は、一致ピークのうち光の波長が長いほどレベルが大きくなっているピークを天候に由来する成分として特定する。したがって、一致ピークの数の判定を行うことなく、その天候に適した処理を行い、天候に由来する成分を特定することができる。
【0082】
(第4の実施形態)
図15は、第4の実施形態に係る距離測定装置10の構成を例示するブロック図であり、図16は、本実施形態に係る距離測定装置10の使用環境を示す図である。本実施形態に係る距離測定装置10は、天候情報取得部160が通信部170を通じて他の距離測定装置10から天候情報を取得する点を除いて第2および第3の実施形態の少なくともいずれかと同様である。
【0083】
本実施形態に係る距離測定装置10は、通信網70を介してサーバ60に接続されており、通信部170をさらに備える。通信部170は、天候情報取得部160が温度を示す情報や、照度を示す情報に基づき天候を判別し、天候情報を取得したとき、距離測定装置10の位置および時刻を示す情報と共に、取得した天候情報をサーバ60に送信する。
【0084】
また、本実施形態において、通信部170はサーバ60に、天候情報送付を要求する信号および距離測定装置10の位置を示す情報を送信する。そして、要求に基づき通信部170がサーバ60から天候情報を受信したとき、天候情報取得部160は受信された天候情報を取得する。また、通信部170がサーバ60から天候情報を受信できなかったとき、天候情報取得部160は自己の距離測定装置10の近傍に設けられたセンサにより得られた温度を示す情報や、照度を示す情報に基づき天候を判別して天候情報を取得する。また、通信部170がサーバ60から天候情報を受信できなかったとき、天候情報取得部160は、気象情報提供サービスのサーバにアクセスして天候情報を取得してもよい。
【0085】
通信部170は、通信網70を介して無線で情報を送受信するためのインタフェースである。そして、サーバ60は、通信網70を介して複数の距離測定装置10と情報を送受信できる。本実施形態に係る距離測定装置10はたとえば移動体に取り付けられている。また、移動体には、GPS(Global Positioning System)装置など、移動体の位置(緯度、経度)が認識できる位置認識手段が設けられている。位置認識手段は移動体の位置を示す情報を生成する。
【0086】
本実施形態において、サーバ60は、距離測定装置10から送信された天候情報、位置および時刻を示す情報を受信して保持すると共に、位置情報等に照らして有効な天候情報を他の距離測定装置10に提供する。このように、情報を共有することにより、各距離測定装置10は効率良く距離測定の精度を向上させることができる。
【0087】
図17は、サーバ60の機能構成を例示するブロック図である。具体的にはサーバ60は、通信部610、選択部620および記憶部630を備える。通信部610は、通信網70を介して情報を送受信するためのインタフェースである。通信部610は距離測定装置10の通信部170から送信された天候情報を受信する。この天候情報は、各距離測定装置10で天候が判別されて取得された情報である。天候情報には、その天候情報が取得された位置および時刻を示す情報が付随している。そして、受信された天候情報は、位置および時刻を示す情報と共に、記憶部630に格納される。
【0088】
一方、通信部610が他の距離測定装置10から位置情報を伴う天候情報送付の要求を受信した場合、選択部620はその位置情報と要求を受信した時刻に照らして、有効な天候情報を記憶部630から選択する。有効な天候情報の選択においては、選択部620は天候情報に付随した位置を示す情報と、要求に付随した位置情報とを比較して、それらの示す位置が充分に近いか否かを判定する。たとえば、二つの位置の距離が予め定められた基準距離以下である場合、充分に近いと判定される。また、選択部620は、天候情報に付随した時刻を示す情報と、要求を受信した時刻とを比較して、それらの時刻が充分に近いか否かを判定する。たとえば、二つの時刻の差が予め定められた基準時間以下である場合、充分に近いと判定される。ここで、基準距離および基準時間を示す情報は、記憶部630に予め保持されており、選択部620がそれを読み出して用いることができる。
【0089】
選択部620は記憶部630に保持された複数の天候情報のそれぞれについて上記の判定を行い、位置および時刻の両方が充分に近いと判定された天候情報を選択する。なお、複数の天候情報について、位置および時刻の両方が充分に近いと判定された場合には、位置が最も近い天候情報を選択する。または、時刻が最も近い天候情報を選択するようにしてもよい。
【0090】
サーバ60は、選択部620で選択された天候情報を、要求を送信した距離測定装置10に対して送信する。要求を送信した距離測定装置10は、天候情報をサーバ60から受信し、ノイズの低減に用いることができる。
【0091】
一方、選択部620において、位置および時刻の両方が充分に近いと判定された天候情報が存在しなかった場合、サーバ60は、要求を送信した距離測定装置10に対して、天候情報を提供できない旨を示す情報を送信する。天候情報を受信できなかった距離測定装置10は、その移動体に設けられたセンサにより得られた温度を示す情報や、照度を示す情報に基づき、自ら天候を判別して天候情報を取得する。また、通信部170がサーバ60から天候情報を受信できなかったとき、天候情報取得部160は、気象情報提供サービスのサーバにアクセスして天候情報を取得してもよい。
【0092】
以上、本実施形態においても、出力部110がそれぞれピーク波長が異なる複数の光を出力し、取得部120が複数の光のそれぞれについて反射光の強度波形である反射パターンを取得し、処理部130が複数の反射パターンに基づいて、複数の反射パターンのうちの少なくとも一の反射パターンに含まれる天候に由来する成分を特定する。したがって、天候に由来するノイズを低減し、測定精度を向上させることができる。
【0093】
加えて、本実施形態においては、通信部170がサーバ60から天候情報を受信したとき、処理部130は、その天候情報を用いて反射パターンにおけるノイズを低減する。このように情報を共有することにより、各距離測定装置10はピンポイントで、すなわちより高い位置精度で、最新の天候情報を得られ、効率良く距離測定の精度を向上させることができる。
【0094】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0095】
たとえば、上述の説明で用いたシーケンス図やフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0096】
10 距離測定装置
20 対象物体
22 粒子
41 ノイズピーク
42 対象ピーク
60 サーバ
70 通信網
110 出力部
120 取得部
130 処理部
132 一致ピーク抽出部
134 一致ピーク数判定部
136 特定部
138 天候判定部
140,630 記憶部
150 距離算出部
160 天候情報取得部
170,610 通信部
620 選択部
810 レーザ光源
812 コントローラ
814 コリメーターレンズ
830 ハーフミラー
850a 第1受光素子
850b 第2受光素子
851a 第1フィルタ
851b 第2フィルタ
852 検出側レンズ
853 検出回路
870 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17