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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067934
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】プラスチック容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230509BHJP
   B65D 1/40 20060101ALI20230509BHJP
   B65D 23/04 20060101ALI20230509BHJP
   B65D 23/02 20060101ALI20230509BHJP
   B65D 35/14 20060101ALI20230509BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20230509BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B65D1/40 ZAB
B65D23/04
B65D23/02 Z
B65D35/14 A
B65D35/14 Z
B65D65/42 A
B29C49/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031522
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2019010513の分割
【原出願日】2019-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】青木 達郎
(72)【発明者】
【氏名】細谷 敬能
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】粟田 浩昭
(57)【要約】
【課題】内容物の滑落性に優れたプラスチック容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、内容物を収容するプラスチック容器であって、前記プラスチック容器は、ブロー成形体であり、前記内容物と接する最内層は、基材樹脂と充填粒子を含む樹脂組成物で構成され、前記最内層の内面に前記充填粒子の存在に起因する凹凸形状が設けられている、プラスチック容器が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容するプラスチック容器であって、
前記プラスチック容器は、ブロー成形体であり、
前記内容物と接する最内層は、基材樹脂と充填粒子を含む樹脂組成物で構成され、
前記最内層の内面に前記充填粒子の存在に起因する凹凸形状が設けられている、プラスチック容器。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチック容器であって、
前記プラスチック容器の上下方向の中央での前記最内層の平均厚さをTとし、前記充填粒子の平均粒子径をDとすると、
T/Dが0.80~1.40である、プラスチック容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプラスチック容器であって、
前記充填粒子の少なくとも一部が前記最内層の内面から露出している、プラスチック容器。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記樹脂組成物は、前記充填粒子の含有量が15~50質量%である、プラスチック容器。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記充填粒子は、アクリル系樹脂で構成されている、プラスチック容器。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記基材樹脂は、ポリオレフィンである、プラスチック容器。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記凹凸形状の表面に撥液剤が付着している、プラスチック容器。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載のプラスチック容器の製造方法であって、
パリソンのブロー成形を行う成形工程を備え、
前記パリソンの最内層は、前記樹脂組成物で形成され、
前記最内層の内面に前記充填粒子によって前記凹凸形状が形成されるように前記パリソンを膨張させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器及びその製造方法
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内容物の滑落性に優れたプラスチック容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-10541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、内容物と接する基材樹脂に滑剤を添加することによって滑落性を向上させている。しかし、別の手段によって滑落性を向上させたいという要望が存在している。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内容物の滑落性に優れたプラスチック容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、内容物を収容するプラスチック容器であって、前記プラスチック容器は、ブロー成形体であり、前記内容物と接する最内層は、基材樹脂と充填粒子を含む樹脂組成物で構成され、前記最内層の内面に前記充填粒子の存在に起因する凹凸形状が設けられている、プラスチック容器が提供される。
【0007】
本発明のプラスチック容器は、最内層の内面に凹凸形状が設けられているので、最内層の内面と内容物の摩擦が低減されて滑落性が向上する。また、本発明のプラスチック容器は、ブロー成形体であり、最内層を構成する樹脂組成物に含まれる充填粒子の存在に起因する凹凸形状が設けられているので、製造時に凹凸形状を付与するのが容易である。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記プラスチック容器の上下方向の中央での前記最内層の平均厚さをTとし、前記充填粒子の平均粒子径をDとすると、T/Dが0.80~1.40である、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記充填粒子の少なくとも一部が前記最内層の内面から露出している、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記樹脂組成物は、前記充填粒子の含有量が15~50質量%である、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記充填粒子は、アクリル系樹脂で構成されている、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記基材樹脂は、ポリオレフィンである、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記凹凸形状の表面に撥液剤が付着している、プラスチック容器である。
【0009】
本発明の別の観点によれば、前記記載のプラスチック容器の製造方法であって、パリソンのブロー成形を行う成形工程を備え、前記パリソンの最内層は、前記樹脂組成物で形成され、前記最内層の内面に前記充填粒子によって前記凹凸形状が形成されるように前記パリソンを膨張させる、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プラスチック容器1とキャップ13を示す正面図である。
図2】プラスチック容器1の層構成図である。
図3】凹凸形状2cの表面に撥液剤8が付着した状態のプラスチック容器1の層構成図である。
図4図4A図4Bは、それぞれ、倍率が100倍及び300倍のデジタルマイクロスコープ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.プラスチック容器の構成
【0013】
図1は、本発明の一実施形態のプラスチック容器1の概略図を示す。図1に示すように、容器1は、内容物を収容する容器である。内容物としては、マヨネーズやケチャップなどの粘稠物が挙げられる。容器1は、ねじ山11が形成された注出口12から、胴部14等を絞って内容物を外に出すものであり、通常、注出口12はキャップ13が装着されて封止されている。容器1は、ブロー成形によって形成されたブロー成形体である。ブロー成形の詳細は後述する。
【0014】
容器1は、単層構成であっても多層構成であってもよいが、多層構成にすることが好ましい。図2は、容器1の層構成の一例であり、容器1の内面側から順に、最内層2と、中間層3と、接着樹脂層4と、バリア層5と、接着樹脂層6と、最外層7を備える。容器1の層構成は、これらの層のうちの少なくとも1つを省いたものであってもよく、さらに別の層を備えるものであってもよい。以下、各層について説明する。
【0015】
(最外層7)
最外層7は、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成され、この樹脂組成物は、滑剤を含むことが好ましい。これによって、容器1表面の滑り不良等による問題の発生を抑制することができる。
【0016】
(バリア層5)
バリア層5は、ガスバリア性が高い樹脂で構成される。このような樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等を指す。)や芳香族ポリアミド等が挙げられる。バリア層5を設けることによって、酸素透過による内容物の酸化劣化を有効に抑制することができる。
【0017】
(中間層3)
中間層3は、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成される。中間層3は、省略可能である。中間層3は、容器1のブロー成形時にでたバリをリサイクルして使用したリプロ層であってもよい。
【0018】
(接着樹脂層4,6)
接着樹脂層4,6は、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着樹脂層4,6を設けることによってバリア層5と、最外層7又は中間層3との接着性が向上する。接着樹脂層4,6を設ける代わりに、バリア層5に接着性樹脂を配合してもよい。
【0019】
(最内層2)
最内層2は、内容物と接する層であり、基材樹脂2aと充填粒子2bを含む樹脂組成物で構成される。最内層2の内面(すなわち、容器1の内面)に充填粒子2bの存在に起因する凹凸形状2cが設けられている。最内層2の内面に凹凸形状2cが設けられているので、最内層2の内面と内容物の摩擦が低減されて滑落性が向上する。
【0020】
凹凸形状2cは、十点平均粗さRzを7~500μm程度とするのが好ましく、特に10~300μmとするのがより好ましく、10~100μmとするのが最も好ましい。この範囲内に設定することによって、滑落性を特に向上させることができる。十点平均粗さRzはJIS B0601(-1982)で定義される。
【0021】
基材樹脂2aは、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。
【0022】
充填粒子2bは、凹凸形状2cを付与可能な粒子であり、有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子を採用することができる。
【0023】
無機成分としては、例えば1)アルミニウム、銅、鉄、チタン、銀、カルシウム等の金属又はこれらを含む合金又は金属間化合物、2)酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の酸化物、3)リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等の無機酸塩又は有機酸塩、4)ガラス、5)窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック等を好適に用いることができる。
【0024】
有機成分としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。
【0025】
充填粒子2bがアクリル系樹脂であることが好ましい。アクリル系樹脂は、透明性が高く、充填粒子2bの添加による透明性の低下が生じにくいからである。
【0026】
基材樹脂2aの融点をTaとし、充填粒子2bの融点Tbとすると、Tb-Taは、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。容器1をブロー成形によって製造時に基材樹脂2aを溶融するために加熱したときに充填粒子2bが溶融されてしまうと、凹凸形状2cが形成されにくくなるからである。
【0027】
充填粒子2bの平均粒子径は10~100μmが好ましく、20~80μmがさらに好ましく、30~50μmがさらに好ましい。この平均粒子径は、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。平均粒子径が小さすぎると凹凸形状2cが形成されにくく、平均粒子径が大きすぎると充填粒子2bが最内層2から脱落しやすくなる。充填粒子2bの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計によって測定すれば良いが、レーザー回折式粒度分布計による測定が困難な場合は、顕微鏡での観察(あるいは写真撮影)し、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、顕微鏡による観察により任意に選んだ10個分の粒子の直径の平均を平均粒子径とすれば良い。
【0028】
充填粒子2bの形状は限定的でなく、例えば球状、回転楕円体状、不定形状、涙滴状、扁平状、中空状、多孔質状等のいずれであっても良い。
【0029】
容器1の上下方向の中央での最内層2の平均厚さをTとし、充填粒子2bの平均粒子径をDとすると、T/Dが0.50~2.00であることが好ましく、0.80~1.40であることがより好ましい。最内層2の平均厚さは、容器1の上下方向の中央より切り出した容器壁面について、周方向に均等間隔に配置した4つの測定点において測定した厚さを算術平均することによって算出することができる。T/Dが小さすぎると充填粒子2bが最内層2から脱落しやすくなり、T/Dが大きすぎると最内層2の表面の凹凸が不十分になりやすい。T/Dは、具体的には例えば、0.50、0.70、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.50、2.00であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
充填粒子2bは、基材樹脂2aに埋没している状態であってもよいが、少なくとも一部が最内層2の内面から露出していることが好ましい。この場合、凹凸形状2cが形成されやすいからである。また、充填粒子2bが基材樹脂2aよりも滑落性に優れた性質を有するものである場合には、充填粒子2bを最内層2の内面から露出させることによって滑落性をさらに向上させることができる。
【0031】
樹脂組成物中の充填粒子2bの含有量は、15~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。この含有量は、具体的には例えば、15、20、25、30、35、40、45、50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。充填粒子2bの含有量が少なすぎると凹凸形状2cが不十分になり、充填粒子2bの含有量が多すぎると、充填粒子2bが最内層2から脱落しやすくなる。
【0032】
最内層2を構成する樹脂組成物には、滑落性をさらに向上させるべく、滑剤を添加してもよい。
【0033】
(撥液剤)
図3に示すように、凹凸形状2cの表面に、撥液剤8が付着していることが好ましい。凹凸形状2cの表面に撥液剤8を付着させることによって滑落性をさらに向上させることができる。撥液剤8は疎水性粒子及び、疎水・疎油性粒子の少なくとも1種を含む。これにより、撥液剤8は、撥水性と撥油性の少なくとも一方(好ましくは両方)を有し、内容物が接触した場合でも、付着を抑制することができる。
【0034】
疎水粒子は、一次粒子平均径が通常3~100nmであり、好ましくは5~50nmであり、より好ましくは7~30nmである。一次粒子平均径を上記範囲とすることにより、疎水粒子が適度な凝集状態となり、その凝集体中にある空隙に空気等の気体を保持することができる結果、優れた滑落性を得ることができる。すなわち、この凝集状態は、凹凸形状2cの表面に付着した後も維持されるので、優れた滑落性を発揮することができる。
【0035】
なお、本発明において、一次粒子平均径の測定は、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で実施することができ、走査型電子顕微鏡の分解能が低い場合には透過型電子顕微鏡等の他の電子顕微鏡を併用して実施しても良い。具体的には、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とする。
【0036】
疎水粒子としては、疎水性を有するものであれば特に限定されず、表面処理により疎水化されたものであっても良い。例えば、親水性酸化物微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。例えばシリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。この中でも、疎水性酸化物粒子として、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。特に、より優れた非付着性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0037】
疎油性粒子としては、例えば酸化物微粒子の表面をフッ素系樹脂等でコーティングした複合粒子を用いることができる。酸化物微粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の粒子(粉末)の少なくとも1種の酸化物微粒子を用いることができる。特に、酸化ケイ素粒子であることが好ましい。これらの酸化物微粒子も市販品を用いることができる。
【0038】
これらの市販の酸化物微粒子の表面をコーティング処理したものも疎油性粒子として好適に用いることができる。例えば、酸化ケイ素として製品名「AEROSIL 200」(「AEROSIL」は登録商標。以下同じ)、「AEROSIL 130」、「AEROSIL 300」、「AEROSIL 50」、「AEROSIL 200FAD」、「AEROSIL 380」(以上、日本アエロジル(株)製)等により例示される粒子をコアとして、ポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂でコア表面が被覆された撥油性粒子を用いることができる。酸化チタンとしては、例えば製品名「AEROXIDE TiO T805」(エボニック デグサ社製)等により例示される粒子をコアとして、ポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂でコア表面が被覆された撥油性粒子を用いることができる。酸化アルミニウムとしては、例えば製品名「AEROXIDE Alu C 805」(エボニック デグサ社製)等により例示される粒子をコアとして、ポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂でコア表面が被覆された撥油性粒子を用いることができる。
【0039】
これらの疎油性粒子は、その表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を備えているので、無機酸化物粒子との親和性に優れるがゆえに比較的密着性の高い強固な被覆層を当該粒子表面上に形成できるとともに、内容物に対する高い非付着性を発現させることができる。
【0040】
撥液剤8には例えばa)疎水性粒子と疎油性粒子とを含む層、疎水性粒子を含む疎水性領域と、疎油性粒子を含む疎油性領域とを含む層等も採用することができる。このような層を採用することにより、水分とともに脂肪分が多い内容物であっても、好適に付着を抑制ないしは防止することができる。
【0041】
撥液剤8中における疎水性粒子及び、疎水・疎油性粒子の含有量は、特に制限されず、通常は10~100重量%の範囲内で適宜設定することができる。疎水性粒子及び、疎水・疎油性粒子の含有量を100重量%に近づければそれだけ高い撥水性及び/又は撥油性を得ることができる。従って、例えば撥液剤8中における疎水性粒子及び疎水・疎油粒子の含有量を98~100重量%に設定することもできる。
【0042】
容器本体に付着させる疎水性粒子及び、疎水・疎油性粒子の付着量(乾燥後重量)は限定的ではないが、通常0.01~10g/mとするのが好ましく、0.2~1.5g/mとするのがより好ましく、0.2~1g/mとするのが最も好ましい。
【0043】
撥液剤8の形成方法としては、限定的ではないが、特に疎水性粒子及び疎油性粒子の少なくとも1種を含む塗工液を塗布し、乾燥する工程を含む方法によって実施することができる。
【0044】
例えば、疎水性粒子及び疎油性粒子の少なくとも1種を溶媒に分散させてなる分散液を好適に用いることができる。
【0045】
上記溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、イソプロピルアルコール、変性エタノール等のアルコール系溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0046】
撥液剤8の固形分は、通常は10~90重量%、特に20~80重量%の範囲内で適宜設定することができる。
【0047】
塗工液中には、本発明の効果を妨げない範囲内で他の成分が含まれていても良い。例えば、樹脂バインダー、分散剤、硬化剤等が挙げられる。特に、本発明では、撥液剤8の樹脂成分の含有量は5重量%以下、特に1重量%以下、さらには実質的に0重量%とすることが好ましい。このような樹脂成分の含有量に設定することにより、より高い付着防止効果を得ることができる。
【0048】
撥液剤8を凹凸形状2c表面にコーティングする方法は、公知の方法に従えば良く、例えばスプレー法、浸漬法、攪拌造粒法等のいずれも適用することができる。特に、本発明では、均一性等に優れるという点でスプレー法によるコーティングが特に好ましい。
【0049】
塗布した後は、乾燥処理を行う。乾燥処理は、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱する場合は、例えば50~160℃程度とすれば良い。また、塗工に際し、本発明では、所定の厚みを得るために、上記の塗布及び乾燥工程を2回以上繰り返すこともできる。
【0050】
2.プラスチック容器の製造方法
容器1は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形であってもよく、インジェクションブロー成形であってもよい。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによって容器1を製造する。インジェクションブロー成形では、プリフォームと呼ばれる試験管状の有底パリソンを射出成形によって形成し、このパリソンを用いてブロー成形を行う。
【0051】
何れのブロー成形においても、パリソンの層構成は、容器1の層構成と同様である。多層のパリソンは、共押出成形や多層射出成形等によって形成可能である。パリソンの最内層は、容器1の最内層2を構成する樹脂組成物(つまり、基材樹脂2aと充填粒子2bを含む樹脂組成物)によって形成される。パリソンの最内層の表面には凹凸形状が形成されている必要がないが、ブロー成形の際にパリソンが膨張してその肉厚が減少するので、充填粒子2bの形状が反映されて、充填粒子2bの存在に起因する凹凸形状2cが最内層2の内面に形成される。
【0052】
容器1をブロー成形によって形成した後に、撥液剤8をそのまま、又は媒体(分散媒又は溶媒)に分散若しくは溶解させた状態でスプレーすることによって、凹凸形状2cの表面に撥液剤8を付着させることができる。媒体を用いた場合には、適宜、乾燥工程を行ってもよい。
【実施例0053】
1.サンプルの作製
<製造例1>
パリソンのダイレクトブロー成形によって図1に示す形状の容器1を作製した。パリソンの最内層は、基材樹脂2aと充填粒子2bを含む樹脂組成物で形成した。基材樹脂2aは、ポリエチレン(融点112℃)であり、充填粒子2bは、平均粒子径30μmのアクリル系樹脂(融点230℃)である。樹脂組成物中の充填粒子の含有量は、20質量%であった。
【0054】
容器1の上下方向の中央での最内層2の厚さが20μmとなるように、パリソンの最内層の厚さを調節した。
【0055】
<製造例2~10>
充填粒子2bの含有量、充填粒子2bの平均粒子径D、容器1の最内層2の厚さTを表1のように変更した以外は、製造例1と同様に容器1を作製した。
【0056】
【表1】
【0057】
2.評価
2-1.粒子脱落試験
容器1から試験片(10mm×50mm程度)を切り出し、合成紙(製品名「キムワイプ」日本製紙クレシア社製)により研磨を行い、目視にて微粒子の脱落を確認し、以下の基準で評価した。
○:10回以上研磨しても、粒子の脱落が確認されなかった。
△:3~9回の研磨で粒子の脱落が確認された。
×:2回以下の研磨で粒子の脱落が確認された。
【0058】
2-2.凹凸形状試験
デジタルマイクロスコープ(画像寸法測定器)を用いて容器1の内面に形成された凹凸形状について表面粗さSaを測定し、以下の基準で評価した。
○:2.5μm以上
△:2μm以上2.5μm未満
×:2μm未満
【0059】
3.粒子径測定
デジタルマイクロスコープ(画像寸法測定器)を用いて、製造例5の容器1の内面を100倍及び300倍で撮影した。300倍の写真に写っている10個の充填粒子2bの粒子径を測定し、算術平均したところ、48.7μmであった。
【符号の説明】
【0060】
1 :プラスチック容器
2 :最内層
2a :基材樹脂
2b :充填粒子
2c :凹凸形状
3 :中間層
4 :接着樹脂層
5 :バリア層
6 :接着樹脂層
7 :最外層
8 :撥液剤
11 :ねじ山
12 :注出口
13 :キャップ
14 :胴部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容するプラスチック容器であって、
前記プラスチック容器は、ブロー成形体であり、
前記内容物と接する最内層は、基材樹脂と充填粒子を含む樹脂組成物で構成され、
前記最内層の内面に前記充填粒子の存在に起因する凹凸形状が設けられている、プラスチック容器。