(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067970
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230509BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20230509BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230509BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20230509BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230509BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230509BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G01C21/26 B
G08G1/00 J
G16Y40/20
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033484
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2021104020の分割
【原出願日】2017-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】小林 好祥
(57)【要約】
【課題】事故種別を示した警告を行うことが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する。次に、状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する。そして、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、要求情報に対応する警戒事故種別を含む警告情報を送信する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得手段と、
前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定手段と、
位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求情報に対応する警戒事故種別を含む警告情報を送信する送信手段と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故リスクの高い地点の情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置などにおいて、走行上注意すべき地点を事前に運転者に通知する技術が知られている。例えば、特許文献1は、事故発生地点、渋滞発生地点、規制が行われている地点などの注意すべき地点に車両が近づいた場合に運転手に通知を行う手法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法では、事故が発生しやすい地点であると漠然と通知されたとしても、運転手はどのような事故に気を付ければよいかを判断しにくいという問題がある。
【0005】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、事故種別を示した警告を行うことが可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得手段と、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定手段と、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求情報に対応する警戒事故種別を含む警告情報を送信する送信手段と、を備える。
【0007】
請求項に記載の発明は、情報処理装置と、車載端末とを備える情報処理システムであって、前記情報処理装置は、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得手段と、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定手段と、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求情報に対応する警戒事故種別と、前記警戒事故種別を含む警告を行うための、前記車載端末を搭載した車両の運転状況に関する判定条件と含む警告情報を送信する送信手段と、を備え、前記車載端末は、前記警告情報を受信する受信手段と、前記車載端末を搭載した車両の運転状況を取得する運転状況取得手段と、前記運転状況取得手段が取得した運転状況が前記判定条件を満たす場合に、前記警告を行う警告手段と、を備える。
【0008】
請求項に記載の発明は、情報処理装置により実行される情報処理方法であって、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得工程と、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定工程と、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求信号に対応する前記警戒事故種別を含む警告情報を送信する送信工程と、を備える。
【0009】
請求項に記載の発明は、コンピュータを備える情報処理装置により実行されるプログラムであって、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得手段、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定手段、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求信号に対応する前記警戒事故種別を含む警告情報を送信する送信手段、として前記コンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】平日の時間帯別の事故種別の分析に残差分析を適用した例を示す。
【
図9】警告情報の提供処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つの好適な実施形態では、情報処理装置は、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得手段と、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定手段と、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求情報に対応する警戒事故種別を含む警告情報を送信する送信手段と、を備える。
【0012】
上記の情報処理装置は、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する。次に、状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する。そして、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、要求情報に対応する警戒事故種別を含む警告情報を送信する。これにより、車載端末は、警戒事故種別を含む警告情報を受信し、事故種別を明確にした警告を出力することが可能となる。
【0013】
上記の情報処理装置の一態様では、前記特定手段は、前記分類後の事故情報に対する構成割合が、前記全ての事故情報に対する構成割合よりも所定値以上高い事故種別を、前記警戒事故種別として特定する。この態様では、平均的な発生確率よりも有意に高い確率で発生する事故種別を特定することができる。
【0014】
上記の情報処理装置の他の一態様では、前記状況情報は、前記車両の位置情報、日時情報、天候情報、前記車両の運転手の年齢又は性別のいずれかを含む。この態様では、各種の状況との関係において警戒事故種別を特定することができる。
【0015】
上記の情報処理装置の他の一態様では、前記送信手段は、複数の前記状況情報に基づいて、前記警戒事故種別を含む警告情報を前記車載端末に送信する。この態様では、情報処理装置は、複数の状況を考慮して、警戒事故種別を含む警告情報を送信することができる。
【0016】
上記の情報処理装置の他の一態様は、予め特定した警戒事故種別を、前記状況情報に関連付けて記憶する記憶手段を更に備える。この態様では、記憶手段を参照することにより、各状況情報に関連付けられた警戒事故情報を取得することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、情報処理装置と、車載端末とを備える情報処理システムであって、前記情報処理装置は、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得手段と、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定手段と、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求情報に対応する警戒事故種別と、前記警戒事故種別を含む警告を行うための、前記車載端末を搭載した車両の運転状況に関する判定条件と含む警告情報を送信する送信手段と、を備え、前記車載端末は、前記警告情報を受信する受信手段と、前記車載端末を搭載した車両の運転状況を取得する運転状況取得手段と、前記運転状況取得手段が取得した運転状況が前記判定条件を満たす場合に、前記警告を行う警告手段と、を備える。
【0018】
上記の情報処理システムにおいて、情報処理装置は、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する。次に、状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する。そして、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、要求情報に対応する警戒事故種別と、警戒事故種別を含む警告を行うための、車載端末を搭載した車両の運転状況に関する判定条件と含む警告情報を送信する。一方、車載端末は、警告情報を受信するとともに、車載端末を搭載した車両の運転状況を取得する。そして、運転状況取得手段が取得した運転状況が判定条件を満たす場合に、警告を行う。これにより、車載端末は、警戒事故種別を含む警告情報を受信し、事故種別を明確にした警告を出力することが可能となる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態では、情報処理装置により実行される情報処理方法は、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得工程と、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定工程と、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求信号に対応する前記警戒事故種別を含む警告情報を送信する送信工程と、を備える。これにより、車載端末は、警戒事故種別を含む警告情報を受信し、事故種別を明確にした警告を出力することが可能となる。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備える情報処理装置により実行されるプログラムは、事故事象に遭遇した複数の車両について、当該事故事象に遭遇した際の状況情報及び当該事故事象に関する事故種別を含む事故情報を取得する取得手段、前記状況情報による分類後の事故情報に対する構成割合が、全ての事故情報に対する構成割合よりも高い事故種別のうち少なくとも一部を、当該状況における警戒事故種別として特定する特定手段、位置情報を含む要求情報を送信してきた車載端末に対して、前記要求信号に対応する前記警戒事故種別を含む警告情報を送信する送信手段、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の情報処理装置を実現することができる。このプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[システム構成]
図1は、本発明を適用した情報処理システムの構成を示す。情報処理システムは、サーバ10と、車両3に搭載された車載端末20とを含む。サーバ10と車載端末20とは無線通信可能に構成されている。なお、
図1においては説明の便宜上1つの車両3のみが示されているが、実際には多数の車両3に搭載された車載端末20がサーバ10と通信する。
【0022】
図2は、サーバ10の構成を示す。サーバ10は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、事故データベース(以下、「データベース」を「DB」と記す。)13と、警戒事故種別DB15と、判定条件DB16とを備える。
【0023】
通信部11は、車載端末20と無線通信を行う。具体的に、通信部11は、車載端末20から警告情報を要求する情報要求を受信する。また、通信部11は、情報要求に応じて生成した警告情報を車載端末20へ送信する。記憶部13は、RAM、ROMなどにより構成され、サーバ10が実行する処理に対応するプログラムを記憶している。また、記憶部13は、サーバ10が各種の処理を行う際の作業メモリを提供する。
【0024】
事故DB14は、過去に発生した事故情報を記憶している。事故情報は、例えば調査機関により提供された情報であってもよく、多数の車両から通信により取得したプローブデータに基づいて作成された情報であってもよい。後述するように、事故情報は、その事故が発生した際の状況に関連する状況情報を含む。なお、事故情報は、発生した事故の情報のみならず、未然に回避した未遂状態の情報や、ヒヤリハット情報などを含んでもよい。
【0025】
警戒事故種別DB15は、事故情報に基づいて生成された警戒事故種別情報を記憶する。警戒事故種別情報は、ある状況において発生しやすい事故種別を示す情報であり、状況情報と警戒事故種別とを含む。
【0026】
判定条件DB16は、判定条件を記憶する。判定条件は、情報要求に応じて車載端末20へ送信される警告情報に含められる。判定条件は、車載端末20において警告を出力すべきか否かを判定する際に使用される条件であり、車両の運転状況に関する条件である。
【0027】
制御部12は、サーバ10の全体を制御する。制御部12は、CPUなどのコンピュータにより構成され、予め用意されたプログラムを実行することにより所定の処理を実行する。具体的に、制御部12は、事故DB14に記憶されている事故情報に基づいて、警戒事故種別情報を生成し、警戒事故種別DB15に記憶する。また、制御部12は、多数の車両から収集したプローブデータなどに基づいて、警告情報に含めて車載端末20に送信されるべき判定条件を生成し、判定条件DB16に記憶する。
【0028】
上記の構成において、事故DB14は本発明の取得手段の一例であり、制御部12は本発明の特定手段の一例であり、通信部11は本発明の送信手段の一例であり、警戒事故種別DB15は本発明の記憶手段の一例である。
【0029】
図3は、車載端末20の構成を示す。車載端末20は、通信部21と、制御部22と、記憶部23と、走行履歴DB24と、表示部25と、音声出力部26とを備える。通信部21は、サーバ10と無線通信する。具体的に、通信部21は、サーバ10へ情報要求を送信するとともに、情報要求に応じて送信される警告情報をサーバ10から受信する。
【0030】
記憶部23は、RAM、ROMなどにより構成され、車載端末20が実行する処理に対応するプログラムを記憶している。また、記憶部23は、車載端末20が各種の処理を行う際の作業メモリを提供する。
【0031】
走行履歴DB24は、車載端末20が搭載された車両の走行履歴情報を記憶している。特に、走行履歴DB24には、過去の車両の走行における車両の速度や運転手による急操作の履歴情報を記憶している。ここで、「急操作」とは、例えば、急加速、急減速、急ハンドルなどの操作を言い、「急操作情報」とは、各操作を行った地点、日時、回数などの履歴情報である。
【0032】
表示部25は、例えば液晶ディスプレイなどであり、地図データ、メッセージなどを表示する。車載端末20がナビゲーション装置である場合、又は、ナビゲーションアプリを実行する携帯端末などである場合、表示部25には、地図データ上に自車位置や案内経路を示した案内画像を表示する。音声出力部26は、スピーカなどであり、必要に応じて警告音声などを出力する。音声出力部26は、車両のスピーカを利用しても良い。なお、車載端末20の構成する機器によっては、表示部25又は音声出力部26のいずれかが無い場合もある。その場合でも、案内を行う際には、表示部25又は音声出力部26の一方による案内が行われる。
【0033】
制御部22は、車載端末20の全体を制御する。制御部22は、CPUなどのコンピュータにより構成され、予め用意されたプログラムを実行することにより所定の処理を実行する。具体的に、制御部22は、車両の現在位置などを含む情報要求をサーバ10へ送信する。また、制御部22は、情報要求に対してサーバ10から受信した警告情報に基づいて、警告地点において警告を出力すべきか否かを判定した上で警告を出力する。
【0034】
上記の構成において、通信部21は本発明の受信手段の一例であり、制御部22及び走行履歴DB24は本発明の運転状況取得手段の一例であり、制御部22、表示部25及び音声出力部26は本発明の警告手段の一例である。
【0035】
[警戒事故種別情報の生成]
次に、警戒事故種別情報の生成方法について説明する。サーバ10は、事故DB14に記憶されている事故情報に基づいて、警戒事故種別情報を生成する。
【0036】
(第1実施例)
まず、警戒事故種別情報を生成する第1実施例について説明する。
図4(A)は、多数の事故を、事故が発生した地点毎、かつ、事故種別毎に分類したものである。サーバ10は、事故DB14に記憶されている多数の事故情報を、地点及び事故種別により分類して
図4(A)に示すような事故情報を生成する。この場合、「地点」は、本発明の状況情報の一例である。
【0037】
図4(A)の例において、各地点における事故件数は、「人対車両」、「正面衝突」、「追突」などの事故種別により分類されている。サーバ10は、まず、各地点における事故種別毎の事故件数を合計し、地点毎の「総計」を算出する。なお、対象となる事故情報としては、一定間隔(例えば1日)毎に調査機関が集めた事故情報を更新して使用しても良いし、事故が発生する度に車両からプローブ情報としてサーバ10にアップロードされる事故情報を更新して使用しても良いし、両者を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
次に、サーバ10は、以下の式により、地点毎に、その総計における事故種別毎の構成比(以下、「地点別構成比」とも呼ぶ。)を算出する。
【数1】
これにより、各地点について、事故件数の総計に対して各事故種別が占める割合(構成割合)が算出される。
図4(A)の例について算出された、地点別構成比を
図4(B)に示す。
【0039】
次に、サーバ10は、以下の式により、総事故件数における事故種別毎の構成比(以下、「全体構成比」とも呼ぶ。)を算出する。
【数2】
これにより、全体の事故件数に対して各事故種別が占める割合(構成割合)が算出される。
図4(A)の例について算出された全体構成比を
図4(C)に示す。
【0040】
次に、サーバ10は、各地点における地点別構成比を全体構成比と比較し、地点別構成比が全体構成比よりも高くなるケース(地点と事故種別の組合せ)を抽出する。
図4(B)において、地点別構成比が全体構成比よりも高くなる箇所をグレーで示している。地点別構成比が全体構成比より高くなるケースは、通常の確率よりも高い確率で事故が発生しているケースであるということができ、その事故種別の事故が特に発生しやすいケースであると言える。よって、サーバ10は、地点別構成比が全体構成比よりも高くなる地点を警戒地点とし、その事故種別を警戒事故種別と特定する。そして、警戒地点と警戒事故種別の組合せを警戒事故種別情報として、警戒事故種別DB15に記憶する。
【0041】
なお、
図4(A)に示す「ZZZ地点」は事故件数の総計が3件と少ない。このように事故件数の総計が少ない地点(例えば、4件以下の地点)に対しては、同一の事故種別の事故が2件以上発生している場合に、その事故種別を警戒事故種別とする。このように、サーバ10は、ある事故種別の事故が標準的な確率よりも高い確率で起きている地点を抽出し、警戒事故種別情報として警戒事故種別DB15に記憶する。
【0042】
(第2実施例)
次に、警戒事故種別情報を生成する第2実施例について説明する。第1実施例では、警戒事故種別情報を生成する際の状況情報を「地点」としていたが、第2実施例では、状況情報として「日時」を使用する。
図5(A)、(B)は、多数の事故を日時(平日/休日の時間帯)で分類したものである。サーバ10は、事故DB14に記憶されている多数の事故情報を、平日と休日の各時間帯で分類して
図5(A)、(B)に示すような事故情報を生成する。この場合、「日時」は、本発明の状況情報の一例である。
【0043】
サーバ10による警戒事故種別情報の生成は、基本的に第1実施例と同様に行われる。
図5(A)の例において、各時間帯における事故件数は、複数の事故種別により分類されている。サーバ10は、まず、各時間帯について事故種別毎の事故件数を合計し、時間帯毎の「総計」を算出する。
【0044】
次に、サーバ10は、以下の式により、地点毎の総計における事故種別毎の構成比(以下、「時間帯別構成比」とも呼ぶ。)を算出する。
【数3】
これにより、各地点について、事故件数の総計に対して各事故種別が占める割合(構成割合)が算出される。
図5(A)の例について算出された時間帯別構成比を
図6(A)に示す。
【0045】
次に、サーバ10は、前述の式(2)により、総事故件数における事故種別毎の構成比、即ち、全体構成比を算出する。これにより、全体の事故件数に対して各事故種別が占める割合(構成割合)が算出される。
図5(A)の例について算出された、全体構成比を
図6(B)に示す。
【0046】
次に、サーバ10は、各時間帯における時間帯別構成比を全体構成比と比較し、時間帯別構成比が全体構成比よりも高くなるケース(時間帯と事故種別の組合せ)を抽出する。
図6(A)においては、時間帯別構成比が全体構成比よりも高くなる箇所をグレーで示している。サーバ10は、時間帯別構成比が全体構成比よりも高くなる時間帯を警戒時間帯とし、その事故種別を警戒事故種別と特定する。そして、警戒時間帯と警戒事故種別の組合せを、警戒事故種別情報として警戒事故種別DB15に記憶する。このように、サーバ10は、ある事故種別の事故が標準的な確率よりも高い確率で起きている時間帯を抽出し、警戒事故種別DB15に記憶する。
【0047】
なお、上記の方法では、時間帯別構成比が全体構成比よりも高くなる時間帯を警戒時間帯として抽出しているが、このような構成比の大小比較の代わりに、特化係数による判定を行っても良い。
図6(C)は、
図6(A)に示す時間帯別構成比を、
図6(B)に示す全体構成比で除算したものを示している。いま、事故のリスクが高まる指標として「特化係数=1.2」を設定する。
図6(C)においては、特化係数=1.2よりも高い数値を有するケースを、警戒時間帯としてグレーで示している。特化係数を用いることにより、上述の構成比の大小比較では明確な判別が難しい場合においても、警戒時間帯及び警戒事故種別の組み合わせを抽出することができる。
【0048】
さらに他の手法として、残差分析を用いることもできる。
図7は残差分析を用いた例を示す。まず、
図5(A)の例において、以下の式により期待値を算出する。
(期待値)=(時間帯毎の総計)×(全時間帯における構成比) ・・(4)
得られた期待値の例を
図7(A)に示す。
【0049】
次に、以下の式により残差を算出する。
(残差)=(実測値)-(期待値) ・・(5)
得られた残差の例を
図7(B)に示す。
【0050】
そして、実測値、期待値、列の総計(列計)、行の総計(行計)を用いて、以下の式により調整残差を算出する。
【数4】
得られた調整残差を
図7(C)に示す。ここで、有意に差があるとする基準を「調整残差=2.8」とし、
図7(C)においてこれを超える時間帯を警戒時間帯とする。
図7(C)では、警戒時間帯と判定された時間帯をグレーで示している。なお、上記の特化係数又は残差分析を利用した判定は、警戒時間帯の判定に限らず、上記の警戒地点などの他の状況情報による判定に対しても適用することができる。
【0051】
(その他の実施例)
上記の第1実施例では状況情報として「地点」を使用し、第2実施例では状況情報として「日時(平日/休日の時間帯)」を使用しているが、状況情報として他の情報を使用することもできる。状況情報の他の例として、
図8(A)に示すように「天候」を使用してもよく、
図8(B)に示すように「気温」を使用しても良い。また、
図8(C)に示すように運転手の「性別」を使用してもよく、
図8(D)に示すように運転手の「年齢」を使用してもよい。なお、
図8(A)~(D)においては、説明の便宜上、数値の記入を省略している。
【0052】
[警告情報の提供処理]
(処理フロー)
次に、警告情報の提供処理について説明する。サーバ10は、車載端末20からの情報要求に応じて、車載端末20へ警告情報を提供する。
図9は、警告情報の提供処理のフローチャートである。この処理は、サーバ10と車載端末20により実行される。
【0053】
まず、車載端末20は、サーバ10へ情報要求を送信する(ステップS10)。この情報要求は、車載端末20を搭載した車両3の現在位置周辺における警戒地点に関する情報を要求するものである。車載端末20は、車両3の現在位置情報を情報要求に含めてサーバ10へ送信する。現在位置情報は、現在位置の座標(緯度、経度)であってもよく、現在位置が属する地図データのメッシュIDなどであってもよく、行政界や郵便番号などであってもよい。なお、車載端末20から受け取った現在位置情報に基づいて、サーバ10側で、緯度経度、メッシュID、行政界、郵便番号などの情報を取得し、それを現在位置情報としてもよい。また、車載端末20がサーバ10へ情報要求を送信するタイミングは、例えば所定時間毎であってもよいし、車両の現在位置が地図データの隣接するメッシュに移動するときであってもよい。所定時間毎に情報要求を送信する場合には、ユーザが時間間隔を設定できるようにしてもよい。
【0054】
サーバ10は、車載端末20から情報要求を受信すると、情報要求に含まれる現在位置情報、またはサーバ10側で取得した現在位置情報に基づいて車両3の周辺エリアを特定し、周辺エリア内の警戒事故種別情報を取得する(ステップS11)。具体的には、情報要求に含まれる現在位置情報が現在位置の座標である場合、サーバ10は、現在位置を基準とした所定範囲(例えば、現在位置から半径10kmの範囲、又は、現在位置が含まれる市区町村の範囲など)を車両3の周辺エリアと決定する。また、情報要求に含まれる現在位置情報がメッシュIDである場合には、サーバ10は、現在位置が属するメッシュ、又は、現在位置が属するメッシュとその隣接メッシュを周辺エリアと決定する。
【0055】
そして、サーバ10は、警戒事故種別DB15を参照し、周辺エリアに属する警戒事故種別情報、具体的には、警戒地点及び警戒事故種別の組合せを取得する。これにより、例えば、周辺エリアに属する警戒事故種別情報として、「地点AAA、追突」、「地点BBB、右折時事故」などの警戒事故種別情報が得られる。
【0056】
次に、サーバ10は、警戒事故種別DB15を参照し、現在の状況に対応する警戒事故種別情報を取得する(ステップS12)。前述のように、警戒事故種別DB15には、地点別の警戒事故種別に加えて、日時、天候、気温などの状況別の警戒事故種別情報が記憶されている。よって、サーバ10は、現在の日時、天候、気温などの状況に対応する警戒事故種別情報を警戒事故種別DB15から取得する。
【0057】
次に、サーバ10は、ステップS11で取得した地点別の警戒事故種別情報と、ステップS12で取得した状況別の警戒事故種別情報とに基づいて、現在の状況下で事故発生リスクが高いと考えられる警戒地点を「警告地点」と決定する(ステップS13)。例えば、警戒事故種別DB15に記憶されている時間帯別警戒事故種別に基づいて、「追突事故は夕方に発生しやすい」ことがわかっていると仮定する。サーバ10は、警戒事故種別情報として「地点AAA、追突」を取得した場合、現在の状況が夕方であれば地点AAAを警告地点と決定し、夕方でなければ地点AAAを警告地点と決定しない。このように、サーバ10は、警戒事故種別情報が示す警戒地点に基づいて、現在の状況による事故発生リスクなどを勘案し、警告地点を決定する。
【0058】
次に、サーバ10は、決定された警告地点毎に、危険運転の程度に関する判定条件を取得する(ステップS14)。「判定条件」は、各地点において、危険な運転であると判断されるべき条件を指し、具体的には、車両の速度、並びに、急操作(急加速、急減速、急ハンドルなど)の回数についての閾値を含む。車両3の運転状態がこの閾値を超えた場合に、危険運転と判定される。後述するように、車載端末20は、車載端末20を搭載した車両の運転が判定条件に合致するとき、即ち、危険運転に該当するときに、警告を出力することになる。
【0059】
判定条件は、判定条件DB16に地点毎に予め記憶されている。例えば、急カーブや見通しの悪い交差点などの事故多発地点では、判定条件としての閾値が低めに設定されている。一例としては、通常の地点では車速の閾値は時速50kmに設定され、事故多発地点では車速の閾値は時速30kmに設定されているという具合である。よって、サーバ10は、判定条件DB16を参照し、ステップS13で決定された警告地点における判定条件(車速の閾値、及び、急加速、急減速、急ハンドルの回数の閾値)を取得する。
【0060】
そして、サーバ10は、警告地点についての警告情報を車載端末20へ送信する(ステップS15)。ここで、警告情報は、警告地点について、ステップS11で取得した警戒事故種別情報(即ち、地点情報と警戒事故種別)、及び、ステップS14で取得した判定条件を含む。
【0061】
車載端末20は、サーバ10から警告情報を受信すると、判定条件と、自車両の運転状態とに基づいて、警告の要否を判定する(ステップS16)。具体的には、車載端末20は、車両3の現在の速度を取得するとともに、走行履歴DB24を参照して、運転手による急操作(急加速、急減速、急ハンドル)の回数(例えば、過去100kmの走行における回数)を取得する。そして、それらの値を、判定条件に含まれる各閾値と比較し、運転手による運転が危険運転に該当するか否かを判定する。危険運転に該当する場合、車載端末20は警告が必要であると判定し、危険運転に該当しない場合、車載端末20は警告は必要でないと判定する。この判定は、警告情報に含まれる警告地点毎に行われ、警告地点毎に警告の要否が判定される。
【0062】
そして、警告が必要であると判定された警告地点においては、車載端末20は警告を出力する(ステップS17)。警告の出力は、車載端末20の表示部25へのメッセージの表示と音声出力部26による音声メッセージの出力の少なくとも一方により行われる。
図10は、警告の出力時の表示画面例を示す。表示部25の表示画面には、車両3の現在位置周辺の地図が表示され、地図中に車両の現在位置を示す現在位置マーク31が示されている。この例では、現在走行中の道路の前方に警告地点が存在し、その位置がマーク32により示されている。車両が警告地点から所定距離に近づくと、表示画面にメッセージ33が表示されるとともに、同様の内容の音声メッセージが音声出力部26から出力される。なお、出力されるメッセージには、その警告地点における警戒事故種別(本例では、「追突事故」)が示される。これにより、運転手は、その地点でどのような事故が発生しやすいのかを具体的に知ることができる。
【0063】
上記の例では、状況別の警戒事故種別情報として、日時、気候、気温などを使用しているが、例えば、運転手の性別や年齢別の警戒事故種別情報が警戒事故種別DB15に記憶されている場合には、それらも併せて利用することとしてもよい。この場合、車載端末20は、ステップS10において情報要求に運転手の性別、年齢などの情報を含めてサーバ10へ送信する。サーバ10は、ステップS12で運転手の性別、年齢などの状況別の警戒事故種別情報を取得し、ステップS13において警告地点を決定する際に利用する。
【0064】
(判定条件に基づく判定)
次に、ステップS16で行われる警告の要否の判定について具体例を説明する。サーバ10は、判定条件DB16に、地点毎の判定条件、具体的には危険運転の閾値を記憶している。前述のように、閾値は、車両の速度、急加速回数、急減速回数、急ハンドル回数などを含む。ここで、地点毎の閾値は、サーバ10が多数の車両から取得したプローブデータなどに基づいて設定される。具体的には、道路形状やプローブデータに基づいて、ある地点における多数の車両の速度を集計し、その地点において危険運転と判断すべき速度を閾値に設定する。また、プローブデータに基づいて、多数の運転手による急加速、急減速、急ハンドルの回数を集計し、その地点において危険運転と判断すべき回数を、それぞれの閾値として設定する。
【0065】
また、サーバ10では、必要に応じて状況リスク係数に基づいて各閾値を補正する。状況リスク係数は、走行中の状況が危険運転に影響を与える程度を示す係数であり、具体的には、「天候」、「時間帯」、「交通量」、「性別」、「年齢」などが挙げられる。例えば、一般的に天候が晴れのときに比べて、雨のときは事故の確率は上がり、雪のときは事故の確率はさらに上がる。よって、サーバ10は、判定条件を決定する際に、警告地点における現在の天候を確認し、例えば、天候が晴れであれば係数を「1」とし、雨であれば係数を「0.8」とし、雪であれば係数を「0.6」とする。サーバ10は、各状況リスク係数を各閾値に乗算して補正を行う。よって、ある地点において元々の速度の閾値が時速50kmに設定されている場合(即ち、その地点では時速50km以上での走行を危険運転と判断する)、そのときの天候が晴れであれば速度の閾値は時速50kmであるが、天候が雨であれば速度の閾値は時速40kmに下がり、天候が雪であれば速度の閾値は時速30kmに下がる。こうして、天候を考慮することにより、閾値が補正される。また、サーバ10は、「時間帯」、「交通量」、「性別」、「年齢」などの他の状況についても同様に何段階かの係数を設定しておき、現在の状況に応じて各閾値の補正を行う。
【0066】
このようにして、状況に基づいて補正された閾値が判定条件として車載端末20へ送信される。車載端末20では、速度超過の判定結果と、急操作(急加速、急減速、急ハンドル)傾向の判定結果のAND演算により、危険運転であるか否かの判定を行う。具体的には、車載端末20は、まず、車両3の速度を検出し、サーバ10から受信した判定条件に含まれる速度の閾値を超えているか否かを判定する。また、車載端末20は、判定条件に含まれる急操作の閾値に基づいて判定を行う。この場合、例えば車載端末20は、その車両の直近の所定距離(例えば100km)の走行中に発生した急操作の回数を閾値と比較する。即ち、直近の所定距離においてその車両で発生した急加速、急減速、急ハンドルの回数を、それぞれ判定条件に含まれる急加速、急減速、急ハンドルの閾値(回数)と比較する。そして、これらのいずれか1つのでも閾値を上回る場合には、急操作の傾向があると判定する。
【0067】
そして、車載端末20は、車両の速度が速度の閾値を超えており、かつ、急操作の傾向がある場合、警告を出力すべきと判定する。これ以外の場合は、車載端末20は警告を出力しないと判定する。なお、車両の速度が速度の閾値を超えていない場合には、車載端末20は、急操作傾向の判定を行わないこととしてもよい。また、その運転手に急操作の傾向が無く、安全運転であると判断される場合には、車載端末20は、速度の判定を行わないこととしてもよい。また、車載端末20は、その運転手による累積走行距離が上記の所定距離(例えば100km)に満たない場合には、速度超過の判定結果のみに基づいて警告すべきか否かの判定を行えばよい。