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特開2023-68091自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用
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  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図1a
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図1b
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図2
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図3
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図4
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図5
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図6
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図7
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図8
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図9
  • 特開-自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068091
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20230509BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K9/20
A61P37/02
A61P29/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K9/48
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P25/00
A61K47/10
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044688
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2021068872の分割
【原出願日】2015-05-15
(31)【優先権主張番号】62/156,105
(32)【優先日】2015-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/159,134
(32)【優先日】2015-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/993,907
(32)【優先日】2014-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514002891
【氏名又は名称】ラニ セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メルセデス モラーレス
(72)【発明者】
【氏名】ミル イムラン
(72)【発明者】
【氏名】ラディカ コルポル
(72)【発明者】
【氏名】ミル ハシム
(57)【要約】
【課題】自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用を提供する。
【解決手段】自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用であって、医薬品は、固体形態のAI抗体を含む治療用調製物で構成され、または含み、患者への経口投与に適した嚥下可能なカプセル中に配置されるように構成された、固形組織穿通部材を備え、固形組織穿通部材は、患者の小腸の回腸より前の位置でpHに応答して組織穿通部材に対して力が適用されることによって小腸壁またはその周囲組織に穿通および挿入されるように適合され、これによりパイエル板によるAI抗体に対する免疫応答を回避し、挿入後、固形組織穿通部材は、小腸壁またはその周囲組織の中で溶解し、AI抗体を患者の血流中に放出する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患および/または炎症性状態を処置するための医薬品の製造における抗インターロイキン抗体(AI抗体)の使用であって、前記医薬品は、固体形態の前記AI抗体を含む治療用調製物で構成され、または含み、患者への経口投与に適した嚥下可能なカプセル中に配置されるように構成された、固形組織穿通部材を備え、
前記固形組織穿通部材は、前記患者の小腸の回腸より前の位置でpHに応答して前記組織穿通部材に対して力が適用されることによって小腸壁またはその周囲組織に穿通および挿入されるように適合され、これによりパイエル板による前記AI抗体に対する免疫応答を回避し、
挿入後、前記固形組織穿通部材は、小腸壁またはその周囲組織の中で溶解し、前記AI抗体を前記患者の血流中に放出する、抗インターロイキン抗体の使用。
【請求項2】
前記自己免疫疾患および/または前記炎症性状態は、関節リウマチ、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、線維症、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症および強直性脊椎炎から1つまたはそれ以上選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記固形組織穿通部材は、前記小腸壁またはその周囲組織の中で溶解し、前記AI抗体を前記血流中に放出する生分解性材料を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記治療用調製物は、圧縮プロセスによって形成される造形塊である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記造形塊中の前記AI抗体の生物学的活性が圧縮前のものに対して少なくとも70%である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記造形塊は、約1.00~1.15mg/mmの間の範囲、または、1.02~1.06mg/mmの間の範囲の密度を有する、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記固形組織穿通部材は、前記嚥下可能なカプセル中に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記固形組織穿通部材は、前記固形組織穿通部材に直接または間接的に力を適用し、前記固形組織穿通部材を前記小腸壁またはその周囲組織に前進させるように構成された前進手段に動作可能に結合される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記医薬品の毎日投与により放出される前記AI抗体の毎日血漿濃度の定常状態変動は、毎月又は隔週の前記AI抗体の皮下注射と比較して有意に減少する、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記AI抗体は、前記小腸壁またはその周辺組織から前記血流中へ放出されてCmaxに達する期間が、前記AI抗体の血管外注射用量がCmaxに達する期間よりも短い、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記AI抗体は、セクキヌマブである、請求項7に記載の使用。
【請求項12】
前記AI抗体は、イキセキズマブである、請求項7に記載の使用。
【請求項13】
前記AI抗体は、ブロダルマブである、請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2014年5月15日に出願された「Pharmaceutical Compositions And Methods For Fabrication Of Solid Masses Comprising Polypeptides And/Or Proteins」との表題の米国仮特許出願第61/993,907号;2015年5月1日に出願された「Pharmaceutical Compositions And Methods For Fabrication Of Solid Masses Comprising Polypeptides And/Or Proteins」との表題の米国仮特許出願第62/156,105号;および2015年5月8日に出願された「Anti-Interleukin Antibody Preparations For Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」との表題の米国仮特許出願第62/159,134号(これらの全ては、全ての目的のために参考として完全に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本明細書に記載する実施形態は、タンパク質およびポリペプチドを含む固体塊を含む薬学的組成物および薬学的組成物の作製方法に関する。より具体的には、本明細書に記載する実施形態は、生物学的活性を有するタンパク質および/またはポリペプチドを含む固体造形塊を含む薬学的組成物および薬学的組成物の生産方法であって、タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の少なくとも一部が固体塊の形成後に維持される、薬学的組成物および薬学的組成物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、様々な疾患を処置するための新薬の開発は増加し続けているが、タンパク質、抗体およびペプチドを含む多くのものは、容易に経口もしくは他の形態の送達用の固体形に形成することができないおよび/またはカプセル化することができないため、適用が限られている。この分野における1つの難題は、タンパク質、ペプチドまたは抗体を含む薬物の錠剤または他の固体形態への作製プロセスが、その作製プロセスによるタンパク質構造の破壊に起因して薬物の生物活性の喪失をもたらしうることである。これは、多くのタンパク質がそれらの生物学的活性を規定する複雑な内部構造を有することに起因する。タンパク質および/またはポリペプチド構造の破壊は、その非活性化またはその生物活性の相当な低下をもたらしうる。そのような破壊は、作製プロセス、例えば、成形、圧縮、粉砕(milling)、研削(grinding)もしくはカプセル化または他の関連プロセスに起因し得る。必要なのは、タンパク質、抗体およびペプチドなどの生物活性化合物を、該化合物の生物活性を有意に喪失することなく、ヒトまたは他の哺乳動物への経口または他の形態の送達用の固体または半固体形に形成するための方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の様々な実施形態は、1つまたは複数の薬物を含む固体造形塊を含む薬学的組成物、および造形塊の生産方法を提供する。薬物は、1つまたは複数のポリペプチドまたはタンパク質、例えば様々な免疫グロブリンを含んでいてもよい。多くの実施形態は、1つまたは複数のタンパク質またはポリペプチドを含む固体造形塊を形成する方法であって、造形塊が前駆体材料の造形によって形成され、造形塊中のタンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の少なくとも一部が形成後に保存されるものである方法を提供する。多くの実施形態において、造形は、圧縮力がタンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の低下を最小にするように選択される、前駆体材料の圧縮によって行われる。他の造形方法も企図される。典型的に、前駆体材料は、薬物と1つまたは複数の賦形剤とを含む粉末混合物を含む。前駆体材料は、液体、スラリーまたはペーストも含んでいてもよい。賦形剤は、滑沢剤、バインダー、増量剤などをもう1つ含んでいてもよい。造形塊は、錠剤、微小錠剤、ピルまたはスラグ形状の形態であってもよい。1つまたは複数の実施形態によると、形成プロセスの実施形態を使用して製造される造形塊は、タンパク質またはペプチドの生物活性の最小レベルと相関関係がある別の特性、例えば、密度または(造形塊を製剤化するために使用される粉末の)粒子粒度を有することができる。また、その相関関係のある特性は、造形塊の所与のロットの中で、ロット間でも、選択された範囲内で一貫して維持されうる。本明細書に記載する固体塊の実施形態を、処置すべき状態に適している任意の投与経路によって投与するために、任意の好適な薬物送達システムと併用するように構成することができる。そのような投与経路としては、限定ではないが、経口、舌下、非経口、静脈内、筋肉内、脳室内、心臓内経路を挙げることができる。例えば、1つの実施形態によると、インスリン含有微小錠剤を経口摂取して小腸に送達することができ、この場合、薬物は小腸壁に送達され、そこで錠剤が溶解してその薬物を血流に放出する。別の実施形態では、インスリン含有微小錠剤を皮下に(例えば筋肉内に)注射または別様に配置することができ、そこでそれらは溶解してインスリンを血流に放出する。
【0005】
1つの態様では、本発明は、哺乳動物の体内で生物学的活性を有する薬物または他の治療薬を含む固体造形塊を含む薬学的組成物であって、薬物の生物学的活性の少なくとも一部が粉末などの前駆体材料からの形成後に維持される、薬学的組成物を提供する。生物学的活性を(例えば、生物活性アッセイを化学アッセイに相関させることによって)形成後の薬物の構造完全性と相関させることができ、その結果、組成レベルで、薬物の(例えば、重量ベースでの)選択された百分率が前駆体材料中のものと比較して形成後に維持される。通常は、形状を圧縮プロセス(例えば、圧縮成形)によって形成するが、非圧縮成形などの他のプロセスも企図される。薬物は、造形塊中の該薬物の生物学的活性が圧縮前のものに対して少なくとも70%、より好ましくは圧縮前のものに対して少なくとも90%、さらにいっそう好ましくは少なくとも95%である、タンパク質、ペプチドまたは抗体を含みうる。これらの数値は、(例えば、上記の重量組成についての化学的アッセイに生物学的活性を相関させることによって)造形塊中に残存する薬物の前駆体材料中のものに対する重量百分率にも相当しうる。これらの実施形態および関連実施形態では、造形塊は、約1.00~1.15mg/mmの間の範囲、およびより好ましい実施形態では、1.02~1.06mg/mmの間の範囲の密度を有することができる。形としては通常はペレットの形状が挙げられるであろうが、錠剤、円錐、円柱、立方体、球または他の同様の形状を有してもよい。
【0006】
様々な実施形態によると、薬物および他の賦形剤に加えて、小腸などの腸(または別の組織部位、例えば筋肉内部位)の壁で溶解または別様に分解して薬物を腸壁に放出し、そこで薬物が拡散するか、別様に腸壁の毛細血管床に輸送され、その後、循環系によって全身に運ばれるように構成されている生分解性材料から、造形塊を形成することができる。造形塊は、そのような生分解性材料から創出される組織穿通部材などの構造に挿入されるまたは別様に組み込まれることもある。組織穿通部材に対して力を適用することによって小腸壁(またはGI管の他の内腔)に穿通および挿入されるように構成されている組織穿通部材。好適な生分解性材料としては、様々な糖、例えばマルトースおよびスクロース、様々な乳酸ポリマー、例えばポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA);グリコール酸・乳酸共重合体(polyglycolic lactic acid)(PGLA);様々なポリエチレン、様々なセルロース、例えばHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、PVOH(ポリビニルアルコール)、シリコーンゴム、および当技術分野において公知の他の生分解性ポリマーが挙げられる。生分解性ポリマーおよび造形塊の材料および他の特性を選択して、腸壁で選択可能な分解速度を生じさせることができる。1つまたは複数の実施形態によると、分解速度を選択して、tmax、Cmax、t1/2などのような様々な薬物動態パラメータを達成することができる。もう1つの特異的実施形態では、造形塊の材料特性を選択して、選択された薬物がCmaxに、該薬物の血管外注射用量がCmaxに達する期間より短い期間で達するように造形塊を腸壁内で分解させることができる。
【0007】
1つの実施形態では、造形塊中の薬物は、糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のためのインスリンなどのグルコース調節タンパク質を含む。インスリンをいずれの好適な供給源から得てもよい(例えば、ヒトインスリンおよび/または組換えDNA法を使用して生成されたもの)。別の適用では、薬物は、グルコース調節障害の処置のためのインクレチン(例えばエキセナチド)などのグルコース調節タンパク質を含む。これらの実施形態および関連実施形態では、圧縮または他の成形プロセスを、インスリンもしくはインクレチンまたは他のグルコース調節タンパク質の生物学的活性を保存するように構成して、薬物が患者の身体に放出されると薬物による糖尿病または他のグルコース調節障害の処置が可能になるようにすることができる。
【0008】
さらに他の実施形態は、造形塊中の薬物または他の治療薬が抗体、例えば、IgG、または抗体のTNF阻害クラスからの抗体、例えばアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)、セルトリズマブ ペゴル(シムジア)、ゴリムマブ(シンポニー)もしくはエタネルセプト(エンブレル)を含み、抗体の生物学的活性が、形成前の前駆体材料のものと比較して造形塊の形成後に約70、75、80、85、90または95%の量で保存される、造形塊およびそれらの作製方法を提供する。
【0009】
さらに他の実施形態は、薬物が、1つもしくは複数のインターロイキンまたはそれらの受容体と結合する抗体などのインターロイキン中和タンパク質を含み、抗体の生物学的活性が、形成前の前駆体材料のものと比較して造形塊の形成後に70、75、80、85、90または95%の量で保存される、造形塊およびそれらの作製方法を提供する。そのようなインターロイキンは、インターロイキン1~36(例えば、インターロイキン1、インターロイキン17a)ならびにそれらのそれぞれの類似体および誘導体をもう1つ含むことができる。インターロイキン中和タンパク質を本明細書ではINタンパク質とも(およびインターロイキン結合タンパク質またはIBタンパク質とも)呼び、抗インターロイキン抗体を本明細書ではAI抗体と呼び、抗体のインターロイキン-17ファミリーに対する抗体をAI17抗体と呼ぶ。AI抗体または他のINタンパク質は、インターロイキン1~36のもう1つについての生物学的作用を、選択されたインターロイキンがそのインターロイキンの受容体と結合する能力を妨げるまたは減少させることによって中和および/または阻害できる。
【0010】
特定のIBタンパク質によって生ずるそのような中和作用は、IBタンパク質を選択して、1)選択されたインターロイキンと結合させて、そのインターロイキンのそのインターロイキンの受容体との結合を防止または阻害し、そしてまた1つもしくは複数の生物学的作用を生じさせることによって、または2)その特定のインターロイキンの受容体と結合させて、該インターロイキンによる受容体の活性化および1つもしくは複数の生物学的作用の誘発を防止することによって、達成することができる。例えば、1つの実施形態によると、インターロイキン-17と結合するセクキヌマブなどの抗体を選択することができる。他の実施形態によると、インターロイキン17の受容体と結合するブロダルマブなどの抗体を選択することができる。AI抗体または他のIBタンパク質を含む造形塊の1つまたは複数の実施形態の使用に起因して阻害される生物学的作用としては、次のうちの1つまたは複数を挙げることができる:Th1モジュレーション、Th2モジュレーション(Nakanishi K.ら、(2001年)Cytokine and Growth Factor Rev.12巻:53~72頁)、Nkモジュレーション、好中球モジュレーション、単球-マクロファージ系統モジュレーション、好中球モジュレーション、好酸球モジュレーション、B細胞モジュレーション、サイトカインモジュレーション、ケモカインモジュレーション、接着分子モジュレーションおよび細胞動員モジュレーション。また、1つまたは複数の実施形態によると、AI抗体または他のINタンパク質を選択して、選択されたインターロイキンの生物学的作用を阻害して、その選択されたインターロイキンの活性に関連する様々な自己免疫および/または炎症状態を処置することができる。好ましい実施形態では、そのような状態は、関節リウマチ、乾癬(尋常性乾癬(plaque psoriasis)を含む)、乾癬性関節炎、線維症、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症および強直性脊椎炎をもう1つ含むことができる。
【0011】
造形塊に組み込むINタンパク質を免疫グロブリン分子、例えば、抗体または当技術分野において公知のその機能的改変体から選択してもよく、前述の改変体は、インターロイキン結合タンパク質の特徴的結合特性を保持するものである。免疫グロブリンは、完全長抗体に相当することもあり、またはその抗原結合部分に相当することもある。使用することができる特異的免疫グロブリン分子の例としては、scFV(一本鎖可変断片)、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2、Fv(可変断片)、ジスルフィド結合Fv、および二特異性または二重特異性抗体を挙げることができるが、これらに限定されない。最も好ましくは、結合タンパク質はヒト抗体である。
【0012】
多くの実施形態では、造形塊におよび/または造形塊として製剤化される、選択されたAI抗体、AI-17抗体または他のINタンパク質の用量は、本明細書に記載する選択された状態(例えば、乾癬、関節リウマチなど)を処置しながら、該抗体の注射用量(例えば静脈内用量、筋肉内用量、皮下用量など)に関連する有害作用を最小にするように用量設定する(titrate)ことができる。そのような有害作用としては、限定ではないが、アナフィラキシーショックまたは他のアレルギー反応(例えば、浮腫、流涙(water eye)、呼吸器の鬱血)、INタンパク質に対する免疫原性反応(患者自身の抗体による送達INタンパク質の免疫原性中和を含む)、頭痛、発熱および他の関連作用のうちの1つまたは複数を挙げることができる。特定の実施形態では、これは、AI抗体または他のINタンパク質の送達用量を、AI抗体についての通常投与される毎月用量、例えば、セクキヌマブ、ブロダルマブまたはイキセキズマブについてのものに対して1日用量まで漸増することによって達成することができる。免疫応答を最小にする場合についてのこの結果は、本明細書中でさらに詳細に論じるように、AI抗体の用量を小腸の上部または中央部に送達し、その腸の下部、例えば、パイエル板を含有する回腸を避けることによって達成することもできる。AI抗体を(注射によるものに対して)より少ない用量で小腸に送達することの他の利点は、i)より高い治癒比およびii)AI抗体または他のINタンパク質についての血漿濃度の変動低減のうちの1つまたは複数を含む。
【0013】
さらに他の実施形態は、薬物を含む造形塊を調製する方法であって、3D印刷法を使用して薬物上に外側コーティングまたは外層を形成して選択的に造形された塊を製造する方法を提供する。3D印刷法の使用によって、造形塊をその塊に圧力を適用せずに形成することが可能になる。使用時、そのような方法は、タンパク質変性の減少および/または薬物に対する他の分解作用の減少に起因して最終造形塊中の薬物の収率を向上させる。そしてまたこのことが最終造形塊中の薬物の生物活性を向上させる。3D印刷の使用によって、型または他の関連デバイスを使用せずに様々な形状を生成することも可能になり、汚染の可能性が低減され、無菌性が向上される。そのような形状としては、例えば、矢尻の形状、長方形、ピラミッド、球、半球、円錐などを挙げることができる。3D印刷法によって、薬物塊の形状およびサイズを、個々の患者のパラメータ、例えば、患者の体重、病状および特定の医療レジメン(例えば、薬の服用1日1回、2回など)のうちの1つまたは複数に合わせて迅速にカスタマイズすることも可能になる。さらに他の実施形態では、3D印刷法を使用して、二峰性送達形態、例えば急速放出および緩徐放出を有するように構成された造形塊を製造することができる。
【0014】
他の実施形態は、ペプチド、タンパク質または免疫グロブリンなどの薬物を含む薬学的組成物の複数の造形塊を含む在庫品(inventory)であって、造形塊の特性、例えば、薬物の形成後の生物学的活性および/または造形塊の密度が実質的に全在庫品について選択範囲内で維持される、在庫品を提供する。使用時、そのような実施形態は、本明細書に記載する造形塊の実施形態を使用して送達される1つまたは複数の選択された薬物について均一な投薬量および薬物動態パラメータを維持する能力をもたらす。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳動物の体内で生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドを含む造形塊であって、前記造形塊は、前記タンパク質または前記ポリペプチドを含む前駆体材料の圧縮によって形成されたものであり、前記造形塊中の生物学的に活性なタンパク質またはポリペプチドの量は、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約80%であり、前記造形塊は、約0.8~約1.10mg/mmの範囲の密度を有する、造形塊。
(項目2)
前記密度が約1.0~約1.01mg/mmの範囲である、項目1に記載の造形塊。
(項目3)
前記前駆体材料が50~450μmの範囲の粒子サイズを有する、項目1に記載の造形塊。
(項目4)
前記圧縮が型または治具で行われる、項目1に記載の造形塊。
(項目5)
前記タンパク質または前記ポリペプチドを含む粉末の圧縮によって形成される、項目1に記載の造形塊。
(項目6)
前記タンパク質または前記ポリペプチドを含むスラリーの圧縮によって形成される、項目1に記載の造形塊。
(項目7)
前記タンパク質または前記ポリペプチドが免疫グロブリンを含む、項目1に記載の造形塊。
(項目8)
前記免疫グロブリンが抗体を含む、項目7に記載の造形塊。
(項目9)
生物学的活性が抗原に対する親和性を含む、項目1に記載の造形塊。
(項目10)
ペレットまたは円柱の形状を有する、項目1に記載の造形塊。
(項目11)
錠剤の形状を有する、項目1に記載の造形塊。
(項目12)
組織を穿通する形状を有する、項目1に記載の造形塊。
(項目13)
小腸壁で崩壊して前記タンパク質または前記ポリペプチドを放出するように構成されている、項目1に記載の造形塊。
(項目14)
薬学的賦形剤を含む、項目1に記載の造形塊。
(項目15)
前記薬学的賦形剤が、滑沢剤、結合剤または増量剤の少なくとも1つを含む、項目14に記載の造形塊。
(項目16)
前記タンパク質または前記ポリペプチドの前記生物学的活性が、前記造形塊が保管される少なくとも約6ヶ月の期間にわたって維持される、項目1に記載の造形塊。
(項目17)
インスリンを含む、項目1に記載の造形塊。
(項目18)
約0.2~約0.8mgの間のインスリンを含む、項目17に記載の造形塊。
(項目19)
前記タンパク質または前記ポリペプチドが、糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンを含む、項目1に記載の造形塊。
(項目20)
前記インクレチンがエキセナチドを含む、項目19に記載の造形塊。
(項目21)
約1~5mgの間のエキセナチドを含む、項目20に記載の造形塊。
(項目22)
TNF阻害抗体を含む、項目1に記載の造形塊。
(項目23)
前記TNF阻害抗体がアダリムマブを含む、項目22に記載の造形塊。
(項目24)
約1~4mgの間のアダリムマブを含む、項目23に記載の造形塊。
(項目25)
インターロイキン中和抗体(AI抗体)を含む、項目1に記載の造形塊。
(項目26)
前記AI抗体が、サイトカインのインターロイキン-17ファミリーのメンバーに対する抗体を含む、項目25に記載の造形塊。
(項目27)
前記AI抗体がセクキヌマブである、項目26に記載の造形塊。
(項目28)
前記AI抗体がイキセキズマブである、項目26に記載の造形塊。
(項目29)
前記AI抗体がブロダルマブである、項目26に記載の造形塊。
(項目30)
前記造形塊中のAI抗体の用量が約1~5mgの範囲である、項目26から29のいずれか一項に記載の造形塊。
(項目31)
インスリンを含む造形塊であって、前記造形塊は、インスリンを含む前駆体材料の圧縮によって形成されたものであり、前記造形塊中の生物学的に活性なインスリンの量は、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約80%であり、前記造形塊は、約0.9~約1.13mg/mmの範囲の密度を有する、造形塊。
(項目32)
前記密度が約0.98~約1.10mg/mmの範囲である、項目31に記載の造形塊。
(項目33)
前記造形塊中の生物学的に活性なインスリンの量が、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約95%である、項目31に記載の造形塊。
(項目34)
約0.2~約0.8mgの間のインスリンを含む、項目31に記載の造形塊。
(項目35)
前記インスリンがヒトインスリンを含む、項目31に記載の造形塊。
(項目36)
糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のためのインクレチンを含む造形塊であって、前記造形塊は、インクレチンを含む前駆体材料の圧縮によって形成されたものであり、前記造形塊中の生物学的に活性なインスリンの量は、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約80%であり、前記造形塊は、約0.9~約1.13mg/mmの範囲の密度を有する、造形塊。
(項目37)
前記インクレチンがエキセナチドを含む、項目36に記載の造形塊。
(項目38)
約1~5mgの間のエキセナチドを含む、項目37に記載の造形塊。
(項目39)
TNF阻害抗体を含む造形塊であって、前記造形塊は、TNF阻害抗体を含む前駆体材料の圧縮によって形成されたものであり、前記造形塊中の生物学的に活性なTNF阻害抗体の量は、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約75%であり、前記造形塊は、約0.8~約1.10mg/mmの範囲の密度を有する、造形塊。
(項目40)
前記密度が約0.85~約1.05mg/mmの範囲である、項目39に記載の造形塊。
(項目41)
前記造形塊中の生物学的に活性なTNF阻害抗体の量が、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約80%である、項目39に記載の造形塊。
(項目42)
前記TNF阻害抗体がアダリムマブを含む、項目39に記載の造形塊。
(項目43)
約1~4mgの間のアダリムマブを含む、項目42に記載の造形塊。
(項目44)
インターロイキン中和抗体(AI抗体)を含む造形塊であって、前記造形塊は、前記AI抗体を含む前駆体材料の圧縮によって形成されたものであり、前記造形塊中の生物学的に活性なAI抗体の量は、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約75%であり、前記造形塊は、約0.8~約1.10mg/mmの範囲の密度を有する、造形塊。
(項目45)
前記AI抗体が、サイトカインのインターロイキン-17ファミリーのメンバーに対する抗体を含む、項目44に記載の造形塊。
(項目46)
前記AI抗体がセクキヌマブである、項目45に記載の造形塊。
(項目47)
前記AI抗体がイキセキズマブである、項目45に記載の造形塊。
(項目48)
前記AI抗体がブロダルマブである、項目45に記載の造形塊。
(項目49)
前記造形塊中のAI抗体の用量が約1~5mgの範囲である、項目45から48のいずれか一項に記載の造形塊。
(項目50)
哺乳動物の体内で生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドを含む造形塊であって、前記造形塊は、前記タンパク質または前記ポリペプチドを含む前駆体材料の圧縮によって形成されたものであり、前記造形塊中の生物学的に活性なタンパク質またはポリペプチドの量は、前記前駆体材料中の前記量に対して少なくとも約80%であり、前記前駆体材料は、50~450μmの範囲の粒子サイズを有する、造形塊。
(項目51)
前記前駆体材料が100~400μmの範囲の粒子サイズを有する、項目50に記載の造形塊。
(項目52)
前記タンパク質または前記ポリペプチドが免疫グロブリンを含む、項目50に記載の造形塊。
(項目53)
前記免疫グロブリンが抗体を含む、項目52に記載の造形塊。
(項目54)
抗体がTNF抗体またはインターロイキン中和抗体を含む、項目52に記載の造形塊。(項目55)
前記生物学的活性が抗原に対する親和性を含む、項目52から54のいずれか一項に記載の造形塊。
(項目56)
前記タンパク質がグルコース調節タンパク質を含む、項目50に記載の造形塊。
(項目57)
前記グルコース調節タンパク質が、インスリン、インクレチンまたはエキセナチドを含む、項目56に記載の造形塊。
(項目58)
前記圧縮が型または治具で行われる、項目50に記載の造形塊。
(項目59)
前記タンパク質または前記ポリペプチドを含む粉末の圧縮によって形成される、項目50に記載の造形塊。
(項目60)
前記タンパク質または前記ポリペプチドを含むスラリーの圧縮によって形成される、項目50に記載の造形塊。
(項目61)
aまたは円柱またはペレットの形状を有する、項目50に記載の造形塊。
(項目62)
錠剤の形状を有する、項目50に記載の造形塊。
(項目63)
組織を穿通する形状を有する、項目50に記載の造形塊。
(項目64)
小腸壁で崩壊して前記タンパク質または前記ポリペプチドを放出するように構成されている、項目50に記載の造形塊。
(項目65)
薬学的賦形剤を含む、項目50に記載の造形塊。
(項目66)
前記薬学的賦形剤が、滑沢剤、結合剤または増量剤の少なくとも1つを含む、項目65に記載の造形塊。
(項目67)
前記タンパク質または前記ポリペプチドの前記生物学的活性が、保管される少なくとも約6ヶ月の期間にわたって維持される、項目50に記載の造形塊。
【0015】
本発明のこれらのおよび他の実施形態および態様のさらなる詳細を添付の図面に関連して下でさらに十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a図1aは、円柱の形状を有する造形塊の実施形態を示す横断面図である。
【0017】
図1b図1bは、図1aの実施形態の透視図である。
【0018】
図2図2は、立方体の形状を有する造形塊の実施形態を示す側面図である。
【0019】
図3図3は、ホットドッグ/カプセル様の形状を有する造形塊の実施形態を示す側面図である。
【0020】
図4図4は、錠剤の形状を有する造形塊の実施形態を示す側面図である。
【0021】
図5図5は、球の形状を有する造形塊の実施形態を示す透視図である。
【0022】
図6図6は、半球の形状を有する造形塊の実施形態を示す側面図である。
【0023】
図7図7は、ピラミッドの形状を有する造形塊の実施形態を示す側面図である。
【0024】
図8図8は、矢尻の形状を有する造形塊の実施形態を示す側面図である。
【0025】
図9図9は、円錐の形状を有する造形塊の実施形態を示す透視図である。
【0026】
図10図10は、長方形の形状を有する造形塊の実施形態を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に図1~10を参照して、本発明の様々な実施形態は、もう1つの薬物を含む固体造形塊10の形態の薬学的組成物、および1つまたは複数の薬物を含む固体造形塊を形成する方法を提供する。1つまたは複数の実施形態によると、薬物は、生物学的活性(例えば、抗原に対する結合親和性)を有する1つまたは複数のポリペプチドおよびタンパク質、例えば、様々な免疫グロブリンタンパク質(例えば抗体)を含んでいてもよく、生物学的活性は、タンパク質またはペプチドの分子構造を分解または別様に損傷させる従来の固体薬学的製剤化プロセス(例えば、ピル、錠剤などを形成するために使用される様々な圧縮プロセスなど)によって減少することがある。図1aおよび1bに示す造形塊10の1つの実施形態は、1つもしくは複数の薬物または他の治療薬25と、賦形剤30と、体内の標的送達部位(例えば、小腸壁)内で分解して薬物25を放出する分解性材料40(例えば、ポリエチレン、様々な糖、乳酸ポリマー、PGLGなど)とを含むことができる治療用組成物20を含む。
【0028】
造形塊10は、製薬技術分野において公知の様々な造形プロセスから形成することができる。通常、造形塊は、圧縮成形などの圧縮プロセスによって形成される。薬物は、タンパク質、ペプチドまたは抗体を含んでいてもよい。1つまたは複数の実施形態によると、塊の中のタンパク質またはペプチドの生物学的活性は、圧縮前のものに対して少なくとも約70%、より好ましくは圧縮前のものに対して少なくとも80%、より好ましくは圧縮前のものに対して少なくとも85%、さらにいっそう好ましくは圧縮前のものに対して約90%、さらにいっそう好ましくは圧縮前に少なくとも95%である(本明細書で用いる場合、用語「約」は、述べられている値の2%以内、さらに好ましくは1%以内を意味する)。これらの数値は、形成前のものに対する造形塊中の薬物の(例えば重量による)百分率にも相当しうる。これらの実施形態および関連実施形態では、造形塊は約0.80~約1.15mg/mmの範囲、より好ましくは約0.90~約1.10mg/mmの範囲、さらにいっそう好ましくは約1.02~1.06mg/mmの範囲、さらにいっそう好ましくは約1.03~1.05mg/mmの範囲の密度を有することができる。造形塊の形は、通常、ペレットの形状を含むであろうが、図1~10に示すように錠剤、円錐、ピラミッド、ホットドッグ/カプセル様、矢尻、円柱、立方体、球、半球または他の同様の形状を有することもある。また、これらの実施形態または代替実施形態において、造形塊10を創出するために使用される粉末の粒子サイズ(例えば、直径または最も広い寸法)は、約50~450μmの範囲、より好ましくは約100~400μmの間、およびよりいっそう好ましくは約200~400μmの間でありうるが、他の範囲も企図される。円柱またはペレットの形状を有する造形塊の実施形態については、造形塊は、約0.5~1mmの範囲の直径、および約1.75~3.25mmの長さを有していてもよい。
【0029】
様々な実施形態によると、小腸などの腸の壁(または別の組織部位、例えば筋肉内部位)で溶解または別様に分解して薬物を腸壁に放出し、そこで薬物が拡散するか、別様に腸壁の毛細血管床に輸送され、その後、循環系によって全身に運ばれるように構成されている分解性材料30から、造形塊10を一部形成することができる。本明細書で用いる場合、分解するという用語は、生体液(例えば、血液、間質液、リンパ液など)および/または組織との接触に起因する生分解、溶解または崩壊プロセスをもう1つ含む。また、分解するおよび分解という用語は、交換可能に用いることができる。好適な分解性材料30としては、様々な糖、例えばマルトースおよびスクロース、様々な乳酸ポリマー、例えばポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA);グリコール酸・乳酸共重合体(PGLA);様々なポリエチレン、例えば高密度、低密度および直鎖状低密度PEおよびPEO(ポリエチレンオキシド)、様々なセルロースポリマー、例えばHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、MC(メチルセルロース)、メタクリル酸-酢酸エチル共重合体、メタクリル酸-メチルメタクリレート共重合体、PVOH(ポリビニルアルコール)、シリコーンゴム、ならびに当技術分野において公知の他の生分解性ポリマーが挙げられる。生分解性ポリマーおよび造形塊の材料および他の特性を選択して、腸壁で選択可能な分解速度を生じさせることができる。1つまたは複数の実施形態によると、分解速度を選択して、tmax、Cmax、t1/2などのような様々な薬物動態パラメータを達成することができる。1つまたは複数の特異的実施形態では、造形塊の材料特性(例えば、その化学組成、間質液への溶解度、サイズおよび形)を選択して、選択された薬物がCmaxに、該薬物の血管外注射用量がCmaxに達する期間より短い期間で達するように造形塊を腸壁内で分解させることができる。
【0030】
薬物含有造形塊を作製するための方法の実施形態。
【0031】
次に、本明細書に記載する薬物を含有する造形塊の様々な実施形態を創出するために使用する作製プロセスについての説明を提供する。このプロセスは、1つまたは複数の薬物を含有する粉末を作製するプロセス、および1つまたは複数の薬物を含む微小錠剤または他の造形塊に粉末を形成するための造形塊形成プロセスを含む。論述を容易にするために、ここでは造形塊を微小錠剤と呼ぶが、造形塊の他の形態および/または形状(例えば、ペレット、円柱、ホットドッグ様の形状)に同じように当てはまることは理解されるはずである。
【0032】
薬物粉末形成プロセス。
【0033】
薬物を含む粉末の製剤化プロセスを次に説明する。通常、このプロセスは3ステップを含む。第1のステップは、薬物の水溶液を調製し、次いで、特定の適用に望ましい賦形剤30を添加するステップである。1つまたは複数の実施形態では、賦形剤30は、滑沢剤、バインダーおよび増量剤の1つまたは複数を含むことができる。滑沢剤は、微小錠剤形成と型からの排出の両方を助長するために添加される。滑沢剤は、ポリエチレングリコール3350に相当してもよく、1つまたは複数の実施形態では、全バッチ質量のおおよそ10% w/wの割合で添加されてもよい。増量剤は、マンニトールに相当してもよく、バインダーは、ポビドンに相当してもよい。添加することができる他の賦形剤としては、バインダー、充填剤、崩壊剤、安定剤、緩衝剤および抗菌剤が挙げられる。製剤化プロセス中、粉末混合物中の様々な(活性および非活性)成分の割合を考慮に入れて、結果として得られる微小錠剤中の薬物の望ましい治療用量を達成する。
【0034】
第2のステップは、水性混合物を蒸発させるステップである。薬物と賦形剤とを含有する穏やかに混合した溶液を、次に、乾燥剤が入っている真空チャンバ内部の可撓性の平板(例えば、シリコーン板)に入れる。次いで、そのチャンバを冷蔵庫または低温室の内部に置き、真空ラインラインまたはポンプに接続する。溶液を真空下、0℃より上の低温で、完全に乾燥するまで放置する。
【0035】
第3のステップは、微細な粉末を製造するための蒸発混合物の粉砕を含む。蒸発混合物を、好ましくはステンレス鋼製またはイットリウム安定化ジルコニウム製の、単一の高密度粉砕ボールとともに、タンパク質低結合性チューブに入れる。粉砕は、水分吸収または汚染を避けるためにフィルムで覆われたチューブを収容しているローテーターを最大速度で使用して行う。チューブを低温に保つためにチューブの上にアイスパックをおくことが望ましい。室温を例えば60~64°Fの範囲に制御することができる。粉砕チューブのサイズ、粉砕ボールの質量および混合継続時間を選択して特定の粉末粒度、粒度均質性および粉末密度を生じさせることができる。例えば、40mg~100mgバッチ容量の製造に、2mL丸底チューブ、0.44gの質量を有する粉砕ボール、および3時間の粉砕継続時間を使用することで微細な一貫した粒度が得られ、より均質な信頼できる密度値が得られる。
【0036】
微小錠剤作製プロセス。
【0037】
様々な実施形態では、微小錠剤作製プロセスを温度が60~64°Fの間に保たれている温度制御された無菌室で行うことが(必然ではないが)望ましい。微小錠剤形成プロセスは、通常、圧縮型または他の治具を使用して薬物を含む粉末に圧縮力を適用する圧縮によって行う。2タイプの、半自動のものまたは完全自動バージョンの圧縮治具を使用することができる。半自動治具を使用する作製については、4本のシリンダ、4つのバネおよび4つの振動取付けストッパ(vibration mounting stopper)によってフォースゲージスタンドに接続されている2枚の金属シートからなる基部の上で微小錠剤を作製する。上のシートは、中に摺動させるための型またはウェルのための穴があるキャビティを有する。圧縮に使用される型は、圧縮用の粉末を収容できる必要直径および長さを有する、末端がウェル内にある45度漏斗を有する。ピンをピンホルダに取り付け、3路スイッチによって操作される制御モータによって上下に動かすことができるフォースゲージに接続する。
【0038】
半自動作製手順は、次のステップを含むことができる:1)ストッパを位置決めするステップ、2)ストッパの頂部に錠剤型を配置し、ピンをホルダに入れるステップ、3)微小錠剤に必要な粉末を充填し、それを型穴の中に沈下/沈降させるステップ、4)所望の力(すなわち圧縮力)に達するまで(フォースゲージに接続されている)電動ピンを型内に前進させることによって型に粉末を押し込み、その適用した力で、設定した期間(すなわち保持時間)それを適所に保持するステップ、6)錠剤金属ストッパを取り外し、錠剤を収集するための皿を配置するステップ、および7)微小錠剤が型から出るまでモータスイッチでピンを下げ、皿に微小錠剤を収集するステップ。圧縮力と保持時間の組合せが、微小錠剤の機械的構造はもちろん、薬物の生物活性の低下も決める。
【0039】
自動治具を使用するプロセスについては、薬物沈下、圧縮および排出プロセスが完全に自動化される。型は基部の中にあり、3本のネジにより型ホルダによって拘束されている。型底部は、エアシリンダの動作によって動かすことができる「ゲート」と呼ばれる金属片と接触している。ゲートは、充填および圧縮中には粉末の落下を停止し、排出中には解放する。エアシリンダは、シリンダホルダによってフォースゲージスタンドに取り付けられている。この上部エアシリンダは、その中のピンでそのピストン棒に取り付けられたピンホルダを有し、ピンは、型穴への挿入および粉末の圧縮に必要な直径を有する。一般に、ピンと型穴とを締まり嵌めさせるには、型穴の直径より0.0005”小さい直径で十分であるであろう。ピンに接続された上部エアシリンダが伸長して、粉末圧縮および微小錠剤の排出を生じさせる。ピストン棒の位置を知るためにこのシリンダにリードスイッチが接続されている。スタンドは、充填中にシステムを振動させて粉末を型穴の内部に強制的に移動させるために、エアフィルタを有する空気圧バイブレータも備えている。3つの空気圧式構成要素、ゲートエアシリンダ、圧縮/排出用上部エアシリンダおよびバイブレータは、電気空気圧システムによって制御される。このシステムは、粉末供給、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、4つの電磁弁、リードスイッチ、足踏みスイッチペダルおよび制御パネルからなり、制御パネルは、4つの調節器、4つの圧力ゲージ、マイクログラフィックパネルおよび電源スイッチを備えている。
【0040】
造形塊の作製の自動実施形態では、制御システムを構築し、使用者が次のシーケンスを完了するようにプログラムすることができる:1)使用者が粉末を充填する、2)始動のため使用者がペダルを押し、このシーケンスの最後までそれを保持する、3)振動を開始する(振動継続時間および圧力をコントロールパネルで改変することができる)、4)上部シリンダの伸長に起因してピンにより粉末が圧縮され(圧縮継続時間および圧力をコントロールパネルで改変することができる)、次いで圧縮後にそのシリンダが後退する、5)後退ゲートエアシリンダによってゲートが開放される(ゲート圧はもちろん、ゲートの開閉時間もコントロールパネルで改変することができる)、6)上部エアシリンダの新たな伸長によって微小錠剤が排出され(排出継続時間および圧力をコントロールパネルで改変することができる)、次いで排出後にそのシリンダが後退する、最後に7)ゲートが閉じてシーケンスが終わる。
【0041】
微小錠剤を作製した後、ペレット中の薬物の長さ、重量、密度および生物活性を測定する。微小錠剤中の薬物の生物活性は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または当技術分野において公知の他の免疫アッセイを使用してアッセイすることができる。
【0042】
インスリンを含む造形塊の実施形態。
【0043】
本明細書に記載する薬学的組成物の1つまたは複数の実施形態によると、微小錠剤または他の造形塊に含有される薬物は、糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のためのインスリンまたは同様の分子を含む。インスリンをいずれの好適な供給源から得てもよく、例えば、ヒトインスリンおよび/または当技術分野において公知の組換えDNA法を使用して生成されたものであってもよい。塊に含有されるインスリンの具体的な用量は、患者の体重、年齢および他のパラメータのうちの1つまたは複数に基づいて選択することができる。特異的実施形態では、微小錠剤は、約0.2~約0.8mgの間のインスリンを含んでいてもよい。
【0044】
様々な実施形態では、造形塊は、実施例に記載するものなどの圧縮形成方法/プロセスを含む、本明細書に記載するもう1つの方法に従って形成されうる。これらの実施形態および関連実施形態では、圧縮形成方法を、微小錠剤中のインスリンの生物学的活性を保存するように構成して、患者の身体に放出されるとその薬物による糖尿病または他のグルコース調節障害の処置が可能になるようにすることができる。そのような圧縮方法で使用される圧縮力は、約1.5~3ポンドの範囲の力でありうる。塊の中のインスリンの重量パーセントは、約10~95%、より好ましくは約20~95%、さらにいっそう好ましくは約25~95%、さらにいっそう好ましくは約80~95%の範囲であってもよい。造形塊中のインスリンの生物学的活性および/または重量百分率は、形成前(例えば、微小錠剤を形成するために使用される粉末から)のものに対して約88~99.8%の範囲でありうる。そのような実施形態での微小錠剤の密度は、約0.95~約1.15mg/mm、より好ましくは約1.0~約1.10mg/mmの範囲であってもよい。好ましい実施形態では、造形塊中のインスリンの生物学的活性は、形成前のものの99.2~99.8%を含みうる。そのような実施形態での微小錠剤の密度は、約1.08~1.10mg/mmの範囲であってもよい。造形塊中のインスリンの生物学的活性の測定は、ELISAまたは他のイムノアッセイ方法を含む、当技術分野において公知のアッセイを使用して行うことができる。
【0045】
1つまたは複数の実施形態によると、インスリン含有造形塊は、例えば滑沢剤、増量剤および結合剤またはバインダーを含む、1つまたは複数の賦形剤も含んでいてもよい。滑沢剤は、型から薬物含有造形塊を排出するのに必要な力の量を低減させるために選択され、ポリエチレングリコール(PEG)(一例としてPEG3350を含む)に相当してもよい。増量剤は、マンニトールに相当してもよく、バインダーは、ポビドンに相当してもよい。塊の中のインスリンの重量パーセントは、約10~95%、より好ましくは約20~95%、さらにいっそう好ましくは約25~95%、さらにいっそう好ましくは約80~95%の範囲であってもよい。PEGの重量パーセントは、約1~10%の範囲であってもよく、特異的実施形態は5%である。マンニトールの重量パーセントは、約4~70%の範囲であってもよく、特異的な量は5%である。ポビドンの重量パーセントは、約1~5%の範囲であってもよく、特異的実施形態は1%である。
【0046】
インクレチンを含む造形塊の実施形態。
【0047】
本明細書に記載する薬学的組成物の1つまたは複数の実施形態によると、微小錠剤または他の造形塊に含有される薬物は、糖尿病などのグルコース調節障害の処置のためのインクレチン、例えばエキセナチドを含む。他のインクレチンも企図される。造形塊は、インスリンについての実施例に記載するものなどの圧縮形成方法を含む、本明細書に記載するもう1つの方法(one more methods)に従って形成されうる。インスリンについて上で説明したように、圧縮形成方法を、微小錠剤中のインクレチンの生物学的活性を保存するように構成して、患者の身体に放出されるとその薬物による糖尿病または他のグルコース調節障害の処置が可能になるようにすることができる。塊に含有されるエキセナチドまたは他のインクレチンの具体的な用量は、患者の体重、年齢および他のパラメータのうちの1つまたは複数に基づいて選択することができる。特異的実施形態では、微小錠剤は、約0.2~約1~5mgmsの間のエキセナチドを含んでいてもよい。インクレチンを含有する塊の密度は、1.04±0.10mgの範囲であってもよい。
【0048】
TNF阻害抗体を含む造形塊の実施形態。
【0049】
本明細書に記載する薬学的組成物の1つまたは複数の実施形態によると、微小錠剤または他の造形塊に含有される薬物は、組織壊死因子の過剰生産を特徴とする様々な自己免疫障害(例えば関節リウマチなど)の処置のための、抗体のTNF(腫瘍壊死因子)阻害剤クラスからの抗体(例えばアダリムマブなど)を含む。これらの実施形態および関連実施形態では、微小錠剤または他の造形塊を作製するために使用される形成プロセスの圧縮および他の態様を、TNF阻害抗体の生物学的活性を保存するように構成して、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性クローン病、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬および若年性特発性関節炎を含むがこれらに限定されない1種または複数の自己免疫障害を処置することができる。特異的実施形態では、微小錠剤または他の造形塊に含有されるTNF阻害抗体は、上述のまたは他の状態の1つまたは複数を処置するための治療用量で処置するためのアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)、セルトリズマブペゴル(シムジア)またはゴリムマブ(シンポニー)またはエタネルセプト(エンブレル)の1つまたは複数に相当してもよい。
【0050】
本明細書に記載する造形塊の様々な実施形態はTNF抗体を含むので、次に、抗体のTNF阻害剤クラス、それらが処置する状態、および処置メカニズムに関する簡単な論考を提示する。腫瘍壊死因子(TNF、またはTNF-α)は、全身性炎症に関与するサイトカインである。TNFの主な役割は、免疫細胞の調節に関するものである。内因性発熱物質であるTNFは、発熱を誘導すること、アポトーシス細胞死を誘導すること、敗血症を(IL-1およびIL-6生産によって)誘導すること、悪液質を誘導すること、炎症を誘導すること、ならびに腫瘍発生およびウイルス複製を阻害することができる。TNFは、炎症応答を促進し、そしてまたその炎症促進が、関節リウマチ、脊椎炎、クローン病、乾癬、化膿性汗腺炎および難治性喘息などの自己免疫障害に関連する臨床的問題の多くを引き起こす。TNF-αの阻害を治療的に達成することができる抗体は、抗体のこのTNFα(腫瘍壊死因子α)阻害剤クラスに入る。このTNFα阻害クラスの抗体を含むすべての抗体は、Y形状の分子を形成するようにジスルフィド結合によって互いに接合されている2つの断片、FabおよびFcを含有すると記述される抗体構造を有することを特徴とする。TNFα阻害クラスの抗体の例としては、インフリキシマブ(レミケード)マウスFab-ヒトFcキメラ抗体(約150kda);アダリムマブ(ヒュミラ)約148kda、完全ヒト化抗体;エタネルセプト(エンブレル)1~50kda、p75TNF-受容体ドメイン-Fc(IgG1)融合タンパク質;およびPEGに連結されているヒトmab(Fab)を有するセルトリズマブペゴル(シムジア)が挙げられる。TNFα阻害クラスの抗体を含む抗体の最も不安定な部分は、Y形状の接合部のジスルフィド結合である。本明細書において実施例によって示すように、本発明者らは、これらのジスルフィド結合が、本明細書に記載する圧縮形成方法を使用して作製された微小錠剤に組み込まれた様々な抗体については保存されることを(抗体分子が構造的にインタクトのままであり、その生物活性を保持することを示すELISAデータによって)実証した。したがって、本明細書に記載する圧縮成形方法の実施形態が、そのY形状の分子の接合部にジスルフィド結合を有する抗体(TNF阻害クラスの抗体を含む)の構造および生物活性を保存すると予想されることは、当業者には理解されるであろう。
【0051】
アダリムマブ(本明細書ではヒュミラ)を含む微小錠剤または他の造形塊の形成プロセスの説明を次に提供する。しかし、このプロセスが任意の抗体、特に、抗体のTNF阻害クラスの任意の抗体(例えばインフリキシマブもしくはエタネルセプトなど)または抗体のAIもしくはAI17クラスの任意の抗体に適用可能であることは理解されるはずである。ヒュミラを含有する微小錠剤を作製するために使用される圧縮力は、1.0~4ポンドの範囲の力であってもよく、特異的実施形態は3lbsである。塊の中のヒュミラの重量パーセントは、約60~95%、より好ましくは約80~95%の範囲であってもよく、特異的実施形態は約95%である。造形塊中のヒュミラの生物学的活性は、形成前(例えば、微小錠剤を形成するために使用される粉末から)のものに対して約67~99%の範囲でありうる。そのような実施形態での微小錠剤の密度は、約0.86~1.05mg/mm、より好ましくは約0.88~約1.03mg/mmの範囲であってもよい。好ましい実施形態では、造形塊中のヒュミラの生物学的活性は、形成前のものの86~99%を含みうる。そのような実施形態での微小錠剤の密度は、約1.09~1.17mg/mmの範囲であってもよい。造形塊中のヒュミラの生物学的活性の測定は、ELISAまたは他のイムノアッセイ方法を含む、当技術分野において公知のアッセイを使用して行うことができる。
【0052】
1つまたは複数の実施形態によると、ヒュミラ含有造形塊は、例えば滑沢剤、増量剤および結合剤またはバインダーを含む、1つまたは複数の賦形剤30も含んでいてもよい。滑沢剤は、型から薬物含有造形塊を排出するのに必要な力の量を低減させるために選択され、ポリエチレングリコール(PEG)(一例としてPEG3350を含む)に相当してもよい。増量剤は、マンニトールに相当してもよく、バインダーは、ポビドンに相当してもよい。PEGの重量パーセントは、約1~15%の範囲であってもよく、特異的実施形態は10%である。関節リウマチなどの免疫状態を処置するために使用される造形塊の様々な実施形態では、造形塊中のヒュミラの最終用量は、約1~4mgsの範囲であってもよく、特異的実施形態は、40mgsの毎月注射用量に相当するように1日1回の1日用量が1.3mgsである。
【0053】
抗インターロイキン抗体を含む造形塊の実施形態。
【0054】
様々な実施形態によると、微小錠剤または他の造形塊に含有される薬物は、特定のインターロイキンと結合するまたはそのインターロイキンの受容体と結合して、インターロイキンがそのインターロイキンの受容体に結合するのを防止することによって、インターロイキンファミリーの1つまたは複数のメンバーの生物学的作用を減弱する、抗体または他の結合タンパク質を含みうる。インターロイキンは、免疫系においてその免疫系の液性および細胞性応答に関与するシグナル伝達分子および分泌タンパク質の両方として重要な役割を果たすサイトカイン(分泌タンパク質とシグナル伝達分子両方)の1群である。特にサイトカインのIL-17ファミリーについて非常に多くの免疫調節機能が報告されており、これは、おそらく、多くの免疫シグナル伝達分子のそれらの誘導のためである。IL-17の最も顕著な役割は、炎症促進応答の誘導および媒介へのその関与である。IL-17は、一般にアレルギー応答と関連付けられている。IL-17は、多くの細胞タイプ(線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイトおよびマクロファージ)からの多くの他のサイトカイン(例えばIL-6、G-CSF、GM-CSF、IL-1β、TGF-β、TNF-α)、ケモカイン(IL-8、GRO-αおよびMCP-1を含む)およびプロスタグランジン(例えばPGE2)の生産を誘導する。サイトカインの放出は、IL-17応答の特徴である、気道リモデリングなどの多くの機能の原因となる。ケモカインの発現増加は、好酸球ではなく好中球を含む他の細胞を誘引する。IL-17機能はまた、Tヘルパー17(Th17)細胞と呼ばれるCD4+ T細胞のサブセットに不可欠である。これらの役割の結果として、IL-17ファミリーは、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、狼瘡、同種移植拒絶および抗腫瘍免疫を含む、多くの免疫/自己免疫関連疾患に結びつけられている。
【0055】
様々な実施形態によると、本明細書におけるそのような抗インターロイキン抗体、AI抗体は、完全長抗体に相当することもあり、またはその抗原結合部分に相当することもある。また、それらは、当技術分野において公知の方法を使用してヒトまたはヒト化抗体であるモノクローナル抗体を、必然的にではないが、通常は含むであろう。本明細書で用いる場合、用語「抗体」は、4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖で構成されている任意の免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子の本質的エピトープ結合特徴を保持するその任意の機能性断片、変異体、改変体または誘導体を指す。また、本明細書で用いる場合、「エピトープ」は、抗体と特異的に結合できるタンパク質のセグメントまたは特徴を意味する。また、本明細書で用いる場合、「抗インターロイキン抗体(AI抗体)」、「AI抗体部分」または「AI抗体断片」および/または「AI抗体改変体」などは、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分[重鎖もしくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、またはその任意の部分を含むが、これらに限定されない]または本発明の抗体に組み込むことができるインターロイキン受容体(例えばIL-17受容体)もしくは結合タンパク質の少なくとも一部分を含む、任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。そのようなAI抗体は、任意選択で特異的リガンドにさらに影響を及ぼし、例えば、これに限定されるものではないが、そのような抗体は、in vitro、in situおよび/またはin vivoで、選択されたインターロイキンのうちの少なくとも1つ(例えばIL-17a、IL-17bなど)の活性もしくは結合またはIL-17受容体活性もしくは結合をモジュレートする、減少させる、増加させる、活性もしくは結合に拮抗する、活性もしくは結合を刺激する、緩和する、軽減する、阻止する、阻害する、抑止する、および/または活性もしくは結合に干渉する。
【0056】
様々な実施形態において、本明細書に記載するAI抗体であって、微小錠剤または他の造形塊の1つまたは複数の実施形態に組み入れられるAI抗体は、インターロイキン1~36ファミリーのインターロイキンとともにそれらの類似体および誘導体のいずれか1つに相当することができる。多くの実施形態において、本発明は、小腸壁または他の標的組織部位に送達することができるインターロイキン1~36ファミリーのインターロイキン(それらの類似体および誘導体を含む)のいずれか1つに対する抗体または他の結合タンパク質を含む治療用組成物を含む造形塊を提供する。これは、機械力を適用することによって小腸内に前進させられ、生分解してIN抗体を小腸壁に、そしてその後、血流に放出するように構成されている(例えばダーツまたは針の形態の)生分解性組織穿通部材に造形塊を組み込むまたは別様に作製する実施形態によって達成することができる。組織穿通部材は、小腸壁または腸管内の他の壁に組織穿通部材を挿入するための手段を含む嚥下可能なカプセルに含有され、該カプセルから送達されてもよい。組織穿通部材および嚥下可能なカプセルのさらなる説明は、米国特許第8,721,620号、同第8,759,284号および米国特許出願第13/532,589号において見出すことができ、これらは、あらゆる目的で本明細書に組み込まれている。
【0057】
特異的実施形態では、本発明は、抗体による受容体の活性化を防止するために、抗体のインターロイキン17ファミリーのメンバーと結合する抗体(好ましい例としてはセクキヌマブおよびイキセキズマブが挙げられる)およびインターロイキン17ファミリーの受容体と結合する抗体(好ましい例としてはブロダルマブが挙げられる)を含む、微小錠剤または他の造形塊を提供する。TNF抗体と同様、これらのおよび他のAI抗体はすべて、AI抗体の最も不安定な部分であるそれらのY形状の接合部にジスルフィド結合を有する。本明細書において実施例によって示すように、本発明者らは、これらのジスルフィド結合が、本明細書に記載する圧縮形成方法を使用して作製された微小錠剤に組み込まれた様々な抗体については保存されることを(抗体分子が構造的にインタクトのままであり、その生物活性を保持することを示すELISAデータによって)実証した。したがって、本明細書に記載する圧縮形成方法の実施形態がこれらのAI17および他のAI抗体の構造および生物活性を保存すると予想されることは当業者には理解されるであろう。それ故、本発明の特定の実施形態は、AI抗体を含む、圧縮または関連方法によって形成される造形塊であって、該造形塊を形成するために使用されるAI抗体前駆体材料の生物活性の75、80、85、90、95%またはそれ超が最終造形塊において保存されている、造形塊を提供する。
【0058】
本明細書における造形塊の実施形態によって提供されるAI抗体または他のINタンパク質は、例えば、関節リウマチ、乾癬、尋常性乾癬、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患および潰瘍性大腸炎を含む、多数の自己免疫疾患および/または炎症性状態の処置に特に有用である。そのような組成物は、望ましい薬物動態特性、特に、静脈内、真皮下または筋肉内注射に対して有利である薬物動態特性を有するAI抗体の送達をもたらす。それらは、アナフィラキシーショックを含むアレルギー反応の発生率の低減および(皮下および/または筋肉内注射に対して)免疫原性低減をはじめとする利点の1つまたは複数を提供する投薬の利用も可能にする。
【0059】
抗インターロイキン-17抗体
【0060】
本明細書において論ずるように、本発明の多数の実施形態は、サイトカインのインターロイキン17ファミリーからのものを含むインターロイキンの生物学的作用を、その選択受容体に結合する抗体の能力を防止またはモジュレートすることによって中和または別様に阻害するためにAI抗体(または他のIBタンパク質)を含む、造形塊(例えば、微小錠剤、ペレットなど)を提供する。これらの造形塊を、体内の様々な標的組織部位に、小腸壁に、または腸管内の他の標的組織部位に送達するように構成することができる。インターロイキン17抗体の標的化されるインターロイキンファミリーとしては、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E(IL-25とも呼ばれ得る)およびIL-17Fが挙げられる。IL-17ファミリーのすべてのメンバーは、それらの3次元形状にとって重要な高度に保存された4つのシステイン残基を有する類似のタンパク質構造を有するが、いずれの他の公知のサイトカインとも配列類似性を有さない。非常に多くの免疫調節機能がサイトカインのIL-17ファミリーについて報告されており、これは、おそらく、多くの免疫シグナル伝達分子のそれらの誘導のためである。(IL-17とも呼ばれる)サイトカインのIL-17ファミリーの最も顕著な役割は、炎症促進応答の誘導および媒介へのその関与である。IL-17は、一般にアレルギー応答と関連付けられる。IL-17インターロイキンは、多くの細胞タイプ(線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイトおよびマクロファージ)からの多くの他のサイトカイン(例えばIL-6、G-CSF、GM-CSF、IL-1β、TGF-β、TNF-α)、ケモカイン(IL-8、GRO-αおよびMCP-1を含む)およびプロスタグランジン(例えばPGE2)の生産を誘導する。サイトカインの放出は、IL-17応答の特徴である、気道リモデリングなどの多くの機能の原因となる。ケモカインの発現増加は、好酸球ではなく好中球を含む他の細胞を誘引する。IL-17機能はまた、Tヘルパー17(Th17)細胞と呼ばれるCD4 T細胞のサブセットに不可欠である。
【0061】
上記役割のために、インターロイキンのIL-17ファミリーは、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、喘息、狼瘡、同種移植拒絶、抗腫瘍免疫ならびに最近では乾癬および尋常性乾癬を含む、多くの免疫/自己免疫関連疾患と結びつけられまたは別様に関連付けられている。特に、IL-17サブタイプのうちの3つ(A、CおよびF)についての発現増加は、乾癬における炎症の病因に関係付けられている。したがって、1つもしくは複数のIL-17インターロイキンに対するまたはインターロイキン-17ファミリーのインターロイキンの受容体に対する抗体(本明細書では抗IL-17抗体またはAI17抗体)を含む治療用組成物を有する造形塊を提供する本発明の実施形態は、これらのおよび他の免疫/自己免疫状態の1つまたは複数を処置するのに有用である。このことは、小腸壁(または腸管内の他の標的部位)にAI17抗体を送達するために使用される造形塊の実施形態に特に当てはまる。なぜなら、このことによって、抗体がIV、筋肉内または他の形態の注射によって送達されるときの薬物動態の向上ならびにアレルギー反応および他の有害反応の低減が可能になるからである。さらにまた、AI17抗体をインターロイキン自体にまたはインターロイキンの受容体に結合するように構成し、かくして、受容体がインターロイキンによって活性化されるのを防止し、そしてまたそのような活性化の生物学的作用を阻害し、そうでなければ減弱することができる。阻害または減弱される生物学的作用は、次のうちの1つまたは複数を含みうる:Th1モジュレーション、Th2モジュレーション(Nakanishi K.ら、(2001年)Cytokine and Growth Factor Rev. 12巻:53~72頁)、およびNKモジュレーション。特異的AI17抗体の様々な実施形態を下でさらに詳細に論ずる。
【0062】
セクキヌマブ
【0063】
セクキヌマブは、尋常性乾癬を含む多数の免疫/自己免疫関連状態に関係付けられている、インターロイキン-17A(IL-17A)と選択的に結合し、IL-17Aの活性
を阻害および/または中和する、ヒトモノクローナル抗体(mAb)である。セクキヌマブは、全身治療の候補者である成人患者の中等度~重度尋常性乾癬の処置のためにFDAによって認可された最初のIL-17A阻害剤である。セクキヌマブは、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎の処置について陽性の臨床結果も示されており、多発性硬化症(mulitple sclerosis)および関節リウマチの処置について評価中である。したがって、本発明の様々な実施形態は、次の状態:乾癬(尋常性乾癬を含む)、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症、関節リウマチのうちの1つまたは複数の処置のための、治療有効量のセクキヌマブを含む造形塊の小腸壁(または腸管もしくは他の位置における他の標的組織部位)への送達を企図している。そのような処置のためのセクキヌマブの用量は、1日に約1~40mgの範囲であってもよく(これを本明細書に記載する組織穿通部材によって送達することができる)、尋常性乾癬の処置のための具体的な用量は1日に約20~40mgの範囲である。これらのおよび他の投薬については、注射(例えばIV、筋肉内もしくは真皮下注射)または他の送達方法によって投与されうる負荷用量の後に1日用量を開始してもよい。用量は、患者の体重、年齢、状態の重症度、負荷用量の量、ならびに所与の状態についての当技術分野において公知の治効指数(treatment efficacy index)、例えば、乾癬面積・重症度指数(PASI)および尋常性乾癬の処置のための2011年改訂医師による総合評価(IGA)のうちの1つまたは複数に基づいて個々の患者について用量設定することができる。製剤化、用量および臨床使用を含むセクキヌマブのさらなる説明は、米国特許出願第13/876367号、同第13/877,585号および同第14/358,504号において見出すことができ、これらはあらゆる目的でそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0064】
ブロダルマブ
【0065】
ブロダルマブは、上に示したように尋常性乾癬を含む多数の免疫/自己免疫関連状態に関係付けられているインターロイキン-17A(IL-17A)分子の受容体と高い親和性で結合し、IL-17Aの活性を阻害および/または中和する、ヒトモノクローナル抗体(mAb)である。ブロダルマブは、インターロイキン-17(IL-17)受容体と結合し、いくつかのIL-17サイトカイン(例えばA、FおよびA/F)の受容体との結合を遮断することによって炎症性シグナル伝達を阻害する、開発段階の唯一の研究処置である。したがって、ブロダルマブには、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症、関節リウマチおよび炎症性腸疾患のうちの1つまたは複数を限定ではないが含む、これらの受容体の1つまたは複数の活性化が関与する任意の状態の処置に対する有効性があるであろう。ブロダルマブは、第3相研究で尋常性乾癬の処置について陽性の臨床結果も示されている。したがって、様々な実施形態は、次の状態:乾癬(尋常性乾癬を含む)、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患および他の同様の状態のうちの1つまたは複数の処置のための、治療有効量のブロダルマブを含む造形塊(例えば微小錠剤)の小腸壁(または腸管もしくは他の位置における他の標的組織部位)への送達を企図している。そのような処置のための(本明細書に記載する組織穿通部材の実施形態によって送達することができる)ブロダルマブの用量は、1日に約1~20mgの範囲であってもよく、尋常性乾癬の処置のための具体的な用量は1日に約9~14mgの範囲である。これらのおよび他の投薬については、注射または他の送達手段によって投与されうる負荷用量の後に1日用量を開始してもよい。用量は、患者の体重、年齢、状態の重症度、負荷用量の量、ならびに所与の状態についての当技術分野において公知の治効指数、例えば、乾癬面積・重症度指数(PASI)および尋常性乾癬の処置のための2011年改訂医師による総合評価(IGA)のうちの1つまたは複数に基づいて個々の患者について用量設定することができる。用量および臨床使用を含むブロダルマブのさらなる説明は、Coimbraらによる「Brodalumab: an evidence-based review of its potential in the treatment of moderate-to-severe psoriasis」と題する論文、Core Evid. 2014年7月21日;9巻:89~97頁(これはあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれている。)において見出すことができる。
【0066】
イキセキズマブ
【0067】
イキセキズマブは、多数の免疫/自己免疫関連状態に関係付けられている、インターロイキン-17A(IL-17A)と選択的に結合し、IL-17Aの活性を阻害および/または中和する、ヒトモノクローナル抗体(mAb)である。イキセキズマブも乾癬性関節炎および尋常性乾癬の処置について陽性の臨床結果が示されている。したがって、様々な実施形態は、次の状態:乾癬(尋常性乾癬を含む)、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症および関節リウマチのうちの1つまたは複数の処置のための、治療有効量のブロダルマブ・イキセキズマブを含む造形塊の小腸壁(または腸管もしくは他の位置における他の標的組織部位)への送達を企図している。そのような処置のための(本明細書に記載する組織穿通部材の実施形態によって送達することができる)イキセキズマブの用量は、1日に約1~40mgの範囲であってもよく(これを、その日にわたり与えられる1つもしくは複数の嚥下可能なカプセルまたは複数のカプセルによって送達することができる)、乾癬性関節炎または尋常性乾癬の処置のための具体的な用量は1日に約2.5~5.5mgの範囲である。これらのおよび他の投薬については、注射または他の送達手段によって投与されうる負荷用量の後に1日用量を開始してもよい。用量は、患者の体重、年齢、状態の重症度、負荷用量の量、ならびに所与の状態についての当技術分野において公知の治効指数、例えば、乾癬面積・重症度指数(PASI)および尋常性乾癬の処置のための2011年改訂医師による総合評価(IGA)のうちの1つまたは複数に基づいて個々の患者について用量設定することができる。製剤化、用量および臨床使用を含むイキセキズマブのさらなる説明は、米国特許出願第14/195,885号(これはあらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれている)において見出すことができる。
【0068】
腸壁または腸管内の他の位置へのAI17抗体の送達の利点。
【0069】
使用時、本明細書に記載するまたは医学分野で公知の免疫/自己免疫状態の1つまたは複数の処置のための、固体造形塊によるセクキヌマブ、ブロダルマブ(Broadulmab)、イキセキズマブまたは他のAI抗体もしくはINタンパク質の小腸壁(または腸管内の他の標的部位)への送達を提供する本発明の実施形態は、注射される形態のAI-17抗体(例えばセクキヌマブ(Secikinumab))を超える多数の利点を提供する。これらの利点としては、より高い治癒比、アナフィラキシーショックまたは他のアレルギー反応(注射部位でのものを含む)ならびに上咽頭炎、上気道感染症および頭痛(後述の3つはセクキヌマブ、ブロダルマブまたはイキセキズマブの1つまたは複数についての臨床研究から注目される)の1つまたは複数を含む有害反応の発生率および重症度の低減;ならびに免疫原性および/または免疫原性反応の減少を挙げることができる。後述のものの場合、そのような免疫原性反応は、患者におけるAI17抗体自体に対する抗体の発生をもたらすことがあり、その結果、有効性低下、および薬のより高い用量の要件、および/または望ましくない免疫応答が生ずる。これらの利点は、次のうちの1つまたは複数に起因する:i)本発明の実施形態によって送達されるAI17抗体(または他のAI抗体もしくはINタンパク質)のはるかに少ない用量、ii)用量が毎週または毎月に対して毎日送達される、およびiii)用量が静脈内に対して経口送達されるという事実。
【0070】
多くの実施形態では、造形塊の実施形態によって経口送達されるAI17抗体の投薬量の治癒比を、注射によって(例えば、毎週、隔週または毎月ベースで静脈内、筋肉内または皮下的になど)送達されるAI17抗体についての治癒比より有意に増加させることができる。様々な実施形態では、用語「有意に」は、2倍またはそれ超、例えば、7~30倍またはそれ超の量の治癒比の増加に相当する。注射(例えば、静脈内、筋肉内または皮下注射など)される場合に毎週用量で通常は送達されるAI17抗体(または他のAI抗体もしくはINタンパク質)については、記載する造形塊/組織穿通部材の実施形態を使用して1日経口用量で小腸壁に送達するとその治癒比(例えば、毒性用量/有効用量)を7倍に増加させることができ、その一方で、AI17抗体の毎月注射用量の場合、本発明の実施形態によって1日経口用量を送達するとその治癒比を30倍に増加させることができる。さらに、AI17抗体の経口用量を1日を通して複数回与えると増加を得ることができる。免疫原性/免疫応答(筋肉内および/または皮下注射に対して)、アレルギー反応および他の有害反応のうちの1つまたは複数の発生率に関して同様の向上(例えば、7倍、30倍またはさらにはそれ超)を見ることができる。AI17抗体の臨床的有効性を中和するまたは別様に減少させる、投与されたAI17抗体に対する抗体の身体による生産である、免疫原性/免疫応答。アレルギー反応の発生率の低下は、免疫系を脱感作する傾向がある毎月用量に対して1日用量で抗体を与えることに起因して2倍から30倍までになりうる(アレルギー反応の程度を、当技術分野において公知の方法を使用して決定することができ、当技術分野において公知の1つまたは複数のin vitro試験と相関させることができる)。同様に、免疫原性および/または免疫応答低下の程度は、可能性のある次の3つの要因に起因して2倍~30倍またはそれ超ほどにもなりうる:1)用量は(そのような応答を悪化させる傾向がある)皮下および/または筋肉内送達されない、2)用量は、例えば注射用量が毎週送達されるのか、隔週送達されるのか、毎月送達されるのかなどに依存して7分の1~30分の1ほどの、はるかに少ない量で送達される、および3)上で論じたように、AI-17抗体の用量は、パイエル板を避け、その後の免疫細胞の生産および他の免疫応答を避けて、小腸の上部に送達される。所与のAI17抗体(例えばセクキヌマブ)に対する免疫応答の量を、当技術分野において公知のもう1つのさらなる免疫学的分析方法を使用して定量して、例えば、送達AI17抗体または他のAI抗体に対する生成抗体の生産を測定することができる。特定の実施形態では、AI17抗体の投薬を、患者がAI17抗体に対して最少量の抗体を生じるように構成することができ、ここで、送達AI17抗体の10%未満、より好ましくは5%未満の最小平均値が患者自身の抗体によって中和される。
【0071】
3D印刷を使用して製造される造形塊の実施形態。
【0072】
本発明のさらに他の実施形態は、(タンパク質またはポリペプチドを含みうる)薬物を含む造形塊を調製する方法であって、3D印刷法を使用して薬物上に材料の外側コーティングおよび/ジャケットを形成して選択的に造形された微小錠剤または他の造形塊を形成する方法を提供する。コーティングまたはジャケットは、本明細書に記載するもう1つの生分解性材料を含んでいてもよい。1つまたは複数の実施形態によると、コーティングまたはジャケットを単層としてまたは多層コーティングとして堆積させるように3D印刷法を構成することができる。後述の多層コーティングの場合、異なる組成物、材料特性および厚さを有する異なる層を塗布することができる。使用時、そのような多層塗布によって、例えば造形塊の生分解速度を含む、造形塊の1つまたは複数の特性のより正確な制御が可能になる。例えば、1つの実施形態によると、相対的に急速に分解する層を薬物層の上に堆積させることができ、次にこの薬物層はより緩徐に分解する層の上に位置決めされ、次にこの緩徐に分解する層は薬物のコア塊の上に位置決めされる。使用時、そのような実施形態は、第1の層の下の薬物を迅速に放出(例えばボーラス放出)し、第2の層の下の薬物をより緩徐に放出する、二峰型の放出をもたらすことができる。
【0073】
3D印刷法の使用によって、造形塊を、その塊にそしてまた下にある薬物に適用する圧力を最小またはなしで、形成することが可能になる。使用時、そのような方法は、タンパク質変性および/または薬物に対する他の分解作用の減少に起因して最終造形塊中の薬物の収率を向上させる。そしてまたこのことが最終造形塊中の薬物の生物活性を向上させる。3D印刷の使用によって、型または他の関連デバイスを使用せずに様々な形状を生成することも可能になり、汚染の可能性が低減され、無菌性が向上される。そのような形状としては、例えば、図1~10に示されているような、矢尻の形状(例えば図8の実施形態)、長方形、ピラミッド、球、半球、円錐などを挙げることができる。3D印刷法によって、薬物塊の形状およびサイズを個々の患者のパラメータ、例えば、患者の体重、病状、および特定の医療レジメン(例えば、薬の服用1日1回、2回など)に合わせて迅速にカスタマイズすることも可能になる。さらに他の実施形態では、3D印刷法を使用して、二峰性送達形態、例えば急速放出および緩徐放出を有するように構成された造形塊を製造することができる。
【0074】
均一な特性を有する造形塊の在庫品の実施形態
【0075】
本発明の他の実施形態は、ペプチド、タンパク質または免疫グロブリンなどの薬物を含む造形塊の在庫品であって、造形塊および/または薬物の特性、例えば形成後の薬物の生物学的活性が、実質的に全在庫品について選択範囲内で維持される、在庫品を提供する。使用時、そのような実施形態は、造形塊を使用して送達される1つまたは複数の選択された薬物に関する投薬量、薬物動態パラメータ(例えば、t1/2、tmax、Cmaxなど)および結果として生ずる臨床効果のもう1つについての均一性を確保するのに役立つ。例えば、インスリンを含む造形塊の実施形態については、形成後のインスリンの生物学的活性および/または重量百分率を、実質的に全在庫品について、形成前のものに対して約99.2~99.8%の範囲内で維持することができる。
【0076】
造形塊の送達経路。本明細書に記載する微小錠剤または他の造形塊の実施形態を、任意の適切な投与経路によって投与するために、任意の好適な薬物送達システムと併用するように構成することができる。そのような投与経路としては、限定ではないが、経口、舌下、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、脳室内(intra-ventricular)、心臓内、脳内経路を挙げることができる。例えば、1つの実施形態によると、インスリン含有微小錠剤を経口摂取し、その後、その薬物を小腸壁によって吸収させる、または小腸壁に送達させることができる。後述の小腸壁への送達の場合、これは、微小錠剤を含有するまたは別様に含む生分解性組織穿通部材を含む薬物送達デバイスを使用して行うことができる。組織穿通部材に直接または間接的に力を適用する可膨張性バルーンなどの前進手段を使用して、組織穿通部材を腸壁に前進させてもよい。代替またはさらなる実施形態では、微小錠剤を筋肉内または他の皮下組織部位に皮下送達することができる。特異的実施形態では、Cmaxもしくは他の所望の薬物動態パラメータ(例えばtmaxなど)を達成するように選択できる速度(単数または複数)で溶解するように微小ペレットを構成することができる。さらに、(例えば、筋肉内部位に対して小腸壁内の)所与の部位の組織に望ましいCmaxを達成するように構成された溶解速度を有するように、微小錠剤の組成物および特性を構成することができる。特定の実施形態では、造形塊を組織穿通部材内のキャビティに挿入することができ、その後、それを密閉する。組織穿通部材は、より詳細に上で説明したような生分解性材料、例えばマルトース、スクロースまたは他の糖、PGLA(グリコール酸・乳酸共重合体)、ポリエチレンおよび他のものを、いくつ含んでもよい。
【実施例0077】
本発明の様々な実施形態を以下の実施例を参照してさらに例証する。これらの実施例が単に例証を目的として提示されるものであること、本発明がこれらの実施例における情報または詳細に限定されないことは、理解されるはずである。
【0078】
実施例1:ヒトIgGおよびPEGを含む微小錠剤。
【0079】
材料。純粋ヒトIgG(Alpha Diagnostics Intl.Inc、カタログ番号20007-1-100)、ポリエチレングリコール3350(PEG、Sigma-Aldrich、カタログ番号P4338-500G)、水、分子生物学試薬グレード(Sigma-Aldrich、カタログ番号W4502)。
【0080】
方法。粉末形態のヒトIgGおよびPEG3350を計り取り、分子生物学試薬グレードの水を使用して混合して溶液にした。IgGおよびPEGの百分率はそれぞれ90%および10%である。粉末を水に40mg/ml濃度で溶解した。様々なIgG質量容量を使用するバッチを調製した:100mg(バッチ6および7)、140mg(バッチ8)および60mgのIgG(バッチ9)。その水溶液をシリコーン板に入れ、その後、冷蔵庫の内部の乾燥剤を有する真空チャンバの中で、完全蒸発が起こるまで最低19時間(バッチ6、7および8)、最大21時間(バッチ9)蒸発させた。バッチ1~5のデータを含めない。なぜなら、これらのバッチは異なるプロセス(例えば、粉砕、蒸発などが異なるまたはそれらを行わない)を使用して行った試験バッチであり、これらのバッチの一部については微小錠剤も作製しなかったからである。
【0081】
蒸発させた粉末を1.5ml低結合性コニカルチューブに収集した。粉砕には2個の小さいステンレス鋼ボール(直径3.96mm、総質量0.5g)と最大速度でローテーター(Roto-shake Genie)を使用した。粉砕継続時間は1.75時間(バッチ6および7)および1.5時間(バッチ8および9)であった。チューブをアイスパックで包囲して室温64°Fでその粉砕を行った。
【0082】
粉末を粉砕したら、半自動成形治具を使用して微小錠剤を作製した。成形パラメータは、おおよそ2.5~約3.5lbsの力の圧縮力、おおよそ3秒の圧縮保持時間を含んだ。粉砕前および粉砕後からの粉末ならびに形成された微小錠剤において回収したインタクト(例えば、生物学的活性)IgGの量の測定を行った。これらの測定は、IgGイムノアッセイ(Alpha Diagnostics Inc.)を使用して行った。
【0083】
微小錠剤化は、蒸発から回収した粉末を微細均質粉末に加工するステップ、そしてその後、それを固体微小錠剤に形成するステップを含む。粉砕前の粉末回収は微小錠剤化プロセスの出発点であり、粉砕前のタンパク質回収(例えば、粉砕前の粉末において回収した生物学的に活性なタンパク質の量)を100%と見なすことによって、この製造方法を使用して回収したIgGの百分率を算出した。微小錠剤データおよびIgG回収率値を表1に詳記する。密度は、錠剤の質量および体積を測定することによって測定した。平均密度は、1.02~1.06mg/mmの間であることが見いだされ、そして一方、微小錠剤において見出されたインタクトかつ生物活性IgGの回収は、平均94.2%に等しいかまたはそれよりも高かった。
【表1】
【0084】
実施例2:ヒトIgG PEGおよび他の賦形剤を含む微小錠剤
材料。純粋ヒトIgG(Alpha Diagnostics Intl.Inc、カタログ番号20007-1-100)、ポリエチレングリコール3350(PEG、Sigma-Aldrich、カタログ番号P4338-500G)、水、分子生物学試薬グレード(Sigma-Aldrich、カタログ番号W4502)、塩化ナトリウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号S9888)、マンニトール(Sigma-Aldrich、カタログ番号M8429-100G)。
【0085】
方法。ヒトIgGを、滑沢剤PEG3350、およびヒュミラペン溶液中のものと同じ百分率でのペン中の主要賦形剤(塩化ナトリウムおよびマンニトール)とともに溶解した。0.94mlの分子生物学試薬グレードの水を使用して粉末を溶液にした。上記a)で使用したのと同じ手順を使用して蒸発プロセスを行った。
【表2】
【0086】
蒸発させた粉末を、次に、2ml低結合性丸底チューブに移した。粉砕プロセスはバッチごとにわずかに異なった。バッチ7および8は、0.438の質量を有するステンレス鋼ボールと3時間の粉砕を用いて粉砕した。バッチ9は、0.454の質量を有する9 イットリウム安定化ジルコニウムボールと3時間の粉砕継続時間を用いて創出した。回転方法および温度条件は、実施例1)で使用した通りに保持した。バッチ1~6のデータを含めないことに留意されたい。なぜなら、これらのバッチは単に粉砕最適化のために創出したものであり、これらのバッチについては微小錠剤を作製しなかったからである。ケース7、8および9については血球計算盤を使用して粒子粒度(直径または最も広い寸法)の近似測定を行った。粒子サイズは、3つのバッチについて約50~約450μmの範囲であり、具体的なデータは、バッチ7については100、200、200、400および400、バッチ8については50、200、300および400であり、バッチ9については50、100、300および450であった。
【0087】
粉砕後、自動治具を使用し、圧縮力2.6lbsの圧縮力および3秒の圧縮保持時間を用いて、微小錠剤を作製した。粉砕前粉末段階、粉砕後粉末段階および微小錠剤段階から回収したインタクトIgGを、IgGイムノアッセイ(Alpha Diagnostics Inc.)を使用して試験した。微小錠剤データおよびIgG回収率値を表2に詳記する。
【0088】
表中で用いる用語の定義:下記表中で用いる用語の定義を下に提供する。
【0089】
微小錠剤化後の絶対タンパク質回収率(APRAMT):これは、微小錠剤中の活性タンパク質の、その微小錠剤を形成するために使用した粉末中の活性タンパク質に対する百分率である。微小錠剤中の選択タンパク質のELISAアッセイを使用してそれを決定した。この値を算出するための式を下に示す。
APRAMT=(微小錠剤中のELISA推定タンパク質含有量質量)/(全微小錠剤質量*全質量中のタンパク質質量百分率)
【0090】
実施例3:ヒュミラおよびヒュミラペン賦形剤を含む微小錠剤
【0091】
材料。ヒュミラペン(Abbott Laboratories)およびポリエチレングリコール3350(PEG、Sigma-Aldrich、カタログ番号P4338-500G)。
【0092】
方法。ヒュミラペン中に収容されている溶液を1.5ml低結合性チューブに入れ、そこにPEG3350量を添加し、ヒュミラ成分と混合した。実施例1a)およびb)で説明したものと同じ条件に従ってその溶液を蒸発させた。
【0093】
粉砕条件は、2個のボールを0.5グラムの総質量および1.5時間(バッチ1、2および4)および1.75時間(バッチ3)の粉砕継続時間で使用した実施例1a)の場合と同じであった。実施例1の場合と同じ温度条件を保持した。
【0094】
粉末粉砕後、おおよそ3lbsの圧縮力およびおおよそ3秒の圧縮保持時間を用いて半自動治具を使用することによって微小錠剤を形成した。粉砕前粉末、粉砕後粉末および微小錠剤において回収したインタクトヒュミラを、ヒュミライムノアッセイ(Alpha Diagnostics Inc.)を使用して試験した。実施例1)の場合と同様に、粉砕前粉末回収は微小錠剤化プロセスの出発点であり、その粉砕前粉末回収を100%として用いて、この製造方法を使用して回収したヒュミラの百分率を算出した。微小錠剤データおよびヒュミラ回収率値を表3に詳記する。
【0095】
平均密度は、約0.88から最大約1.05mg/mmの範囲であり、微小錠剤において回収した生物活性ヒュミラの量は、微小錠剤形成前のものに対して約67~約80%の範囲であった。
【表3】
【0096】
実施例4:インスリン-ビオチン複合体を含む微小錠剤
【0097】
材料。ビオチン-ヒトインスリン溶液(Alpha Diagnostics、カタログ番号INSL16-BTN-B)およびポリエチレングリコール3350(PEG、Spectrum、カタログ番号P0125-500G)。
【0098】
方法。ビオチン化インスリン(ビオチン分子が結合されているインスリン)をAlpha Diagnosticsから購入し、1×PBS(12mM KPO4、2.7mM
KCl、および137mM NaCl、pH7.4)中に2mg/mlのインスリンを含有する液体形態で受け取った。供給業者によってオボアルブミンがその溶液に1%で添加された。購入した溶液を1.5ml低結合性チューブに入れ、そこにPEG3350を添加し、混合し、その溶液に混ぜ入れた。バッチ4~7についての最終製剤の構成要素(constituency)は次の通りであった:8.7%ビオチン-ヒトインスリン複合体、5% PEG3350、43.5%オボアルブミン、および透析中の1×PBS由来の42.7% 塩。バッチ1~3は、賦形剤の量がバッチ4~5と大きく異なるため、ここに含めなかったことに留意されたい。実施例1で説明したものと同じ条件に従って溶液を蒸発させた。
【0099】
粉末を完全に乾燥させたら、次いでそれを2ml低結合性丸底チューブに移した。粉砕プロセスは、0.445gの質量を有する単一イットリウム安定化ジルコニウムボールを1.5時間の継続時間にわたって使用した。回転方法および温度条件は、実施例1で使用したのと同じであった。
【0100】
粉砕後、自動治具を使用し、結果として約1.8lbsの圧縮力となる26psi空気圧を圧縮に用い、3秒の圧縮保持時間を用いて、微小錠剤を形成した。排出のための空気圧を28psi(約1.82lbs排出力)に設定した。インスリン-ビオチンELISAイムノアッセイキット(Alpha Diagnostics Inc.、カタログ番号0030-20-1)を使用してビオチン-ヒトインスリン微小錠剤を試験した。微小錠剤データおよびビオチン-ヒトインスリン回収率値を表4に収載する。
【表4】
【0101】
実施例5:インスリンを含む微小錠剤
【0102】
材料。ヒトインスリン(Imgenex、カタログ番号IMR-232-250)、ポリエチレングリコール3350(PEG、Spectrum、カタログ番号P0125-
500G)、マンニトール(Amresco、カタログ番号0122-500G)、ポビドン(ISP-Technologies、Plasdone C-30)および滅菌水(APP Pharmaceutical、カタログ番号918510)。
【0103】
方法。異なる賦形剤を有する溶液中でヒトインスリンを混合して分析用の様々なバッチを製造した。各バッチの製剤を表5に詳記する。バッチ1-A、2、3Bおよび6Bは、異なる作製パラメータのため含めなかった。賦形剤は、PEG3350(滑沢剤)、マンニトール(増量剤)およびポビドン(バインダー)を含んだ。これらの賦形剤およびAPI(ヒトインスリン)を滅菌水に溶解した。実施例1で説明したものと同じ条件を使用して溶液を蒸発させた。
【0104】
粉砕プロセスおよびパラメータは実施例4の場合と同じであり、2ml低結合性丸底チューブおよび単一イットリウム安定化ジルコニウムボール(おおよそ0.45gの質量)を1.5時間の継続時間にわたって使用した。回転方法および温度条件を実施例1で使用した通りに保持した。
【0105】
粉砕後、自動治具を使用し、圧縮に74.5psi空気圧(結果として約2.6lbsの圧縮力となる)を用い、3秒の圧縮保持時間を用いて、微小錠剤を作製した。排出のための空気圧を80psi(約2.7lbs排出力)に設定した。ヒトインスリンELISAイムノアッセイキット(Alpha Diagnostics Inc.、カタログ番号0030N)を使用してヒトインスリン微小錠剤を試験した。微小錠剤データおよびヒトインスリン回収率値を表6に詳記する。
【表5】


【表6】
【0106】
結論
【0107】
本発明の様々な実施形態についての上述の説明は、例証および説明を目的として提示したものである。上述の説明は、開示するまさにその形態に本発明を限定することを意図したものではない。多くの改変、変形および改良が当業者にはすぐに分かるであろう。
【0108】
ある実施形態からの要素、特徴または行為を、他の実施形態からの1つまたは複数の要素、特徴または行為と容易に組換えてまたは置き換えて、本発明の範囲内で非常に多くのさらなる実施形態を形成することができる。さらに、他の要素と併用されると示されているまたは記載されている要素は、様々な実施形態において、独立した要素として存在することができる。さらに、様々な実施形態は、1つまたは複数の実施形態に示されているまたは記載されている任意の要素の否定的記述を明確に企図している。したがって、本発明の範囲は、記載する実施形態の細目に限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10