(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068025
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20230509BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20230509BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B01D53/92 240
B01D53/92 331
B01D53/96 ZAB
B01D53/14 200
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038528
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2019105632の分割
【原出願日】2019-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2018115751
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】福留 二郎
(72)【発明者】
【氏名】畑迫 芳佳
(57)【要約】
【課題】エンジンの稼動に影響せず、エンジンの排気ガスに含まれる二酸化炭素を効率良く回収できる二酸化炭素回収システムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収システム100は、吸収部1と、排気ガス供給経路30と、昇圧装置33と、を備え、エンジン10の排気ガスからCO
2を分離して回収する。吸収部1は、排気ガスに含まれるCO
2を吸収液に吸収させる。排気ガス供給経路30は、排気ガスを吸収部1に供給する。昇圧装置33は、排気ガスを昇圧する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスから二酸化炭素を分離して回収する二酸化炭素回収システムであって、
前記排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収部と、
前記排気ガスを前記吸収部に供給する排気ガス供給経路と、
前記排気ガスを昇圧する昇圧装置と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記昇圧装置による前記排気ガスの昇圧量を制御する制御装置を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記排気ガス供給経路に設けられ、前記吸収部に供給する排気ガスを冷却する第1冷却部を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか1項に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記吸収部から吸収液を排出する吸収液排出経路を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記吸収液排出経路から排出された前記吸収液から二酸化炭素を分離して、当該吸収液を再生する再生部を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
請求項5に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記再生部によって二酸化炭素が分離された前記吸収液を前記吸収部内に還流させる吸収液還流経路を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
請求項6に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記吸収液還流経路に設けられ、前記吸収部に還流する前記吸収液を冷却する第2冷却部を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の二酸化炭素回収システムであって、
二酸化炭素が除去された前記排気ガスである第2排気ガスを前記吸収部から排出する排気ガス排出経路を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
請求項8に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記排気ガス排出経路に設けられ、前記吸収部から排出された前記第2排気ガスを冷却する第3冷却部を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項10】
請求項9に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記第2排気ガスが流れる方向において、前記第3冷却部の下流側の前記排気ガス排出経路に設けられ、前記吸収部から排出された前記第2排気ガスに含まれる前記吸収液を分離する第1吸収液分離部を備えることを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスに含まれる二酸化炭素の分離及び回収を行う二酸化炭素回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地球温暖化を防止するために、大気中への二酸化炭素の排出を削減する技術として、吸収液を用いる二酸化炭素の回収システムが知られている。特許文献1は、この種の二酸化炭素回収装置を開示する。
【0003】
特許文献1の二酸化炭素回収装置は、エンジンの排気ガスを対象とするものではないが、火力発電所等のボイラやガスタービン等から排出される燃焼排気ガスや、製鉄所で発生するプロセス排気ガス等に含まれる二酸化炭素を回収するものである。特許文献1の二酸化炭素回収装置は、排気ガスを吸収液に吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を分離させて吸収液を再生する再生塔と、を備え、排気ガスが冷却塔で冷却された後、煙道を介して吸収塔に供給される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成は、排気ガス送風機等により昇圧された排気ガスが、冷却塔で冷却された後に吸収塔に供給されている。従って、吸収塔の排気ガス入口において、排気ガスの圧力が不足となる傾向がある。特に、エンジンの排気ガスから二酸化炭素を回収するために特許文献1の構成を用いる場合、エンジンの排気ガスは比較的低温低圧であるため、吸収塔の排気ガス入口における排気ガスの圧力の低下が顕著になって、二酸化炭素の回収率が低下すると考えられる。更に、吸収塔で発生する圧力損失によりエンジンの排気がしにくくなり、エンジンの燃焼に影響を及ぼす可能性があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、エンジンの稼動に影響せず、エンジンの排気ガスに含まれる二酸化炭素を効率良く回収できる二酸化炭素回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る二酸化炭素回収システムは、エンジンの排気ガスから二酸化炭素を分離して回収する。前記二酸化炭素回収システムは、吸収部と、排気ガス供給経路と、昇圧装置と、を備える。前記吸収部は、前記排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる。前記排気ガス供給経路は、前記排気ガスを前記吸収部に供給する。前記昇圧装置は、前記排気ガスを昇圧する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジンの稼動に影響せず、エンジンの排気ガスに含まれる二酸化炭素を効率良く回収できる二酸化炭素回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図2】第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図3】第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図4】第4実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図5】第5実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図6】第6実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図7】第7実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図8】第1変形例の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【
図9】第2変形例の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム100の全体的な構成を示す模式図である。なお、以下の説明において「上流」及び「下流」とは、排気ガス、脱炭酸ガス、吸収液、CO
2が流れる方向での上流及び下流を意味する。
【0011】
図1に示す二酸化炭素回収システム100は、吸収液を用いて、エンジン10の排気ガスに含まれる二酸化炭素(CO
2)を排気ガスから分離して回収するシステムとして構成される。
【0012】
この吸収液としては、例えば、CO2との化学反応を利用してCO2を吸収する化学吸収液(アミン溶液やアンモニア水等)、又は、高圧下でCO2の物理的溶解を利用してCO2を吸収する物理吸収液(イオン液体等)等を用いることができる。なお、以下の説明においては、液内に含まれるCO2の濃度が高い吸収液をリッチ吸収液と呼び、液内に含まれるCO2の濃度が低い吸収液をリーン吸収液と呼ぶことがある。
【0013】
エンジン10は、排気ガスにCO2が含まれていれば、その構成は特に限定されない。エンジン10は、例えば、気体燃料を用いるガスエンジン、液体燃料を用いるガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等として構成することができる。
【0014】
二酸化炭素回収システム100は、
図1に示すように、主として、二酸化炭素吸収部(吸収部)1と、吸収液再生部(再生部)2と、排気ガス供給部3と、吸収液循環部4と、制御装置5と、を備える。
【0015】
二酸化炭素吸収部1は、CO2を吸収する吸収室として構成され、排気ガスをリーン吸収液と接触させる。これにより、排気ガス内に含まれるCO2をリーン吸収液に吸収させ、リッチ吸収液を生成する。
【0016】
二酸化炭素吸収部1には、排気ガス導入口(排気ガス入口)11と、リーン吸収液導入口12と、リッチ吸収液排出口13と、脱炭酸ガス排出口14と、が形成されている。二酸化炭素吸収部1の下部には、所定量の吸収液を貯留している。
【0017】
排気ガス導入口11は、二酸化炭素吸収部1の下部に形成される。排気ガス導入口11は、排気ガス供給部3に接続されており、エンジン10からの排気ガスを導入する。排気ガス導入口11を二酸化炭素吸収部1の下部に設けることにより、二酸化炭素吸収部1内に貯留される吸収液内にCO2を導入することができる。
【0018】
リーン吸収液導入口12は、二酸化炭素吸収部1の頂部に形成される。リーン吸収液導入口12は、吸収液循環部4に接続されており、吸収液再生部2により再生された吸収液(リーン吸収液)を導入する。
【0019】
リッチ吸収液排出口13は、二酸化炭素吸収部1の下部に形成される。リッチ吸収液排出口13は、吸収液循環部4に接続されており、二酸化炭素吸収部1で生成されたリッチ吸収液を吸収液再生部2に供給するように排出する。
【0020】
脱炭酸ガス排出口14は、二酸化炭素吸収部1の頂部に形成される。脱炭酸ガス排出口14は、CO2が分離された排気ガスである脱炭酸ガス(第2排気ガス)を排出する。
【0021】
このように構成された二酸化炭素吸収部1においては、貯留される吸収液内に排気ガスを導入して、排気ガスと吸収液とを混合させることによって、排気ガス内に含まれるCO2が吸収液に吸収される。
【0022】
そして、貯留される吸収液から浮き上がった排気ガス(脱炭酸ガスも含む)が二酸化炭素吸収部1の上部に向かって流動する途中で、頂部に設けられたリーン吸収液導入口12から導入されたリーン吸収液と接触し、排気ガス内に残留されるCO2がリーン吸収液によって吸収される。リーン吸収液は、CO2を吸収しリッチ吸収液となり、二酸化炭素吸収部1の下部に落下し、リッチ吸収液排出口13を介して排出され、吸収液再生部2に供給される。
【0023】
吸収液再生部2は、リッチ吸収液からCO2を分離する分離室として構成される。吸収液再生部2は、加熱されたリッチ吸収液からCO2を分離することで、CO2を回収するとともに、当該リッチ吸収液を再生してリーン吸収液を生成する。
【0024】
吸収液再生部2としては、例えば、遠心力や、重力等を利用する気液分離器を用いることができる。吸収液再生部2においては、後述のリッチ吸収液加熱部44がリッチ吸収液を加熱することにより、リッチ吸収液からCO2が分離され、リーン吸収液を生成する。
【0025】
吸収液再生部2には、リッチ吸収液導入口21と、リーン吸収液排出口22と、二酸化炭素排出口23と、が形成されている。
【0026】
リッチ吸収液導入口21は、吸収液再生部2の高さ方向における中途部又は上部に形成される。リッチ吸収液導入口21は、吸収液循環部4に接続されており、二酸化炭素吸収部1から供給されたリッチ吸収液をその内部に導入する。
【0027】
リーン吸収液排出口22は、吸収液再生部2の底部に形成される。リーン吸収液排出口22は、吸収液循環部4に接続されており、生成されたリーン吸収液を二酸化炭素吸収部1に供給するように排出する。
【0028】
二酸化炭素排出口23は、吸収液再生部2の頂部に形成される。二酸化炭素排出口23は、リッチ吸収液から分離されたCO2を排出する。二酸化炭素排出口23には、二酸化炭素排出経路24が接続されている。
【0029】
二酸化炭素排出経路24は、CO2が流れる配管から形成される。二酸化炭素排出経路24は、吸収液再生部2で分離されたCO2を外部に導く。
【0030】
排気ガス供給部3は、排気ガスの発生源であるエンジン10と、二酸化炭素吸収部1と、の間に設けられる。排気ガス供給部3は、エンジン10からの排気ガスを二酸化炭素吸収部1に供給する。排気ガス供給部3は、排気ガス供給経路30と、排気ガス凝縮器31と、第1気液分離器32と、排気ガス昇圧装置(昇圧装置)33と、を備える。
【0031】
排気ガス供給経路30は、排気ガスが流れる配管から形成される。排気ガス供給経路30は、エンジン10の排気管(図略)と二酸化炭素吸収部1の排気ガス導入口11とを接続している。排気ガス供給経路30は、エンジン10からの排気ガスを、排気ガス導入口11を介して二酸化炭素吸収部1内に供給する。
【0032】
排気ガス凝縮器31は、エンジン10より下流側の排気ガス供給経路30に設けられる。排気ガス凝縮器31は、エンジン10から排出された高温の排気ガスを、冷却水等の冷媒との熱交換によって冷却し、排気ガス内に含まれる水蒸気を凝縮させる。
【0033】
排気ガス凝縮器31において、排気ガス内に含まれる水蒸気は凝縮して液状態となる。排気ガス凝縮器31から排出された気液混合状態の排気ガスが第1気液分離器32に供給される。
【0034】
第1気液分離器32は、排気ガス凝縮器31の下流側の排気ガス供給経路30に設けられる。第1気液分離器32は、例えば遠心力又は表面張力等を利用して、供給された排気ガスに含まれる水分を分離する。第1気液分離器32は、排気ガスから分離した水を排出し、水分が分離された排気ガス(ドライ排気ガス)を排気ガス昇圧装置33に供給する。
【0035】
排気ガス凝縮器31及び第1気液分離器32を設けることにより、排気ガス内に含まれる水分を好適に取り除くことができ、当該水分による吸収液の希釈を回避できる。
【0036】
排気ガス昇圧装置33は、第1気液分離器32の下流側であって、二酸化炭素吸収部1に近い側の排気ガス供給経路30に設けられている。排気ガス昇圧装置33は、例えば、ブロワから構成される。当該排気ガス昇圧装置33の目標昇圧量が、エンジン10の回転数等に基づいて制御される(詳細は後述する)。
【0037】
排気ガス昇圧装置33を第1気液分離器32の下流側に設けることによって、水分が含まれる排気ガスが排気ガス昇圧装置33に供給されることを回避でき、水分による排気ガス昇圧装置33の劣化(例えば、錆の発生)等を回避できる。
【0038】
排気ガス昇圧装置33は、二酸化炭素吸収部1の底部より高い位置に設けられている。具体的には、排気ガス昇圧装置33の高さは、二酸化炭素吸収部1の底部の高さよりも所定距離だけ上方に離れている。
【0039】
当該所定距離は、二酸化炭素回収システム100が停止した後、二酸化炭素吸収部1の内部に貯留される吸収液の液面レベルである停止時液位よりも高く設定することが好ましい。これにより、二酸化炭素回収システム100が停止した場合に、二酸化炭素吸収部1内の吸収液が水頭差によって排気ガス供給経路30に逆流しても、その吸収液が排気ガス昇圧装置33まで到達することを回避できる。
【0040】
二酸化炭素回収システム100の始動に関し、排気ガス供給経路30内の空気圧の不安定によるエンジン10の稼動への影響を避けるために、本実施形態では、排気ガス昇圧装置33はエンジン10の稼動が開始する所定時間前(例えば、10分前)に起動される。これにより、エンジン10の稼動に伴って生成する排気ガスをスムーズにエンジン10から排出して二酸化炭素吸収部1に供給することができ、エンジン10の負荷を低減することができる。また、排気ガスの排出不良によるエンジン10の異常燃焼等を防止することができる。
【0041】
二酸化炭素回収システム100の停止に関し、本実施形態では、排気ガス昇圧装置33は、エンジン10が停止してから所定時間後(例えば、10分後)に停止される。これにより、排気ガス供給経路30に排気ガスが滞留しないようにすることができる。
【0042】
吸収液循環部4は、二酸化炭素吸収部1と、吸収液再生部2と、の間に設けられ、二酸化炭素吸収部1と吸収液再生部2との間に吸収液を循環させる。吸収液循環部4は、リッチ吸収液循環経路(吸収液排出経路)41と、リーン吸収液循環経路(吸収液還流経路)42と、吸収液熱交換部43と、リッチ吸収液加熱部44と、を備える。
【0043】
リッチ吸収液循環経路41は、リッチ吸収液が流れる配管から形成される。リッチ吸収液循環経路41は、二酸化炭素吸収部1のリッチ吸収液排出口13と吸収液再生部2のリッチ吸収液導入口21とを接続する。リッチ吸収液循環経路41は、二酸化炭素吸収部1から排出されたリッチ吸収液を吸収液再生部2に供給する。
【0044】
リッチ吸収液循環経路41において、吸収液熱交換部43の上流側にはリッチ吸収液ポンプ45が設けられている。リッチ吸収液ポンプ45は、二酸化炭素吸収部1から排出されたリッチ吸収液を、吸収液再生部2に供給するように吸収液熱交換部43へ圧送する。
【0045】
リーン吸収液循環経路42は、リーン吸収液が流れる配管から形成される。リーン吸収液循環経路42は、吸収液再生部2のリーン吸収液排出口22と二酸化炭素吸収部1のリーン吸収液導入口12とを接続する。リーン吸収液循環経路42は、吸収液再生部2から排出されたリーン吸収液を二酸化炭素吸収部1に供給する。
【0046】
リーン吸収液循環経路42において、吸収液熱交換部43の下流側にはリーン吸収液ポンプ46が設けられている。リーン吸収液ポンプ46は、吸収液熱交換部43により冷却されたリーン吸収液を、リーン吸収液導入口12を介して二酸化炭素吸収部1の内部に導入するように強制的に圧送する。
【0047】
吸収液熱交換部43は、リッチ吸収液循環経路41及びリーン吸収液循環経路42の中途部に設けられる。吸収液熱交換部43は、リッチ吸収液循環経路41及びリーン吸収液循環経路42のそれぞれの一部として構成される。
【0048】
即ち、吸収液熱交換部43内には、二酸化炭素吸収部1から排出された相対的に温度が低いリッチ吸収液と、吸収液再生部2から排出された相対的に温度が高いリーン吸収液と、が導入されている。
【0049】
吸収液熱交換部43においては、温度が高いリーン吸収液と温度が低いリッチ吸収液との熱交換が行われる。これにより、二酸化炭素吸収部1に供給されるリーン吸収液が冷却され、吸収液再生部2に供給されるリッチ吸収液が加熱される。即ち、吸収液再生部2により再生されたリーン吸収液に含まれる熱を利用することができ、省エネルギーを実現することができる。
【0050】
リッチ吸収液加熱部44は、吸収液熱交換部43の下流側のリッチ吸収液循環経路41に設けられ、吸収液再生部2に供給するリッチ吸収液を加熱する。リッチ吸収液加熱部44は、例えば、熱交換器から構成される。本実施形態のリッチ吸収液加熱部44は、エンジン10を冷却することにより温度が上昇した冷却水を用いて、その内部に流れるリッチ吸収液を加熱する。
【0051】
リッチ吸収液を加熱することによって、リッチ吸収液からのCO2の分離が促進される。このリッチ吸収液加熱部44を構成する熱交換器としては任意のタイプを使用することができるが、装置の簡素化及び清掃のための分解の容易さを考慮すれば、プレート式が好ましい。
【0052】
この構成により、エンジン10が発生する排熱(通常は100℃以下)を利用して、リッチ吸収液からCO2を分離することができる。
【0053】
制御装置5は、CPU、ROM、RAM等を備え、ROMに記憶された規定昇圧量(昇圧量)等の制御データに基づいて、二酸化炭素回収システム100の各部を制御する。制御装置5は、例えば、記憶された規定昇圧量に基づいて、排気ガス昇圧装置33の動作を制御する。制御装置5は、例えば、エンジン10が備え、当該エンジン10の運転を制御するECU(Engine Control Unit)を用いることができる。
【0054】
この規定昇圧量は、エンジン10の回転数又は当該回転数の変化に伴って変化するパラメータ(例えば、エンジン10が排出された排気ガスの流量、即ち排気ガス供給経路30における排気ガスの流量)に基づいて定められている。
【0055】
当該規定昇圧量は、エンジン10の回転数又は排気ガスの流量の変化に伴う排気ガスの圧力(二酸化炭素吸収部1の排気ガス導入口11における排気ガスの圧力)の変化を補償するように定められている。これにより、排気ガスの圧力(排気ガス導入口11における圧力)を常に所定値に維持することができる。よって、排気ガスの圧力による二酸化炭素吸収部1におけるCO2の吸収率の変化を回避できる。
【0056】
二酸化炭素回収システム100の稼動中に、制御装置5は、エンジン10の回転数又は排気ガスの流量に基づく規定昇圧量を排気ガス昇圧装置33の目標昇圧量として指示する。排気ガス昇圧装置33は、指示された目標昇圧量を実現するように動作する。
【0057】
なお、エンジン10の回転数は、エンジン10が備える図略の回転数センサによって検出することができる。また、排気ガスの流量は、エンジン10が備える図略の排気ガス流量センサによって検出しても良いし、排気ガス供給経路30に排気ガス流量センサを設けることで検出しても良い。
【0058】
上記の構成により、本実施形態の二酸化炭素回収システム100は、所定値の圧力を有する排気ガスを安定して二酸化炭素吸収部1に供給することができる。二酸化炭素吸収部1においては、吸収液再生部2から供給されたリーン吸収液を用いて、排気ガス内に含まれるCO2を吸収し、リッチ吸収液を生成する。二酸化炭素吸収部1で生成されたリッチ吸収液が吸収液再生部2に供給される。吸収液再生部2においては、加熱されたリッチ吸収液からCO2を分離することによって回収し、生成されたリーン吸収液を二酸化炭素吸収部1に供給する。このように、排気ガス内に含まれるCO2を分離して、二酸化炭素排出経路24を介して排出することで、CO2を回収することができる。
【0059】
また、本実施形態の二酸化炭素回収システム100は、従来の二酸化炭素分離膜を用いる分離方法等により、高濃度のCO2を得ることができるとともに、炭酸ガスの製造より低コストで高濃度のCO2を得ることができるので、後述の施設園芸等へのCO2の提供に好適である。
【0060】
そして、本実施形態の二酸化炭素回収システム100において、制御装置5は、異常状態を検出した場合、二酸化炭素回収システム100の稼動(具体的には排気ガスからCO2を分離して再生するための関連動作)を停止する制御を行っている。なお、当該異常状態は、例えば、液漏れが発生した状態や、吸収液再生部2に供給するリッチ吸収液の流量がオーバーした状態等を例として挙げることができる。
【0061】
具体的には、本実施形態の二酸化炭素回収システム100において、吸収液が流れる上述のリッチ吸収液循環経路41、リーン吸収液循環経路42等の経路において、液漏れが発生し易い箇所(例えば接続部等)に図略の液漏れセンサが設けられている。液漏れセンサは、制御装置5と有線又は無線で通信可能に設けられており、液漏れを検出すると、液漏れ信号等を制御装置5に送信する。
【0062】
このように、制御装置5は、吸収液が流れる経路に液漏れが発生したことを液漏れセンサにより検出した場合、二酸化炭素回収システム100の稼動を停止させる。
【0063】
また、制御装置5は、吸収液再生部2に供給する吸収液の流量が、吸収液再生部2から排出される吸収液の流量を、所定閾値(例えば0.5L/min)以上上回っている状態が所定時間(例えば5分間)継続していることを検出した場合、二酸化炭素回収システム100の稼動を停止させる。吸収液再生部2に供給する吸収液の流量は、リッチ吸収液ポンプ45により調整される。吸収液再生部2から排出される吸収液の流量は、リーン吸収液ポンプ46により調整される。各流量は、図略の流量計等を用いて取得することができる。これにより、吸収液再生部2における吸収液の量が過多となって上部から吸収液がオーバーフローすること等を防止できる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収システム100は、エンジン10の排気ガスからCO2を分離して回収する。当該二酸化炭素回収システム100は、二酸化炭素吸収部1と、排気ガス供給経路30と、排気ガス昇圧装置33と、制御装置5と、を備える。二酸化炭素吸収部1は、排気ガスをリーン吸収液と接触させ、排気ガスに含まれるCO2をリーン吸収液に吸収させる。排気ガス供給経路30は、排気ガスをエンジン10から二酸化炭素吸収部1に供給する。排気ガス昇圧装置33は、排気ガスが流れる方向において、二酸化炭素吸収部1の上流側の排気ガス供給経路30に設けられ、排気ガスを昇圧する。制御装置5は、エンジン10の回転数又は回転数の変化に伴って変化するパラメータに応じて、排気ガス昇圧装置33による排気ガスの目標昇圧量を制御する。
【0065】
これにより、二酸化炭素吸収部1に供給する排気ガスを昇圧でき、圧力の低下によるCO2の吸収率の低下を回避できる。また、二酸化炭素吸収部1に供給する排気ガスをエンジン10の回転数等に応じて昇圧させることで、二酸化炭素吸収部1で発生する圧力損失を補償することができる。従って、エンジン10からの排気ガスの流れに抵抗が生じないので、エンジン10の燃焼への影響を防止できる。
【0066】
また、本実施形態の二酸化炭素回収システム100において、前記パラメータは、排気ガス供給経路30における排気ガスの流量を含む。制御装置5が用いる規定昇圧量は、回転数又は排気ガスの流量が変化しても、二酸化炭素吸収部1の排気ガス導入口11における排気ガスの圧力を所定値に維持するように、回転数又は排気ガスの流量に対応して定められている。制御装置5は、回転数又は排気ガスの流量に応じて、当該回転数又は当該排気ガスの流量に対応する規定昇圧量を排気ガス昇圧装置33の目標昇圧量とし、排気ガス昇圧装置33を制御する。
【0067】
これにより、二酸化炭素吸収部1に供給する排気ガスの圧力を一定に保つことができ、CO2の吸収率を好適に維持することができる。
【0068】
次に、第2実施形態から第7実施形態を説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0069】
第2実施形態の二酸化炭素回収システム100aは、
図2に示すように、リーン吸収液冷却部(第2冷却部)47を備えている。リーン吸収液冷却部47は、例えば、水冷式のクーラから構成され、冷却水との熱交換によってその内部に流れるリーン吸収液を冷却する。
【0070】
リーン吸収液冷却部47は、リーン吸収液ポンプ46の下流側のリーン吸収液循環経路42に設けられ、二酸化炭素吸収部1の手前で、当該二酸化炭素吸収部1に供給されるリーン吸収液を冷却する。このように、冷却されたリーン吸収液を二酸化炭素吸収部1に供給することで、吸収液再生部2から排出された熱いリーン吸収液による二酸化炭素吸収部1内の温度の上昇を回避でき、二酸化炭素吸収部1内における、CO2の吸収反応に適した環境温度を好適に維持することができる。
【0071】
また、本実施形態の二酸化炭素回収システム100aは、
図2に示すように、排気ガス供給経路30に排気ガス冷却部(第1冷却部)34を設けても良い。この排気ガス冷却部34は、排気ガス昇圧装置33の下流側の排気ガス供給経路30に設けることが好ましい。これにより、二酸化炭素吸収部1の手前で、当該二酸化炭素吸収部1に供給する排気ガスを冷却することができる。
【0072】
排気ガス冷却部34は、例えば、水冷式のクーラから構成され、冷却水との熱交換によってその内部に流れる排気ガスを冷却する。この構成を用いて、排気ガスの導入による二酸化炭素吸収部1内のリーン吸収液の温度が上昇することを回避でき、CO2吸収率の向上を図ることができる。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収システム100aは、排気ガス供給経路30に設けられ、二酸化炭素吸収部1に供給する排気ガスを冷却する排気ガス冷却部34を備える。
【0074】
これにより、二酸化炭素吸収部1に供給する排気ガスを冷却することで、二酸化炭素吸収部1におけるCO2の吸収率を向上することができる。
【0075】
また、本実施形態の二酸化炭素回収システム100aは、リーン吸収液冷却部47を備える。リーン吸収液冷却部47は、リーン吸収液循環経路42に設けられ、二酸化炭素吸収部1に還流するリーン吸収液を冷却する。
【0076】
これにより、二酸化炭素吸収部1に戻されるリーン吸収液を冷却することで、吸収部におけるCO2の吸収率を向上することができる。
【0077】
第3実施形態の二酸化炭素回収システム100bは、
図3に示すように、吸収液再生部2の二酸化炭素排出口23に接続された二酸化炭素後処理部6を備えている。
【0078】
二酸化炭素後処理部6は、吸収液再生部2の下流側の二酸化炭素排出経路24に設けられる。二酸化炭素後処理部6は、吸収液再生部2から排出されたCO2からその中に含まれる吸収液成分を取り除いた後、当該CO2を排出する。二酸化炭素後処理部6は、CO2が流れる方向の上流側から順に、二酸化炭素冷却部(第4冷却部)61と、第2気液分離器(第2吸収液分離部)62と、を備える。
【0079】
二酸化炭素冷却部61は、冷却水等の冷媒を用いて、吸収液再生部2から排出されたCO2を冷却することにより、その中に含まれる吸収液成分を凝縮させる。二酸化炭素冷却部61から排出された気液混合状態のCO2が第2気液分離器62に供給される。
【0080】
第2気液分離器62は、例えば遠心力又は表面張力等を利用して、供給されたCO2に含まれる吸収液を分離する。なお、当該第2気液分離器62は、第1気液分離器32と同構造の装置を用いても良い。この場合、二酸化炭素回収システム100bの構成の簡素化を図ることができる。
【0081】
第2気液分離器62と二酸化炭素吸収部1とを接続するように、第1吸収液戻し経路63が設けられている。第1吸収液戻し経路63には、吸収液を二酸化炭素吸収部1に圧送するポンプ64が設けられる。第2気液分離器62によりCO2から分離された吸収液は、第1吸収液戻し経路63を介して二酸化炭素吸収部1に戻される。
【0082】
この構成により、CO2とともに排出されることによる吸収液の無駄な消費を防止できるとともに、環境に有害な吸収液の排出を回避することができる。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収システム100bは、二酸化炭素排出経路24と、二酸化炭素冷却部61と、第2気液分離器62と、を備える。二酸化炭素排出経路24は、分離されたCO2を吸収液再生部2から排出する。第2気液分離器62は、二酸化炭素排出経路24に設けられ、排出されたCO2を冷却する。第2気液分離器62は、CO2が流れる方向において、二酸化炭素冷却部61の下流側の二酸化炭素排出経路24に設けられ、排出されたCO2に含まれる吸収液を分離する。
【0084】
これにより、CO2の排出に伴う吸収液の排出を回避することができ、吸収液の消耗を抑えることができる。
【0085】
第4実施形態の二酸化炭素回収システム100cは、
図4に示すように、二酸化炭素吸収部1から排出された脱炭酸ガスを処理する脱炭酸ガス処理部7を備えている。
【0086】
脱炭酸ガス処理部7は、二酸化炭素吸収部1から排出された脱炭酸ガスからその中に含まれる吸収液成分を取り除いた後、当該脱炭酸ガスを排出する。脱炭酸ガス処理部7は、脱炭酸ガス排出経路(排気ガス排出経路)70と、脱炭酸ガス冷却部71(第3冷却部)と、第3気液分離器72(第1吸収液分離部)と、を備える。
【0087】
脱炭酸ガス排出経路70は、脱炭酸ガスが流れる配管から形成される。脱炭酸ガス排出経路70は、二酸化炭素吸収部1の脱炭酸ガス排出口14に接続されており、二酸化炭素吸収部1から排出された脱炭酸ガスを外部に導く。
【0088】
脱炭酸ガス冷却部71は、二酸化炭素吸収部1の下流側の脱炭酸ガス排出経路70に設けられる。脱炭酸ガス冷却部71は、冷却水等の冷媒を用いて、二酸化炭素吸収部1から排出された脱炭酸ガスを冷却することにより、その中に含まれる吸収液成分を凝縮させる。脱炭酸ガス冷却部71から排出された気液混合状態の脱炭酸ガスが第3気液分離器72に供給される。
【0089】
第3気液分離器72は、脱炭酸ガス冷却部71の下流側の脱炭酸ガス排出経路70に設けられる。第3気液分離器72は、第1気液分離器32及び第2気液分離器62と実質的に同じ構成である。第3気液分離器72と二酸化炭素吸収部1とを接続するように、第2吸収液戻し経路73が設けられている。第2吸収液戻し経路73には、吸収液を二酸化炭素吸収部1に圧送するポンプ74が設けられる。第3気液分離器72により脱炭酸ガスから分離された吸収液は、第2吸収液戻し経路73を介して二酸化炭素吸収部1に戻される。
【0090】
以上に説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収システム100cは、脱炭酸ガス排出経路70と、脱炭酸ガス冷却部71と、第3気液分離器72と、を備える。脱炭酸ガス排出経路70は、CO2が除去された排気ガスである脱炭酸ガスを二酸化炭素吸収部1から排出する。脱炭酸ガス冷却部71は、脱炭酸ガス排出経路70に設けられ、排出された脱炭酸ガスを冷却する。第3気液分離器72は、脱炭酸ガスが流れる方向において、脱炭酸ガス冷却部71の下流側の脱炭酸ガス排出経路70に設けられ、排出された脱炭酸ガスに含まれる吸収液を分離する。
【0091】
これにより、脱炭酸ガスの排出に伴う吸収液の排出を回避することができ、吸収液の消耗を抑えることができる。
【0092】
第5実施形態の二酸化炭素回収システム100dは、
図5に示すように、第1減圧部8を備えている。第1減圧部8は、吸収液再生部2の直下流側の二酸化炭素排出経路24に設けられ、その上流側に設けられた吸収液再生部2及びリッチ吸収液加熱部44等の内部の圧力を低下させる。第1減圧部8は、例えば、ブロワ等から構成される。
【0093】
このように、吸収液再生部2内の圧力を低下させることで、CO2の分離を促進でき、CO2の回収率を向上することができる。
【0094】
なお、第1減圧部8を第2実施形態(
図2)の二酸化炭素回収システム100aに設ける場合、二酸化炭素後処理部6の上流側(即ち、二酸化炭素後処理部6と吸収液再生部2との間)に当該第1減圧部8が位置することが好ましい。これにより、吸収液再生部2内の圧力を減圧させることができるとともに、二酸化炭素冷却部61に対して増圧となるため、CO
2に含まれる吸収液の凝縮を促進することができる。
【0095】
以上に説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収システム100dは、第1減圧部8を備える。第1減圧部8は、二酸化炭素排出経路24に設けられ、吸収液再生部2内の圧力を減圧させる。
【0096】
これにより、吸収液再生部2内のリッチ吸収液からCO2を分離することを促進でき、CO2の回収率を向上することができる。
【0097】
第6実施形態の二酸化炭素回収システム100eは、
図6に示すように、二酸化炭素後処理部6の下流側に設けられた二酸化炭素洗浄部9を備えている。
【0098】
二酸化炭素洗浄部9は、スクラバーとして構成され、その内部には、CO2を洗浄するための洗浄液が貯留されている。二酸化炭素後処理部6からのCO2は、二酸化炭素洗浄部9により貯留される洗浄液の内部に供給される。
【0099】
このように、バブリング現象を利用することによって、排出されるCO2内に残留された吸収液を一層綺麗に取り除くことができる。この二酸化炭素洗浄部9により浄化されたCO2は、例えば、ガラス室や、ビニールハウス等の施設園芸(例えば、植物に対する光合成による成長促進)のために提供するのに好適である。
【0100】
この構成により、CO2に残留する吸収液を綺麗に取り除くことができ、環境に有害な吸収液の排出を確実に回避することができる。
【0101】
ところで、二酸化炭素洗浄部9は、カーボンフィルタ91を備えても良い。カーボンフィルタ91は、洗浄液により洗浄されたCO2に含まれる水蒸気等の水分を取り除くために用いられる。カーボンフィルタ91は、例えば、二酸化炭素洗浄部9で貯留される洗浄液により洗浄されたCO2を排出する排出口の近傍に配置される。
【0102】
カーボンフィルタ91は、例えば、耐食性が優れた塩化ビニル等の非金属容器内に収容されることが好ましい。これにより、カーボンフィルタ91が水分を吸収することによって発生する電解腐食を回避することができ、容器の耐久性を向上することができる。
【0103】
これにより、二酸化炭素洗浄部9を通過したCO2が、含まれる残留の吸収液及び水分が綺麗に取り除かれたドライCO2になるため、CO2を供給する先のガラス室や、ビニールハウス等の施設内の湿度を好適に維持することができる。
【0104】
なお、二酸化炭素洗浄部9は、上記の構成に限定されず、例えば、スクラバーの代わりに、カーボンフィルタ91のみから構成されても良い。この場合、カーボンフィルタ91は、第2気液分離器62から排出されるCO2内に残留された吸収液及び水分を取り除く。
【0105】
第7実施形態の二酸化炭素回収システム100fは、二酸化炭素洗浄部9の下流側(二酸化炭素洗浄部9の出口)に設けられた第2減圧部90を更に備えている。第2減圧部90は、例えば、ブロワ等から構成され、二酸化炭素洗浄部9内の圧力を減圧させる。
【0106】
これにより、二酸化炭素洗浄部9内の圧力を低下させることによって、二酸化炭素洗浄部9内で発生する気泡を増加させることができ、CO2に対する洗浄力を向上することができる。即ち、CO2の排出に伴う吸収液の排出を一層確実に回避することができる。
【0107】
次に、上記実施形態の第1変形例を説明する。
図8は、第1変形例の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0108】
本変形例の二酸化炭素回収システム100gは、
図8に示すように、リッチ吸収液循環経路41とリーン吸収液循環経路42とを接続するリッチ吸収液分岐経路48を備えている。
【0109】
リッチ吸収液分岐経路48は、リッチ吸収液が流れる配管から形成される。リッチ吸収液分岐経路48は、二酸化炭素吸収部1から排出されたリッチ吸収液の一部を二酸化炭素吸収部1内に再循環させるように、リッチ吸収液循環経路41から分岐して構成されている。
【0110】
リッチ吸収液分岐経路48は、例えば、リッチ吸収液ポンプ45の上流側のリッチ吸収液循環経路41と、リーン吸収液ポンプ46とリーン吸収液冷却部47との間のリーン吸収液循環経路42と、を接続する。
【0111】
本変形例の構成では、リーン吸収液の再循環により、二酸化炭素吸収部1から排出されるリッチ吸収液におけるCO2の飽和度を向上することができる。即ち、二酸化炭素吸収部1によるCO2の吸収性能の向上を図ることができる。
【0112】
次に、上記実施形態の第2変形例を説明する。
図9は、第2変形例の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0113】
本変形例の二酸化炭素回収システム100hは、サブ二酸化炭素供給部80を更に備える。サブ二酸化炭素供給部80は、吸収液再生部2によりリッチ吸収液から分離されたCO2を貯留し、貯留されたCO2を、ガラス室及びビニールハウス等の施設園芸のために供給する。
【0114】
サブ二酸化炭素供給部80は、エンジン10が停止している場合、上記施設園芸等にCO2を供給するために用いられる。即ち、エンジン10の稼動時において、二酸化炭素貯留部81はCO2の貯留部として機能し、エンジン10の停止時において、二酸化炭素貯留部81はCO2の供給源として機能する。
【0115】
サブ二酸化炭素供給部80は、
図9に示すように、主として、二酸化炭素貯留部81と、蓄熱部82と、第3減圧部83と、第2二酸化炭素洗浄部84と、を備える。
【0116】
二酸化炭素貯留部81は、例えば、加圧等によってCO2を水等の液体に溶かして貯留する溶解タンクから構成される。即ち、二酸化炭素貯留部81には、CO2を水溶液の状態で貯留している。しかし、これに限定されず、他の適宜の方法で貯留しても良い。
【0117】
二酸化炭素貯留部81において、CO2及び/又は水を加圧するための動力は、例えばエンジン10から得ても良いし、他の動力源から得ても良い。ただし、他の動力源から動力を得る場合、エンジン10の停止に連動して当該他の動力も停止することが好ましい。
【0118】
二酸化炭素貯留部81は、
図9に示すように、二酸化炭素貯留経路85を介して、吸収液再生部2の上方に形成された第2二酸化炭素排出口25に接続されている。二酸化炭素貯留部81は、吸収液再生部2によりリッチ吸収液から分離されたCO
2の一部を貯留する。
【0119】
二酸化炭素貯留経路85は、二酸化炭素排出経路24と同様の構成を有し、CO2が流れる配管から形成される。二酸化炭素貯留経路85は、吸収液再生部2で分離されたCO2をサブ二酸化炭素供給部80に導く。二酸化炭素貯留経路85は、第2二酸化炭素排出口25に接続される構成に限定されず、例えば、二酸化炭素排出経路24から分岐するように、二酸化炭素排出経路24に接続されても良い。
【0120】
蓄熱部82は、エンジン10の稼動等によって発生した熱を蓄える蓄熱槽等から構成される。蓄熱部82で蓄えられた熱が、例えば、二酸化炭素貯留部81を加熱するために用いられる。蓄熱部82は、二酸化炭素貯留部81を加熱することにより、二酸化炭素貯留部81内に貯留された炭酸水を水とCO2とに分離する。
【0121】
蓄熱部82における熱の蓄えは、エンジン10の稼動時に行われる。蓄熱部82における二酸化炭素貯留部81に対する加熱は、エンジン10の停止後において、サブ二酸化炭素供給部80によるCO2の供給時に行われる。即ち、エンジン10の稼動時において、蓄熱部82は蓄熱装置として機能し、エンジン10の停止時において、蓄熱部82は加熱装置として機能する。
【0122】
第3減圧部83は、上述の実施形態における第2減圧部90と同様の構成を有し、例えば、ブロワ等から構成される。第3減圧部83は、二酸化炭素貯留部81の頂部に接続された第2二酸化炭素排出経路86に設けられ、二酸化炭素貯留部81内の圧力を減圧させ、二酸化炭素貯留部81内における炭酸水の分解を促進させるとともに、蓄熱部82が二酸化炭素貯留部81を加熱することによって、二酸化炭素貯留部81内に分解されたCO2の排出を促進させる。
【0123】
第2二酸化炭素洗浄部84は、二酸化炭素洗浄部9と同様の構成及び機能を有する。第2二酸化炭素洗浄部84は、上述のように、例えば吸収液及び水分を吸収できるカーボンフィルタ92から構成され、二酸化炭素貯留部81からのCO2に含まれる吸収液及び水分を取り除く。
【0124】
上記のように構成された二酸化炭素回収システム100hにおいて、エンジン10の稼動時において、吸収液再生部2で分離されたCO2の一部が二酸化炭素排出経路24を介して外部(園芸施設等)へ排出され、吸収液再生部2で分離されたCO2の一部がサブ二酸化炭素供給部80により貯留される。
【0125】
これにより、熱等の供給が必要でない状況下でエンジン10を停止した後でも、サブ二酸化炭素供給部80により施設園芸等へCO2を提供することができる。
【0126】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0127】
制御装置5は、エンジン10が備えるECUとは別途に設けられても良い。
【0128】
第1吸収液戻し経路63において、吸収液を二酸化炭素吸収部1に圧送するポンプ64は省略しても良い。同様に、第2吸収液戻し経路73において、吸収液を二酸化炭素吸収部1に圧送するポンプ74は省略しても良い。
【0129】
二酸化炭素洗浄部9においては、CO2を噴射するノズル等を設けることによって、当該二酸化炭素洗浄部9に貯留される洗浄液内に発生する気泡を増加させることもできる。
【0130】
吸収液循環部4においては、吸収液再生部2から排出されたリーン吸収液の一部をリッチ吸収液加熱部44の上流側に還流させるリーン吸収液還流経路を設けても良い。これにより、吸収液再生部2におけるCO2の回収率の向上を図ることができる。
【0131】
エンジン10と、二酸化炭素吸収部1と、の間の排気ガス供給経路30に、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する排気ガス浄化装置が設けられても良い。この場合、窒素酸化物が取り除かれた排気ガスが二酸化炭素吸収部1に供給されるので、排気ガスに含まれる酸性成分と吸収液との相互作用によって吸収液の吸収性能が劣化するのを防止することができる。
【0132】
二酸化炭素冷却部61と、脱炭酸ガス冷却部71とで、実質的に同じ構造のクーラを用いることができる。
【0133】
二酸化炭素吸収部1から排出された脱炭酸ガスの一部を、脱炭酸ガス排出経路70から排気ガス供給経路30に導入する脱炭酸ガス分岐経路を形成しても良い。これにより、排気ガス内のCO2を十分に回収することができる。
【0134】
二酸化炭素吸収部1及び吸収液再生部2に温度検出部を設けても良い。これらの温度検出部の検出結果に基づいて、排気ガス冷却部34、リーン吸収液冷却部47、リッチ吸収液加熱部44等に供給する冷却水の流量を制御しても良い。
【0135】
二酸化炭素吸収部1の排気ガス導入口11において、吸収液が排気ガス供給経路30へ逆流するのを回避するための逆流防止弁を設けても良い。この場合、排気ガス昇圧装置33の配置高さは任意であっても良い。
【符号の説明】
【0136】
1 二酸化炭素吸収部(吸収部)
5 制御装置
10 エンジン
30 排気ガス供給経路
33 排気ガス昇圧装置(昇圧装置)
100 二酸化炭素回収システム