(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006813
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】オフセット印刷用帯電防止抗菌剤組成物、印刷物、および印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20230111BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20230111BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230111BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20230111BHJP
C09K 3/16 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01N25/30
A01P3/00
A01N25/04
C09K3/16 101C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109607
(22)【出願日】2021-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長幡 大輔
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA05
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA14
4H011DH03
(57)【要約】
【課題】本発明は、印刷物の静電気を除去し、紙の詰まり、用紙同士のくっつきを防止し、紙揃えの向上や折機詰まりを抑制し、かつ印刷物に抗菌性能を付与する帯電防止抗菌剤を提供することを目的とする。
【解決手段】銀イオン水溶液と、界面活性剤と、水とを含有することを特徴とする帯電防止抗菌剤組成物および当該帯電防止抗菌剤組成物を基材に塗布してなることを特徴とする抗菌印刷物、ならびにコーティング装置を用いて、当該帯電防止抗菌剤組成物を塗布する工程を、乾燥工程の次に行なうことを特徴とする抗菌印刷物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオン水溶液と、界面活性剤と、水とを含有することを特徴とする帯電防止抗菌剤組成物。
【請求項2】
前記銀イオン水溶液が0.01~50質量部と、前記界面活性剤が0.001~5質量部と、前記水が100質量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の帯電防止抗菌剤組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止抗菌剤組成物。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルアミンであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物。
【請求項5】
前記銀イオン水溶液が、アミノ酸、1~2価のカルボン酸およびイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体化された銀であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物を基材に塗布してなることを特徴とする抗菌印刷物。
【請求項7】
オフセット印刷機により印刷を行ない抗菌印刷物を得る抗菌印刷物の製造方法において、
コーティング装置を用いて、請求項1~5のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物を塗布する工程を、乾燥工程の次に行なうことを特徴とする抗菌印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記コーティング装置が、1つ以上のコーターを有するものであって、
少なくとも1つの前記コーターを用いて、前記塗布工程を行なうことを特徴とする請求項7に記載の抗菌印刷物の製造方法。
【請求項9】
前記塗布工程が、前記抗菌印刷物表面の銀イオン量として0.00002~0.25g/m2となるように、前記抗菌印刷物に前記帯電防止抗菌剤組成物を付与することを特徴とする請求項7または8に記載の抗菌印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷に使用する帯電防止抗菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、用紙を用いて黄・紅・藍・墨の4色のオフセット印刷インキを紙に印刷する印刷方式であるが、特に、オフセット輪転印刷は、上記印刷インキを印刷した後、ドライヤーを通過させ熱風乾燥させることで印刷インキを紙に定着させる印刷方式である。このドライヤー通過後、ガイドローラー、折機を通過して印刷物が得られる。そして、ガイドローラーや折機を通過する際に、印刷物が帯電していると、その静電気により印刷物がガイドローラーにくっつき易くなったり、折機で印刷物が詰まり易くなるなどの印刷トラブルが発生しやすくなるため、ドライヤー通過後にシリコンアプリケーターなどで帯電防止剤を塗布し、印刷物から静電気を除去することが望ましい。そのために、帯電防止剤には、様々な化学物質を添加し、その性能を最大限に発揮できるように鋭意検討されてきた。
【0003】
特許文献1には、分子量200~8000の所定の構造式を有するポリエチレンオキシドを必須成分とし、界面活性剤および水をさらに含んでなるオフセット輪転印刷用の濃縮帯電防止剤組成物が開示され、印刷物の帯電性や滑走性(折機詰まり抑制)、あるいはコスレ性や湿潤性を改善するものが提案されている。
【0004】
しかし、近年印刷速度の高速化が進み、特許文献1に開示されたオフセット輪転印刷用の濃縮帯電防止剤組成物では、帯電防止効果やコスレ防止効果が十分に発揮できないという問題点が挙げられる。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献2には、非水溶性脂肪族化合物と4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤および水を含有する印刷物用表面保護剤が開示され、印刷速度が高速であっても、あるいは、長期間連続印刷したような場合であっても、所定のコスレ防止性能などを発揮できるものが提案されている。
【0006】
しかし、さらに近時の傾向として、抗菌性や抗ウイルス性といった機能性の付与のニーズが高まってきているが、特許文献1~2では、抗菌性能について、記載も示唆もなく、これを解消するに至っていない。
【0007】
また、特許文献3には、特定の粒子径範囲及び真球度の水性オレフィンワックスを必須成分とし、アニオン性界面活性剤、添加剤および水を含有するオフセット輪転印刷用帯電防止剤組成物が開示され、帯電防止効果とブロッキングを抑制し、コスレ防止効果を発揮できるものが提案されている。また、添加剤として、防腐剤や防黴剤を添加することができると記載され、実施例において、一般的な防腐剤を添加されている例が開示されている。
【0008】
しかし、防腐剤や防黴剤を添加する目的として、帯電防止剤を投入するタンク中に発生するカビや細菌等への抑制効果を期待して添加するものと思われるが、具体的に防腐性能や防黴性能についても評価しておらず、ましてや抗菌性能についてはまったく記載も示唆もなく、これを解消できることについて懸念が生じる。
【0009】
一方、抗菌剤として、特許文献4には、微粉末の銀を水中において帯電するように浮遊させ、コロイド状態にしたコロイド銀溶液を用いて殺菌効果を提供できるものが提案されている。
【0010】
しかし、微粉末の銀をコロイド状態にしたものであるので、沈降や分離といった保存安定性が劣るおそれがあり、また塗布や浸漬をして使用する態様が開示されているのみで、剥離や脱落などの耐久性能に懸念があることに加えて、オフセット印刷用として利用されることについての記載も示唆もなく、印刷物に供するものでもない。
【0011】
また、特許文献5には、抗菌性を備える微細化した金属を一次醗酵させたのち二次醗酵させ、この二次醗酵混合物に含まれる金属を有機酸中に解離させる抗菌性イオン化金属組成物の製造方法が開示され、上記の保存安定性を解消するものが提案されている。
【0012】
しかし、この製造方法で得られた抗菌性イオン化金属組成物を使用した例として開示されているのは、生地への付着、プラスチック原料への混練組成物、洗剤および柔軟剤への添加に留まり、帯電防止剤に利用することについての記載も示唆もなく、さらにオフセット印刷用として利用されることについての記載も示唆もなく、印刷物に供するものでもない。
【0013】
また、特許文献6、特許文献7、および特許文献8には、銀イオンとクレアチニンを所定比率で配合した抗菌性組成物が開示され、抗菌性能を有するものが提案されている。
【0014】
しかし、いずれも帯電防止剤に利用することについての記載も示唆もなく、さらにオフセット印刷用として利用されることについての記載も示唆もなく、印刷物に供するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009-72979号公報
【特許文献2】特開2011-156669号公報
【特許文献3】特開2013-216734号公報
【特許文献4】特開2002-173405号公報
【特許文献5】特開2010-253658号公報
【特許文献6】特開2012-31118号公報
【特許文献7】特開2015-168637号公報
【特許文献8】特開2019-170757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、印刷物の静電気を除去し、紙の詰まり、用紙同士のくっつきを防止し、紙揃えの向上や折機詰まりを抑制し、かつ印刷物に抗菌性能を付与する帯電防止抗菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、鋭意検討した結果、銀イオン水溶液と、界面活性剤と、水とを含有することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、
(1)銀イオン水溶液と、界面活性剤と、水とを含有することを特徴とする帯電防止抗菌剤組成物、
(2)前記銀イオン水溶液が0.01~50質量部と、前記界面活性剤が0.001~5質量部と、前記水が100質量部を含有することを特徴とする(1)に記載の帯電防止抗菌剤組成物、
(3)前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤であることを特徴とする(1)または(2)に記載の帯電防止抗菌剤組成物、
(4)前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルアミンであることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物、
(5)前記銀イオン水溶液が、アミノ酸、1~2価のカルボン酸およびイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体化された銀であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物、
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物を基材に塗布してなることを特徴とする抗菌印刷物、
(7)オフセット印刷機により印刷を行ない抗菌印刷物を得る抗菌印刷物の製造方法において、
コーティング装置を用いて、(1)~(5)のいずれかに記載の帯電防止抗菌剤組成物を塗布する工程を、乾燥工程の次に行なうことを特徴とする抗菌印刷物の製造方法、
(8)前記コーティング装置が、1つ以上のコーターを有するものであって、
少なくとも1つの前記コーターを用いて、前記塗布工程を行なうことを特徴とする(7)に記載の抗菌印刷物の製造方法、
(9)前記塗布工程が、前記抗菌印刷物表面の銀イオン量として0.00002~0.25g/m2となるように、前記抗菌印刷物に前記帯電防止抗菌剤組成物を付与することを特徴とする(7)または(8)に記載の抗菌印刷物の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印刷物の静電気を除去し、紙の詰まり、用紙同士のくっつきを防止し、紙揃えの向上や折機詰まりを抑制し、かつ印刷物に抗菌性能を付与する帯電防止抗菌剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0021】
本発明の帯電防止抗菌剤組成物は、銀イオン水溶液と、界面活性剤と、水とを含有することが好ましい。
【0022】
前記銀イオン水溶液は、アミノ酸、1~2価のカルボン酸、およびイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体化された銀であることが好ましい。
【0023】
前記アミノ酸としては、ヒスチジン、アルギニン、クレアチニンなどが好ましく、クレアチニンがより好ましい。
【0024】
前記1~2価のカルボン酸としては、下記一般式(1)で表される1価のカルボン酸または一般式(2)で表される2価のカルボン酸であることが好ましい。
HOOC-X-R1 (1)
[ここで、式中、R1は置換または未置換の炭素数が1~18の1価の炭化水素基(ただし、カルボキシル基を除く)であり、XはOまたはNHである。]
HOOC-R2-COOH (2)
[式中、R2は置換または未置換の炭素数が1~18の1価の脂肪族炭化水素基、置換または未置換の炭素数が6~18の1価の芳香族炭化水素基、および置換または未置換の炭素数が2~18の1価の芳香族複素環基のいずれかである。]
【0025】
前記R1は、置換または未置換の炭素数が1~18の1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~4の1価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
また、置換または未置換の炭素数が6~18の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が6~12の1価の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
また、置換または未置換の炭素数が2~18の1価の芳香族複素環基であることが好ましく、炭素数が2~11の1価の芳香族複素環基であることがより好ましい。
【0026】
前記脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基などのアルケニル基、エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基、ならびにシクロプロピル基、シクロブチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。
【0027】
前記芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基などの単環芳香族炭化水素基、ナフチル基などの縮合環炭化水素基、ならびにビフェニリル基などの環集合炭化水素基が挙げられる。
【0028】
前記芳香族複素環基の例としては、トリアゾリル基、フラニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピラジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、チオフェニル基、ビピリジル基およびオキサジアゾリル基などが挙げられる。
【0029】
R1における、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、および芳香族複素環基の水素原子は、他の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキソ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0030】
R1は、置換又は未置換の主鎖炭素数1~3の飽和脂肪族炭化水素基、未置換の主鎖炭素数1~2の炭化水素基、あるいは、カルボニル基で置換された主鎖炭素数1~3の炭化水素基であることがより好ましい。
R1は、メチル基、アセチル基がさらに好ましい。
【0031】
一般式(1)のカルボン酸の具体例としては、アセチルグリシン、アセトキシ酢酸、メトキシ酢酸などが挙げられる。
【0032】
前記R2は、置換または未置換の炭素数が1~18の2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~5の2価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0033】
前記脂肪族炭化水素基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基、ビニレン基、プロペニレン基などのアルケニレン基、ならびにシクロプロピレン基、シクロブチレン基などのシクロアルキレン基が挙げられる。
【0034】
R2における、脂肪族炭化水素基の水素原子は、他の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキソ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0035】
R2は、主鎖炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
R2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヒドロキシエチレン基、ビニレン基、ビスヒドロキシエチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、カルボキシフェニレン基、ジカルボキシフェニレン基、およびピリジレン基がさらに好ましい。
【0036】
一般式(2)のカルボン酸の具体例としては、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸などが挙げられる。
【0037】
前記イミダゾール誘導体の具体例としては、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、イミダゾリンなどが挙げられる。
【0038】
例えば、銀とアミノ酸との錯体、銀とカルボン酸との錯体、銀とカルボン酸とアミノ酸との錯体、銀とイミダゾール誘導体との錯体などが挙げられ、なかでも、クレアチニンと銀の錯体、フマル酸と銀の錯体、イミダゾリンと銀の錯体がより好ましく、クレアチニンと銀との錯体およびフマル酸と銀との錯体の両者を含むことがさらに好ましい。これらのなかから選ばれる少なくとも1種であり、2種以上を併用してもよい。
これらは、(株)J-ケミカル製CF-01(クレアチニンおよびフマル酸と銀との錯体)などで入手することができる。
【0039】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤のなかから選ばれる少なくとも1種であり、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸部分エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどやフッ素系非イオン性界面活性剤として、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0041】
前記陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などやフッ素系陽イオン性界面活性剤として、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0042】
前記陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホこはく酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウム類、N-アルキルスルホこはく酸モノアミド2ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硬化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などやフッ素系陰イオン性界面活性剤として、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられ、なかでもジアルキルスルホこはく酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が好ましく用いられる。
【0043】
前記両性界面活性剤としては、アルキルイミダゾリン類が挙げられる。
【0044】
なかでも、非イオン性界面活性剤がより好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、アセチレングリコール類やアセチレンアルコール類およびこれらの酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加物などが好ましく用いられる。
これらは、花王(株)、日信化学工業(株)、日光ケミカルズ(株)、(株)ADEKA、理研ビタミン(株)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)、青木油脂工業(株)、東邦化学工業(株)などで入手することができる。
【0045】
前記水は、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水などを用いることができる。なかでも、水道水、蒸留水、イオン交換水、または、純水を使用することが好ましい。
【0046】
前記銀イオン水溶液は、前記水100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることがさらに好ましい。前記範囲内であることにより、より安定した抗菌および抗ウイルス性を発揮する。50質量部を超えても、抗菌機能を発揮するが、保存時に結晶が析出するおそれがあり、また環境影響を考慮すると、一定程度を含むことが好ましい。
【0047】
前記界面活性剤組成物は、前記水100質量部に対して、0.001~5質量部であることが好ましく、0.005~2質量部であることがより好ましく、0.05~1質量部であることがさらに好ましい。0.001質量部より少ないと、帯電防止機能が発現しにくく、5質量部より多いと、保存安定性が悪くなる。また、前記範囲内であることにより、印刷時に静電気の発生が抑制され、紙の詰まり、用紙同士のくっつきを防止し、紙揃えの向上や折機詰まりが軽減され、印刷回転数の上昇が期待できる。
【0048】
本発明の帯電防止抗菌剤組成物は、希釈しないか、もしくはイオン交換水、蒸留水、軟水などで1~200倍に希釈した希釈液として用いることができる。ただし、水道水は、含まれる塩素と反応するおそれがあるため、希釈しないで使用することが望ましい。希釈する場合、希釈液中の銀イオン濃度が、0.00025~2質量%であることが好ましく、0.0012~0.25質量%であることがより好ましく、0.002~0.125質量%であることがさらに好ましい。前記範囲内であることにより、より安定した抗菌および抗ウイルス性を発揮し、保存安定性が得られる。
【0049】
本発明の帯電防止抗菌剤組成物は、上述した以外のその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤を用いることができ、例えば、着色剤、安定化剤、消泡剤、防錆剤、香料、マスキング剤などが挙げられる。
着色剤としては、食品用色素などが好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo.19140、15985、赤色色素としてはCINo.16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo.42640、青色色素としてはCINo.42090、73015、緑色色素としてはCINo.42095などが挙げられる。
安定化剤としては、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン消泡剤が好ましく挙げられる。シリコーン消泡剤としては、乳化分散型及び可溶化型などのいずれも使用することができる。また、非シリコーン系の消泡剤を併用または単独で使用することができる。
【0050】
本発明の抗菌印刷物は、前記帯電防止抗菌剤組成物を基材に塗布してなることが好ましい。
【0051】
前記基材としては、通常のオフセット印刷が可能な用紙であれば使用できるが、特に、オフセット印刷に適する更紙(非塗工紙)、微塗工紙、コート紙、アート紙、あるいは合成樹脂を主成分とするプラスチックフィルム、あるいは合成樹脂を主成分としてその印刷インキ受容性を改善させた合成紙などが好ましく用いられる。
【0052】
さらに、合成紙として、例えば、無孔質のプラスチックフィルムの片面または両面に印刷インキ受容性の塗料を塗布しその塗布膜を形成して、印刷インキ受容性を改善させたものが利用できる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどが例示でき、また印刷インキ受容性塗料としては、マット剤を含有するものが使用できる。マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが使用できる。
【0053】
さらに、合成紙として、プラスチックフィルムを発泡させて多数の微細孔を設けることで印刷インキ受容性を改善させたものや、溶剤に溶解する微粉末を混合して製膜して得られたプラスチックフィルムから溶剤により微粉末を溶解除去し、こうして溶解除去された微粉末が存在していた部位を微細孔とすることで印刷インキ受容性を改善させたもの、あるいは微粉末を混合して製膜して得られたプラスチックフィルムを延伸することで微粉末とプラスチックとの間に微細な亀裂を生じさせ、微細な亀裂とすることで印刷インキ受容性を改善させたものなどが適用できる。
【0054】
本発明の抗菌印刷物の製造方法は、オフセット印刷機により印刷を行ない抗菌印刷物を得るものであって、コーティング装置を用いて、前記帯電防止抗菌剤組成物を塗布する工程を、乾燥工程の次に行なうことが好ましい。
【0055】
前記塗布工程に用いるコーティング装置は、1つ以上のコーターを有するものが好ましく、複数あってもよい。複数のコーターを有する場合、少なくとも1つのコーターを用いて、塗布することが好ましい。例えば、2つのコーターを有するコーティング装置であれば、第1コーターで通常の帯電防止剤を塗布し、第2コーターで本発明の帯電防止抗菌剤組成物を塗布してもよいし、第1コーターで本発明の帯電防止抗菌剤組成物を塗布し、第2コーターで通常の帯電防止剤を塗布してもよい。もちろん、第1、第2コーターのどちらにおいても、本発明の帯電防止抗菌剤組成物を塗布してよい。
【0056】
前記塗布工程は、得られる抗菌印刷物表面の銀イオン量として0.00002~0.25g/m2となるように、前記帯電防止抗菌剤組成物を付与することが好ましく、0.0005~0.005g/m2となるように付与することがより好ましく、0.0001~0.001g/m2となるように付与することがさらに好ましい。0.00002g/m2より少ないと、印刷物表面の抗菌機能が発現しにくく、0.25g/m2より多いと、塗布量が過多となり、基材となる印刷用紙にシワが発生したり、印刷用紙が切れるなどの印刷不良が発生するおそれがある。
【0057】
前記乾燥工程は、ヒートセットオフセット輪転印刷では、乾燥装置(熱風ドライヤーなど)による溶剤蒸発乾燥が主となる乾燥工程であり、オフセット枚葉印刷では、酸化重合乾燥が主となる乾燥工程であり、ノンヒートセットオフセット輪転印刷では、浸透乾燥が主となる乾燥工程である。本発明の抗菌印刷物の製造方法は、なかでもヒートセットオフセット輪転印刷での乾燥工程に用いることが好ましい。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0059】
[帯電防止抗菌剤組成物の作製]
<実施例1>
軟水 100部、銀イオン水溶液 1部、サーフィノール440 0.05部、アミート105 0.1部を添加し、攪拌して、帯電防止抗菌剤組成物を作製した。同様に、表1および表2の処方にしたがって、帯電防止抗菌剤組成物を作製した。
【0060】
【0061】
【0062】
使用した材料は、次のものである。
軟水:硬度30g/mL以下に調製した水道水
銀イオン水溶液:AGアルファCF-01(クレアチニンおよびフマル酸と銀との錯体、水溶性銀化合物13~14%(銀イオン濃度2.5%)、フマル酸1~2%、水84~86%、(株)J-ケミカル製)
銅イオン水溶液:iotech-Cu((株)エフ・エル・アイ製)
四級アンモニウム塩:フレッシュメイトDA5(N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムアセテート、大阪ガスケミカル(株)製)
サーフィノール440:アセチレングリコール系非イオン性界面活性剤(日信化学工業(株)製)
サーフィノール465:アセチレングリコール系非イオン性界面活性剤(日信化学工業(株)製)
アミート105:ポリオキシエチレンアルキルアミン系非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルアミン、花王(株)製)
アミート320:ポリオキシエチレンアルキルアミン系非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンステアリルアミン、花王(株)製)
【0063】
[帯電防止性能]
各帯電防止抗菌剤組成物を、上質紙(npi上質紙、坪量81g/m2、厚み95μm、日本製紙(株)製)に、TQC全自動フィルムアプリケーター(コーテック(株)製)を用いて、Wire bar coater(320mm、0μm)により均一に塗布し、浸透させ、2~3時間、25℃、湿度40%の室内で十分乾燥した後、10cm×10cmに切断し、試料片を得た。各帯電防止抗菌剤組成物について、同試料片を8点用意した。標準として、何も塗布しない同上質紙も用意した。
試料片について、JIS K 6911に準拠して、以下のようにして実施した。
試料片を、表面抵抗率測定機(ハイレスタ-UX MCP-HT800、三菱ケミカルアナリテック(株)製)の電極ボックス(MCP-JB04)内に試料塗布面が下側になるように置き、蓋を閉め、印加電圧500V、測定時間30秒として、表面抵抗率を測定し、同操作を8回行ない、その平均値を求めた。表面抵抗率が、測定機の測定レンジ外となる場合、印加電圧を適宜調整した。
表面抵抗率が低いほど、帯電防止性能が良好と判断でき、標準とした上質紙の表面抵抗率よりも、○:90%以上低い表面抵抗率を示すもの、△:90%未満50%以上低い表面抵抗率を示すもの、×:高いか、50%未満の表面抵抗率を示すもの、の3段階で評価した。
表3に結果を示した。
【0064】
[抗菌性評価]
CA-2 NS TPC上刷りニス(東京インキ(株)製)を、RIテスター((株)明製作所製)で合成紙(ユポFGS、厚み150μm、(株)ユポ・コーポレーション製)に展色し、24時間乾燥した。TQC全自動フィルムアプリケーター(コーテック(株)製)を用いて、各帯電防止抗菌剤組成物を上記展色面に銀イオン量として0.0002g/m2となるようにWire bar coater(320mm、0μm)で塗布し、十分乾燥し、試験用印刷物を得た。
試験用印刷物について、JIS Z 2801:2012に準拠して、以下のようにして実施した。
40mm×40mmに切断した試験用印刷物の表面に、大腸菌(Escherichia coli)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)をそれぞれ含む菌液を滴下し、その上から30mm×30mm×0.09mmのポリエチレンフィルムを密着させ、温度35℃、湿度90%の条件下で24時間培養した。培養後、ポリエチレンフィルムおよび試験用印刷物に付着している菌体をSCDLP培地10ml(V)で洗い出した。洗い出した液を1ml取り、リン酸緩衝生理食塩水9mlの入った試験管に加え、混合し、さらに、この試験管から1mlを取り、別の試験管に入ったリン酸緩衝生理食塩水9mlに入れて、混合して、10倍希釈液を作製し、洗い出し液と10倍希釈液それぞれ1ml(1倍希釈:D)をシャーレ2枚に分注した。シャーレ1枚あたり、46~48℃に保温した標準寒天培地15~20mlを加え、よく混合し、温度35℃、湿度90%の条件下で40~48時間培養した後、大腸菌および黄色ブドウ球菌の生菌数をそれぞれカウントした。評価の基準は、無加工の合成紙試験片を用いた。試験はそれぞれ3回行った。表3に結果を示した。
【0065】
生菌数(N)は以下の方法により算出した。
N=(C×D×V)/A
N:生菌数(試験片1cm2あたり)
C:集落数(採用した2枚のシャーレの集落数平均値)
D:希釈倍数(採用したシャーレに分注した希釈液の希釈倍率)
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(ml)
A:被覆フィルムの表面積(cm2)
ただし、Cが<1の場合はCを1として生菌数を算出した。例えば、V=10ml、A=9cm2、D=1の場合、N<1.1とした。
抗菌活性値(R)は以下の方法により算出した。
R=log(B/A)-log(C/A)=log(B/C)
A:無加工試験片の接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
ただし、生菌数(N)が<1.1の場合、1.1で計算した。小数点以下2けた目は切り捨て、小数点以下1けたとした。
抗菌活性値(R)が2以上のとき、抗菌効果があると判断でき、○:2以上(抗菌効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗菌効果)、×:1未満(抗菌効果がない)、の3段階で評価した。
【0066】
[抗ウイルス性評価]
前記[抗菌性評価]と同様に作成した試験用印刷物について、以下のようにして実施した。
50mm×50mmに切断した試験用印刷物の表面に、エンベローブ型ウイルス(バクテリオファージφ6)およびノンエンベローブ型ウイルス(バクテリオファージQβ)をそれぞれ含む懸濁液を0.4mL滴下した。その上から40mm×40mm×0.09mmのポリエチレンフィルムを密着させ、温度25℃、湿度90%以上の条件下で24時間静置した。静置後、ポリエチレンフィルムおよび試験用印刷物に付着しているウイルスをSCDLP培地10mLで洗い出し、洗い出し液から10倍希釈系列を作成した。洗い出し液および各希釈液0.1mL、宿主細菌培養液0.1mL、軟寒天培地5mLを試験管に加え攪拌し、寒天平板培地に重層した後、37℃で18時間培養し、宿主細菌にバクテリオファージを感染させた。培養後、シャーレのプラーク数を測定した。評価の基準は、無加工の合成紙試験片を用いた。試験はそれぞれ3回行った。表3に結果を示した。
【0067】
ウイルス感染価(V)は以下の方法により算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:ウイルス感染価(試験片1cm2あたり)(PFU/cm2)
C:プラーク数
D:希釈倍数(採用したウェルに分注した希釈液の希釈倍率)
N:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(ml)
A:被覆フィルムの表面積(cm2)
ただし、Cが<1の場合はCを1としてプラーク数を算出した。例えば、N=10ml、A=16cm2、D=1(洗い出し液)の場合、logV<0.80とした。
抗ウイルス活性値(R)は以下の方法により算出した。
R=log(Vb)-log(Vc)
log(Vb):無加工試験片のウイルス感染価の常用対数値
log(Vc):加工試験片のウイルス感染価の常用対数値
ただし、logVが<0.80の場合、0.80で計算した。小数点以下2けた目は切り捨て、小数点以下1けたとした。
抗ウイルス活性値(R)が2以上のとき、抗ウイルス効果があると判断でき、○:2以上(抗ウイルス効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗ウイルス効果)、×:1未満(抗ウイルス効果がない)、の3段階で評価した。
【0068】
【0069】
表1および表2の帯電防止抗菌剤について、下記の条件にて連続印刷試験を行ない、抗菌印刷物を作製した。
印刷機:(株)小森コーポレーション製 システム38S 4色オフセット輪転機
印刷回転数:410rpm
印刷インキ:東京インキ(株)製 ガイア墨、藍、紅、黄
用紙:王子製紙(株)製 OKコートL 厚み53μm 坪量64g/m2
ドライヤー設定温度:第1ゾーン190℃、第2ゾーン175℃、第3ゾーン120℃
コーティング装置:第1コーター、第2コーター付帯、ともに両面塗布
【0070】
<実施例9>
上記印刷試験条件にて、第1コーターに帯電防止剤AS2(軟水10倍希釈、東京インキ(株)製)を投入、第2コーターに実施例1の帯電防止抗菌剤を投入し、印刷用紙巻取5本分(A1換算、約8~10万部)を連続印刷した。得られた抗菌印刷物表面の銀イオン量としては0.0002g/m2となった。抗菌印刷物表面の銀イオン量は、印刷部数と帯電防止抗菌剤の使用量から換算した。
同様に、表4にしたがって、印刷物を作製した。
【0071】
[抗菌性評価]
抗菌試験は、上記印刷用紙では正確な評価が困難であるため、次の方法で確認した。
CA-2 NS TPC上刷りニス(東京インキ(株)製)を、RIテスター((株)明製作所製)で合成紙(ユポFGS、厚み150μm、(株)ユポ・コーポレーション製)に展色し、24時間乾燥した。TQC全自動フィルムアプリケーター(コーテック(株)製)を用いて、帯電防止剤AS2(軟水10倍希釈、東京インキ(株)製)を塗布し、十分乾燥した。さらに、実施例9で用いた実施例1の帯電防止抗菌剤組成物を、上記帯電防止剤AS2塗布面に銀イオン量として0.0002g/m2となるようにWire bar coater(320mm、0μm)で塗布し、十分乾燥し、試験用印刷物を得た。
得られた試験用印刷物を、上記抗菌性評価と同様にして評価した。
抗菌活性値(R)が2以上のとき、抗菌効果があると判断でき、○:2以上(抗菌効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗菌効果)、×:1未満(抗菌効果がない)の3段階で評価した。
同様に、表4にしたがって、各印刷物を作製した。
【0072】
[帯電防止性能]
上記連続印刷試験中に、紙の詰まり、用紙同士のくっつきを目視で確認し、紙揃え不良や折機詰まりの印刷不良発生状況を観察し、静電気の発生状況を確認した。印刷不良が発生しなかったものが、静電気の発生が抑制されたものとして、帯電防止性能が良好となる。
印刷不良の発生について、○:紙揃え不良や折機詰まりがまったく発生せず、抑制されている、△:紙揃え不良や折機詰まりの発生はみられるが、許容できる(実用上問題ない)、×:紙揃え不良や折機詰まりが発生し、抑制できない、の3段階で評価した。
同様に、表4にしたがって、帯電防止性能について評価した。
【0073】
【0074】
表3より、実施例1~8の帯電防止抗菌剤は、良好な帯電防止性能を有するとともに、抗菌性および抗ウイルス性について良好であることが明確である。比較例1の銅イオン水溶液を含有するものは、抗菌性および抗ウイルス性が劣ることが明確である。比較例2の従来の抗菌剤を含有するものも、抗菌性および抗ウイルス性が劣ることが明確である。比較例3~4および6~7の抗菌剤を含有しないものは、当然抗菌性および抗ウイルス性が劣ることが明確である。特許文献6に類似の比較例5は、銀イオン水溶液を含有し、抗菌性能は良好であるが、界面活性剤を含有しないため、帯電防止性能が劣ることが明確である。
また、表4より、実機印刷においても、本発明の帯電防止抗菌剤を用いた印刷物は、抗菌性、帯電防止性能ともに良好である(実施例9~15)ことが明確で、従来品(参考例2および3)と同等の帯電防止性能を有するものであることが明確である。比較例3および6の抗菌剤を含有しないものは、上記した通り帯電防止性能は従来品と同等であるが、抗菌性が劣ることが明確である(参考例1および比較例11)。特許文献6に類似の比較例5は、銀イオン水溶液を含有し、抗菌性能は良好であるが、界面活性剤を含有しないため、帯電防止性能が劣ることが明確である(比較例10)。
前記基材が、非塗工紙、微塗工紙、コート紙、アート紙、プラスチックフィルム、および合成紙のなかから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の抗菌印刷物。
請求項1または2に記載の帯電防止用抗菌剤組成物をイオン交換水、蒸留水および軟水のうち少なくとも1種により重量で1~200倍に希釈したことを特徴とする希釈液。