(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067979
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】投光装置、受光装置、投受光装置、投光方法、受光方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230509BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034404
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2018195740の分割
【原出願日】2018-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(57)【要約】
【課題】
受光素子の飽和を抑えつつ投光や受光を行うことが可能な投光装置、受光装置又は投受光装置を提供する。
【解決手段】
所定領域に向けて出射光を出射し、所定領域内の対象物によって反射された出射光を戻り光として受光する投受光装置であって、出射光を出射する光源と、回動軸周りに回動し、出射光が入射し且つ回動軸とのなす角がそれぞれ異なる複数の面を有し、出射光を反射させて所定領域に向けて出射する投光用反射素子と、を有し、複数の面のうち、1の面が出射光に対して他の面よりも低い反射率を有する。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域に向けて出射光を出射し、前記所定領域内の対象物によって反射された前記出射光を戻り光として受光する投受光装置であって、
前記出射光を出射する光源と、
回動軸周りに回動し、前記出射光が入射し且つ前記回動軸とのなす角がそれぞれ異なる複数の面を有し、前記出射光を反射させて前記所定領域に向けて出射する投光用反射素子と、
を有し、
前記複数の面のうち、1の面が前記出射光に対して他の面よりも低い反射率を有することを特徴とする投受光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光装置、受光装置及び投受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を対象物に照射し、当該対象物によって反射された光を受光して解析することにより、対象物までの距離を計測する測距装置が知られている。このような測距装置において、光源から出射された光を反射させて投光するため又は対象物からの戻り光を受光素子に導くための反射素子として、回動軸周りに回動し且つ複数の反射面を有するポリゴンミラーが用いられている。このようなポリゴンミラーを用いて様々な方向に向けて光を出射することを可能にするため、回転軸に対してそれぞれ異なる角度をなすように複数の反射面を設けたポリゴンミラーが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物からの戻り光の光量は対象物までの距離の2乗に逆比例するため、近距離にある対象物からの戻り光は受光素子を飽和させるおそれがある。上記従来技術のようなポリゴンミラーを用いた場合、複数の反射面の各々で反射された光は、それぞれ異なる方向に向けて出射される。このため、例えば地面の方向に向けて光が出射されると、高さの異なる他の方向に出射された場合と比べて短距離で光が反射されるため、戻り光が受光素子を飽和させてしまうおそれがあるという問題点があった。
【0005】
このように、ポリゴンミラーの各反射面と回転軸との間のなす角によっては、戻り光の強度が高くなり、受光素子を飽和させてしまうおそれがあるということが課題の一例として挙げられる。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、受光素子の飽和を抑えつつ投光や受光を行うことが可能な投光装置、受光装置又は投受光装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、所定領域に向けて出射光を出射し、前記所定領域内の対象物によって反射された前記出射光を戻り光として受光する投受光装置であって、前記出射光を出射する光源と、回動軸周りに回動し、前記出射光が入射し且つ前記回動軸とのなす角がそれぞれ異なる複数の面を有し、前記出射光を反射させて前記所定領域に向けて出射する投光用反射素子と、を有し、前記複数の面のうち、1の面が前記出射光に対して他の面よりも低い反射率を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の測距装置の構成を示すブロック図である。
【
図2A】本実施例の測距装置の模式的な動作説明図である。
【
図2B】本実施例の測距装置の模式的な動作説明図である。
【
図3】ポリゴンミラーの反射面で反射された光の照射を示す模式図である。
【
図4A】ポリゴンミラーの反射面S1による光の反射を示す模式図である。
【
図4B】ポリゴンミラーの反射面S2による光の反射を示す模式図である。
【
図4C】ポリゴンミラーの反射面S3による光の反射を示す模式図である。
【
図4D】ポリゴンミラーの反射面S4による光の反射を示す模式図である。
【
図5A】実施例1のポリゴンミラーの反射面を示す図である。
【
図5B】実施例1のポリゴンミラーの反射面を示す図である。
【
図6】本実施例の測距装置を搭載する移動体と走査光との関係を示す模式図である。
【
図7A】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図7B】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図7C】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図8A】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図8B】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図8C】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図9A】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図9B】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図9C】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図10A】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図10B】実施例1のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図11A】実施例2のポリゴンミラーの反射面を示す図である。
【
図11B】実施例2のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図12A】実施例2のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図12B】実施例2のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図12C】実施例2のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図13A】実施例2のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図13B】実施例2のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【
図13C】実施例2のポリゴンミラーの反射面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0010】
図1は、実施例1の測距装置100の構成を示すブロック図である。測距装置100は、光学的に対象物までの距離を測定する光測距装置である。測距装置100は、車両等の移動体に搭載されており、移動体の進行方向に向かって光を照射することにより、対象物までの距離を測定する。
【0011】
測距装置100は、光源11A及び光源駆動回路11Bからなる光源部11を有する。光源11Aは、パルス化されたレーザ光を生成して出射する。光源駆動回路11Bは、光源11Aがレーザ光を出射するための駆動信号を生成し、光源11Aに印加する。
【0012】
測距装置100は、光源部11の光源11Aから出射されたレーザ光を用いて測距の対象となる対象領域(走査対象領域)を走査する光走査部12を有する。光走査部12は、ポリゴンミラー12Aと、ポリゴンミラー12Aを駆動するミラー駆動回路12Bと、を有する。ポリゴンミラー12Aは、回動軸周りに回動する回転多面鏡であり、複数の反射面を有する。光走査部12は、光源11Aから出射されたレーザ光をポリゴンミラー12Aの反射面で反射させて照射方向を変化させることにより、走査対象領域の走査を行う。
【0013】
測距装置100は、対象物までの距離を計測する測距部13を有する。測距部13は、受光部13A及び距離算出部13Bを有する。受光部13Aは、光走査部12の走査により照射された走査光が対象物により反射された光(以下、戻り光と称する)を受光する。受光部13Aは、例えばAPD(Avalanche Photodiode)等の受光素子から構成されており、受光した戻り光の強度を電気信号に変換して受光信号を生成する。距離算出部13Bは、受光部13Aにより生成された受光信号に基づいて、測距装置10と対象物との間の距離を算出する。
【0014】
測距装置100は、CPU(Central Processing Unit)等からなる制御部14を有する。制御部14は、光源部11、光走査部12及び測距部13の動作を制御する。
【0015】
図2Aは、光源11A及びポリゴンミラー12Aの配置例と、光源11Aから出射されたレーザ光が対象物OBに照射される際のレーザ光の進路とを模式的に示す図である。
【0016】
光源11Aから出射されたレーザ光L1の光路上には、ビームスプリッタBSが設けられている。レーザ光L1は、ビームスプリッタBSを通過してポリゴンミラー12Aの複数の反射面のうちの1つに入射する。レーザ光L1は、ポリゴンミラー12Aの反射面で反射され、走査光L2として走査対象領域R0に向けて出射される。
【0017】
図2Bは、ビームスプリッタBS及び受光部13Aの配置例と、対象物OJTで反射されたレーザ光が測距部13の受光部13Aで受光される際の反射光の進路を模式的に示している。
【0018】
対象物OJTで反射された走査光L2は、戻り光L3として、ポリゴンミラー12Aの反射面の1つに入射する。ポリゴンミラー12Aの反射面によって反射された戻り光L3は、さらにビームスプリッタBSによって反射され、戻り光L4として測距部13の受光部13Aによって受光される。受光部13Aは、戻り光L4の強度に基づいた受光信号を生成する。
【0019】
測距部13の距離算出部13Bは、受光部13Aが生成した受光信号に基づいて、受光部13Aと対象物OJTとの間の距離を算出する。例えば、距離算出部13Bは、TOF(Time of Flight)法を用いて、対象物OJTまでの距離を算出する。
【0020】
次に、本実施例のポリゴンミラー12Aについて詳細に説明する。ポリゴンミラー12Aは、回動軸RAbの軸方向が鉛直方向となるように配置されている。ポリゴンミラー12Aは、回動軸RAの鉛直下向き方向に対する角度(以下の説明では、回動軸RAとのなす角と称する)がそれぞれ異なる反射面S1~S4を有する。
【0021】
図3に示すように、ポリゴンミラー12Aに入射したレーザ光L1は、反射面S1~S4のいずれかで反射され、走査光L2として、走査対象領域R0内の高さの異なる4つの領域F1~F4のいずれかに向けて照射(投光)される。
【0022】
図4A~Dは、ポリゴンミラー12Aの反射面S1~S4の各々と回動軸RAとのなす角度、及び各反射面で反射されたレーザ光L1が走査光L2として出射される方向を模式的に示す図である。
【0023】
反射面S1は、回動軸RAとのなす角θ1が、他の反射面(S2、S3及びS4)と回動軸RAとのなす角と比べて小さくなるように形成されている。ポリゴンミラー12Aは回動軸RAの軸方向が鉛直方向となるように配置されているため、反射面S1に入射した光は、他の反射面に入射した場合よりも低い方向に反射される。このため、
図4Aに示すように、反射面S1によって反射されたレーザ光L1は、走査光L2として、走査対象領域R0の領域F1~F4のうち、最も高さの低い領域である領域F1に向けて照射される。
【0024】
反射面S2は、反射面S2は、回動軸RAとのなす角θ2が、反射面S1と回動軸RAとのなす角θ1よりも大きく、反射面S1以外の他の反射面(S3及びS4)と回動軸RAとのなす角よりも小さくなるように形成されている。従って、
図4Bに示すように、反射面S2によって反射されたレーザ光L1は、走査光L2として、領域F1よりも高く領域F3及びF4よりも低い領域である領域F2に向けて照射される。
【0025】
反射面S3は、回動軸RAとのなす角θ3が、反射面S1と回動軸RAとのなす角θ1及び反射面S2と回動軸RAとのなす角θ2よりも大きく、反射面S4と回動軸RAとのなす角よりも小さくなるように形成されている。従って、
図4Cに示すように、反射面S3によって反射されたレーザ光L1は、走査光L2として、領域F1及びF2よりも高く領域F4よりも低い領域である領域F3に向けて照射される。
【0026】
反射面S4は、回動軸RAとのなす角θ4が、反射面S1と回動軸RAとのなす角θ1、反射面S2と回動軸RAとのなす角θ2及び反射面S3と回動軸RAとのなす角θ3よりも大きくなるように形成されている。従って、
図4Dに示すように、反射面S4によって反射されたレーザ光L1は、走査光L2として、領域F1~F4のうち最も高い領域である領域F4に向けて照射される。
【0027】
また、本実施例のポリゴンミラー12Aは、入射光に対する反射面S1の反射率が他の反射面S2~S4の反射率よりも低い反射率となるように構成されている。
【0028】
図5Aは、ポリゴンミラー12Aの反射面の例を示す図である。反射面S1の表面には、低反射率の金属膜又は誘電体多層膜からなる低反射膜LF1が形成されている。これにより、反射面S1は、反射面S2、S3及びS4よりも低い反射率を有する。
【0029】
また、反射面S1だけではなく、他の反射面も異なる反射率を有するように構成されていてもよい。
図5Bは、このようなポリゴンミラー12Aの反射面の例を示す図である。反射面S2の表面には、例えば反射面S1の表面に形成された低反射膜LF1よりも高い反射率を有する低反射膜LF2が形成されている。これにより、反射面S2は、反射面S1の反射率よりも高く、反射面S3及びS4の反射率よりも低い反射率を有する。
【0030】
図5A又は
図5Bのようなポリゴンミラー12Aの構成によれば、反射面S1で反射された光は、反射面S2、S3及びS4で反射された光よりも低い強度の光となる。
図4A及び
図4Bに示したように、光源11Aから出射されて反射面S1で反射されたレーザ光L1は、走査光L2として、走査対象領域R0内の低い領域F1に向けて照射される。従って、領域F1には、他の領域F2~F4と比べて低い強度の走査光L2が照射される。
【0031】
また、対象物OJTによって反射されたレーザ光である戻り光L3は、ポリゴンミラー12Aの反射面S1~S4で反射され、受光部13Aで受光される。その際、領域F1内の対象物OJTからの戻り光は、反射面S1で反射された後、受光部13Aで受光される。従って、領域F1からの戻り光は、反射率の低い反射面S1で反射されることにより、低い強度の戻り光として、受光部13Aで受光される。
【0032】
図6は、本実施例の測距装置100を搭載する移動体VHと、測距装置100から照射される走査光L2との関係を示す模式図である。図中、反射面S1で反射されることにより出射された走査光L2(以下、反射面S1からの走査光L2と称する)をL2(S1)、反射面S3で反射されることにより出射された走査光L2(以下、反射面S3からの走査光L2と称する)をL2(S3)として示している。
【0033】
図4Aに示したように、反射面S1からの走査光L2は、走査対象領域R0内の低い領域F1に向けて照射される。このため、反射面S1からの走査光L2は、例えば移動体VHが走行する路面で反射される。すなわち、反射面S1からの走査光L2は、反射面S3からの走査光L2が対象物OJTで反射されるのと比べて、短い距離で反射されることになる。従って、本実施例とは異なり、仮に反射面S1が他の反射面S2~S4と同じ反射率を有していた場合、反射面S1で反射されて出射され、移動体VHが走行する路面で反射されたレーザ光である戻り光は高い強度の光となり、受光部13Aの受光素子を飽和させてしまう。
【0034】
これに対し、本実施例の測距装置100では、反射面S1の反射率が、反射面S2~S4の反射面よりも低い反射率を有するように構成されている。従って、移動体VHが走行する路面等、短い距離の対象物で反射された場合であっても戻り光の強度を低く抑えることができるため、受光素子の飽和を防止することが可能となる。
【0035】
なお、ポリゴンミラー12Aの反射面S1~S4の反射率に差異を設ける方法は、低反射率の金属膜や誘電体多層膜の形成に限られない。例えば、
図7A~Cに示すように、反射面S1やS2の表面に凹凸構造を設けることにより、光の散乱や回折を利用して反射率に差異を設けてもよい。
図7Aに示すように、反射面S4の表面には凹凸構造が形成されていない。これに対し、
図7Bに示すように、反射面S2の表面には凹凸構造USが形成されている。これにより、反射面S2に入射した光の散乱又は回折が生じるため、反射面S2の反射率は、反射面S4の反射率よりも低い反射率となる。また、
図7Cに示すように、反射面S1の表面にはさらに多くの凹凸構造USが形成されており、反射面S1の反射率は、反射面S2の反射率よりもさらに低い反射率となる。
【0036】
また、上記のように走査光L2の投光及び戻り光L3の受光に共通のポリゴンミラー12Aを用いるのではなく、投光用のポリゴンミラーと受光用のポリゴンミラーとを別個に設けてもよい。このような場合、受光用のポリゴンミラーとして、
図8A~Cに示すように、反射面S1やS2の表面に、反射率の低い低反射領域LAをランダムに形成することにより、反射率に差異を設けたポリゴンミラーを用いることができる。
図8Aに示すように、反射面S4の表面には低反射領域LAが形成されていない。これに対し、
図8Bに示すように、反射面S2の表面には低反射領域LAがランダムに形成されており、面全体として、反射面S4よりも低い反射率となる。また、
図8Cに示すように、反射面S1の表面にはさらに広い面積に亘って低反射領域LAが形成されており、反射面S2よりもさらに低い反射率となる。
【0037】
また、同様に受光用のポリゴンミラーとしては、
図9A~Cに示すように、反射面S1やS2の中央部に低反射領域LAを形成することにより、反射率に差異を設けたポリゴンミラーを用いることができる。
図9Aに示すように、反射面S4の表面には低反射領域LAが形成されていない。これに対し、
図9Bに示すように、反射面S2の中央部には低反射領域LAが形成されており、面全体として、反射面S4よりも低い反射率となる。また、
図9Cに示すように、反射面S1の中央部にはさらに面積の広い低反射領域LAが形成されており、反射面S2よりもさらに低い反射率となる。
【0038】
なお、
図8B及び
図8Cに示したようなランダムに低反射領域LAが形成された反射面を有するポリゴンミラーを、走査光L2の投光及び戻り光L3の受光に共通に用いたい場合には、
図10Aに示すように、反射面に例えば帯状の投光用領域EAを設けることにより実現することが可能である。かかる構成によれば、走査光L2を投光するときには投光用領域EAを用いて一定の反射率で走査光L2の照射を行い、戻り光L3を受光するときには面全体としての平均の反射率を下げた状態で戻り光L3を反射させることが可能となる。同様に、
図9B及び
図9Cに示したような中央部に低反射領域LAが形成された反射面を有するポリゴンミラーを走査光L2の投光及び戻り光L3の受光に共通して用いたい場合にも、
図10Bに示すように、反射面に投光用領域EAを設けることにより実現することが可能である。
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例の測距装置では、戻り光L3の受光に用いる受光用のポリゴンミラーが、走査光L2の投光に用いるポリゴンミラーとは別個に設けられている。
反射面S1には、中央領域CAと、中央領域CAを囲む周辺領域SAとが設けられている。中央領域CAは、単位面積当たりの反射率が反射面S2、S3及びS4と同等となるように構成されている。一方、周辺領域SAには、低反射率の金属膜又は誘電体多層膜からなる低反射領域が形成されている。これにより、反射面S1は、面全体の平均の反射率として、反射面S2、S3及びS4よりも低い反射率を有する。
また、本実施例の受光用ポリゴンミラー22Aでは、反射面S1の中央領域CAでは単位面積当たりの反射率が比較的高く、周辺領域SAが低反射領域となっている。これにより、反射面S1で反射した光の光量を他の反射面S2~S4で反射した光よりも光量よりも小さくすることができるとともに、反射面S1で反射した光の外縁(すなわち、光の進行方向に垂直な方向の径)を他の反射面S2~S4で反射した光の外縁よりも小さくすることができる。
受光用ポリゴンミラー22Aと受光部13Aとの間には、戻り光を集光して受光部13Aに導くための集光レンズ(図示せず)が設けられている。この集光レンズの開口数(NA:Numerical Aperture)や集光レンズと受光部13Aとの間の距離は、無限遠とみなすことができる距離に合わせて設定されている。このため、近距離からの光は、集光レンズの球面収差の影響により、十分に集光しない状態で受光素子により受光されることになる。
しかし、本実施例の受光用ポリゴンミラー22Aでは、近距離からの戻り光を反射することが想定される反射面S1において、光の外縁を小さくすることが可能であるため、近距離からの光を集光レンズによって十分に集光可能な状態にすることができる。従って、受光部13Aは、近距離からの戻り光を集光した状態で受光することが可能となる。
なお、本発明の実施形態は、上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記実施例1と実施例2とを組み合わせ、例えば投光用のポリゴンミラーを実施例1のように構成し、受光用のポリゴンミラーを実施例2のように構成してもよい。
また、上記実施例では、ポリゴンミラーが4つの反射面S1~S4を有する場合について説明したが、反射面の数はこれに限られない。すなわち、ポリゴンミラーは、回動軸とのなす角がそれぞれ異なり且つ少なくとも1つの反射面が他の反射面よりも低い反射率である複数の反射面を有していればよい。