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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068031
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/365 20060101AFI20230509BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20230509BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20230509BHJP
   C23C 16/40 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
H01L21/365
H01L21/368 Z
C23C16/448
C23C16/40
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039027
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2021126966の分割
【原出願日】2021-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2020117919
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武紀
(57)【要約】
【課題】
膜厚の面内均一性や成膜速度に優れた酸化ガリウム半導体膜の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
ミストCVD法による酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、前記成膜室において基板の表面に供給する前記ミスト及び前記キャリアガスの流れが、前記基板の表面に沿った流れとなるように整流する整流工程と、前記整流されたミストを熱処理して前記基板上に成膜を行う成膜工程と、前記基板の上方へ廃ガスを排気する排気工程とを含む酸化ガリウム半導体膜の製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト化部と、
前記ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、
前記ミスト化部と成膜室とを接続し、前記キャリアガスによって前記ミストが搬送される供給管と、
供給口から前記キャリアガスとともに供給された前記ミストを熱処理して、基板載置部に載置された基板上に成膜を行う成膜室とを少なくとも有する成膜装置であって、
前記基板載置部に載置された前記基板の下に具備され、該基板を加熱することにより前記ミストの熱処理を行う加熱手段を有し、
前記成膜室は内部に、
前記ミスト及び前記キャリアガスの流れを整流する中板と、
廃ガスを排気する排気配管とを有し、
前記中板は、前記基板載置部の上方かつ前記供給口と前記基板載置部との間に位置するとともに、前記成膜室の側壁と空隙を有し、かつ、前記基板と0.5~10mmの空隙を有するように設置されており、
前記排気配管は、前記中板の前記基板載置部に対向する面の開口部に接続され、前記中板から上方へ延伸して前記成膜室の壁を貫通するように設けられており、
前記供給口から前記成膜室に前記キャリアガスとともに供給された前記ミストの流れが、前記中板により前記基板の表面に沿った流れとなるように整流されて前記基板上に成膜されるものであり、前記中板、前記排気配管の下端の開口部、前記基板の相対位置が成膜中に変更可能なものであることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
面積が100mm以上、又は、直径2インチ(50mm)以上の基板を処理するものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記供給口から前記成膜室に前記キャリアガスとともに供給された前記ミストの流れが、前記中板により前記基板の外周から前記基板の中心に向かう流れとなるように整流されて前記基板上に成膜されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜室の内部において、前記基板載置部は、前記基板載置部の周囲より高い位置に基板載置面を有し、前記中板の大きさは、前記基板を完全に覆っていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記成膜室において、前記ミストの前記熱処理を行う加熱領域は前記基板載置部と同じ大きさであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ガリウム半導体膜の製造方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーザー堆積法(Pulsed laser deposition:PLD)、分子線エピタキシー法(Molecular beam epitaxy:MBE)、スパッタリング法等の非平衡状態を実現できる高真空成膜装置が開発されており、これまでの融液法等では作製不可能であった酸化物半導体の作製が可能となってきた。また、霧化されたミスト状の原料を用いて、基板上に結晶成長させるミスト化学気相成長法(Mist Chemical Vapor Deposition:Mist CVD。以下、「ミストCVD法」ともいう。)が開発され、コランダム構造を有する酸化ガリウム(α-Ga)の作製が可能となってきた。α-Gaは、バンドギャップの大きな半導体として、高耐圧、低損失及び高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子への応用が期待されている。
【0003】
ミストCVD法に関して、特許文献1には、管状炉型のミストCVD装置が記載されている。特許文献2には、ファインチャネル型のミストCVD装置が記載されている。特許文献3には、リニアソース型のミストCVD装置が記載されている。特許文献4には、管状炉型のミストCVD装置が記載されており、特許文献1に記載のミストCVD装置とは、ミスト発生器内にキャリアガスを導入する点で異なっている。特許文献5には、ミスト発生器の上方に基板を設置し、さらにサセプタがホットプレート上に備え付けられた回転ステージであるミストCVD装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-257337号公報
【特許文献2】特開2005-307238号公報
【特許文献3】特開2012-46772号公報
【特許文献4】特許第5397794号公報
【特許文献5】特開2014-63973号公報
【特許文献6】特開2020-2396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミストCVD法は、他のCVD法とは異なり比較的低温で成膜を行うことができ、α-酸化ガリウムのコランダム構造のような準安定相の結晶構造も作製可能である。しかしながら、本発明者は、熱反応で成膜を行うために成膜室内で加熱を行うと、供給されたミストが指数関数的に減少してしまい、成膜速度が低下するとともに、膜厚の面内均一性を維持するのが困難になるという、新たな問題点を見出した。この問題は基板の直径が大きくなるほど顕著であった。このような問題に対し、特許文献3や特許文献5に記載の発明は、基板を走査、回転させることで解決を図っている。しかしながら、これらの方法を用いても膜厚の面内均一性は完全には解消されていない。また、成膜装置に走査や回転のための駆動部を設けることにより装置の初期コストが増加し、さらにメンテナンスが煩雑になるといった副次的な問題も生じていた。
【0006】
これに対し、特許文献6には、成膜室の側面に、相対する方向にミストを供給する手段を設けることが記載されており、これにより、簡便な装置構成により膜厚の面内均一性が高く、成膜速度を大きく改善することが可能なものとなった。しかしながら、基板に対してミスト供給口が完全な対称形にはなっていないため、ある程度膜厚分布にばらつきが生じており改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、膜厚の面内均一性や成膜速度に優れ、ミストCVD法を適用可能な成膜装置、及び、膜厚の面内均一性や成膜速度に優れた酸化ガリウム半導体膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、ミストCVD法による酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、前記成膜室において基板の表面に供給する前記ミスト及び前記キャリアガスの流れが、前記基板の表面に沿った流れとなるように整流する整流工程と、前記整流されたミストを熱処理して前記基板上に成膜を行う成膜工程と、前記基板の上方へ廃ガスを排気する排気工程とを含む酸化ガリウム半導体膜の製造方法を提供する。
【0009】
このような酸化ガリウム半導体膜の製造方法によれば、簡便な方法により、膜厚の面内均一性を高く、成膜速度を大きく改善することが可能となる。
【0010】
このとき、前記基板として、面積が100mm以上、又は、直径2インチ(50mm)以上の基板を用いることが好ましい。
【0011】
本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法は、このような膜厚が不均一になりやすい大面積基板を用いた場合であっても、より高い膜厚の面内均一性とすることができる。
【0012】
ここで、前記整流工程のとき、前記基板の表面に供給する前記ミスト及び前記キャリアガスの流れが、前記基板の外周から前記基板の中心に向かう流れとなるように整流することが好ましい。
【0013】
これにより、より一層簡便な方法により、より確実に膜厚の面内均一性を高く、成膜速度を大きく改善することが可能となる。
【0014】
また、原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト化部と、前記ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、前記ミスト化部と成膜室とを接続し、前記キャリアガスによって前記ミストが搬送される供給管と、供給口から前記キャリアガスとともに供給された前記ミストを熱処理して、基板載置部に載置された基板上に成膜を行う成膜室とを少なくとも有する成膜装置であって、前記成膜室は内部に、前記ミスト及び前記キャリアガスの流れを整流する中板と、廃ガスを排気する排気配管とを有し、前記中板は、前記基板載置部の上方かつ前記供給口と前記基板載置部との間に位置するとともに、前記成膜室の側壁と一定の空隙を有するように設置されており、前記排気配管は、前記中板の前記基板載置部に対向する面の開口部に接続され、前記中板から上方へ延伸して前記成膜室の壁を貫通するように設けられており、前記供給口から前記成膜室に前記キャリアガスとともに供給された前記ミストの流れが、前記中板により前記基板の表面に沿った流れとなるように整流されて前記基板上に成膜されるものである成膜装置を提供する。
【0015】
このような成膜装置によれば、簡便な装置構成により、膜厚の面内均一性が高く、成膜速度に優れたものとなる。
【0016】
このとき、面積が100mm以上、又は、直径2インチ(50mm)以上の基板を処理するものであることが好ましい。
【0017】
本発明に係る成膜装置は、膜厚が不均一になりやすい大面積基板であっても、より高い膜厚の面内均一性を得ることができるものである。
【0018】
このとき、前記供給口から前記成膜室に前記キャリアガスとともに供給された前記ミストの流れが、前記中板により前記基板の外周から前記基板の中心に向かう流れとなるように整流されて前記基板上に成膜されるものであることが好ましい。
【0019】
これにより、より一層簡便な装置構成により、より確実に膜厚の面内均一性が高く、成膜速度に優れたものとなる。
【0020】
このとき、前記成膜室の内部において、前記基板載置部は、前記基板載置部の周囲より高い位置に基板載置面を有することが好ましい。
【0021】
これにより、基板外で反応してしまったミストが基板上に供給されるのを抑制でき、より高品質の膜を得ることができるものとなる。
【0022】
このとき、前記成膜室において、前記ミストの前記熱処理を行う加熱領域は前記基板載置部と同じ大きさであることが好ましい。
【0023】
これにより、基板外でのミストの反応をさらに抑制でき、より高品質の膜を得ることができるものとなる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係る成膜装置によれば、簡便な装置構成により膜厚の面内均一性が高く、成膜速度に優れたものとなる。また、本発明に係る成膜方法によれば、簡便な方法により膜厚の面内均一性を高く、成膜速度を大きく改善することが可能となる。特に、膜厚が不均一になりやすい大面積基板に成膜をする際にも、高い成膜速度で、より高い膜厚の面内均一性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る成膜装置を示す概略構成図である。
図2】本発明に係る成膜装置のミスト化部の一例を説明する図である。
図3】本発明に係る成膜装置の成膜室の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
上述のように、ミストCVD法において、膜厚の面内均一性や成膜速度に優れた成膜装置、及び、膜厚の面内均一性や成膜速度に優れた酸化ガリウム半導体膜の製造方法が求められていた。
【0028】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ミストCVD法による酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、前記成膜室において基板の表面に供給する前記ミスト及び前記キャリアガスの流れが、前記基板の表面に沿った流れとなるように整流する整流工程と、前記整流されたミストを熱処理して前記基板上に成膜を行う成膜工程と、前記基板の上方へ廃ガスを排気する排気工程とを含む酸化ガリウム半導体膜の製造方法により、簡便な方法で膜厚の面内均一性を高く、成膜速度を優れたものとすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
また、原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト化部と、前記ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、前記ミスト化部と成膜室とを接続し、前記キャリアガスによって前記ミストが搬送される供給管と、供給口から前記キャリアガスとともに供給された前記ミストを熱処理して、基板載置部に載置された基板上に成膜を行う成膜室とを少なくとも有する成膜装置であって、前記成膜室は内部に、前記ミスト及び前記キャリアガスの流れを整流する中板と、廃ガスを排気する排気配管とを有し、前記中板は、前記基板載置部の上方かつ前記供給口と前記基板載置部との間に位置するとともに、前記成膜室の側壁と一定の空隙を有するように設置されており、前記排気配管は、前記中板の前記基板載置部に対向する面の開口部に接続され、前記中板から上方へ延伸して前記成膜室の壁を貫通するように設けられており、前記供給口から前記成膜室に前記キャリアガスとともに供給された前記ミストの流れが、前記中板により前記基板の表面に沿った流れとなるように整流されて前記基板上に成膜されるものである成膜装置により、簡便な装置構成により、膜厚の面内均一性が高く、成膜速度に優れたものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0030】
また特には、本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ミストCVD法による酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、ミスト化部において、ガリウムを含む原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト発生工程と、前記ミストを搬送するためのキャリアガスを前記ミスト化部に供給するキャリアガス供給工程と、前記ミスト化部と成膜室とを接続する供給管を介して、前記ミスト化部から前記成膜室へと、前記ミストを前記キャリアガスにより搬送する搬送工程と、前記成膜室において基板の表面に供給する前記ミスト及び前記キャリアガスの流れが、前記基板の外周から前記基板の中心に向かう流れとなるように整流する整流工程と、前記整流されたミストを熱処理して前記基板上に成膜を行う成膜工程と、前記基板の上方へ廃ガスを排気する排気工程とを含む酸化ガリウム半導体膜の製造方法により、簡便な方法で膜厚の面内均一性を高く、成膜速度を優れたものとすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0031】
また、原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト化部と、前記ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、前記ミスト化部と成膜室とを接続し、前記キャリアガスによって前記ミストが搬送される供給管と、供給口から前記キャリアガスとともに供給された前記ミストを熱処理して、基板載置部に載置された基板上に成膜を行う成膜室とを少なくとも有する成膜装置であって、前記成膜室は内部に、前記ミスト及び前記キャリアガスの流れを整流する中板と、廃ガスを排気する排気配管とを有し、前記中板は、前記基板載置部の上方かつ前記供給口と前記基板載置部との間に位置するとともに、前記成膜室の側壁と一定の空隙を有するように設置されており、前記排気配管は、前記中板の前記基板載置部に対向する面の開口部に接続され、前記中板から上方へ延伸して前記成膜室の壁を貫通するように設けられており、前記供給口から前記成膜室に前記キャリアガスとともに供給された前記ミストの流れが、前記中板により前記基板の外周から前記基板の中心に向かう流れとなるように整流されて前記基板上に成膜されるものである成膜装置により、簡便な装置構成により、膜厚の面内均一性が高く、成膜速度に優れたものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
ここで、本発明でいうミストとは、気体中に分散した液体の微粒子の総称を指し、霧、液滴等と呼ばれるものを含む。
【0033】
以下、図面を参照して説明する。
【0034】
<第一の実施態様>
(成膜装置)
図1に、本発明に係る成膜装置101の一例を示す。成膜装置101は、原料溶液104aをミスト化してミストを発生させるミスト化部120と、ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部130と、ミスト化部120と成膜室300とを接続し、キャリアガスによってミストが搬送される供給管109と、供給口301からキャリアガスとともに供給されたミストを熱処理して、基板載置部313に載置された基板310上に成膜を行う成膜室300とを少なくとも有している。
【0035】
(ミスト化部)
ミスト化部120では、原料溶液104aをミスト化してミストを発生させる。ミスト化手段は、原料溶液104aをミスト化できさえすれば特に限定されず、公知のミスト化手段であってよいが、超音波振動によるミスト化手段を用いることが好ましい。より安定してミスト化することができるためである。
【0036】
このようなミスト化部120の一例を、図2も併せて参照しながら説明する。例えば、ミスト化部120は、原料溶液104aが収容されるミスト発生源104と、超音波振動を伝達可能な媒体、例えば水105aが入れられる容器105と、容器105の底面に取り付けられた超音波振動子106を含んでもよい。詳細には、原料溶液104aが収容されている容器からなるミスト発生源104が、水105aが収容されている容器105に、支持体(図示せず)を用いて収納されることができる。容器105の底部には、超音波振動子106が備え付けられていてもよく、超音波振動子106と発振器116とが接続されていてもよい。そして、発振器116を作動させると超音波振動子106が振動し、水105aを介してミスト発生源104内に超音波が伝播し、原料溶液104aがミスト化するように構成されることができる。
【0037】
(原料溶液)
原料溶液104aは、少なくともガリウムを含み、ミスト化が可能であれば溶液に含まれる材料は特に限定されず、無機材料であっても、有機材料であってもよい。また、ガリウムの他に金属又は金属化合物が混合されていてもよく、例えば、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種又は2種以上の金属を含むものを使用してもかまわない。
【0038】
原料溶液は、上記金属をミスト化できるものであれば特に限定されないが、原料溶液として、金属を錯体又は塩の形態で、有機溶媒又は水に溶解又は分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。また、上記金属を、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸等に溶解したものも塩の水溶液として用いることができる。
【0039】
また、原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、なかでも、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化ベンゾイル(CCO)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0040】
さらに、原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。ドーパントは特に限定されない。例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム又はニオブ等のn型ドーパント、又は、銅、銀、スズ、イリジウム、ロジウム等のp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、例えば、約1×1016/cm~1×1022/cmであってもよく、約1×1017/cm以下の低濃度にしても、約1×1020/cm以上の高濃度としてもよい。
【0041】
(キャリアガス供給部)
図1に示すように、キャリアガス供給部130はキャリアガスを供給するキャリアガス源102aを有する。このとき、キャリアガス源102aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103aを備えていてもよい。また、必要に応じて希釈用キャリアガスを供給する希釈用キャリアガス源102bや、希釈用キャリアガス源102bから送り出される希釈用キャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103bを備えることもできる。
【0042】
キャリアガスの種類は、特に限定されず、成膜物に応じて適宜選択可能である。例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、又は水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類でも、2種類以上であってもよい。例えば、第2のキャリアガスとして、第1のキャリアガスと同じガスをそれ以外のガスで希釈した(例えば10倍に希釈した)希釈ガスなどをさらに用いてもよく、空気を用いることもできる。キャリアガスの流量は特に限定されない。例えば、30mm角の基板上に成膜する場合には、キャリアガスの流量は0.01~20L/分とすることが好ましく、1~10L/分とすることがより好ましい。
【0043】
(供給管)
成膜装置101は、ミスト化部120と成膜室300とを接続する供給管109を有する。この場合、ミストは、ミスト化部120のミスト発生源104から供給管109を介してキャリアガスによって搬送され、成膜室300内に供給される。供給管109は、例えば、石英管や樹脂製のチューブなどを使用することができる。
【0044】
(成膜室)
図3は、本発明に係る成膜装置の成膜室300の一例(図1の成膜室300に同じ)を示す断面概略図である。成膜室300は基本的に密閉されており、少なくとも1以上のミストの入口である供給口301と、基板310の上方へ廃ガスを排気する排気配管312と、ミスト及びキャリアガスの流れを整流する中板321を有する。供給口301は供給管109と接続され、ミストを成膜室300内に供給する。
供給口301の開口の位置調整機構を設けておくことで、成膜状況に応じて成膜室300内における供給口301の先端位置を変えてミスト及びキャリアガスが噴出する位置を変えることができる。
【0045】
(中板)
図3に示した成膜室300は内部に、基板載置部313の上方かつ供給口301と基板載置部313との間に、中板321を有している。また、中板321の外周と成膜室300の内部の側壁には一定の空隙322が形成されている。このような中板321を成膜室300の内部に設置することで、供給口301から成膜室300にキャリアガスとともに供給されたミストの流れが、供給口301から供給されたミストが成膜室300の側壁と中板321との空隙322を通過し、さらに基板310と中板321との空隙323を通過する。すなわち、ミストが、基板310の外周から基板310の中心に向かう流れとなるような整流となり、ミストの流速、方向の均一化が図れる。中板321の大きさは、基板310(基板載置部313)を完全に覆っていることが好ましい。これにより、ミストの利用効率がよくなる他、ミストの流速、方向の均一化が図れる。中板321の形状は円形であることが好ましいが、特に限定されない。中板321の素材に特に制限はないが、ミストと反応しない素材とすることが好ましい。
【0046】
中板321の外周と成膜室300の内部の側壁との空隙322は、0.1~10mmとすることが好ましい。このような範囲の空隙322であれば、空隙に生じるばらつきやミストを含んだガスの片流れを有効に抑制でき、基板310上のミストの流れがより均一になる。成膜条件に応じ、空隙322を変えてもかまわない。例えば、中板321が円形の場合は、直径を変えた板を2種以上用意しておき、付け替えることで、空隙322を任意に変えることができる。中板321と基板310との空隙323は、0.5~10mmとすることが好ましい。このような範囲の空隙323であれば、ミストを含んだガスの流れをより安定させることができ、また、ミストの利用効率をより高い状態で維持できる。成膜条件に応じ、空隙323を変えてもかまわない。例えば、予め中板321の高さ調整機構を設けておくことで、空隙323を任意に変えることができる。
【0047】
(排気配管)
また、排気配管312は、中板321の基板載置部313に対向する面の開口部に接続され、中板321から上方へ延伸して成膜室300の壁、例えば天井を貫通するように設けられている。排気配管312の開口部の位置は特に限定されないが、基板310の外周から中心に向かい流れたガスのうち、成膜時に使われなかった廃ガスを排気するために、中板321の中心と開口部の中心と基板載置部313の中心とが一致するように配置することが好ましい。中板321の排気配管312と接続する部分の開口部の口径は適宜設定されるが、1~15mmであってよい。
【0048】
成膜室300を以上の構成とすることで、ミストは、中板321により整流され、同じ流速で基板310の外周から中心方向に向かって均一に流すことが可能となる。さらに、基板310中心に近づくほど面積あたりの体積流量は増加するため、成膜によりミストが消費されていくのを見かけ上抑制する効果がある。これらの効果により、高い成膜速度で、膜厚のばらつきを極めて小さくすることができる。
【0049】
(基板載置部)
基板310は、成膜室300内の基板載置部313の基板載置面314に載置される。ここで基板載置部313とは、基板310を支持する部材に基板310を置いたときに、基板310を支持する部材における、基板310の下面に対向している部分を指す。また、基板載置面314は、基板310を支持する面を指す。基板310の下には、基板310を加熱し、ミストの熱処理を行う加熱手段を備えることができる。加熱手段は特に限定されないが、例えばホットプレート308とすることができる。ホットプレート308は、図3に示したように、成膜室300の内部に設けられていてもよいし、成膜室300の外部に設けられていてもよい。また、ホットプレート308は成膜室300の底面全面を構成していてもよいが、基板310より若干大きくてもよく、さらには基板310と同程度の大きさであってもよい。これにより、基板310外でのミストの反応を抑制でき、より高品質の膜を得ることができる。また、加熱領域は基板載置部313と略同じ大きさ、より好ましくは同じ大きさとすることが好ましい。
基板載置部313には冷却手段を備えることもできる。加熱と同時に冷却を行うことで局所的な昇温や昇温のオーバーシュートを防ぎ、より高精度の温調が可能となる。冷却手段は特に限定されないが、例えばペルチェ素子を使用することができるし、冷却液を循環させる方式を使用することもできる。
基板載置部313には成膜中の基板310を回転させるための回転機構を備えてもよく、これにより膜厚のばらつきを更に小さくすることができる。
基板載置部313には基板310を吸着する機構を備えても良い。基板の吸着により熱の伝達効率と均一性が高くなり、より短時間での昇温・降温が可能となり、また基板の温度分布もより均一とすることができる。また前述の回転機構を使用した場合の基板の滑りや逸脱を防止することができる。吸着手段は特に限定はされないが、例えば静電気を用いた吸着や真空を用いた吸着が可能である。
【0050】
さらに、加熱領域を、例えば、基板310の下に設置した熱伝導性の良い金属製のブロックや、ホットプレート308に形成した凸形状として、基板載置面314の高さを基板載置部313の周囲より高い位置とすることも好ましく、周囲より1~50mm程度高い位置にあってもよい。こうすることで、基板310外で反応してしまったミストが基板310上に供給されるのを抑制できるため、より高品質の膜を得ることができるものとなる。
【0051】
(基板)
基板310は、成膜可能であり膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基板310の材料も、特に限定されず、公知の基板を用いることができ、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂等の有機化合物、鉄やアルミニウム、ステンレス鋼、金等の金属、シリコン、サファイア、石英、ガラス、タンタル酸リチウム、タンタル酸カリウム、酸化ガリウム等の無機化合物が挙げられるが、これらに限られるものではない。基板の厚さは特に限定されないが、好ましくは10~2000μmであり、より好ましくは50~800μmである。
【0052】
基板310の大きさは特に限定されないが、通常の方法では大面積になるほど膜厚が不均一になりやすく、本発明の効果が顕著となる。したがって、本発明は、基板面積が100mm以上、又は、直径2インチ(50mm)以上のものを用いることが好ましく、直径が2~8インチ(50~200mm)あるいはそれ以上の基板を用いることもできる。
【0053】
(酸化ガリウム半導体膜の製造方法)
次に、図1を参照しながら、本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法の一例を説明する。
【0054】
まず、ガリウムを含む原料溶液104aをミスト発生源104内に収容し、基板310をホットプレート308上に直接又は成膜室300の壁を介して設置し、ホットプレート308を作動させる。次に、流量調節弁103a、103bを開いてキャリアガス源102a、102bからキャリアガスを成膜室300内に供給し、成膜室300の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量と希釈用キャリアガスの流量をそれぞれ調節する。
【0055】
次に、ミスト発生工程として、超音波振動子106を振動させ、その振動を、水105aを通じて原料溶液104aに伝播させることによって、原料溶液104aをミスト化してミストを発生させる。
【0056】
次に、キャリアガス供給工程として、ミストを搬送するためのキャリアガスをミスト化部120に供給する。
【0057】
次に、搬送工程として、ミスト化部120と成膜室300とを接続する供給管109を介して、ミスト化部120から成膜室300へと、ミストをキャリアガスにより搬送する。ミストは中板321の上方から供給し、一方向からだけでなく、複数の方向から供給してもよい。
【0058】
次に、整流工程として、成膜室300において基板310の表面に供給するミスト及びキャリアガスの流れが、基板310の外周から基板310の中心に向かう流れとなるように整流する。成膜室300内の中板321によりミストは整流され、基板310面に平行に均一な流れをつくる。
【0059】
次に、成膜工程として、整流されたミストを熱処理して基板310上に成膜を行う。ミストは成膜室300内でホットプレート308の熱により熱反応して、基板310上に成膜される。
【0060】
成膜室300では、ミストを加熱し熱反応を生じさせて、基板310上に成膜を行う。熱反応は、加熱によりミストが反応すればよく、反応条件等も特に限定されない。原料や成膜物に応じて適宜設定することができる。例えば、加熱温度は120~600℃の範囲であり、好ましくは200℃~600℃の範囲であり、より好ましくは300℃~550℃の範囲とすることができる。
【0061】
また、熱反応は、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下、空気雰囲気下及び酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、成膜物に応じて適宜設定すればよい。また、反応圧力は、大気圧下、加圧下又は減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、大気圧下での成膜であれば、装置構成が簡略化できるので好ましい。
【0062】
ここで、排気工程として、基板310の上方へ廃ガスを排気する。成膜室300内のガスは、基板310の上方に設けられた排気配管312から成膜室300の外部へと排気される。
【0063】
このようにしてミストの供給を行うことで、成膜室300内に導入されたミストは、基板310上の広範囲に渡って均一かつ高密度となるので、膜厚の面内分布を改善するとともに成膜速度も高めることができる。
【0064】
(バッファ層)
上記酸化ガリウムを含む膜の成膜にあたっては、基板と当該膜の間に適宜バッファ層を設けてもよい。バッファ層の材料としては、Al、Ga、Cr、Fe、In、Rh、V、Ti、Ir等が好適に用いられる。バッファ層の形成方法は特に限定されず、スパッタ法、蒸着法など公知の方法により成膜することができるが、上記のようなミストCVD法を用いる場合は、バッファ層の原料溶液を適宜変更するだけで形成でき簡便である。具体的には、アルミニウム、ガリウム、クロム、鉄、インジウム、ロジウム、バナジウム、チタン、イリジウム、から選ばれる1種又は2種以上の金属を、錯体又は塩の形態で水に溶解又は分散させたものをバッファ層の原料水溶液として好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。また、上記金属を、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸等に溶解したものも塩の水溶液として用いることができる。バッファ層の原料溶液の溶質濃度は0.01~1mol/Lが好ましい。他の条件についても、上記と同様にすることでバッファ層を形成することが可能である。バッファ層を所定の厚さ成膜した後、上記の方法によりガリウムを主成分とする酸化物半導体膜を成膜する。バッファ層の厚さとしては0.1μm~2μmが好ましい。
【0065】
(熱処理)
また、本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法で得られた膜を、200~600℃で熱処理してもよい。これにより、膜中の未反応種などが除去され、より高品質の積層構造体を得ることができる。熱処理は、空気中、酸素雰囲気中で行ってもよいし、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもかまわない。熱処理時間は適宜決定されるが、例えば、5~240分とすることができる。
【0066】
<第二の実施態様>
前述した第一の実施態様における成膜装置および酸化ガリウム半導体膜の製造方法の他に、以下のような装置および方法とすることも可能である。
第二の実施態様について、まず成膜装置について説明する。第一の実施態様ではミストおよびキャリアガスが、基板310の外周(外周側)から基板310の中心に向かう流れとなるような整流が得られるものであったが、第二の実施態様では、より広い形態として、基板310の表面に沿った流れとなるように整流されるものである。すなわち、ミストおよびキャリアガスが、基板310の表面に沿って排気配管312の開口部に向かう流れとなるように整流されるものであり、このような装置であっても、簡便に、従来のものに比べて膜厚の面内均一性や成長速度の改善が図れる。排気管312の開口部の位置は基板310の中心の近くでも良いし、離れていても良い。
【0067】
また、中板321の横方向位置調整機構も設けておくことで、成膜状況に応じた供給口301の移動に合わせて中板321の位置を変えることができる。
また排気配管312に関して、排気配管312の位置調整機構を設けておくことにより、成膜状況に応じて排気配管312の下端の開口部と基板310との相対位置を変えることができる。この場合、中板321が排気配管312に固定されて一体的に位置を変えてもよく、排気配管312が貫通する中板321の開口部を排気配管312のサイズよりも大きくしておき、その開口部の開口範囲を排気配管312が移動する構成としてもよい。
【0068】
成膜室300を以上の構成とすることで、ミストは、中板321により整流され、同じ流速で基板310の表面に沿って(特には基板310の表面に平行に)均一に流すことが可能となる。さらに、配置された排気配管312の開口部に近づくほど面積あたりの体積流量は増加するため、成膜によりミストが消費されていくのを見かけ上抑制する効果がある。これらの効果により、高い成膜速度で、膜厚のばらつきを極めて小さくすることができる。成膜状況に応じて排気配管312の開口の位置を適宜変えることにより、膜厚のばらつきを更に小さくすることができる。
特には、例えば中板321の中心とその開口部の中心(排気配管312の開口部の位置)と基板載置部313の中心とが一致するように配置することができ、このようなより一層簡便な構成で、より確実に、ミストおよびキャリアガスを、同じ流速で基板310の外周(外周側)から基板310の表面に沿ってその中心方向に向かって(中心方向に位置する排気配管312の開口部に向かって)均一に流すことが可能となる。なおこの場合は、第一の実施態様と実質的に同様の構成となる。
このように、中板321の中心、排気配管312、基板310の中心の相対位置を、成膜前、あるいは成膜中の成膜状況などに応じて適宜変更可能な構成とすることができる。
なお、上記の中板321の横方向位置調整機構や排気配管312の位置調整機構自体は、第一の実施態様においても備えることができる。第一の実施態様では、繰り返し説明しているように、結果として、ミストやキャリアガスの流れが、中板321により基板310の外周(外周側)から中心に向かう流れとなるように整流されるものであればよい。
【0069】
また第二の実施態様における酸化ガリウム半導体膜の製造方法としては、整流工程のとき、成膜室300において基板310の表面に供給するミスト及びキャリアガスの流れが、基板310の表面に沿った流れ(特には基板310の表面に平行な流れ)となるように整流する。成膜室300内の中板321により、ミストやキャリアガスを上記のように整流することが可能であり、簡便に、膜厚の面内均一性を高く、成膜速度を大きく改善する効果を得ることができる。
このとき、特には、基板310の外周(外周側)から基板310の中心に向かう流れとなるように整流することができる。前述したように例えば中板321の中心とその開口部の中心(排気配管312の開口部の位置)と基板載置部313の中心とが一致するように配置することで、より一層簡便かつ確実に上記効果を得られる。なおこの場合、第一の実施態様の方法と実質的に同様の方法となる。
【実施例0070】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0071】
(実施例1)
(成膜装置)
図1を参照しながら、本実施例で用いた成膜装置101(第一の実施態様)を説明する。成膜装置101は、キャリアガスを供給するキャリアガス源102aと、キャリアガス源102aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103aと、希釈用キャリアガスを供給する希釈用キャリアガス源102bと、希釈用キャリアガス源102bから送り出される希釈用キャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103bと、原料溶液104aが収容されるミスト発生源104と、水105aが収容された容器105と、容器105の底面に取り付けられた超音波振動子106と、成膜室300と、ミスト発生源104から成膜室300までをつなぐ石英製の供給管109と、成膜室300の内部に設けたホットプレート308とを備えている。基板310は成膜室300内に設置され、ホットプレート308で加熱される。
【0072】
成膜室300内には中板321を備え、その直径は120mmとし、中心に直径10mmの開口を設けて排気配管312と接続した。中板321と成膜室300の側壁との空隙322は4mm、中板321と基板310との空隙323も4mmとした。中板321から延伸する排気配管312は、成膜室300の天井を貫通させた。
【0073】
(基板)
基板310として直径4インチ(100mm)のc面サファイア基板を、成膜室300内のホットプレート308に載置し、ホットプレート308を作動させて温度を500℃に昇温した。基板310の下には直径101mm、高さ13mmのCuブロックを置いて、温度一定に保ったまま基板310をかさ上げした。
【0074】
(原料溶液)
臭化ガリウム0.1mol/Lの水溶液を調整し、さらに48%臭化水素酸溶液を体積比で10%となるように含有させ、これを原料溶液104aとした。
【0075】
(成膜)
上述のようにして得た原料溶液104aをミスト発生源104内に収容した。次に、流量調節弁103a、103bを開いてキャリアガス源102a、102bからキャリアガスを成膜室300内に供給し、成膜室300の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を10L/分に、希釈用キャリアガスの流量を30L/分にそれぞれ調節した。キャリアガスとして酸素を用いた。
【0076】
次に、超音波振動子106を2.4MHzで振動させ、その振動を、水105aを通じて原料溶液104aに伝播させることによって、原料溶液104aをミスト化してミストを生成した。このミストを、キャリアガスによって供給管109を経て成膜室300内に導入した。大気圧下、500℃の条件で、成膜室300内でミストを熱反応させて、基板310上にコランダム構造を有する酸化ガリウム(α-Ga)の薄膜を形成した。成膜時間は30分とした。
【0077】
基板310上に形成した薄膜について、測定箇所を基板310上の面内の17点として、光干渉式の膜厚計を用いて膜厚を測定し、平均膜厚、成膜速度、標準偏差を算出した。
その結果、平均膜厚5.0μm、成膜速度10.0μm/時間、標準偏差0.3μmであった。
【0078】
(実施例2)
キャリアガスの流量を5L/分、希釈用キャリアガスの流量を15L/分とした以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。その結果、平均膜厚2.4μm、成膜速度4.8μm/時間、標準偏差0.1μmであった。
【0079】
(実施例3)
希釈用キャリアガスの流量を60L/分とした以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。その結果、平均膜厚4.7μm、成膜速度9.4μm/時間、標準偏差0.2μmであった。
【0080】
(比較例)
成膜室300の中板321を設けなかったこと以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。その結果、平均膜厚0.7μm、成膜速度1.4μm/時間と、殆ど成膜できなかった。また、標準偏差は0.4μmとなり、膜厚が薄いことを勘案するとばらつきは非常に大きい結果となった。
【0081】
以上のように、本発明に係る成膜装置の構成とし、本発明に係る酸化ガリウムの製造方法を行うことで、面積の大きい基板を用いたとしても、成膜速度に優れ、また、面内均一性に優れた十分な膜厚の酸化ガリウム膜を成膜することができた。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0083】
101…成膜装置、
102a…キャリアガス源、 102b…希釈用キャリアガス源、
103a、103b…流量調節弁、
104…ミスト発生源、 104a…原料溶液、
105…容器、 105a…水、 106…超音波振動子、
109…供給管、 116…発振器、
120…ミスト化部、 130…キャリアガス供給部、
300…成膜室、 301…供給口、
308…ホットプレート、 310…基板、
312…排気配管、 313…基板載置部、 314…基板載置面、
321…中板、 322…中板~成膜室側壁間空隙、 323…中板~基板間空隙。
図1
図2
図3