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特開2023-68117負極活物質、並びに、それを用いた電気化学装置及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068117
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】負極活物質、並びに、それを用いた電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20230509BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230509BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20230509BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230509BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/133
H01M10/0525
H01M10/0566
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045559
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2021512516の分割
【原出願日】2020-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】何麗紅
(72)【発明者】
【氏名】唐佳
(72)【発明者】
【氏名】董佳麗
(72)【発明者】
【氏名】謝遠森
(57)【要約】
【課題】本発明の実施例は、負極活物質、並びに、それを用いた電気化学装置及び電子装置を提供することにより、少なくともある程度で、関連分野における少なくとも一つの問題を解決する。
【解決手段】
本発明は、負極活物質、並びに、それを用いた電気化学装置及び電子装置に関する。より詳しくは、本発明は、炭素材料を含む負極活物質を提供し、前記炭素材料の特定のピーク強度比K、及び黒鉛化度GrとKの比が特定の範囲内にある。本発明の負極活物質は、電気化学装置のエネルギー密度、サイクル特性及びレート特性を大幅に改善することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料を含む負極活物質であって、
前記炭素材料は、関係式:6<Gr/K<16を満たし、
Grは、X線回折法で測定して得られた前記炭素材料の黒鉛化度であり、前記Grは0.92~0.96又は0.97であり、
Kは、ラマン分光法で測定して得られた、前記炭素材料の1250cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Idと、前記炭素材料の1500cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Igの比Id/Igであり、且つ、
前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>23.0又はDv90/Dv10+Dv90=21.0、Dv90とDv10の単位はμmである、負極活物質。
【請求項2】
前記Kは0.06~0.15である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記炭素材料は以下の関係の少なくとも一つを満たし:
Lc/S<9、
La/S>20、
ただし、
Laは、X線回折法で測定した前記炭素材料の結晶の水平軸に沿った結晶子サイズであり、単位はnmであり、
Lcは、X線回折法で測定した前記炭素材料の結晶の垂直軸に沿った結晶子サイズであり、単位はnmであり、
Sは、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質の(004)面のピーク面積C004と(110)面のピーク面積C110の比であり、
前記Lcは45未満であり、前記Laは50より大きいである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
正極、電解液、及び負極を含む電気化学装置であって、
前記負極は負極活物質層と集電体を含み、
前記負極活物質層は請求項1~3のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、電気化学装置。
【請求項5】
前記負極活物質層の面密度は0.077mg/mm~0.121mg/mmであり、
前記負極活物質層の圧縮密度は1.70g/cm~1.92g/cmである、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層の(004)面のピーク面積C004'と(110)面のピーク面積C110'の比S'は10~20の範囲内にある、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は6N/m~15N/mである、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記負極活物質層は、20%~40%の孔隙率を有する、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は280℃以上である、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は130℃以上である、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、より詳しくは、負極活物質、並びに、それを用いた電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)は、環境にやさしく、高い作動電圧、大きな比容量及び長いサイクル寿命などの利点を備えるため、広く使用されており、今の世界で最も有望な新型グリーン化学電源になっている。小型のリチウムイオン電池は、通常、携帯型電子通信デバイス(例えば、カムコーダー、携帯電話、又はノートパソコンなど)を駆動する電源、特に高性能携帯型デバイスを駆動する電源として使用されている。高出力特性を備える中型および大型のリチウムイオン電池は、電気自動車(EV)及び大規模なエネルギー貯蔵システム(ESS)に適用するために開発される。リチウムイオン電池の汎用に伴い、そのエネルギー密度、サイクル特性及びレート特性が早急に解決を要する技術的課題となっている。極シート中の活物質材料を改良することは、上述課題を解決するための研究方向の一つである。
【0003】
この実情に鑑みて、改良された負極活物質、並びに、それを用いた電気化学装置及び電子装置を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施例は、負極活物質、並びに、それを用いた電気化学装置及び電子装置を提供することにより、少なくともある程度で、関連分野における少なくとも一つの問題を解決する。
【0005】
本発明の一態様によれば、負極活物質を提供し、前記負極活物質は炭素材料を含み、ここで、前記炭素材料は、以下の関係を満たし:6<Gr/K<16、ここで、Grは、X線回折法で測定して得られた前記炭素材料の黒鉛化度であり、且つ、Kは、ラマン分光法で測定して得られた、前記炭素材料の1250cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Idと、前記炭素材料の1500cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Igの比即ちId/Igであり、前記Kは0.06~0.15である。
【0006】
いくつかの実施例において、前記炭素材料は、関係式8<Gr/K<15を満たす。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、関係式10<Gr/K<12を満たす。いくつかの実施例において、前記炭素材料のGr/K値は、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5であり、或いは前記任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0007】
いくつかの実施例において、前記炭素材料のKは、0.08~0.10である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のKは、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15であり、或いは前記任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0008】
本発明の実施例によれば、前記炭素材料の前記黒鉛化度Grは0.92~0.96である。いくつかの実施例において、前記炭素材料の黒鉛化度Grは、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96であり、或いは前記任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0009】
本発明の実施例によれば、前記炭素材料は、以下の関係の少なくとも一つを満たす。
Lc/S<9、
La/S>20、
ここで、
Laは、X線回折法で測定した前記炭素材料結晶の水平軸に沿った結晶子サイズであり、単位はnmであり、
Lcは、X線回折法で測定した前記炭素材料結晶の垂直軸に沿った結晶子サイズであり、単位はnmであり、
Sは、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質の(004)面のピーク面積C004と(110)面のピーク面積C110の比であり、
前記Lcは45未満であり、前記Laは50超である。
【0010】
いくつかの実施例において、Lc/S<8である。いくつかの実施例において、Lc/S<7である。いくつかの実施例において、Lc/S<6である。いくつかの実施例において、Lc/S>2である。いくつかの実施例において、Lc/S>3である。いくつかの実施例において、Lc/Sは、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5であり、或いは前記任意の二つの端点値で構成される範囲内にある。
【0011】
いくつかの実施例において、La/S>22である。いくつかの実施例において、La/S>25である。いくつかの実施例において、La/S>28である。いくつかの実施例において、La/S>30である。いくつかの実施例において、La/S<60である。いくつかの実施例において、La/S<55である。いくつかの実施例において、La/S<50である。いくつかの実施例において、La/Sは、22、25、28、30、35、40、45、50であり、或いは前記任意の二つの端点値で構成される範囲内にある。
【0012】
いくつかの実施例において、前記Lcは40未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは35未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは30未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは25未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは10超である。いくつかの実施例において、前記Lcは15超である。いくつかの実施例において、前記Lcは20超である。いくつかの実施例において、前記Lcは、20、22、25、28、30、35、40、43であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0013】
いくつかの実施例において、前記Laは60超である。いくつかの実施例において、前記Laは80超である。いくつかの実施例において、前記Laは100超である。いくつかの実施例において、前記Laは110超である。いくつかの実施例において、前記Laは120超である。いくつかの実施例において、前記Laは130超である。いくつかの実施例において、前記Laは150超である。いくつかの実施例において、前記Laは180超である。いくつかの実施例において、前記Laは200超である。いくつかの実施例において、前記Laは220超である。いくつかの実施例において、前記Laは300未満である。いくつかの実施例において、前記Laは250未満である。いくつかの実施例において、前記Laは、55、60、70、80、90、100、120、150、180、200、230、250であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>23.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>25.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>28.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>30.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<50.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<45.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<40.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<35.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値の、Dv90/Dv10+Dv90は、24、26、28、30、33、35であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。上述関係式において、Dv90とDv10の単位はμmである。
【0015】
本発明の別の態様によれば、本発明は正極、電解液、及び負極を含む電気化学装置を提供し、前記負極は負極活物質層と集電体を含み、前記負極活物質層は本発明に記載された負極活物質を含む。
【0016】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質層の面密度は0.077mg/mm~0.121mg/mmであり、前記負極活物質層の圧縮密度(compacted density)は1.70g/cm~1.92g/cmである。
【0017】
いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は0.080mg/mm~0.120mg/mmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は0.085mg/mm~0.110mg/mmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は0.090mg/mm~0.100mg/mmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は、0.077mg/mm、0.080mg/mm、0.085mg/mm、0.090mg/mm、0.095mg/mm、0.100mg/mm、0.105mg/mm、0.110mg/mm、0.115mg/mm、0.120mg/mm、0.121mg/mmであり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0018】
いくつかの実施例において、前記負極活物質層の圧縮密度は1.75g/cm~1.90g/cmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の圧縮密度は1.80g/cm~1.85g/cmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の圧縮密度は、1.70g/cm、1.75g/cm、1.78g/cm、1.80g/cm、1.85g/cm、1.85g/cm、1.88g/cm、1.90g/cm、1.92g/cmであり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0019】
本発明の実施例によれば、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層の(004)面のピーク面積C004'と(110)面のピーク面積C110'の比S'は10~20の範囲内にある。いくつかの実施例において、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層のS'は12~18の範囲内にある。いくつかの実施例において、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層のS'は14~16の範囲内にある。いくつかの実施例において、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層のS'は10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は6N/m~15N/mである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は8N/m~14N/mである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は10N/m~12N/mである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は6N/m、7N/m、8N/m、9N/m、10N/m、11N/m、12N/m、13N/m、14N/m、15N/mであり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質層は、20%~40%の孔隙率を有する。いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、25%~35%の孔隙率を有する。いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、28%~32%の孔隙率を有する。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の孔隙率は20%、22%、25%、28%、30%、32%、35%、38%、40%であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0022】
本発明の実施例によれば、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は280℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は300℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は320℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は340℃以上である。
【0023】
本発明の実施例によれば、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は130℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は140℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は150℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は160℃以上である。
【0024】
本発明のさらなる一態様によれば、本発明は、本発明に記載された電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0025】
本発明の他の態様および利点について、一部的に以下の内容に述べられ、示され、又は本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下では、本発明の実施例を説明するために、本発明の実施例または先行技術を説明するための必要な図面を概略に説明する。以下に説明される図面は、本発明の実施例の一部にすぎないことは自明である。当業者にとって、創造的労力をかけない前提で、依然としてこれらの図面に例示される構造により他の実施例の図面を得ることができる。
図1図1は、比較例2で使用した負極活物質を500倍に拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図2図2は、実施例5で使用した負極活物質を500倍に拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図3図3は、実施例5で使用した負極活物質のサイクル後の外観の写真を示し、この写真にはリチウム析出現象はない。
図4図4は、比較例1で使用した負極活物質のサイクル後の外観の写真を示し、この写真にリチウム析出現象を示す。
図5図5は、比較例2で使用した負極活物質のサイクル後の外観の写真を示し、この写真には厳重なリチウム析出現象を示す。
図6図6は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の25℃でのサイクル数とサイクル容量維持率との関係を示す曲線を示す。
図7図7は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の45℃でのサイクル数とサイクル容量維持率との関係を示す曲線を示す。
図8図8は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の25℃でのサイクル数とサイクル膨張率との関係を示す曲線を示す。
図9図9は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の45℃でのサイクル数とサイクル膨張率との関係を示す曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の明細書では、同じまたは類似の部件および同じまたは類似的な機能を備えた部件は、類似的な符号で示される。本発明に記載された、図面と関連する実施例は、例示的で図式的であり、本発明を概に理解するために使用される。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0028】
具体的な実施形態および請求の範囲において、「少なくとも一つ」という用語によって接続された項のリストは、リストされた項の任意の組み合わせを意味する。例えば、項Aと項Bがリストされている場合、「AとBの少なくとも一つ」は、Aのみ、Bのみ、またはAとBを意味する。他の実例において、項A、項B、および項Cがリストされている場合、「A、B、およびCの少なくとも一つ」は、Aのみ、またはBのみ、Cのみ、AとB(Cを除く)、AとC(Bを除く)、BとC(Aを除く)、またはA、B、Cのいずれを意味する。項Aは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項Cは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。
【0029】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の汎用に伴い、その性能の向上がまずまず求められている。エネルギー密度、サイクル特性及びレート特性は、リチウムイオン電池の性能を評価するための重要な指標である。今まで、リチウムイオン電池のエネルギー密度、サイクル特性及びレート特性を同時に改善できる有効な手段は開発されていません。
【0030】
本発明は、負極活物質を最適化することにより、上述問題を解決する。具体的には、本発明は、負極活物質を提供し、前記負極活物質は炭素材料を含み、ここで、前記炭素材料は、以下の関係を満たし:6<Gr/K<16、ここで、Grは、X線回折法で測定して得られた前記炭素材料の黒鉛化度であり、且つ、Kは、ラマン分光法で測定して得られた、前記炭素材料の1250cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Idと、前記炭素材料の1500cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Igの比即ちId/Igであり、前記Kは0.06~0.15である。
【0031】
いくつかの実施例において、前記炭素材料の黒鉛化度GrとKは、以下の関係を満たし:8<Gr/K<15。いくつかの実施例において、前記炭素材料の黒鉛化度GrとKは、以下の関係を満たし:10<Gr/K<12。いくつかの実施例において、前記炭素材料の黒鉛化度GrとKの比Gr/Kは、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5であり、或いは前記任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0032】
いくつかの実施例において、前記炭素材料のKは、0.08~0.10である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のKは、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15であり、或いは前記任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0033】
炭素材料のKは、材料の表面欠陥と結晶領域の割合を表示しうる。Kは、ラマン分光法により測定される。具体的には、523nmの光源(遮光強度5%)を使用して、100μm×100μmの領域に100箇所を採取し、炭素材料の1250cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Idと炭素材料の1500cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Igの比を計算して、炭素材料のK値として、平均値を求める。
【0034】
炭素材料の「黒鉛化度」とは、炭素材料が高温または二次加熱において、非黒鉛質炭素が黒鉛状炭素に変換される程度を指す。炭素材料の黒鉛化度は以下の方法により得られる。具体的には、内部標準物質として高純度シリコン粉末を使用して、炭素材料の002面の面間隔(d002)をX線回折法で測定し、炭素材料の黒鉛化度Grを以下の式に従って計算し:Gr=(0.344-d002)/0.086×100%。
【0035】
負極活物質における炭素材料の黒鉛化度とK値は、リチウムイオンの挿入と脱離に影響を与える。例えば、リチウムイオン電池の放電サイクル中では、リチウムイオンが負極に移動し、負極がリチウムイオンを受け入れ、炭素材料の黒鉛化度とK値は、リチウムイオンが炭素材料粒子に挿入される速度に影響を与える。ハイレート放電の条件下で、リチウムイオンが速かに炭素材料粒子の内部に挿入と拡散できなければ、リチウムイオンが表面に析出し、リチウムイオン電池のサイクル減衰を加速する。リチウムイオン電池の充電サイクル中では、リチウムイオンが負極から脱離される。リチウムイオンが速かに負極から脱離できなければ、炭素材料粒子の内部にデッドリチウム(dead lithium)が形成され、同様に、リチウムイオン電池のサイクル減衰を加速する。炭素材料の黒鉛化度とK値は、リチウムイオン電池の初回サイクル中に形成される固体電解質界面(SEI)膜の厚さにも影響し、それによってリチウムイオン電池の初回クーロン効率に影響を与えるため、さらに、リチウムイオン電池のエネルギー密度に影響を与える。
【0036】
炭素材料が比較的高い黒鉛化度(例えば、Gr>0.96)を有すると、炭素材料の結晶面間隔が狭くなり、炭素材料からリチウムイオンの脱離にとって不利である。炭素材料が比較的低い黒鉛化度(例えば、Gr<0.92)を有すると、炭素材料中のSP結合が比較的多く、炭素材料の各層が互いに拘束され、炭素材料の構造がより安定する。
【0037】
炭素材料の黒鉛化度Gr、および炭素材料の黒鉛化度とKの比Gr/Kが上述範囲内にあると、リチウムイオン電池は、大幅に改善されたエネルギー密度、サイクル特性、およびレート特性を有する。
【0038】
本発明の実施例によれば、前記炭素材料の黒鉛化度Grは0.92~0.96である。いくつかの実施例において、前記炭素材料の黒鉛化度Grは、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96であり、或いは前記任意の二つの値で構成される範囲内にある。炭素材料の黒鉛化度が上述範囲内にあると、リチウムイオン電池のエネルギー密度、サイクル特性、およびレート特性をより改善することに寄与する。
【0039】
本発明の実施例によれば、前記炭素材料は、以下の関係の少なくとも一つを満たし:
Lc/S<9、
La/S>20、
ここで、
Laは、X線回折法で測定した前記炭素材料結晶の水平軸に沿った結晶子サイズであり、単位はnmであり、
Lcは、X線回折法で測定した前記炭素材料結晶の垂直軸に沿った結晶子サイズであり、単位はnmであり、
Sは、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質の(004)面のピーク面積C004と(110)面のピーク面積C110の比であり、
前記Lcは45未満であり、前記Laは50超である。
【0040】
いくつかの実施例において、Lc/S<8である。いくつかの実施例において、Lc/S<7である。いくつかの実施例において、Lc/S<6である。いくつかの実施例において、Lc/S>2である。いくつかの実施例において、Lc/S>3である。いくつかの実施例において、Lc/Sは、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5であり、或いは前記任意の二つの端点値で構成される範囲内にある。
【0041】
いくつかの実施例において、La/S>22である。いくつかの実施例において、La/S>25である。いくつかの実施例において、La/S>28である。いくつかの実施例において、La/S>30である。いくつかの実施例において、La/S<60である。いくつかの実施例において、La/S<55である。いくつかの実施例において、La/S<50である。いくつかの実施例において、La/Sは、22、25、28、30、35、40、45、50であり、或いは前記任意の二つの端点値で構成される範囲内にある。
【0042】
いくつかの実施例において、前記Lcは40未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは35未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは30未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは25未満である。いくつかの実施例において、前記Lcは10超である。いくつかの実施例において、前記Lcは15超である。いくつかの実施例において、前記Lcは20超である。いくつかの実施例において、前記Lcは、20、22、25、28、30、35、40、43であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0043】
いくつかの実施例において、前記Laは60超である。いくつかの実施例において、前記Laは80超である。いくつかの実施例において、前記Laは100超である。いくつかの実施例において、前記Laは110超である。いくつかの実施例において、前記Laは120超である。いくつかの実施例において、前記Laは130超である。いくつかの実施例において、前記Laは150超である。いくつかの実施例において、前記Laは180超である。いくつかの実施例において、前記Laは200超である。いくつかの実施例において、前記Laは220超である。いくつかの実施例において、前記Laは300未満である。いくつかの実施例において、前記Laは250未満である。いくつかの実施例において、前記Laは、55、60、70、80、90、100、120、150、180、200、230、250であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0044】
炭素材料結晶の結晶子サイズは、サイクル中のリチウムイオンの挿入と脱離に影響を与える。X線回折パターンから得られた負極活物質の(004)面のピーク面積C004と(110)面のピーク面積C110の比Sは、負極活物質の配向度を表示しうる。Sが大きいほど、負極活物質の異方性が大きくなる。Sが小さいほど、負極活物質の等方性が大きくなる。炭素材料の結晶子サイズ、および結晶子サイズと配向度の比が上述範囲内にあると、リチウムイオン電池のエネルギー密度、サイクル特性、およびレート特性をより改善することに寄与する。
【0045】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>23.0、Dv90とDv10の単位はμmである。「Dv90」とは、負極活物質の体積基準での粒度分布において、小粒子径側からの累積体積が90%となる粒子径を指し、即ち、当該粒子径よりも小さい負極活物質の体積は、負極活物質の総体積の90%を占める。「Dv10」とは、負極活物質の体積基準での粒度分布において、小粒子径側からの累積体積が10%となる粒子径を指し、即ち、当該粒子径よりも小さい負極活物質の体積は、負極活物質の総体積の10%を占める。負極活物質の粒子サイズは、粒度測定装置(例えば、Malvern粒度分布測定装置)によって測定して得られる。
【0046】
いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>25.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>28.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90>30.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<50.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<45.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<40.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv10値とDv90値は以下の関係を満たし:Dv90/Dv10+Dv90<35.0。いくつかの実施例において、前記負極活物質のDv90/Dv10+Dv90は、24、26、28、30、33、35であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。上述関係式において、Dv90とDv10の単位はμmである。
【0047】
負極活物質の粒子サイズが比較的大きいと、負極活物質の比表面積が比較的小さいため、リチウムイオン電池は、初回のサイクル中で、比較的少ないリチウムイオンを消費するだけで、電解液と固体電解質界面(SEI)膜を形成でき、それにより、リチウムイオン電池の初回クーロン効率を向上させる。また、比較的大きい粒子サイズは、リチウムイオンの挿入と脱離の経路を延長できるため、リチウムイオン電池の動的特性を低下させる。なお、比較的大きい粒子サイズは、更に、リチウムイオン電池のサイクル後の膨張に悪影響を及ぼす。逆に、負極活物質の粒子サイズが比較的小さいと、負極活物質の比表面積が比較的大きいため、リチウムイオン電池は、初回のサイクル中で、電解液とSEI膜を形成するために、より多いリチウムイオンを消費することが必要であり、それにより、リチウムイオン電池の初回クーロン効率を低下させる。比較的小さい粒子サイズは、リチウムイオンの挿入と脱離の経路を短縮するため、リチウムイオン電池の動力学特性を影響する。なお、比較的小さい粒子サイズは、更に、リチウムイオン電池のサイクル後の膨張に悪影響を及ぼす。負極活物質のDv90とDv10が上述関係を満たすと、イオン電池の各特性をバランスし、リチウムイオン電池のエネルギー密度、サイクル特性、およびレート特性をより改善することに寄与する。
【0048】
本発明は、正極、負極、セパレーター及び電解液を含む電気化学装置も提供する。以下では、本発明に用いられる正極、負極、セパレーター及び電解液に対して説明する。
【0049】
負極
本発明の電気化学装置に用いられる負極は、負極集電体と負極活物質層を含み、前記負極活物質層は本発明に記載された負極活物質を含む。
【0050】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質層の面密度は0.077mg/mm~0.121mg/mmであり、前記負極活物質層の圧縮密度は1.70g/cm~1.92g/cmである。
【0051】
いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は0.080mg/mm~0.120mg/mmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は0.085mg/mm~0.110mg/mmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は0.090mg/mm~0.100mg/mmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の面密度は、0.077mg/mm、0.080mg/mm、0.085mg/mm、0.090mg/mm、0.095mg/mm、0.100mg/mm、0.105mg/mm、0.110mg/mm、0.115mg/mm、0.120mg/mm、0.121mg/mmであり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。負極活物質層の面密度は以下の方法により測定して得られる。具体的に、電池を0SOC%まで放電し、電池を分解し、洗浄し、乾燥して、電子天秤を使用して一定の面積Aを有する負極(負極集電体の両面に負極活物質層を塗布した)を秤量し、その重量をWとする、溶媒を使用して負極活物質層を洗い落とし、乾燥し、負極集電体の重量を測定して、当該重量をWとする。以下の式により負極活物質層の面密度を計算し:(W-W)/(A×2)。
【0052】
いくつかの実施例において、前記負極活物質層の圧縮密度は1.75g/cm~1.90g/cmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の圧縮密度は1.80g/cm~1.85g/cmである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の圧縮密度は、1.70g/cm、1.75g/cm、1.78g/cm、1.80g/cm、1.85g/cm、1.85g/cm、1.88g/cm、1.90g/cm、1.92g/cmであり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。負極活物質層の圧縮密度は以下の方法により測定して得られる。具体的に、電池を0SOC%まで放電し、電池を分解し、洗浄し、乾燥して、電子天秤を使用して一定の面積Aを有する負極(負極集電体の両面に負極活物質層を塗布した)を秤量し、その重量をWとし、そして、万分の一のマイクロ-メーター(Ten-thousandth micrometer)を使用して、負極の厚さTを測定する。溶媒を使用して負極活物質層を洗い落とし、乾燥し、負極集電体の重量を測定して、当該重量をWとし、そして、万分の一のマイクロ-メーターを使用して、負極集電体の厚さTを測定する。以下の式により、負極集電体の一側に配置された負極活物質層の重量Wと厚さT、及び負極活物質層の圧縮密度を計算し:
=(W-W)/2
=(T-T)/2
圧縮密度=W/(T×A)。
【0053】
本発明の実施例によれば、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層の(004)面のピーク面積C004'と(110)面のピーク面積C110'の比S'は10~20の範囲内にある。いくつかの実施例において、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層のS'は12~18の範囲内にある。いくつかの実施例において、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層のS'は14~16の範囲内にある。いくつかの実施例において、満放電された状態で、X線回折パターンで測定して得られた前記負極活物質層のS'は10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。S'は、負極活物質層の配向度を表示しうる。S'が大きいほど、負極活物質層の異方性が大きくなる。S'が小さいほど、負極活物質層の等方性が大きくなる。
【0054】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は6N/m~15N/mである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は8N/m~14N/mである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は10N/m~12N/mである。いくつかの実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間のピール強度は6N/m、7N/m、8N/m、9N/m、10N/m、11N/m、12N/m、13N/m、14N/m、15N/mであり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0055】
負極活物質層と負極集電体との間のピール強度は引張試験により得られる。具体的に、Instron(33652型)測定装置を使用して、負極活物質層と負極集電体との間の結着を測定する。より具体的に、長さ15~20mmの極シートを取り、3M両面テープでそれを鋼板に固定し、テープを負極活物質層の表面に貼り付け、当該テープの一側を等幅のペーパーテープに接続し、引張機のリミットブロックを適切な位置に調整し、ペーパーテープを上に折り、40mmスライドして、スライド速度は50mm/minであり、180°(即ち、反方向に延伸を行う)での負極活物質層と負極集電体との間のピール強度を測定する。
【0056】
本発明の実施例によれば、前記負極活物質層は、20%~40%の孔隙率を有する。いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、25%~35%の孔隙率を有する。いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、28%~32%の孔隙率を有する。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の孔隙率は20%、22%、25%、28%、30%、32%、35%、38%、40%であり、或いは上述任意の二つの値で構成される範囲内にある。負極活物質層の孔隙率は、「GB/T24586-2009鉄鉱石表観密度真密度和孔隙率的測定」の標準試験により得られる。
【0057】
負極活物質層の面密度が一定である場合、負極活物質層の圧縮密度を低下させると、負極活物質層の異方性と孔隙率が低下し、且つ負極活物質層と負極集電体との間のピール強度が低下する。負極活物質層の圧縮密度が一定の場合、負極活物質層の面密度を低下させると、負極活物質層の異方性が増大し、負極活物質層の孔隙率が低下し、且つ負極活物質層と負極集電体との間のピール強度が低下する。負極活物質層の面密度、圧縮密度、配向度S'、孔隙率及び/又は負極活物質層と負極集電体との間のピール強度が上述範囲内にあると、リチウムイオン電池のエネルギー密度、サイクル特性、およびレート特性をより改善することに寄与する。
【0058】
本発明の実施例によれば、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は280℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は300℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は320℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満充電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は340℃以上である。電気化学装置が満充電された状態で、リチウムイオンが負極材料の空孔に挿入され、このとき、負極活物質層の熱分解温度は、負極の高温エージング程度を表すことができ、即ち、負極活物質の分解温度が高いほど、その高温エージング程度が低くなり、リチウムイオン電池の高温サイクル特性が良好になる。
【0059】
本発明の実施例によれば、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は130℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は140℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は150℃以上である。いくつかの実施例において、前記電気化学装置が満放電された状態で、前記負極活物質層の熱分解温度は160℃以上である。電気化学装置が満放電された状態で、リチウムイオンはすべて負極から脱離され、負極活物質層の熱分解温度は、間接的にSEIフィルムの安定性を表示することができ、即ち、負極活物質層の熱分解温度が高いほど、SEIフィルムの熱安定性が良好になり、リチウムイオン電池のサイクル中でSEIフィルムを修復するために消費されたリチウムイオンが少なくなり、リチウムイオン電池のサイクル特性が良好になる。
【0060】
負極活物質層の熱分解温度は、示差走査熱量法(DSC)により測定しうる。具体的に、示差走査熱量計を採用し、固定の昇温速度で、0~800℃にて、測定用負極活物質層を加熱し、熱分解温度を測定する。
【0061】
本発明で使用される前記負極集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォーム、導電性金属を覆ったポリマー基板、およびそれらの組み合わせから選択してもよい。
【0062】
本発明の実施例によれば、前記負極は、さらに導電層を含む。いくつかの実施態様において、前記導電層の導電材は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電材を含んでもよい。導電材の非限定的な例として、炭素による材料(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなど)、金属による材料(例えば、金属粉末、金属繊維など、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀など)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)、およびそれらの混合物を含む。
【0063】
本発明の実施例によれば、前記負極は、さらにバインダーを含み、前記バインダーは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、またはナイロンなど、からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0064】
正極
正極は、正極集電体及び前記正極集電体に配置された正極活物質材料を含む。正極活物質材料の具体的な種類は、特に限定されず、必要に応じて選択すればよい。
【0065】
いくつかの実施態様において、正極活物質材料は、リチウム(Li)を吸蔵および放出可能な正極材料を含む。リチウム(Li)を吸蔵および放出可能な正極材料の例として、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸バナジウムオキシドリチウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、およびリチウムリッチマンガン系材料を含んでもよい。
【0066】
具体的には、コバルト酸リチウムの化学式は、化学式1で示してもよい。
(化1)
LiCoM12-c 化学式1
ここで、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)およびシリコン(Si)からなる群より選ばれる少なくとも一つを表し、x、a、b及びcの値は、それぞれ、0.8≦x≦1.2、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、-0.1≦c≦0.2の範囲内にある。
【0067】
ニッケルコバルトマンガン酸リチウム又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムの化学式は、化学式2で示してもよい。
(化2)
LiNiM22-f 化学式2
ここで、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)およびシリコン(Si)からなる群より選ばれる少なくとも一つを表し、y、d、e及びfの値は、それぞれ、0.8≦y≦1.2、0.3≦d≦0.98、0.02≦e≦0.7、-0.1≦f≦0.2の範囲内にある。
【0068】
マンガン酸リチウムの化学式は、化学式3で示してもよい。
(化3)
LiMn2-gM34-h 化学式3
ここで、M3は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一つを表し、z、g及びhの値は、それぞれ、0.8≦z≦1.2、0≦g<1.0及び-0.2≦h≦0.2の範囲内にある。
【0069】
いくつかの実施例において、前記正極活物質材料層の重量は、前記負極活物質層の重量の1.5~15倍である。いくつかの実施例において、前記正極活物質材料層の重量は、前記負極活物質層の重量の3~10倍である。いくつかの実施例において、前記正極活物質材料層の重量は、前記負極活物質層の重量の5~8倍である。いくつかの実施例において、前記正極活物質材料層の重量は、前記負極活物質層の重量の1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍又は15倍である。
【0070】
いくつかの実施例において、正極活物質材料層は、表面にコーティングを有してもよく、或いはコーティングを有する別の化合物と混合してもよい。前記コーティングは、塗布された元素の酸化物、塗布された元素の水酸化物、塗布された元素のオキシ水酸化物、塗布された元素のオキシ炭酸塩(oxycarbonate)、および塗布された元素のヒドロキシ炭酸塩(hydroxycarbonate)からなる群より選ばれる少なくとも一つの塗布された元素の化合物を含んでもよい。コーティングに使用される化合物は、アモルファスまたは結晶性であってもよい。コーティング中に含有される塗布された元素は、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、F、およびそれらの混合物を含んでもよい。正極活物質材料の性能に悪影響を及ぼさない限り、任意の方法でコーティングを形成してもよい。例えば、前記方法は、スプレー、ディッピングなどの、当業者にとって公知の任意の塗布方法を含んでもよい。
【0071】
いくつかの実施態様において、正極活物質材料層は、粘着剤を更に含み、そして、選択的に、さらに正極導電材を含む。
【0072】
粘着剤は、正極活物質材料粒子同士の結合を高め、また正極活物質材料と集電体の結合を高めることができる。粘着剤の非限定的な例として、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを含む。
【0073】
正極活物質材料層は正極導電材を含むことで、電極に導電性を付与する。前記正極導電材は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電材を含んでもよい。正極導電材の非限定的な例として、炭素による材料(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維など)、金属による材料(例えば、金属粉末、金属繊維など、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)、およびそれらの混合物を含む。
【0074】
本発明による電気化学装置に使用される正極集電体は、アルミニウム(Al)であり得るが、これに限定されない。
【0075】
電解液
本発明の実施例に使用される電解液は、先行技術で公知の電解液であり得る。
本発明の実施例の電解液に使用される電解質は、例えばLiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiSbF、LiSOF、LiN(FSOなどの無機リチウム塩、例えばLiCFSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、環状1,3-ヘキサフルオロプロパンジスルホンイミドリチウム、環状1,2-テトラフルオロエタンジスルホンイミドリチウム、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSOのフッ素含有有機リチウム塩、例えばリチウムビス(オキサラト)ボラート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートなどのジカルボン酸錯体リチウム塩を含むが、これらに限定されない。なお、上述電解質は、一種を単独で使用してもよく、二種又は二種以上を同時に使用してもよい。いくつかの実施例において、電解質はLiPFとLiBFの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、電解質はLiPF又はLiBF等の無機リチウム塩と、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO等のフッ素含有有機リチウム塩との組み合わせを含む。いくつかの実施例において、電解質はLiPFを含む。
【0076】
いくつかの実施例において、電解質の濃度は、0.8mol/L~3mol/Lの範囲内にあり、例えば0.8mol/L~2.5mol/Lの範囲内にあり、0.8mol/L~2mol/Lの範囲内にあり、1mol/L~2mol/Lの範囲内にあり、また、例えば1mol/L、1.15mol/L、1.2mol/L、1.5mol/L、2mol/L又は2.5mol/Lである。
【0077】
本発明の実施例の電解液に使用される溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状エーテル、又は鎖状エーテルを含むが、これらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施例において、環状カーボネートは、エチレンカーボネート(ethylenecarbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylenecarbonate,PC)及びブチレンカーボネートを含むが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの実施例において、環状カーボネートは、3~6個の炭素原子を有する。
【0080】
いくつかの実施例において、鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、フッ素で置換された鎖状カーボネートとして、例えば、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、及び2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートを含むが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルは、γ-ブチロラクトンとγ-バレロラクトンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルの水素の一部はフッ素で置換されてもよい。
【0082】
いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ピバリン酸メチルおよびピバリン酸エチルを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルの水素の一部はフッ素で置換されてもよい。いくつかの実施例において、フッ素で置換された鎖状カルボン酸エステルは、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチルおよびトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルを含むが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施例において、環状エーテルは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンおよびジメトキシプロパンを含むが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施例において、鎖状エーテルは、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタンおよび1,2-エトキシメトキシエタンを含むが、これらに限定されない。
【0085】
いくつかの実施例において、本発明の電解液に使用される溶媒は上述の一種又は複種の溶媒を含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に使用される溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、及びそれらの組む合せを含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に使用される溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸n-プロピル、酢酸エチル、及びそれらの組む合せ、からなる群より選ばれる有機溶媒を含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に使用される溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン及びそれらの組む合せを含む。
【0086】
本発明の実施例の電解液に使用される添加剤は、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート、硫黄-酸素二重結合を含む化合物を含むが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施例において、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネートは、具体的に、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、又は1,2-ジメチルビニレンカーボネートからの少なくとも一つを含むが、これらに限定されない。
【0088】
いくつかの実施例において、硫黄-酸素二重結合を含む化合物は、エチレンスルファート、1,2-プロパンジオールスルファート、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン又は3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンからの少なくとも一つを含むが、これらに限定されない。
【0089】
セパレーター
いくつかの実施態様において、正極と負極の間には、短絡を防止するためにセパレーターが設けられている。本発明の実施例に使用されるセパレーターの材料と形状は、特に制限はなく、先行技術で開示された任意のものであってもよい。いくつかの実施態様において、セパレーターは、本発明の電解液に対して安定である材料から形成されたポリマーまたは無機物等を含む。
【0090】
例えば、セパレーターは、基材層および表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、膜または複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも一つである。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用してもよい。多孔質構造は、セパレーターの耐熱性、耐酸化性及び電解質浸潤性を向上させ、セパレーターと極シートとの間の接着性を高める。
【0091】
基材層の少なくとも一つの表面上に表面処理層が設けられており、表面処理層は、ポリマー層または無機物層であってもよく、ポリマーと無機物とを混合してなる層であってもよい。
【0092】
無機物層は、無機粒子とバインダーを含み、無機粒子は、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、および硫酸バリウムからなる群より選ばれる一つまたは複数の組み合わせである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる一つまたは複数の組み合わせである。
【0093】
ポリマー層には、ポリマーが含まれ、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルのポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0094】
電気化学装置
本発明は、正極、電解液、及び負極を含む電気化学装置を更に提供し、前記正極は正極活物質材料層と正極集電体を含み、前記負極は負極活物質層と負極集電体を含み、前記負極活物質層は本発明に記載された負極活物質を含む。
【0095】
本発明の電気化学装置は、電気化学反応が発生する任意の装置を含み、その具体例として、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、またはコンデンサを含む。特に、当該電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0096】
電子装置
本発明は、さらに、本発明による電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0097】
本発明の電気化学装置の使用は、特に制限なく、先行技術で公知の任意の電子装置に使用される。いくつかの実施態様において、本発明の電気化学装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー及びリチウムイオンコンデンサーなどに使用されるが、これらに限定されない。
【0098】
以下では、例としてリチウムイオン電池を挙げて、具体的な実施例を参照してリチウムイオン電池の調製を説明し、当業者は、本発明に記載された調製方法が例示であるだけで、他のあらゆる好適な調製方法が本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0099】
実施例
以下では、本発明によるリチウムイオン電池の実施例及び比較例については、説明して性能評価を行う。
【0100】
一、リチウムイオン電池の調製
1、負極の調製
人造黒鉛を粉砕し、Dv90<25μmになるように、篩い分けを行って粒度分布を制御し、一次粒子が得られた。一次粒子にバインダーを添加して結着を行って、Dv90<45μmになるように、篩い分けを行って粒度分布を制御し、二次粒子が得られた。一次粒子と二次粒子を2300~3500℃で黒鉛化処理して、次に、処理後の一次粒子と二次粒子を混合して篩い分けを行って、黒鉛負極材料が得られた。
【0101】
上述のように調製した黒鉛負極材料、添加剤、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)および増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を97:1.5:1.5の重量比で混合し、適量の脱イオン水において十分に攪拌して混合し、均一で沈降しない負極スラリーを形成させた。負極集電体(銅箔)上に負極スラリーを塗布、乾燥し、冷間圧延して、負極活物質層が得られ、その後、切片して裁断した後、負極が得られた。
【0102】
負極中の黒鉛材料の黒鉛化度とKは、原料、粒度、黒鉛化処理温度、及び一次粒子と二次粒子の配合比により制御することができる。
【0103】
2、正極の調製
コバルト酸リチウム(LiCoM12-c、x、a、b及びcの値はそれぞれ以下の範囲内にあり:0.8≦x≦1.2、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、-0.1≦c≦0.2、M1はマンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、およびそれらの組み合わせである)、アセチレンブラック、及びフッ化ビニリデンフルオリド(PVDF)を、95:2:3の重量比で適量の溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に、十分に攪拌して混合し、均一な正極スラリーを形成させた。当該正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔上に塗布、乾燥し、冷間圧延して、正極活物質材料層が得られ、その後、切片して裁断した後、正極が得られた。
【0104】
3、電解液の調製
乾燥したアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の重量比で混合して、次に、フルオロエチレンカーボネート2%、1,3-プロパンスルトン2%、ブタンジニトリル2%を添加して、溶解して十分に攪拌した後、リチウム塩であるLiPFを添加して、均一に混合した後、LiPFの濃度が1mol/Lである電解液が得られた。
【0105】
4、セパレーターの調製
ポリエチレン(PE)多孔質ポリマーフィルムをセパレーターとする。
【0106】
5、リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たすように、正極、セパレーター、負極を順に積層して、次に、巻回してベアセルが得られる。タブを溶接した後、ベアセルをアルミニウム包材外装に置き、上述のように調製された電解液を乾燥されたベアセルに注入し、真空パッケージ、静置、形成(formation)、整形、容量測定などの工程を経って、リチウムイオン電池が得られた。
【0107】
二、測定方法
1、炭素材料のK値の測定方法
ラマン分光法により、523nmの光源(遮光強度5%)を使用して、100μm×100μmの領域に100箇所を採取し、炭素材料の1250cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Idと炭素材料の1500cm-1~1650cm-1におけるピーク強度Igの比を計算して、炭素材料のK値として、平均値を求める。
【0108】
2、炭素材料の黒鉛化度の測定方法
内部標準物質として高純度シリコン粉末(純度≧99.99%)を使用し、炭素材料:シリコン=5:1の重量比で混合して、均一に研磨し、プレスして、シート状のサンプルを調製した。X線回折計(CuKαターゲット)を使用して、炭素材料の002面の面間隔(d002)を測定し、炭素材料の黒鉛化度Grを以下の式に従って計算した。
Gr=(0.344-d002)/0.086×100%。
【0109】
3、負極活物質の配向度S及び負極活物質層の配向度S'の測定方法
中華人民共和国機械工業規格JB/T4220-2011「人造黒鉛の格子定数の測定方法」に従い、負極活物質と負極活物質層のX線回折パターンにおける(004)面回折線パターンと(110)面回折線パターンを測定した。試験条件は以下のとおりである。X線はCuKα輻射を採用し、CuKα輻射はフィルターまたはモノクロメーターによって除去される。X線管の動作電圧は35-45kVであり、動作電流は30-50mAである。カウンターの走査速度は0.3(°)/minである。(004)面の回折線パターンを記録する際に、回折角2θの走査範囲は52°~58°である。(110)面の回折線パターンを記録する際に、回折角2θの走査範囲は70°~79°である。
【0110】
(004)面の回折線パターンから得られた負極活物質のピーク面積をC004とする。(110)面の回折線パターンから得られた負極活物質のピーク面積をC110とする。負極活物質のC004/C110の比を計算して、Sとする。
【0111】
(004)面の回折線パターンから得られた負極活物質層のピーク面積をC004'とする。(110)面の回折線パターンから得られた負極活物質層のピーク面積をC110'とする。負極活物質のC004'/C110'の比を計算して、S'とする。
【0112】
4、炭素材料の結晶子サイズの測定方法
X線回折計を使用して、負極活物質における炭素材料の水平軸に沿った結晶子サイズLa及び垂直軸に沿った結晶子サイズLcを分析して測定した。
【0113】
5、負極活物質の粒子径の測定方法
マルバーン粒度測定装置を採用して負極活物質の粒子径を測定する。具体的には、負極活物質を分散剤であるエタノールに分散して、30分超音波処理した後、サンプルをマルバーン粒度測定装置内に入れて、負極活物質のDv90およびDv10を測定した。
【0114】
6、負極活物質層の面密度の測定方法
電池を0SOC%まで放電し、電池を分解し、洗浄して、乾燥し、電子天秤を使用して一定の面積Aを有する負極(負極集電体の両面に負極活物質層を塗布した)を秤量し、その重量をWとする、溶媒を使用して負極活物質層を洗い落とし、乾燥し、負極集電体の重量を測定し、Wとする。以下の式により負極活物質層の面密度を計算し:(W-W)/(A×2)。
【0115】
7、負極活物質層の圧縮密度の測定方法
電池を0SOC%まで放電し、電池を分解し、洗浄して、乾燥し、電子天秤を使用して一定の面積Aを有する負極(負極集電体の両面に負極活物質層を塗布した)を秤量し、その重量をWとし、そして、万分の一のマイクロ-メーターを使用して、負極の厚さTを測定する。溶媒を使用して負極活物質層を洗い落とし、乾燥し、負極集電体の重量を測定し、Wとし、そして、万分の一のマイクロ-メーターを使用して、負極集電体の厚さTを測定する。以下の式により、負極集電体の一側に配置された負極活物質層の重量Wと厚さT、及び負極活物質層の圧縮密度を計算する。
=(W-W)/2
=(T-T)/2
圧縮密度=W/(T×A)。
【0116】
8、負極活物質層と負極集電体との間のピール強度の測定方法
Instron(型番33652)引張装置を使用して、負極活物質層と負極集電体との間の結着を測定する。具体的に、長さ15~20mmの極シートを取り、3M両面テープで鋼板に固定し、テープを負極活物質層の表面に貼り付け、当該テープの一側を等幅のペーパーテープに接続し、引張機のリミットブロックを適切な位置に調整し、ペーパーテープを上に折り、40mmスライドして、スライド速度は50mm/minであり、180°(即ち、反方向に延伸を行う)での負極活物質層と負極集電体との間のピール強度を測定する。
【0117】
9、負極活物質層の孔隙率の測定方法
サンプルである負極活物質層を完全なウェーハに調製した。各実施例または比較例では、30個のサンプルを測定し、各サンプルの体積は約0.35cmである。「GB/T24586-2009鉄鉱石表観密度真密度和孔隙率的測定」の標準に準じて、負極活物質層の孔隙率を測定する。
【0118】
10、負極活物質層の浸潤時間の測定方法
電解液1mLを負極活物質層に滴下し、計時を開始する。負極活物質層の表面の電解液が完全になくなるまで、計時を停止する。各実施例または比較例では、100個のデータを測定し、平均値を計算し、負極活物質層の浸潤時間とする。
【0119】
11、負極活物質層の熱分解温度の測定方法
示差走査熱量計を採用し、固定の昇温速度で、0~800℃にて、満充電又は満放電された状態で分解された負極活物質層の熱分解温度を加熱して測定する。
【0120】
12、リチウムイオン電池のサイクル容量維持率の測定方法
リチウムイオン電池を45℃で10分間静置し、そして、0.7Cの電流で4.4Vまで定電流充電し、4.4Vの定電圧にて0.05Cまで放電し、10分間静置する。その後、0.7Cの電流で3.0Vまで定電流充電し、10分間静置する。これを一つのサイクルとして、初回サイクルの放電容量を記録する。上述手順を400回繰り返し、サイクル後の放電容量を記録する。以下の式により、リチウムイオン電池のサイクル容量維持率を計算する。
サイクル容量維持率=(サイクル後の放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%
【0121】
作業温度が25℃であり、サイクル数が800回である以外、上述手順と基本的に同じ手順に従って、25℃でのリチウムイオン電池のサイクル容量維持率を測定する。
【0122】
13、リチウムイオン電池のサイクル膨張率の測定方法
リチウムイオン電池を45℃で10分間静置し、そして、0.7Cの電流で4.4Vまで定電流充電し、4.4Vの定電圧にて0.05Cまで放電し、10分間静置する。その後、0.7Cの電流で3.0Vまで定電流充電し、10分間静置する。これを一つのサイクルとして、初回サイクルのリチウムイオン電池の厚さを記録する。上述手順を400回繰り返し、サイクル後のリチウムイオン電池の厚さを記録する。以下の式により、リチウムイオン電池のサイクル膨張率を計算する。
サイクル膨張率=(サイクル後の厚さ/初回サイクルの厚さ)×100%
【0123】
作業温度が25℃であり、サイクル数が800回である以外、上述手順と基本的に同じ手順に従って、25℃でのリチウムイオン電池のサイクル膨張率を測定する。
【0124】
14、リチウムイオン電池のリチウム析出現象の測定方法
25℃で、リチウムイオン電池を0.5Cの電流で3.0Vまで定電流放電し、10分間静置してから、1.5Cの電流で4.1Vまで定電流充電し、4.1Vの電圧で0.05Cまで定電圧充電し、0.7Cの電流で4.3Vまで定電流充電し、4.3Vの電圧で0.05Cまで定電圧充電し、0.5Cの電流で4.4Vまで定電流充電し、4.4Vの電圧で0.05Cまで定電圧充電し、最後に、0.5Cの電流で3.0Vまで定電流放電し、10分間静置する。上述充放電の操作を10回繰り返す。乾燥した条件でリチウムイオン電池を分解し、写真を撮り、負極の状態を記録する。
【0125】
以下の基準に従って、リチウムイオン電池のリチウム析出の程度を判断する。
分解された負極の全体は、ゴールデンイエローを示し、極めて少ない部分が灰色を観察し、且つ灰色の領域の面積が2%未満である場合、「リチウム析出なし」と判定する。
分解された負極のほとんどがゴールデンイエローを示し、一部の位置に灰色が観察され、且つ灰色の領域の面積が2%~20%である場合、「リチウム析出が僅かにある」と判定する。
分解された負極の全体は、灰色を示し、一部の位置にゴールデンイエローが観察され、且つ灰色の領域の面積が20%~60%の場合、「リチウム析出がある」と判定する。
分解された負極の全体は、灰色を示し、且つ灰色の領域の面積が60%超である場合、「リチウム析出が厳重である」と判定する。
【0126】
三、測定結果
表1は、負極活物質の特性がリチウムイオン電池の性能に対する影響を示す。
【0127】
比較例1に示すように、負極活物質の黒鉛化度GrとKの比Gr/Kが6未満であり、かつKが0.15超である場合、リチウムイオン電池の初回クーロン効率が非常に低く、リチウム析出現象が発生し(図4参照)、サイクル容量維持率が比較的に低く、且つサイクル膨張率が比較的に高い。比較例2に示すように、負極活物質の黒鉛化度GrとKの比Gr/Kが16超であり、かつKが0.06未満である場合、リチウムイオン電池の初回クーロン効率が比較的に低く、厳重なリチウム析出現象が発生し(図5参照)、サイクル容量維持率が非常に低く、サイクル膨張率が非常に高い。
【0128】
実施例1~36に示すように、負極活物質の黒鉛化度GrとKの比Gr/Kが6~16の範囲にあり、かつKが0.06~0.15の範囲内にある場合、リチウムイオン電池の初回クーロン効率及びサイクル容量維持率を大幅に高め、リチウムイオン電池のサイクル膨張率を大幅に低下し、かつリチウムイオン電池のサイクル中のリチウム析出現象を大幅に減少することができる(図3参照)。初回クーロン効率が大幅に高められることは、リチウムイオン電池のエネルギー密度が大幅に高められることを示す。サイクル容量維持率が大幅に高められること、及びサイクル膨張率が大幅に低下されることは、リチウムイオン電池のサイクル特性が大幅に改善されることを示す。リチウム析出現象の改善は、リチウムイオン電池のレート特性を大幅に高めることに寄与する。よって、実施例1~36のリチウムイオン電池は、大幅に改善された、エネルギー密度、サイクル特性及びレート特性を有する。
【0129】
負極活物質の黒鉛化度Grが0.92~0.96の範囲内にある場合、総合的な特性はより優れる。
【0130】
負極活物質において、炭素材料の結晶子サイズと負極活物質の配向度が以下の関係式:Lc/S<9、La/S>20、Lc<45且つLa>50を満たす場合、リチウムイオン電池の初回クーロン効率、サイクル容量維持率、サイクル膨張率及び/又はリチウム析出現象を更に改善し、リチウムイオン電池の総合的な特性を高めることができる。
【0131】
Dv90/Dv10+Dv90が23.0より大きい場合、リチウムイオン電池のサイクル容量維持率、及びリチウム析出現象を更に改善し、リチウムイオン電池の総合的な特性を高めることに寄与する。
【0132】
図1は、比較例2で使用した負極活物質を500倍に拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図に示すように、比較例2の負極活物質は、一次粒子のみを含む。図2は、実施例5で使用した負極活物質を500倍に拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図に示すように、実施例5の負極活物質は、一定の比率で一次粒子及び二次粒子を含み、それらの比率を調整することにより、炭素材料の黒鉛化度及びK値を調製することができる。
【0133】
図6は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の25℃でのサイクル数とサイクル容量維持率との関係を示す曲線を示す。図7は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の45℃でのサイクル数とサイクル容量維持率との関係を示す曲線を示す。結果から、比較例1と2に比べて、実施例5のリチウムイオン電池は、25℃と45℃でのサイクル容量維持率があくまで90%以上を維持することが分かる。サイクル数の増加に伴い、実施例5と比較例1および2との間のサイクル容量維持率の差は徐々に増加する。図8は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の25℃でのサイクル数とサイクル膨張率との関係を示す曲線を示す。図9は、比較例1、比較例2及び実施例5におけるリチウムイオン電池の45℃でのサイクル数とサイクル膨張率との関係を示す曲線を示す。結果から、比較例1と2に比べて、実施例5のリチウムイオン電池は、25℃でのサイクル膨張率があくまで8%未満であり、45℃でのサイクル膨張率があくまで10%未満であることが分かる。サイクル数の増加に伴い、実施例5と比較例1および2との間のサイクル膨張率の差は徐々に増加する。上述結果から、実施例5のリチウムイオン電池は、室温及び高温でのサイクル中には、大幅に高められたサイクル特性が有することが分かる。
【0134】
表2は、負極活物質の特性がリチウムイオン電池の性能に対する影響を示す。実施例37~44は、表1の実施例5に対する改良の例であり、その違いは表2にリストされたパラメーターのみである。
【0135】
結果から、負極活物質層の面密度が固定である場合、電池の総合的な特性は、負極活物質層の圧縮密度、負極活物質層の等方性(S'減少)、孔隙率、負極活物質層と負極集電体との間のピール強度からの影響を受ける可能性がある、ことが分かる。負極活物質層の面密度が0.077mg/mm~0.121mg/mmであり、かつ圧縮密度が1.70g/cm~1.92g/cmであり、満放電された状態でのリチウムイオン電池のS'が10~20であり、負極活物質層と負極集電体との間のピール強度が6N/m~15N/mであり、負極活物質層の孔隙率が20%~40%であり、満充電された状態での負極活物質層の熱分解温度か280℃以上であり、及び/又は満放電された状態での負極活物質層の熱分解温度か130℃以上である場合、リチウムイオン電池の初回クーロン効率、サイクル容量維持率、サイクル膨張率及び/又はリチウム析出現象を更に改善することに寄与し、リチウムイオン電池の総合的な特性を高める。負極活物質層の圧縮密度が固定である場合、負極活物質層の面密度が0.100mg/mmであるリチウムイオン電池は、比較的に優れた総合的な特性を有する。
【0136】
明細書全体では、「実施例」、「部分的実施例」、「一つの実施例」、「他の一例」、「例」、「具体例」または「部分的例」による引用は、本発明の少なくとも一つの実施例又は例は、当該実施例又は例に記載された特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各場所に記載された、例えば「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「他の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明での同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、あらゆる好適な方法で組み合わせることができる。
【0137】
例示的な実施例が開示および説明されたが、当業者は、上述実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、かつ、本発明の技術思想、原理、および範囲から逸脱しない場合に実施例への変更、置換および変更が可能であること、を理解すべきである。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9