(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006814
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】抗菌オーバープリントニス、抗菌印刷物、および抗菌印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/08 20060101AFI20230111BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20230111BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20230111BHJP
C09D 11/50 20140101ALN20230111BHJP
【FI】
C09D11/08
B41M3/00 Z
B41M1/06
C09D11/50
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109608
(22)【出願日】2021-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長幡 大輔
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA04
2H113AA06
2H113BA05
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB22
4J039AB08
4J039AE02
4J039BA15
4J039BA30
4J039BA32
4J039BA39
4J039BB01
4J039BC01
4J039BC19
4J039BC20
4J039BE12
4J039BE19
4J039CA07
4J039EA48
4J039GA25
(57)【要約】
【課題】本発明は、印刷物に抗菌性能を付与し、かつ印刷物同士が擦れることによるインキ移りや剥がれなどを防ぎ、ブランケットパイリングの少ない印刷適性が良好な抗菌オーバープリントニスを提供することを目的とする。
【解決手段】銀イオン水溶液と、ロジン変性フェノール樹脂と、溶剤とを含有する抗菌オーバープリントニスおよび当該抗菌オーバープリントニスを基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物、ならびに当該抗菌オーバープリントニスを塗布する工程を含むことを特徴とする抗菌印刷物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオン水溶液と、ロジン変性フェノール樹脂と、溶剤とを含有する抗菌オーバープリントニス。
【請求項2】
前記銀イオン水溶液が、抗菌オーバープリントニス中に0.001~10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の抗菌オーバープリントニス。
【請求項3】
前記銀イオン水溶液が、アミノ酸、1~2価のカルボン酸およびイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体化された銀であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌オーバープリントニス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の抗菌オーバープリントニスを基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物。
【請求項5】
オフセット印刷機により印刷を行ない抗菌印刷物を得る抗菌印刷物の製造方法において、
少なくとも一つの印刷ユニットを用いて、請求項1~3のいずれかに記載の抗菌オーバープリントニスを塗布する工程を含むことを特徴とする抗菌印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記塗布工程が、前記抗菌印刷物表面の銀イオン量として0.00002~0.25g/m2となるように、前記抗菌印刷物に前記抗菌オーバープリントニスを付与することを特徴とする請求項5に記載の抗菌印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷に使用する抗菌オーバープリントニスに関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、用紙を用いて黄・紅・藍・墨の4色のオフセット印刷インキを紙に印刷する印刷方式で、商業印刷物に多く利用されている。さらに、印刷物の表面保護や、光沢向上あるいは艶消しなどを付与する目的で、上記印刷物の表面にオーバープリントニス層を付与することがある。
【0003】
一方、近年人々の衛生意識の高まりから、医療分野のみならず、さまざまな分野において、物品に抗菌性、抗ウイルス性、防カビ性などの機能を付与することが求められ、なかでも、不特定多数の人が手に触れる可能性が高い雑誌、チラシ、冊子、カタログ、カレンダー、ガイドブックなどの印刷物について、抗菌性や抗ウイルス性を付与したいという要望が高まってきている。
【0004】
特許文献1には、中空多孔質シリカにより被覆された酸化チタン光触媒を含有するオフセット印刷用ニスが開示され、長期に亘る消臭及び抗菌機能を併せ持つものが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたオフセット印刷用ニスは、中空多孔質シリカにより被覆された酸化チタン光触媒(光触媒カプセル)が、2~10μm程度の粒子であるため、実機印刷において、ブランケットパイリングや耐摩擦性などの印刷適性が劣るおそれがある。
【0006】
特許文献2には、固形樹脂、植物油、高沸点石油系溶剤および撥水剤を含有してなるOPニス100質量部に対して、酸化銀-リン酸亜鉛カルシウムおよびイソプロピルアルコールを含有してなる抗菌剤を2~5質量部添加してなる抗菌OPニス剤が開示され、意匠印刷層が表示する種々の印刷情報を損なうことなく、その成分であるOPニスによって、印刷物の表面を保護することができ、撥水剤によって、印刷物の表面に撥水性を付与することができ、さらに、抗菌剤によって、印刷物の表面に抗菌性を付与することができるものが提案されている。
【0007】
しかし、特許文献2に開示された抗菌OPニス剤は、撥水剤として、シリコーンオイルが含まれ、当該シリコーン類は、ヒートセット型オフ輪印刷で用いられる乾燥装置(ドライヤ)の排気ガスを脱臭処理する触媒として用いられている白金に対して、これらは強い触媒毒であり、白金触媒の被毒による脱臭性能の低下を招くおそれがあるため、ヒートセット型オフ輪印刷には好ましくない。また、抗菌剤に含まれる酸化銀-リン酸亜鉛カルシウムも粒子であるため、実機印刷において、ブランケットパイリングや耐摩擦性などの印刷適性が劣るおそれがある。
【0008】
特許文献3には、紙基材の表面にオフセット印刷方式で絵柄印刷層と該絵柄印刷層を設けた面全面にオーバープリント層が順次積層され、前記オーバープリント層が前記絵柄印刷層側から第1透明オフセットインキ層と抗菌剤を含有する第2透明オフセットインキ層の2層からなるオフセット印刷方式で印刷された抗菌性を有する商業印刷物が開示され、紙基材の種類に関係なく、抗菌性を有する商業印刷物とすることができるし、また、生産性よく製造することができるものが提案されている。
【0009】
しかし、特許文献3に開示された商業印刷物においては、抗菌剤として、ナノ銀分散溶液を使用しており、当該分散液中の銀についても粒子であるため、実機印刷において、ブランケットパイリングや耐摩擦性などの印刷適性が劣るおそれがある。なお、当該特許文献3には、グロスOPニスを用いても同様の効果が得られると記載されているが、抗菌効果は有すると思われるものの、印刷適性についてはまったく記載も示唆もない。
【0010】
また、特許文献4には、ワニスと、銀イオン含有ゼオライトと、マンガン系金属石鹸及びコバルト系金属石鹸を含む金属石鹸と、を含む低臭インク組成物が開示され、製造直後から使用後(転写して乾燥した後)のいずれの段階においても自身の臭いが少なく低臭性に優れ、かつ、適度な乾燥時間を有し乾燥性に優れるものが提案されている。
【0011】
しかし、特許文献4に開示された低臭インク組成物は、銀イオン含有ゼオライトが2~5μm程度の粒子であるため、実機印刷において、ブランケットパイリングや耐摩擦性などの印刷適性が劣るおそれがある。
【0012】
また、特許文献5には、銀含有リン酸ジルコニウム粒子、ロジン変性フェノール系樹脂、ドライヤー、植物油を含有し、さらに、平均粒子径10.0μm以下のワックスを全組成物中0.1~15.0質量%含有する油性抗菌ニス組成物が開示され、耐版摩耗性に優れ、及び乾燥性を有し、かつ、得られた塗膜が、優れた耐摩擦性及び光沢を有するものが提案されている。
【0013】
しかし、特許文献5に開示された油性抗菌ニス組成物は、0.5~2.5μm程度の高い硬度の銀含有リン酸ジルコニウム粒子を用いているため、依然として実機印刷において、ブランケットパイリングや耐摩擦性などの印刷適性が劣るおそれがある。また、実施例で、光沢の評価を行なっているが、銀含有リン酸ジルコニウム粒子を用いない(従来のニスの)例がないため、耐摩擦性について良好かどうか懸念が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003-160747号公報
【特許文献2】特開2010-184986号公報
【特許文献3】特開2010-194723号公報
【特許文献4】特開2013-253143号公報
【特許文献5】特許6827141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、印刷物に抗菌性能を付与し、かつ印刷物同士が擦れることによるインキ移りや剥がれなどを防ぎ、ブランケットパイリングの少ない印刷適性が良好な抗菌オーバープリントニスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、鋭意検討した結果、銀イオン水溶液と、ロジン変性フェノール樹脂と、溶剤とを含有することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、
(1)銀イオン水溶液と、ロジン変性フェノール樹脂と、溶剤とを含有する抗菌オーバープリントニス、
(2)前記銀イオン水溶液が、抗菌オーバープリントニス中に0.001~10質量%含有することを特徴とする(1)に記載の抗菌オーバープリントニス、
(3)前記銀イオン水溶液が、アミノ酸、1~2価のカルボン酸およびイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体化された銀であることを特徴とする(1)または(2)に記載の抗菌オーバープリントニス、
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の抗菌オーバープリントニスを基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物、
(5)オフセット印刷機により印刷を行ない抗菌印刷物を得る抗菌印刷物の製造方法において、
少なくとも一つの印刷ユニットを用いて、(1)~(3)のいずれかに記載の抗菌オーバープリントニスを塗布する工程を含むことを特徴とする抗菌印刷物の製造方法、
(6)前記塗布工程が、前記抗菌印刷物表面の銀イオン量として0.00002~0.25g/m2となるように、前記抗菌印刷物に前記抗菌オーバープリントニスを付与することを特徴とする(5)に記載の抗菌印刷物の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、印刷物に抗菌性能を付与し、かつ印刷物同士が擦れることによるインキ移りや剥がれなどを防ぎ、ブランケットパイリングの少ない印刷適性が良好な抗菌オーバープリントニスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0020】
本発明の抗菌オーバープリントニスは、銀イオン水溶液と、ロジン変性フェノール樹脂と、溶剤とを含有することが好ましい。
【0021】
前記銀イオン水溶液は、アミノ酸、1~2価のカルボン酸、およびイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体化された銀であることが好ましい。
【0022】
前記アミノ酸としては、ヒスチジン、アルギニン、クレアチニンなどが好ましく、クレアチニンがより好ましい。
【0023】
前記1~2価のカルボン酸としては、下記一般式(1)で表される1価のカルボン酸または一般式(2)で表される2価のカルボン酸であることが好ましい。
HOOC-X-R1 (1)
[ここで、式中、R1は置換または未置換の炭素数が1~18の1価の炭化水素基(ただし、カルボキシル基を除く)であり、XはOまたはNHである。]
HOOC-R2-COOH (2)
[式中、R2は置換または未置換の炭素数が1~18の1価の脂肪族炭化水素基、置換または未置換の炭素数が6~18の1価の芳香族炭化水素基、および置換または未置換の炭素数が2~18の1価の芳香族複素環基のいずれかである。]
【0024】
前記R1は、置換または未置換の炭素数が1~18の1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~4の1価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
また、置換または未置換の炭素数が6~18の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が6~12の1価の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
また、置換または未置換の炭素数が2~18の1価の芳香族複素環基であることが好ましく、炭素数が2~11の1価の芳香族複素環基であることがより好ましい。
【0025】
前記脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基などのアルケニル基、エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基、ならびにシクロプロピル基、シクロブチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。
【0026】
前記芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基などの単環芳香族炭化水素基、ナフチル基などの縮合環炭化水素基、ならびにビフェニリル基などの環集合炭化水素基が挙げられる。
【0027】
前記芳香族複素環基の例としては、トリアゾリル基、フラニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピラジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、チオフェニル基、ビピリジル基およびオキサジアゾリル基などが挙げられる。
【0028】
R1における、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、および芳香族複素環基の水素原子は、他の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキソ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0029】
R1は、置換又は未置換の主鎖炭素数1~3の飽和脂肪族炭化水素基、未置換の主鎖炭素数1~2の炭化水素基、あるいは、カルボニル基で置換された主鎖炭素数1~3の炭化水素基であることがより好ましい。
R1は、メチル基、アセチル基がさらに好ましい。
【0030】
一般式(1)のカルボン酸の具体例としては、アセチルグリシン、アセトキシ酢酸、メトキシ酢酸などが挙げられる。
【0031】
前記R2は、置換または未置換の炭素数が1~18の2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~5の2価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0032】
前記脂肪族炭化水素基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基、ビニレン基、プロペニレン基などのアルケニレン基、ならびにシクロプロピレン基、シクロブチレン基などのシクロアルキレン基が挙げられる。
【0033】
R2における、脂肪族炭化水素基の水素原子は、他の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキソ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0034】
R2は、主鎖炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
R2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヒドロキシエチレン基、ビニレン基、ビスヒドロキシエチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、カルボキシフェニレン基、ジカルボキシフェニレン基、およびピリジレン基がさらに好ましい。
【0035】
一般式(2)のカルボン酸の具体例としては、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸などが挙げられる。
【0036】
前記イミダゾール誘導体の具体例としては、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、イミダゾリンなどが挙げられる。
【0037】
例えば、銀とアミノ酸との錯体、銀とカルボン酸との錯体、銀とカルボン酸とアミノ酸との錯体、銀とイミダゾール誘導体との錯体などが挙げられ、なかでも、クレアチニンと銀の錯体、フマル酸と銀の錯体、イミダゾリンと銀の錯体がより好ましく、クレアチニンと銀との錯体およびフマル酸と銀との錯体の両者を含むことがさらに好ましい。これらのなかから選ばれる少なくとも1種であり、2種以上を併用してもよい。
これらは、(株)J-ケミカル製CF-01(クレアチニンおよびフマル酸と銀との錯体)などで入手することができる。
【0038】
前記銀イオン水溶液は、抗菌オーバープリントニス中に0.001~10質量%含有することが好ましく、0.1~5質量%含有することがより好ましく、0.5~3質量%含有することがさらに好ましい。0.001質量%より少ないと、抗菌機能が発現しにくく、10質量%より多いと、銀イオン水溶液がニス中で分離するおそれがあり、保存安定性の面で劣る、また変色するおそれがある。
【0039】
前記ロジン変性フェノール樹脂は、従来よりオーバープリントニスに使用されているものが使用できる。ロジン変性フェノール樹脂は、重量平均分子量が40,000~300,000の範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは、重量平均分子量が90,000~170,000の範囲内である。重量平均分子量が300,000を超えると溶解性が低下するため、溶剤離脱性が早くなることにより、機上安定性が劣り、紙剥けが発生しやすくなる。また高い弾性を有するため、顔料分散性の低下、紙面への着肉低下や、レベリング性、流動性低下による光沢低下が起こりやすくなる。
ここで、重量平均分子量は、GPC法(ポリスチレン換算)による測定値である。
【0040】
前記ロジン変性フェノール樹脂は、抗菌オーバープリントニス中に10~50質量%含有することが好ましく、15~40質量%含有することがより好ましく、20~35質量%含有することがさらに好ましい。10質量%未満では固形分が少ないため、低粘度となって流動性が過剰となり所望のニスを得ることが困難となり、50質量%を超えると光沢が低下しやすくなるため好ましくない。
【0041】
本発明で用いられる溶剤としては、流動性付与などの目的で、AF溶剤、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、マシン油、シリンダー油などに代表される石油系溶剤、植物油類、ビニリデンオレフィンなどを適宜選択して用いることができる。
【0042】
本発明で用いられる植物油類としては、主に大豆油または大豆油由来の脂肪酸エステルが用いられる。その他の植物油としては、例えばアマニ油、菜種油、ヤシ油、オリーブ油、桐油などおよびこれらを再生処理したものが挙げられる。また、その他の植物油由来の脂肪酸エステルとしては、例えば綿実油、アマニ油、サフラワー油、向日葵油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、菜種油、胡麻油などの乾性油または半乾性油を由来とした脂肪酸モノアルキルエステルが例示できる。脂肪酸モノアルキルエステルを構成するアルコール由来のアルキル基の炭素数は1~12のものが好ましく、具体例としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、3-メチル-1-ブチル、2,2-ビス(ヒドロキメチル)ブチル、2,4-ジメチル-3-ペンチル、2-エチル-1-ブチル、2-エチル-1-ヘキシル、3,5,5-トリメチル-1-ヘキシル、4-デシル、2-イソプロピル-5-メチル-1-ヘキシル、2-ブチル-1-オクチルなどである。なかでも特に好ましいのはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,2-ビス(ヒドロキメチル)ブチルなどである。上記植物油類は、樹脂に対する溶解性が上がり、印刷物の光沢向上に優れた効果がある。
【0043】
本発明の抗菌オーバープリントニスの全量に対し植物油類は、7~30質量%含有することが好ましい。なかでも、特に好ましいのは10~25重量%の範囲内である。7質量%未満では光沢が低下する。30質量%を超える量を添加しても光沢の向上効果は得られず、溶解性が高くなり、タックの経時での上昇が大きくなるため、ブランケット上に堆積したニスの粘着性が高まり、アフタータックが残り、紙剥けしやすくなる。
【0044】
大豆油と大豆油由来の脂肪酸エステルの比率は、重量比で100/0~30/70の範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは90/10~50/50の範囲内である。大豆油と大豆油由来の脂肪酸エステルの比率において、大豆油由来の脂肪酸エステルが、重量比で70質量%を超えるとタックが高くなり、紙剥けしやすくなる。
【0045】
本発明の抗菌オーバープリントニスは、さらに 他にニスとしての機能向上を目的として、適宜、顔料、顔料分散剤、キレート剤、乳化剤、乾燥防止剤、乾燥促進剤、整面剤、耐摩擦性剤、ブロッキング防止剤、滑剤などの添加剤を用いることができる。
【0046】
本発明で用いられる顔料としては、有機顔料または無機顔料であり、例えばジスアゾイエロー、カーミン6B、フタロシアニンブルーなどに代表される有機顔料、およびカーボンブラック、炭酸カルシウムなどに代表される無機顔料などであり、特に限定されない。
【0047】
前記有機顔料の多くは、水系で合成されることが多いため、処理されたうえで、ある程度まで水分を絞ったペースト状で使用され、ワニスと、ニーダーや押出機、連続式混練機などの混練機で混練されて、抗菌オーバープリントニスに使用される。さらに詳しくは、有機顔料ペーストとワニスとを混練機で混練し、有機顔料をワニスに移行させ、水を分離、除去した後、残存する水を減圧することにより除去(フラッシング法という)し、有機顔料とワニスの混合物とする。
【0048】
本発明で用いられるキレート剤はゲル化剤として働くものであるが、金属キレート、特に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート化合物が好ましく用いられる。
【0049】
例えば、耐摩擦性剤、ブロッキング防止剤、滑剤としては、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、シリコーン化合物などの合成ワックスを例示することができる。
【0050】
本発明の抗菌印刷物は、前記抗菌剤オーバープリントニスを基材に印刷してなることが好ましい。
【0051】
前記基材としては、通常のオフセット印刷が可能な用紙であれば使用できるが、特に、オフセット印刷に適する更紙(非塗工紙)、微塗工紙、コート紙、アート紙、あるいは合成樹脂を主成分とするプラスチックフィルム、あるいは合成樹脂を主成分としてその印刷インキ受容性を改善させた合成紙などが好ましく用いられる。
【0052】
さらに、合成紙として、例えば、無孔質のプラスチックフィルムの片面または両面に印刷インキ受容性の塗料を塗布しその塗布膜を形成して、印刷インキ受容性を改善させたものが利用できる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどが例示でき、また印刷インキ受容性塗料としては、マット剤を含有するものが使用できる。マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが使用できる。
【0053】
さらに、合成紙として、プラスチックフィルムを発泡させて多数の微細孔を設けることで印刷インキ受容性を改善させたものや、溶剤に溶解する微粉末を混合して製膜して得られたプラスチックフィルムから溶剤により微粉末を溶解除去し、こうして溶解除去された微粉末が存在していた部位を微細孔とすることで印刷インキ受容性を改善させたもの、あるいは微粉末を混合して製膜して得られたプラスチックフィルムを延伸することで微粉末とプラスチックとの間に微細な亀裂を生じさせ、微細な亀裂とすることで印刷インキ受容性を改善させたものなどが適用できる。
【0054】
本発明の抗菌印刷物の製造方法は、オフセット印刷機により印刷を行ない抗菌印刷物を得るものであって、少なくとも一つの印刷ユニットを用いて、前記抗菌オーバープリントニスを塗布する工程を含むことが好ましい。
【0055】
前記印刷ユニットは、少なくとも一つの印刷ユニットを有するものが好ましく、複数あってもよい。複数の印刷ユニットを有する場合、抗菌オーバープリントニスを塗布する1つの印刷ユニット以外の印刷ユニットで、オフセット印刷インキ組成物を用いて、単色あるいは複色の印刷物を作製後、抗菌オーバープリントニスを塗布して、抗菌印刷物を作製することが好ましい。抗菌オーバープリントニスは、前記印刷物の全面に塗布されてもよく、一部のみに塗布されてもよい。
【0056】
前記抗菌オーバープリントニスを塗布する工程は、オフセット印刷機の印刷ユニットで、オフセット印刷インキ組成物を用いて、単色あるいは複色の印刷物を作製後に続いて、抗菌オーバープリントニスを塗布する工程(インライン工程)であってもよく、前記印刷物を作製後、同印刷機あるいは別の印刷機(塗工機、コーター機なども含む)の印刷ユニットを用いて、抗菌オーバープリントニスを塗布する工程(オフライン工程)であってもよい。
【0057】
前記塗布工程は、得られる抗菌印刷物表面の銀イオン量として0.00002~0.25g/m2となるように、前記抗菌オーバープリントニスを付与することが好ましく、0.00005~0.05g/m2となるように付与することがより好ましく、0.0001~0.001g/m2となるように付与することがさらに好ましい。0.00002g/m2より少ないと、印刷物表面の抗菌機能が発現しにくく、0.25g/m2より多いと、印刷物の乾燥が劣り、乾燥不良のトラブルが発生するおそれがある。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0059】
[ワニスの作製]
<製造例1>
ロジン変性フェノール樹脂R1(重量平均分子量150,000、荒川化学工業(株)製)30部、ロジン変性フェノール樹脂R2(重量平均分子量100,000、ハリマ化成(株)製)24部、大豆白絞油15部、AFソルベント7(JXTGエネルギー(株)製)30.6部、アルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)0.4部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV1を得た。
【0060】
<製造例2>
ロジン変性フェノール樹脂R3(重量平均分子量50,000、星光PMC(株)製)32部、ロジン変性フェノール樹脂R4(重量平均分子量50,000、星光PMC(株)製)14部、大豆白絞油20部、AFソルベント6(JXTGエネルギー(株)製)33.3部、アルミキレート剤(アルゴマー、川研ファインケミカル(株)製)0.7部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら190℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV2を得た。
【0061】
[抗菌オーバープリントニスの作製]
<実施例1>
製造例1で得られたワニスV1 69部、炭酸カルシウム 25部、ワックスコンパンド 1.5部、大豆油脂肪酸エステル 1部、AFソルベント7号 3部を添加し、攪拌し、さらに銀イオン水溶液 0.5部を添加、攪拌して、抗菌オーバープリントニスを作製した。同様に、表1の処方にしたがって、抗菌オーバープリントニスを作製した。
【0062】
<比較例1>
製造例1で得られたワニスV1 68.2部、炭酸カルシウム 25部、ワックスコンパンド 1.5部、大豆油脂肪酸エステル 1部、AFソルベント7号 3部、ナノ銀分散溶液 0.3部を添加、攪拌した後、3本ロールミルで練肉して、抗菌オーバープリントニスを作製した。なお、参考例1は、従来型のオーバープリントニスの例である。
【0063】
【0064】
【0065】
<実施例7>
製造例2で得られたワニスV2 80.5部、ワックスコンパンド 10部、マンガンドライヤ 0.5部、AFソルベント6号 8部を添加し、攪拌し、さらに銀イオン水溶液 1部を添加、攪拌して、抗菌オーバープリントニスを作製した。同様に、表3の処方にしたがって、抗菌オーバープリントニスを作製した。
【0066】
<比較例2>
製造例2で得られたワニスV2 80.5部、ワックスコンパンド 10部、マンガンドライヤ 0.5部、AFソルベント6号 8部を添加し、攪拌し、さらに銅イオン水溶液 1部を添加、攪拌して、抗菌オーバープリントニスを作製した。
【0067】
<比較例3>
製造例2で得られたワニスV2 75部、ワックスコンパンド 10部、マンガンドライヤ 0.6部、大豆白絞油 11.9部、銀含有リン酸ジルコニウム粒子 2.5部を添加、攪拌した後、3本ロールミルで練肉して、抗菌オーバープリントニスを作製した。なお、参考例2は、従来型のオーバープリントニスの例である。
【0068】
【0069】
【0070】
使用した材料は、次のものである。
銀イオン水溶液:AGアルファCF-01(クレアチニンおよびフマル酸と銀との錯体、水溶性銀化合物13~14%(銀イオン濃度2.5%)、フマル酸1~2%、水84~86%、(株)J-ケミカル製)
ナノ銀分散溶液:ナノシルバー分散液PR-WB14R(日本イオン(株)製)
銅イオン水溶液:iotech-Cu((株)エフ・エル・アイ製)
銀含有リン酸ジルコニウム粒子:ノバロンAG300(東亞合成(株)製)
炭酸カルシウム:白艶華O(白石カルシウム(株)製)
大豆油脂肪酸エステル:SFB-2(東新油脂(株)製)
AFソルベント7号:JXTGエネルギー(株)製
AFソルベント6号:JXTGエネルギー(株)製
マンガンドライヤ:オクチル酸マンガン
ワックスコンパンド:ポリエチレンワックス35部と、大豆白絞油65部を加熱撹拌した後、室温まで冷却してコンパンドとした。
【0071】
[抗菌性評価]
実施例1で作製した抗菌オーバープリントニスを、RIテスター((株)明製作所製)で合成紙(ユポFGS、厚み150μm、(株)ユポ・コーポレーション製)に、銀イオン量として0.0004g/m2となるように展色し、紙面乾燥温度が100℃になるように調節して、展色片を強制乾燥させ、試験用印刷物を得た。実施例2~6、比較例1および参考例1について同様にして、各試験用印刷物を得た。
また、実施例7で作製した抗菌オーバープリントニスを、RIテスター((株)明製作所製)で合成紙(ユポFGS、厚み150μm、(株)ユポ・コーポレーション製)に、銀イオン量として0.0004g/m2となるように展色し、25℃で、24時間乾燥し、試験用印刷物を得た。実施例8~12、比較例2~3および参考例2について同様にして、各試験用印刷物を得た。
試験用印刷物について、JIS Z 2801:2012に準拠して、以下のようにして実施した。
40mm×40mmに切断した試験用印刷物の表面に、大腸菌(Escherichia coli)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)をそれぞれ含む菌液を滴下し、その上から30mm×30mm×0.09mmのポリエチレンフィルムを密着させ、温度35℃、湿度90%の条件下で24時間培養した。培養後、ポリエチレンフィルムおよび試験用印刷物に付着している菌体をSCDLP培地10ml(V)で洗い出した。洗い出した液を1ml取り、リン酸緩衝生理食塩水9mlの入った試験管に加え、混合し、さらに、この試験管から1mlを取り、別の試験管に入ったリン酸緩衝生理食塩水9mlに入れて、混合して、10倍希釈液を作製し、洗い出し液と10倍希釈液それぞれ1ml(1倍希釈:D)をシャーレ2枚に分注した。シャーレ1枚あたり、46~48℃に保温した標準寒天培地15~20mlを加え、よく混合し、温度35℃、湿度90%の条件下で40~48時間培養した後、大腸菌および黄色ブドウ球菌の生菌数をそれぞれカウントした。評価の基準は、無加工の合成紙試験片を用いた。試験はそれぞれ3回行った。表5に結果を示した。
【0072】
生菌数(N)は以下の方法により算出した。
N=(C×D×V)/A
N:生菌数(試験片1cm2あたり)
C:集落数(採用した2枚のシャーレの集落数平均値)
D:希釈倍数(採用したシャーレに分注した希釈液の希釈倍率)
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(ml)
A:被覆フィルムの表面積(cm2)
ただし、Cが<1の場合はCを1として生菌数を算出した。例えば、V=10ml、A=9cm2、D=1の場合、N<1.1とした。
抗菌活性値(R)は以下の方法により算出した。
R=log(B/A)-log(C/A)=log(B/C)
A:無加工試験片の接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
ただし、生菌数(N)が<1.1の場合、1.1で計算した。小数点以下2けた目は切り捨て、小数点以下1けたとした。
抗菌活性値(R)が2以上のとき、抗菌効果があると判断でき、○:2以上(抗菌効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗菌効果)、×:1未満(抗菌効果がない)の3段階で評価した。
【0073】
[抗ウイルス性評価]
前記[抗菌性評価]と同様に作成した試験用印刷物について、以下のようにして実施した。
50mm×50mmに切断した試験用印刷物の表面に、エンベローブ型ウイルス(バクテリオファージφ6)およびノンエンベローブ型ウイルス(バクテリオファージQβ)をそれぞれ含む懸濁液を0.4mL滴下した。その上から40mm×40mm×0.09mmのポリエチレンフィルムを密着させ、温度25℃、湿度90%以上の条件下で24時間静置した。静置後、ポリエチレンフィルムおよび試験用印刷物に付着しているウイルスをSCDLP培地10mLで洗い出し、洗い出し液から10倍希釈系列を作成した。洗い出し液および各希釈液0.1mL、宿主細菌培養液0.1mL、軟寒天培地5mLを試験管に加え攪拌し、寒天平板培地に重層した後、37℃で18時間培養し、宿主細菌にバクテリオファージを感染させた。培養後、シャーレのプラーク数を測定した。評価の基準は、無加工の合成紙試験片を用いた。試験はそれぞれ3回行った。表5に結果を示した。
【0074】
ウイルス感染価(V)は以下の方法により算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:ウイルス感染価(試験片1cm2あたり)(PFU/cm2)
C:プラーク数
D:希釈倍数(採用したウェルに分注した希釈液の希釈倍率)
N:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(ml)
A:被覆フィルムの表面積(cm2)
ただし、Cが<1の場合はCを1としてプラーク数を算出した。例えば、N=10ml、A=16cm2、D=1(洗い出し液)の場合、logV<0.80とした。
抗ウイルス活性値(R)は以下の方法により算出した。
R=log(Vb)-log(Vc)
log(Vb):無加工試験片のウイルス感染価の常用対数値
log(Vc):加工試験片のウイルス感染価の常用対数値
ただし、logVが<0.80の場合、0.80で計算した。小数点以下2けた目は切り捨て、小数点以下1けたとした。
抗ウイルス活性値(R)が2以上のとき、抗ウイルス効果があると判断でき、○:2以上(抗ウイルス効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗ウイルス効果)、×:1未満(抗ウイルス効果がない)の3段階で評価した。
【0075】
【0076】
表1および表2の抗菌オーバープリントニスについて、下記の条件にて連続印刷試験を行ない、抗菌印刷物を作製した。
印刷機:(株)小森コーポレーション製 システム38S 6色オフセット輪転機
印刷回転数:410rpm
印刷インキ:東京インキ(株)製 ガイア墨、藍、紅、黄
用紙:王子製紙(株)製 OKコートL 厚み53μm 坪量64g/m2
ドライヤー設定温度:第1ゾーン190℃、第2ゾーン175℃、第3ゾーン120℃
【0077】
<実施例13>
上記印刷試験条件にて、印刷ユニット1で墨インキ、印刷ユニット2で藍インキ、印刷ユニット3で紅インキ、印刷ユニット4で黄インキ、および印刷ユニット5で実施例1の抗菌オーバープリントニスを印刷し、印刷用紙巻取4本分(A1換算、約8万部)を連続印刷した。得られた抗菌印刷物表面の銀イオン量としては0.0003g/m2となった。抗菌印刷物表面の銀イオン量は、印刷部数と抗菌オーバープリントニスの使用量から換算した。
なお、抗菌オーバープリントニスは、全面に印刷した(全ベタ印刷)。
同様に、表6にしたがって、実施例14~15、比較例4および参考例3の抗菌印刷物を作製した。
【0078】
表3および表4の抗菌オーバープリントニスについて、下記の条件にて連続印刷試験を行ない、抗菌印刷物を作製した。
印刷機:(株)小森コーポレーション製 リスロンL-640 6色枚葉印刷機
印刷回転数:10,000sph
印刷インキ:東京インキ(株)製 ジップセットニューセルボ墨、藍、紅、黄
用紙:日本製紙(株)製 オーロラコート 厚み62μm 坪量79.1g/m2
【0079】
<実施例16>
上記印刷試験条件にて、印刷ユニット1で墨インキ、印刷ユニット2で藍インキ、印刷ユニット3で紅インキ、印刷ユニット4で黄インキ、および印刷ユニット5で実施例7の抗菌オーバープリントニスを連続印刷した。得られた抗菌印刷物表面の銀イオン量としては0.0003g/m2となった。抗菌印刷物表面の銀イオン量は、印刷部数と抗菌オーバープリントニスの使用量から換算した。
なお、抗菌オーバープリントニスは、全面に印刷した(全ベタ印刷)。
同様に、表6にしたがって、実施例17~18、比較例5~6および参考例4の抗菌印刷物を作製した。
【0080】
[抗菌性評価]
抗菌試験は、上記印刷用紙では正確な評価が困難であるため、次の方法で確認した。
ジップセットニューセルボ紅(東京インキ(株)製)を、RIテスター((株)明製作所製)で合成紙(ユポFGS、厚み150μm、(株)ユポ・コーポレーション製)に展色し、24時間乾燥した。さらに、実施例13で用いた実施例1の抗菌オーバープリントニスを、上記紅インキ塗布面に銀イオン量として0.0003g/m2となるように同RIテスターで塗布し、十分乾燥し、試験用印刷物を得た。
得られた試験用印刷物を、上記抗菌性評価(大腸菌を使用)と同様にして評価した。
抗菌活性値(R)が2以上のとき、抗菌効果があると判断でき、○:2以上(抗菌効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗菌効果)、×:1未満(抗菌効果がない)の3段階で評価した。
同様に、表6にしたがって、各印刷物を作製した。
【0081】
[ブランケットパイリング]
上記連続印刷試験時において、一定印刷部数ごとに抗菌印刷物をサンプリングし、印刷画像を目視にて観察し、ブランケットパイリングの発生状況を確認した。
実施例13~15、比較例4、および参考例3については、ブランケットパイリングの発生について、◎:7万部以上印刷しても発生しない、○:7万部未満、5万部以上印刷しても発生しない、△:5万部未満、2万部以上印刷した時点で発生はみられるが、印刷物として許容できる(実用上問題ない)、×:2万部未満の印刷で発生し印刷物として許容できない、の4段階で評価した。
また、実施例16~18、比較例5~6、および参考例4については、ブランケットパイリングの発生について、◎:1万部以上印刷しても発生しない、○:1万部未満、5千部以上印刷しても発生しない、△:5千部未満、3千部以上印刷した時点で発生はみられるが、印刷物として許容できる(実用上問題ない)、×:3千部未満の印刷で発生し印刷物として許容できない、の4段階で評価した。
表6に、ブランケットパイリングの結果を記載した。
【0082】
[耐摩擦性試験]
実施例1~6、比較例1、および参考例1については、RIテスター((株)明製作所製)でコート紙(OKコートL)に、ガイア紅インキを1.25cc/m2で展色し、すぐに温度調整可能なオーブンを用いて、120℃、10秒間、加熱し、乾燥させた後に、抗菌OPニスを1.25cc/m2で展色し、すぐに同オーブンを用いて、120℃、10秒間、試料片を加熱し、乾燥させた。加熱後、試料片を1分間放冷し、放冷した試料片のインキ面を学振型耐摩擦性試験機にて白紙で擦り、色落ちの程度を目視にて評価した。色落ちが少ないものほど、耐摩擦性が優れる。色落ちの程度について、◎:非常に少ないもの、○:少ないもの、△:やや多いもの(実用上問題ない程度)、×:多いもの(実用できない)、の4段階で評価した。
また、実施例7~12、比較例2~3、および参考例2については、RIテスター((株)明製作所製)でコート紙(オーロラコート)に、ニューセルボ紅インキを1.25cc/m2で展色し、25℃で、24時間乾燥後、抗菌OPニスを1.25cc/m2で展色し、25℃で、24時間乾燥させた。乾燥した試料片のインキ面を学振型耐摩擦性試験機にて白紙で擦り、色落ちの程度を目視にて評価した。色落ちが少ないものほど、耐摩擦性が優れる。色落ちの程度について、◎:非常に少ないもの、○:少ないもの、△:やや多いもの(実用上問題ない程度)、×:多いもの(実用できない)、の4段階で評価した。
表6に、耐摩擦性試験の結果を記載した。
【0083】
【0084】
表5~6より、実施例1~12の抗菌オーバープリントニスは、抗菌性および抗ウイルス性について良好であり、実機印刷において、ブランケットパイリングおよび耐摩擦性試験といった印刷適性が良好であることが明確である。比較例1のナノ銀分散溶液を含有するものは、耐摩擦性試験は実用上問題ないものであるが、抗菌性および抗ウイルス性が劣り、ブランケットパイリングが劣ることが明確である。比較例2の銅イオン水溶液を含有するものは、印刷適性は良好であるものの抗菌性および抗ウイルス性が劣ることが明確である。特許文献5に類似の比較例3の銀含有リン酸ジルコニウム粒子を含有するものは、耐摩擦性試験は実用上問題ないものであるが、抗菌性および抗ウイルス性が劣り、ブランケットパイリングが劣ることが明確である。また、従来品(参考例1および2)は、抗菌性が劣ることが明確である。