IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タキロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-伸縮フィルム 図1
  • 特開-伸縮フィルム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068029
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】伸縮フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
B32B25/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038674
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2020019609の分割
【原出願日】2020-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】平野 達也
(72)【発明者】
【氏名】前田 崇暁
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭裕
(57)【要約】
【課題】伸長した状態での不織布やバックフィルム等との貼り合わせが安定して行える伸縮フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】無機充填剤と熱可塑性エラストマーとを含み、エラストマー層10と、エラストマー層10の両面に設けられた第1表面層20及び第2表面層22とを有する伸縮フィルム2において、エラストマー層10が熱可塑性エラストマーを、第1表面層20及び第2表面層22がポリオレフィン系樹脂と無機充填剤を含み、第1表面層20及び第2表面層22中の前記無機充填剤の含有量が10~60質量%であり、伸縮フィルム2の永久ひずみが15%以下、且つ、0~100%伸長時の応力を測定したヒステリシスカーブにおける、伸長倍率が30%、50%、70%の測定点をそれぞれA、B、Cとしたとき、点Aと点Bを結ぶ直線pの傾きと、点Bと点Cを結ぶ直線qの傾きが共に7.0×10-3以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機充填剤と熱可塑性エラストマーとを含み、
エラストマー層と、前記エラストマー層の第1の面及び第2の面のいずれか一方又は両方に設けられた表面層とを有する伸縮フィルムであって、
前記エラストマー層が熱可塑性エラストマーを、前記表面層がポリオレフィン系樹脂と無機充填剤を含み、
前記表面層中の前記無機充填剤の含有量が、前記表面層の総質量に対して10~60質量%であり、
前記伸縮フィルムの永久ひずみが15%以下、且つ、
0~100%伸長時の応力を測定したヒステリシスカーブにおける、伸長倍率が30%、50%、70%の測定点をそれぞれA、B、Cとしたとき、点Aと点Bを結ぶ直線pの傾きと、点Bと点Cを結ぶ直線qの傾きが共に7.0×10-3以下である、伸縮フィルム。
【請求項2】
前記エラストマー層中の前記熱可塑性エラストマーの含有量が、前記エラストマー層の総質量に対して80質量%以上であり、
前記表面層中の前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が、前記表面層の総質量に対して40~90質量%である、請求項1に記載の伸縮フィルム。
【請求項3】
総厚みが20~60μmである、請求項1または2に記載の伸縮フィルム。
【請求項4】
前記表面層の厚みが0.5~4.0μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の伸縮フィルム。
【請求項5】
幅方向に延伸処理が施されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の伸縮フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮フィルムは、衛生用品、スポーツ用品、医療用品等の広い分野において、取扱い性、着用感(フィット感)等を改善するために使用されている。例えば、下着等の衣服、紙おむつのウエストバンド、サイドパネル、レッグギャザー、失禁用品、生理用ナプキン、包帯、外科的ドレープ、締め付け用バンド、帽子、水泳パンツ、スポーツ用サポーター、医療品サポーター等に用いられている。
伸縮フィルムとしては、エラストマー層の表面にオレフィン層等の表面層を設けた伸縮フィルムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-112878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、紙おむつの製造工程では、伸縮フィルムを伸長した状態で不織布やバックフィルム等と貼り合わせることがある。しかし、特許文献1のような従来の伸縮フィルムでは、このような貼り合わせを安定して行うことが難しい。
【0005】
本発明は、伸長した状態での不織布やバックフィルム等との貼り合わせが安定して行える伸縮フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]無機充填剤と熱可塑性エラストマーとを含み、0~100%伸長時の応力を測定したヒステリシスカーブにおける、伸長倍率が30%、50%、70%の測定点をそれぞれA、B、Cとしたとき、点Aと点Bを結ぶ直線pの傾きと、点Bと点Cを結ぶ直線qの傾きが共に7.0×10-3以下である、伸縮フィルム。
[2]エラストマー層と、前記エラストマー層の第1の面及び第2の面のいずれか一方又は両方に設けられた表面層と、を有する、[1]に記載の伸縮フィルム。
[3]前記エラストマー層が熱可塑性エラストマーを含み、前記表面層がポリオレフィン系樹脂と無機充填剤を含む、[2]に記載の伸縮フィルム。
[4]前記エラストマー層中の前記熱可塑性エラストマーの含有量が、前記エラストマー層の総質量に対して80質量%以上であり、前記表面層中の前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が、前記表面層の総質量に対して40~90質量%であり、前記表面層中の前記無機充填剤の含有量が、前記表面層の総質量に対して10~60質量%である、[3]に記載の伸縮フィルム。
[5]総厚みが20~60μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の伸縮フィルム。
[6]前記表面層の厚みが0.5~4.0μmである、[2]~[5]のいずれかに記載の伸縮フィルム。
[7]幅方向に延伸処理が施されている、[1]~[6]のいずれかに記載の伸縮フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伸長した状態での不織布やバックフィルム等との貼り合わせが安定して行える伸縮フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の伸縮フィルムの一例を示した断面図である。
図2】本発明の伸縮フィルムの一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
流れ方向(MD)は、帯状の樹脂フィルムの押出方向(長手方向)である。また、幅方向(TD)は、樹脂フィルム面に沿って流れ方向(MD)に対して垂直方向である。
【0010】
本発明の伸縮フィルムは、無機充填剤と熱可塑性エラストマーとを含む。
無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカを例示できる。なかでも、フィルム伸長時の応力を低くでき、また永久ひずみ(伸縮性)が向上する点から、炭酸カルシウムが好ましい。伸縮フィルムに含まれる無機充填剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0011】
熱可塑性エラストマーとは、ガラス転移温度以上でゴム弾性を有するポリマーを指す。したがって、熱可塑性エラストマーは一般に常温(23℃)以下のガラス転移温度を持つ。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、強度及び復元性の点では、オレフィン系エラストマーが好ましい。また、フィルム搬送時の寸法安定性が高いという点では、スチレン系エラストマーが好ましい。伸縮フィルムに含まれる熱可塑性エラストマーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0012】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SISエラストマー)、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。これらの中でも、強度及び復元性がより高いことから、SISエラストマーが好ましい。
【0013】
SISエラストマーの全単位に対するスチレン単位含有率は、14~48質量%が好ましい。SISエラストマーのスチレン単位含有率が前記下限値以上であれば、成形性が向上する。SISエラストマーのスチレン単位含有率が前記上限値以下であれば、充分に高い伸縮性を得ることができる。
【0014】
SISエラストマーとしては、市販品を使用することができる。
SISエラストマーの市販品としては、例えば、Quintac3390(SISブロック共重合体、ガラス転移温度:-53℃、スチレン単位含有率:48質量%、日本ゼオン社製)、Quintac3620(SISブロック共重合体、ガラス転移温度:-50℃、スチレン単位含有率:14質量%、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0015】
オレフィン系エラストマーとしては、炭素数3以上のオレフィンを主成分とした共重合体又は単独重合体、並びにエチレンを主成分とした炭素数3以上のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、立体規則性が低いプロピレン単独重合体や1-ブテン単独重合体等のα-オレフィン単独重合体;プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のα-オレフィン共重合体;エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-イソプレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体;等が挙げられる。また、結晶性ポリオレフィンのマトリクスに上記エラストマーが分散したエラストマーとしてもよい。オレフィン系エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
オレフィン系エラストマーとしては、強度及び復元性の点から、プロピレンを主成分とした共重合体又は単独重合体であるプロピレン系エラストマー(プロピレン-エチレン共重合体等、以下「PP系エラストマー」ともいう。)、エチレンを主成分とした共重合体又は単独重合体であるエチレン-オクテンエラストマー(エチレン-オクテン共重合体等)が好ましい。PP系エラストマーは、伸縮フィルムのTDとMDの物性の差が小さく、TDの永久ひずみが改善される点で好ましい。
【0017】
PP系エラストマーの全単位に対するプロピレン単位含有率は、70~95質量%が好ましく、80~90質量%がより好ましい。PP系エラストマーのプロピレン含有率が下限値以上であれば、成形性が向上する。PP系エラストマーのプロピレン含有率が上限値以下であれば、高い伸縮性が得られやすい。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0018】
オレフィン系エラストマーとしては、市販品を使用することができる。
オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、商品名「VISTAMAXX6102」(プロピレン-エチレン共重合体、エチレン単位含有率:16質量%、ExxonMobil社製)、商品名「Infuse9007」(エチレン-オクテン共重合体、Dow Chemical社製)等が挙げられる。
【0019】
熱可塑性エラストマーとしては、強度及び復元性の点から、PP系エラストマー及びエチレン-オクテンエラストマーからなる群から選ばれる1種が好ましい。しかしながら、2種以上のエラストマーを混合して使用してもよい。
また、熱可塑性エラストマーとしては、フィルム搬送時の寸法安定性が高いという点から、スチレン系エラストマーが好ましい。しかしながら、2種以上のスチレン系エラストマーを混合して使用してもよい。
【0020】
本発明の伸縮フィルムは、0~100%伸長時の応力を測定したヒステリシスカーブ(応力-歪み曲線、S-Sカーブ)における、伸長倍率が30%、50%、70%の測定点をそれぞれA、B、Cとしたとき、点Aと点Bを結ぶ直線pの傾きと、点Bと点Cを結ぶ直線qの傾きが共に7.0×10-3以下である。このS-Sカーブにおいては、100%伸長時(伸長倍率が100%)のときの伸縮フィルムのStrain(歪み)を100%とする。
【0021】
直線pの傾きと直線qの傾きが共に7.0×10-3以下であることで、伸縮フィルムを小さい力で、且つ一定の力で伸長することが可能になる。そのため、伸縮フィルムを伸長した状態で不織布やバックフィルム等の他部材と安定して貼り合わせることができ、工程安定性に優れる。
本発明では、工程安定性がより優れる点から、直線pの傾きと直線qの傾きが共に5.0×10-3以下であることが好ましい。
【0022】
伸縮フィルムの30%伸長時の応力は、3.0N/25mm以下が好ましく、2.0N/25mm以下がより好ましく、1.7N/25mm以下がさらに好ましい。
伸縮フィルムの100%伸長時の応力は、3.0N/25mm以下が好ましく、2.0N/25mm以下がより好ましい。
伸縮フィルムの30%伸長時及び100%伸長時の応力が前記上限値以下であれば、剛性が低い伸縮フィルムである。
【0023】
伸縮フィルムの永久ひずみは、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。永久ひずみが前記上限値以下であれば、伸縮性に優れ、伸長した状態で不織布等の他部材と貼り合わせた後でも元の状態に戻りやすい。
【0024】
伸縮フィルムの総厚みは、20~60μmが好ましく、25~55μmがより好ましく、30~50μmがさらに好ましい。伸縮フィルムの総厚みが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮性に優れる。伸縮フィルムの総厚みが前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムを薄肉化でき、剛性が低くなり、伸縮性に優れる。
【0025】
本発明の伸縮フィルムの態様としては、特に限定されず、エラストマー層と、エラストマー層の厚み方向の第1の面及び第2の面のいずれか一方又は両方に設けられた表面層と、を有する態様が好ましい。
例えば、図1に例示した伸縮フィルム1、図2に例示した伸縮フィルム2が挙げられる。伸縮フィルム1は、図1に示すように、エラストマー層10と、エラストマー層10の第1の面10aに設けられた第1表面層20とを備えている。伸縮フィルム2は、図2に示すように、エラストマー層10と、エラストマー層10の第1の面10aに設けられた第1表面層20と、エラストマー層10の第2の面10bに設けられた第2表面層22とを備えている。なお、図1及び図2の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
なお、本発明の伸縮フィルムは、エラストマー層の第1の面及び第2の面の両方に表面層を有しないフィルムであってもよい。
【0026】
エラストマー層は、熱可塑性エラストマーを含む層である。
エラストマー層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、熱可塑性エラストマー以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、金属石鹸、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、変色防止剤、顔料、染料、充填剤等の添加物や、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性エラストマー以外の他の樹脂が挙げられる。
【0027】
エラストマー層中の熱可塑性エラストマーの含有量は、エラストマー層の総質量に対して、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。熱可塑性エラストマーの含有量が前記下限値以上であれば、伸縮性に優れる。
【0028】
エラストマー層の厚みは、20~60μmが好ましく、25~55μmがより好ましく、30~50μmがさらに好ましい。エラストマー層の厚みが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮性に優れる。エラストマー層の厚みが前記範囲の上限値以下であれば、剛性が低くなる。
エラストマー層は、単層であってもよく、複層であってもよい。エラストマー層が複層である場合は、エラストマー層の合計の厚みを前記範囲とすることが好ましい。
【0029】
耐ブロッキング性に優れる点から、表面層はポリオレフィン系樹脂と無機充填剤を含むことが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。ポリエチレンは、伸縮性に優れ、剛性も小さい点で好ましい。ポリプロピレンは、耐熱性に優れ、不織布等とホットメルト(110℃以上)で接着しても破れにくい点で好ましい。
【0030】
ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン(H-PP)、エチレンとの共重合体であるブロックポリプロピレン(B-PP)、エチレンとの共重合体であるランダムポリプロピレン(R-PP)等が挙げられる。なかでも、柔軟性に優れる点から、B-PP及びR-PPからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
表面層に含まれるポリオレフィン系樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0031】
エラストマー層の両面に第1表面層と第2表面層を設ける場合、第1表面層に含まれるポリオレフィン系樹脂と第2表面層に含まれるポリオレフィン系樹脂は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
表面層中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、表面層の総質量に対して、40~90質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、不織布との接着性に優れる。ポリオレフィン系樹脂の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、剛性が低くなり、伸縮性に優れる。
【0033】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ等が挙げられる。表面層に含まれる無機充填剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0034】
表面層中の無機充填剤の含有量は、前記表面層の総質量に対して、10~60質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。無機充填剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐ブロッキング性に優れ、剛性が低くなり、伸縮性に優れる。無機充填剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムの製造が安定になる。
【0035】
表面層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、エラストマー層で挙げた添加物が挙げられる。
【0036】
表面層の厚みは、0.5~4.0μmが好ましく、1.0~3.0μmがより好ましい。表面層の厚みが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮フィルムの製造がより安定になる。表面層の厚みが前記範囲の上限値以下であれば、表面層の剛性が伸縮フィルムに与える影響が小さくなるため、伸縮フィルムの剛性が低くなり、伸縮性に優れる。
エラストマー層の両面に第1表面層と第2表面層を設ける場合、それら第1表面層の厚みと第2表面層の厚みをそれぞれ前記範囲とすることが好ましい。
【0037】
伸縮フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、インフレーション法、キャストフィルムプロセス法等が挙げられる。なかでも、生産性の点から、キャストフィルムプロセス法が好ましい。
【0038】
本発明の伸縮フィルムは、機械物性、特に収縮応力、永久ひずみを調整する目的で、延伸処理を施してもよい。応力(剛性)が低下し、直線pの傾き及び直線qの傾きが7.0×10-3以下の伸縮フィルムが得られやすい点から、延伸処理が施されていることが好ましく、幅方向(TD)に延伸処理が施されていることがより好ましい。
【0039】
延伸方法は、特に限定されず、例えば、ロール延伸、テンター延伸、ギア延伸等が挙げられる。なかでも、生産性の点から、ギア延伸が好ましい。
延伸倍率は、特に限定されず、例えば、300~400%とすることができる。
【0040】
本発明の伸縮フィルムの用途は、特に限定されず、衛生用品、スポーツ用品、医療用品等に使用できる。例えば、下着等の衣服、紙おむつのウエストバンド、サイドパネル、レッグギャザー、失禁用品、生理用ナプキン、包帯、外科的ドレープ、締め付け用バンド、帽子、水泳パンツ、スポーツ用サポーター、医療品サポーター等に使用できる。
【0041】
以上説明したように、本発明の伸縮フィルムは、直線pの傾きと直線qの傾きが共に7.0×10-3以下である。そのため、伸縮フィルムを小さい力で、且つ一定の力で伸長することが可能になり、伸縮フィルムを伸長した状態で不織布やバックフィルム等の他部材と安定して貼り合わせることができ、工程安定性に優れる。
【実施例0042】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0043】
[測定方法、評価方法]
(各層の厚み)
伸縮フィルムにおけるエラストマー層及び表面層の厚みは、マイクロスコープによる断面観察によって求めた。
【0044】
(伸縮フィルムの永久ひずみ)
伸縮フィルムから、フィルムのTDに100mm、TDに対して垂直方向(MD)に25mmの短冊状試験片を切り取った。試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ、材料試験オペレーションソフトウエア:TRAPEZIUM2)のつかみ具につかみ具間距離が25mmとなるように固定した。試験片を長手方向に速度254mm/分にて下記式(I)で算出される伸び(伸長倍率)が100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させた。下記式(II)から永久ひずみを算出した。試験は、23℃±2℃で行った。
伸び=(L1-L0)/L0×100 (I)
永久ひずみ=(L2-L0)/L0×100 (II)
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)である。L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)である。L2は、収縮させる際に試験片の荷重(N/25mm)が0になるときのつかみ具間距離(mm)である。
【0045】
(ヒステリシスカーブ)
伸縮フィルムの永久ひずみを算出する時と同様の方法で、伸長倍率100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させた際の伸長倍率(%)を横軸、応力(N/25mm)を縦軸にプロットした曲線をヒステリシスカーブという。
【0046】
(工程安定性)
工程安定性は、ヒステリシスカーブの伸長倍率が30%、50%、70%の測定点をそれぞれA、B、Cとしたとき、点Aと点Bを結ぶ直線pの傾きと、点Bと点Cを結ぶ直線qの傾きについて、以下の評価基準に従って評価した。
◎(優良):直線pの傾きと直線qの傾きが共に5.0×10-3以下である。
○(良):直線pの傾きと直線qの傾きの少なくとも一方が5.0×10-3を超えるが、直線pの傾きと直線qの傾きが共に7.0×10-3以下である。
×(不良):直線pの傾きと直線qの傾きの少なくとも一方が7.0×10-3超える。
【0047】
(貼り合わせ安定性)
伸縮フィルムをフィルムのTDに100mm、TDに対して垂直方向(MD)に25mmの短冊状試験片に切り取り、試験片を長手方向に速度254mm/分、伸長倍率50%で伸長した状態での不織布との貼り合わせ安定性について、以下の評価基準に従って評価した。
○(良):貼り合わせ作業を安定して行えた。
×(不良):貼り合わせ作業を安定して行えなかった。
【0048】
[原料]
本実施例で使用した原料を以下に示す。
(熱可塑性エラストマー)
エラストマー(A-1):SISエラストマー(Quintac3390、スチレン単位含有率48質量%、日本ゼオン社製)
エラストマー(A-2):SISエラストマー(Quintac3620、スチレン単位含有率14質量%、日本ゼオン社製)
エラストマー(A-3):PP系エラストマー(Vistamaxx6102FL、エクソン社製)
エラストマー(A-4):PP系エラストマー(Vistamaxx6202、エクソン社製)
【0049】
(ポリオレフィン系樹脂)
樹脂(B-1):R-PP(F227、融点152℃、プライムポリマー社製)
樹脂(B-2):LDPE(CE3506、融点117℃、スミカセン社製)
樹脂(B-3):HDPE(ニポロンハード1000、東ソー社製)
【0050】
(無機充填剤)
充填剤(C-1):炭酸カルシウム(ライトンS、備北粉化工業社製)
【0051】
[実施例1]
表面層を形成する各成分を表1に示す配合でタンブラーミキサーにより混合して樹脂混合物を得た。次いで、キャストフィルムプロセス法により、第1エラストマー層の両側に第2エラストマー層と第3エラストマー層が設けられた3層構成のエラストマー層と、前記エラストマー層の第2エラストマー層側に設けられた第1表面層と、第3エラストマー層側に設けられた第2表面層とを有する伸縮フィルムを製造した。成形後、伸縮フィルムは幅方向(TD)にギア延伸によって400%延伸した。
【0052】
[実施例2、3、5~8、比較例3~7]
エラストマー層を1層とし、各層の組成及び厚み、延伸処理の有無及び条件を表1及び表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして伸縮フィルムを製造した。
なお、実施例7及び8は参考例である。
【0053】
[実施例4、比較例1、2]
各層の組成及び厚み、延伸処理の有無及び条件を表1及び表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして伸縮フィルムを製造した。
【0054】
各例の評価結果を表1及び表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1及び表2に示すように、実施例1~8の伸縮フィルムは、比較例1~7の伸縮フィルムに比べて工程安定性、貼り合わせ安定性に優れていた。
【符号の説明】
【0058】
1,2…伸縮フィルム、10…エラストマー層、10a…第1の面、10b…第2の面、20…第1表面層、22…第2表面層。
図1
図2