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2023-68001低反射コーティング剤、コーティング剤キット、硬化物及び積層物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068001
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】低反射コーティング剤、コーティング剤キット、硬化物及び積層物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20230509BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230509BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230509BHJP
   C09D 5/32 20060101ALI20230509BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230509BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230509BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/32
C09D5/00 D
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036511
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2021186091の分割
【原出願日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020193042
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中橋 和之
(72)【発明者】
【氏名】柚木 浩志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁宣
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 浩壽
(57)【要約】
【課題】低反射コーティング剤、コーティング剤キット、硬化物及び積層物を提供すること。
【解決手段】本開示は、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、中空無機粒子及び中実アルミナ粒子を含み、前記中実アルミナ粒子の含有量が固形分中2~15質量%である、低反射コーティング剤を提供する。また、本開示は、中実アルミナ粒子を固形分中2~15質量%含む低反射コーティング剤及び中実アルミナ粒子を含むアンカー剤を含む、コーティング剤キットも提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、
中空無機粒子及び
中実アルミナ粒子を含み、
前記中実アルミナ粒子の含有量が固形分中2~15質量%である、
低反射コーティング剤。
【請求項2】
(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルを含む、請求項1に記載の低反射コーティング剤。
【請求項3】
中実アルミナ粒子を固形分中2~15質量%含む低反射コーティング剤及び
中実アルミナ粒子を含むアンカー剤を含む、コーティング剤キット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の低反射コーティング剤及び/又は請求項3に記載のコーティング剤キットの硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物を含む、積層物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低反射コーティング剤、コーティング剤キット、硬化物及び積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、パーソナルコンピュータ等の表示装置として、液晶表示装置が使用されている。このような液晶表示装置において、外光の映りを防止して画質を向上させるため、低屈折率層を含む反射防止膜を使用することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-085383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーティング剤に低反射性(低屈折率性)を持たせるため、中空粒子を使用することがある。この場合、粒子が中空であるため、耐擦傷性が低くなるという問題がある。
【0005】
中空粒子を配合したコーティング剤に対し、中実アルミナ粒子をさらに配合することで、耐擦傷性の低下を抑制することができる。しかし、中空粒子及び中実アルミナ粒子をひとつの系に共存させた状態は安定性が問題となることが分かった。
【0006】
そこで、発明が解決しようとする課題の1つは安定性が良好な低反射コーティング剤を提供することとする。
【0007】
発明が解決しようとする課題の1つは低反射性を維持しつつ、耐擦傷性が良好な積層物を製造できるコーティング剤キットを提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の成分を用いることにより上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、
中空無機粒子及び
中実アルミナ粒子を含み、
前記中実アルミナ粒子の含有量が固形分中2~15質量%である、
低反射コーティング剤。
(項目2)
(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルを含む、上記項目に記載の低反射コーティング剤。
(項目3)
中実アルミナ粒子を固形分中2~15質量%含む低反射コーティング剤及び
中実アルミナ粒子を含むアンカー剤を含む、コーティング剤キット。
(項目4)
上記項目のいずれか1項に記載の低反射コーティング剤及び/又は上記項目に記載のコーティング剤キットの硬化物。
(項目5)
上記項目に記載の硬化物を含む、積層物。
【0010】
本開示において、上述した1又は複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態に係る低反射コーティング剤は安定性が良好である。
【0012】
本実施形態に係るコーティング剤キットを用いることにより、低反射性及び耐擦傷性、が良好な積層物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの上限及び下限としてA3、A2、A1(A3>A2>A1とする)等が例示される場合、数値αの範囲は、A3以下、A2以下、A3未満、A2未満、A1以上、A2以上、A1より大きい、A2より大きい、A1~A2(A1以上A2以下)、A1~A3、A2~A3、A1以上A3未満、A1以上A2未満、A2以上A3未満、A1より大きくA3未満、A1より大きくA2未満、A2より大きくA3未満、A1より大きくA3以下、A1より大きくA2以下、A2より大きくA3以下等が例示される。
【0014】
[低反射コーティング剤:コーティング剤ともいう]
本開示は、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、
中空無機粒子及び
中実アルミナ粒子を含み、
前記中実アルミナ粒子の含有量が固形分中2~15質量%である、
低反射コーティング剤を提供する。
【0015】
<酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート>
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0016】
本開示において、「酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート」は、酸性基を1個以上、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を意味する。
【0017】
本開示において、「酸性基」は、水素原子が1個以上解離して塩基が生じる基を意味する。
【0018】
酸性基は、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が例示される。
【0019】
本開示において「(メタ)アクリル」は「アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。また「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル及びメタクリロイルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。
【0020】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートを用いることにより、低反射性コーティング剤の安定性を向上させることができると考えられる。この原因は、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートが中実アルミナ粒子に対して分散剤として働き、中実アルミナ粒子の凝集・沈降を防いでいるためであると考えられる。なお、上記はあくまでも1つの説であり、本発明が上記説に拘束されることを意図するものではない。
【0021】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートは、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0022】
(水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート)
水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートは、水酸基含有(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート、水酸基含有(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート、水酸基含有(ポリ)グリセリンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート等が例示される。
【0023】
・水酸基含有(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート
(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレートは、式(A’)等で表される化合物である。
【化1】
[式中、nは0~2の整数であり、Rb1’~Rb6 ’は、それぞれ独立に水素原子、
【化2】
{式中、qはそれぞれ独立に0~16の整数であり、R1’~R3’はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、R1’は各単位ごとに基が異なっていてもよい。}
であり、
b4’、及びRb5’は各構成単位ごとに基が異なっていてもよく、
式(A)中においてRb1’~Rb6 ’のうち2個以上が
【化3】
{式中、qは0~16の整数であり、R1’~R3 ’はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、R1’は各単位ごとに基が異なっていてもよい。}
であり、Rb1’~Rb6 ’のうち1個以上が水素原子である。]
【0024】
なお、本開示において「各構成単位ごとに基が異なっていてもよい」は、例えば式(A’)において、nが2であるとき、
【化4】
b4AとRb4Bとは異なる基であってよく、Rb5AとRb5Bとは異なる基であってよいことを意味する。
【0025】
本開示において「水酸基含有(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート」は、「水酸基含有ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、水酸基含有ペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、水酸基含有ペンタエリスリトールポリエポキシ変性(メタ)アクリレート、水酸基含有ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、水酸基含有ポリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート及び水酸基含有ポリペンタエリスリトールポリエポキシ変性(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。
【0026】
水酸基含有ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0027】
水酸基含有ペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)等が例示される。
【0028】
水酸基含有ペンタエリスリトールポリエポキシ変性(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールジエポキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリエポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0029】
水酸基含有ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0030】
水酸基含有ポリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールトリ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールテトラ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールペンタ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールトリ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールテトラ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジペンタエリスリトールペンタ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールトリ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールテトラ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールペンタ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールヘキサ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールヘプタ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールオクタ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールトリ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールテトラ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールペンタ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールヘキサ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリペンタエリスリトールヘプタ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)等が例示される。
【0031】
水酸基含有ポリペンタエリスリトールポリエポキシ変性(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールジエポキシ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリエポキシ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラエポキシ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタエポキシ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールジエポキシ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリエポキシ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラエポキシ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタエポキシ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサエポキシ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタエポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0032】
・水酸基含有(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート
水酸基含有(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレートは式(B’)等で表される化合物である。
【化5】
[式中、mは0~2の整数であり、Rb7’~Rb10 ’は、それぞれ独立に水素原子、
【化6】
{式中、qはそれぞれ独立に0~16の整数であり、R1’~R3’はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、R1’は各単位ごとに基が異なっていてもよい。}
であり、
b9’は各構成単位ごとに基が異なっていてもよく、
式(B)中においてRb7’~Rb10 ’のうち2個以上が
【化7】
{式中、qは0~16の整数であり、R1’~R3 ’はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、R1’は各単位ごとに基が異なっていてもよい。}
であり、Rb7’~Rb10 ’のうち1個以上が水素原子である。]
【0033】
本開示において「水酸基含有(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート」は、「水酸基含有トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、水酸基含有トリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、水酸基含有トリメチロールプロパンポリエポキシ変性(メタ)アクリレート、水酸基含有ポリトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、水酸基含有ポリトリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート及び水酸基含有ポリトリメチロールプロパンポリエポキシ変性(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つ」を意味する。
【0034】
水酸基含有トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0035】
水酸基含有トリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパンジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリメチロールプロパンジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)等が例示される。
【0036】
水酸基含有トリメチロールプロパンポリエポキシ変性(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパンジエポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0037】
水酸基含有ポリトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレートは、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0038】
水酸基含有ポリトリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、ジトリメチロールプロパンジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジトリメチロールプロパントリ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジトリメチロールプロパンジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジトリメチロールプロパントリ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)等が例示される。
【0039】
水酸基含有ポリトリメチロールプロパンポリエポキシ変性(メタ)アクリレートは、ジトリメチロールプロパンジエポキシ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリエポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0040】
・水酸基含有(ポリ)グリセリンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート
水酸基含有(ポリ)グリセリンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレートは、式(C’)等で表される化合物である。
【化8】
[式中、pは0~7の整数であり、Rb11’~Rb14 ’は、それぞれ独立に水素原子、
【化9】
{式中、qは0~16の整数であり、R1’~R3’はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、R1’は各単位ごとに基が異なっていてもよい。}
であり、
b13’は各構成単位ごとに基が異なっていてもよく、
式(C)中においてRb11’~Rb14 ’の2個以上が
【化10】
{式中、qは0~16の整数であり、R1’~R3 ’はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、R1’は各単位ごとに基が異なっていてもよい。}
であり、Rb11’~Rb14 ’の1個以上が水素原子である。]
【0041】
本開示において「水酸基含有(ポリ)グリセリンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート」は、「水酸基含有グリセリンポリ(メタ)アクリレート、水酸基含有グリセリンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、水酸基含有グリセリンポリエポキシ変性(メタ)アクリレート、水酸基含有ポリグリセリンポリ(メタ)アクリレート、水酸基含有ポリグリセリンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート及び水酸基含有ポリグリセリンポリエポキシ変性(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つ」を意味する。
【0042】
水酸基含有グリセリンポリ(メタ)アクリレートは、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0043】
水酸基含有グリセリンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、グリセリンジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、グリセリンジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)等が例示される。
【0044】
水酸基含有グリセリンポリエポキシ変性(メタ)アクリレートは、グリセリンジエポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0045】
水酸基含有ポリグリセリンポリ(メタ)アクリレートは、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、トリグリセリンジ(メタ)アクリレート、トリグリセリントリ(メタ)アクリレート、トリグリセリンテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0046】
水酸基含有ポリグリセリンポリアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、ジグリセリンジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジグリセリントリ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリグリセリンジ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリグリセリントリ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリグリセリンテトラ(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジグリセリンジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、ジグリセリントリ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリグリセリンジ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリグリセリントリ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、トリグリセリンテトラ(プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート)、等が例示される。
【0047】
水酸基含有ポリグリセリンポリエポキシ変性(メタ)アクリレートは、ジグリセリンジエポキシ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリエポキシ(メタ)アクリレート、トリグリセリンジエポキシ(メタ)アクリレート、トリグリセリントリエポキシ(メタ)アクリレート、トリグリセリンテトラエポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0048】
(カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート)
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートは、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物との反応物等が例示される。
【0049】
カルボン酸無水物は、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸等が例示される。
【0050】
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートの製品は、アロニックスM510(酸価:80~120mgKOH/g、東亞合成(株)製)、アロニックスM520(酸価:20~40mgKOH/g、東亞合成(株)製)等が例示される。
【0051】
1つの実施形態において、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートは、硬化物の耐擦傷性が良好である観点から、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物との反応物がより好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物との反応物がさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとコハク酸無水物との反応物が特に好ましい。
【0052】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの分子量の上限及び下限は、50000、40000、30000、20000、10000、5000、4000、2000、1000、900、800、700、600、500、450、400、300、250、100、50等が例示される。1つの実施形態において、上記分子量は、50~50000が好ましい。
【0053】
本開示において、単に「分子量」と記載する場合、式量又は数平均分子量のどちらかを意味する。特定の化学式で一義的に化合物の構造を表現できる(すなわち分子量分布が1である)場合、上記分子量は式量を意味する。一方、特定の化学式で一義的に化合物の構造を表現できない(すなわち分子量分布が1より大きい)場合、上記分子量は数平均分子量を意味する。
【0054】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの酸価の上限及び下限は、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記酸価は、10~300mgKOH/gが好ましい。
【0055】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの水酸基価の上限及び下限は、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、0mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基価は、0~280mgKOH/gが好ましく、10~280mgKOH/gがより好ましい。
【0056】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基個数の上限及び下限は、30、28、26、24、22、20、18、16、14、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2個等が例示される。1つの実施形態において、上記個数は、2~30個程度が好ましい。
【0057】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの酸性基個数の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個等が例示される。1つの実施形態において、上記個数は1~10個が好ましい。
【0058】
コーティング剤固形分100質量%中の酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの含有量の上限及び下限は、70、65、60、57、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は20~70質量%が好ましい。
【0059】
<中空無機粒子>
中空無機粒子は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0060】
中空粒子は、内部に空孔を有している粒子であれば特に制限なく用いることができる。中空粒子は、球状、棒状、板状、繊維状、不定形状のいずれであってもよい。
【0061】
中空無機粒子は、中空シリカ粒子、中空アルミノシリケート粒子、中空アルミナ粒子、中空ムライト粒子、中空酸化チタン粒子、中空フッ化マグネシウム粒子、フライアッシュバルーン等が例示される。
【0062】
1つの実施形態において、中空無機粒子は、表面が変性された変性中空無機粒子が好ましい。変性中空無機粒子は、(メタ)アクリル変性中空無機粒子、シリコーン変性中空無機粒子等が例示される。
【0063】
変性中空無機粒子100質量%に対する変性部分の含有量の上限及び下限は、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.1、0.01質量%等が例示される。1つの実施形態において、粒子の分散性、硬化物の耐擦傷性を向上させる観点から、上記含有量は、0.01~40質量%程度が好ましく、0.1~30質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましい。
【0064】
中空無機粒子の製品は、スルーリア5320、スルーリア4320、スルーリア4110、スルーリア2320、スルーリア1110、JX1008SIV、JX1009SIV(日揮触媒化成工業(株)製)、シリナックス(日鉄鉱業(株)製)等が例示される。
【0065】
中空無機粒子の粒子径の上限及び下限は100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40nm等が例示される。1つの実施形態において、上記粒子径は、40~100nmが好ましい。
【0066】
中空無機粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(例えば、JSM-7800F Prime(日本電子(株)製))とSTEM検出器(DEBEN UK Ltd.製)を用いて測定する。具体的には以下の手順により測定される。
まず、粒子サンプルをメチルイソブチルケトンにて有効成分0.2%に希釈し、十分に攪拌する。次に、STEM用の支持膜付きマイクログリッド(ハイレゾカーボン HRC-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様((株)ステム製))に上記分散液を1滴たらし、乾燥させたものを測定サンプルとする。
次に、走査型電子顕微鏡により、加速電圧30kVの条件のもと、視野中の粒子が十分に測長できる倍率(例えば300k倍)にて画像を取得し、ランダムに50個の粒子の粒径を測定して個数基準における粒子径を求める。粒径の測定は手動、または計測ツールを用いても良い。
【0067】
中空無機粒子の屈折率の上限及び下限は、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1等が例示される。1つの実施形態において、中空無機粒子の屈折率は、1.1~1.5が好ましい。
【0068】
中空無機粒子の屈折率は、活性エネルギー線硬化性樹脂(例えば、新中村化学工業(株)製のジペンタエリスリトールポリアクリレート:製品名 NKエステル A-9550W)中に、被測定物を、固形比で1質量%、10質量%、20質量%含む組成物を成膜し、アッベ屈折計(製品名「NAR-1T SOLID」、(株)アタゴ製)を用いて、JIS K7142:2014に準拠し、ナトリウムのD線の波長に対する屈折率を測定し、固形比100質量%に外挿して算出される。
【0069】
コーティング剤固形分100質量%中の中空無機粒子の含有量の上限及び下限は、65、60、55、50、45、44、43、42、41、40、39、38、37、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は20~65質量%が好ましい。
【0070】
<中実アルミナ粒子>
中実アルミナ粒子は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0071】
中実粒子は、内部に空孔を有していない粒子である。
【0072】
アルミナは、Alで表される酸化アルミニウムを意味し、α型、γ型、σ型、それらの混合体等の形態が知られている。
【0073】
中実アルミナ粒子は、球状、棒状、板状、繊維状、不定形状のいずれであってもよい。
【0074】
1つの実施形態において、中実アルミナ粒子は、表面が変性された変性中実アルミナ粒子が好ましい。変性中実アルミナ粒子は、(メタ)アクリル変性中実アルミナ粒子、シリコーン変性中実アルミナ粒子等が例示される。
【0075】
中実アルミナ粒子の製品は、アルミゾルF-3000(川研ファインケミカル(株)製)、バイラールAL-7(多木化学(株)製)、NANOBYK-3610(BYK Chemie社製)、Optisol LAA530U(RANCO社製)等が例示される。
【0076】
中実アルミナ粒子の一次粒子径の上限及び下限は、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、10、7、3nm等が例示される。1つの実施形態において、上記一次粒子径は、3~110nmが好ましい。
【0077】
中実アルミナ粒子の一次粒子径は、上記中空無機粒子の粒子径の測定方法と同様の手法により測定できる。
【0078】
中実アルミナ粒子の二次粒子径の上限及び下限は、110、100、90、80、70、60、55、50、45、40、35、30、25nm等が例示される。1つの実施形態において、上記二次粒子径は、25~110nmが好ましい。
【0079】
中実アルミナ粒子の二次粒子径は、下記手順により測定される。
まず、粒子サンプルをメチルイソブチルケトンにて有効成分1%に希釈し、サンプル溶液を調製する。次に調製したサンプル溶液を動的光散乱法によるナノ粒子径測定装置(製品名「ナノトラック UPA-EX150(マイクロトラック・ベル(株)製)」)を用いて測定を行う。本測定手法により得られる粒子径は体積平均粒子径であり、メジアン径の値を粒子径とする。
【0080】
コーティング剤固形分100質量%中の中実アルミナ粒子の含有量の上限及び下限は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は、2~15質量%が好ましく、6~15質量%がより好ましい。
【0081】
<(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルを含み得る。(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0082】
本開示において、(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルは、パーフルオロポリエーテルに1個以上の(メタ)アクリロイル基が結合した化合物を意味する。パーフルオロポリエーテルは、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し単位とする化合物を意味する。
【0083】
(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルは、両末端(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル、片末端(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル等が例示される。
【0084】
(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルの製品は、KY-1203、KY-1207(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0085】
1つの実施形態において、硬化物表面により撥水撥油性、滑り性、耐指紋付着性を付与できる観点から、ケイ素原子及び(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルが好ましい。ケイ素原子及び(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルの市販品はKY-1203等が例示される。
【0086】
コーティング剤固形分100質量%中の(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルの含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~10質量%が好ましい。
【0087】
<光重合開始剤>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0088】
光重合開始剤は、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、アニオン系光重合開始剤等が例示される。
【0089】
ラジカル系光重合開始剤は、アルキルフェノン型光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤、オキシムエステル型光重合開始剤等が例示される。
【0090】
アルキルフェノン型光重合開始剤は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンジルジメチルケタール、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン;2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン等が例示される。
【0091】
アシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が例示される。
【0092】
水素引き抜き型光重合開始剤は、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が例示される。
【0093】
オキシムエステル型光重合開始剤は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が例示される。
【0094】
カチオン系光重合開始剤は、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)]4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロホスフェート(1-)及びプロピレンカーボネートの混合物、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウム テトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が例示される。
【0095】
アニオン系光重合開始剤は、コバルトアミン系錯体、o-ニトロベンジルアルコールカルバミン酸エステル、オキシムエステル等が例示される。
【0096】
コーティング剤固形分100質量%中の光重合開始剤の含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~10質量%が好ましい。
【0097】
<有機溶媒>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0098】
有機溶媒は、ケトン溶媒、芳香族溶媒、アルコール溶媒、グリコール溶媒、グリコールエーテル溶媒、エステル溶媒、石油系溶媒、ハロアルカン溶媒、アミド溶媒等が例示される。
【0099】
ケトン溶媒は、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が例示される。
【0100】
芳香族溶媒は、トルエン、キシレン等が例示される。
【0101】
アルコール溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が例示される。
【0102】
グリコール溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。
【0103】
グリコールエーテル溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル等が例示される。
【0104】
エステル溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が例示される。
【0105】
石油系溶媒は、ソルベッソ#100(エクソン社製)、ソルベッソ#150(エクソン社製)等が例示される。
【0106】
ハロアルカン溶媒は、クロロホルム等が例示される。
【0107】
アミド溶媒は、ジメチルホルムアミド等が例示される。
【0108】
コーティング剤100質量%中の有機溶媒の含有量の上限及び下限は、99、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~99質量%が好ましい。
【0109】
コーティング剤における酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートと中空無機粒子との質量比(酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの質量/中空無機粒子の質量)の上限及び下限は、3.5、3.3、3、2.7、2.5、2.3、2、1.7、1.5、1.3、1、0.7、0.5、0.3等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0.3~3.5が好ましい。
【0110】
コーティング剤における酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートと中実アルミナ粒子との質量比(酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートの質量/中実アルミナ粒子の質量)の上限及び下限は、11.7、11.5、11.3、11、10.7、10.5、10.3、10、9.7、9.5、9.3、9、8.7、8.5、8.3、8、7.7、7.5、7.3、7、6.7、6.5、6.3、6、5.7、5.5、5.3、5、4.7、4.5、4、3.7、3.5、3.3、3、2.7、2.5、2.3、2、1.7、1.5、1.3等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、1.3~11.7が好ましい。
【0111】
コーティング剤における中空無機粒子と中実アルミナ粒子との質量比(中空無機粒子の質量/中実アルミナ粒子の質量)の上限及び下限は、10.8、10.5、10.3、10、9.7、9.5、9.3、9、8.7、8.5、8.3、8、7.7、7.5、7.3、7、6.7、6.5、6.3、6、5.7、5.5、5.3、5、4.7、4.5、4、3.7、3.5、3.3、3、2.7、2.5、2.3、2、1.7、1.5、1.3等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、1.3~10.8が好ましい。
【0112】
<添加剤>
上記コーティング剤には、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、中空無機粒子、中実アルミナ粒子、(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル、光重合開始剤、有機溶媒のいずれにも該当しない剤を添加剤として含み得る。
【0113】
添加剤は、バインダー樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等)、防滑剤、スリップ剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、顔料、染料、滑剤、レベリング剤、触媒、消泡剤、光増感剤(アミン類、キノン類等)等が例示される。
【0114】
1つの実施形態において、添加剤の含有量は、コーティング剤100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。また、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、中空無機粒子、中実アルミナ粒子、(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル、光重合開始剤、有機溶媒のいずれか100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。
【0115】
上記コーティング剤は、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、中空無機粒子、及び中実アルミナ粒子、並びに必要に応じて(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル、光重合開始剤、有機溶媒及び添加剤が、各種公知の手段により分散・混合されることにより製造され得る。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。また、分散・混合手段は、各種公知の装置(乳化分散機、超音波分散装置等)が用いられ得る。
【0116】
[コーティング剤キット]
本開示は、中実アルミナ粒子を固形分中2~15質量%含む低反射コーティング剤及び、中実アルミナ粒子を含むアンカー剤を含む、コーティング剤キットを提供する。
【0117】
コーティング剤キット中の低反射コーティング剤に含まれる成分、量等は上述のもの等が例示される。
【0118】
なお、コーティング剤キットを製造後、安定性が問題とならない程度の時間内にコーティング剤キットを使用して積層物を製造できる。この場合、コーティング剤キットに酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートが含まれていなくとも所望の積層物が得られる。また、中空無機粒子を使用しなくとも、フッ素系樹脂等を使用することにより、低反射性を実現できる。
【0119】
<アンカー剤>
アンカー剤に含まれる中実アルミナ粒子は上述のもの等が例示される。中実アルミナ粒子は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0120】
アンカー剤固形分100質量%中の中実アルミナ粒子の含有量の上限及び下限は、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は2~18質量%が好ましい。
【0121】
・ポリ(メタ)アクリレート
1つの実施形態において、アンカー剤はポリ(メタ)アクリレートを含み得る。ポリ(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0122】
ポリ(メタ)アクリレートは、酸性基含有ポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0123】
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートは上述のもの等が例示される。
【0124】
ウレタンポリ(メタ)アクリレートは、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート及びポリイソシアネートを含む化合物群の反応物等が例示される。
【0125】
ウレタンポリ(メタ)アクリレートの原料となる水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートは上述のもの等が例示される。
【0126】
本開示において、「ポリイソシアネート」とは、2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物である。
【0127】
ポリイソシアネートは、直鎖脂肪族ポリイソシアネート、分岐脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体(ヌレート体)、アロファネート体、アダクト体等が例示される。
【0128】
直鎖脂肪族ポリイソシアネートは、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0129】
分岐脂肪族ポリイソシアネートは、ジエチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルブチレンジイソシアネート、トリメチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0130】
脂環族ポリイソシアネートは、単環脂環族ポリイソシアネート、架橋環脂環族ポリイソシアネート、縮合環脂環族ポリイソシアネート等が例示される。
【0131】
単環脂環族ポリイソシアネートは、水添キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、シクロヘプチレンジイソシアネート、シクロデシレンジイソシアネート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示される。
【0132】
架橋環脂環族ポリイソシアネートは、トリシクロデシレンジイソシアネート、アダマンタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が例示される。
【0133】
縮合環脂環族ポリイソシアネートは、ビシクロデシレンジイソシアネート等が例示される。
【0134】
芳香族基は、単環芳香族基、縮合環芳香族基等が例示される。また芳香族基は、1個以上の水素原子が直鎖又は分岐アルキル基によって置換されていてもよい。
【0135】
単環芳香族基は、フェニル基(フェニレン基)、トリル基(トリレン基)、メシチル基(メシチレン基)等が例示される。また縮合環芳香族基は、ナフチル基(ナフチレン基)等が例示される。
【0136】
芳香族ポリイソシアネートは、単環芳香族ポリイソシアネート、縮合環芳香族ポリイソシアネート等が例示される。
【0137】
単環芳香族ポリイソシアネートは、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等のジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート等のテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が例示される。
【0138】
縮合環芳香族ポリイソシアネートは、1,5-ナフチレンジイソシアネート等が例示される。
【0139】
ポリイソシアネートのビウレット体は、
下記構造式:
【化11】
[式中、nは、1以上の整数であり、RbA~RbEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Rbα~Rbβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化12】
(nb1は、0以上の整数であり、Rb1~Rb5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R''はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRbα~Rbβ自身の基である。Rb4~Rb5、R''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RbD~RbE、Rbβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0140】
ポリイソシアネートのビウレット体は、デュラネート24A-100、デュラネート22A-75P、デュラネート21S-75E(以上旭化成(株)製)、デスモジュールN3200A(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体)(以上住化コベストロウレタン(株)製)等が例示される。
【0141】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体は、
下記構造式:
【化13】
[式中、nは、0以上の整数であり、RiA~RiEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Riα~Riβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化14】
(ni1は、0以上の整数であり、Ri1~Ri5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R'' はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRiα~Riβ自身の基である。Ri5、R''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RiD~RiE、Riβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0142】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の市販品は、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デュラネートMFA-75B、デュラネートMHG-80B(以上旭化成(株)製)、コロネートHXR、コロネートHX、コロネートHK(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)、コロネート2037(以上東ソー(株)製)、タケネートD-127N(水添キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)、タケネートD-131N(キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)、タケネートD-204EA-1(トリレンジイソイアネートのイソシアヌレート体)(以上三井化学(株)製)、VESTANAT T1890/100(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体)(以上エボニック・ジャパン(株)製)等が例示される。
【0143】
ポリイソシアネートのアロファネート体は、
下記構造式:
【化15】
[式中、nは、0以上の整数であり、Rは、アルキル基又はアリール基であり、R~Rはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Rα~Rγはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化16】
(n1は、0以上の整数であり、R~Rはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R’’’はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRα~Rγ自身の基である。R~R、R’~R’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。R~R、Rα~Rβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0144】
ポリイソシアネートのアロファネート体の市販品は、コロネート2793(東ソー(株)製)、タケネートD-178N(三井化学(株)製)等が例示される。
【0145】
ポリイソシアネートのアダクト体は、
下記構造式:
【化17】
[式中、nadは0以上の整数であり、RadA~RadEは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、Rad1~Rad2は、それぞれ独立に
【化18】
(式中、nad’は0以上の整数であり、
ad’~Rad’’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
ad’’’は、Rad1~Rad2自身の基であり、
ad’~Rad’’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
であり、RadD~RadE、Rad2は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
で示されるトリメチロールプロパンとポリイソシアネートのアダクト体、
下記構造式
【化19】
[式中、nad1は0以上の整数であり、
adα~Radεは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
adA~RadBは、それぞれ独立に
【化20】
(式中、nad1’は0以上の整数であり、
adδ’~Radε’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
adB’は、RadA~RadB自身の基であり、
adδ’~Radε’、RadB’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。
adδ~Radεは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
で示されるグリセリンとポリイソシアネートのアダクト体等が例示される。
【0146】
ポリイソシアネートのアダクト体は、デュラネートP301-75E(以上旭化成(株)製)、タケネートD110N、タケネートD160N(以上三井化学(株)製)、コロネートL、コロネートHL(以上東ソー(株)製)等が例示される。
【0147】
ポリイソシアネートのNCO含有率(NCO%)の上限及び下限は、30、25、20、15、10%等が例示される。1つの実施形態において、上記NCO含有率(NCO%)は、10~30%が好ましい。
【0148】
ポリイソシアネートのイソシアネート基当量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1meq/g等が例示される。1つの実施形態において、上記イソシアネート基当量は1~10meq/gが好ましい。
【0149】
本開示において、イソシアネート基当量は、固形1g中に存在するイソシアネート基の物質量を意味する。
【0150】
ウレタンポリ(メタ)アクリレートの原料となる化合物群には、アルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が含まれていてもよい。
【0151】
アルキレンポリオール
アルキレンポリオールは、直鎖アルキレンポリオール、分岐アルキレンポリオール等が例示される。
【0152】
直鎖アルキレンポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等が例示される。
【0153】
分岐アルキレンポリオールは、ネオペンチルグリコール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジブチル-1,5-ペンタンジオール、1-メチルエチレングリコール、1-エチルエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が例示される。
【0154】
シクロアルキレンポリオールは、単環シクロアルキレンポリオール、架橋環シクロアルキレンポリオール等が例示される。
【0155】
単環シクロアルキレンポリオールは、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等が例示される。
【0156】
架橋環シクロアルキレンポリオールは、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。
【0157】
ポリエーテルポリオール
本開示において、「ポリエーテルポリオール」は、ヒドロキシ基を2個以上及びエーテル結合を含む繰り返し単位を2個以上有する化合物を意味する。ポリエーテルポリオールは二種以上を併用してもよい。1つの実施形態において、ポリエーテルポリオールは下記構造式
HO-(R3’-O-)
(式中、R3’は、アルキレン基、又はシクロアルキレン基であり、nは2以上の整数である。)で表わされる。
【0158】
ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が例示される。
【0159】
ポリエステルポリオール
本開示において、「ポリエステルポリオール」は、ヒドロキシ基を2個以上及び分子内にエステル結合を含む繰り返し単位を2個以上有する化合物を意味する。ポリエステルポリオールは二種以上を併用してもよい。1つの実施形態において、ポリエステルポリオールは下記構造式
HO-{R4a’-OC(O)-R4b’-C(O)O}-R4a’-OH
(式中、R4a’及びR4b’はそれぞれ独立に、アルキレン基、又はシクロアルキレン基であり、mは2以上の整数である。)で表わされる。
【0160】
本開示において、「ポリエステルポリオール」はポリカルボン酸又はその無水物と、ポリオールとの反応生成物である。
【0161】
ポリカルボン酸は、ジカルボン酸等が例示される。
【0162】
ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリト酸、トリメシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸等が例示される。
【0163】
ポリカルボン酸無水物は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸等が例示される。
【0164】
ポリオールは、上記アルキレンポリオール、上記シクロアルキレンポリオール等が例示される。
【0165】
ポリカーボネートポリオール
本開示において、「ポリカーボネートポリオール」は、例えば、ヒドロキシ基を2個以上及びカーボネート結合を含む繰り返し単位を2個以上有する化合物を意味する。ポリカーボネートポリオールは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0166】
1つの実施形態において、ポリカーボネートポリオールは、下記構造式
HO-{RaCarbo-OC(=O)O}-RbCarbo-OH
(式中、RaCarbo、及びRbCarboはそれぞれ独立に、アルキレン基、又はシクロアルキレン基であり、pは2以上の整数である。)で表わされる。
【0167】
ポリカーボネートポリオールは、ポリオールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が例示される。
【0168】
ポリオールは、上記アルキレンポリオール等が例示される。
【0169】
アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が例示される。
【0170】
アクリルポリオール
アクリルポリオールは、水酸基含有モノマーを含む単量体群の重合物である。上記単量体群には、水酸基非含有モノマーが含まれていてもよい。
【0171】
ポリオレフィンポリオール
ポリオレフィンポリオールは、水酸基を2個以上有するポリオレフィンである。ポリオレフィンポリオールは、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール、これらの塩素化物等が例示される。
【0172】
アンカー剤に含まれるポリ(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基の個数の上限及び下限は、15、14、12、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2個等が例示される。1つの実施形態において、上記個数は、2~15が好ましく、3~15がより好ましい。
【0173】
アンカー剤固形分100質量%中のポリ(メタ)アクリレートの含有量の上限及び下限は、94、90、88、85、80、75、70、66、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~94質量%が好ましい。
【0174】
・光重合開始剤
1つの実施形態において、アンカー剤は光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0175】
光重合開始剤は上述のもの等が例示される。
【0176】
アンカー剤固形分100質量%中の光重合開始剤の含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~10質量%が好ましい。
【0177】
アンカー剤におけるポリ(メタ)アクリレートと中実アルミナ粒子との質量比(ポリ(メタ)アクリレートの質量/中実アルミナ粒子の質量)の上限及び下限は、47、45、43、41、40、39、37、35、33、31、30、29、27、25、23、21、20、19、17、15、13、11、10、9、8、7、5、4、3、2、1、0.5、0.2、0.1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~47が好ましい。
【0178】
アンカー剤における光重合開始剤と中実アルミナ粒子との質量比(光重合開始剤の質量/中実アルミナ粒子の質量)の上限及び下限は、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.7、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~5が好ましい。
【0179】
・有機溶媒
1つの実施形態において、アンカー剤は有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0180】
有機溶媒は上述のもの等が例示される。
【0181】
アンカー剤固形分100質量%中の有機溶媒の含有量の上限及び下限は、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~80質量%が好ましい。
【0182】
・アンカー剤用添加剤
上記アンカー剤には、中実アルミナ粒子、ポリ(メタ)アクリレート、光重合開始剤、有機溶媒のいずれにも該当しない剤をアンカー剤用添加剤として含み得る。
【0183】
アンカー剤用添加剤は、上述のもの等が例示される。
【0184】
1つの実施形態において、アンカー剤用添加剤の含有量は、アンカー剤100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。また、アンカー剤中の中実アルミナ粒子、ポリ(メタ)アクリレート、光重合開始剤、有機溶媒のいずれか100質量部に対して、アンカー剤用添加剤の含有量は、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。
【0185】
上記アンカー剤は、中実アルミナ粒子、並びに必要に応じてポリ(メタ)アクリレート、光重合開始剤、有機溶媒及びアンカー剤添加剤が、各種公知の手段により分散・混合されることにより製造され得る。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。また、分散・混合手段は、各種公知の装置(乳化分散機、超音波分散装置等)が用いられ得る。
【0186】
[硬化物]
本開示は、上記低反射コーティング剤及び/又は上記コーティング剤キットの硬化物を提供する。
【0187】
硬化条件は後述のもの等が例示される。
【0188】
[積層物]
本開示は、上記硬化物を含む、積層物を提供する。
【0189】
1つの実施形態において、基材の少なくとも片面に上記低反射コーティング剤又は上記コーティング剤キットの硬化物からなる硬化物層が積層している。1つの実施形態において、基材の少なくとも片面に上記アンカー剤の硬化物からなるアンカー剤硬化物層が積層し、アンカー剤硬化物層に低反射コーティング剤の硬化物からなる低反射コーティング剤硬化物層が積層している。
【0190】
基材の厚みの上限及び下限は、125、120、110、100、90、75、50、25、10、9、5、1μm等が例示される。1つの実施形態において、基材の厚みは、1~125μmが好ましい。
【0191】
低反射コーティング剤硬化物層の厚みの上限及び下限は、200、175、150、125、100、90、75、60、55nm等が例示される。1つの実施形態において、低反射コーティング剤硬化物層の厚みは、55~200nmが好ましい。
【0192】
アンカー剤硬化物層の厚みの上限及び下限は、6、5、4、3、2、1μm等が例示される。1つの実施形態において、アンカー剤硬化物層の厚みは、1~6μmが好ましい。
【0193】
上記積層物は各種公知の方法で製造される。1つの実施形態において、積層物の製造方法は、アンカー剤を基材の少なくとも片面に塗工する工程(アンカー剤塗工工程)、低反射コーティング剤をアンカー剤塗工層の上に塗工する工程(低反射コーティング剤塗工工程)、活性エネルギー線を照射することにより、硬化物層を形成する工程(活性エネルギー線硬化工程)を含む。
【0194】
アンカー剤塗工工程、低反射コーティング剤塗工工程をまとめて塗工工程ともいう。
【0195】
(塗工工程)
塗工方法は、バーコーター塗工、ワイヤーバー塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、フローコート塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が例示される。
【0196】
塗工量は特に限定されない。塗工量は、乾燥後の質量が0.1~30g/mが好ましい。
【0197】
(活性エネルギー線硬化工程)
活性エネルギー線硬化反応に用いる活性エネルギー線は、紫外線や電子線等が例示される。紫外線の光源は、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置等が例示される。なお、光量や光源配置、搬送速度等は必要に応じて調整できる。高圧水銀灯を使用する場合には、80~160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して搬送速度2~50m/分程度で硬化させるのが好ましい。一方、電子線の場合には、10~300kV程度の加速電圧を有する電子線加速装置により、搬送速度5~50m/分程度の条件で硬化させるのが好ましい。
【実施例0198】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明及び以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、各実施例及び比較例において、特に説明がない限り、部、%等の数値は質量基準である。
【0199】
(実施例1-1:低反射コーティング剤の製造)
酸性基含有ポリ(メタ)アクリレートとしてカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート(製品名「アロニックスM-510」、東亞合成(株)製)を40質量部、中空無機粒子として中空シリカ粒子(製品名「スルーリア4320」、20質量%メチルイソブチルケトンゾル、日揮触媒化成(株)製)を42質量部、中実アルミナ粒子(製品名「NANOBYK-3610」、30質量%メトキシプロピルアセテート、BYK Chemie社製)を10質量部、(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル(製品名「KY-1203」、信越化学工業(株)製、20質量%)を4質量部、光重合開始剤として2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(製品名「Omnirad 127D」、IGM Resins社製)を4質量部混合するとともに、メチルイソブチルケトンにて希釈し、固形分2質量%の低反射コーティング剤を製造した。
【0200】
特段言及がない限り、実施例1-1以外の実施例1及び比較例1は、下記表のように変更した以外は、実施例1-1と同様にして行った。
【0201】
(低反射コーティング剤の安定性試験)
上記低反射コーティング剤を20mLスクリュー管に入れ、50℃の室温、遮光された環境にて1カ月間保管した後、スクリュー管の内容物の状態を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:全部が液状であり、ゲル状の部位が全くない
×:一部又は全部がゲル状に変化している
なお、上述のとおり、中空粒子と中実アルミナ粒子がひとつの系に存在する場合、安定性が問題となる。このことは中空粒子及び中実アルミナ粒子がひとつの系に存在していない比較例の安定性が悪くないことから理解される。
【0202】
【表1】
【0203】
<略称の説明>
アロニックスM-306:ペンタエリスリトールトリアクリレート、東亞合成(株)製
NKエステルA-TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学工業(株)製
NKエステルA-DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業(株)製
ELCOM V8802:中実シリカ粒子、40質量%メチルイソブチルケトンゾル、日揮触媒化成(株)製
【0204】
(製造例1:アンカー剤の製造)
脂肪族ウレタンアクリレート(製品名「ビームセット577」、荒川化学工業(株)製)を66質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名「NKエステル A-9550W」、新中村化学工業(株)製)を22質量部、(製品名「NANOBYK-3610」、30質量%メトキシプロピルアセテート、BYK Chemie社製)を9質量部、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン(製品名「Omnirad 2959」、IGM Resins社製)を3質量部混合するとともに、メチルイソブチルケトンにて希釈し、固形分40質量%のアンカー剤を調製した。
【0205】
特段言及がない限り、製造例1以外の製造例及び比較製造例は、下記表のように変更した以外は、製造例1と同様にして行った。
【0206】
【表2】
【0207】
(実施例2-1:積層物の製造)
上記で製造したアンカー剤をポリエステル(PET)フィルム(製品名「ルミラー 50U483」、東レ(株)製)上にバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が4μmとなるように塗布し、80℃にて1分間乾燥後、高圧水銀灯(200mJ/cm)を用いて硬化させ、アンカーフィルムを得た。このアンカーフィルムのアンカー剤塗工面に対し、上記で製造した低反射コーティング剤を、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃にて1分間乾燥後、窒素フロー下で高圧水銀灯(600mJ/cm)を用いて硬化させて、積層物を得た。
【0208】
特段言及がない限り、実施例2-1以外の実施例2及び比較例2は、下記表のようにコーティング剤キットの組成を変更した以外は、実施例2-1と同様にして行った。
【0209】
得られた積層物の特性を下記項目について評価した。その結果を下記表に示す。
【0210】
(全光線透過率及びHaze)
JIS K 7361-1(1997)の規格に準拠し、ヘーズメーター(製品名「HZ-V3」、スガ試験機(株)製)を用いて積層物の全光線透過率、及びHazeを測定した。
【0211】
(初期水接触角)
積層物の低反射コーティング剤塗工面が上方を向くようにしてガラス板に固定し、これらを除電したのちに協和界面科学(株)製接触角計「DropMaster DM500」を用いて、脱イオン水の液滴2μLを静かに付着させ、1秒後の接触角を測定した(解析方法:θ/2法)。
【0212】
(スチールウール試験後の水接触角)
積層物の低反射コーティング剤塗工面が上方を向くようにしてスチールウール試験機に設置し、#0000のスチールウールを用いて、1kg/4cmの荷重で4cmの摺動距離にて500往復擦ることでスチールウール試験を実施した。スチールウール試験後、試験部位について、初期水接触角と同様の方法によって水接触角を測定した。
【0213】
(耐スチールウール性)
積層物の低反射コーティング剤塗工面が上方を向くようにしてスチールウール試験機に設置し、#0000のスチールウールを用いて、1kg/4cmの荷重で4cmの摺動距離にて下記の往復回数を擦ることでスチールウール試験を実施した。試験後、積層物に発生した傷の本数を目視にて確認し、下記基準に沿って評価した。
〇:1000往復後の傷が5本以下
×:1000往復後の傷が6本以上
【0214】
【表3】